説明

ピッキング方法およびハンド装置

【課題】箱体内の対象を、どのような形状であっても、またどのような姿勢であっても、ハンドによって確実にピッキングする。
【解決手段】ハンドによって4つのコーナーを有する箱体B内の対象Tをピッキングするピッキング方法において、ハンドは、略同一方向に延びて該同一方向と略直交する平面方向に相対的に移動する4本の把持爪12a〜12dを備えている。まず、ハンドの把持爪12a〜12dそれぞれを開口を通じて箱体B内に進入させて、コーナーC1〜C4それぞれに配置する。その後、把持爪12a〜12dそれぞれを互いに接近するように前記平面方向に相対的に移動させて対象Tに接触させることにより、4本の把持爪12a〜12dによって対象Tを把持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の把持爪を備えるハンドによって対象をピッキングするピッキング方法およびハンド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば製造現場では、複数の把持爪を備えるハンドによる対象(ターゲット、例えば部品)のピッキング(対象を把持して移動させること)が実行されている。
【0003】
このようなハンドとして、例えば、特許文献1に記載するハンドがある。このハンドは、クランクシャフトを支持する貫通孔を備える同一形状のコンロッドを同時に複数個ピッキングできるように構成されている。具体的には、ハンドは、複数のコンロッドの貫通孔に挿通される支持バーと、最前(支持バー先端側)に位置するコンロッドを把持する2本の把持爪とを有する。最前に位置するコンロッドが把持爪によって把持されることにより、他のコンロッドの支持バーからの抜け落ちが防止されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2−22234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際には、特許文献1に記載のハンドがコンロッドのみをピッキングするように1種類の対象のみをピッキングするハンドだけではなく、形状が異なる複数種類の対象を把持可能な汎用性が高いハンドが使用されている。このような汎用性の高いハンドは、3本の把持爪を備えている。3本の把持爪が、好ましい姿勢(把持後に3本の把持爪の間から抜け落ちない姿勢)で待機している対象を把持することにより、対象が確実にピッキングされる。
【0006】
しかしながら、3本の把持爪を備えるハンドであっても、対象の確実なピッキングが困難なことがある。
【0007】
保護のために対象が箱体内に収容されている場合、対象が好ましい姿勢で待機していても、対象の形状によっては該対象が部分的に箱体の内面に接近しすぎてハンドの把持爪が箱体に干渉することがある。
【0008】
この対処として、箱体を十分に大きくすることが考えられる。しかし、この場合、箱体内の対象が自由状態になり、箱体による対象の保護が十分に図れない。また、対象が自由状態であるため、該対象が好ましい姿勢で待機しているとは限らない。
【0009】
そこで、本発明は、箱体に収容されている対象がどのような形状や姿勢であっても、ハンドによって該対象を確実に箱体の外にピッキングすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、本願の請求項1に記載の発明は、
4つのコーナーを有する箱体に配置されている対象を、箱体の開口を通じてハンドによりピッキングするピッキング方法であって、
ハンドが備える略同一方向に延びる4本の把持爪それぞれを、開口を通じて箱体内に進入させて各コーナーに配置させる第1の工程と、
前記第1の工程後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記同一方向と略直交する平面方向に相対的に移動させて対象に接触させることにより、4本の把持爪によって対象を把持する第2の工程とを含むことを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、
請求項1に記載のピッキング方法において、
前記第1の工程は、
ハンドの4本の把持爪の先端のみを箱体内に進入させる第3の工程と、
前記第3の工程後に、ハンドの4本の把持爪それぞれの距離を互いに拡大し続けることにより、まず各把持爪の先端をコーナー間の壁面に接触させ、続いて各把持爪の先端をコーナー間の壁面に沿って移動させて各コーナーに配置する第4の工程と、
前記第4の工程後に、ハンド全体を箱体に向かって移動させる第5の工程とからなることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に記載の発明は、
請求項2に記載のピッキング方法において、
ハンドは、4本の把持爪を、一体的に、前記平面方向に自由に移動可能に且つ前記同一方向に延びる回転中心線を中心として自由に回転可能に支持するように構成されていることを特徴とする。
【0013】
加えて、請求項4に記載の発明は、
請求項1から3のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
ハンドの少なくとも1つの把持爪は、突起部を備えることを特徴とする。
【0014】
加えてまた、請求項5に記載の発明は、
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
箱体内に複数の対象が前記同一方向に重ねて収容されており、
前記第2の工程で、前記同一方向に重ねた状態の複数の対象が4本の把持爪によって同時に把持されることを特徴とする。
【0015】
さらに加えて、請求項6に記載の発明は、
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
箱体内に複数の対象が前記平面方向に並んで収容されており、
前記第2の工程で、前記平面方向に並んだ状態の複数の対象が4本の把持爪によって同時に把持されることを特徴とする。
【0016】
さらに加えて、請求項7に記載の発明は、
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
前記第2の工程で把持した対象を別の箱体に収容されている対象の上に配置する第6の工程と、
前記第6の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを、各コーナーに配置させる第7の工程と、
前記第7の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記平面方向に相対的に移動させて複数の対象に接触させることにより、4本の把持爪によって複数の対象を同時に把持する第8の工程とを含むことを特徴とする。
【0017】
さらに加えて、請求項8に記載の発明は、
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
前記第2の工程で把持した対象を別の箱体に収容されている対象に前記平面方向に並んで配置する第9の工程と、
前記第9の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを、各コーナーに配置させる第10の工程と、
前記第10の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記平面方向に相対的に移動させて複数の対象に接触させることにより、4本の把持爪によって複数の対象を同時に把持する第11の工程とを含むことを特徴とする。
【0018】
さらに加えて、請求項9に記載の発明は、
4つのコーナーを有する箱体に配置されている対象を、箱体の開口を通じてピッキングするハンド装置であって、
略同一方向に延びる4本の把持爪と、
前記同一方向および該同一方向と略直交する平面方向に4本の把持爪それぞれを相対的に移動させる爪移動手段と、
前記爪移動手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記爪移動手段を制御することにより、4本の把持爪それぞれを開口を通じて箱体内に進入させて各コーナーに配置させる第1の動作と、
前記第1の動作の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記平面方向に相対的に移動させて対象に接触させることにより、4本の把持爪によって対象を把持する第2の動作とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、略同一方向に延びて該同一方向と略直交する平面方向に相対的に移動する4本の把持爪は、それぞれが箱体の4つのコーナーそれぞれに配置された後、互いに接近するように移動して対象に接触する。これにより、ハンドの4本の把持爪は、箱体に干渉することなく、対象を確実に把持することができる。
【0020】
また、箱体内の対象は、どのような姿勢であっても、4本の把持爪によってフォームクロージャの状態で把持される。すなわち、対象は、4本の把持爪によって、概ね箱体の4つのコーナーそれぞれから該対象に向かう方向に把持されることにより、前記平面方向への移動が不可能にされつつ把持される。これにより、対象は、4本の把持爪によって確実に把持される。
【0021】
その結果、対象は、4本の把持爪を備えるハンドによって確実に箱体の外にピッキングされる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るハンドの構成を概略的に示した図である。
【図2】図1に示すハンドの駆動機構を概略的に示す図である。
【図3】本発明のピッキング方法に係る箱体とピッキングの対象とを示す図である。
【図4】本発明に係るピッキング方法を説明するための図である。
【図5】図1に示すハンドの改良形態の構成を概略的に示した図である。
【図6】4本の把持爪の4つのコーナーへの位置合わせ方法を説明するための図である。
【図7】別の4本の把持爪の4つのコーナーへの位置合わせ方法を説明するための図である。
【図8】複数の対象を同時にピッキングする方法を説明するための図である。
【図9】複数の対象を同時にピッキングする別の方法を説明するための図である。
【図10】別の実施形態のハンドの把持爪を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るハンドを概略的に示している。図1に符号10に示すハンドは、例えば、該ハンドを任意の位置に移動させ、且つ任意の姿勢にすることができるロボット(図示せず)の先端に設けられている(構成要素の1つとしてロボットに含まれている)。
【0024】
ハンド10は、対象を把持する4本の把持爪12a〜12dを備えている。把持爪12a〜12dは、棒状であって略同一方向(図中Z軸方向)に延びている。また、把持爪12a〜12dは、その外周が、すべり止めのために(ピッキングの対象との間に大きな摩擦力を発生させるために)、例えばゴム材料で覆われる、またはローレット加工されている。なお、把持爪12a〜12dは、棒状であればどのような形状であってもよいが、後述するように箱体と対象との間の隙間に進入するので、細く剛性があるものが好ましい。
【0025】
さらに、4本の把持爪12a〜12dは、Z軸方向と略直交する平面方向(X軸方向およびY軸方向)に相対的に移動可能に構成されている。
【0026】
具体的には、把持爪12aと12bは、それぞれの一端がY軸方向に移動可能に可動支持部14aによって支持されている。また、把持爪12cと12dは、それぞれの一端がY軸方向に移動可能に可動支持部14bによって支持されている。
【0027】
2つの可動支持部14a,14bは、それぞれの一端がX軸方向に移動可能にベース部16によって支持されている。
【0028】
把持爪12a〜12dがY軸方向に移動可能に、また可動支持部14a,14bがX軸方向に移動可能に構成されていることにより、4本の把持爪12a〜12dは、これらの間に存在する対象をX−Y平面方向に把持することができる。
【0029】
図2は、4本の把持爪12a〜12dと2つの可動支持部14a,14bとを駆動する機構の一例を概略的に示している。
【0030】
把持爪12a,12bは、その一端が、可動支持部14a内のY軸方向に延びるボールねじ20aと螺合しているナット22a,22bに固定されている。ボールねじ20aの一端は、サーボモータ24aと駆動連結されている。このボールねじ20aがサーボモータ24aによって回転されることにより、把持爪12aと12bとの間の距離が変更される。
【0031】
同様に、把持爪12c,12dは、その一端が、可動支持部14b内のY軸方向に延びるボールねじ20bと螺合しているナット22c,22dに固定されている。ボールねじ20bの一端は、サーボモータ24bと駆動連結されている。このボールねじ20bがサーボモータ24bによって回転されることにより、把持爪12cと12dとの間の距離が変更される。
【0032】
可動支持部14a,14bは、その一端が、ベース部16内のX軸方向に延びるボールねじ20cと螺合しているナット22e,22fに固定されている。ボールねじ20cの一端は、サーボモータ24cに駆動連結されている。このボールねじ20cがサーボモータ24cによって回転されることにより、可動支持部14aと14bとの間の距離が変更される。
【0033】
3つのサーボモータ24a〜24cを制御することにより、4本の把持爪12a〜12dをX−Y平面方向に移動させるとともに、4本の把持爪12a〜12dの把持力を調整することができる。また、3つのサーボモータ24a〜24cの回転角に基づいて、4本の把持爪12a〜12dの位置関係を検出することができる(すなわち、4本の把持爪12a〜12dそれぞれの位置を制御することができる)。
【0034】
なお、4本の把持爪12a〜12dをY軸方向に移動させる手段および2つの可動支持部14a,14bをX軸方向に移動させる手段は、ボールねじ20a〜20cやサーボモータ24a〜24c以外であってもよい。ただし、ボールねじ20a〜20cやサーボモータ24a〜24cのように、4本の把持爪12a〜12dの間に存在する対象に対する把持力を制御でき、且つ把持爪12a〜12dそれぞれの位置を制御できる手段が好ましい。
【0035】
ここからは、上述のハンド10を用いた、箱体内に収容された対象をピッキングする方法について説明する。
【0036】
図3は、箱体B内に収容された状態のピッキングの対象(ターゲット)Tを示している。
【0037】
なお、本明細書で言う「箱体」とは、対象Tが載置される四角形状の底壁BWと、底壁BWの各辺から垂直に立設して対象Tを囲み、且つ4つの隅(コーナー)C1〜C4を形成する4つの側壁SW1〜SW4からなり、且つハンド10の4本の把持爪12a〜12dが進入する開口を備えるものである。
【0038】
また、本明細書で言う「対象」とは、箱体B内に収容可能であって、収容時に4つのコーナーC1〜C4を占拠しない形状である。したがって、箱体B内に隙間なく入る形状の物体は、本明細書で言う「対象」に該当しない。
【0039】
図1に示すハンド10が箱体B内の対象Tをピッキングするとき、図4(A)に示すように、まず、4本の把持爪12a〜12dを箱体Bの4つのコーナーC1〜C4に配置させる(位置合わせする)。このとき、把持爪12a〜12dを、側壁SW1〜SW4とほぼ平行にする。
【0040】
4本の把持爪12a〜12dのコーナーC1〜C4への位置合わせは、例えば、カメラが検出した箱体Bの位置および姿勢に基づいて、ハンド10が取り付けられているロボットと、図2に示す3つのサーボモータ24a〜24cとを制御することにより実行される(ロボットとサーボモータ24a〜24cとが、特許請求の範囲に記載の4本の把持爪12a〜12dの爪移動手段の役割をしている)。
【0041】
また、例えば、箱体Bの形状、位置、および姿勢が常に一定であるのであれば、すなわちコーナーC1〜C4の位置(座標)が決まっているのであれば、ロボットと3つのサーボモータ24a〜24cとをプログラムによって制御し、4本の把持爪12a〜12dを箱体Bの4つのコーナーC1〜C4に位置合わせしてもよい。
【0042】
4本の把持爪12a〜12dの箱体Bの4つのコーナーC1〜C4への位置合わせが完了すると、サーボモータ24a〜24cを制御し、把持爪12a〜12dそれぞれを互いに接近するようにX−Y平面方向に移動させる。そして、図4(B)に示すように、4本の把持爪12a〜12dを対象Tに接触させる。これにより、対象Tが4本の把持爪12a〜12dによって把持される。
【0043】
対象Tの形状と材質、および箱体B内での対象Tの姿勢が既知である場合、すなわち4つのコーナーC1〜C4それぞれから対象Tまでの距離が既知である場合、4本の把持爪12a〜12dを、サーボモータ24a〜24cを制御することにより、対象Tに接触する直前の位置まで移動させる。その後、4本の把持爪12a〜12dを、サーボモータ24a〜24cを一定のトルクに制御しながら、対象Tに接触するまで移動させる。4本の把持爪12a〜12dの対象Tへの接触は、サーボモータ24a〜24cのトルクが変化することによりわかる。
【0044】
一方、対象Tが未知である場合、すなわち4つのコーナーC1〜C4それぞれから対象Tまでの距離が未知である場合、4本の把持爪12a〜12dを、サーボモータ24a〜24cを一定のトルクに制御しながら、対象Tに接触するまで移動させる。
【0045】
なお、4つのコーナーC1〜C4それぞれから対象Tまでの距離が既知であって、且つ
高速で4本の把持爪12a〜12dが対象Tに衝突しても問題がない場合、4本の把持爪12a〜12dを、サーボモータ24a〜24cを制御することにより、対象Tと確実に接触する位置まで移動させてもよい(トルクの変化に基づいて、把持爪12a〜12dと対象Tとの接触の確認を実行しない)。
【0046】
図4(B)に示すように、4本の把持爪12a〜12d全てが接触すると、対象Tは、フォームクロージャ(form closure)の状態にされる。
【0047】
ここで言う「フォームクロージャ」は、平面上に載置されている物体が、平面との接触点を除く4つの接触点で他の物体と接触され、それによりあらゆる運動が制限されて移動や姿勢変更がまったくできない様子を言う。
【0048】
具体的に言うと、対象Tは、4本の把持爪12a〜12dそれぞれによって、概ね箱体Bの4つのコーナーC1〜C4それぞれから該対象Tに向かう方向に把持されることにより、図1に示すX−Y平面方向(4本の把持爪の移動方向)への移動が不可能にされる。これにより、対象Tは、4本の把持爪12a〜12dによって確実に把持される。
【0049】
4本の把持爪12a〜12dによるフォームクロージャ状態での対象Tの把持が完了すると、ハンド10が箱体Bから離れる。これにより、対象Tがハンド10により箱体Bの外にピッキングされる。
【0050】
本実施形態によれば、ハンド10の4本の把持爪12a〜12dは、それぞれが箱体Bの4つのコーナーC1〜C4それぞれに配置(位置合わせ)された後、互いに接近するように移動して対象Tに接触する。これにより、ハンド10の4本の把持爪12a〜12dは、箱体Bに干渉することなく、対象Tを確実に把持することができる。
【0051】
また、箱体B内の対象Tは、どのような姿勢であっても、4本の把持爪12a〜12dによってフォームクロージャの状態で把持される。すなわち、対象Tは、4本の把持爪12a〜12dによって、概ね箱体Bの4つのコーナーC1〜C4それぞれから該対象Tに向かう方向に把持されることにより、X−Y平面方向への移動が不可能にされつつ把持される。これにより、対象Tは、4本の把持爪12a〜12dによって確実に把持される。
【0052】
その結果、対象Tは、4本の把持爪12a〜12dを備えるハンド10により、確実に箱体Bの外にピッキングされる。
【0053】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0054】
例えば、図1に示すハンド10の4本の把持爪12a〜12dを、一体的に、把持爪12a〜12dが延びる方向(略Z軸方向)と略直交する平面方向(X軸方向およびY軸方向)に自由に移動可能に、且つZ軸方向に延びる回転中心線CLを中心として自由に回転可能にしてもよい。
【0055】
この場合、例えば、図5に示すように、ハンド10は、ベース部16をZ軸方向に延びる回転中心線CLを中心として自由に回転可能に支持する回転機構50と、回転機構50をY軸方向に自由に往復動可能に支持するリニアガイド52と、リニアガイド52をX軸方向に自由に往復動可能に支持するリニアガイド54とを有する。
【0056】
これによる利点は、ハンド10の4本の把持爪12a〜12dを箱体Bの4つのコーナーC1〜C4に位置合わせすることが容易になることである。
【0057】
具体的に、図6を参照しながら説明する。
【0058】
まず、図6(A)に示すように、ハンド10の4本の把持爪12a〜12dを箱体Bの概ね中央に位置合わせする。このとき、把持爪12a〜12d全体を箱体B内に進入させるのではなく、先端のみを進入させる。すなわち、先端を、箱体B内に収容されている対象Tの上方に位置合わせする。なお、問題がない場合、把持爪12a〜12dの先端の位置合わせは、箱体Bの概ね中央でなくてもよい。
【0059】
ハンド10の4本の把持爪12a〜12dの先端の箱体Bの概ね中央位置への位置合わせが完了すると、4本の把持爪12a〜12dそれぞれを他の把持爪から離れるように移動させる(例えば、把持爪間の距離が拡大するように、図2に示す3つのサーボモータ24a〜24cを制御する)。そして、図6(B)に示すように、4本の把持爪12a〜12dの先端を箱体Bの4つの側壁SW1〜SW4に接触させる。
【0060】
4本の把持爪12a〜12dの先端が箱体Bの4つの側壁SW1〜SW4に接触した後も、さらに続けて把持爪間の距離を拡大させると、4本の把持爪12a〜12dそれぞれの先端が、接触している側壁SW1〜SW4に沿ってコーナーC1〜C4に向かって移動する。例えば、図6(B)に示すように、把持爪12aの先端が、側壁SW1に沿ってコーナーC1に向かって移動する。すなわち、4本の把持爪12a〜12dそれぞれの先端が、側壁SW1〜SW4によってコーナーC1〜C4に向かってガイドされる。そして、最終的には、図6(C)に示すように、4本の把持爪12a〜12dの先端は、箱体Bの4つのコーナーC1〜C4に配置される。配置が完了すると、保持爪間の距離の拡大を終了して位置合わせを完了する。
【0061】
なお、4つのコーナーC1〜C4への把持爪12a〜12dの先端の配置(位置合わせ)の完了は、例えば、図2に示すサーボモータ24a〜24cのトルクの変化からわかる(把持爪の先端がコーナーに入ると、先端はコーナーから移動できなくなり、サーボモータ24a〜24cのトルクが上がる)。
【0062】
このことを可能にするのは、図5に示すように、ハンド10が、4本の把持爪12a〜12dを、一体的に、X軸方向およびY軸方向に自由に移動可能に、且つZ軸方向に延びる回転中心線CLを中心として自由に回転可能に支持しているからである。すなわち、図6(A)、図6(B)、図6(C)と順に示すように、4本の把持爪12a〜12dが把持爪間の距離が拡大するように移動することにより、ハンド10全体の姿勢が変化できるからである。
【0063】
これにより、例えばカメラで箱体Bの姿勢を確認し、その後、箱体Bの4つのコーナーC1〜C4に合わせて4本の把持爪12a〜12dの間の距離を制御する必要がない。すなわち、簡単に、4本の把持爪12a〜12dの箱体Bの4つのコーナーC1〜C4への位置合わせを実行することができる。
【0064】
なお、図5に示す、回転機構50、リニアガイド52、およびリニアガイド54は、図6(A)〜6(C)に示すような4本の把持爪12a〜12dの4つのコーナーC1〜C4への位置合わせ中に、箱体Bが動かない、または動かしてはならないことを前提にしている。図7(A)〜7(C)に示すように、ハンド10の姿勢が変わらず位置合わせ中に箱体Bが移動してもよいのであれば、図5に示す、回転機構50、リニアガイド52、およびリニアガイド54は必要ない。
【0065】
また、4本の把持爪12a〜12dの先端が箱体Bの側壁SW1〜SW4に沿ってコーナーC1〜C4に向かって移動しやすくするために、4本の把持爪12a〜12dの先端を、Z軸方向に延びる回転中心線を中心として回転するローラで構成してもよい。
【0066】
加えて、図2に示すように、上述の実施形態の場合、4本の把持爪12a〜12dを3つの駆動源(サーボモータ24a〜24c)によって駆動しているが、本発明はこれに限らない。
【0067】
例えば、各把持爪を1つの駆動源によって駆動するようにしてもよい。この場合、4本の把持爪それぞれを独立して駆動することができ、例えば、対象の剛性が部分的に異なる場合は、接触する部分の剛性に対応して各把持爪を異なる速度で該部分に接触させることができる。また、例えば、1つの駆動源によって4本の把持爪を駆動するようにしてもよい。この場合、4本の把持爪の制御は、1つの駆動源を制御するのみですむ。
【0068】
加えて、図3,4に示すように、上述の実施形態の場合、4本の把持爪12a〜12dを備えるハンド10がピッキングする対象Tは1つであるが、本発明はこれに限らず、複数でも可能である。
【0069】
例えば、図8に示すように、2つの対象T1,T2が箱体Bの底壁BW上に並んで配置されている場合でも、4本の把持爪12a〜12dによって2つの対象T1,T2を同時にピッキングすることができる。
【0070】
具体的には、対象T1,T2とが、少なくとも2点P1,P2で接触可能に箱体Bに収容されていることが前提である。これにより、対象T1を2本の把持爪12a,12cと対象T2との接触点P1,P2とにより、フォームクロージャの状態にすることができる。一方、同様に、対象T2も、2本の把持爪12b,12dと対象T1との接触点P1,P2とにより、フォームクロージャの状態にすることができる。そして、その結果、4本の把持爪12a〜12dにより、2つの対象T1,T2を同時にピッキングすることができる。
【0071】
また、例えば、図9に示すように、2つの対象T3,T4が箱体B内に重ねて収容されている場合でも、4本の把持爪12a〜12dによって2つの対象T3,T4を同時にピッキングすることができる。
【0072】
具体的には、底壁BW側に位置する対象T4が、4本の把持爪12a〜12dによってフォームクロージャの状態で把持できることが前提である。すなわち、対象T4のフォームクロージャ状態での把持を、対象T4上の対象T3が妨害しないことが前提である。
【0073】
図8,9に示すように、複数の対象を同時にピッキングできることにより、複数の対象を1つの目的の場所に短時間に移動させることができる。
【0074】
例えば、第1の対象が第1の箱体内に収容され、第2の対象が第2の箱体内に収容されているとする。この場合、まず、ハンドによって第1の対象を第1の箱体からピッキングし、ピッキングした第1の対象を第2の対象が収容されている第2の箱体に投入する。これにより、図8,9に示すように、2つの対象が1つの箱体に収容された状態にする。そして、ハンドによって第2の箱体に収容されている第1および第2の対象を同時にピッキングする。
【0075】
これは、ハンドによって第1の対象を第1の箱体から目的の場所に移動させた後、続いて該ハンドによって第2の対象を第2の箱体から該目的の場所に移動させる場合に比べて、当然ながらハンドの移動時間が短くなる。これにより、例えば、複数の部品を複数の場所から1つの場所に集めて製品を組み立てる組み立て時間を短縮することができる。
【0076】
さらに加えて、ハンド10の把持爪12a〜12dの少なくとも1つに、対象Tの4本の把持爪12a〜12dの間からの落下を確実に防止することができる突起部を備えてもよい。
【0077】
例えば、図10(A)に示す把持爪100は、球状の複数の突起部102を備えている。この突起部102が対象Tを部分的に下から支持することにより、対象Tの4本の把持爪100の間からの落下をより確実に防止できる。ただし、突起部102が大きすぎると、対象Tの形状によっては、箱体Bの4つのコーナーC1〜C4に進入できない可能性がある。
【0078】
この対処として、把持爪が箱体内に進入した後に箱体中央に向かって突起部が突出するようにしてもよい。すなわち、突起部を把持爪から箱体中央に向かって進退可能に構成してもよい。
【0079】
例えば、進退可能な突起部として、図10(B)に示す把持爪200には、その先端に空気注入によって膨張するバルーン202が設けられている。このバルーン202は、把持爪200の箱体への進入が完了すると膨張するように構成されている。
【0080】
また別例として、図10(C)に示す把持爪300は、その先端302が一方向に曲がるように構成されている。この先端302は、把持爪300の箱体への進入が完了すると、箱体の中央に向かって曲がるように構成されている。
【0081】
なお、把持爪に形成される突起部の形状は、図10に示すもの以外にも複数考えられるが、把持爪が箱体のコーナーに配置されたときに、少なくとも部分的に箱体中央に向かって突起する、すなわち対象に向かって突起する形状が好ましい。突起部が、箱体の側壁に向かっても突起する形状の場合、その突起部分が、コーナーへの把持爪の進入時に箱体と干渉する可能性がある。
【0082】
最後に、補足および確認すると、本発明は、複数の把持爪を備えるハンドによってピッキングされる、箱体に収容される対象は、収容されているときに箱体の複数のコーナーを占拠しない形状であることが多いということに基づくものである(箱体内にほぼ隙間なく収容されている物体の場合、把持以外の方法で箱体外に取り出される)。
【符号の説明】
【0083】
B 箱体
C1〜C4 コーナー
T 対象
12a〜12d 把持爪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つのコーナーを有する箱体に配置されている対象を、箱体の開口を通じてハンドによりピッキングするピッキング方法であって、
ハンドが備える略同一方向に延びる4本の把持爪それぞれを、開口を通じて箱体内に進入させて各コーナーに配置させる第1の工程と、
前記第1の工程後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記同一方向と略直交する平面方向に相対的に移動させて対象に接触させることにより、4本の把持爪によって対象を把持する第2の工程とを含むことを特徴とするピッキング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のピッキング方法において、
前記第1の工程は、
ハンドの4本の把持爪の先端のみを箱体内に進入させる第3の工程と、
前記第3の工程後に、ハンドの4本の把持爪それぞれの距離を互いに拡大し続けることにより、まず各把持爪の先端をコーナー間の壁面に接触させ、続いて各把持爪の先端をコーナー間の壁面に沿って移動させて各コーナーに配置する第4の工程と、
前記第4の工程後に、ハンド全体を箱体に向かって移動させる第5の工程とからなることを特徴とするピッキング方法。
【請求項3】
請求項2に記載のピッキング方法において、
ハンドは、4本の把持爪を、一体的に、前記平面方向に自由に移動可能に且つ前記同一方向に延びる回転中心線を中心として自由に回転可能に支持するように構成されていることを特徴とするピッキング方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
ハンドの少なくとも1つの把持爪は、突起部を備えることを特徴とするピッキング方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
箱体内に複数の対象が前記同一方向に重ねて収容されており、
前記第2の工程で、前記同一方向に重ねた状態の複数の対象が4本の把持爪によって同時に把持されることを特徴とするピッキング方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
箱体内に複数の対象が前記平面方向に並んで収容されており、
前記第2の工程で、前記平面方向に並んだ状態の複数の対象が4本の把持爪によって同時に把持されることを特徴とするピッキング方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
前記第2の工程で把持した対象を別の箱体に収容されている対象の上に配置する第6の工程と、
前記第6の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを、各コーナーに配置させる第7の工程と、
前記第7の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記平面方向に相対的に移動させて複数の対象に接触させることにより、4本の把持爪によって複数の対象を同時に把持する第8の工程とを含むことを特徴とするピッキング方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか1項に記載のピッキング方法において、
前記第2の工程で把持した対象を別の箱体に収容されている対象に前記平面方向に並んで配置する第9の工程と、
前記第9の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを、各コーナーに配置させる第10の工程と、
前記第10の工程の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記平面方向に相対的に移動させて複数の対象に接触させることにより、4本の把持爪によって複数の対象を同時に把持する第11の工程とを含むことを特徴とするピッキング方法。
【請求項9】
4つのコーナーを有する箱体に配置されている対象を、箱体の開口を通じてピッキングするハンド装置であって、
略同一方向に延びる4本の把持爪と、
前記同一方向および該同一方向と略直交する平面方向に4本の把持爪それぞれを相対的に移動させる爪移動手段と、
前記爪移動手段を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記爪移動手段を制御することにより、4本の把持爪それぞれを開口を通じて箱体内に進入させて各コーナーに配置させる第1の動作と、
前記第1の動作の後に、ハンドの4本の把持爪それぞれを互いに接近するように前記平面方向に相対的に移動させて対象に接触させることにより、4本の把持爪によって対象を把持する第2の動作とを実行することを特徴とするハンド装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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