説明

ピペリジル基含有化合物、並びに該化合物を用いた重合体又は共重合体、及びその製造方法

【課題】有機材料用安定剤、電池電極材料等として有用な、NO含有量の高いピペリジル基含有重合体又は共重合体を提供すること。
【解決手段】一般式(1)又は(2)で表されるピペリジル基含有化合物を用いた重合反応により得られ、一般式(3)又は(4)で表される構成単位を含有するピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なピペリジル基含有化合物、該化合物を用いた重合体及び共重合体、並びに該重合体及び共重合体の製造方法に関するものである。上記重合体及び共重合体は、導電性又は耐候性に優れるため、それ自身が高耐候性導電性材料、高耐候性高分子材料等として有用であるほか、プラスチック等に耐候性を付与する安定剤としても有用であり、また、電池電極材料としても優れた性能を持つものである。
【背景技術】
【0002】
2,2,6,6−テトラメチルピペリジン構造を有する誘導体は、ラジカル捕捉能を有するので、有機高分子材料の耐候性付与剤又は重合禁止剤として広く用いられており、さらにN−オキシラジカルを有する誘導体は、これらの用途のほかに特異的な電気的特性も期待できる。
【0003】
非特許文献1には、アリルニッケル触媒によるアレン類のリビング重合に関して記載されている。また、非特許文献2には、アセチレンモノマー及びアセチレンモノマーの重合に関して記載されている。
しかしながら、非特許文献1には、ピペリジル基含有アレンモノマーの重合については何ら記載されていない。また、非特許文献2には、重合の際にニトロキシラジカルが消費されてしまい、NO含有量の多い重合体は得られていなかった。
また、特許文献1及び2には、水酸基をもつニトロキシラジカル重合体が、電池の電極活物質として有効であることが記載されている。しかしながら、この重合体は、ニトロキシラジカル含有量は低く、さらにニトロキシ含有量の高い重合体の製造方法が求められていた。
【0004】
【非特許文献1】有機合成化学協会誌、第56巻第4号(1998)260-267
【非特許文献2】L, Dulogら, Macromol Chem, Rapid Commun. 1993, 14, 147
【特許文献1】特開2003−132891号公報
【特許文献2】特開2004−207249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の目的は、高耐候性導電性材料、高耐候性高分子材料、有機材料用安定剤、あるいは電池電極材料として有用な、NO含有量の高いピペリジル基含有重合体又は共重合体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、特定の構造を有するアレンモノマーを重合させることにより得られるピペリジル基含有重合体が、上記目的を達成しえることを知見した。
【0007】
本発明は、上記知見に基づきなされたもので、下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とするピペリジル基含有化合物を提供するものである。
【0008】
【化1】

【0009】
また、本発明は、上記ピペリジル基含有化合物を用いた重合反応により得られ、下記一般式(3)又は(4)で表される構成単位を含有することを特徴とするピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体を提供するものである。
【0010】
【化2】

【0011】
また、本発明は、上記ピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法であって、上記ピペリジル基含有化合物を用いた重合反応の温度条件が、−5〜30℃の範囲であることを特徴とするピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明のピペリジル基含有重合体及びピペリジル基含有共重合体は、NO含有量が高いため、それ自身を高耐候性導電性材料等として使用できるほか、耐候性付与剤及び光安定剤等の有機材料用高分子型安定剤として合成樹脂等に添加して使用することもでき、さらには電池電極材料としても有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明のピペリジル基含有化合物、ピペリジル基含有重合体及びピペリジル基含有共重合体について説明する。
【0014】
先ず、本発明のピペリジル基含化合物について説明する。
上記一般式(1)又は(2)で表される本発明のピペリジル基含化合物において、一般式(1)におけるR及び一般式(2)におけるR1は、酸素遊離基又はカルバモイルオキシ基である。該カルバモイルオキシ基は、−O−CO−NH−R’で表される基(N置換カルバモイルオキシ基)であり、R’としては、フェニル、シクロヘキシル、炭素原子数1〜20のアルキル基等が挙げられるが、これらの中でも、フェニル、炭素原子数1〜20のアルキル基が好ましい。
【0015】
上記一般式(1)又は(2)で表されるピペリジル基含有化合物の具体例としては、下記化合物No.1〜No.4が挙げられる。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
【化5】

【0019】
【化6】

【0020】
本発明のピペリジル基含化合物は、公知の反応を応用して製造することができる。
上記一般式(1)で表され、Rが酸素遊離基であるピペリジル基含有化合物は、例えば、以下のようにして得ることができる。
先ず、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシと、臭化プロパルギル、塩化プロパルギル等のハロゲン化プロパルギル化合物とを反応させて、4−プロパギルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(PGNO)を得る。次いで、PGNOのプロパギルオキシ基をプロパジエニルオキシ基(アレン)に変換して、目的物を得る。
【0021】
上記一般式(2)で表され、Rが酸素遊離基であるピペリジル基含有化合物は、例えば、以下のようにして得ることができる。
2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドンを、リチウムアセチリドエチレンジアミン錯体、リチウムアセチリド、ナトリウムアセチリド、エチニルマグネシウムクロリド等の金属アセチリドと反応させて、4−エチニル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン(ETA)を得た後、ETAのイミノ基をニトロキシラジカル基に変換して、4−エチニル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシ(ETNO)を得る。次いで、ETNOにクロル炭酸メチルを反応させて4−メチルカーボネート−4−エチニル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジルオキシ(ETNC)を得た後、ETNCのメトキシカルボニルオキシ基を還元脱離させると共にエチニル基をエチニリデン基(アレン)に変換して、目的物を得る。
【0022】
一般式(1)におけるRがカルバモイルオキシ基であるピペリジル基含有化合物は、一般式(1)におけるRが酸素遊離基である化合物を還元することにより得られる一般式(1)におけるRがOHである化合物と、イソシアネート化合物とを反応させて、末端をN置換カルバモイルオキシ基にすることにより得ることができる。
一般式(2)におけるR1がカルバモイルオキシ基であるピペリジル基含有化合物も、一般式(1)におけるRがカルバモイルオキシ基であるピペリジル基含有化合物に準じて得ることができる。
【0023】
上記イソシアネート化合物としては、特に制限はされないが、例えば、脂肪族(モノ)ジイソシアネート、芳香族(モノ)ジイソシアネート、脂環族(モノ)ジイソシアネート等が挙げられる。
【0024】
上記脂肪族モノイソシアネートとしては、例えば、メチルスルホニルイソシアネート、ブチルイソシアネート、イソシアン酸ヘキサデシル、オクタデシルイソシアネート等が挙げられる。また、上記脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、メチレンジイソシアネート、ジメチレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジプロピルエーテルジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナメチレンジイソシアネート、デカメチレンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート、メタキシリレンジイソシアネート、パラキシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0025】
上記芳香族モノイソシアネートとしては、例えば、フェニルイソシアネート、トリルイソシアネート、イソシアン酸−3,4−ジクロロフェニル、m−ニトロフェニルイソシアネート、トルエンスルホニルイソシアネート等が挙げられる。
上記芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、パラフェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジメチルベンゼンジイソシアネート、エチルベンゼンジイソシアネート、イソプロピルベンゼンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、1,4−ナフタレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、2,7−ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
上記脂環族モノイソシアネートとしては、例えば、シクロヘキシルイソシアネートが挙げられる。
【0027】
本発明のピペリジル基含有化合物は、後述のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の合成に単量体として用いることができる。その他、重合禁止剤、有機高分子材料の耐候性付与剤等の用途に使用することもできる。
【0028】
次に、本発明のピペリジル基含有重合体(以下、「本発明の重合体」ともいう)又はピペリジル基含有共重合体(以下、「本発明の共重合体」ともいう)について説明する。
【0029】
上記一般式(3)で表される構成単位を含有する本発明の重合体又は共重合体は、上記一般式(1)で表される本発明のピペリジル基含有化合物を重合反応させることにより得られる。
上記一般式(4)で表される構成単位を含有する本発明の重合体又は共重合体は、上記一般式(2)で表される本発明のピペリジル基含有化合物を重合反応させることにより得られる。
【0030】
本発明の重合体又は共重合体の具体例としては、下記化合物No.5〜No.9が挙げられる。
【0031】
【化7】

【0032】
【化8】

【0033】
【化9】

【0034】
【化10】

【0035】
【化11】

【0036】
上記の重合反応は、無触媒でも触媒下でも重合は可能であるが、好ましくは触媒を使用する。該触媒としては、ニッケル系錯体触媒が挙げられ、中でも、(π-allyl)NiOCOCF3、(π-allyl)NiX2〔Xは、Cl、Br又はIを表す〕、{(π-allyl)NiOCOCF3}(PPh3)等のπ−アリルニッケル錯体触媒が好ましく、特に{(π-allyl)NiOCOCF3}(PPh3)が好ましい。
{(π-allyl)NiOCOCF3}(PPh3)の合成は、文献 「I.Tomitaら, Macromolecules 1994, 27, 4413」を参考にして行なうことができる。例えば、ゼロ価ニッケル錯体ジシクロペンタジエニルニッケル〔Ni(0)(COD)2〕をベンゼン等の溶媒に溶解し、トリフルオロ酢酸と等モルで反応させた後、トリフェニルホスフィン(PPh3)を加えて、ホスフィン配位π−アリル錯体とすることにより得られる。
また、ニッケル系錯体触媒以外の触媒としては、コバルトカルボニル(Co(CO)8)、ロジウム錯体(RhH(PPh34)等が挙げられる。
【0037】
上記触媒の使用量は、単量体1molに対して、0.1mmol〜10mmolの範囲で使用することが好ましく、さらに好ましくは0.5mmol〜5mmolの範囲である。0.1mmol未満である場合は、触媒の効果が得られず、10mmol超使用しても、多く添加した効果が得られず、かえって不経済である。
【0038】
また、上記の重合反応においては、上記一般式(1)又は(2)で表される本発明のピペリジル基含有化合物と共に、他の重合性の単量体を用いることができる。他の重合性の単量体としては、メトキシアレン、エトキシアレン、フェニルアレン、エチレングリコールビスアレニルエーテル等が挙げられ、これらの単量体は1種又は2種以上を用いることができる。
【0039】
本発明の重合体又は共重合体の合成に際し、単量体の重合反応は、溶媒中でも無溶媒中でも行うことができるが、好ましくは溶媒中で行う。使用する溶媒の種類としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒;テトラヒドロフラン、ジオキサン、トリオキサン等のエーテル系溶媒;その他メタノール、メタノール/水、クロロホルム、トルエン、ベンゼン等を例示することができ、好ましくはN,N−ジメチルアセトアミドを用いる。溶媒の使用量は、原料である単量体100質量部に対して50〜3000質量部の範囲が好ましい。
【0040】
また、上記重合反応は、−10℃〜200℃の範囲の反応温度で行うことができる。特に触媒を使用する重合反応の場合は、−10℃〜70℃の範囲が好ましく、さらに好ましくは−5℃〜30℃である。また、反応時間は、好ましくは1時間〜7日間であり、さらに好ましくは10時間〜150時間である。また、重合反応は、好ましくは窒素雰囲気下あるいは密閉系で行う。
【0041】
本発明の重合体又は共重合体の製造方法としては、有機溶媒中で、π−アリルニッケル系錯体触媒をPPh3と併用して使用し、比較的低温で重合反応させる方法が好ましい。重合反応の温度及び時間は、前段階においては−5〜10℃の範囲で1〜5時間、後段階においては10〜30℃で10〜100時間の範囲が好ましい。
また、重合反応においては、単量体として、本発明のピペリジル基含有化合物の一種のみを重合してホモポリマーにすることができる他、本発明のピペリジル基含有化合物の二種以上を重合してコポリマー(共重合体)にすることができ、本発明のピペリジル基含有化合物の一種以上と従来周知の他の重合性の単量体とを重合してコポリマー(共重合体)とすることもできる。重合は、ブロック重合でも、ランダム重合でも、ブロック/ランダム重合でもよい。
【0042】
本発明の重合体又は共重合体の分子量は、高分子型の有機材料用安定剤として用いる場合は、平均分子量で400〜100000が好ましく、500〜10000がより好ましい。分子量が400未満では、保留性に劣るという問題が生じる場合がある。また、平均分子量が100000超では、粘度が高すぎて作業性に問題が生じる場合がある。なお、該平均分子量は数平均分子量であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで標準ポリスチレン換算した分子量を示す。
また、電池電極材料として用いる場合は、溶媒に不要である本発明の重合体又は共重合体が、保留性に優れるので好ましい。但し、この場合、本発明の重合体又は共重合体が溶媒に不溶であるため、GPCによる分子量測定はできない。
【0043】
本発明の重合体又は共重合体は、高耐候性導電性材料、高耐候性高分子材料等として、耐候性や導電性が必要とされる用途において、従来用いられている高分子材料に代えて用いることができる。また、本発明の重合体又は共重合体は、高分子型の有機材料用安定剤(耐候性付与剤、光安定剤等)として合成樹脂等に添加して使用することもでき、さらに、電池電極材料として使用することもできる。
【0044】
本発明の重合体又は共重合体を有機材料用安定剤として用いる場合、有機材料である上記合成樹脂としては、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリラクトン(ポリ乳酸)、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物、あるいはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を挙げることができる。更に、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム等のエラストマーであってもよい。本発明の重合体又は共重合体は、上記合成樹脂100質量部に対して0.001〜10質量部添加することが好ましい。
【0045】
本発明の重合体又は共重合体は、そのまま上記合成樹脂に添加することができる。また、必要に応じて合成樹脂の加工の際に、本発明の重合体又は共重合体と共に、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤等を併用添加することにより、合成樹脂をさらに安定化することができる。
【0046】
上記フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第三ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第三ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6―ジ第三ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部が用いられる。
【0047】
上記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部が用いられる。
【0048】
上記チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部が用いられる。
【0049】
上記紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−第三オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第三ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部が用いられる。
【0050】
上記ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられ、合成樹脂100質量部に対して、好ましくは0.001〜30質量部、より好ましくは0.05〜10質量部が用いられる。
【0051】
上記合成樹脂に本発明の重合体又は共重合体を含有させてなる合成樹脂組成物には、必要に応じてさらに、p−第三ブチル安息香酸アルミニウム、芳香族リン酸エステル金属塩、ジベンジリデンソルビトール類等の造核剤、帯電防止剤、金属石鹸、ハイドロタルサイト、トリアジン環含有化合物、金属水酸化物、ホスフェート系難燃剤、その他無機リン、ハロゲン系難燃剤、シリコン系難燃剤、充填剤、顔料、滑剤、凝集防止剤、発泡剤等を添加してもよい。
【0052】
本発明の重合体又は共重合体は、電池電極材料としても用いることができる。例えば、正極、負極及び電解質を構成要素とする二次電池において、正極と負極の少なくとも一方に本発明の重合体又は共重合体を含有させることにより、高容量で充放電のサイクルに安定な二次電池が得られることができる。さらに、正極、負極、セパレータ及び非水電解液を用いた二次電池において、電極(正極及び/若しくは負極)又はセパレータに本発明の重合体又は共重合体を含有させることにより、過充電による発熱や発火を防ぐことができる。本発明の重合体又は共重合体を電池材料(正極、負極、セパレータ等)に添加する際の添加量としては、本発明の重合体又は共重合体以外の電池材料構成成分の合計量を基準(100質量%)として、0.01質量%〜90質量%である。発熱や発火を防ぐための安定剤として添加する場合は、好ましくは0.05質量%〜20質量%である。0.01質量%より少ない場合は電池特性改良効果が少なく、90質量%を超えて添加すると、電池の充放電特性が不十分となる場合がある。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例等によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例等により制限されるものではない。
【0054】
〔実施例1〕アレンモノマーALNO(化合物No.1)の合成
アレンモノマーALNO(化合物No.1)を下記〔化12〕の合成ルートに従って、以下の手順で合成した。
【0055】
【化12】

【0056】
攪拌装置付き四つ口フラスコに、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ(TEMPOL)20g(116mmol)を仕込み、脱水テトラヒドロフラン100mlを加えて溶解させ、窒素雰囲気下、氷冷しながらNaHを5.11g(128mmol)徐々に添加した後、25℃で1時間攪拌した。得られた懸濁液に臭化プロパルギルを16.58g(139mmol)滴下し、50℃で0.5時間攪拌した。反応後、酢酸エチル200mlを加え、飽和食塩水で3回洗浄し、有機層を乾燥後、脱溶媒した。その後、ヘキサンより再結晶してPGNOを得た(収率85.3%、純度99.6%)。
次に、攪拌装置付き四つ口フラスコ中にPGNOを15g(23.8mmol)及びDMSOを30ml仕込み、窒素雰囲気下15℃でt−BuOKを0.40g(3.6mmol)徐々に加え、35℃で1.5時間攪拌した。その後、氷冷しながら水100mlを滴下した。酢酸エチル200mlを加え、飽和食塩水で洗浄し、粗生成物を単離した。得られた粗生成物をシリカゲルカラム(展開液酢酸エチル/ヘキサン=1:5)により精製して、アレニルエーテルモノマーであるアレンモノマーALNOを得た。収率は90.0%で、HPLCによる純度は99.8%であった。
得られたアレンモノマーALNOについての分析結果を以下に示す。尚、構造確認のための1H−NMR測定は、アレンモノマーALNOをジエチルヒドロキシルアミンで還元して得られたヒドロキシルアミン体ALNOHを測定サンプルとして用いて行った。
【0057】
・沸点:85−87℃/2mmHg
・IR(cm-1):2974,2940(メチル)、1953(アレン)、1363(NO・)、1199(エーテル)
・ALNOHの1H−NMR(CDCl3、ppm):
1.14、1.20(2s、12H、CH3)、1.5,2.0(2m,4H,CH2)、4.0(m、1H,CH),4.2(broad,1H,NOH),5.42,5.44(2d、2H、H2C=C=C)、6.6(dd、1H,C=C=CH−)
【0058】
〔実施例2〕カルバモイルオキシ基含有アレンモノマーALPC(化合物No.2)の合成
カルバモイルオキシ基含有アレンモノマーALPC(化合物No.2)を下記〔化13〕の合成ルートに従って、以下の手順で合成した。
【0059】
【化13】

【0060】
実施例1で得られたアレンモノマーALNO10.0g(47.6mmol)を酢酸エチル50mlに溶かし、室温で攪拌しながらジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)2.33g(26.3mmol)を滴下し、30分攪拌を続けた後、さらにフェニルイソシアネート(PhNCO)62.3g(26.3mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液を飽和食塩水で洗浄後、有機層を減圧除去し、得られた固体を酢酸エチルより再結晶して、フェニルカルバメート型のカルバモイルオキシ基含有アレンモノマーALPCを得た。収率は36.4%で、HPLCによる純度は98.3%であった。得られたカルバモイルオキシ基含有アレンモノマーALPCについての分析結果を以下に示す。
【0061】
・融点:168.6℃(分解)
・IR(cm-1):3277(NH),2978,2933(メチル)、1951(アレン)、1716(カルバメート)
・H1−NMR(CDCl3、ppm):1.23,1.32(2s、12H、CH3)、1.6,2.2(2m,4H,CH2),4.1(m,1H,CH),5,5(m,2H,CH2=C=C),6.7(m,1H,C=C=CH−),7.1−7.5)m,5H,C65)、8.8(br,1H,NH)
【0062】
〔実施例3〕エチニリデンモノマーEDNO(化合物No.3)の合成
エチニリデンモノマーEDNO(化合物No.3)を下記〔化14〕の合成ルートに従って、以下の手順で合成した。
【0063】
【化14】

【0064】
攪拌装置付き四つ口フラスコ中に、窒素雰囲気下、リチウムアセチリドエチレンジアミン錯体23.6g(231mmol)を仕込み、脱水ベンゼン260mlを加えて懸濁させた後、室温で攪拌しながら、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリドン(TAA)32.6g(210mmol)を脱水ベンゼン20mlに溶かした溶液を滴下し、45℃で4.5時間攪拌を続けた。次いで、水50gを加えて析出した沈殿をろ過水洗し、トルエン共沸により脱水してETA25.5gを得た(収率66.6%、純度99.5%)。ETA10.7g(58.7mmol)をジクロロメタン100mlに溶解させ、5℃に冷却し、3−クロロ過安息香酸(m−CPBA)を28.2g(純度65%、106mmol)徐々に加えた後、さらに5℃で1時間撹拌した。析出した沈殿をろ別し、有機層を5%炭酸Na水溶液で洗浄し脱溶媒して、ETNOを収率95.8%、純度99.5%で得た。
得られたETNO20g(102mmol)を、脱水N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)100mlに溶解させ、氷冷下で水素化ナトリウムを5.70g(106mmol)加え、室温で1時間撹拌した。さらに氷冷下でクロル炭酸メチルを11.6g(122mmol)滴下し、室温で5時間撹拌した。次いで、酢酸エチル200ml及び水200mlを加え、有機層を分離し、飽和食塩水で洗浄した後、脱溶媒乾燥して粗生成物を得た。得られた粗生成物をカラム精製(シリカゲル、クロロホルム/酢酸エチル=10:1)し、ETNCを19.5g得た。収率は75.3%、純度は100%であった。
【0065】
攪拌装置付き四つ口フラスコに、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体を1.3g(2.5meq/Pd)、ギ酸アンモニウムを0.63g(100mmol)仕込み、脱気アルゴン置換後、アルゴン雰囲気下でDMF100ml及びトリ−n−ブチルホスフィン2.02g(10mmol)を加え、室温で30分撹拌した。この系に、ETNC25.4g(100mmol)を脱水DMF50mlに溶かした溶液を滴下し、60℃で2時間加温撹拌した。次いで、5%炭酸Na水溶液100ml及び酢酸エチル200mlを加え、有機層を分離し飽和食塩水で洗浄後、脱溶媒乾燥して粗生成物を得た。得られた粗生成物のカラム精製(シリカゲル、酢酸エチル/ヘキサン=1:5)により、目的物であるエチニリデンモノマーEDNOを11.9g得た。収率は65.8%、GC純度は92.7%であった。
得られたエチニリデンモノマーEDNOについての分析結果を以下に示す。尚、構造確認のための1H−NMR測定は、エチニリデンモノマーEDNOをジエチルヒドロキシルアミンで還元して得られたヒドロキシルアミン体EDNOHを測定サンプルとして用いて行った。
【0066】
・沸点:58℃/2mmHg
・IR(cm-1):2973,2933(メチル)、1966(アレン)、1361(NO・)
・EDNOHの1H−NMR(CDCl3、ppm):1.09,1.10(2s、12H、CH3)、2.0,2.1(2m,4H,CH2),4.1(m,2H(CH2=C=C),4.6(br,1H,NOH)
【0067】
〔実施例4〕アレンモノマーALNO(化合物No.1)の重合によるポリマーPALNO(化合物No.5)の合成1
アレンモノマーALNO(化合物No.1)を用い、下記〔化15〕の合成ルートに従って、ポリマーPALNO(化合物No.5)を以下の手順で合成した。
【0068】
【化15】

【0069】
窒素雰囲気下シュレンク管にビス(シクロペンタジエニル)ニッケルの0.05Mベンゼン溶液7.13ml及びアリルトリフレートの0.5Mベンゼン溶液0.72mlをシリンジで量り取り、30分撹拌した後、トリフェニルホスフィンの0.5Mベンゼン溶液1.43ml及びクロロホルム5.6mlを加えてπ−アリルニッケルホスフィン錯体触媒溶液を調製した。この系を−3℃に保ち、前記実施例1で得られたアレンモノマーALNOを1.5g(7.1mmol)加え5時間撹拌した。さらに25℃で10時間撹拌し重合反応させた。反応後、溶媒を減圧除去し、得られた残渣をTHF5mlに溶解させ、水/メタノール(1:1)100mlにより再沈精製し、橙色粉体としてポリマーPALNOを0.525g得た。得られたポリマーPALNOについての分析結果を以下に示す。
【0070】
・IR(cm-1):2974、2937(メチル)、1362(N−オキシル)、1144(エーテル)
・数平均分子量(Mn、THF、PS換算):3550(重合度=17)、重量平均分子量(Mw、THF、PS換算):5690
・NOラジカル当量:319.6(ESR測定によるNO含量65.7%)
【0071】
〔実施例5〕アレンモノマーALNO(化合物No.1)の重合によるポリマーPALNO(化合物No.5)の合成2
ビス(シクロペンタジエニル)ニッケルの0.05Mベンゼン溶液2.85ml及びアリルトリフレートの0.5Mベンゼン溶液0.29mlをシリンジで量り取り、30分撹拌した後、トリフェニルホスフィンの0.5Mベンゼン溶液0.56ml、及びN,N−ジメチルアセトアミド10.5mlを加えてπ−アリルニッケルホスフィン錯体触媒溶液を調製した。この系を4℃に保ち、前記実施例1で得られたアレンモノマーALNOを1.5g加え、5時間撹拌した。さらに25℃で12時間撹拌し重合反応させた。反応液を一部取り出し分析した結果、変換率は94.4%、数平均分子量は21750であった。さらに25℃で14時間撹拌を継続した後、反応液を一部取り出し分析した結果、変換率は100%であった。反応後、実施例4と同様の操作を行って、橙色粉体としてポリマーPALNOを1.1g(収率71.4%)得た。得られたポリマーPALNOについての分析結果を以下に示す。得られたポリマーPALNOは、THF溶媒及びPC溶媒に不溶であった。
【0072】
・IR(cm-1):2974、2938(メチル)、1362(N−オキシル)、1144(エーテル)
・NOラジカル当量:210.3(ESR測定によるNO含量100.0%)
【0073】
〔実施例6〕アレンモノマーALNO(化合物No.1)の重合による低分子オリゴマーPALNO(化合物No.5)の合成1
トルエン溶媒中で、ゼロ価ニッケル錯ジシクロペンタジエニルニッケル(Ni(0)(COD)2)を0.5mol%使用し、前記実施例1で得られたアレンモノマーALNOの高温重合反応を25℃で10時間、60℃で25時間、70℃で30時間行った。変換率は79.0%であり、数平均分子量950の低分子オリゴマーPALNOが得られた。
【0074】
〔実施例7〕アレンモノマーALNO(化合物No.1)の重合による低分子オリゴマーPALNO(化合物No.5)の合成2
ヘキサン溶媒中で、π-アリルニッケル錯体(π−アリル)NiOCOCF3を2mol%使用し、前記実施例1で得られたアレンモノマーALNOの重合反応を40℃で62時間行った。変換率は10.3%であり、数平均分子量900の低分子オリゴマーPALNOが得られた。
【0075】
〔実施例8〕アレンモノマーALNO(化合物No.1)の重合によるポリマーPALNO(化合物No.5)の合成3
前記実施例1で得られたアレンモノマーALNO1.5gを、無溶媒、無触媒中で150℃にて1時間高温重合反応させガラス状固体を得た。固体を粉砕しTHFで数回洗浄したところ、ポリマーPALNOが1.1g(収率73.3%)得られた。得られたポリマーPALNOについての分析結果を以下に示す。また、得られたポリマーPALNOのNO含有量は、13.8%であった。
・IR(cm-1):2975、2937(メチル)、1363(N−オキシル)、1175(エーテル)
【0076】
〔実施例9〕カルバモイルオキシ基含有アレンモノマーALPC(化合物No.2)の重合によるポリマーPALPC(化合物No.7)の合成
カルバモイルオキシ基含有アレンモノマーALPC(化合物No.2)を用い、下記〔化16〕の合成ルートに従って、ポリマーPALPC(化合物No.7)を以下の手順で合成した。
【0077】
【化16】

【0078】
N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)の代わりにクロロホルムを使用した以外は実施例5と同様にして、π−アリルニッケルホスフィン錯体触媒溶液を調整した。この触媒溶液系を0℃に保ちながら、カルバメート保護モノマーである前記実施例2で得られたカルバモイルオキシ基含有アレンモノマーALPC2.36g(7.1mmol)のクロロホルム(2.5ml)溶液を加え、0℃で5時間撹拌後、室温で10時間撹拌を続けた。反応液を一部取り出し分析した結果、変換率は92.9%で、数平均分子量10860(重合度:33)、重量平均分子量17230のポリマーが得られていることが確認できた。実施例4と同様にしてポリマーの再沈精製を行い、THFに一部不溶性のポリマーを得た(収率48%)。
【0079】
得られたポリマーは分析の結果、目的物であるポリマーPALPCであることが確認できた。分析結果を以下に示す。1H−NMR分析において、末端オレフィン部分が認められないことから、アレンの1,2位での選択的重合により、内部オレフィン型であるポリマーPALPCが得られたことがわかる。
・IR(cm-1):3292(NH),2976,2942(メチル)、1731(カルバメート)
・H1−NMR(CDCl3、ppm):1.0−2.3(br,16H,CH3,CH2),3.2−3.6(br,2H,CH2),3.8−4.1(br,1H,CH),5,8−6.1(br,1H,O−CH=C<),7.0−7.5(br,5H,C65)、8.7−8.8(br,1H,NH)
【0080】
〔実施例10〕アレンポリマーPALNO(化合物No.5)の還元
下記〔化17〕に示す反応ルートに従って、アレンポリマーPALNO(化合物No.5)を還元した。
【0081】
【化17】

【0082】
実施例4で得られたアレンポリマーPALNOは、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)中で0.5当量のジエチルヒドロキシルアミン(DEHA)により直ちに退色し、ヒドロキシルアミン体(PALNOH)に還元された。メタノールより再沈精製したPALNOHについての分析結果を以下に示す。1H−NMR分析より、このPALNOHは、アレンモノマーの1,2−位重合体(m):2,3−位重合体(n)=0.75:0.25の組成比を持つ共重合体であることが確認できた。
・IR(cm-1):3415(NOH)2976、2937(メチル)、1150(エーテル)
・H1−NMR(CDCl3、ppm):1.0−2.0(br,14H,CH3,CH2),2.5−2.7(br,1H,NOH),2.8−3.2(br,1.5H,CH2),3.4−3.6(br,0.3H,O−CH<),3.7−4.1(br,1H,CH),4.7−5.2(br,0.5H,CH2=C<),5.8−6.1(br,0.75H,O−CH=C<)
【0083】
〔実施例11〕エチニリデンモノマーEDNO(化合物No.3)の重合によるポリマーPEDNO(化合物No.8)の合成
エチニリデンモノマーEDNO(化合物No.3)を用い、下記〔化18〕の合成ルートに従って、ポリマーPEDNO(化合物No.8)を以下の手順で合成した。
【0084】
【化18】

【0085】
実施例3で得られたエチニリデンモノマーEDNOを無溶媒中、無触媒で、160℃にて5時間熱重合させたところ、ヘキサン溶媒に不溶の固体が得られた。この固体について分析したところ、変換率は26.6%であり、数平均分子量910、NO含有量5.6%のポリマーPEDNOであることが確認できた。IR分析の結果を以下に示す。
・IR(cm-1):2976,2942(メチル)、1630(C=C)、1360(N−オキシル)
【0086】
上記実施例4〜11の結果より、以下のことが明らかである。
π−アリルニッケル系触媒とトリフェニルホスフィンとの錯体を用いて低温重合(反応温度−10〜30℃)させると(実施例4、5、9、10)、該錯体以外のニッケル系錯体触媒又は無触媒で高温重合した場合(実施例6〜8、11)に比べ、分子量が高く、NOラジカル含有量も高いピペリジル基含有重合体又は共重合体が得られる。また、溶媒はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)を用いると、高分子量の重合体又は共重合体が得られる点で好ましい(実施例4、5)。
【0087】
〔評価例1〕アレンポリマーPALNOの酸化還元挙動試験
上記実施例5で得られたアレンポリマーPALNO(Mn/Mw:21750/95910)のサイクリックボルタモグラム(CV)を測定したところ、図1に示す可逆波が得られた(評価例1)。また、比較化合物として、ポリメタクリレート型NOラジカルポリマーPTMA(ポリ4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、Mn/Mw:15100/32900)のサイクリックボルタモグラム(CV)を測定したところ、図2に示す可逆波が得られた(比較評価例1)。尚、CVの測定条件は以下の通りである。
(測定条件)
溶媒:DMF、溶媒濃度:5.6mM、電解質:テトラブチルアンモニウム過塩素酸塩、スキャン速度:50mV/sec、作用極及び対極:白金、参照電極Ag/Ag+、E1/2
20回繰り返しサイクル(200mV/sec)における10回、20回スキャンは一致し、繰り返し特性も良好であった。
酸化還元電位の測定結果を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
PALNOは、PTMAに比較して高分子量体であるが、図1、2及び表1に示すように酸化還元ピーク電位差(ΔE/V)がPTMAと同程度の可逆波が得られた。これは、モビリティーが高いポリエーテル構造に起因するものと考えられる。また、PALNOは、酸化還元ピーク電流差(Δi/μA)がPTMAより高く、ユニット分子量とよい対応を示した。
以上のことより、本発明の重合体又は共重合体は、電池電極材料として用いた際に優れた性能を持つことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は評価例1において測定したPALNOのサイクリックボルタモグラム(CV)測定による可逆波を示す。
【図2】図2は比較評価例1において測定したPTMAのサイクリックボルタモグラム(CV)測定による可逆波を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)又は(2)で表されることを特徴とするピペリジル基含有化合物。
【化1】

【請求項2】
請求項1記載のピペリジル基含有化合物を用いた重合反応により得られ、下記一般式(3)又は(4)で表される構成単位を含有することを特徴とするピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体。
【化2】

【請求項3】
上記重合反応において、触媒としてニッケル系錯体触媒を用いることを特徴とする請求項2記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体。
【請求項4】
上記ニッケル系錯体触媒が、(π−アリル)NiOCOCF3とPPh3との錯体触媒であることを特徴とする請求項3記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体。
【請求項5】
請求項2〜4の何れかに記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法であって、請求項1記載のピペリジル基含有化合物を用いた重合反応の温度条件が、−5〜30℃の範囲であることを特徴とするピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法。
【請求項6】
上記重合反応に使用する溶媒が、N,N−ジメチルアセトアミドであることを特徴とする請求項5記載のピペリジル基含有重合体又はピペリジル基含有共重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−91811(P2007−91811A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−280285(P2005−280285)
【出願日】平成17年9月27日(2005.9.27)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】