説明

ピラゾリルおよびイミダゾリルピリミジン

式I(式中、X、Y、Z、およびRは本明細書中に定義されたとおりである)で示される化合物及びその薬学的に許容されうる塩。本発明は、式Iの化合物を製造する方法、それを含む組成物、医薬を調製するためのそれを使用する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式(I)
【0002】
【化11】

【0003】
〔式中、
Xは、ヘテロアリール(アルキル、ハロ、またはアリールにより場合により置換されている)であり;
Yは、−NRであり、ここでRは、水素またはアルキルであり、Rは、アリールまたはヘテロアリール(これらは、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、アルキルカルボニル、またはアルキルスルホニルにより場合により置換されている)であり;
Zは、水素またはアルキルであり;
は、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、アルキルカルボニル、またはアルキルスルホニルであり、ここでRおよびRは、各々独立して、水素またはアルキルである〕
で示される化合物またはその薬学的に許容されうる塩を提供する。
【0004】
本発明はまた、主題化合物を含む組成物、主題化合物の製造方法、および医薬の製造におけるその使用を提供する。
【0005】
コルチコトロピン放出因子(CRF)またはホルモン(CRH)は、脳の特定の視床下部核により合成されるいくつかの神経ホルモンの1つであり、この場所でプロオピオメラノコルチン(POMC)遺伝子の転写を活性化し、その結果、下垂体前葉細胞からアドレノコルチコトロピンホルモン(ACTH)およびβ−エンドルフィンが放出される(Valerら、Science 213, 1394-1397(1981))。CRFの基本的役割は、身体的外傷、免疫系の侵襲、および社会的相互作用などの様々なストレス要因に対する適切な応答を生物に準備することである。CRFはまた、脳のより高次な中枢において、特に皮質領域(ここにはCRFニューロンが広範に分布している)において作用することによりCNS効果を及ぼす。CRFは、免疫系と中枢神経系と内分泌系と心血管系の間の伝達における重要な媒介物質であると考えられている(Sapolskyら、Science 238, 522-524(1987))。生理的、心理的、および免疫学的ストレス要因に対する免疫系の応答を統合する上でCRFが果たす役割は、当該技術水準において、例えばJ.E.Blalock, Physiological Reviews 69, 1(1989)およびJ.E. Morley, Life Sci.41, 527(1987)に記載されている。
【0006】
CRFアンタゴニストは、多種多様なストレスに関連した病気、気分障害、例えばうつ病、大うつ病性障害、単一エピソードうつ病、反復性うつ病、児童虐待により誘発されるうつ病、産後うつ病、情緒異常、双極性障害、および循環気質;慢性疲労症候群;摂食障害、例えば肥満、食欲不振症、および神経性過食症;全般性不安障害;パニック障害;恐怖症;強迫性障害;心的外傷後ストレス障害;痛覚、例えば線維筋痛症;頭痛;ストレスにより誘発される胃腸機能不全、例えば過敏性腸症候群(IBS)、結腸過敏症、または痙性結腸;出血ストレス;潰瘍;ストレスにより誘発される精神病エピソード;炎症疾患、例えば関節リウマチおよび骨関節炎;喘息;乾癬;アレルギー;早産;高血圧;うっ血性心不全;睡眠障害;神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、老年性痴呆症、パーキンソン病、およびハンチントン舞踏病;頭部または脊髄の外傷;虚血性神経傷害;興奮毒性神経傷害;癲癇;卒中;心理社会性小人症;化学物質依存および耽溺;薬物およびアルコールの離脱症状;ストレスにより誘発される免疫機能不全;免疫抑制およびストレスにより誘発される感染;心血管疾患または心臓に関連した疾患;受精問題;および/またはヒト免疫不全ウイルス感染の処置に効果的である。
【0007】
従って、臨床データにより、CRF受容体アンタゴニストは、CRFの過分泌を顕現する神経精神医学的疾患の処置に有用であり得る、新規な抗うつ剤および/または抗不安薬を示し得ることが示唆される。精神医学的疾患および神経学的疾患の処置のために潜在的に有用な治療剤として、CRFの効果的かつ特異的なアンタゴニストが望まれる。
【0008】
特記しない限り、明細書および特許請求の範囲を含む本出願で使用した以下の語句は、以下に示した定義を有する。明細書および添付の特許請求の範囲で使用した単数形の「a」、「an」、および「the」は、明確に特記しない限り、複数の意味も含む。
【0009】
「アゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の活性を増強する化合物を意味する。
【0010】
「アルキル」は、炭素原子数1〜12の、炭素原子および水素原子のみからなる、一価直鎖または分岐飽和炭化水素基を意味する。「低級アルキル」は、炭素原子数1〜6のアルキル基、すなわちC〜Cアルキルを意味する。アルキル基の例には、以下に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、n−ヘキシル、オクチル、ドデシルなどが挙げられる。
【0011】
「アルキレン」は、1〜6個の炭素原子の直鎖飽和二価炭化水素基または炭素原子数3〜6の分岐飽和二価炭化水素基、例えば、メチレン、エチレン、2,2−ジメチルエチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ブチレン、ペンチレンなどを意味する。
【0012】
「アルコキシ」は、式−ORで示される基を意味し、ここでRは、本明細書に定義したアルキル基である。アルコキシ基の例には、以下に限定されないが、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシなどが挙げられる。
【0013】
「アルコキシアルキル」は、式−R’−R’’で示される基を意味し、ここでR’はアルキレンであり、R’’は本明細書で定義したアルコキシである。
【0014】
「アルキルカルボニル」は、式−R’−R’’で示される基を意味し、ここでR’はオキソであり、R’’は本明細書で定義したアルキルである。
【0015】
「アルキルスルホニル」は、式−R’−R’’で示される基を意味し、ここでR’は−SO−であり、R’’は本明細書で定義したアルキルである。
【0016】
「アンタゴニスト」は、別の化合物または受容体部位の作用を消失または妨げる化合物を意味する。
【0017】
「アリール」は、単環、二環、または三環の芳香族環からなる一価環式芳香族炭化水素基を意味する。アリール基は、本明細書に定義したように場合により置換されていてもよい。アリール基の例には、以下に限定されないが、場合により置換されている、フェニル、ナフチル、フェナントリル、フルオレニル、インデニル、ペンタレニル、アズレニル、オキシジフェニル、ビフェニル、メチレンジフェニル、アミノジフェニル、ジフェニルスルフィジル、ジフェニルスルホニル、ジフェニルイソプロピリデニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフラニル、ベンゾジオキシリル、ベンゾピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサジノニル、ベンゾピペラジニル(benzopiperadinyl)、ベンゾピペラジニル(benzopiperazinyl)、ベンゾピロリジニル、ベンゾモルホリニル、メチレンジオキシフェニル、エチレンジオキシフェニル(部分的に水素化されたそれらの誘導体も含む)などが挙げられる。
【0018】
「アリールアルキル」および「アラルキル」は、同義語として使用してもよいが、これは−R基を意味し、ここでRはアルキレン基であり、Rは本明細書で定義したアリール基であり;例えば、フェニルアルキル、例えばベンジル、フェニルエチル、3−(3−クロロフェニル)−2−メチルペンチルなどが、アリールアルキルの例である。
【0019】
「シアノアルキル」は、式−R’−R’’で示される基を意味し、ここでR’は本明細書に定義したアルキレンであり、R’’はシアノまたはニトリルである。
【0020】
「シクロアルキル」は、単環または二環からなる一価飽和炭素環式基を意味する。シクロアルキルは、1個以上の置換基で場合により置換されていてもよく、ここで各置換基は、特記しない限り、独立して、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロ、ハロアルキル、アミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノである。シクロアルキル基の例には、以下に限定されないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル(部分的に不飽和なそれらの誘導体も含む)などが挙げられる。
【0021】
「シクロアルキルアルキル」は、式−R’−R’’で示される基を意味し、ここでR’はアルキレンであり、R’’は本明細書に定義したシクロアルキルである。
【0022】
「ヘテロアルキル」は、本明細書に定義したアルキル基を意味し、ここで1、2、または3個の水素原子が、−OR、−NR、および−S(O)(ここでnは、0〜2の整数である)からなる群より独立して選択された置換基により置き換えられており、ヘテロアルキル基の結合点は、炭素原子を通してであると理解され、ここでRは、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;RおよびRは、互いに独立して、水素、アシル、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり;nが0である場合には、Rは、水素、アルキル、シクロアルキル、またはシクロアルキルアルキルであり、nが1または2である場合には、Rは、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アミノ、アシルアミノ、モノアルキルアミノ、またはジアルキルアミノである。代表例には、以下に限定されないが、2−ヒドロキシエチル、3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシ−1−ヒドロキシメチルエチル、2,3−ジヒドロキシプロピル、1−ヒドロキシメチルエチル、3−ヒドロキシブチル、2,3−ジヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−1−メチルプロピル、2−アミノエチル、3−アミノプロピル、2−メチルスルホニルエチル、アミノスルホニルメチル、アミノスルホニルエチル、アミノスルホニルプロピル、メチルアミノスルホニルメチル、メチルアミノスルホニルエチル、メチルアミノスルホニルプロピルなどが挙げられる。
【0023】
「ヘテロアリール」は、N、O、またはSから選択された1、2、または3個の環ヘテロ原子を含み残りの環原子はCである、少なくとも1個の芳香族環を有する、環原子数5〜12の単環式または二環式基を意味し、ヘテロアリール基の結合点は、芳香族環上にあると理解する。ヘテロアリール環は、本明細書に定義したように場合により置換されていてもよい。ヘテロアリールの例には、以下に限定されないが、場合により置換された、イミダゾリル、オキオサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピラジニル、チエニル、ベンゾチエニル、チオフェニル、フラニル、ピラニル、ピリジル、ピロリル、ピラゾリル、ピリミジル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾチオピラニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾピラニル、インドリル、イソインドリル、トリアゾリル、トリアジニル、キノキサリニル、プリニル、キナゾリニル、キノリジニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アゼピニル、ジアゼピニル、アクリジニル(部分的に水素化されたそれらの誘導体も含む)などが挙げられる。
【0024】
「ハロ」および「ハロゲン」なる語句は、同義語として使用してもよいが、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード置換基を意味する。
【0025】
「ハロアルキル」は、1個以上の水素が同じまたは異なるハロゲンに置き換えられている、本明細書で定義したアルキルを意味する。例示的ハロアルキルには、−CHCl、−CHCF、−CHCCl、ペルフルオロアルキル(例えば−CF)などが挙げられる。
【0026】
「ヘテロシクロアミノ」は、少なくとも1個の環原子が、N、NH、またはN−アルキルであり、残りの環原子がアルキレン基を形成している、飽和環を意味する。
【0027】
「ヘテロシクリル」は、1、2、または3または4個のヘテロ原子(窒素、酸素、または硫黄から選択)を取り込んだ、1〜3個の環からなる、一価飽和基を意味する。ヘテロシクリル環は、本明細書で定義したように場合により置換されていてもよい。ヘテロシクリル基の例には、場合により置換された、ピペリジニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、アゼピニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キヌクリジニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、チアジアゾリリジニル、ベンゾチアゾリジニル、ベンゾアゾリリジニル、ジヒドロフリル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジヒドロキノリニル、ジヒドロイソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルなどが挙げられる。
【0028】
「場合により置換」は、「アリール」、「フェニル」、「ヘテロアリール」、または「ヘテロシクリル」と合わせて使用する場合、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アシルアミノ、モノ−アルキルアミノ、ジ−アルキルアミノ、ハロアルキル、ハロアルコキシ、ヘテロアルキル、−COR(ここでRは、水素、アルキル、フェニル、またはフェニルアルキルである)、−(CR’R’’)−COOR(ここでnは、0〜5の整数であり、R’およびR’’は独立して水素またはアルキルであり、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル、またはフェニルアルキルである)、または−(CR’R’’)−CONR(ここでnは、0〜5の整数であり、R’およびR’’は独立して水素またはアルキルであり、RおよびRは、互いに独立して、水素、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、フェニル、またはフェニルアルキルである)から選択された、1〜4個の置換基、好ましくは1または2個の置換基で独立して場合により置換された、アリール、フェニル、ヘテロアリール、またはヘテロシクリルを意味する。
【0029】
「脱離基」は、合成有機化学で慣用的に付随する意味を有する基、すなわち、置換反応条件下で置換可能な原子または基を意味する。脱離基の例には、以下に限定されないが、ハロゲン、アルカン−またはアリーレンスルホニルオキシ、例えばメタンスルホニルオキシ、エタンスルホニルオキシ、チオメチル、ベンゼンスルホニルオキシ、トシルオキシ、およびチエニルオキシ、ジハロホスフィノイルオキシ、場合により置換されたベンジルオキシ、イソプロピルオキシ、アシルオキシなどが挙げられる。
【0030】
「調節物質」は、標的と相互作用する分子を意味する。相互作用には、以下に限定されないが、本明細書で定義したアゴニスト、アンタゴニストなどが挙げられる。
【0031】
「場合の」または「場合により」は、その後に記載した事象または環境が起こってもよいが、起こる必要はなく、その記載には、事象または環境が起こる場合と、起こらない場合が含まれることを意味する。
【0032】
「疾患状態」は、任意の疾患、容態、症状、または適応症を意味する。
【0033】
「不活性有機溶媒」または「不活性溶媒」は、溶媒が、それに関連して記載されている反応の条件下で不活性であることを意味し、これには、例えば、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、クロロホルム、塩化メチレンすなわちジクロロメタン、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、tert−ブタノール、ジオキサン、ピリジンなどが挙げられる。特記しない限り、本発明の反応に使用した溶媒は、不活性溶媒である。
【0034】
「薬学的に許容されうる」は、一般的に安全で無毒性で生物学的にも他の点でも望ましい医薬組成物の製造に有用であることを意味し、獣医学的使用ならびにヒト医薬的使用に許容されうることを含む。
【0035】
化合物の「薬学的に許容されうる塩」は、本明細書で定義した薬学的に許容されうる、親化合物の所望の薬理活性を有する塩を意味する。このような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸を用いて形成された酸付加塩;あるいは、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ショウノウスルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヒドロキシナフトエ酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、2−ナフタレンスルホン酸、プロピオン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、トリメチル酢酸などの有機酸を用いて形成される酸付加塩;あるいは
親化合物に存在する酸性プロトンが、金属イオン、例えばアルカリ金属イオン、アルカリ土類イオン、もしくはアルミニウムイオンに置き換わっているか、または、有機もしくは無機塩基と配位している場合に形成される塩が挙げられる。許容されうる有機塩基には、ジエタノールアミン、エタノールアミン、N−メチルグルカミン、トリエタノールアミン、トロメタミンなどが挙げられる。許容されうる無機塩基には、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、および水酸化ナトリウムが挙げられる。
【0036】
好ましい薬学的に許容されうる塩は、酢酸、塩酸、硫酸、メタンスルホン酸、マレイン酸、リン酸、酒石酸、クエン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、およびマグネシウムから形成される塩である。
【0037】
薬学的に許容されうる塩への全ての言及には、本明細書で定義した、同じ酸付加塩の溶媒付加形(溶媒和物)または結晶形(多形)が含まれることを理解すべきである。
【0038】
「プロ−ドラッグ」および「プロドラッグ」なる語句は、本明細書において同義語として使用してもよいが、これは、このようなプロドラッグが哺乳動物被験体に投与された場合に、インビボにおいて、式Iで示される活性な親薬物を放出する任意の化合物を意味する。式Iの化合物のプロドラッグは、修飾がインビボで切断されると親化合物を放出できるように、式Iの化合物に存在する1個以上の官能基を修飾することにより製造される。プロドラッグには、式Iの化合物のヒドロキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基が任意の基に結合し、インビボで切断されて遊離ヒドロキシル、アミノ、またはスルフヒドリル基をそれぞれ生成することのできる、式Iの化合物が挙げられる。プロドラッグの例には、以下に限定されないが、式Iの化合物のヒドロキシ官能基のエステル(例えば酢酸エステル、ギ酸エステル、安息香酸エステル誘導体)、カルバメート(例えば、N,N−ジメチルアミノカルボニル)、アミノ官能基のN−アシル誘導体(例えばN−アセチル)、N−マンニッヒ塩基、シッフ塩基、およびエナミノン、式Iの化合物のケトンおよびアルデヒド官能基のオキシム、アセタール、ケタールおよびエノールエステルなどが挙げられ、Bundegaard, H.、「プロドラッグの設計(Design of Prodrug)」、p1-92、Elsevier社、ニューヨーク−オックスフォード(1985)などを参照されたい。
【0039】
「保護基(protective group)」または「保護基(protecting group)」は、多官能基化合物中の1個の反応性部位を選択的に遮断する基を意味し、それにより、化学反応を、合成化学で慣用的に付随する意味において、保護されていない別の反応性部位において選択的に実施することができる。本発明の一部の工程は、反応物に存在する反応性窒素および/または酸素原子を遮断する保護基に依拠する。例えば、「アミノ保護基」および「窒素保護基」なる語句は、本明細書において同義語として使用し、合成手順中の望ましくない反応に対して窒素原子を保護する目的の有機基を意味する。例示的な窒素保護基には、以下に限定されないが、トリフルオロアセチル、アセトアミド、ベンジル(Bz)、ベンジルオキシカルボニル(カルボベンジルオキシ、CBZ)、p−メトキシベンジルオキシカルボニル、p−ニトロベンジルオキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(BOC)などが挙げられる。当業者は、除去し易さや以下の反応に対する耐容能力の観点から、基を選択する方法を知っているだろう。
【0040】
「溶媒和物」は、化学量論的または非化学量論的な量の溶媒を含む、溶媒付加形態を意味する。化合物の中には、結晶性固体状態中の一定のモル比の溶媒分子を捕捉する傾向があり、それにより、溶媒和物を形成する。溶媒が水である場合、形成される溶媒和物は水和物であり、溶媒がアルコールである場合には、形成される溶媒和物はアルコレートである。水和物は、1個以上の水分子と、物質の1つとの組合せにより形成され、ここで水はその分子状態をHOとして保持しており、このような組合せは、1種類以上の水和物を形成できる。
【0041】
「被験体」は、哺乳動物および非哺乳動物を意味する。哺乳動物は、以下に限定されないが、ヒト;非ヒト霊長類、例えばチンパンジーおよび他の類人猿およびサル種;家畜、例えばウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、およびブタ;ペット、例えばウサギ、イヌ、およびネコ;実験動物、例えば、ラット、マウス、およびモルモットなどのげっ歯類などを含む、哺乳動物綱の任意のメンバーを意味する。非哺乳動物の例には、以下に限定されないが、鳥類などが挙げられる。「被験体」なる語句は、特定の年齢または性別を指定しない。
【0042】
「治療有効量」は、疾患状態を処置するために被験体に投与した場合に、疾患状態に対するこのような処置を奏功するのに十分である化合物の量を意味する。「治療有効量」は、化合物、処置する疾患状態、処置する疾患の重症度、被験体の年齢および相対的健康状態、投与経路および投与形態、担当医または担当獣医の判断、並びに他の因子に応じて変更する。
【0043】
変数に関して言及した場合の「前記に定義したもの」および「本明細書で定義したもの」なる語句は、変数の広範な定義、並びに、好ましい、より好ましい、および最も好ましい定義(存在する場合)を参照することにより取り込む。
【0044】
疾患状態を「処置する」または疾患状態の「処置」には、以下が含まれる:
(i)疾患状態を予防すること、すなわち、疾患状態に暴露されているかまたは素因があってもよいが、依然として疾患状態の症状は経験または呈していない被験体において、疾患状態の臨床症状が発症しないようにすること
(ii)疾患状態を阻止すること、すなわち、疾患状態またはその臨床症状の発症を抑制すること、または
(iii)疾患状態を寛解すること、すなわち、疾患状態またはその臨床症状の一時的または永久的後退を引き起こすこと。
【0045】
化学反応に言及した場合の「処理する」、「接触する」、および「反応する」なる語句は、適切な条件下で2種類以上の試薬を添加または混合して、指定および/または所望の生成物を生成させることを意味する。指定および/または所望の生成物を生成する反応は、必ずしも、最初に加えた2種類の試薬の組合せから直接生じる必要はなく、すなわち、指定および/または所望の生成物の形成を最終的にもたらす1種類以上の中間体が混合物中に生成されていてもよい。
【0046】
「気分障害」または「感情障害」は、広範な気分の撹乱が主な徴候である、精神病理学的容態を意味する。これらの語句は、不安および関連したノイローゼ、特にうつ形態のものを包含する。「気分障害」または「感情障害」の例には、以下に限定されないが、うつ病、大うつ病性障害、単一エピソードうつ病、反復性うつ病、児童虐待により誘発されるうつ病、産後うつ病、情緒異常、単極性障害、不眠および摂食障害の徴候を呈する双極性障害、気分変調性障害、併発型うつ病、病的および臨床的うつ病、躁病、並びに循環気質が挙げられる。
【0047】
一般に、本出願で使用した命名法は、IUPAC体系的命名法の作成用のBeilstein Instituteコンピューター化システムである、AUTONOM(登録商標)v.4.0に基づいている。簡便にするために、本明細書に記載した代表的なピリミジン化合物の位置のIUPACナンバリングを、以下の式により示す。
【0048】
【化12】

【0049】
本明細書に示した化学構造は、ISIS(登録商標)ver2.2を使用して準備した。本明細書の構造中の炭素、酸素、または窒素原子上に出現する任意の空いた結合価は水素の存在を示す。
【0050】
本明細書で同定した全ての特許文献および公開公報を、その全体を参照することにより本明細書に援用する。
【0051】
本発明は、式(I)
【0052】
【化13】

【0053】
〔式中、
Xは、ヘテロアリール(アルキル、ハロ、またはアリールにより場合により置換されている)であり;
Yは、−NRであり、ここでRは、水素またはアルキルであり、Rは、アリールもしくはヘテロアリール(これらは、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、アルキルカルボニル、またはアルキルスルホニルにより場合により置換されている)であり;
Zは、水素またはアルキルであり;
は、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、アルキルカルボニル、またはアルキルスルホニルであり、ここでRおよびRは、各々独立して、水素またはアルキルである〕
で示される化合物またはその薬学的に許容されうる塩を提供する。
【0054】
特定の実施形態において、Rは、水素、アルキル、またはハロであり、好ましくは水素、メチル、またはクロロである。
【0055】
例示であって限定するものではないが、Xは、特定の実施形態において、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピリジル、ピリダジル、およびピリミジルから選択された、場合により置換されたヘテロアリールを含む。多くの実施形態において、Xは、場合により置換されたピラゾリル、場合により置換されたイミダゾリル、または場合により置換されたピロリルであってもよい。多くの実施形態において、Zは、アルキルであってもよい。特定の実施形態において、Rは、水素であってもよい。
【0056】
特定の実施形態において、Xは、場合により置換された、イミダゾール−1−イル、ピラゾール−1−イル、例えば3−メチルピラゾール−1−イル、3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、4−クロロ−3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、3−プロピルピラゾール−1−イル、または3−ブチル−4−プロピルピラゾール−1−イルであってもよい。他の実施形態において、Xは、場合により置換された、イミダゾール−1−イル、例えば2−メチルイミダゾール−1−イル、4−メチルイミダゾール−1−イル、または4−フェニルイミダゾール−1−イルであってもよい。
【0057】
特定の実施形態において、Rは、場合により置換されたフェニル、例えば2,4,6−トリクロロフェニルであってもよい。他の実施形態において、Rは、場合により置換されたヘテロアリール、例えばピリジニル、ピリミジニル、またはチエニルであってもよい。Rは、多くの実施形態において、水素、アルキル、またはハロであってもよい。
【0058】
特定の実施形態において、主題化合物は、より特定すると、式(II)
【0059】
【化14】

【0060】
(式中、
mは、0〜4であり;
Xは、場合により置換されたピラゾリルまたは場合により置換されたイミダゾリルであり;
Zは、アルキルであり;
各Rは、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、アルキルカルボニル、またはアルキルスルホニルであり;
、R、R、およびRは、本明細書で定義した通りである)
で示されていてもよい。
【0061】
式(II)のいくつかの実施形態において、Xは、3−メチルピラゾール−1−イル、3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、4−クロロ−3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、3−プロピルピラゾール−1−イル、または3−ブチル−4−プロピルピラゾール−1−イルであってもよい。式(II)の他の実施形態において、Xは、2−メチルイミダゾール−1−イル、4−メチルイミダゾール−1−イル、または4−フェニルイミダゾール−1−イルであってもよい。
【0062】
特定の実施形態において、式(II)の化合物は、より特定すると、式(III)
【0063】
【化15】

【0064】
(式中、
mは、0〜4であり;
nは、0〜3であり;
各Rは、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、アルキルカルボニル、またはアルキルスルホニルであり;
Zは、アルキルであり;
各Rは、独立して、アルキル、場合により置換されたフェニル、またはハロであり;
、R、R、およびRは、本明細書に定義した通りである)
で示されていてもよい。
【0065】
式(III)の特定の実施形態において、nは1または2であってもよい。いくつかの実施形態において、mは3であってもよく、Rはハロであってもよく、Rは、水素、アルキル、またはハロであってもよい。特定の実施形態において、mは1であってもよく、Rは、メチルまたはプロピルであってもよい。さらに他の実施形態において、nは2であり、Rの一方はプロピルであり、他方のRはブチルである。
【0066】
特定の実施形態において、式(II)の化合物は、より特定すると、式(IV)
【0067】
【化16】

【0068】
(式中、
mは、0〜4であり;
nは、0〜3であり;
各Rは、独立して、水素、アルキル、アルコキシ、ハロアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、アルキルカルボニル、またはアルキルスルホニルであり;
Zは、アルキルであり;
各Rは、独立して、アルキル、場合により置換されたフェニル、またはハロであり;
、R、R、およびRは、本明細書に定義した通りである)
で示されていてもよい。
【0069】
式(IV)の特定の実施形態において、nは1であり、Rはメチルまたはフェニルであり、Rは、水素、アルキル、またはハロであってもよい。特定の実施形態において、mは3であり、Rはハロである。
【0070】
本発明の範囲は、存在する可能性のある様々な異性体だけではなく、形成される可能性のある様々な異性体混合物をも包含する。さらに、本発明の範囲はまた、式Iの化合物の溶媒和物および塩も包含する。
【0071】
、R、R、R、R、R、およびRのいずれかがアルキルであるか、または、さもなくばアルキル残基を含む実施形態において、前記アルキルは、低級アルキル、例えばC〜Cアルキル、より特定するとC〜Cアルキルであってもよい。
【0072】
本発明に記載の代表的な化合物を、表1に示す。特記しない限り、表1の化合物は、下記した実験手順に従って塩酸塩として単離した。
【0073】
【表1】







【0074】
本発明の別の態様は、少なくとも1種類の式(I)の化合物の治療有効量を、薬学的に許容されうる担体と一緒に含む、組成物を提供する。
【0075】
本発明のさらに別の態様は、CRF受容体アンタゴニストでの処置により寛解される疾患状態を有する被験体を処置するための医薬の製造における、本発明の化合物の使用を提供する。前記疾患状態には、例えば、恐怖症、ストレスに関連した病気、気分障害、摂食障害、全般性不安障害、ストレスにより誘発される胃腸機能不全、神経変性疾患、および神経精神医学的疾患が挙げられ得る。
【0076】
本発明の別の態様は、式Iの化合物の製造方法を提供する。
【0077】
本発明の化合物は、以下に示し記載した例示的な合成反応スキームに示した様々な方法により製造できる。
【0078】
特定の実施形態において、本発明は、式II
【0079】
【化17】

【0080】
で示される化合物の製造方法であって、
a)式a
【0081】
【化18】

【0082】
で示される化合物をハロゲン化して、式b
【0083】
【化19】

【0084】
で示される化合物を得る工程、
b)式bの化合物を式c
【0085】
【化20】

【0086】
で示される化合物と反応させて、式d
【0087】
【化21】

【0088】
で示される化合物を得る工程、
c)式dの化合物を、式e
【0089】
【化22】

【0090】
で示される化合物と反応させて、式IIの化合物を得る工程を含む方法(ここでR、R、R、X、Z、およびmは、請求項15に定義した通りであり、Lはハロゲンである)を提供する。この方法はさらに、スキームAを用いて前記に説明されているだろう。
【0091】
これらの化合物の製造に使用した出発材料および試薬は、一般に、アルドリッチ・ケミカル社などの業者から入手できるか、または、Fieser and Fieser's Reagents for Organic Synthesis;Wiley & Sons社:ニューヨーク、1991、Vol 1-15;Rodd's Chemistry of Carbon Compounds、Elsevier Science Publishers社、1989、Vol 1-5および補刊;並びにOrganic Reactions、Wiley & Sons:ニューヨーク、1991、Vol 1-40などの参考文献に示された手順に従って、当業者には既知の方法により製造される。以下の合成反応スキームは単なるいくつかの方法の実例であり、これらの方法により本発明の化合物を合成でき、これらの合成反応スキームに様々な改変を行なうことができ、本出願に含まれる開示を参照すれば当業者には示唆されるであろう。
【0092】
合成反応スキームの出発材料および中間体は、ろ過、蒸留、結晶化、クロマトグラフィーなどを含むがこれに限定されない慣用の技術を使用して、所望により単離し精製できる。このような材料は、物理定数およびスペクトルデータなどの慣用の手段を使用して特徴づけることができる。
【0093】
特記しない限り、本明細書に記載した反応は、好ましくは、不活性雰囲気下で、大気圧で、約−78℃から約150℃、より好ましくは約0℃から約125℃の範囲の温度で、最も好ましく簡便にはほぼ室温(または周囲温度)で、例えば約20℃で実施する。
【0094】
以下のスキームAは、特定の式(II)の化合物の製造に使用できる1つの合成手順を示し、ここでLは、ハロゲンなどの脱離基であり、各場合において同じでも異なっていてもよく、X、m、R、およびRは、本明細書に定義した通りである。
【0095】
【化23】

【0096】
スキームAの工程1において、ジヒドロキシピリミジンaのハロゲン化により、ジハロピリミジンbを得る。様々なジヒドロキシピリミジンaが、商業的に入手可能であるか、または、周知の手順により容易に製造され、この工程に使用できる。この工程は、POCl、POBr、または同様な試薬を使用して実施してもよい。アミン塩基が、反応中に存在する場合がある。
【0097】
工程2において、アニリンcをジハロピリミジンbと反応させて第一のアミノ化反応を起こし、アミノピリミジンdを得る。数多くのアニリンcが、商業的に入手可能であるか、または、当該技術水準で周知の技術により容易に製造され、この工程に使用できる。工程2のアルキル化は、NaHなどの強力な塩基の存在下で、極性非プロトン性溶媒条件下で加熱しながら行なってもよい。
【0098】
工程3において、アミノピリミジンdを第二級アミンeと反応させて第二のアミノ化反応を起こし、本発明に係る式(II)のピリジン化合物を得る。この反応は、極性非プロトン性溶媒条件下で酸の存在下で行なってもよい。第二級アミンeは、例えば、場合により置換されていてもよい、ヘテロアリールアミン、例えばピラゾール、イミダゾール、ピロール、または類似物などを含んでいてもよい。
【0099】
スキームAの手順の多くの変形が可能であり、当業者には示唆されるであろう。例えば、工程2において、アニリンcを、アミノピリジン、アミノピリミジン、アミノチエン、または他のヘテロアリールアミンと置き換えてもよい。
【0100】
式(II)の化合物の製造の具体的な詳細は、以下の実施例の章に記載している。
【0101】
本発明の化合物は、多種多様なストレスに関連した病気、気分障害、例えばうつ病、大うつ病性障害、単一エピソードうつ病、反復性うつ病、児童虐待により誘発されるうつ病、産後うつ病、情緒異常、双極性障害、および循環気質;慢性疲労症候群;摂食障害、例えば肥満、食欲不振症、および神経性過食症;全般性不安障害;パニック障害;恐怖症;強迫性障害;心的外傷後ストレス障害;痛覚、例えば線維筋痛症;頭痛;ストレスにより誘発される胃腸機能不全、例えば過敏性腸症候群(IBS)、結腸過敏症、または痙性結腸;出血ストレス;潰瘍;ストレスにより誘発される精神病エピソード;炎症疾患、例えば関節リウマチおよび骨関節炎;喘息;乾癬;アレルギー;早産;高血圧;うっ血性心不全;睡眠障害;神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、老年性痴呆症、パーキンソン病、およびハンチントン舞踏病;頭部または脊髄の外傷;虚血性神経傷害;興奮毒性神経傷害;癲癇;卒中;心理社会性小人症;化学物質依存および耽溺;薬物およびアルコールの離脱症状;ストレスにより誘発される免疫機能不全;免疫抑制およびストレスにより誘発される感染;心血管疾患または心臓に関連した疾患;受精問題;および/またはヒト免疫不全ウイルス感染の処置に使用できる。従って、臨床データにより、CRF受容体アンタゴニストは、CRFの過分泌を顕現する神経精神医学的疾患の処置に有用であり得る、新規な抗うつ剤および/または抗不安薬を示し得ることが示唆される。
【0102】
本発明は、少なくとも1種類の本発明の化合物、または個々の異性体、異性体のラセミもしくは非ラセミ混合物、またはその薬学的に許容されうる塩もしくは溶媒和物を、少なくとも1種類の薬学的に許容されうる担体と、および所望により他の治療成分および/または予防成分と一緒に含む、医薬組成物を含む。
【0103】
一般に、本発明の化合物は、類似の有用性を与える薬剤の任意の許容される投与様式により治療有効量で投与する。適切な用量の範囲は、典型的には、処置する疾患の重症度、被験者の年齢および相対的健康状態、使用する化合物の効力、投与経路および投与形態、投与が目的とする適応症、担当医師の選択と経験などの数多くの因子に応じて、1〜500mg/日、好ましくは1〜100mg/日、最も好ましくは1〜30mg/日である。このような疾患の処置に当たる当業者は、過度の実験を行なうことなく、個人の知識および本出願の開示を頼りにして、特定の疾患に対する本発明の化合物の治療有効量を確定することができる。
【0104】
本発明の化合物は、医薬製剤として投与してもよく、これには経口(頬側および舌下を含む)、経直腸、経鼻、局所、経肺、経膣、もしくは非経口(筋肉内、動脈内、くも膜下腔内、皮下、および静脈内を含む)投与に適した医薬製剤、または吸入もしくは通気による投与に適した形態の医薬製剤が含まれる。好ましい投与様式は、一般に、罹患度に応じて調整できる簡便な1日量投与計画を使用した経口である。
【0105】
本発明の化合物は、1種類以上の慣用の補助剤、担体、または希釈剤と一緒に、医薬組成物または単位用量の形態に入れてもよい。医薬組成物および単位用量形態は、追加の活性化合物または活性本体を含むまたは含まない、慣用の比率の慣用の成分から構成されることができ、単位用量形態は、採用した所望の1日量範囲に相応した任意の適切な有効量の活性成分を含むことができる。医薬組成物は、固体として、例えば錠剤もしくは充填カプセル剤、半固体、散剤、持続放出製剤として、または液体として、例えば液剤、懸濁剤、乳剤、エリキシル剤、もしくは経口で使用する充填カプセル剤として;あるいは、直腸または膣投与用の坐剤形態で;あるいは、非経口で使用する無菌注射液形態で使用してもよい。従って、約1mg/錠の活性成分、またはより広義には、約0.01〜約100mg/錠を含む製剤が、適切な代表的な単位用量形態である。
【0106】
本発明の化合物は、多種多様な経口投与用量形態で製剤化してもよい。医薬組成物および投与用量形態は、本発明の化合物またはその薬学的に許容されうる塩を活性構成成分として含んでもよい。薬学的に許容されうる担体は、固体でも液体でもよい。固体形態調製物には、散剤、錠剤、丸剤、カプセル剤、カシェ剤、坐剤、および分散性顆粒剤が挙げられる。固体担体は、希釈剤、芳香剤、可溶化剤、滑沢剤、懸濁剤、結合剤、保存剤、錠剤崩壊剤、またはカプセル化材料として作用することもできる1種類以上の物質であってもよい。散剤では、担体は、一般に、細かく粉砕した固体であり、これは、細かく粉砕した活性構成成分との混合物である。錠剤では、活性構成成分は、一般に、必要な結合能を有する担体と適切な比率で混合されており、所望の形状およびサイズに圧縮されている。散剤および錠剤は、好ましくは、約1〜約70%の活性化合物を含む。適切な担体には、以下に限定されないが、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、糖、ラクトース、ペクチン、デキストリン、デンプン、ゼラチン、トラガカント、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、低融点ワックス、ココアバターなどが挙げられる。「調製物」なる語句は、活性構成成分が、担体を含むかまたは含まずに、担体(これは活性構成成分に接している)により囲まれているようなカプセル剤を提供する、担体としてカプセル化材料を有する活性化合物の製剤を含むものとする。同様に、カシェ剤およびロゼンジ剤も含まれる。錠剤、散剤、カプセル剤、丸剤、カシェ剤、およびロゼンジ剤もまた、経口投与に適した固体形態であってもよい。
【0107】
経口投与に適した他の形態には、乳剤、シロップ剤、エリキシル剤、水性液剤、水性懸濁剤を含む液体形態調製物、または、使用直前に液体形態調製物へと変換されることを意図した固体形態調製物が挙げられる。乳剤は、溶液中、例えばプロピレングリコール水溶液中で調製されても、または、乳化剤、例えば、レシチン、モノオレイン酸ソルビタン、またはアカシアなどを含んでもよい。水性液剤は、活性構成成分を水中に溶解し、適切な着色剤、芳香剤、安定剤、および増粘剤を加えることにより調製できる。水性懸濁剤は、細かく粉砕した活性構成成分を、水中に、粘性材料(例えば天然もしくは合成ゴム、レジン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、または他の周知の懸濁化剤)と共に分散させることにより製造できる。固体形態調製物には、液剤、懸濁剤、および乳剤が挙げられ、活性構成成分の他に、着色剤、芳香剤、安定剤、緩衝剤、人工および天然甘味剤、分散剤、増粘剤、可溶化剤などを含んでいてもよい。
【0108】
本発明の化合物は、非経口投与用(例えば注射、例えばボーラス注射または連続点滴による)に製剤化されていてもよく、単位用量形態で、アンプル、予め充填されたシリンジ、小容量点滴に、または、保存剤の添加された複数回用量容器中に存在していてもよい。組成物は、油性もしくは水性ビヒクル中の、懸濁剤、液剤、または乳剤、例えば水性ポリエチレングリコール中の液剤などの形態をとってもよい。油性もしくは非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油(例えばオリーブオイル)、および注射可能な有機エステル(例えばオレイン酸エチル)が挙げられ、保存剤、湿潤剤、乳化剤または懸濁化剤、安定剤および/または分散剤などの製剤化剤を含んでいてもよい。または、活性成分は、無菌固体の無菌単離によるか、または例えば無菌の発熱物質非含有水などの適切なビヒクルを用いて使用前に復元するための溶液の凍結乾燥により得られた粉末形態であってもよい。
【0109】
本発明の化合物は、軟膏剤、クリーム剤、もしくはローション剤として、または経皮パッチ剤として表皮に局所投与するために製剤化されていてもよい。軟膏剤およびクリーム剤は、例えば、水性または油性基剤を用いて、適切な増粘剤および/またはゲル化剤を加えて製剤化することができる。ローション剤は、水性または油性基剤を用いて製剤化することができ、一般に、1種類以上の乳化剤、安定剤、分散剤、懸濁化剤、増粘剤、または着色剤も含む。口腔での局所投与に適した製剤には、芳香基剤、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカント中に活性剤を含むロゼンジ剤;ゼラチンおよびグリセリンまたはスクロースおよびアカシアなどの不活性基剤中に活性成分を含む芳香錠剤;および適切な液体担体中に活性成分を含むうがい薬が挙げられる。
【0110】
本発明の化合物は、坐剤として投与するために製剤化してもよい。脂肪酸グリセリドまたはココアバターの混合物などの低融点ワックスを初めに融解させ、活性構成成分を例えば攪拌により均一に分散させる。その後、溶かされた均一な混合物を、都合のよいサイズの型に注ぎ、冷却させ、固形化する。
【0111】
本発明の化合物は、膣投与用に製剤化してもよい。活性成分の他にこのような担体を含む、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡状物、またはスプレーは、当該技術水準において適切であることが知られている。
【0112】
主題の化合物は、鼻腔投与用に製剤化してもよい。液剤または懸濁剤は、直接、鼻腔に、慣用の手段により、例えばドロッパー、ピペット、またはスプレーにより塗布する。製剤は、単回用量形態で提供しても複数用量形態で提供されてもよい。後者のドロッパーまたはピペットの場合、これは、適切な予め決めた容量の液剤または懸濁剤を患者に投与することにより達成することができる。スプレーの場合、これは、定量式霧吹きスプレーポンプを用いて達成することができる。
【0113】
本発明の化合物は、特に気道へのエアゾール投与用(鼻腔内投与を含む)に製剤化してもよい。前記化合物は、一般に、小さな粒子サイズ、例えば5ミクロン以下である。このような粒子サイズは、例えば微細化などの当該技術水準において既知の手段により得ることができる。活性成分は、クロロフルオロカーボン(CFC)、例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、もしくはジクロロテトラフルオロエタン、または二酸化炭素または他の適切なガスなどの適切な噴射剤と共に加圧パックに提供される。エアゾールは、簡便には、レシチンなどの界面活性剤も含んでいてもよい。薬物の用量は、定量弁により制御することができる。または、活性成分は、乾燥粉末の形態で、例えば、ラクトース、デンプン、デンプン誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびポリビニルピロリドン(PVP)などの適切な粉末基剤中の前記化合物の粉末混合物の形態で提供されてもよい。粉末担体は、鼻腔でゲルを形成する。粉末組成物は、単位用量形態で、例えばゼラチンのカプセルもしくはカートリッジまたはブリスターパック中に存在していてもよく、これから粉末を吸入器を用いて投与することができる。
【0114】
所望であれば、製剤を、活性成分の持続または制御放出投与に適応した腸溶性コーティングを用いて製造できる。例えば、本発明の化合物を、経皮または皮下薬物送達装置で製剤化できる。これらの送達システムは、前記化合物の持続放出が必要であり、処置投与計画に対する患者のコンプライアンスが重要である場合には有利である。経皮送達システムの化合物は、皮膚粘着性固体支持体に付着していることが多い。目的の化合物はまた、浸透増強剤、例えばAzon(1−ドデシルアザシクロヘプタン−2−オン)と配合することができる。持続放出送達システムは、手術または注射により皮下層に皮下挿入される。皮下インプラントは、前記化合物を、液体可溶性膜、例えばシリコンラバー、または生分解性ポリマー、例えばポリ乳酸中に被包している。
【0115】
医薬調製物は、好ましくは、単位用量形態である。このような形態では、調製物は、適切な量の活性構成成分を含む、単位用量へとさらに分割されている。単位用量形態は、パッケージングされた調製物であってもよく、前記パッケージングは、バイアルまたはアンプルに、個別の量の調製物(例えば包まれた錠剤、カプセル剤、および散剤)を含んでいる。また、単位用量形態は、カプセル剤、錠剤、カシェ剤、またはロゼンジ剤自体であってもよく、または、パッケージング形態の任意の適切な数のこれらの中のいずれかであってもよい。
【0116】
他の適切な医薬担体およびその製剤は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy 1995、E.W.Martin著、Mack Publishing Company社、第19版、ペンシルバニア州イーストンに記載されている。本発明の化合物を含む代表的な医薬製剤を、実施例6〜12に記載する。
【0117】
実施例
以下の調製物および実施例を、当業者が、本発明をより明瞭に理解し実施できるようにするために記載する。これらは本発明の範囲を限定するものと捉えるべきではなく、単にその実例および代表例である。
【0118】
実施例1
[2−メチル−6−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−アミン
【0119】
【化24】

【0120】
化合物[2−メチル−6−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−アミンを、本実施例において、スキームBの手順に従って製造した。
【0121】
【化25】

【0122】
スキームB
工程1:
4,6−ジクロロ−2−メチル−ピリミジン
【0123】
【化26】

【0124】
2−メチル−ピリミジン−4,6−ジオール(10.0g、79.4mmol)のオキシ塩化リン(75mL)攪拌懸濁液に、N,N−ジエチルアニリン(5mL)を加えた。この混合物を、還流下で2時間加熱し、その後、室温まで冷却し、その後、残りのオキシ塩化リンを減圧下で除去した。残渣を、注意深く冷水で希釈し、150mLのジエチルエーテルで3回抽出し、合わせたエーテル層を炭酸カリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で除去して油状物を得、これを減圧下で固形化し、明黄色の固体である4.68g(36%)の4,6−ジクロロ−2−メチル−ピリミジン;ms(M+H)164を得た。
【0125】
工程2:
(6−クロロ−2−メチル−ピリミジン−4−イル)−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−アミン
【0126】
【化27】

【0127】
窒素下で、4,6−ジクロロ−2−メチル−ピリミジン(4.68g、28.7mmol)の70mLの乾燥THF溶液に、室温で、水素化ナトリウム(2.29g、57.4mmol)を加えた。懸濁液を窒素下で室温で15分間攪拌し、その後、2,4,6−トリクロロ−フェニルアミン(4.68g、28.8mmol)を少しずつ加えた。得られた混合物を窒素下で3時間還流し、その後冷却し、水(300mL)の添加によりクエンチし、100mLの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を炭酸カリウムで乾燥し、その後、減圧下で蒸発乾固し、固体を得、これをジエチルエーテル−ヘキサンから再結晶し、6.75g(73%)の(6−クロロ−2−メチル−ピリミジン−4−イル)−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−アミン;ms(M+H)324を得た。
【0128】
工程3:
[2−メチル−6−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−アミン
【0129】
【化28】

【0130】
(6−クロロ−2−メチル−ピリミジン−4−イル)−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−アミン(0.5g、1.5mmol)、3−メチルピラゾール(0.15g、1.86mmol)、および2mLのdiglyme(ジエチレングリコールジメチルエーテル)を、反応バイアルに加えた。反応バイアルに封をし、約180℃〜190℃まで2時間40分間加熱した。バイアルを冷却し、内容物を、50mLの水の添加によりクエンチし、その後、これを50mLの酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機層を食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で蒸発し、固体を得、これをジエチルエーテル−ヘキサンから再結晶し、116mg(36%)の[2−メチル−6−(3−メチル−ピラゾール−1−イル)−ピリミジン−4−イル]−(2,4,6−トリクロロ−フェニル)−アミン:融点245〜247℃;ms(M+H)370を得た。
【0131】
前記の手順と工程1の適切なジヒドロキシピリミジン、工程2のアニリン、および工程3のヘテロアリールアミンを使用して、表1に示したいくつかの追加の化合物を得た。
【0132】
実施例2
製剤
様々な経路により送達する医薬調製物を、以下の表に示したように製剤化する。表に使用した「活性成分」または「活性化合物」は、1種類以上の式Iの化合物を意味した。
【0133】
【表2】

【0134】
成分を混合し、各々約100mgを含むカプセルに分配し;1個のカプセルは、適切な1日量を含んでいた。
【0135】
【表3】

【0136】
成分を合わせ、メタノールなどの溶媒を使用して造粒した。その後、製剤を乾燥し、適切な打錠機を用いて錠剤(約20mgの活性化合物を含む)へと成形した。
【0137】
【表4】

【0138】
成分を混合して、経口投与用の懸濁液を形成した。
【0139】
【表5】

【0140】
活性成分を、注射用水の一部に溶解した。その後、十分量の塩化ナトリウムを攪拌しながら加え、溶液を等張とした。前記溶液を、残りの注射用水で重量を増し、0.2ミクロンのメンブランフィルターを通してろ過し、無菌条件下でパッケージングした。
【0141】
【表6】

【0142】
成分を一緒に融解し、スチームバス上で混合し、全量2.5gを含む型へと注いだ。
【0143】
【表7】

【0144】
水を除く全ての成分を合わせ、攪拌しながら約60℃まで加熱した。その後、約60℃の十分量の水を激しく攪拌しながら加え、成分を乳化させ、その後、水を適量加えて約100gとした。
【0145】
鼻腔スプレー製剤
約0.025〜0.5%の活性化合物を含むいくつかの水性懸濁液を、鼻腔スプレー製剤として製造した。前記製剤は、場合により、不活性成分、例えば微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストロースなどを含んだ。塩酸を加えてpHを調整してもよかった。鼻腔スプレー製剤は、1回の作動で典型的には約50〜100μlの製剤を送達する鼻腔スプレー定量式ポンプにより送達してもよかった。典型的な投与スケジュールは、4〜12時間ごとに2〜4回のスプレーであった。
【0146】
実施例3
細胞内cAMP刺激アッセイ
ヒトY−79網膜芽腫細胞を、15%FBSを含むRPMI1640培地中で増殖させた。cAMP蓄積の測定は、NENアデニリルシクラーゼフラッシュプレートキット(SMP004)を使用することにより実施した。細胞を培養培地から分離し、PBS(150×g、8分間)で2回洗浄し、刺激緩衝液(キットに提供されている)中に再懸濁し(2×10細胞/ml)、その後、96ウェルフラッシュプレートに加えた(50,000個の細胞/ウェル)。様々な濃度の試験化合物を、細胞と共に20分間インキュベートし、その後、hCRF(30nM)を加えた。全アッセイ容量は100μlであった。アッセイは、hCRFの添加の20分後に、検出緩衝液および[125I]cAMPの添加により終結させた。2時間後、室温で混合物を吸引し、結合放射能を、パッカードトップカウント(Packard TopCount)を用いて測定した。hCRF刺激によるcAMPの蓄積を阻害する試験化合物の効力(IC50値)を、相関カーブフィッティング手順を用いる非線形回帰分析により決定した。
【0147】
実施例4
CRF1受容体結合アッセイ
ヒトIMR−32神経芽種細胞を、10%熱失活FBS、1mMピルビン酸ナトリウム、および0.1mM非必須アミノ酸を含む、MEM培地中で、80%の集密度となるまで増殖させた。細胞膜を、DieterichおよびDeSouza(1996)の方法に従って調製した。細胞(〜5×10)を、10容量の洗浄緩衝液(5mMトリスHCl、10mM MgCl、2mM EGTA、pH7.4、室温)に再懸濁し、ポリトロン(Polytron)を用いてホモジナイズし、その後、45,000Gで20分間4℃で遠心分離した。膜ペレットを、洗浄緩衝液で2回洗浄し(45,000Gで20分間4℃で)、その後、再懸濁した(50mMトリスHCl、10mM MgCl、2mM EGTA、室温でpH7.4)。タンパク質濃度を、標準物質としてピアス試薬およびBSAを使用して決定した。1〜1.5mLのアリコートを結合アッセイまで−80℃で保存した。
【0148】
競合結合アッセイを、アッセイ緩衝液(50mMトリス−HCl、10mM MgCl、2mM EGTA、0.2%BSA、0.1mMバシトラシン、および100kIU/mLのアプロチニン、pH7.2、室温)、0.05nMの[125I]Tyr−ヒツジCRF(Du Pont New England Nuclear社)、50μgの膜タンパク質、および様々な濃度の試験化合物とを含む、最終容量250μl中で実施した。非特異的結合を、1μMのhCRFを用いて決定した。結合反応は、25℃で2時間のインキュベート後に、パッカード・ハーベスター(Packard Harvester)(Filtermate196)を使用して96ウェルGF/Cフィルタープレートを通してろ過することにより終結させた。96ウェルフィルタープレートを、0.3%のポリエチレンイミンで前処理し、洗浄緩衝液(50mMのトリスHCl、10mM MgCl、2mM EGTA、0.2%BSA、pH7.2、4℃)を用いて予め洗浄した。非結合放射能を、洗浄緩衝液を用いて4回迅速に洗浄(0.8ml/ウェル)することにより除去した。放射能は、パッカードトップカウントを使用して定量した。データは、非線形相関カーブフィッティングを使用して解析し、IC50およびヒル勾配値を得た。PKi値は、pIC50値(IC50のlog)から得た。
【0149】
本発明の化合物は、受容体結合アッセイおよび機能的アッセイにおいて活性であった。代表的な活性(pK)を表2に示した。
【0150】
【表8】

【0151】
本発明は、その特定の実施形態を参照して記載したが、当業者は、様々な変更を行なってもよく、本発明の真の精神および範囲から逸脱することなく等価物で置き換えてもよいことを理解すべきである。さらに、特定の状況、材料、問題の組成、工程、工程ステップを、本発明の主題の精神および範囲に適応させるために、多くの改変を行なってもよい。このような全ての改変は、添付の特許請求の範囲内であるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】


〔式中、
Xは、ヘテロアリール(C〜Cアルキル、ハロ、またはアリールにより場合により置換されている)であり;
Yは、−NRであり、ここでRは、水素またはC〜Cアルキルであり、Rは、アリールまたはヘテロアリール(これらは、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロ−C〜Cアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、C〜Cアルキルカルボニル、またはC〜Cアルキルスルホニルにより場合により置換されている)であり;
Zは、水素またはC〜Cアルキルであり;
は、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロ−C〜Cアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、C〜Cアルキルカルボニル、またはC〜Cアルキルスルホニルであり、ここでRおよびRは、各々独立して、水素またはC〜Cアルキルである〕
で示される化合物またはその薬学的に許容されうる塩。
【請求項2】
Xが、ピラゾリル、イミダゾリル、ピロリル、ピリジル、ピリダジル、およびピリミジルから選択された、場合により置換されたヘテロアリールである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
Xが、場合により置換されているピラゾリル、場合により置換されているイミダゾリル、または場合により置換されているピロリルである、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
ZがC〜Cアルキルである、請求項3記載の化合物。
【請求項5】
Xが、場合により置換されているピラゾール−1−イルである、請求項4記載の化合物。
【請求項6】
が水素である、請求項5記載の化合物。
【請求項7】
Xが、3−メチルピラゾール−1−イル、3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、4−クロロ−3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、3−プロピルピラゾール−1−イル、または3−ブチル−4−プロピルピラゾール−1−イルである、請求項5記載の化合物。
【請求項8】
が水素であり、Rが場合により置換されているフェニルである、請求項5記載の化合物。
【請求項9】
が、水素、C〜Cアルキル、またはハロである、請求項5記載の化合物。
【請求項10】
が、水素、メチル、またはクロロである、請求項9記載の化合物。
【請求項11】
Xが、場合により置換されているイミダゾール−1−イルである、請求項3記載の化合物。
【請求項12】
が水素である、請求項11記載の化合物。
【請求項13】
Xが、2−メチルイミダゾール−1−イル、4−メチルイミダゾール−1−イル、または4−フェニルイミダゾール−1−イルである、請求項11記載の化合物。
【請求項14】
が水素であり、Rが場合により置換されているフェニルである、請求項13記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物が、式(II)
【化2】


(式中、
mは、0〜4であり;
Xは、場合により置換されているピラゾリルまたは場合により置換されているイミダゾリルであり;
Zは、C〜Cアルキルであり;
各Rは、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロ−C〜Cアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、C〜Cアルキルカルボニル、またはC〜Cアルキルスルホニルであり;
、R、R、およびRは、請求項1に列挙した通りである)
で示される、請求項1記載の化合物。
【請求項16】
Xが、3−メチルピラゾール−1−イル、3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、4−クロロ−3,5−ジメチルピラゾール−1−イル、3−プロピルピラゾール−1−イル、または3−ブチル−4−プロピルピラゾール−1−イルである、請求項15記載の化合物。
【請求項17】
Xが、2−メチルイミダゾール−1−イル、4−メチルイミダゾール−1−イル、または4−フェニルイミダゾール−1−イルである、請求項15記載の化合物。
【請求項18】
前記化合物が、式(III)
【化3】


(式中、
mは、0〜4であり;
nは、0〜3であり;
各Rは、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロ−C〜Cアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、C〜Cアルキルカルボニル、またはC〜Cアルキルスルホニルであり;
Zは、C〜Cアルキルであり;
各Rは、独立して、C〜Cアルキル、場合により置換されているフェニル、またはハロであり;
、R、R、およびRは、請求項15に列挙した通りである)
で示される、請求項15記載の化合物。
【請求項19】
nが1または2である、請求項18記載の化合物。
【請求項20】
mが3であり、Rがハロである、請求項18記載の化合物。
【請求項21】
が、水素、C〜Cアルキル、またはハロである、請求項18記載の化合物。
【請求項22】
nが1であり、Rがメチルまたはプロピルである、請求項18記載の化合物。
【請求項23】
nが2であり、Rの一つがプロピルであり、その他がブチルである、請求項18記載の化合物。
【請求項24】
前記化合物が、式(IV)
【化4】


(式中、
mは、0〜4であり;
nは、0〜3であり;
各Rは、独立して、水素、C〜Cアルキル、C〜Cアルコキシ、ハロ−C〜Cアルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ニトロ、−NR、−C(O)NR、C〜Cアルキルカルボニル、またはC〜Cアルキルスルホニルであり;
Zは、C〜Cアルキルであり;
各Rは、独立して、C〜Cアルキル、場合により置換されているフェニル、またはハロであり;
、R、R、およびRは、請求項15に定義した通りである)
で示される、請求項15記載の化合物。
【請求項25】
nが1であり、Rがメチルである、請求項24記載の化合物。
【請求項26】
nが1であり、Rがフェニルである、請求項24記載の化合物。
【請求項27】
mが3であり、Rがハロである、請求項24記載の化合物。
【請求項28】
が、水素、C〜Cアルキル、またはハロである、請求項24記載の化合物。
【請求項29】
式II
【化5】


で示される化合物の製造方法であって、
a)式a
【化6】


で示される化合物を、ハロゲン化して、式b
【化7】


で示される化合物を得る工程、
b)式bの化合物を、式c
【化8】


で示される化合物と反応させて、式d
【化9】


で示される化合物を得る工程、
c)式dの化合物を、式e
【化10】


で示される化合物と反応させて、式IIの化合物を得る工程を含む(ここでR、R、R、X、Z、およびmは、請求項15に定義した通りであり、Lはハロゲンである)、方法。
【請求項30】
請求項1記載の化合物を薬学的に許容されうる担体と一緒に含む、医薬組成物。
【請求項31】
CRF受容体アンタゴニストでの処置により寛解する疾患状態を有する被験体を処置するための医薬の製造における、請求項1〜28のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項32】
前記疾患状態が、恐怖症、ストレスに関連した病気、気分障害、摂食障害、全般性不安障害、ストレスにより誘発される胃腸機能不全、神経変性疾患、および神経精神医学的疾患からなる群より選択される、請求項31記載の使用。
【請求項33】
前記化合物、その製造方法、および前記した本発明の化合物の使用。

【公表番号】特表2007−512275(P2007−512275A)
【公表日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540293(P2006−540293)
【出願日】平成16年11月16日(2004.11.16)
【国際出願番号】PCT/EP2004/012985
【国際公開番号】WO2005/054231
【国際公開日】平成17年6月16日(2005.6.16)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】