説明

ピラゾリル5−チオグルコシド化合物を有効成分とする糖尿病治療剤

【課題】選択的にSGLT1活性を阻害し、消化管からのグルコース吸収を抑制することで、IGT(耐糖能異常)をコントロールする新規な化合物の提供。
【解決手段】下記一般式(I)


で表されるピラゾリル−5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎臓でのグルコース再吸収に関わるナトリウム依存性グルコース共輸送体1(SGLT1)の阻害活性を有するピラゾリル 5−チオグルコシド化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病に罹患すると、空腹時の血糖値は126mg/dL以上を示す。また、空腹時の血糖値が正常であっても、食事の後に140〜200mg/dLという高い血糖値を示す場合には、耐糖能異常(以下、IGT(impaired glucose tolerance)という。)と診断される。IGTから糖尿病の発症を遅らせることは、心血管障害のリスクを低減させると考えられ、それを示す幾つかの知見が得られている。例えば、1997年に中国で行われたDa Qing IGT and Diabetes Studyでは、ダイエットや運動を行うことでIGTから2型糖尿病への移行を有意に抑制したと報告されている(非特許文献1参照)。また、薬剤治療が有効な例として、糖の加水分解酵素を阻害し、小腸からの糖の吸収を遅延させるα−グルコシダ−ゼ阻害剤アカルボ−スを投与すると、IGTから2型糖尿病への移行を抑制し、さらに高血圧の発症も有意に抑制することが報告されている(非特許文献2参照)。
【0003】
この様なことから、糖尿病の発症を抑えるには、食事療法、運動及び薬物療法によってIGTをコントロ−ルすることが重要である。
【0004】
哺乳動物の小腸上皮には高い頻度でナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体1(SGLT1)が発現している。このSGLT1は小腸において、ナトリウムに依存し、グルコ−ス又はガラクト−スの能動輸送を司っていることが知られている。そこで、食事由来のグルコ−ス吸収を抑制し、IGTの予防または治療を行うというコンセプトに基づき、SGLT1活性を阻害するグリコシド化合物が報告されている(特許文献1〜6参照)。
【0005】
また、腎臓には高頻度にナトリウム依存性グルコ−ス共輸送体2(SGLT2)が発現しており、糸球体で一旦濾過されたグルコ−スはSGLT2を介して再吸収される(非特許文献3参照)。そして、SGLT2阻害剤は、尿への糖排泄を促進し、血糖低下作用を招来するので、新たな糖尿病治療薬の標的分子と考えられるようになった(非特許文献4参照)。このような背景から、SGLT2阻害剤が研究されヘテロアリ−ル 5−チオグルコシド誘導体が提供されている(特許文献7参照)。
【0006】
しかしながら、従来SGLT1阻害活性を有するチオグルコシド誘導体は知られていなかった。
【0007】
【特許文献1】国際公開第WO2002/098893号パンフレット
【特許文献2】国際公開第WO2004/014932号パンフレット
【特許文献3】国際公開第WO2004/018491号パンフレット
【特許文献4】国際公開第WO2004/019958号パンフレット
【特許文献5】国際公開第WO2005/121161号パンフレット
【特許文献6】国際公開第WO2004/050122号パンフレット
【特許文献7】国際公開第WO2004/089967号パンフレット
【非特許文献1】Pan XR, et al. Diabets Care, 第20巻, 534頁, 1997年
【非特許文献2】J.-L. Chiasson, et al. Lancent, 第359巻, 2072頁, 2002年
【非特許文献3】E. M. Wright, Am. J. Physiol. Renal. Physiol. , 第280巻, F10項, 2001年
【非特許文献4】G. Toggenburger, et al. Biochem. Biophys. Acta., 第688巻, 557項, 1982年
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、選択的にSGLT1活性を阻害し、消化管からのグルコース吸収を抑制することで、IGTをコントロールする新規なピラゾリル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド化合物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するために鋭意研究した結果、ある種のピラゾール誘導体を5−チオグルコシル化した化合物が、優れたSGLT1活性阻害作用を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
以下に、本発明のピラゾリル 5−チオグルコシド誘導体(以下、「本発明化合物」という)の態様を述べる。
【0011】
(1)本発明の態様は、下記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0012】
【化1】

【0013】
式(I)中、Zは、C1-6アルキル基であり、
1、R2及びR3は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルコキシ基またはC1-6アルキル基であり、
Yは単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基または−O−(CH2)n−(nは1から4の整数を示す)であり、
Qは水酸基、−OC1-4アルキルフェニル、−N(RA)RBまたは−CONHRCである、
但し、Qが水酸基、−OC1-4アルキルフェニルまたは−NH2のとき、Yは単結合ではない、
A及びRBは同一または異なって、水素原子、−CONHRD(RDは水素原子または、水酸基及びピリジル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよいC1-6アルキル基を示す)、−C(=NH)NHRE(REは水素原子、または−CO21-4アルキルフェニルである)、あるいは、C1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群から選択される置換基で置換されてもよい)であり、
Cは水酸基及び−CON(RF)RGからなる群より選択される置換基で置換されたC1-6アルキル基であり、
F及びRGは、同一または異なって、水素原子またはC1-6アルキル基であるか、あるいはRF及びRGが結合している窒素原子と一緒になって、さらに環構成原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでも良い5〜6員のヘテロシクロアルキル基(該ヘテロシクロアルキル基は水酸基で置換されても良いC1-6アルキル基で置換されてもよい)を形成してもよい。
【0014】
なお、ピラゾール環の点線は、環構成窒素原子に水素原子が結合する位置によって、互変異性体が存在することを示しているが、下記に示す具体的化合物では、便宜上、どちらか一方の異性体のみを示す。
【0015】
(2)本発明の他の態様は、YがC1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基または−O−(CH2)n−(nは2から4の整数である)である、前記態様(1)記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0016】
(3)本発明の他の態様は、Qが−N(RA)RB(RA及びRBは前記態様(1)で定義したとおりである)である、前記態様(1)または(2)に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0017】
(4)本発明の他の態様は、RAが−CONHRD(RDは水酸基及びピリジル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよいC1-6アルキル基である)であり、RBが水素原子である、前記態様(3)に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0018】
(5)本発明の他の態様は、RAが−C(=NH)NHRE(REは水素原子、または−CO21-4アルキルフェニルである)であり、RBが水素原子である、前記態様(3)に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0019】
(6)本発明の他の態様は、RA及びRBが同一または異なって、水素原子、またはC1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群から選択される置換基で置換されてもよい)である前記態様(3)に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0020】
(7)本発明の他の態様は、Qが−CONHRC(RCは前記態様(1)で定義したとおりである)である、前記態様(1)または(2)に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0021】
(8)本発明の他の態様は、RCが水酸基及び−CONH2からなる群より選択される1〜4個の置換基で置換されたC1-6アルキル基であるか、または、−CO−ピペラジノ(該ピペラジノは、水酸基で置換されても良いC1-6アルキル基で置換されてもよい)で置換されたC1-6アルキル基である(ここで、RCが−NH−に結合する各C1-6アルキル基の炭素原子は3級である)、前記態様(7)記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0022】
(9)本発明の他の態様は、YはC1-6アルキレン基又はC2-6アルケニレン基である、前記態様(7)または(8)記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【0023】
(10)本発明の他の態様は、
1、R2及びR3は同一または異なって、水素原子、またはC1-6アルキル基であり、
Yは、−O−(CH2)n−(nは1から4の整数である)であり、
Qは、水酸基、−OC1-4アルキルフェニル、又は−N(RA)RBであり、
A及びRBは、同一又は異なって、水素原子、−CONH2で置換されたC1-6アルキル基、−CONHRD(RDは、水酸基で置換されたC1-6アルキル基である)、あるいは−C(=NH)NHRE(REは、水素原子または−CO21-4アルキルフェニルである)である、前記態様(1)に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明の化合物は、SGLT1活性を選択的に阻害するので、糖尿病患者の治療だけでなく、食前血糖が正常域であっても食後高血糖がみられる、境界型(糖尿病予備群)の患者の治療もすることができ、これにより糖尿病への移行予防をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明において使用する用語を以下に定義する。
【0026】
「C1-6アルキル基」とは、炭素原子を1−6個有する直鎖状又は分枝状のアルキル基を意味する。例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、sec−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。
【0027】
「C1-6アルコキシ基」とは、炭素原子を1−6個有する直鎖状又は分枝状のアルコキシ基を意味し、C1-4アルコキシ基が好ましい。C1-4アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が挙げられる。
【0028】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子である。
【0029】
「−OC1-4アルキルフェニル」とは、C1-4アルコキシ基とフェニルが複合した形態を有する基である。例えば、ベンジルオキシ基、フェニルエチルオキシ基が挙げられる。
【0030】
「C1-6アルキレン基」とは、炭素数1〜6個からなる、直鎖または分岐状の2価の飽和炭化水素である。例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、2−メチルプロピレン、2,2−ジメチルプロピレン等が挙げられる。
【0031】
「C2-6アルケニレン基」とは、二重結合を含む炭素数2〜6個からなる、直鎖または分岐状の2価の不飽和炭化水素である。例えば、エチレン、プロペニレン、2−ブチニレン等が挙げられ、中でもプロペニレンが好ましい。
【0032】
「水酸基及びピリジル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよいC1-6アルキル基」とは、C1-6アルキル基上の水素原子が、水酸基及びピリジル基から選択される一つ以上の基(好ましくは1〜3個)によって置換されてもよいC1-6アルキル基を示す。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ピリジン−3−イルメチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル基、1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロパン−2−イル基が挙げられる。
【0033】
「水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群から選択される置換基で置換されてもよいC1-6アルキル基」とは、C1-6アルキル基上の水素原子が、水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群から選択される1つ以上(好ましくは1〜3個)の基によって置換されてもよいC1-6アルキル基を示す。例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ベンジルオキシエチル基、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル基、1,3−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル基、カルバモイルメチル基、カルバモイルメチル基、2−カルバモイルエチル基、2−カルバモイル−2−メチルエチル基が挙げられる。
【0034】
「水酸基及び−CON(RF)RGからなる群より選択された置換基で置換されたC1-6アルキル基」とは、C1-6アルキル基上の水素原子が、水酸基または−CON(RF)RGからなる群より選択される置換基(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個)によって置換されているC1-6アルキル基を示す。例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル基、1,3−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル基、カルバモイルメチル基が挙げられる。
【0035】
「結合している窒素原子と一緒になって形成し、さらに環構成原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでも良い5〜6員のヘテロシクロアルキル基(該ヘテロシクロアルキル基は水酸基で置換されてもよいC1-6アルキル基で置換されてもよい)」の例としては、1−ピロリジニル基、ピペリジノ基、1−ピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、4−メチル−1−ピペラジニル基等が挙げられる。
【0036】
「水酸基で置換されてもよいC1-6アルキル基」とは、少なくとも1個(好ましくは1〜4個、より好ましくは1〜3個)の水酸基によって置換されてもよいC1-6アルキル基を意味し、例えば、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル基、1,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロパン−2−イル基、1,3−ジヒドロキシ−2−ヒドロキシメチルプロパン−2−イル基が挙げられる。
【0037】
「製薬学的に許容される塩」とは、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、アルキルアンモニウムなどとの塩、鉱酸又は有機酸との塩であり、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アンモニウム塩、アルミニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ぎ酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、エチルコハク酸塩、ラクトビオン酸塩、グルコン酸塩、グルコヘプトン酸塩、安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、アジピン酸塩、システインとの塩、N−アセチルシステインとの塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、硫酸塩、よう化水素酸塩、ニコチン酸塩、シュウ酸塩、ピクリン酸塩、チオシアン酸塩、ウンデカン酸塩、アクリル酸ポリマーとの塩、カルボキシビニルポリマーとの塩が挙げられる。
【0038】
「水和物」とは、本発明の化合物又はその塩の製薬学的に許容される水和物である。本発明の化合物又はその塩は、大気にさらされ、あるいは再結晶することなどにより、水分を吸収し、吸着水がつく場合や、水和物となる場合がある。本発明における水和物には、そのような水和物も含まれる。
【0039】
本発明の化合物はキラル中心を有することがあるので、種々なジアステレオマー形又はエナンチオマー形として存在する。また、本発明の化合物の一部は、例えば、ケト−エノール互変異性体としても存在する。また、本発明の化合物の一部は、幾何異性体(E体、Z体)としても存在する。したがって、本発明の化合物は、上記全ての個々の異性体並びにこれらの混合物を包含する。
【0040】
本発明化合物の好ましい態様を以下にあげる。
式(I)において、Zの好ましい基は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基であり、より好ましくはイソプロピル基である。
【0041】
1、R2及びR3の好ましい態様は、水素原子、またはC1-4アルキル基であり、より好ましくは、水素原子、またはメチル基である。特に、R1が水素原子またはメチル基であり、R2及びR3が水素原子であることが好ましい。この場合、R1がメチル基であるときの置換位置は−Y−Qに対してメタ位であることが好ましい。
【0042】
Yの好ましい態様はC1-4アルキレン基、C2-4アルケニレン基、あるいは−O−(CH2)n−(n=2または3)である。
【0043】
Qが−NRA(RB)である場合の好ましい態様は、YがC1-4アルキレン基又はC2-4アルケニレン基であり、より好ましくは、YがC1-4アルキレン基である。
【0044】
Qが−NRA(RB)の好ましい態様は、(1)RA及びRBは同一または異なって、水素原子、または“水酸基及び−CONH2の群から選択される1〜4個(より好ましくは1〜3個)の基で置換されてもよいC1-6アルキル基”である場合、(2)RAが−C(=NH)NH2であり、RBが水素原子である場合、(3)RAが−CONHRD(RDは水酸基で置換されているC1-6アルキル基である)であり、RBは水素原子である場合である。
【0045】
Qが−CONHRCである場合の好ましい態様は、1〜4個(より好ましくは1〜3個)の水酸基で置換されたC1-6アルキル基、または−CONH2、−CONHC1-4アルキル若しくは−CO−ヘテロシクロアルキル基(該ヘテロシクロアルキル基は、水酸基で置換されてもよいC1-6アルキル基で置換されてもよい)のいずれかで置換されたC1-6アルキル基である。 −CONH(RC)において、RCに定義されるC1-6アルキル基は、−NH−に結合する炭素原子が3級である場合が好ましい。
【0046】
上記の化合物群において、より好ましい−Y−Qは、−Y−CO−NH−C1-6アルキル(該アルキルのNHに結合する炭素原子が3級であり、該アルキルは水酸基で置換されている)、−Y−CO−NH−C(CH32−CONH2、−Y−CO−NH−C(CH32−CONH−C1-6アルキル(該アルキルは水酸基で置換されてもよい)、−Y−CO−NH−C(CH32−CO−ピペラジノ(該ピペラジノは、水酸基で置換されてもよいC1-6アルキル基で置換されてもよい)である。ここで、Yは、プロピレン又はプロペニレン(−CH=CH−CH2−)である。
【0047】
以下に、本発明化合物(I)の製造方法を例をあげて以下に詳細に説明するが、例示されたものに特に限定されない。
【0048】
製造法1
本発明の式(I)化合物において、Qが水酸基、−OC1-4アルキルフェニル(例えば、−OBn)又はアミノ基である化合物は以下の方法で合成できる。
【0049】
ただし、P1、P2、P3及びP4は、アセチル基、ピバロイル基等のC2-6アルカノイル基又はベンゾイル基を示し、その他の記号は前記と同義である。
【0050】
【化2】

【0051】
ここに、ピラゾール誘導体1Aは国際公開WO2004/018491号に準拠して合成することができる。5−チオグルコース誘導体2Aは、国際公開WO2004/014931号に準拠して合成することができる。
【0052】
(1)工程1(光延反応)
光延反応(国際公開WO2004/089966号)によって、ピラゾール誘導体1Aと5−チオグルコース誘導体2Aからピラゾリル 5−チオ−β−D−グルコシド誘導体3Aを選択的に製造することができる。この反応における試薬として必要なホスフィン類の例としては、トリフェニルホスフィン、トリ−n−ブチルホスフィン、トリ−t−ブチルホスフィン、トリストリルホスフィンやジフェニル−2−ピリジルホスフィン等が挙げられる。中でもトリフェニルホスフィン、ジフェニル−2−ピリジルホスフィンが好ましく、トリフェニルホスフィンがより好ましい。
【0053】
アゾ試薬の例としては、ジエチルアゾジカルボキシレート、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートやジ−tert−ブチルアゾジカルボキシレート、1,1'−アゾビス(N,N−ジメチルホルムアミド)や1,1’-(アゾジカルボニル)ジピペリジンを用いることができる。中でも、ジエチルアゾジカルボキシレート(DEAD)、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートが好ましい。
【0054】
本反応に用いる溶媒はテトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、塩化メチレン、クロロホルム、アセトニトリル、酢酸エチル、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等であり、好ましいのは、テトラヒドロフラン、トルエンである。
【0055】
反応温度は−20℃から室温が好ましく、−5℃から+5℃がより好ましい。
【0056】
(2)工程2(脱ベンジル化)
上記で得られた化合物3Aをパラジウム活性炭、水酸化パラジウム、又は白金−パラジウム活性炭等の触媒を用いて水素雰囲気下にて接触水素添加することによりベンジル基を除去することができる。中でも水酸化パラジウムが触媒として好ましい。この反応に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸等を挙げることができる。反応温度は室温から還流温度であるが、室温が好ましい。
【0057】
(3)工程3(アミノ基への変換)
上記で得られた化合物4Aの水酸基をアミノ基に変換し化合物5Aを得ることができる。まず、化合物4Aをトリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等の塩基の存在下、メタンスルホニルクロリドやp−トルエンスルホニルクロリドを用いて、脱離基を導入する。この反応に使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は0℃から室温である。
【0058】
次に、アジ化ナトリウムを用いて、アジド基に変換することができる。この反応に使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0059】
さらに、アジド基を上記の脱ベンジル化の条件と同様な接触水素添加にてアミノ基に変換し化合物5Aが得られる。
【0060】
(4)工程4(P1、P2、P3及びP4の脱保護)
5−チオグルコースの保護基を適当な塩基を用いて除去し、本発明化合物(I)が得られる。この反応に使用する塩基として、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、ナトリウムベンジルオキシド、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン等が挙げられる。反応に適当な溶媒はメタノール、エタノール、ベンジルアルコール、水又はこれらの混合溶媒である。反応温度は0℃から室温であり、室温が好ましい。
【0061】
製造法2
製造法1の化合物5Aにおいて、Yが単結合である化合物5Bは、より好ましくは、以下の方法で合成できる。ただし、記号は前記と同義である。
【0062】
【化3】

【0063】
ここに、ピラゾール誘導体1Bは国際公開WO2004/019958号に準拠して合成することができる。
【0064】
まず、製造法1の工程1に示した光延反応により、ピラゾール誘導体1Bから化合物3Bを合成することができる。
【0065】
(5)工程5(ニトロ基の還元)
化合物3Bをパラジウム活性炭、水酸化パラジウム、又は酸化白金等の触媒を用いて水素雰囲気下にて接触水素添加することによりニトロ基を還元することができる。中でも酸化白金等の白金系触媒が好ましい。この反応に使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、酢酸等を挙げることができる。反応温度は室温から還流温度であるが、室温が好ましい。
【0066】
製造法3
本発明の式(I)化合物において、Qが−N(RA)RBであって、RAは−C(=NH)NHREであり、RBは水素原子である化合物は以下の方法で合成できる。
ただし、記号は前記と同義である。
【0067】
【化4】

【0068】
(6)工程6(グアニジノ基の導入)
化合物5Aからグアニジノ化試薬6Aを用いて化合物7Aに誘導することができる。この反応に使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0069】
(7)工程7及び工程8(脱保護)
グアニジノ基の保護基RE、ベンジルオキシカルボニル基をナトリウムベンジルオキシドで処理することで、本発明化合物(I)(Q=−C(=NH)NHCOOBn)が得られる。さらに、ベンジルオキシカルボニル基は、製造法1の工程2に記載した脱ベンジル化と同様な方法で除去することができる。このときの好ましい触媒は水酸化パラジウムである。
【0070】
製造法4
本発明の式(I)化合物において、Qが−N(RA)RBであって、RAは−CONHRD、RBは水素原子である(式中、RDは水素原子または、水酸基及びピリジル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよいC1-6アルキル基を示す)化合物は以下の方法で合成できる。ただし、下記スキーム中、他の記号は前記と同義である。
【0071】
【化5】

【0072】
(8)工程9(ウレイド基の構築)
化合物5Aから適当な塩基の存在下、p−ニトロフェニルクロロホルメート、トリホスゲンあるいはN,N′−カルボニルジイミダゾール(CDI)を用いて、アミンRDNH2と縮合することにより、化合物8Aに誘導することができる。適当な塩基としては、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、DBU、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等が挙げられる。また、使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は0℃から還流温度である。
【0073】
(9)工程10(脱保護)
1、P2、P3、及びP4を製造法1の工程4に記載の方法で脱保護し、本発明化合物(I)が得られる。
【0074】
製造法5
本発明の式(I)化合物において、Qが−N(RA)RBであって、RA及びRBは同一または異なって、水素原子、または、C1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群から選択される置換基で置換されてもよい)である化合物は以下の方法で合成できる。下記スキーム中、L1はハロゲン原子、MeSO2O-等の脱離基を示し、その他の記号は前記と同義である。
【0075】
【化6】

【0076】
(10)工程11
化合物5Aを適当な塩基の存在下、RAL1又はRBL1と反応させることにより、化合物9Aが得られる。適当な塩基としては、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、DBU、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等が挙げられる。また、使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、メタノール、エタノール、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0077】
(11)工程12
化合物4Aから製造法1のアミノ基への変換と同様の条件で、化合物9Aを製造することもできる。まず、化合物4Aをトリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等の塩基の存在下、メタンスルホニルクロリドやp−トルエンスルホニルクロリドを用いて、脱離基を導入する。この反応に使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は0℃から室温である。
【0078】
次に、トリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、ピリジン、DBU、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等の適当な塩基の存在下、NHRABと反応させることにより化合物9Aが得られる。この反応に使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ジクロロメタン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、酢酸エチル等が挙げられる。反応温度は室温から還流温度である。
【0079】
(12)工程13(脱保護)
1、P2、P3及びP4を製造法1の工程4に記載の方法で脱保護し、本発明化合物(I)が得られる。
【0080】
製造法6
本発明の式(I)化合物において、Qが−CONHRCであり、YがC2-6アルキレン基、又はC2-6アルケニレン基である化合物は以下の方法で合成できる。
ただし、Y1は単結合、又はC1-4アルキレン基を示し、その他の記号は前記と同義である。
【0081】
【化7】

【0082】
ここに、ピラゾール誘導体1Cは国際公開WO2004/014932号に準拠して合成することができる。
【0083】
まず、製造法1の工程1に示した光延反応により、ピラゾール誘導体1Cから化合物3Cを合成することができる。
【0084】
(13)工程14(Heck反応)
化合物3Cとオレフィン酢酸10Aをパラジウム触媒とホスフィンリガンド、及び適当な塩基の存在下、Heck反応を行うことにより化合物11Aを合成することができる。このとき用いるパラジウム触媒としては、酢酸パラジウム、テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム、ジベンジリデンアセトンパラジウム、ビストリフェニルホスフィンパラジウムクロリド、パラジウム活性炭等が挙げられる。ホスフィンリガンドとしてはトリフェニルホスフィンやトリス(2−メチルフェニル)ホスフィン等が挙げられる。また、塩基にはトリエチルアミン、N−エチル−N,N−ジイソプロピルアミン、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、カリウムt−ブトキシド等が用いられる。反応に用いられる溶媒としては、アセトニトリル、トルエン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。反応温度は0℃から還流温度であるが、マイクロウェーブを用いることもある。
【0085】
(14)工程15(アミド化)
化合物11Aとアミン(RCNH2)にて脱水縮合し、化合物12Aが得られる。この反応に使用する溶媒としては、クロロホルム、ジクロロメタン、N,N−ジメチルホルムアミド等が好ましく、脱水縮合剤としては、N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N−エチル−N’−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸(WSC)、CDI、WSC/1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物等が好ましい。ここでの反応温度は0℃〜60℃である。
【0086】
(15)工程16
化合物11Aのオレフィン部分を製造法1の工程2に示した接触水素添加を行った後に、アミン(RCNH2)と縮合することで、化合物12Bを製造することもできる。
【0087】
(16)工程17(脱保護)
最後に、P1、P2、P3及びP4を製造法1の工程4に示した方法で脱保護し、本発明化合物(I)が得られる。
【0088】
製造法7
本発明の式(I)化合物において、Qが−CONHRCであり、Yが−O−(CH2)n−である化合物は以下の方法で合成できる。
ただし、Y1はC1-4アルキレン基を示し、L2はハロゲン原子、MeSO2O-等の脱離基を示し、その他の記号は前記と同義である。
【0089】
【化8】

【0090】
ここに、ピラゾール誘導体4Bは製造法1の工程1、工程2に準拠して合成することができる。
【0091】
(17)工程18
ピラゾール誘導体4Bを適当な塩基の存在下で、化合物13Aと反応させることにより化合物12Cを得ることができる。適当な塩基としては水素化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、n−ブチルリチウムが好ましく、この反応に使用する溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトン、DMSOが好ましい。ここでこの反応の温度は0℃〜60℃である。
【0092】
(18)工程19
1、P2、P3及びP4を製造法1の工程4に示した方法で脱保護し、本発明化合物(I)が得られる。
【0093】
本発明の化合物は、SGLT1を選択的に阻害し、小腸からの糖の吸収を抑制して、IGTを改善することができる。
【0094】
よって、本発明の化合物は、SGLT1阻害剤、あるいは、糖尿病、糖尿病関連疾患及び糖尿病合併症の予防又は治療剤の有効成分として用いることができる。
【0095】
ここで、「糖尿病」には、1型糖尿病、2型糖尿病の他、特定の原因によるその他の型の糖尿病が含まれる。
【0096】
ここで、「糖尿病関連疾患」とは、肥満、高インスリン血症、糖代謝異常、高脂質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、脂質代謝異常、高血圧、うっ血性心不全、浮腫、高尿酸血症、痛風などが挙げられる。
【0097】
ここで、「糖尿病合併症」は、急性合併症及び慢性合併症に分類される。
【0098】
「急性合併症」には、高血糖(ケトアシドーシスなど)、感染症(皮膚、軟部組織、胆道系、呼吸系、尿路感染など)などが挙げられる。
【0099】
「慢性合併症」には、細小血管症(腎症、網膜症)、動脈硬化症(アテローム性動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞、下肢動脈閉塞など)、神経障害(感覚神経、運動神経、自律神経など)、足壊疽などが挙げられる。
【0100】
主要な合併症は、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害である。
【0101】
本発明の化合物は、医薬として、全身的又は局所的に、経口投与又は非経口投与することができる。
【0102】
本発明化合物は、該化合物の作用の増強または該化合物の投与量の低減などを目的として、SGLT1及びSGLT2活性阻害薬以外のことなった作用機序の糖尿病治療剤、糖尿病性合併症治療剤、抗高脂血症剤、降圧剤、抗肥満剤、利尿剤、抗血栓剤などの薬剤( 以下、併用薬剤と略記する) と組み合わせて用いることができる。この際、本発明化合物と併用薬剤の投与時期は限定されず、これらを投与対象に対し、同時に投与してもよいし、時間差をおいて投与してもよい。さらに、本発明化合物と併用薬剤とは、それぞれの活性成分を含む2種類の製剤として投与されてもよいし、両方の活性成分を含む単一の製剤として投与されてもよい。併用薬剤の投与量は、臨床上用いられている用量を基準として適宜選択することができる。また、本発明化合物と併用薬剤の配合比は、投与対象、投与ルート、対象疾患、症状、組み合わせなどにより適宜選択することができる。例えば、投与対象がヒトである場合、本発明化合物1重量部に対し、併用薬剤を0.01〜100重量部用いればよい。
【0103】
なお、糖尿病治療剤としては、例えばインスリン製剤(例、ウシ、ブタの膵臓から抽出された動物インスリン製剤;大腸菌またはイーストを用い、遺伝子工学的に合成したヒトインスリン製剤;インスリン亜鉛; プロタミンインスリン亜鉛; インスリンのフラグメントまたは誘導体(例、INS−1等)、経口インスリン製剤)、インスリン抵抗性改善剤(例、ピオグリタゾンまたはその塩(好ましくは塩酸塩)、ロシグリタゾンまたはその塩(好ましくはマレイン酸塩)、リボグリタゾン(Rivoglitazone)(CS−011)(R−119702)、シポグリタザール(Sipoglitazar)(TAK−654)、メタグリダセン(Metaglidasen)(MXB−1 0 2)、ナベグリタザール(Naveglitazar)(LY−519818)、MX−6054、バラグリタゾン(Balaglitazone)(NN−2344)、T−131(AMG131)、PPARγアゴニスト、PPARγアンタゴニスト、PPARγ/αデュアルアゴニスト、α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール、エミグリテート)、ビグアナイド剤(例、フェンホルミン、メトホルミン、ブホルミンまたはそれらの塩(例、塩酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩))、インスリン分泌促進剤(スルホニルウレア剤(例、トルブタミド、グリベンクラミド、グリクラジド、クロルプロパミド、トラザミド、アセトヘキサミド、グリクロピラミド、グリメピリド、グリピザイド、グリブゾール等)、レパグリニド、セナグリニド、ナテグリニド、ミチグリニドまたはそのカルシウム塩水和物)、GPR40アゴニスト、GPR40アンタゴニスト、GLP−1受容体アゴニスト(例、GLP−1、GLP−1MR剤、リラグルチド(Liraglutide)(NN−2211)、Exenatide(AC−2993)(exendin−4)、Exenatide LAR、BIM51077、A i b (8,35)hGLP−1(7,37) NH2、CJC−1131、AVE0010、GSK-716155)、アミリンアゴニスト(例、プラムリンチド)、フォスフォチロシンフォスファターゼ阻害剤(例、バナジン酸ナトリウム)、ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤(例、WO02/038541に記載の化合物、NVP−DPP−278、PT−100、P32/98、ビルダグリプチン(Vildagliptin)(LAF−237)、P93/01、シタグリプチン(Sitagliptin)(MK−431)、サクサグリプチン(Saxagliptin)(BMS−477118)、SYR−322、MP−513、T−6666、GRC−8200等)、β3アゴニスト(例、AJ−9677、AZ40140等)、糖新生阻害剤(例、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、グルコース−6−ホスファターゼ阻害剤、グルカゴン拮抗剤、フルクトース−1,6−ビスホスファターゼ阻害剤)、SGLT (sodium−glucose cotransporter) 阻害剤(例、WO04/014931、WO04/089967、WO06/073197に記載の化合物、T−1095、Sergliflozin(GSK−869682)、GSK−189075、KGT−1251、KGT−1681、KGA−2727、BMS−512148、AVE2268、SAR7226等)、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(例、WO06/51662に記載の化合物、BVT−3498、INCB13739)、GPR119アゴニスト(例、PSN−632408、APD−668)、アディポネクチンまたはその作動薬、IKK阻害薬(例、A S−2868)、AMPK活性化薬、レプチン抵抗性改善薬、ソマトスタチン受容体作動薬、グルコキナーゼ活性化薬(例、Ro−28−1675)、膵リパーゼ阻害薬(例、オルリスタット、ATL−962)、DGAT−1阻害薬が挙げられる。
【0104】
糖尿病性合併症治療剤としては、例えばアルドース還元酵素阻害剤(例、トルレスタット、エパルレスタット、ゼナレスタット、ゾポルレスタット、ミナルレスタット、フィダレスタット、CT−112)、神経栄養因子およびその増加薬(例、NGF、NT−3、BDNF、ニューロトロフィン産生・分泌促進剤)、神経再生促進薬(例、Y−128)、PKC阻害剤(例、ルボキシスタウリンメシレート(ruboxistaurin mesylate;LY−333531))、AGE阻害剤(例、ALT946、ピマゲジン、ピラトキサチン、N−フェナシルチアゾリウムブロマイド(ALT766)、ALT−711、EXO−226、ピリドリン(Pyridorin)、ピリドキサミン)、活性酸素消去薬(例、チオクト酸)、脳血管拡張剤(例、チアプリド、メキシレチン)、ソマトスタチン受容体作動薬(例、BIM23190)、アポトーシスシグナルレギュレーティングキナーゼ−1(ASK−1)阻害薬が挙げられる。
【0105】
抗高脂血症剤としては、例えばスタチン系化合物(例、プラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチン、ロスバスタチン、ピタバスタチンまたはそれらの塩(例、ナトリウム塩、カルシウム塩))、スクアレン合成酵素阻害剤(例、TAK−475)、フィブラート系化合物(例、ベザフィブラート、クロフィブラート、シムフィブラート、クリノフィブラート)、ACAT阻害剤(例、アバシマイブ(Avasimibe)、エフルシマイブ(Eflucimibe))、陰イオン交換樹脂(例、コレスチラミン)、プロブコール、ニコチン酸系薬剤(例、ニコモール(nicomol)、ニセリトロール(niceritrol))、イコサペント酸エチル、植物ステロール(例、ソイステロール(soysterol)、ガンマオリザノール(γ−oryzanol))、CETP阻害薬(例、Torcetrapib、JTT−705、JTT−302、FN−VP4等)、コレステロール吸収抑制薬(例、エゼチミブ(Ezetimibe)等)が挙げられる。
【0106】
降圧剤としては、例えばアンジオテンシン変換酵素阻害剤(例、カプトプリル、エナラプリル、デラプリル)、アンジオテンシンII拮抗剤(例、カンデサルタン シレキセチル、ロサルタン、エプロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、イルベサルタン、タソサルタン、アジルザルタン(TAK−536))、カルシウム拮抗剤(例、マニジピン、ニフェジピン、アムロジピン、エホニジピン、ニカルジピン)、カリウムチャンネル開口薬(例、レブクロマカリム、L−27152、AL0671、NIP−121)、クロニジンが挙げられる。
【0107】
抗肥満剤としては、例えば中枢性抗肥満薬(例、デキスフェンフルラミン、フェンフルラミン、フェンテルミン、シブトラミン、アンフェプラモン、デキサンフェタミン、マジンドール、フェニルプロパノールアミン、クロベンゾレックス;MCH受容体拮抗薬(例、WO06/035967に記載の化合物、SB−568849; SNAP−7941、T−226296);ニューロペプチドY拮抗薬(例、CP−422935);カンナビノイド受容体拮抗薬( 例、リモナバント(Rimonabant)(SR−141716)、SR−147778);グレリン拮抗薬;11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ阻害薬(例、BVT−3498、INCB13739))、膵リパーゼ阻害薬(例、オルリスタット、ATL−962)、DGAT−1阻害薬、β3アゴニスト(例、AJ−9677、AZ40140)、ペプチド性食欲抑制薬(例、レプチン、CNTF( 毛様体神経栄養因子))、コレシストキニンアゴニスト(例、リンチトリプト、FPL−15849)、摂食抑制薬(例、P−57)が挙げられる。
【0108】
利尿剤としては、例えば、キサンチン誘導体(例、サリチル酸ナトリウムテオブロミン、サリチル酸カルシウムテオブロミン)、チアジド系製剤(例、エチアジド、シクロペンチアジド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメチアジド、ベンチルヒドロクロロチアジド、ペンフルチジド、ポリチアジド、メチクロチアジド)、抗アルドステロン製剤(例、スピロノラクトン、トリアムテレン)、炭酸脱水酵素阻害剤(例、アセタゾラミド)、クロルベンゼンスルホンアミド系製剤(例、クロルタリドン、メフルシド、インダパミド)、アゾセミド、イソソルビド、エタクリン酸、ピレタニド、ブメタニド、フロセミドが挙げられる。
【0109】
抗血栓剤としては、例えば、ヘパリン(例、ヘパリンナトリウム、ヘパリンカルシウム、ダルテパリンナトリウム(dalteparin sodium)、AVE−5026) 、ワルファリン(例、ワルファリンカリウムなど) 、抗トロンビン薬(例、アルガトロバン(argatroban)、キシメラガトラン(Ximelagatran)、ダビガトラン(Dabigatran)、Odiparcil、Lepirudin、bivalirudin、Desirudin、ART−123、Idraparinux、SR−123781、AZD−0837、MCC−977、TGN−255、TGN−167、RWJ−58436、LB−30870、MPC−0920、Pegmusirudin、Org−426751等)、血栓溶解薬(例、ウロキナーゼ(urokinase)、チソキナーゼ(tisokinase)、アルテプラーゼ(alteplase)、ナテプラーゼ(nateplase)、モンテプラーゼ(monteplase)、パミテプラーゼ(pamiteplase)等)、血小板凝集抑制薬(例、塩酸チクロピジン(ticlepidine hydrochloride)、シロスタゾール(cilostazol)、イコサペント酸エチル、ベラプロストナトリウム(beraprost sodium)、塩酸サルポグレラート(sarpogrelate hydrochloride)など)、抗Xa阻害薬(例、Fondaparinux、BAY−59−7939、DU−176b、YM−150、SR−126517、Apixaban、Razaxaban、LY−517717、MLN−102、Octaparine、Otamixaban、EMD−503982、TC−10、CS−3030、AVE−3247、GSK−813893、KFA−1982等)、血漿中カルボキシペプチターゼB(または活性型thrombin−activatable fibrinolysis inhibitor[TAFIa]としても知られている)阻害薬(例、AZD−9684、EF−6265、MN−462)などが挙げられる。
【0110】
本発明の化合物を医薬として提供する場合、固形剤、液剤等の種々の態様の製剤形態を適宜に採択することができる。その際、製薬学的に許容される担体を配合することも可能である。そのような担体の例としては、一般的な賦形剤、増量剤、結合剤、崩壊剤、被覆剤、糖衣剤、pH調整剤、溶解剤又は水性若しくは非水性溶媒などが挙げられる。本発明の化合物とこれらの担体から、錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、粉剤、散剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤等を調製することができる。
【0111】
また、本発明の化合物は、α、β若しくはγ−シクロデキストリン又はメチル化シクロデキストリン等に包接させて、その溶解性を改善することも可能である。
【0112】
本発明の化合物の投与量は、疾患、症状、体重、年齢、性別、投与経路等により異なってくるが、成人に対し、1日当たり0.1〜1000mg/kg体重であり、0.1〜200mg/kg体重が好ましく、0.1〜10mg/kg体重がより好ましい。これを1日1回から数回に分けて投与することができる。
【実施例】
【0113】
以下に実施例及び試験例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの記載によって限定的に解釈されるものではない。
【0114】
実施例1
4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
【0115】
【化9】

【0116】
(1)4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノース(0.582g、1.60mmol)、4−{[4−(2−ベンジルオキシエトキシ)−2−メチルフェニル]メチル}−1,2−ジヒドロ−5−イソプロピル−3H−ピラゾール−3−オン(0.304g、0.799mmol;国際公開WO04/050122号を参考に4−ブロモ−3−メチルフェノールより合成)及びトリフェニルホスフィン(0.420g、1.60mmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に氷冷下、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(0.809mL、1.60mmol)の40%トルエン溶液をゆっくりと滴下した。氷冷下で30分間攪拌し、室温に昇温後、さらに3時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて2回精製した後、薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=50:1)にて精製し、無色ガム状物質として表題化合物(0.040g、7%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δppm 1.12 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.80 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.26 (s, 3 H) 2.74 - 2.86 (m, 1 H) 3.38 - 3.59 (m, 3 H) 3.76 - 3.85 (m, 2 H) 4.05 - 4.18 (m, 3 H) 4.35 (dd, J=11.97, 4.51 Hz, 1 H) 4.63 (s, 2 H) 5.17 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.37 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.51 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.86 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.61 (dd, J=8.55, 2.49 Hz, 1 H) 6.72 (d, J=2.49 Hz, 1 H) 6.79 (d, J=8.55 Hz, 1 H) 7.21 - 7.43 (m, 5 H).
【0117】
(2)4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−{4−[2−(ベンジルオキシ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.40g、0.055mmol)のメタノール(1mL)−水(1mL)混合溶液にトリエチルアミン(2mL)を加え室温で1時間攪拌した。反応液を減圧下留去し、得られた残渣を薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=17:3)にて精製し、白色粉末として表題化合物(0.029g、94%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0118】
実施例2
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
【0119】
【化10】

【0120】
(1)4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド
2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノース(51.1g、70.1mmol)、4−{[4−(2−ベンジルオキシエトキシ)−2−メチルフェニル]メチル}−1,2−ジヒドロ−5−イソプロピル−3H−ピラゾール−3−オン(26.7g、70.1mmol;国際公開WO04/050122号を参考に4−ブロモ−3−メチルフェノールより合成)及びトリフェニルホスフィン(36.8g、140mmol)のテトラヒドロフラン(175mL)溶液に氷冷下、ジイソプロピルアゾジカルボキシレート(73.8mL、140mmol)の40%トルエン溶液をゆっくりと滴下した。氷冷下で30分間攪拌し、室温に昇温後、さらに3時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、褐色ガム状物質として粗化合物(44.5g)を得た。この粗化合物(28.4g)のメタノール(156mL)溶液に20%水酸化パラジウム−活性炭素(10.2g)を加え、水素雰囲気下、室温にて一晩攪拌した。反応液をセライト濾過後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=40:1)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(9.53g、21%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.14 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.82 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.72 - 2.89 (m, 1 H) 3.37 - 3.60 (m, 3 H) 3.89 - 3.97 (m, 2 H) 3.99 - 4.18 (m, 3 H) 4.33 (dd, J=11.89, 4.59 Hz, 1 H) 5.16 (t, J=9.71 Hz, 1 H) 5.35 (t, J=9.71 Hz, 1 H) 5.49 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.85 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.62 (dd, J=8.55, 2.64 Hz, 1 H) 6.72 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.81 (d, J=8.55 Hz, 1 H).
【0121】
(2)4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.175g、0.275mmol)のメタノール(3mL)溶液にナトリウムメトキシドの25%メタノール溶液を加え室温で3時間攪拌した。反応液にドライアイスを加え、中和した後に、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=20:2:1〜15:2:1)にて精製し、白色粉末として表題化合物(0.106g、82%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0122】
実施例3
4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
【0123】
【化11】

【0124】
(1)4−[4−(2−アジドエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
実施例2(1)で合成した4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(8.38g、13.2mmol)、トリエチルアミン(2.8mL、20mmol)のクロロホルム(82mL)溶液に氷冷下、メタンスルホニルクロリド(1.2mL、13mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応液に0.5N塩酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和重曹水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧下留去した。残渣をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させアジ化ナトリウムを加えて100℃で3時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで2回抽出した後、有機層を飽和食塩水で3回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧下留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(6.98g、80%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.14 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.82 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.06 (s, 3 H) 2.28 (s, 3 H) 2.76 - 2.89 (m, 1 H) 3.35 - 3.63 (m, 5 H) 4.05 - 4.18 (m, 3 H) 4.34 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.15 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.36 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.50 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.85 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.61 (dd, J=8.55, 2.64 Hz, 1 H) 6.72 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.81 (d, J=8.55 Hz, 1 H).
【0125】
(2)4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−アジドエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(6.98g、10.6mmol)のメタノール溶液に10%パラジウム−活性炭素(0.49g)を加え、水素雰囲気下、室温にて一晩攪拌した。不溶物をセライト濾過後、ろ液を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=30:1)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(6.16g、91%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.13 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.81 (s, 3 H) 1.98 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.75 - 2.91 (m, 1 H) 3.05 (t, J=5.13 Hz, 2 H) 3.34 - 3.69 (m, 3 H) 3.86 - 4.20 (m, 3 H) 4.34 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.16 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.36 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.50 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.85 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.60 (dd, J=8.39, 2.64 Hz, 1 H) 6.71 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.80 (d, J=8.39 Hz, 1 H).
【0126】
(3)4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの代わりに4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドを用いて、実施例2(2)に示す方法と同様の方法で表題化合物を合成した。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0127】
実施例4
ベンジル [イミノ({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチル]カルバマートの合成
【0128】
【化12】

【0129】
(1)ジベンジル [(E)−({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチルイリデン]ビスカルバマートの合成
実施例3(2)で合成した4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.503g、0.791mmol)のテトラヒドロフラン(0.3mL)溶液にN、N’−ビス(ベンジルオキシカルボニル)−1H−ピラゾール−1−カルボキシアミジン(0.359g、0.949mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(0.547g、73%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.12 (d, J=1.63 Hz, 3 H) 1.15 (d, J=1.63 Hz, 3 H) 1.81 (s, 3 H) 1.97 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.27 (s, 3 H) 2.74 - 2.87 (m, 1 H) 3.30 - 3.39 (m, 1 H) 3.44 - 3.61 (m, 2 H) 3.77 - 3.86 (m, 2 H) 3.99 - 4.18 (m, 3 H) 4.34 (dd, J=11.89, 4.90 Hz, 1 H) 5.07 - 5.23 (m, 5 H) 5.36 (t, J=9.79 Hz, 1 H) 5.49 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.82 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.59 (dd, J=8.39, 2.64 Hz, 1 H) 6.71 (d, J=2.64 Hz, 1 H) 6.79 (d, J=8.39 Hz, 1 H) 7.34 (m, 10 H) 8.72 (t, J=5.28 Hz, 1 H) 11.72 (br. s., 1 H).
【0130】
(2)ベンジル [イミノ({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチル]カルバマートの合成
ジベンジル [(E)−({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチルイリデン]ビスカルバマート(0.530g、0.560mmol)のベンジルアルコール(1mL)溶液にナトリウムベンジルオキシドのベンジルアルコール溶液(1M、0.34mL、0.34mmol)を室温で加え6時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで抽出後、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=20:2:1)にて精製し、淡茶色粉末として表題化合物(0.163g、45%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0131】
実施例5
N−{2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}グアニジンの合成
【0132】
【化13】

【0133】
実施例4で合成したベンジル [イミノ({2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}アミノ)メチル]カルバマート(0.154g、0.239mmol)のメタノール(3mL)溶液に20%水酸化パラジウム−活性炭素(0.03g)を加え、水素雰囲気下、室温にて2時間攪拌した。不溶物をセライト濾過後、ろ液を減圧下留去し、白色粉末として表題化合物(0.108g、85%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0134】
実施例6
4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
【0135】
【化14】

【0136】
(1)4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
実施例3(2)で合成した4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.507g、0.797mmol)のN、N−ジメチルホルムアミド(1.6mL)溶液に2−クロロアセトアミド(0.112g、1.20mmol)、トリエチルアミン(0.17mL、1.2mmol)を加え、50℃で3時間攪拌した。反応液をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=60:1)に付し、淡黄色粉末として表題化合物(0.185g、34%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.13 (d, J=6.99 Hz, 6 H) 1.82 (s, 3 H) 1.97 (s, 3 H) 2.01 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.26 (s, 3 H) 2.71 - 2.89 (m, 1 H) 2.99 (t, J=4.66 Hz, 2 H) 3.30 - 3.59 (m, 5 H) 3.97 - 4.17 (m, 3 H) 4.30 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.15 (t, J=9.64 Hz, 1 H) 5.34 (t, J=9.64 Hz, 1 H) 5.47 (t, J=8.78 Hz, 1 H) 5.84 (d, J=8.78 Hz, 1 H) 6.30 - 6.45 (m, 1 H) 6.58 (dd, J=8.39, 2.41 Hz, 1 H) 6.68 (d, J=2.41 Hz, 1 H) 6.80 (d, J=8.39 Hz, 1 H) 7.18 - 7.30 (m, 1 H).
【0137】
(2)4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの代わりに4−{4−[2−(N−カルバモイルメチルアミノ)エトキシ]−2−メチルベンジル}−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドを用いて、実施例2(2)に示す方法と同様の方法で表題化合物を合成した。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0138】
実施例7
N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−N’−{2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}ウレアの合成
【0139】
【化15】

【0140】
実施例3(2)で合成した4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.145g、0.228mmol)のクロロホルム(1.5mL)溶液にトリエチルミン(0.043mL、0.308mmol)、クロロギ酸 4−ニトロフェニル(0.053g、0.262mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。さらにトリエチルアミン(0.064mL、0.456mmol)と2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(0.033mL、0.342mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣にメタノール(2.3mL)とナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液、0.20mL、0.912mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応液にドライアイスを加え、中和した後に、溶媒を減圧留去した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=10:2:1)で精製し、白色粉末として表題化合物(0.064g、48%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0141】
実施例8
4−[4−(2−{ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]アミノ}エトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの製造
【0142】
【化16】

【0143】
(1)4−[4−(2−{ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]アミノ}エトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
2−クロロアセトアミドの代わりにベンジル-2-ブロモエチルエーテルを用いて実施例6(1)と同様に表題化合物(0.213g、33%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.11 (d, J=2.33 Hz, 3 H) 1.13 (d, J=2.33 Hz, 3 H) 1.80 (s, 3 H) 1.97 (s, 3 H) 2.02 (s, 3 H) 2.04 (s, 3 H) 2.25 (s, 3 H) 2.71 - 3.05 (m, 5 H) 3.51 (d, J=5.44 Hz, 1 H) 3.55 - 3.63 (m, 3 H) 3.99 (t, J=6.06 Hz, 2 H) 4.12 (dd, J=11.89, 3.81 Hz, 1 H) 4.34 (dd, J=11.89, 4.66 Hz, 1 H) 4.51 (s, 3 H) 5.13 (t, J=9.17 Hz, 1 H) 5.30 - 5.41 (m, 1 H) 5.50 (t, J=8.86 Hz, 1 H) 5.83 (d, J=8.86 Hz, 1 H) 6.55 (dd, J=8.39, 2.49 Hz, 1 H) 6.66 (d, J=2.49 Hz, 1 H) 6.77 (d, J=8.39 Hz, 1 H) 7.22 - 7.35 (m, 5 H).
【0144】
(2)4−[4−(2−{ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]アミノ}エトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β −D−グルコピラノシドの合成
4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの代わりに4−[4−(2−{ビス[2−(ベンジルオキシ)エチル]アミノ}エトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドを用いて実施例2(2)と同様の方法で表題化合物を得た(0.052g、94%)。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0145】
実施例9
N−[2−ヒドロキシ−1−(ヒドロキシメチル)−1−メチルエチル]−N’−{2−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)−3−メチルフェノキシ]エチル}尿素の製造
【0146】
【化17】

【0147】
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノールの代わりに2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオールを用い、実施例7と同様の方法で表題化合物を得た(0.123g、86%)。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0148】
実施例10
4−(4−{2−[(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)アミノ]エトキシ}−2−メチルベンジル)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β −D−グルコピラノシドの製造
【0149】
【化18】

【0150】
実施例2(1)で合成した4−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.40g、0.63mmol)、トリエチルアミン(0.13mL、0.94mmol)のクロロホルム(2.5mL)溶液に氷冷下、メタンスルホニルクロリド(0.075mL、0.91mmol)を加え、室温で30分間攪拌した。反応液に0.5N塩酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出後、有機層を飽和重曹水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧下留去した。残渣をアセトニトリル−エタノール混合溶媒に溶解させ、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(0.060mL、0.63mmol)、よう化ナトリウム(9mg、0.06mmol)を加えて60℃で4日間攪拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣をメタノール(1mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液)を加えて室温で2時間攪拌した。反応液にドライアイスを加え、中和した後に、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=3:2:1)で精製した。得られた残渣を再度シリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=5:2:1)にて精製し、0.070gの残渣を得た。この残渣をメタノール(3mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液)を加えた後に、この溶液をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=5:2:1)にて精製し、表題化合物(0.023g、14%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータを表1に示す。
【0151】
実施例11
N−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]尿素の製造
【0152】
【化19】

【0153】
(1)4−(4−アミノベンジル)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−D−グルコピラノース(25.2g、69.0mmol)、4−[(4−ニトロフェニル)メチル]−1,2−ジヒドロ−5−イソプロピル−3H−ピラゾール−3−オン(9.02g、34.5mmol;国際特許公開WO2004/019958号を参考にニトロベンジルブロミドより合成)及びトリフェニルホスフィン(18.1g、69.0mmol)のテトラヒドロフラン(43mL)溶液に氷冷下、ジイソプロピルアゾジカルボキシレートの40%トルエン溶液(36.3mL、69.0mmol)をゆっくりと滴下した。氷冷下で30分間攪拌し、室温に昇温後、さらに3時間攪拌した。溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(n−ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製した。さらに、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=50:1)にて精製し、11.9gの残渣を得た。この残渣のメタノール(195mL)溶液に10%パラジウム−活性炭素(3.9g)を加え、水素雰囲気下、室温にて一晩攪拌した。反応液をセライト濾過後、溶媒を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(ヘキサン:酢酸エチル=1:3)で精製した。得られた残渣を再度シリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=20:1)にて精製し、淡黄色液体として表題化合物 (2.68g、13%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.15 (d, J=1.24 Hz, 3 H) 1.18 (d, J=1.24 Hz, 3 H) 1.89 (s, 3 H) 1.99 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.06 (s, 3 H) 2.84 - 2.98 (m, 1 H) 3.29 - 3.38 (m, 1 H) 3.44 - 3.60 (m, 2 H) 4.07 - 4.17 (m, 1 H) 4.34 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.09 - 5.19 (m, 1 H) 5.38 (dd, J=10.10, 9.33 Hz, 1 H) 5.54 (t, J=8.70 Hz, 1 H) 5.82 (d, J=8.70 Hz, 1 H) 6.58 (d, J=8.55 Hz, 2 H) 6.90 (d, J=8.55 Hz, 2 H).
【0154】
(2)N−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]尿素の合成
4−[4−(2−アミノエトキシ)−2−メチルベンジル]−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの代わりに4−(4−アミノベンジル)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドを、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ルの代わりにアンモニア(7Mメタノール溶液)を用いて実施例7と同様の方法で表題化合物(0.125g、73%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0155】
実施例12
N−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]−N’−(ピリジン−3−イルメチル)尿素の製造
【0156】
【化20】

【0157】
アンモニア(7Mメタノール溶液)の代わりに3−(アミノメチル)ピリジンを用いて実施例11と同様の方法で表題化合物(0.087g、46%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0158】
実施例13
(3E)−N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドの製造
【0159】
【化21】

【0160】
(1)4−(4−ブロモベンジル)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−[(4−ニトロフェニル)メチル]−1,2−ジヒドロ−5−イソプロピル−3H−ピラゾール−3−オンの代わりに4−[(4−ブロモフェニル)メチル]−1,2−ジヒドロ−5−イソプロピル−3H−ピラゾール−3−オン(国際特許公開WO2004/014932号を参考に4−ブロモベンジルブロミドより合成)を用い、実施例11(1)と同様の方法で23.4gの残渣を得た。
【0161】
この残渣をメタノール(170mL)に溶解させ、ナトリウムメトキシド(4.6Mメタノール溶液、15mL、68mmol)を加え、3時間攪拌した。反応液を濃縮後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=17:3)にて精製し、表題化合物(6.74g、27%)を得た。
1H NMR (600 MHz, METHANOL-d4) δ ppm 1.14 (dd, J=7.11, 3.90 Hz, 6 H) 2.82 - 2.93 (m, 2 H) 3.26 (t, J=8.94 Hz, 1 H) 3.52 - 3.68 (m, 2 H) 3.68 - 3.81 (m, 3 H) 3.90 (dd, J=11.46, 3.67 Hz, 1 H) 5.45 (d, J=8.71 Hz, 1 H) 7.11 (d, J=8.25 Hz, 2 H) 7.36 (d, J=8.25 Hz, 2 H).
【0162】
(2)4−(4−ブロモベンジル)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシドの合成
4−(4−ブロモベンジル)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 5−チオ−β−D−グルコピラノシド(6.25g、13.2mmol)のピリジン(50mL)溶液に無水酢酸(25mL)を加え、2時間攪拌した。反応液に水を加え、酢酸エチルで2回抽出後、有機層を1N塩酸、飽和重曹水溶液、飽和食塩水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。乾燥剤をろ別後、溶媒を減圧下留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2)にて精製し、表題化合物(6.08g、72%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.15 - 1.22 (m, 6 H) 1.87 (s, 3 H) 1.99 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.06 (s, 3 H) 2.84 - 2.99 (m, 1 H) 3.32 - 3.44 (m, 1 H) 3.50 - 3.66 (m, 2 H) 4.05 - 4.20 (m, 1 H) 4.34 (dd, J=11.97, 4.82 Hz, 1 H) 5.07 - 5.22 (m, 9.09 Hz, 1 H) 5.32 - 5.45 (m, 1 H) 5.52 (t, J=8.70 Hz, 1 H) 5.85 (d, J=8.70 Hz, 1 H) 7.00 (d, J=8.39 Hz, 2 H) 7.35 (d, J=8.39 Hz, 2 H).
【0163】
(3)(3E)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エン酸の合成
4−(4−ブロモベンジル)−5−イソプロピル−1H−ピラゾール−3−イル 2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシド(0.66g、1.03mmol)のアセトニトリル(10mL)溶液にビニル酢酸(0.21mL、2.47mmol)、酢酸パラジウム(II)(22mg、0.10mmol)、トリ−O−トリルホスフィン(60mg、0.20mmol)、トリエチルアミン(0.72mL、5.15mmol)を加え、biotage社製マイクロウェーブを用いて120℃、20分間反応を行った。反応液を減圧下留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=20:1)にて精製した。得られた残渣を再度シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:4)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(301mg、56%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.13 - 1.20 (m, J=6.99, 2.95 Hz, 6 H) 1.85 (s, 3 H) 1.99 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 2.82 - 2.96 (m, 1 H) 3.21 - 3.37 (m, 3 H) 3.54 - 3.68 (m, J=3.89 Hz, 2 H) 4.09 - 4.18 (m, J=12.59, 3.73 Hz, 1 H) 4.33 (dd, J=11.73, 4.90 Hz, 1 H) 5.09 - 5.19 (m, 1 H) 5.31 - 5.42 (m, 1 H) 5.53 (t, J=8.55 Hz, 1 H) 5.73 (d, J=8.55 Hz, 1 H) 6.16 - 6.30 (m, 1 H) 6.41 - 6.55 (m, 1 H) 7.06 (d, J=7.77 Hz, 2 H) 7.22 - 7.28 (m, 2 H).
【0164】
(4)(3E)−N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドの合成
(3E)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エン酸(0.144g、0.223mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド(1.5mL)溶液に、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ル(31.9μL、0.334mmol)、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール1水和物(90mg、0.668mmol)、N−エチル−N′−3−ジメチルアミノプロピルカルボジイミド塩酸塩(128mg、0.668mmol)を加え、室温にて2時間攪拌した。反応液をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(クロロホルム:メタノール=20:1)にて精製し、淡黄色粉末として表題化合物(138mg、88%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.18 (d, J=7.15 Hz, 6 H) 1.28 (s, 6 H) 1.87 (s, 3 H) 1.99 (s, 3 H) 2.03 (s, 3 H) 2.05 (s, 3 H) 3.06 - 3.16 (m, 2 H) 3.32 - 3.44 (m, 1 H) 3.53 - 3.70 (m, 4 H) 4.05 - 4.18 (m, 2 H) 4.33 (dd, J=11.97, 4.82 Hz, 1 H) 5.11 - 5.22 (m, 1 H) 5.32 - 5.42 (m, 1 H) 5.53 (t, J=8.70 Hz, 1 H) 5.86 (d, J=8.70 Hz, 1 H) 6.11 - 6.26 (m, 1 H) 6.48 (d, J=15.85 Hz, 1 H) 7.08 (d, J=8.24 Hz, 2 H) 7.25 (d, J=8.24 Hz, 2 H).
【0165】
(5)(3E)−N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドの合成
(3E)−N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミド(0.124g、0.176mmol)のメタノール(2mL)溶液に、ナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液;0.38mL、0.18mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=20:2:1)で精製し、表題化合物(63mg、65%)を合成した。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0166】
実施例14
(3E)−N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドの製造
【0167】
【化22】

【0168】
(1)(3E)−N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドの合成
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ルの代わりに2−メチルアラニンアミドを用いて、実施例13(4)と同様の方法で表題化合物(0.120g、70%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.15 (d, J=6.68 Hz, 6 H) 1.58 (d, J=2.80 Hz, 6 H) 1.85 (s, 3 H) 2.00 (s, 3 H) 2.03 (s, 1 H) 2.05 (s, 3 H) 2.79 - 3.03 (m, 2 H) 3.12 (d, J=7.15 Hz, 2 H) 3.36 - 3.71 (m, 3 H) 4.05 - 4.19 (m, 2 H) 4.33 (dd, J=11.97, 4.66 Hz, 1 H) 5.13 - 5.27 (m, 1 H) 5.32 - 5.44 (m, 1 H) 5.49 - 5.60 (m, 1 H) 5.86 (d, J=8.70 Hz, 1 H) 6.13 - 6.29 (m, 1 H) 6.46 (d, J=15.85 Hz, 1 H) 7.06 (d, J=7.93 Hz, 2 H) 7.23 (d, J=7.93 Hz, 2 H).
【0169】
(2)(3E)−N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドの合成
(3E)−N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドの代わりに(3E)−N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エンアミドを用いて、実施例13(5)と同様の方法で表題化合物(0.067g、73%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0170】
実施例15
N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタンアミドの製造
【0171】
【化23】

【0172】
(1)4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタン酸の合成
実施例13(3)で合成した(3E)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エン酸(0.728g、1.13mmol)のメタノール(5mL)溶液に10%パラジウム−活性炭(70mg)を加え、水素雰囲気下で一晩攪拌した。反応液をセライト濾過後、ろ液を濃縮し、表題化合物(0.670g、91%)を得た。
1H NMR (300 MHz, CHLOROFORM-d) δ ppm 1.15 (d, J=2.33 Hz, 3 H) 1.18 (d, J=2.33 Hz, 3 H) 1.84 - 1.95 (m, 2 H) 1.86 (s, 3 H) 1.99 (s, 3 H) 2.01 - 2.02 (m, 3 H) 2.04 (s, 3 H) 2.27 - 2.37 (m, 2 H) 2.54 - 2.67 (m, 2 H) 2.84 - 2.99 (m, 1 H) 3.27 - 3.38 (m, 1 H) 3.53 - 3.68 (m, 2 H) 4.13 (dd, J=11.97, 3.96 Hz, 1 H) 4.32 (dd, J=11.97, 4.82 Hz, 1 H) 5.09 - 5.19 (m, 1 H) 5.30 - 5.44 (m, 1 H) 5.53 (t, J=8.55 Hz, 1 H) 5.75 (d, J=8.55 Hz, 1 H) 7.03 (s, 4 H).
【0173】
(2)N−(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタンアミドの合成
(3E)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタ−3−エン酸の代わりに4−[4−({5−イソプロピル−3−[(2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタン酸を用いて、実施例13(4)と同様の方法で0.154gの残渣を得た。
【0174】
この残渣のメタノール(2mL)溶液に、ナトリウムメトキシド(25%メタノール溶液;52μL、0.24mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液を減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィ−(酢酸エチル:エタノール:水=15:2:1)で精製し、表題化合物(90mg、68%)を合成した。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0175】
実施例16
N−(2−アミノ−1,1−ジメチル−2−オキソエチル)−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタンアミドの製造
【0176】
【化24】

【0177】
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ルの代わりに2−メチルアラニンアミドを用い、実施例15(2)と同様の方法で表題化合物(69mg、54%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0178】
実施例17
N−[2−ヒドロキシ−1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル]−4−[4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル]ブタンアミドの製造
【0179】
【化25】

【0180】
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ルの代わりにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを用い、実施例15(2)と同様の方法で表題化合物(9mg、6%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0181】
実施例18
N−[1,1−ジメチル−2−(4−メチルピペラジン−1−イル)−2−オキソエチル]−4−{4−({5−イソプロピル−3−[(5−チオ−β−D−グルコピラノシル)オキシ]−1H−ピラゾール−4−イル}メチル)フェニル}ブタンアミドの製造
【0182】
【化26】

【0183】
2−アミノ−2−メチル−1−プロパノ−ルの代わりに2−メチル−1−(4−メチルピペラジン−1−イル)−1−オキソプロパン−2−アミンを用い、実施例15(2)と同様の方法で表題化合物(69mg、54%)を得た。得られた化合物の構造、NMRデータ及びMSデータを表1に示す。
【0184】
【表1−1】

【0185】
【表1−2】

【0186】
【表1−3】

【0187】
【表1−4】

【0188】
【表1−5】

【0189】
製剤実施例
【0190】
【表2】

【0191】
製造方法
薬物(本発明化合物)を乳糖一水和物、結晶セルロ−ス、カルボキシメチルセルロ−スカルシウム及びヒドロキシプロピルセルロ−スと混合し、この混合物を粉砕機で粉砕する。粉砕された混合物を撹拌造粒機で1分間混合し、その後、水で4〜8分間造粒する。得られた造粒物を70℃、40分間乾燥する。造粒乾燥末を500μmの篩で篩過する。篩過後の造粒乾燥末とステアリン酸マグネシウムを、V型混合機を用いて30rpmで3分間混合する。ロ−タリ−式打錠機を用いて得られた打錠用顆粒を圧縮成形し製錠する。
【0192】
【表3】

【0193】
試験例1
(1)ヒトSGLT1とヒトSGLT2のクローニングと発現ベクターへの導入
ヒト小腸由来mRNAからヒトSGLT1配列(NM_000343)を逆転写の後増幅し、pCMV−tag5A(ストラタジーン社)に導入した。また、ヒトSGLT2配列(NM_003041)はヒト腎由来mRNAから同様な方法で調製し、pcDNA3.1+hygro(インビトロジェン社)に導入した。それぞれのクローンの配列が、報告されている配列と一致することを確認した。
【0194】
(2)ヒトSGLT1及びヒトSGLT2を安定に発現するCHO−k1細胞の作成
ヒトSGLT1およびヒトSGLT2発現ベクターを、リポフェクトアミン2000(インビトロジェン社)を用いてCHO−K1細胞へトランスフェクションした。SGLT発現細胞は、500μg/mLの濃度のジェネティシン(SGLT1)またはハイグロマイシンB(SGLT2)の存在下で培養し耐性株を選択し、下記に示す系により糖取り込み比活性を指標に取得した。
【0195】
(3)細胞におけるナトリウム依存的糖取り込み阻害試験
ヒトSGLT1又はヒトSGLT2を安定に発現する細胞をナトリウム依存的グルコース取り込み活性阻害試験に用いた。
【0196】
前処理用緩衝液(140mM 塩化コリン、2mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)200μLをヒトSGLT1発現細胞に又は2mLをヒトSGLT2発現細胞に加え、20分間インキュベーションした。前処理用緩衝液を除去し、試験化合物を含む取り込み用緩衝液([14C]メチル α−D−グルコピラノシドを含むメチル α−D−グルコピラノシド(1mM)、145mM NaCl、2mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)を75μL(SGLT1の場合)又は200μL(SGLT2の場合)加え、37℃にて30分(SGLT1の場合)又は1時間(SGLT2の場合)取り込み反応を行った。反応後細胞を洗浄用緩衝液(10mM メチル α−D−グルコピラノシド、140mM 塩化コリン2mM KCl、1mM CaCl2、1mM MgCl2、10mM HEPES/5mM Tris、pH7.4)200μL(SGLT1の場合)又は2mL(SGLT2の場合)で2回洗浄し、0.2M NaOH溶液75μL(SGLT1の場合)又は400μL(SGLT2の場合)に溶かした。液体シンチレーター(パーキンエルマー社)を加えよく混和した後、microBETA(SGLT1の場合)又は液体シンチレーションカウンター(SGLT2の場合)(ベックマンコールター社)で放射活性を測定した。対照群として試験化合物を含まない取り込み用緩衝液を調製した。また基礎取り込み用としてNaClに代えて塩化コリンを含む取り込み用緩衝液を調製した。
【0197】
IC50値を求めるにあたり、適当な6濃度の試験化合物を用い、対照群の糖取り込み量(100%)に対し、糖取り込み量が50%阻害される試験化合物濃度(IC50値)を算出した。試験結果を表4に示す。
【0198】
【表4】

【0199】
試験例2
ストレプトゾトシン糖尿病モデルラットにおける血糖値上昇抑制作用確認試験
(1)糖尿病モデルラットの作製
7週齢のSD/IGSラット(日本チャールスリバー株式会社,雄性)について約16時間の絶食後、エーテル麻酔下でストレプトゾトシン(STZ)50mg/kgを尾静脈内投与し、糖尿病モデルラットを作製した.同様にエーテル麻酔下,1.25mmol/Lクエン酸生理食塩液1mL/kgを尾静脈内投与し、正常対照ラットを作製した。STZまたは1.25mmol/Lクエン酸生理食塩液投与1週後(8週齢)、経口グルコース負荷試験に供した。
【0200】
(2)経口グルコース負荷試験
ラットを約16時間の絶食後、薬物投与群には、0.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液に懸濁した薬物(1mg/kg)を,対照群には0.5%CMC水溶液のみ経口投与した。薬物投与5分後に、グルコース溶液(2g/kg)を経口投与し、薬物投与前(0time)、及び、経口投与0.25、0.5、1、2時間後の計5点で採血した。
【0201】
採血は、エーテル麻酔下でラット眼窩静脈洞よりヘパリンコート採血管を用いて行い、遠心分離後、血漿を分取した。血漿中グルコース濃度の定量は、グルコースCIIテストワコー(和光純薬株式会社)を用いて測定した。血糖値上昇抑制作用強度は、各薬物投与群の0から1時間までの血糖値より台形法を用いて血糖値-時間曲線下面積(AUC)を算出し、basalを差し引いた血糖増加面積(ΔAUC)として表記し、対照群のそれに対する降下の割合で表記した。結果を表5に示す。
【0202】
【表5】

【産業上の利用可能性】
【0203】
本発明により、小腸上皮に発現するSGLT1(ナトリウム依存性グルコース共輸送体1)を選択的に阻害し、小腸からの糖吸収を阻害することによって、IGT(耐糖能異常)を制御するピラゾリル 5−チオグルコシド化合物を有効成分として含有する糖尿病の予防又は治療剤を提供することが期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表されるピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【化1】

式(I)中、Zは、C1-6アルキル基であり、
1、R2及びR3は同一または異なって、水素原子、ハロゲン原子、C1-6アルコキシ基またはC1-6アルキル基であり、
Yは単結合、C1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基または−O−(CH2)n−(nは1から4の整数を示す)であり、
Qは水酸基、−OC1-4アルキルフェニル、−N(RA)RBまたは−CONHRCである、
但し、Qが水酸基、−OC1-4アルキルフェニルまたは−NH2のとき、Yは単結合ではない。
A及びRBは同一または異なって、水素原子、−CONHRD(RDは水素原子または、水酸基及びピリジル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよいC1-6アルキル基を示す)、−C(=NH)NHRE(REは水素原子、または−CO21-4アルキルフェニルである)、あるいは、C1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群から選択される置換基で置換されてもよい)であり、
Cは水酸基及び−CON(RF)RGからなる群より選択される置換基で置換されたC1-6アルキル基であり、
F及びRGは、同一または異なって、水素原子またはC1-6アルキル基であるか、あるいはRF及びRGが結合している窒素原子と一緒になって、さらに環構成原子として、酸素原子、硫黄原子及び窒素原子から選択されるヘテロ原子を含んでも良い5〜6員のヘテロシクロアルキル基(該ヘテロシクロアルキル基は水酸基で置換されても良いC1-6アルキル基で置換されてもよい)を形成してもよい。
【請求項2】
YがC1-6アルキレン基、C2-6アルケニレン基または−O−(CH2)n−(nは2
から4の整数である)である、請求項1記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項3】
Qが−N(RA)RB(RA及びRBは請求項1で定義したとおりである)である、請求項1または2に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項4】
Aが−CONHRD(RDは水酸基及びピリジル基からなる群から選択される置換基で置換されてもよいC1-6アルキル基である)であり、RBが水素原子である、請求項3に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項5】
Aが−C(=NH)NHRE(REは水素原子、または−CO21-4アルキルフェニルである)であり、RBが水素原子である、請求項3に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項6】
A及びRBが同一または異なって、水素原子、またはC1-6アルキル基(該C1-6アルキル基は、水酸基、−CONH2及び−OC1-4アルキルフェニルからなる群から選択される置換基で置換されてもよい)である請求項3記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項7】
Qが−CONHRC(RCは請求項1で定義したとおりである)である、請求項1または2に記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項8】
Cが水酸基及び−CONH2からなる群より選択される1〜4個の置換基で置換されたC1-6アルキル基であるか、または、−CO−ピペラジノ(該ピペラジノは、水酸基で置換されても良いC1-6アルキル基で置換されてもよい)で置換されたC1-6アルキル基である(ここで、RCが−NH−に結合する各C1-6アルキル基の炭素原子は3級である)、請求項7記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項9】
YはC1-6アルキレン基又はC2-6アルケニレン基である、請求項7または8記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。
【請求項10】
1、R2及びR3は同一または異なって、水素原子、またはC1-6アルキル基であり、
Yは、−O−(CH2)n−(nは1から4の整数である)であり、
Qは、水酸基、−OC1-4アルキルフェニル、又は−N(RA)RBであり、
A及びRBは、同一又は異なって、水素原子、−CONH2で置換されたC1-6アルキル基、−CONHRD(RDは、水酸基で置換されたC1-6アルキル基である)、あるいは−C(=NH)NHRE(REは、水素原子または−CO21-4アルキルフェニルである)である、請求項1記載のピラゾリル 5−チオグルコシド化合物若しくはその製薬学的に許容される塩又はそれらの水和物を有効成分として含有する、糖尿病の予防又は治療剤。

【公開番号】特開2009−107947(P2009−107947A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−279690(P2007−279690)
【出願日】平成19年10月26日(2007.10.26)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】