説明

ピラー端子、それを備えたコンセントおよびスイッチ

【課題】電線が端子ねじの外周面と端子枠の内面との間に入ることを抑制可能なピラー端子、それを備えたコンセントおよびスイッチを提供する。
【解決手段】端子部材の接触端子部32と電線とが内側に挿入される端子枠20と、端子枠20の内方に向かって先端部が端子枠20に螺入可能な状態で設けられた端子ねじ21とを備え、端子ねじ21の上記先端部と上記先端部に対向する端子枠20の内面との間に接触端子部32が配置されるとともに、上記先端部と接触端子部32との間に上記電線が配置され、端子ねじ21を端子枠20に螺入することで、上記電線と接触端子部32とを端子ねじ21と端子枠20との間で挟持するピラー端子であって、端子枠20における端部よりも内方の領域を端子枠20の内方に窪ませることで、端子枠20の内面における端子ねじ21の外周面に対向する部位に、端子ねじ21の上記外周面側に向かって突出する突起46が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピラー端子、それを備えたコンセントおよびスイッチに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンセントの刃受けと電線とを接続する接続端子として、ピラー端子が知られている(例えば、特許文献1)。この種のピラー端子は、ピラー端子の端子枠内に挿入された電線と接触端子部とを、端子ねじと端子枠とで挟持して、電線と接触端子部とが電気的に接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−249282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種のピラー端子は、電線が端子ねじの外周面と端子枠の内面との間に入りやすい。特に、電線として、より線(複数の細線である導線を捻って形成した電線)を用いた場合、電線の芯材がばらけて端子ねじの外周面と端子枠の内面との間に入り、電線と接触端子部との間の安定した接触を確保しにくくなる。
【0005】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電線が端子ねじの外周面と端子枠の内面との間に入ることを抑制することが可能なピラー端子、それを備えたコンセントおよびスイッチを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のピラー端子は、端子部材の接触端子部と電線とが内側に挿入される端子枠と、前記端子枠の内方に向かって先端部が前記端子枠に螺入可能な状態で設けられた端子ねじとを備え、前記端子ねじの前記先端部と前記先端部に対向する前記端子枠の内面との間に前記接触端子部が配置されるとともに、前記先端部と前記接触端子部との間に前記電線が配置され、前記端子ねじを前記端子枠に螺入することで、前記電線と前記接触端子部とを、前記端子ねじと前記端子枠との間で挟持するピラー端子であって、前記端子枠における端部よりも内方の領域を前記端子枠の内方に窪ませることにより、前記端子枠の内面における前記端子ねじの外周面に対向する部位に、前記端子ねじの前記外周面側に向かって突出する突起が形成されてなることを特徴とする。
【0007】
このピラー端子において、前記突起は、前記端子枠における前記電線の挿入方向において、前記端子枠に螺入された前記端子ねじに対向する位置からずらして形成されてなることが好ましい。
【0008】
このピラー端子において、前記端子ねじの前記先端部と前記電線との間に配置され、前記端子ねじに押されることで前記電線を前記接触端子部とで挟持する端子補助板を備えてなることが好ましい。
【0009】
本発明のコンセントは、プラグの複数の接極子をそれぞれ受ける複数の刃受けばね部と、前記各刃受けばね部それぞれに電気的に接続された前記端子部材の前記接触端子部と前記電線とを挟持して電気的に接続する複数の端子とを備え、前記各端子それぞれが前記ピラー端子からなることを特徴とする。
【0010】
本発明のスイッチは、電流経路を開閉する接点装置と、前記接点装置に電気的に接続された前記端子部材の前記接触端子部と前記電線とを挟持して電気的に接続する複数の端子とを備え、前記各端子それぞれが前記ピラー端子からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のピラー端子においては、電線が端子ねじの外周面と端子枠の内面との間に入ることを抑制することが可能となる効果がある。
【0012】
本発明のコンセントにおいては、電線が端子ねじの外周面と端子枠の内面との間に入ることを抑制することが可能なコンセントを提供することが可能となる効果がある。
【0013】
本発明のスイッチにおいては、電線が端子ねじの外周面と端子枠の内面との間に入ることを抑制することが可能なスイッチを提供することが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1のコンセントの分解斜視図である。
【図2】同上のコンセントの縦断面図である。
【図3】同上のコンセントにおける刃受け部の斜視図である。
【図4】同上のコンセントにおける刃受け部の正面図である。
【図5】同上のコンセントにおける刃受け部の側面図である。
【図6】同上のコンセントにおけるピラー端子の下面図である。
【図7】同上のコンセントにおけるピラー端子の端子枠を示す斜視図である。
【図8】比較のためのピラー端子の下面図である。
【図9】別例のコンセントにおけるピラー端子の正面図である。
【図10】別例のコンセントにおけるピラー端子の下面図である。
【図11】別例のコンセントにおけるピラー端子の端子補助板を示す斜視図である。
【図12】比較のためのピラー端子の下面図である。
【図13】実施形態2のコンセントにおけるピラー端子に関し、(a)は側面図、(b)は(a)のA1−A1概略断面図である。
【図14】実施形態3のスイッチの斜視図である。
【図15】同上のスイッチの縦断面図である。
【図16】同上のスイッチにおける端子部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態1)
以下、図1〜図7を参照して、本実施形態のコンセント1について説明する。なお、本実施形態のコンセント1は、複数の接極子が栓刃であるプラグと複数の接極子が丸ピンであるプラグとのいずれもが接続することができる。以降では、特に断らない限りは、コンセント1にプラグの栓刃が挿入される態様を想定して本実施形態を説明する。
【0016】
コンセント1は、図1に示すように、同コンセント1の外枠を構成する収容ケース2と、プラグの一対の栓刃が接続される一対の端子部3,3と、同プラグの一対の栓刃それぞれが挿入される一対の差込口4,4を開閉する扉部5とを備えている。
【0017】
以降では、説明の便宜上、コンセント1において、プラグの栓刃が挿入される方向を「下方」とし、この方向とは反対の方向を「上方」とする。また、説明の便宜上、コンセント1において、一対の端子部3,3の並設方向を「長手方向」とし、この長手方向および上下方向のいずれにも直交する方向を「幅方向」とする。
【0018】
収容ケース2は、各端子部3の一部を収容するボディ10と、ボディ10に取り付けられるカバー11と、ボディ10とカバー11とを係止する2つの係止部品12とで構成されている。カバー11には、一対の差込口4,4が設けられている。コンセント1の長手方向において、ボディ10およびカバー11の両側面には、2つの係合部13がそれぞれ設けられている。ボディ10の各係合部13とカバー11の各係合部13は、カバー11をボディ10に取り付けたときにそれぞれ隣接するようになっている。各係止部品12は、カバー11をボディ10に取り付けたときにそれぞれ隣接した各係合部13に対応する位置に、2つの被係合部12aがそれぞれ設けられ、ボディ10およびカバー11の各係合部13同士が互いに押圧するように各係合部13それぞれに係合する。これにより、カバー11とボディ10とが確実に固定される。
【0019】
扉部5は、各差込口4を開閉する一対の開閉体14,14と、一対の開閉体14,14を互いに近づく向きに付勢するコイルスプリングからなる一対のばね15,15と、一対の開閉体14,14を支持する支持部16とで構成されている。コンセント1の長手方向に沿った各開閉体14の長さはカバー11におけるコンセント1の長手方向の内壁面間の長さと同程度の長さとされ、一対の開閉体14,14は、カバー11の内側に一対の差込口4,4を閉鎖するように設けられている。各開閉体14と、コンセント1の幅方向におけるカバー11の両内側面との間にそれぞればね15,15が保持されている。コンセント1の幅方向の内面側には、各ばね15,15を受ける第1のばね受け部(図示せず)がそれぞれ設けられている。また、各開閉体14は、上記第1のばね受け部に対向する位置に、各ばね15を受ける第2のばね受け部14aがそれぞれ設けられている。したがって、各ばね15が上記第1のばね受け部と第2のばね受け部14aとの間に保持されることで、各開閉体14同士が互いに押圧するようになっている。支持部16は、一対の開閉体14,14および一対のばね15,15を覆うようにカバー11に取り付けられ、各開閉体14の一部がコンセント1の幅方向にそれぞれ移動可能となる形で支持部16に設けられた支持孔16aに挿入され一対の開閉体14,14を支持する。支持部16には、一対の差込口4,4に対応する位置に一対の栓刃挿入口17,17が設けられている。
【0020】
各端子部3は、プラグの栓刃および丸ピンが挿入可能な刃受け部18と、電線50(図6参照)と刃受け部18とを電気的に接続するピラー端子19とでそれぞれ構成されている。各刃受け部18は、各差込口4に対応する位置にそれぞれ設けられている。各ピラー端子19は、各刃受け部18に対応する位置にそれぞれ設けられている。各ピラー端子19は、刃受け部18に設けられた接触端子部32と電線50とが内側に挿入される端子枠20と、端子枠20に取り付けられた端子ねじ21とをそれぞれ備えている。
【0021】
以下、図2を参照して、コンセント1の各差込口4、各開閉体14および各刃受け部18の位置関係について説明する。一対の差込口4,4はコンセント1の長手方向に並列して設けられている。各差込口4におけるコンセント1の下方側には、各開閉体14がそれぞれ設けられている。一対の開閉体14,14は、プラグの栓刃が挿入されることにより一対のばね15,15のばね力に抗して互いに離れる向きに移動するように支持部16に支持されている。各開閉体14におけるコンセント1の下方側には、各刃受け部18がそれぞれ設けられている。各刃受け部18におけるコンセント1の下方側には、ピラー端子19がそれぞれ設けられている。
【0022】
ボディ10には、ボディ10におけるコンセント1の長手方向の中間部に設けられた隔壁22により区切られた2つの端子収容室23が設けられている。各端子収容室23にそれぞれ収容された各端子部3は、隔壁22により絶縁されている。各端子収容室23には、刃受け部18を収容する刃受け部収容室24と、ピラー端子19を収容するピラー端子収容室25とがそれぞれ設けられている。
【0023】
各ピラー端子収容室25は、ボディ10におけるコンセント1の下方側且つボディ10におけるコンセント1の長手方向の半分の領域にそれぞれ設けられている。各ピラー端子収容室25におけるコンセント1の下方側には、電線50が挿通する電線挿通口28がそれぞれ設けられている。各ピラー端子収容室25におけるコンセント1の下方側には、端子枠20が嵌り込む嵌合部29がそれぞれ設けられている。また、各ピラー端子収容室25におけるコンセント1の長手方向の端子ねじ21側には、ドライバによる端子ねじ21の回転を可能とするためのドライバ挿通口30がそれぞれ設けられている。
【0024】
以下、図3〜図5を参照して、刃受け部18について説明する。
【0025】
端子部材である刃受け部18は、プラグの栓刃および丸ピンが挿入可能な刃受けばね部31と、電線50と電気的に接続する接触端子部32と、刃受けばね部31と接触端子部32とを連結する連結部33とで構成されている。刃受けばね部31と接触端子部32と連結部33とは一体的なものであり、一つの部材から変形加工して形成されている。なお、ここでは、刃受けばね部31においてプラグの丸ピンが挿入される軸を丸ピン軸S1とし、刃受けばね部31においてプラグの栓刃が挿入される軸を栓刃軸S2とする。
【0026】
刃受けばね部31は、本体部34と、プラグの丸ピンと接触する一対の丸ピン受けばね35,35と、プラグの栓刃と接触する1つの栓刃受けばね36とで構成されている。本体部34におけるコンセント1の幅方向の両側端には、一対の丸ピン受けばね35,35が対向するように形成されている。また、本体部34におけるコンセント1の幅方向の側面のうち、ボディ10の内側面側(図3では、右下側)に向かう側面に、連結部33が設けられている。
【0027】
一対の丸ピン受けばね35,35は、プラグの丸ピンが接触する丸ピン接触部37の位置で互いが近づく方向に屈曲され、さらに丸ピン接触部37の位置からコンセント1の上方側に向かうにつれて互いが離れる方向に屈曲されている。
【0028】
栓刃受けばね36は、プラグの栓刃が接触する栓刃接触部38の位置で栓刃受けばね36が一対の丸ピン受けばね35,35に近づく方向に屈曲され、さらに栓刃接触部38の位置からコンセント1の上方側に向かうにつれて栓刃受けばね36が一対の丸ピン受けばね35,35から離れる方向に屈曲されている。
【0029】
次に、図6および図7を参照して、ピラー端子19について説明する。
【0030】
ピラー端子19の端子枠20は、図6に示すように、鉄板をプレス加工することにより四角枠状に成形されている。この端子枠20は、内部空間がコンセント1の上下方向に貫通する周壁40と、周壁40におけるコンセント1の長手方向の外方の外方部41をコンセント1の長手方向に貫通するとともにねじ加工されているねじ固定部42とで構成されている。このねじ固定部42は、バーリング加工によってコンセント1の長手方向の外方部41側に向かって突出された円筒形状に形成されている。外方部41は、周壁40を構成する鉄板がコンセント1の長手方向に2枚重ねた状態にて形成されている。端子ねじ21は、ねじ固定部42にコンセント1の長手方向の外方部41側から螺合されており、先端部21aを端子枠20の内方に向かって螺入可能な状態で端子枠20に設けられている。
【0031】
端子枠20の内側に、接触端子部32および電線50が挿入される。端子ねじ21の先端部21aと、この先端部21aに対向する端子枠20の内面である底面43との間に接触端子部32が配置されるとともに、先端部21aと接触端子部32との間に電線50が配置される。そして、端子ねじ21を螺入することで電線50と接触端子部32とを、端子ねじ21の先端部21aと端子枠20の底面43との間で挟持している。
【0032】
接触端子部32は、円弧状をなし、接触端子部32におけるコンセント1の幅方向の両端部が端子ねじ21側に向けて屈曲されている。端子枠20の底面43も円弧状をなし、接触端子部32に沿う形で形成されている。接触端子部32は、その一端にプラグの刃を受ける刃受けばね部31が設けられたものであり、接触端子部32と刃受けばね部31とが一体のものとして構成されている(図3〜図5参照)。
【0033】
端子枠20におけるコンセント1の長手方向(端子ねじ21の軸線51に沿う方向)に延びる一対の側壁部44,44には、図7に示すように、端子枠20の内方に窪んだ窪み45がそれぞれ形成されている。各窪み45は、端子枠20におけるコンセント1の上下方向の端部47よりも内方の領域にそれぞれ形成されたものである。即ち、各窪み45は、端子枠20におけるコンセント1の上下方向の一部を窪まして形成したものである。各窪み45により端子枠20の内面において内方に突出する突起46がそれぞれ形成されている。各突起46は、端子枠20の内面における端子ねじ21の外周面に対向する部位に、端子ねじ21の外周面側に向かってそれぞれ突出されている。窪み45(突起46)は、矩形をなしている。
【0034】
電線50は、より線(複数の細線である導線を捻って形成した電線)を用いている。この場合、図8に示す比較例においては、電線50と接触端子部32とを挟持すべく端子ねじ21を螺入した状態において、端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間が電線50の逃げる場所となり、電線50の芯材52がばらけて端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間に入り、電線50と接触端子部32とが安定した接触にならない。これに対して、図6および図7に示した本実施形態のピラー端子19については、端子枠20の一部を凹状にすることにより、端子枠20の内面における端子ねじ21の外周面に対向する部位に、端子ねじ21の外周面側に向かって突出する突起46がそれぞれ形成されている。この突起46をそれぞれ形成することによって、電線50と接触端子部32とを挟持すべく端子ねじ21を螺入した状態において、電線50が端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間に入ることを抑制することができる。つまり、ばらけた電線50の芯材52が端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間に逃げる量を減らすことができる。
【0035】
突起46における電線50側の先端46aは、図6に示すように、電線50と接触端子部32とを挟持すべく端子ねじ21を螺入した状態において、端子ねじ21の外周面の先端21bよりもねじ固定部42側かつ近傍に位置している。この状態では、突起46における電線50側の先端46aによって、電線50が端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間に入ることを抑制することが可能となる。
【0036】
以上説明した本実施形態によれば、ピラー端子19は、端子枠20におけるコンセント1の上下方向の端部47よりも内方の領域を端子枠20の内方に窪ませることによって、端子枠20の内面における端子ねじ21の外周面に対向する部位に、端子ねじ21の外周面側に向かって突出する突起46をそれぞれ形成することで、電線50が端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間に入ることを抑制することが可能となる。また、突起46を形成するための窪み45は端子枠20におけるコンセント1の上下方向の端部47よりも内方の領域に形成したので、突起46となる窪み45を端子枠20に形成する加工が容易となる。詳しくは、窪み45の一部分は平面が出しやすく、絞り加工を用いて容易に製造することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、接触端子部32は、その一端にプラグの刃を受ける刃受けばね部31が設けられたものであり、接触端子部32と刃受けばね部31とが一体のものとして構成され一部材から形成されるので、複数の部材を接続して構成されるものに比べて接続工程等がなく、製造コストを低減することができる。
【0038】
さらに、本実施形態によれば、プラグが挿抜されるコンセント1において、プラグの刃を受ける刃受けばね部31に電気的に接続された接触端子部32と電線50とを、上述のピラー端子19で電気的に接続することによって、電線50が端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間に入ることを抑制することが可能なコンセントを提供することが可能となり、電線50と接触端子部32との間の安定した接触を確保することが可能となる。
【0039】
ところで、本実施形態は上述の記載に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。図6および図7に代わるピラー端子の構成としては、図9および図10に示すように、電線(図示せず)を押圧する端子補助板60をさらに備えた構成としてもよい。端子補助板60は、端子ねじ21の先端部21aと上記電線との間に配置され、端子ねじ21により押されるものである。端子補助板60は、図11に示すように、端子枠20におけるコンセント1の上下方向に延びる基部61と、基部61におけるコンセント1の上下方向の両端部からコンセント1の長手方向の端子ねじ21側に向かい屈曲された一対の屈曲部62,62と、一対の屈曲部62,62から端子ねじ21側に向かい延びる上方突起部63と下方突起部64とが設けられている。下方突起部64は、周壁40内に収納されるように形成され、上方突起部63は、周壁40の上面に当接されている。また、基部61におけるコンセント1の幅方向の長さは、側壁部44の内面に設けられた一対の突起46,46の間を通過可能な長さに形成されている。そして、端子ねじ21の先端部21aと上記電線との間に配置された端子補助板60が端子ねじ21とともに移動して、端子補助板60が上記電線を押圧する。そのため、上記電線と接触端子部32との接触圧力が低下することを抑制することが可能となる。
【0040】
より詳しく説明すると、図12に示す比較例においては、電線66がコンセント1の幅方向に移動する。つまり、接触端子部65が平坦なため電線66の位置を固定しにくい。即ち、端子ねじ21で押し付けると電線66が端子枠20におけるコンセント1の幅方向の端の方に移動し、接触押圧が低下することで接触安定性が低くなる。
【0041】
これに対して、図9および図10に示す本実施形態のピラー端子においては、端子枠20の内部における各突起46と接触しない形で形成された端子補助板60を備えており、これによって接触端子部65と端子補助板60とで上記電線を挟持することが可能となる。
【0042】
したがって、図9および図10に示すピラー端子によれば、端子ねじ21の先端部21aと上記電線との間に配置され、端子ねじ21に押されることで上記電線を接触端子部65とで挟持する端子補助板60を備えることによって、端子補助板60が端子ねじ21とともに移動して、この端子補助板60が上記電線を押圧するので、上記電線と接触端子部65との接触圧力が低下することを抑制することが可能となる。
【0043】
(実施形態2)
本実施形態のピラー端子の基本構成は実施形態1と同じであり、図13に示すように、各突起55,56(各窪み53,54)の配置が実施形態1と相違する。なお、実施形態1と同様の構成要素には同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0044】
各突起55,56は、図13に示すように、端子枠20における一方の側壁部44の内面に突起55が配置されるとともに、他方の側壁部44の内面に突起56が配置されている。また、各突起55,56は、図13(b)に示すように、突起55が、側壁部44の内面におけるコンセント1の上方側に、端子ねじ21の外周面に対向する位置からずらして配置され、突起56が、側壁部44の内面におけるコンセント1の下方側に、端子ねじ21の外周面に対向する位置からずらして配置されている。つまり、各突起55,56は、端子枠20における電線(図示せず)の挿入方向において、端子枠20に螺入された端子ねじ21に対向する位置からそれぞれずらして形成されている。
【0045】
したがって、各突起55,56は、端子枠20における上記電線の挿入方向において、端子枠20に螺入された端子ねじ21に対向する位置からそれぞれずらしてあるので、端子ねじ21のねじ径を小さくすることが不要となる。また、各突起55,56は、図13(b)に示すように、突起55を、側壁部44の内面におけるコンセント1の上方側に、端子ねじ21の外周面に対向する位置からずらして配置し、突起56を、側壁部44の内面におけるコンセント1の下方側に、端子ねじ21の外周面に対向する位置からずらして配置しているので、上記電線が端子枠20におけるコンセント1の上下方向のどちらからでも挿入可能となり、上記電線と接触端子部32とを挟持すべく端子ねじ21を螺入しているときに、上記電線が端子ねじ21の外周面と端子枠20の内面との間に巻き込まれることを抑制することが可能となる。
【0046】
ここにおいて、突起55,56は、側壁部44の両面に配置されているが、突起55,56はこれに限らず、上記電線がコンセント1の上下方向における上方側だけ挿入される場合は突起55だけを配置し、上記電線がコンセント1の上下方向における下方側だけ挿入される場合は、突起56だけを配置してもよい。また、本実施形態は上述の記載に限定されるものではなく、実施形態1と同様に、端子ねじ21の先端部21aと上記電線との間に配置され、端子ねじ21に押されることで上記電線を接触端子部65とで挟持する端子補助板60をさらに備えた構成としてもよい。さらに、実施形態1で説明したコンセントは、プラグの刃を受ける刃受けばね部31に電気的に接続された接触端子部32と電線50とを、実施形態2で説明したピラー端子で電気的に接続してもよい。
【0047】
(実施形態3)
次に、実施形態3を、図14〜図16を用いて実施形態1との相違点を中心に説明する。
【0048】
本実施形態においては、ピラー端子を備えるスイッチ70を具体化している。
【0049】
スイッチ70は、図14および図15に示すように、略直方体の箱状に形成された器体71と、器体71に収納される端子部72(図16参照)と、電力供給のオン状態およびオフ状態を押操作により切り替える操作部73とにより構成されている。
【0050】
以降では、説明の便宜上、スイッチ70の長手方向に沿った方向を「左右方向」とし、スイッチ70の短手方向に沿った方向を「前後方向」として、左右方向および前後方向に直交する方向を「上下方向」とする。また、説明の便宜上、左右方向および前後方向において、スイッチ70の内部に向かう方向を「内方」とし、スイッチ70から外部に向かう方向を「外方」とする。さらに、スイッチ70の上下方向において、操作部73が配置される側を「上方」とする。
【0051】
器体71は、スイッチ70の上方側が開口する箱状のボディ75と、このボディ75に取り付けられるカバー76とにより構成されている。ボディ75には、第1の電線(図示せず)と第2の電線(図示せず)とを挿通する電線挿通孔74が2つ設けられている。また、ボディ75には、端子部72が収納されている。
【0052】
端子部72は、図16に示すように、上記第1の電線が電気的に接続される第1ピラー端子77と、上記第2の電線が電気的に接続される第2ピラー端子78等により構成されている。第1ピラー端子77は、上記第1の電線と電気的に接続する接触端子部80に接続される端子枠81と、この端子枠81に螺合する端子ねじ82とを備えている。接触端子部80は、端子部材である第1端子板79に設けられている。第2ピラー端子78は、上記第2の電線と電気的に接続する接触端子部84に接続される端子枠85と、この端子枠85に螺合する端子ねじ86とを備えている。接触端子部84は、端子部材である第2端子板83に設けられている。
【0053】
端子枠81は、金属板を屈曲することでスイッチ70の上下方向に貫通した矩形形状に形成されている。この端子枠81の一面には、端子ねじ82が螺合されている。端子枠81の内部には接触端子部80と上記第1の電線とが配置され、端子ねじ82を螺入することによって、接触端子部80と上記第1の電線とが電気的に接続される。詳しくは、上記第1の電線は、ボディ75の電線挿通孔74に挿通され、端子枠81の内部に挿通される。そして、この状態において端子ねじ82を締め付けることで、接触端子部80と上記第1の電線とが、端子ねじ82の先端部と端子枠81の内面との間に挟まれた状態で固定される。これにより、第1端子板79と上記第1の電線とが電気的に導通するようになる。なお、第2ピラー端子78も同様の構成であるとともに、第2端子板83と上記第2の電線とが電気的に導通するようになる。
【0054】
操作部73は、図15に示すように、使用者の押操作に伴い揺動するハンドル87と、ハンドル87に接続されるコイルばね88と、電流経路を開閉するための開閉素子89と、ハンドル87を収納するハンドルカバー90とにより構成されている。ハンドル87はカバー76の内部に収納されるようにカバー76に取り付けられ、ハンドルカバー90はカバー76の一部を外部から覆うように取り付けられる。開閉素子89は、ハンドル87の揺動に伴い開閉動作を行う。なお、本実施形態では、開閉素子89と、第1端子板79と、第2端子板83とで、電流経路を開閉する接点装置を構成している。
【0055】
第2端子板83は、図15に示すように、L字形状に形成されるとともに接触端子部84の下端部からスイッチ70の左右方向の内方側に向かって延びる接触部91が設けられている。この接触部91は、第1端子板79および開閉素子89よりもスイッチ70の下方側に配置され、接触部91におけるスイッチ70の上方側が開閉素子89の下端部と接触している。そして、開閉素子89の上端部に接続されたコイルばね88は、常に下方に向かい付勢されている。
【0056】
ハンドル87の押操作によりスイッチがオン状態(図15および図16の状態)となるときには、開閉素子89が第1端子板79側に向かい傾くとともに第1端子板79と接触する。これにより、第1端子板79と第2端子板83とが開閉素子89を介して電気的に接続される。ハンドル87の押操作によりスイッチがオフ状態となるときには、開閉素子89が第1端子板79から離れる方向に傾くとともに第1端子板79と離間する。これにより、第1端子板79と第2端子板83との通電が遮断されるようになる。
【0057】
ここで、第1ピラー端子77と第2ピラー端子78とは、実施形態1で説明した構成と同様の構成となっている。つまり、各端子枠81,85において、端子ねじ82,86の軸線方向に沿った一対の側壁部に、この側壁部におけるスイッチ70の上下方向の端部よりも内方の領域で各端子枠81,85の内方に窪んだ各窪み92がそれぞれ形成されている。この各窪み92により各端子ねじ82,86の外周面側に向かって突出された各突起93がそれぞれ形成されている。各突起93は、各端子枠81,85の内面における各端子ねじ82,86の外周面に対向する部位にそれぞれ設けられている。
【0058】
このようにして、電流経路を開閉するためのスイッチ70では、開閉素子89に電気的に接続され端子部材の各接触端子部80,84と上記各電線とを、実施形態1で説明したピラー端子で電気的に接続した。したがって、上記各電線が各端子ねじ82,86の外周面と各端子枠81,85の内面との間に入ることを抑制することが可能なスイッチを提供することが可能となり、上記各電線と各接触端子部80,84との間の安定した接触を確保することが可能となる。なお、スイッチ70は、開閉素子89に電気的に接続され端子部材の各接触端子部80,84と上記各電線とを、実施形態1で説明したピラー端子で電気的に接続しているが、スイッチ70はこれに限らず、実施形態2で説明したピラー端子で電気的に接続してもよい。
【符号の説明】
【0059】
18 刃受け部(端子部材)
19 ピラー端子
20 端子枠
21 端子ねじ
21a 先端部
31 刃受けばね部
32 接触端子部
46 突起
50 電線
60 端子補助板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子部材の接触端子部と電線とが内側に挿入される端子枠と、前記端子枠の内方に向かって先端部が前記端子枠に螺入可能な状態で設けられた端子ねじとを備え、前記端子ねじの前記先端部と前記先端部に対向する前記端子枠の内面との間に前記接触端子部が配置されるとともに、前記先端部と前記接触端子部との間に前記電線が配置され、前記端子ねじを前記端子枠に螺入することで、前記電線と前記接触端子部とを、前記端子ねじと前記端子枠との間で挟持するピラー端子であって、前記端子枠における端部よりも内方の領域を前記端子枠の内方に窪ませることにより、前記端子枠の内面における前記端子ねじの外周面に対向する部位に、前記端子ねじの前記外周面側に向かって突出する突起が形成されてなることを特徴とするピラー端子。
【請求項2】
前記突起は、前記端子枠における前記電線の挿入方向において、前記端子枠に螺入された前記端子ねじに対向する位置からずらして形成されてなることを特徴とする請求項1記載のピラー端子。
【請求項3】
前記端子ねじの前記先端部と前記電線との間に配置され、前記端子ねじに押されることで前記電線を前記接触端子部とで挟持する端子補助板を備えてなることを特徴とする請求項1または請求項2記載のピラー端子。
【請求項4】
プラグの複数の接極子をそれぞれ受ける複数の刃受けばね部と、前記各刃受けばね部それぞれに電気的に接続された前記端子部材の前記接触端子部と前記電線とを挟持して電気的に接続する複数の端子とを備え、前記各端子それぞれが請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の前記ピラー端子からなることを特徴とするコンセント。
【請求項5】
電流経路を開閉する接点装置と、前記接点装置に電気的に接続された前記端子部材の前記接触端子部と前記電線とを挟持して電気的に接続する複数の端子とを備え、前記各端子それぞれが請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の前記ピラー端子からなることを特徴とするスイッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−129507(P2011−129507A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−168658(P2010−168658)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】