説明

ファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置

【課題】 所定ピッチで並列された複数本の光ファイバのピッチを容易に別の任意のピッチに変換することができるファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置を得る。
【解決手段】 所定ピッチP1で並列された複数本の光ファイバ11を伸長可能な基材12上に配列して仮固定し、前記基材12を光ファイバ11の長手方向と直角な方向へ引き伸ばすことにより、光ファイバ11間のピッチP1を拡大して別の任意のピッチP2に変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置に係り、所定ピッチで並列された複数本の光ファイバの配列ピッチを任意のピッチに変換することができるファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の多心コネクタのピッチ間隔よりも小さいピッチ間隔の多心細径ファイバを、従来の多心光コネクタと接続できるようにする多心細径ファイバコネクタが開示されている(例えば特許文献1参照)。
図6に示すように、特許文献1に開示されている多心細径ファイバコネクタ100では、ピッチ間隔P1の複数の光ファイバ挿入孔101をもったフェルール102の接続後端側に、多心細径ファイバ103の細径光ファイバ104のピッチ間隔P2(P1>P2)を前記光ファイバ挿入孔101のピッチ間隔P1に変換して挿入するためのファイバ挿入用補助具105が固定されている。このファイバ挿入用補助具105は、細径光ファイバ104を整列するためのV溝108をフェルール102のファイバ挿入孔101のピッチ間隔P1と同じピッチ間隔で複数配列したファイバ位置決め部材106と、V溝108に嵌合した細径光ファイバ104を押さえて固定するファイバ固定部材107とから構成されている。
【特許文献1】特開平8−122577号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1の多心細径ファイバコネクタ100においては、細径光ファイバ104のピッチをP2からP1に変換する際に、細径光ファイバ104をファイバ挿入用補助具105のファイバ位置決め部材106に設けられているV溝108に嵌め込み、その上からファイバ固定部材107を取り付けて細径光ファイバ104を固定している。このため、径が非常に細い細径光ファイバ104を1本ずつV溝108に嵌め込まなければならないため取り扱いに注意を要するとともに時間を要し面倒であった。また、嵌め込む際に誤配列のおそれもあるという不都合があった。
また、従来のファイバピッチ変換方法では、ピッチ変換部材のピッチ間隔は固定であるため、例えば標準ピッチ以外のピッチに変換することはできず、この場合にはピッチ種類分の変換部材を用意しなければならないという不都合があった。
【0004】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、所定ピッチで並列された複数本の光ファイバ心線のピッチを容易に別の任意のピッチに変換することができるファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した目的を達成するために、本発明にかかるファイバピッチ変換方法の第1の特徴は、所定ピッチで並列された複数本の光ファイバ間のピッチを任意のピッチに変換するファイバピッチ変換方法であって、前記複数本の光ファイバを伸長可能な基材上に配列して仮固定する工程と、前記基材を光ファイバ長手方向と直角な方向に引き伸ばすことにより各光ファイバの配列ピッチを拡大する工程とからなることにある。
【0006】
このように構成されたファイバピッチ変換方法においては、所定ピッチで並列された複数本の光ファイバを伸長可能な基材上に配列して仮固定し、基材を光ファイバの長手方向と直角な方向へ引き伸ばすことにより、光ファイバ間の間隔を拡げる。これにより、簡易な道具で容易に所定のピッチを拡大して任意のピッチに変換することができることになる。
【0007】
また、本発明にかかるファイバピッチ変換方法の第2の特徴は、上記本発明の第1の特徴において、前記基材が表面に粘着層を有する弾性シートであることにある。
【0008】
このように構成されたファイバピッチ変換方法においては、伸縮可能な基材が表面に粘着層を有するので、容易に光ファイバを基材上に配列して仮固定することができる。
【0009】
また、本発明にかかるファイバピッチ変換装置の第3の特徴は、所定ピッチで並列された複数本の光ファイバ間のピッチを任意のピッチに変換するファイバピッチ変換装置であって、一対の係止部材と、前記一対の係止部材間に張り渡され表面に前記複数本の光ファイバを貼り付ける粘着層を有すると共に伸長可能な基材と、前記基材に張力を付与する基材張力付与手段と、前記基材張力付与手段を制御する制御部とを備えたことにある。
【0010】
このように構成されたファイバピッチ変換装置においては、一対の係止部材間に、表面に前記複数本の光ファイバを貼り付ける粘着層を有すると共に伸長可能な基材を張り渡しておき、基材の粘着層に複数本の光ファイバを所定ピッチで配列して貼り付ける。そして、基材張力付与手段により基材に張力を付与して基材を伸長することにより、光ファイバ間の間隔を拡大して別の任意のピッチに変換するので、簡易な装置により容易に光ファイバのピッチを変換することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定ピッチで並列された複数本の光ファイバを伸長可能な基材上に配列して仮固定し、基材を光ファイバの長手方向と直角な方向へ引き伸ばすことにより光ファイバ間の間隔を拡げるので、簡易な道具により容易に所定のピッチを拡大して別の任意のピッチに変換することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1(A)は本発明のファイバピッチ変換方法におけるピッチ変換前の状態を示す平面図および断面図、(B)はピッチ変換後の状態を示す平面図および断面図、図2(A)は伸長方向と直交する方向には収縮しない好適な基材の平面図、(B)は伸長方向と直交する方向に収縮する不適な基材の平面図、図3は本発明にかかるファイバピッチ変換装置の構成図、図4はファイバピッチ変換装置によってピッチを変換した状態を示す断面図である。
【0013】
図1(A)および(B)に示すように、本発明の一実施形態であるファイバピッチ変換方法は、所定ピッチP1で並列された複数本の光ファイバ11間のピッチを任意のピッチP2に変換するものであって、複数本の光ファイバ11の各光ファイバ11を伸長可能な基材12上に配列して仮固定する工程(図1(A)参照)と、基材12を光ファイバ長手方向と直角な方向に引き伸ばして各光ファイバの配列ピッチを拡大する工程(図1(B)参照)とを有している。
ピッチが拡大された光ファイバ11は、そのままでは基材12の粘着層12aから取り外した際に、元のピッチP1に戻ろうとするので、粘着層12aに仮固定されている状態で、例えば接着剤やクランパ等を用いて本固定する。
【0014】
なお、基材12は粘着層12aを有する弾性シートであることが望ましい。粘着層12aは、光ファイバ11を固定することが可能であると共に、引き剥がすことも可能な粘着力を有するものが望ましい。
基材12は、伸縮に異方性を有し、引っ張った方向には伸長するが、引っ張り方向と直交する方向には伸縮しないことが望ましい。すなわち、図2(A)に示すように、基材12は伸縮自在であるが、図2(B)に示すように、基材12を伸長させたときに基材12が幅方向に縮むものは適さない。これは、基材12が幅方向に縮むと、光ファイバ11の長手方向に縮むことになり、光ファイバ11が粘着層12aから剥がれる場合があるためである。
また、基材12は均一に伸長することが必要である。すなわち、基材12における位置によって伸長量が異なると、ピッチ変換後の光ファイバ11のピッチが均一でなくなるためである。
【0015】
以上、前述したファイバピッチ変換方法によれば、所定ピッチで並列された複数本の光ファイバ11を伸長可能な基材12上に配列して仮固定し、基材12を光ファイバ11の長手方向と直角な方向へ引き伸ばすことにより、光ファイバ11のピッチP1を任意のピッチP2に変換することができることになる。
【0016】
次に、図3に基づいて、本発明にかかるファイバピッチ変換装置について説明する。
本発明にかかるファイバピッチ変換装置10は、所定ピッチP1で並列された複数本の光ファイバ11間のピッチを任意のピッチP2に変換することができる。このため、一対の係止部材としてのローラ13a、13bと、この一対のローラ13a、13b間に張り渡され表面に複数本の光ファイバ11を貼り付ける粘着層12aを有すると共に伸長可能な基材12と、この基材12に張力を付与する基材張力付与手段としてのモータ14と、このモータ14を制御する制御部15とを備えている。
【0017】
基材12は両端をローラ13a、13bに係止されており、支持台16の上面に沿って移動可能に支持されている。ローラ13a、13bは少なくとも一方、ここでは図3において右側のローラ13bがモータ14により回転されるようになっている。他方のローラ13aは固定でも良いが、右のローラ13bと同様に回転するようにしても良い。
従って、図4に示すように、モータ14によってローラ13bを回転させて基材12に張力を付与して伸長させると、基材12にピッチP1で配列されていた光ファイバ11は、任意のピッチP2に変換されることになる。なお、基材12の伸長量は、制御部15がモータ14の回転量や、モータ14の回転力等を制御することにより、調整することができる。
【0018】
このように構成されたファイバピッチ変換装置10においては、一対のローラ13a、13b間に、表面に複数本の光ファイバ11を貼り付ける粘着層12aを有すると共に伸長可能な基材12を張り渡しておき、基材12の粘着層12aに複数本の光ファイバ11を所定ピッチP1で配列する。そして、モータ14がローラ13bを回転させて基材12に張力を付与し、基材12を伸縮することにより、光ファイバ11間の間隔を調整して別の任意のピッチP2に変換するので、簡易な装置により容易に光ファイバ11のピッチを任意のピッチに変換することができる。
【0019】
なお、本発明のファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
例えば、前述した各実施形態において、基材12として粘着層12aを有する弾性シートを例示したが、本発明は粘着層を有する塑性のシートでも適用可能である。この場合には、基材の伸長のみ可能であり、収縮は不可能なので、ピッチを拡大する変換のみ可能となる。
【0020】
また、係止部材としてローラ13a、13bを設け、少なくとも一方のローラ13bを回転させることにより基材12の張力を付与して伸長したが、係止部材としてローラの代わりに互いに離反可能な1対のクランパを設けておき、両クランパを離反させることにより基材12を伸長させるようにすることもできる。この場合には、両クランパの間隔の変化から、容易に基材12の伸長量を求めることができる。
【0021】
次に、図5に基づいて、具体的な実施例について説明する。なお、すでに前述した部位には共通する符号を付して、重複する説明を省略することとする。
基材12としてポリウレタン系の弾性シートを用い、表面に粘着層12aとしてアクリル系粘着剤を塗布しておく。光ファイバ11として外径125μmの細径ファイバを12本用い、隣接する光ファイバ11同士が接触する状態であるピッチ125μmからピッチ160μmに変換して12心MTコネクタ17へ結線する。
【0022】
まず、図5(A)に示すように、基材12の粘着層12aに細径光ファイバテープ心線として形成された細径光ファイバ11をP1ピッチ(125μmピッチ)で12本並列し仮固定する。基材12を伸長させて光ファイバ11のピッチをP2(160μm)まで拡張し(図5(B)参照)、基材12の両端を固定部材18、18で固定する(図5(C)参照)。拡張したピッチP2の状態を接着剤19aあるいはクランパ19b等で固定し(図5(D)参照)、光ファイバ11を基材12から取り外して光ファイバ11の端末部を切断および研磨して端末処理を行う(図5(E)参照)。そして、端末処理された光ファイバ11にコネクタ17を取り付ける(図5(F)参照)。なお、上記の工程において、光ファイバ11を拡張したピッチP2の状態に維持するためクランパ19を用いた場合には、コネクタ17を取り付けた後、光ファイバ11から取り外すことができる。
以上、説明したように、本発明にかかるファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置によると、光ファイバ11のピッチを容易に任意のピッチに変換することができる。また、ピッチ種類分の変換部材を用意することなく、変換するピッチに応じて対応することができて汎用性を有する。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように、本発明に係るファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置は、複数本の光ファイバを伸長可能な基材上に配列して仮固定し、基材を光ファイバの長手方向と直角な方向へ引き伸ばすことにより光ファイバ間の間隔を拡げるので、簡易な道具により容易に所定のピッチを拡大して別の任意のピッチに変換することができるという効果を有し、複数本の光ファイバの配列ピッチを変換することができるファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】(A)は本発明のファイバピッチ変換方法におけるピッチ変換前の状態を示す平面図および断面図、(B)はピッチ変換後の状態を示す平面図および断面図である。
【図2】(A)は伸長方向と直交する方向には収縮しない好適な基材の平面図、(B)は伸長方向と直交する方向に収縮する不適な基材の平面図である。
【図3】本発明にかかるファイバピッチ変換装置の構成図である。
【図4】ファイバピッチ変換装置によってピッチを変換した状態を示す断面図である。
【図5】(A)〜(F)は実施例におけるファイバピッチ変換手順を示す工程図である。
【図6】従来のファイバピッチ変換方法およびファイバピッチ変換装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0025】
10 ファイバピッチ変換装置
11 光ファイバ
12 基材
12a 粘着層
13a、13b ローラ(係止部材)
14 モータ(基材張力付与手段)
15 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定ピッチで並列された複数本の光ファイバ間のピッチを任意のピッチに変換するファイバピッチ変換方法であって、
前記複数本の光ファイバを伸長可能な基材上に配列して仮固定する工程と、前記基材を光ファイバ長手方向と直角な方向に引き伸ばすことにより各光ファイバの配列ピッチを拡大する工程とからなるファイバピッチ変換方法。
【請求項2】
前記基材が表面に粘着層を有する弾性シートであることを特徴とする請求項1記載のファイバピッチ変換方法。
【請求項3】
所定ピッチで並列された複数本の光ファイバ間のピッチを任意のピッチに変換するファイバピッチ変換装置であって、
一対の係止部材と、前記一対の係止部材間に張り渡され表面に前記複数本の光ファイバを貼り付ける粘着層を有すると共に伸長可能な基材と、前記基材に張力を付与する基材張力付与手段と、前記基材張力付与手段を制御する制御部とを備えたことを特徴とするファイバピッチ変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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