説明

ファン装置

【課題】モータに接続される動翼の肉厚を薄くして軽量化と低コスト化を図りつつ、風切り音の発生や送風能力の低下の原因を排除した静粛性が高い構造のファン装置を提供する。
【解決手段】風洞3の内側に支持体5によって宙吊り状態に保持されたハウジング4内にモータ6を配置し、モータ6によって駆動される動翼7により生じる空気流を風洞3とハウジング4との間に形成される通風空間Aを通じて送風するファン装置1において、動翼7を、モータ6の主軸61に接続される円盤状の回転板71の外縁にリング状のフランジ72を形成し、そのフランジ72に複数のフィン73を形成し、回転板71の少なくとも一方の面に複数のリブ74を形成するとともに、リブ74とそれが形成された回転板71の面を隠蔽するようにフランジ72の内側領域に平板状のカバー75を配置した構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静粛性を考慮し、航空機用や宇宙用機器用、又は屋内空調用等としても使用可能なファン装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータを内設したハウジングを風洞の内部に配置し、そのモータによって動翼を回転駆動することで、風洞内に軸方向(モータの回転軸方向)に沿った空気流を生じるように構成し、風洞の内面に沿って一方向に流れる空気流を整流するための静翼が設けられたファン装置(いわいる軸流ファン)が種々開発されている(例えば、特許文献1参照)。この種のファン装置には、動翼は円盤状の回転板の外周に複数のフィンを形成した構造を有しているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−045987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
軽量化やコスト低減が求められる昨今においては、ファン装置にも同様の要求がなされることがある。特に部材の軽量化が求められる宇宙用装置や航空機用装置においてはその傾向が顕著である。ここで、ファン装置の動翼に着目すると、円盤状の回転板はその肉厚が薄ければ薄いほど軽量化に貢献するとともに、使用材料の削減によって低コスト化にも貢献するといえる。
【0005】
しかしながら、回転板の肉厚を薄くすればするほど強度や剛性の低下が懸念されるため、回転板には部分的に厚肉としたリブを設けることが考えられる。このようなリブを設けることによって、確かに軽量化や低コスト化には寄与するが、動翼が空気を吸引して空気流を発生させる際に、回転板に部分的に肉厚が異なる部位が存在すると、風切り音の発生の一因となる。特にこの種のファン装置が、宇宙船や航空機、或いは地上であっても静粛性が要求される場所で使用される場合には、風切り音の発生は非常に迷惑な騒音となり得るものであり、可能な限り風切り音を排除することが必要となる。また、リブの存在により空気抵抗が生じると、ファン装置による送風効率の低下の原因ともなり得る。
【0006】
本発明は、このような問題に着目し、可能な限り薄い肉厚の回転板であっても風切り音や空気抵抗が発生しにくい構造の動翼をそなえたファン装置を提供することを、主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明のファン装置は、中空体である風洞と、この風洞の内面との間に所定の通風空間を形成するように複数の支持体を介して配置されるハウジングと、ハウジング内に配置されるモータと、モータによって回転駆動され通風空間に空気を流通させる動翼とを具備するファン装置であって、動翼を、モータの主軸と同軸となるように接続される円盤状をなす回転板と、この回転板の外周に沿って形成されるリング状のフランジと、フランジに外方へ突出させて設けられる複数のフィンと、回転板の少なくとも一方の面上に形成される複数のリブと、これらのリブを隠蔽し且つリブが形成された前回転板の面を覆うようにフランジの内側領域を蓋封する平板状のカバーとを有するものとしていることを特徴としている。
【0008】
このような構成のファン装置であれば、動翼の回転板の肉厚を可能な限り薄くすると同時に、複数のリブによって回転板の強度を補うことができるうえに、フランジの内側領域である回転板の盤面におけるリブの存在による凹凸はカバーによって隠蔽することができる。すなわち、回転板の盤面に凹凸を生じさせるリブを設けても、平板状のカバーによって凹凸を隠し平坦にすることができるため、リブの存在によって生じる可能性があった風切り音を排除し、騒音や空気抵抗の発生を防止することが可能となる。ここで、カバーとして十分に薄肉であり剛性も十分な部材を使用すれば、回転板にリブを形成するとともにカバーという部材が増えることによるデメリットよりも、主要部材である回転板の肉厚を薄くすることによる軽量化や低コスト化といったメリットが上回ることになる。なお、リブの形状は特に限定されるものではなく、例えば回転板の中心部から外縁のフランジに亘って放射状に形成したものや、回転板と同心円を描くように形成したものなどを採用することができ、このようなリブを形成する面は、回転板の一方の面又は両面とすることができる。カバーは、リブが形成された側の回転板の面を覆うように、リング状のフランジの内側の領域(フランジの周乃至周のやや内側から中心に至る領域)に配置される。
【0009】
上述のようなファン装置において、動翼の回転板にカバーを取り付けるための足場となる取付部については特に限定されるものではなく、例えばフランジに取付部を形成したり、フランジやリブ以外に固定専用の取付部を形成するなど、種々考えられるところであるが、取付部をリブに形成する場合には、カバーの取付専用の取付部を別個に設ける必要がなく、しかもリブを確実に隠蔽することが可能となるうえに、フィンが形成されるフランジには影響を与えないので、最も理に適った動翼の構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るファン装置は、風洞の内側に支持体によって宙吊り状態に保持されたハウジング内にモータを配置し、モータによって駆動される動翼により生じる空気流を風洞とハウジングとの間に形成される通風空間を通じて送風するという構成において、動翼を、モータの主軸と同軸とした円盤状の回転板の外縁にリング状をなすフランジを形成し、そのフランジに複数のフィンを形成し、さらに回転板の少なくとも一方の面にリブを形成するとともに、リブとそのリブが形成された回転板の面を覆うようにフランジの内側領域に平板状のカバーを配置した構成としたものである。したがって、動翼の回転板の肉厚を可能な限り薄くしてもリブによって強度を維持することができ、しかもリブによる回転板の盤面上の凹凸をカバーによって隠すことが可能な構造とすることができる。このことにより、動翼の材料使用量の削減による軽量化や低コスト化が実現できるのみならず、リブを設けたことにより生じる可能性がある風切り音や送風能力の低下をカバーによって防止することができるという、有用なファン装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係るファン装置を示す側面図。
【図2】同正面図。
【図3】同背面図。
【図4】図2におけるI−I線断面図。
【図5】本実施形態における動翼のカバー取付前の状態を示す背面図。
【図6】図5におけるII−II線断面図。
【図7】同動翼のカバー取付後の状態を示す背面図。
【図8】図7におけるIII−III線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
本実施形態のファン装置1は、図示しない宇宙ステーションにドッキングさせられるコンテナC(図1等に外径の一部のみを想像線で示す)の一部に取り付けられる循環ファンとして適用されるものである。このファン装置1は、ファンを作動させることで空気流を発生させ、宇宙ステーションにドッキングさせたコンテナC内に二酸化炭素が滞留するのを防止するために用いられるものである。以下、ファン装置1の具体的構成について説明する。
【0013】
ファン装置1は、図1、図2、図3及び図4に示すように、概略矩形状の筐体2と、筐体2の前壁21から後壁22に亘って両壁を貫通するように固定された風洞3と、この風洞3内に複数の支持体5によって宙吊り状態で固定されたハウジング4と、このハウジング4内に固定されたモータ6と、このモータ6によって回転駆動するように風洞3内に設けられた一対の動翼7,7と、筐体2の後壁22側に露出するように風洞3内に設けられた静翼部材8を備え、その他にコントローラ9等(図4参照)を有している。
【0014】
筐体2は、前壁21及び後壁22にそれぞれ2つずつ、合計4つの取付足23を有しており、これらの取付足23を締結ネジ等の固定具を介してファン装置1をコンテナCに固定している。
【0015】
風洞3及びハウジング4は、いずれも中心軸を略一致させた概略円筒形状をなす部材であり、風洞3の直径をハウジング4の直径よりもやや大径とすることで、風洞3の内面3aとハウジング4の外面4aとの間に通風空間Aが形成されるようにしている。この通風空間Aにおける空気流の方向を図4に矢印で示す。
【0016】
ハウジング4は、図4に示すように、円筒状の胴体部41と、胴体部41の内面側前端寄り及び後端寄りの位置にそれぞれ配置した円形ドーナツ型のモータ支持板42,43と、胴体部41の外面41aに設けた複数の支持体5とを一体に形成したものである。モータ支持板42,43には、何れも中央部にモータ6の一部を挿入させる貫通孔42a,43aを形成しており、モータ6の主軸61とハウジング4の胴体部41の中心軸を一致させるように、取付板やネジを適宜用いてモータ6を固定している。
【0017】
風洞3とハウジング4との間に上述のような通風空間Aを形成するために用いられる支持体5は、図4に示すように、ハウジング4の外面41a側に突出させてハウジング4と一体に形成された部材であり、静翼部材8と共に通風空間A内の空気流を整流する静翼として機能するものである。この支持体5は、細長く湾曲した涙滴型をなしており、ハウジング4の胴体部41の中心軸とはねじれの位置関係となるように、略均等に胴体部41の外面41aに複数(本実施形態では13個)形成したものである。そして、詳細は図示しないが、各支持体5には風洞3にネジで取り付けるためのタップ穴が形成されている。また、一部の支持体5には、モータ6の電源ケーブル等のケーブル類62を挿通させるケーブル挿通孔を、風洞3とハウジング4の間に亘って肉厚を貫通するように形成している。なお、風洞3とハウジング4にも、支持体5のケーブル挿通孔と連通する貫通孔を形成している。このように、モータ6のケーブル類62を通風空間Aに露出させないように配線することで、ケーブル類62が空気流で振動して損傷したり、風切り音を発生したり、送風能力に低下を来したりすることがないように配慮している。
【0018】
各動翼7は、ハウジング4の前端及び後端の外方に配置される円盤状の回転板71の中央部にモータ6の主軸61を連結し、風洞3内において通風空間Aに空気流を発生させるものである。具体的に動翼7は、図5及び図6に示すように、ハウジング4と略同径の回転板71を主体としており、回転板71の中央部には、モータ6の主軸61を挿入させて同軸に連結するための主軸取付部71aを形成している。なお、前段の動翼7については、モータ6の主軸61は後方(空気流の下流側)から主軸取付部71aに挿入され、後段の動翼7については、主軸は前方(空気流の上流側)から主軸取付部71aに挿入されるため、各主軸取付部71aにおいて主軸61を挿入させる凹部の形状は若干異なるが、機能は同等である。また、回転板71の外周を取り囲むように、フランジ72を一体に形成しており、さらにこのフランジ72の外周面に複数のフィン73を一体に形成している。また、回転板71の後面(空気流の下流側)側における盤面には、主軸取付部71aからフランジ72に亘って複数(本実施形態では6本)のリブ74を放射状なすように一体に突設している。このリブ74の回転板71の盤面からの突出量は、フランジ72の突出量よりもやや小さくしている。なお、回転板71の前面(空気流の上流)側は、リブ等の突出物がなく、外縁のフランジ72の内側の領域は、主軸取付部71aを除いて平らである。このように、回転板71を外縁のフランジ72と複数のリブ74によって補強しているため、回転板71の円板部分の肉厚は、極めて薄く形成することが可能となる。
【0019】
各リブ74には、図7及び図8に示すように、フランジ72の内側の領域に略相当する円盤状のカバー75が皿ネジ76で取り付けられる。そのために、各リブ74に皿ネジ76を螺着させるタップ穴74aが形成されている。カバー75は、その中央部にモータ6の主軸61を挿通させる中央孔75aと、皿ネジ76を挿通させる複数の貫通孔75bがそれぞれ形成されている。
【0020】
静翼部材8は、図4に示すように、風洞3の後端近傍に配置されてハウジング4の胴体部41と略同径の円筒状をなす胴体部81と、この胴体部81の外面に一体に形成した複数の静翼83を備えている。胴体部81の動翼5と対面する側は、円盤状の前板82で蓋封している。各静翼83は、風洞3の内側に胴体部81を宙吊り状態で保持する支持体としての機能を有している。風洞3と各静翼83とは、ネジ84により固定されるため、各静翼83にはこのネジ84を螺着させるタップ穴(図示省略)が形成されている。各静翼83は、細長く湾曲した涙滴型をなしており、胴体部81の中心軸とはねじれの位置関係となるように、略均等に胴体部81の外面に複数(本実施形態では13個)形成されている。
【0021】
以上のように、本実施形態のファン装置1では、動翼7の回転板71を極めて肉厚が薄いものとすると同時に、外縁に一体形成したフランジ72と盤面に一体形成した複数のリブ74によって回転板71の補強を図りつつ、リブ74をカバー75によって隠蔽した構成としている。そのため、動翼7の重量を軽量化するとともに、材料の使用量を削減してコストダウンを図ることができるとともに、回転板の盤面上に凹凸をなくし、風切り音や送風能力の低下が生じる可能性を排除することができる。したがって、本実施形態のファン装置1は、極めて高い静粛性や軽量化が求められる宇宙ステーションに接続されるコンテナCに配置するのに適したものであるといえる。またこのファン装置1は、宇宙ステーション内の送風装置として使用しても同様に有用なものである。
【0022】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば動翼に形成されるリブは、回転板の前面側や前面と後面の両面に形成することができ、各態様に応じてリブを隠蔽するように1つ又は2つのカバーを配置すればよい。また、リブの形状も上述した実施形態のような放射状の構成を採用してもよいし、回転板と同心円を描くような複数のリブを採用してもよい。また本発明は、例えば地上において使用されるファン装置や、航空機で用いられるファン装置としても、静粛性、耐久性の面から適している。その他、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0023】
1…ファン装置
3…風洞
3a…風洞の内面
4…ハウジング
5…支持体
6…モータ
7…動翼
71…回転板
72…フランジ
74…リブ
75…カバー
A…通風空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空体である風洞と、当該風洞の内面との間に所定の通風空間を形成するように複数の支持体を介して配置されるハウジングと、当該ハウジング内に配置されるモータと、当該モータによって回転駆動され前記通風空間に空気を流通させる動翼とを具備するファン装置において、
前記動翼を、前記モータの主軸と同軸となるように接続される円盤状をなす回転板と、当該回転板の外周に沿って形成されるリング状をなすフランジと、当該フランジに外方へ突出させて設けられる複数の翼と、前記回転板の少なくとも一方の面上に形成される複数のリブと、前記リブを隠蔽し且つ当該リブが形成された前記回転板の面を覆うように前記フランジの内側領域を蓋封する平板状をなすカバーとを具備してなるものとしていることを特徴とするファン装置。
【請求項2】
前記リブに、前記カバーを取り付ける取付部を形成している請求項1に記載のファン装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−207645(P2012−207645A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−75935(P2011−75935)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000002059)シンフォニアテクノロジー株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】