説明

フィッシャー・トロプシュ物質からの潤滑ベース油および液体燃料を製造するための分流フィード水素化を用いる統合製造方法。

液体燃料および潤滑ベース油の範囲で沸騰するフィッシャー・トロプシュ誘導製品を製造する統合製造法であって、
(a)フィッシャー・トロプシュ合成反応器から、フィッシャー・トロプシュワックスとフィッシャー・トロプシュ凝縮液を別々に回収すること、
(b)水素化の条件下で、水素の存在下において、フィッシャー・トロプシュワックスを水素化触媒と接触することによって、ワックスの水素化領域のフィッシャー・トロプシュワックスを水素化し、ワックスの水素化領域から、ワックス状の中間製品と水素に富む通常液状の留分を回収すること、
(c)フィッシャー・トロプシュ凝縮液混合物を形成するために、段階(a)からのフィッシャー・トロプシュ凝縮液と段階(b)からの水素に富む通常液状の留分の少なくとも一部とを混合すること、
(d)水素化精製の条件下で、水素の存在下において、フィッシャー・トロプシュ凝縮液混合物を水素化触媒と接触することによって、凝縮液水素化精製領域のフィッシャー・トロプシュ凝縮液混合物を水素化精製し、凝縮液水素化精製領域から、水素化精製されたフィッシャー・トロプシュ凝縮液製品を回収すること、
(e)水素化精製されたフィッシャー・トロプシュ凝縮液製品から、液体燃料の範囲で沸騰するフィッシャー・トロプシュ誘導炭化水素を回収すること、
(f)触媒的脱ワックス領域において、ワックス状中間製品を水素化の条件下で、水素の存在下において、脱ワックス触媒と接触することによって、段階(b)からのワックス状中間製品を脱ワックスし、脱ワックス領域からベース油を回収すること、
(g)段階(f)からのベース油を、ハイドロフィニシング領域において、ハイドロフィニシングの条件下で、水素の存在下において、ハイドロフィニシング触媒と接触することによって、ハイドロフィニシングすること、
(h)ハイドロフィニシング領域から、UV安定化潤滑ベース油と水素に富むガスを回収すること、
(i)水素化領域における全圧力が、ワックス水素化領域における圧力と少なくとも同じ高さで、段階(h)からの水素に富むガスを段階(b)のワックス水素化領域までリサイクルすること、とを含む統合製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、統合製造スキームで、フィッシャー・トロプシュワックスとフィッシャー・トロプシュ凝縮液が別々に製造される、フィッシャー・トロプシュで誘導された炭化水素からの潤滑ベース油および液体燃料の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
フィッシャー・トロプシュ合成反応器から回収される炭化水素は通常その分子量と沸点の組み合わせに基づいて3つのカテゴリーに分類し得る。最も低い分子量留分は、環境温度で通常ガス状であり、最も商業的に価値が低い。通常オーバーヘッドガスとして集められるこの留分の複数の部分はLPGとして販売されてもよく、および/またはオリゴマー化によって、より高い分子量の物質にグレードアップされるか、またはフィッシャー・トロプシュ合成ユニットにリサイクルされてもよい。通常、略環境温度と約750°Fの間の沸騰範囲を有するフィッシャー・トロプシュ凝縮液留分は、環境温度で通常液状であり、ナフサ、ジェットおよびディーゼルのような輸送燃料市場を目的とした液体燃料への加工またはエチレンの分解のような石油化学プロセッシングで使用される。一般的に、環境温度で固体であるフィッシャー・トロプシュワックスは液体燃料としての使用に適した低分子量物質を得るために分解してもよく、または潤滑ベース油を得るために加工してもよい。
【0003】
フィッシャー・トロプシュワックス留分から誘導される潤滑ベース油は潜在的な商業的価値が高く、潤滑ベース油への転化を行うに要するプロセッシングスキームは、一般的に高い初期投資を要し、高い操作経費を含む。従ってフィッシャー・トロプシュワックスのための、大抵の商業的プロセッシングスキームは、含まれる高いコストを避けるために、ワックスを低い価値の液体燃料を得るように分解する。本発明は、液体燃料と高品質潤滑ベース油の両方を製造するための統合製造法に向けられる。本発明の統合製造法はプロセッシング装置の初期投資コストとフィッシャー・トロプシュ凝縮液留分とワックス留分を別々であるが、完全に統合されたプロセッシングトレインでプロセッシングすることによる高い操作コストを低下する。本プロセッシングスキームはまた、最高価値の製品の収率を増加する最適製造条件下で、多様なプロセッシングの各段階の操作も可能にする。
【0004】
液体燃料の製造に関して、フィッシャー・トロプシュの重い留分および軽い留分の別々のプロセッシングが米国特許第5,378,348号および6,589,415号に提案されている。潤滑ベース油と液体燃料の別々のプロセッシングが米国特許第6,432,297号で提案されている。潤滑ベース油の製造の間の、水素添加分解ユニット、脱ワックスユニットおよびハイドロフィニシングユニットのそれぞれにおける製造条件の最適化が米国特許第6,337,010号に教示されている。しかし、初期のプロセッシングスキームでは、いづれもフィッシャー・トロプシュワックス留分とフィッシャー・トロプシュワックス凝縮液留分に関する別々のプロセッシングトレインにおいて、最適プロセッシング条件を採用することに関連した相乗効果の完全な利点を得ることができない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で用いられているように、「含む」または「含んでいる」と言う語は記載された要素を含むが、他の記載されていない要素を必ずしも除外しないことを意味するオープン移行部を意図する。「本質的に...からなる」または「本質的に...からなっている」言う語句は組成物に対して本質的に重要な他の要素の除外を意味することを意図する。「...からなる」または「..からなっている」と言う語句は不純物の僅かな痕跡のみを例外として、列記された要素以外のすべての除外を意味する移行部として意図されている。
【0006】
(発明の要約)
本発明は、その最も広い態様において、液体燃料と潤滑ベース油の範囲で沸騰するフィッシャー・トロプシュ誘導製品を製造する統合製造法に向けられ、それは
(a)フィッシャー・トロプシュ合成反応器から、フィッシャー・トロプシュワックスとフィッシャー・トロプシュ凝縮液を別々に回収すること、
(b)水素化の条件下で、水素の存在下において、フィッシャー・トロプシュワックスを水素化触媒と接触することによって、ワックスの水素化領域のフィッシャー・トロプシュワックスを水素化し、ワックスの水素化領域から、ワックス状の中間製品および水素に富む通常液状の留分を回収すること、
(c)フィッシャー・トロプシュ凝縮液混合物を形成するために、段階(a)からのフィッシャー・トロプシュ凝縮液と段階(b)からの水素に富む通常液状の留分の少なくとも一部とを混合すること、
(d)水素化の条件下で、水素の存在下において、フィッシャー・トロプシュ凝縮液を水素化触媒と接触することによって、凝縮液水素化精製領域のフィッシャー・トロプシュ凝縮液を水素化精製し、凝縮液水素化精製領域から、水素化精製されたフィッシャー・トロプシュ凝縮液製品を回収すること、
(e)水素化精製されたフィッシャー・トロプシュ凝縮液製品から、液体燃料の範囲で沸騰するフィッシャー・トロプシュ誘導炭化水素を回収すること、
(f)段階(b)からのワックス状中間製品を、触媒による脱ワックス領域において、ワックス状中間製品を脱ワックス条件下で、水素の存在下において、脱ワックス触媒と接触することによって、脱ワックスし、脱ワックス領域からベース油を回収すること、
(g)段階(f)からのベース油を、ハイドロフィニシング領域において、ハイドロフィニシングの条件下で、水素の存在下において、ハイドロフィニシング触媒と接触することによって、ハイドロフィニシングすること、
(h)ハイドロフィニシング領域から、UV安定化潤滑ベース油と水素に富むガスを回収すること、
(i)ハイドロフィニシング領域における全圧力が、ワックス水素化領域における圧力と少なくとも同じで、段階(h)からの水素に富むガスを段階(b)のワックス水素化領域までリサイクルすること、とを含む。
【0007】
本明細書に用いられているように、「フィッシャー・トロプシュ誘導」と云う語句は、添加した水素を除いて、実質的な部分が次のプロセッシング段階に関係なく、フィッシャー・トロプシュプロセスから誘導される炭化水素流を意味する。従って「フィッシャー・トロプシュ誘導液体燃料」は、最初にフィッシャー・トロプシュプロセスから誘導された液体燃料の範囲で沸騰する炭化水素の実質的な部分を含む液体燃料を意味する。同様に、「フィッシャー・トロプシュ誘導潤滑ベース油」と言う語句は、最初にフィッシャー・トロプシュプロセスから誘導された潤滑ベース油の範囲で沸騰する炭化水素の実質的な部分を含む潤滑ベース油を意味する。フィッシャー・トロプシュ誘導液体燃料油または潤滑ベース油は添加剤を含んでもよく、燃料油または潤滑ベース油の実質的な部分を形成するフィッシャー・トロプシュ誘導炭化水素は、例えば水素化精製、触媒的脱ワックスおよびハイドロフィニシングのような多様なプロセッシング操作を受ける。フィッシャー・トロプシュ誘導液体燃料油またはフィッシャー・トロプシュ誘導潤滑ベース油は、通常の炭化水素を、存在する全体の炭化水素の30重量%を超えて含まない、好ましくは20重量%未満である限り、通常の石油誘導炭化水素の若干量を含んでもよい。
【0008】
本明細書中で、液体燃料として引用されるが、液体製品はエチレン分解のような、石油化学プロセッシングのフィードストックとして用いてもよい。従って、「液体燃料」と言う用語は液体燃料の範囲内で沸騰する液体製品を表すが、かならずしも輸送燃料としての使用を目的としない。
【0009】
「水素に富んだ通常の液状留分」と云う語句は未反応水素と水素化領域から回収された分解炭化水素の混合物を表す。分解した炭化水素の大部分は環境温度から約750°Fの範囲内で沸騰するのが好ましく、フィッシャー・トロプシュ凝縮液とともに、液体燃料の範囲内で沸騰する製品にプロセッシングするのに適している。水素化操作の厳しさに従って、分解した炭化水素の一定の部分は、プロパン、ブタン、エタンおよびメタンのような通常ガス状の炭化水素を含んでもよい。しかし、これらの通常ガス状の炭化水素の製造は普通好ましくなく、水素化領域におけるプロセッシング条件は、それらの製造を最小にするように選ばれる。しかし、当業者は水素に富む通常の液状留分が水素化領域から回収される高い温度のために、環境温度で通常液体である炭化水素を含めて存在するすべての炭化水素はガス状である。
【0010】
本発明の製造法を実施するにおいて、フィッシャー・トロプシュワックスの処理のための水素化領域は水素添加分解領域または水素化精製領域のいずかであってもよい。水素添加分解はワックス留分の流動点および曇点の改善に使用してもよいが、水素化領域が水素化精製触媒を含み、水素化精製条件下で操作される時に本発明の利点は最大である。ワックス留分は触媒的に脱ワックスされるため、潤滑ベース油の性質の目標数値に適合するために水素添加分解を採用することは一般的に必要でない。本スキームにおいて、水素化操作の主な目的は、触媒的脱ワックス段階に先立って、フィッシャー・トロプシュワックス中に存在する窒素と酸素化物を除去することである。当業者は水素化操作の厳しさが増加すると、大きな分解転化が生じ、その結果、反応器から回収されるワックス状の中間製品の平均分子量が低くなることを認識するであろう。これはある場合、例えば液体燃料の収量の増加または低重量の潤滑ベース油が所望される場合には、利点になりうる。一般的に、本発明では、高価値の潤滑ベース油の製造を最大化するために、水素化領域における分解を最小化することが望ましい。
【0011】
以下により詳細に説明するように、触媒的脱ワックス段階を実施するための最適全圧力は通常水素化およびハイドロフィニシング段階を実施するための最適全圧力よりも低い。
【0012】
発明の1つの利点は、3つの反応器が同じワックスプロセッシングトレインの部分であったとしても、触媒的脱ワックス反応器が、水素化およびハイドロフィニシングの反応器よりも顕著に低い圧力で操作できることである。本発明の1つの実施形態において、ワックスプロセッシングトレインにおける水素化およびハイドロフィニシングの反応器および凝縮液プロセッシングトレインにおける水素化精製反応器は略同じ全圧力で操作されるのに対し、脱ワックス反応器は顕著に低い圧力で操作される。
【0013】
(発明の詳細な説明)
本発明は図面を参照してより明確に理解されよう。本発明を構成する製造法において、フィッシャー・トロプシュワックスおよびフィッシャー・トロプシュ凝縮液はフィッシャー・トロプシュ合成反応器(図面に記載していない)から別々に集められる。ライン2中のフィッシャー・トロプシュワックスはワックス留分中に存在する窒素と酸素化物が少なくとも部分的に除去され、存在するオレフィンの少なくとも一部が飽和されているフィッシャー・トロプシュワックス水素化精製反応器6にワックス/水素のフィードが入る前に、ライン4を介して入る水素に富むリサイクルガスと混合されているとして示されている。このプロセススキームの実施形態において、ワックス分解は最小化されているが、いくらかのクラッキンングは未だ生じるであろうし、その結果、大部分が通常液状炭化水素である、若干のガスを含む低分子量物質の若干量が産生される。フィッシャー・トロプシュワックス水素化精製反応器を出る溶出液8は、通常水素化精製反応器中で形成された通常液状の炭化水素であるワックス状の中間製品と水素に富むガスを含む混合物である。ワックス水素化精製反応器を出る溶出液は、室温まで冷却されてもよく、熱高圧分離機10に運ばれ、そこで、主としてナフサ、軽ジーゼルおよび水素に富むガスのような軽い製品である、通常液状の炭化水素蒸気の混合物を含む最初の蒸気留分が、ワックス状の中間製品とライン12によって、熱低圧分離機14に運ばれる重いジーゼルのような高沸点製品である、すべての残存する通常液状の炭化水素とを含む混合物から分離される。熱低圧分離機中で、ワックス状の中間製品は残存する通常液状炭化水素から別に回収され、それはライン16によって、液状燃料回収操作に送られる。以下、これについて詳細に考察する。
【0014】
熱低圧分離機14からライン20中に運ばれたワックス状の中間製品は脱ワックスユニット26に入る前に補給水素22およびライン24からの水素に富むリサイクルガスと混合される。別の実施形態としては、リサイクルコンプレッサーの前に、ライン22の補給水素をライン36に加えてもよい。後に詳細に説明するように、脱ワックス反応器は、同じワックスプロセッシングトレインのすべての部分であるワックス水素化精製ユニット6とハイドロフィニシングユニット30よりも顕著に低い全圧力で操作されることが好ましい。脱ワックスユニットにおいて、ワックス状中間製品は流動点および粘度のような性質を改善するために、触媒的に脱ワックスされる。潤滑ベース油(脱ワックスされたワックス状中間製品)はライン32によって脱ワックス反応器26から回収され、分離機34に送られ、そこでベース油は、ライン24で集められる前に、ライン36と脱ワックスリサイクルコンプレッサー38によって脱ワックス反応器にリサイクルされる水素に富むガスから分離される。
【0015】
分離機34によって回収される潤滑ベース油はライン40において集められ、そこでライン42からの補給水素およびリサイクルコンプレッサー46によって、昇圧されたライン44からのリサイクル水素と混合される。ライン42からの補給水素は、替りに、リサイクルコンプレッサー46の前にライン82に加えてもよい。潤滑ベース油/水素混合物はライン48を介してハイドロフィニシング30に運ばれる。ハイドロフィニシング30において、潤滑ベース油分子中の残存不飽和二重結合は飽和されて、製品のUV安定性が改善される。UV安定化潤滑ベース油はライン52において集められ、高圧分離機54に送られ、そこで、潤滑ベース油はライン4によって、フィッシャー・トロプシュワックス水素化精製反応器6にリサイクルされる水素に富むガスから分離される。この実施形態において、ハイドロフィニシング反応器30およびフィッシャー・トロプシュワックス水素化精製反応器6は共に、それぞれの操作のプロセッシング条件を最適化するために脱ワックス反応器26よりも高い圧力で操作される。ハイドロフィニシング反応器は通常、ワックス水素化精製反応器と少なくとも同じ高さの全圧力で操作され、ハイドロフィニシングと水素化精製反応器の間の圧力低下を補償するために若干高めの圧力で操作されることが好ましい。
【0016】
ライン52からのUV安定化潤滑ベース油はライン56によって、低圧分離機58に運ばれ、そこですべての残存軽炭化水素または水素はライン60によって、オーバーヘッドガスとして回収される。このベース油はライン62によって真空蒸留カラム64に送られ、そこで各種のベース油の留分が別々に回収される。それらは本実施形態で、軽潤滑ベース油66、重潤滑ベース油68およびボトム70として示されている。
【0017】
高圧分離機10に戻るが、軽炭化水素蒸気と水素に富むガスの混合物を含む最初の蒸気留分はライン72によって凝縮液水素化精製反応器76の入り口ライン74に運ばれ、そこで通常液状炭化水素蒸気留分がフィッシャー・トロプシュ反応容器(示されていない)から直接出てくるフィッシャー・トロプシュ凝縮液78と混合される。凝縮液水素化精製反応器76中において、酸素化物と窒素が除去され、不飽和二重結合は飽和される。水素化精製された凝縮液はライン78中に集められ、冷高圧分離機80に送られ、そこで水素が分離され、ライン82によって、ワックスプロセッシングトレイン中に位置するハイドロフィニシング反応器30のリサイクルコンプレッサー46に送られる。凝縮液水素化精製反応器、ハイドロフィニシング反応器およびワックス水素化精製反応器はすべて同様の高圧で操作され、それによって、本明細書中に記載したプロセッシングスキームにおいて、これらの各反応器間のリサイクルガスの圧力を顕著に昇圧する必要がないことが好ましい。このような操作は操作コストを顕著に減らす。水素化精製された凝縮液混合物はライン84によって、高圧分離機80から集められ、そこで熱低圧分離機14から出る重い通常液状の炭化水素と混合される。ガス/凝縮液混合物はライン86によって、冷低圧分離機87に運ばれ、そこでガス88およびすべての水分90が分離される。液状油はライン92中に集められ、分別ユニット94に運ばれ、そこでナフサ96およびディーゼル98のような液状製品がすべての残存する軽いガス100とボトム102から別々に集められる。図面の再検討と前の記載から、本発明を構成する製造法スキームは2つの統合されたプロセッシングトレインを含むことが判る。図面において、ワックスプロセッシングトレインの主な成分はフィッシャー・トロプシュワックス水素化精製反応器6、熱高圧分離機10、熱低圧分離機14、脱ワックス反応器26、ハイドロフィニシング反応器30、低圧分離機58および真空カラム64を含む。凝縮液トレインの主な成分は凝縮液水素化精製反応器76、冷高圧分離機80、冷低圧分離機87および分別ユニット94を含む。フィッシャー・トロプシュワックス水素化精製反応器6、ハイドロフィニシング反応器30および凝縮液水素化精製反応器76は共通の水素リサイクルループを共有し、それらは、同様に高い圧力、即ち、脱ワックス反応器26が操作される全圧力よりも顕著に高い全圧力で操作される。この統合によって、スキームに大きなコンプレッサーを組み入れる必要が最小化され、資本費用および操作コストが低減する。脱ワックス反応器は固有の水素リサイクルループを有し、これによって、触媒的脱ワックス操作の条件を最適化する低い全圧力でそれを操作することが可能になる。
【0018】
フィッシャー・トロプシュ合成
フィッシャー・トロプシュ合成の間、水素と一酸化炭素の混合物を含む合成ガス(syngas)を適切な温度と圧力の反応条件下でフィッシャー・トロプシュ触媒と接触させることによって、多様な分子量を有する炭化水素の混合物が形成される。フィッシャー・トロプシュ反応は通常約300°Fから約700°F(約150℃から約370℃)、好ましくは約400°Fから約550°F(約205℃から約290℃)の温度、約10psiaから約600psia(0.7barから41bar)、好ましくは30psiaから約300psia(2barから21bar)の圧力および約100cc/g/hrから10,000cc/g/hr、好ましくは300cc/g/hrから3,000cc/g/hrの触媒空間速度で行われる。
【0019】
フィッシャー・トロプシュ合成からの製品は大半がCからC100超の範囲にあるCからC200超の範囲の炭化水素である。反応は、例えば1つまたはそれ以上の触媒床を含む固定床反応器、スラリ反応器、流動床反応器または異なった型の反応器の組み合わせのような多様な反応器の型で実施できる。そのような反応プロセスおよび反応は周知であり、文献に記載されている。本発明の実施において、好ましいスラリのフィッシャー・トロプシュプロセスは強い発熱合成反応に対して優れた熱(および物質)伝達特性を利用し、コバルト触媒を使用すると、比較的高分子量のパラフィン炭化水素を製造できる。スラリプロセスでは、水素と一酸化炭素の混合物を含むsyngasを反応条件下で液体である、合成反応の炭化水素製品を含むスラリ液に分散および懸濁した粒子状フィッシャー・トロプシュ型炭化水素合成触媒を含むスラリを通して第三相としてバブルアップする。水素と一酸化炭素のモル比は約0.5から約4の広範囲であり、通常は約0.7から約2.75、好ましくは約0.7から約2.5である。フィッシャー・トロプシュプロセスは欧州特許出願第0609079号に教示されており、あらゆる目的のために本明細書にすべてを組み入れて援用する。
【0020】
適切なフィッシャー・トロプシュ触媒はFe、Ni、Co、RuおよびReのような1つ以上の金属を含むが、コバルトが好ましい。更に適切な触媒は助触媒を含んでもよい。従って、好ましいフィッシャー・トロプシュ触媒はコバルトの有効量と、好ましくは1つまたはそれ以上の耐熱性金属酸化物を含む適切な無機支持物質上の1つまたはそれ以上のRe、Ru、Pt、Fe、Ni、Th、Zr、Hf、U、MgおよびLaの有効量を含む。一般的に、触媒中に存在するコバルトの有効量は触媒組成物全体の約1から50重量%の間である。触媒はThO2、La3、MgOおよびTiOのような塩基性酸化物助触媒、ZrOのような助触媒、貴金属(Pt、Pd、Ru、Rh、Os、Ir)、貨幣金属(Cu、Ag、Au)およびFe、Mn、NiおよびReのような他の遷移金属を含むことができる。適切な支持物質にはアルミナ、シリカ、マグネシアおよびチタニアまたはその混合物が含まれる。コバルトを含む触媒の好ましい支持体にはアルミナまたはチタニアが含まれる。有用な触媒およびその調製法は周知であり、米国特許第4,568,663号に例示されており、それは例示を目的とし、触媒の選択に関して制限するものではない。
【0021】
フィッシャー・トロプシュ操作から回収される製品は非常に軽い製品を含むガス留分、一般的にナフサとジーゼルの範囲で沸騰する凝縮液留分および環境温度で通常固体である高沸点フィッシャー・トロプシュワックス留分の3つの留分に分割される。本発明において、ワックス留分は通常凝縮液/軽製品留分から別々に回収され、ワックスプロセッシングトレインに送られる。凝縮液留分は凝縮液プロセッシングトレインに送られる前に、軽い製品留分から分離されることが好ましい。軽い留分はフィッシャー・トロプシュ反応器にリサイクルされてもよく、リファイナリ内で燃料ファーネスに使用されてもよく、加熱用燃料として販売されてもよく、または燃やされてもよい。
【0022】
水素化
この考察の目的に関し、水素化と云う用語は水素化精製または水素添加分解のいずれかを意味することを目的とする。水素異性化およびハイドロフィニシングも、水素化の1つの型であるが、プロセススキームにおいてその異なる機能のために別々に扱われる。
【0023】
既に記載したように、ワックスプロセッシングトレイン中の水素化反応器は水素添加分解ユニットとして、または水素化精製ユニットのいずれかとして操作してもよい。本発明の製造法において、ワックス水素化反応器の主な目的は脱ワックス反応器にそれをフィードする前にワックスから酸素化物および窒素を除去することである。ワックス中の酸素化物および窒素は時間の経過により脱ワックス触媒を不活性化する。ワックスの水素化の第二の目的は流動点および曇点のような潤滑特性を改善することまたは軽潤滑ベース油またはジーゼルのような軽い炭化水素の収量を増加することである。これらの例で、ワックス水素化反応器を緩やかな水素添加分解モードで操作することが好ましい。しかし、一般的に、ワックス水素化反応器は分解の転化を最小化するために水素化精製モードで操作されることが好ましい。水素化精製を触媒的脱ワックスと組み合わせて使用することにより、プレミアム潤滑油の製造に使用してもよく、または製品の規格を満たさない低品質のベース油のグレードを上げるためのブレンドストックとして用いてもよい高品質潤滑ベース油の製造が可能になる。
【0024】
水素化精製は通常自由水素の存在下で行われる触媒プロセスであって、従来の石油誘導フィードストックのプロセスに使用するときの主な目的は、砒素、硫黄および窒素のようなヘテロ原子およびフィードストックからの芳香族のような各種金属不純物の除去である。既に記載したように、フィッシャー・トロプシュ製品の水素化精製の主な目的はフィードストックから酸素化物および窒素を除去することである。凝縮液プロセッシングトレインにおいて、水素化精製プロセスもまた存在するオレフィンを飽和するために使用される。一般的に、水素化精製操作において、炭化水素の分解、即ち、大きな炭化水素を小さな炭化水素に破壊することは最小化される。この考察の目的に関して、水素化精製と云う用語は水素化操作を意味し、その中で、転化は20%以下である。ここで、転化の程度とは基準温度より低い温度で沸騰する製品に転化される、基準温度(例えば700°F)より高い温度で沸騰するフィードのパーセンテージに関係する。
【0025】
水素添加分解は通常自由水素の存在下で行われる触媒プロセスであって、大きな炭化水素分子の分解が操作の主な目的である。水素化精製と対照的に、この開示の目的に関して、水素添加分解の転化率は20%を超すと定義される。ワックス状のフィードストックの脱窒素と同様、酸素化物の除去もまた生じる。本発明において、炭化水素分子の分解はジーゼルの収量を増加し、触媒的脱ワックス操作を通過する重いフィッシャー・トロプシュ留分の量を減らすために使用される。
【0026】
水素化精製と水素添加分解操作の実施で使用される触媒は当技術分野で周知である。水素化精製と水素添加分解および各プロセスで使用される通常の触媒の一般的記載に関しては、本明細書に引用してその全体を援用する米国特許第4,347,121号および4,810,357号を参照されたい。適切な触媒には、アルミナまたは珪質マトリックス担持白金またはパラジウムのようなVIIIA属貴金属(国際純正応用化学連合の1975年規則による)、アルミナまたは珪質マトリックス担持ニッケルモリブデンまたはニッケル錫のような非硫化VIIIA属およびVIB属が含まれる。米国特許第3,852,207号は適切な貴金属触媒および緩やかな条件を記載している。他の適切な触媒は、例えば米国特許第4,157,294号および3,904,513号に記載されている。ニッケルモリブデンのような非貴金属水素添加金属は、そのような化合物が含まれている特別な金属から容易に形成される場合は、通常最終触媒組成物中に酸化物または、より好ましくは、または可能性として硫化物として存在する。好ましい非貴金属触媒組成物は約5重量%を超す、好ましくは約5重量%から約40重量%のモリブデンおよび/またはタングステン、および対応する酸化物として測定された、少なくとも約0.5、および一般的に約1重量%から約15重量%のニッケルおよび/またはコバルトを含む。白金のような貴金属を含む触媒は0.01%を超す金属を含み、好ましくは約0.1%から約1.0%の間の金属を含む。白金およびパラジウムの混合物のような、貴金属の組み合わせも使用してもよい。
【0027】
水素添加成分は多数の手順のいずれか1つによって、全体の触媒組成物の中に組み込むことができる。水素添加成分はマトリックス成分に共混和、含浸またはイオン交換によって加えることができ、VIB属の成分、即ちモリブデンおよびタングステンは含浸、共混和または共沈殿によって耐熱性酸化物と組合すことができる。これらの成分は硫化物として触媒マトリックスと組み合わせ得るが、硫黄化合物はフィッシャー・トロプシュ触媒を妨害できるので、一般的に好ましくない。
【0028】
マトリックス成分は酸性触媒活性を有する幾つかのものを含む多数の型であることができる。活性を有するものは、非晶性のシリカアルミナを含み、またはゼオライト系または非ゼオライト系結晶性分子篩であってもよい。適切なマトリックス分子篩の例は、ゼオライトY、ゼオライトXおよび所謂超安定ゼオライトYおよび米国特許第4,401,556号,4,820,402号および5,059,567号に記載されているような高構造シリカアルミナ比ゼオライトYを含む。米国特許第5,073,530号に記載されているような小さな結晶サイズのゼオライトYも使用できる。使用できる非ゼオライト系分子篩は、例えばシリコアルミノホスフェート(SAPO)、フェロアルミノホスフェート、チタニウムアルミノホスフェートおよび米国特許第4,913,799号およびここに引用する参考文献に記載されている各種ELAPOを含む。各種非ゼオライト分子篩の調製に関する詳細は米国特許第5,114,563(SAPO)号および4,913,799号および米国特許第4,913,799号に引用されている各種文献に見られる。
【0029】
例えば、J.Am.Chem.Soc.114:10834−10843(1992)に記載のM41S物質ファミリー、MCM−41、米国特許第5,246,689号,5,198,203号および5,334,368号およびMCM−48(Kresge et al.,Nature359:710(1992))のようなメソ細孔(間孔性)分子篩も使用できる。適切なマトリックス物質は合成または天然物質および粘土、シリカおよび/またはシリカアルミナ、シリカマグネシア、シリカジルコニア、シリカソリア、シリカベリリア、シリカチタニアのような金属酸化物およびシリカアルミナソリア、シリカアルミナジルコニア、シリカアルミナマグネシアおよびシリカマグネシアジルコニアのような3成分組成物を含んでもよい。後者は天然由来または、シリカおよび金属酸化物の混合物を含むゼラチン様沈殿物またはゲルの形のいずれかでよい。触媒と複合できる天然由来の粘土はモンモリロナイトおよびカオリンファミリーを含む。これらの粘土は最初に採掘された原料の状態で使用してもよく、または最初にカルムニエーション(calumniation)、酸処理または化学改質に付してもよい。水素添加分解および/または水素化精製操作の実施において、反応器中に2つ以上の触媒型を使用してもよい。異なる触媒型は層に分けてもまたは混合してもよい。
【0030】
水素添加分解の条件は文献に十分に記載されている。一般的に、全体のLHSVは約0.1hr−1から約15.0hr−1(v/v)、好ましくは約0.3hr−1から約3.0hr−1である。反応圧は一般的に約500psigから約3000psig(約3.4MPaから約20.4MPa)、好ましくは約500psigから約1500psig(約3.4MPaから約10.2MPa)である。水素循環速度は通常500SCF/Bblである。反応器中の温度は約400°Fから約950°F(約205℃から約510℃)の範囲であり、好ましくは約650°Fから約850°F(約343℃から約455℃)の範囲である。
【0031】
通常の水素化精製条件は広範囲に亘って変化する。一般的に、全体のLHSVは約0.5から15.0である。反応器中の全圧力は一般的に約200psigから2000psigの範囲である。水素循環速度は通常200SCF/Bblより大きく、好ましくは1000SCF/Bblと5000SCF/Bblの間である。反応器中の温度は約400°Fから約800°F(約205℃から約427℃)の範囲である。
【0032】
本発明の利点を十分に得るために、2つの水素化反応器、即ちワックス水素化反応器と凝縮液水素化精製反応器の圧力がハイドロフィニシング反応器中の圧力と略同じ圧力に維持されることが好ましい。一般的に、これは水素化反応器の各々にける全圧力が約300psigから約3000psigの範囲内、好ましくは約500psigから約1500psigの範囲内、最も好ましくは約800psigから約1200psigの範囲内であることを意味する。既に述べたように、この方式で操作された場合、3つの反応器を統合する水素リサイクルループは、多くの従来のスキームにおいて一般に必要とされる大きなリサイクルコンプレッサーを必要としない。
【0033】
当業者は、水素リサイクルループにおける圧力低下が予想されるので、2つの水素化反応器とハイドロフィニシング反応器を全く同じ全圧力で操作される必要がないことを認識するであろう。従って、ハイドロフィニシング反応器は通常ワックス水素化反応器よりも僅かに高い全圧力で操作される。各種の反応器中の圧力が略同一の全圧力であると記載されている場合、それはそのシステム内の通常の圧力低下に帰することができる範囲内の圧力低下の差を有する実質的に同じ全圧力で反応器が操作されることを意味する。一般的に、圧力低下は、当業者に認識されるであろう多数の因子に依存して、約20psigから約150psigの範囲内で低下すると予想される。これは、最適操作範囲内の反応器中の条件、特に全圧力、を維持したまま、リサイクルコンプレッサーの使用の必要性を最小化することを目的とする。
【0034】
触媒的脱ワックス
触媒的脱ワックスは3つの主なクラス、即ち従来の水素化脱ワックス、完全な水素異性化脱ワックスおよび部分的水素異性化脱ワックスから構成される。これらのすべての3つのクラスはワックス状の炭化水素流と水素をフィード中の通常の、および僅かに枝分かれしたイソパラフィンを減らし、他の非ワックス種を増加する酸性成分を含む触媒上を通すことを含む。フィードの脱ワックスのために選択される方法は通常製品の品質とフィードのワックス含量に依存し、低ワックス含量フィードに対しては従来の水素化脱ワックスがしばしば好まれる。脱ワックスの方法は触媒の選択によって影響される。一般的な課題はAvilino Sequeiraによって、Lubricant Base Stock and Wax Processing, Marcel Dekker, Inc., page 194−223に総説されている。従来の水素化脱ワックス、完全な水素異性化脱ワックスおよび部分的水素異性化脱ワックスの間の決定は米国特許第5,282,958号に記載されているように、n−ヘキサデカン異性化試験を用いて成しうる。96パーセントにおいて測定した場合、従来の水素化脱ワックス触媒を用いたn−ヘキサデカンの転化は10パーセント未満の異性化されたヘキサデカンに選択性を示し、部分的水素異性化脱ワックス触媒は10パーセントを超え40パーセント未満の異性化されたヘキサデカンに選択性を示し、完全な水素異性化脱ワックス触媒は40パーセント以上、好ましくは60パーセントを超す、最も好ましくは80パーセントを超す異性化されたヘキサデカンに選択性を示す。
【0035】
従来の水素化脱ワックスにおいて、流動点は、例えばZSM−5のような従来の水素化脱ワックス触媒を用いてワックス分子の殆どを小さなパラフィンに選択的に分解することによって低下する。主に汚染を低減するために、触媒に金属を加えてもよい。本発明において、フィッシャー・トロプシュワックス分子の分解に際し、最終製品中のジーゼルの収量を増加するために従来の水素化脱ワックスを用いてもよい。
【0036】
本発明において、一般にワックス状のフィードの脱ワックスに、完全な水素異性化が好まれる。完全な水素異性化脱ワックスは通常、一方では、同時に分解による転化を最小化しつつ、異性化による非ワックス状イソパラフィンへのワックスの高い転化レベルを達成する。ワックスの転化は完全であるので、または少なくとも非常に高いので、この製造法は通常許容できる流動点を有する潤滑油ベースストックを製造するために追加の脱ワックスプロセスと組み合わせる必要がない。完全な水素異性化脱ワックスでは酸性成分と水素添加活性を有する活性金属成分からなる二機能触媒を使用する。両成分は異性化反応を行うのに要求される。完全な水素異性化に使用される触媒の酸性成分はSAPO−11、SAPO−31およびSAPO−41のような中間細孔SAPOを含むことが好ましく、SAPO−11が特に好ましい。ZSM−22、ZSM−23、SSZ−32、ZSM−35およびZSM−48のような中間孔ゼオライトも完全な水素異性化脱ワックスを実施するために用いてもよい。通常の活性金属にはモリブデン、ニッケル、バナジウム、コバルト、タングステン、亜鉛、白金およびパラジウムが含まれる。金属の白金およびパラジウムは活性金属として特に好ましく、白金が最も一般的に用いられる。
【0037】
部分的水素異性化脱ワックスにおいて、ワックスの転化が比較的低値(通常50パーセント未満)に維持される場合に限り、パラフィンを選択的に異性化できる触媒を使用してワックスの一部がイソパラフィンに異性化される。より高い転化において、分解によるワックス転化は顕著になり、潤滑ベースストックの収量損失は非経済的になる。完全な水素異性化脱ワックスのように、部分的水素異性化脱ワックスに使用される触媒は酸性成分と水素添加成分の両方を含む。部分的水素異性化脱ワックスに有用な酸性触媒成分には非晶性シリカアルミナ、フッ素化アルミナおよび12環ゼオライト(Beta、Yゼオライト、Lゼオライトのような)が含まれる。触媒の水素添加成分は既に考察した完全な水素異性化脱ワックスと同じである。ワックスの転化が不完全であるので、許容できる流動点(+10°Fまたは−12℃未満)の潤滑ベースストックを製造するために、部分的水素異性化脱ワックスは追加の脱ワックス技術、通常溶媒脱ワックス、完全な水素異性化脱ワックス、または従来の水素化脱ワックスで補完されなければならない。
【0038】
非ゼオライト系分子篩を含み、本発明で使用する水素添加成分を有する触媒の調製において、金属は非水性法を用いて触媒上に析出してもよい。触媒、特に非水性法を用いて金属がその上に析出されたSAPO類を含む触媒は、活性金属を析出するために水性法を用いた触媒よりも大きな選択性と活性を示した。非ゼオライト系分子篩上での活性金属の非水性析出は米国特許第5,939,349号に教示されている。一般的に、その製造法は活性金属の化合物を非水性、非反応性溶媒に溶解し、それをイオン交換または含浸によって分子篩上に析出することを含む。
【0039】
本発明で使用されているように、触媒的脱ワックスの通常の条件は約400°Fから約800°F(約200℃から約425℃)の温度、約0.2から5hr−1の空間速度を含む。脱ワックス反応器における全圧力は通常約15psigから約1500psigの範囲であり、好ましくは約150psigから約1000psig、最も好ましくは、約300psigから約500psigである。既に記載したように、触媒的脱ワックスプロセスの最適圧力は、通常水素化ユニットとハイドロフィニシングユニットに採用される圧力よりも顕著に低い。従って、本発明において、脱ワックス反応器中の全圧力は水素化反応器とハイドロフィニシング反応器中の全圧力よりも殆ど常に顕著に低い。
【0040】
ハイドロフィニシング
ハイドロフィニシング操作は潤滑ベース油製品のUV安定性と色相を改善することを目的とする。これは炭化水素分子に存在する二重結合を飽和することによって達成されると考えられる。ハイドロフィニシング操作の一般的な記載は米国特許第3,852,207号および4,673,487号に見られる。この開示に用いられているように、用語UV安定性は紫外線および酸素に曝露されたときの潤滑ベース油の安定性を意味する。非安定性は紫外線および空気に曝露した際に、目で見える沈殿の形成または暗い色相の発現によって示され、この結果、製品中に濁りまたはフロック(floc)が生じる。本発明の製造法で製造される潤滑ベース油が商業的潤滑油の製造における使用に適するには、予めUV安定化が必要である。
【0041】
本発明において、ハイドロフィニシング反応器中の全圧力は約300psigから約3000psig間であり、好ましくは約500psigから約1500psig、最も好ましくは、約800psigから約1200psigである。一般的に、ハイドロフィニシング反応器とワックス水素化反応器の間の水素リサイクルループ中のコンプレッサーの必要性を除くために、ハイドロフィニシング反応器は水素化反応器中の全圧力よりも少なくとも50psig高い全圧力で操作される。ハイドロフィニシング領域の温度範囲は通常約300°F(150℃)から約700°F(約370℃)の範囲であり、約400°F(205℃)から約500°F(約260℃)の温度が好ましい。LHSVは通常約0.2から約2.0、好ましくは0.2から1.5、最も好ましくは約0.7から1.0である。水素は通常ハイドロフィニシング領域にフィードのバレルあたり、約1000SCFからフィードのバレルあたり約10,000SCFの速度で供給される。通常水素はフィードのバレルあたり約3000SCFの速度で供給される。
【0042】
適切なハイドロフィニシング触媒は通常酸化物支持体とともに、VIIIA属の貴金属成分を含む。レニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金およびオスミウムを含む金属または化合物がハイドロフィニシング触媒に有用であると考えられる。好ましくは、金属または金属(複数)は白金、パラジウムまたは白金とパラジウムの混合物である。耐熱性酸化物は通常シリカアルミナ、シリカアルミナジルコニアおよび類似物である。通常のハイドロフィニシング触媒は米国特許第3,852,207号、4,157,294号および4,673,487号に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の1つの態様を示す模式的例示である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体燃料および潤滑ベース油の範囲で沸騰するフィッシャー・トロプシュ誘導製品を製造する統合製造法であって、
(a)フィッシャー・トロプシュ合成反応器から、フィッシャー・トロプシュワックスとフィッシャー・トロプシュ凝縮液を別々に回収すること、
(b)水素化の条件下で、水素の存在下において、フィッシャー・トロプシュワックスを水素化触媒と接触することによって、ワックスの水素化領域のフィッシャー・トロプシュワックスを水素化し、ワックスの水素化領域から、ワックス状の中間製品と水素に富む通常液状の留分を回収すること、
(c)フィッシャー・トロプシュ凝縮液混合物を形成するために、段階(a)からのフィッシャー・トロプシュ凝縮液と段階(b)からの水素に富む通常液状の留分の少なくとも一部とを混合すること、
(d)水素化精製の条件下で、水素の存在下において、フィッシャー・トロプシュ凝縮液混合物を水素化触媒と接触することによって、凝縮液水素化精製領域のフィッシャー・トロプシュ凝縮液混合物を水素化精製し、凝縮液水素化精製領域から、水素化精製されたフィッシャー・トロプシュ凝縮液製品を回収すること、
(e)水素化精製されたフィッシャー・トロプシュ凝縮液製品から、液体燃料の範囲で沸騰するフィッシャー・トロプシュ誘導炭化水素を回収すること、
(f)触媒的脱ワックス領域において、ワックス状中間製品を水素化の条件下で、水素の存在下において、脱ワックス触媒と接触することによって、段階(b)からのワックス状中間製品を脱ワックスし、脱ワックス領域からベース油を回収すること、
(g)段階(f)からのベース油を、ハイドロフィニシング領域において、ハイドロフィニシングの条件下で、水素の存在下において、ハイドロフィニシング触媒と接触することによって、ハイドロフィニシングすること、
(h)ハイドロフィニシング領域から、UV安定化潤滑ベース油と水素に富むガスを回収すること、
(i)水素化領域における全圧力が、ワックス水素化領域における圧力と少なくとも同じ高さで、段階(h)からの水素に富むガスを段階(b)のワックス水素化領域までリサイクルすること、
とを含む統合製造法。
【請求項2】
ハイドロフィニシング領域における全圧力が、ワックス水素化領域における全圧力よりも少なくとも50psig高い、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
ハイドロフィニシング領域における全圧力が、約300psigから約3000psigの範囲内である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
ハイドロフィニシング領域における全圧力が、約500psigから約1500psigの範囲内である、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
ハイドロフィニシング領域における全圧力が、約800psigから約1200psigの範囲内である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
ワックス水素化領域が、水素化精製触媒を含み、水素化精製条件下で操作するワックス水素化領域である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
ワックス水素化領域が、水素添加分解触媒を含み、水素添加分解条件下で操作するワックス水素添加分解領域である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項8】
脱ワックス領域が、ハイドロフィニシング領域の全圧力未満の全圧力で操作される請求項1に記載の製造方法。
【請求項9】
脱ワックス領域の全圧力が、約15psigから約1500psigの範囲内である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
脱ワックス領域の全圧力が、約150psigから約1000psigの範囲内である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
脱ワックス領域の全圧力が、約300psigから約500psigの範囲内である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
脱ワックス領域が、完全な水素異性化脱ワックスの条件下に維持される請求項8に記載の製造方法。
【請求項13】
脱ワックス領域が、中間細孔SAPOを含む請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
中間細孔SAPOが、SAPO−11、SAPO−31およびSAPO−41からなる群から選ばれる請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
ワックス水素化領域と凝縮液水素化精製領域が略同じ全圧力で操作される請求項1に記載の製造方法。
【請求項16】
段階(b)において回収される通常液状の留分がディーゼルを含む請求項1に記載の製造方法。
【請求項17】
段階(b)において回収される通常液状の留分がナフサを含む請求項1に記載の製造方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−510777(P2007−510777A)
【公表日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538210(P2006−538210)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【国際出願番号】PCT/US2004/035611
【国際公開番号】WO2005/047424
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】