説明

フィパメゾールの調製

本願は、フィパメゾールおよびその薬学的に許容される塩、ならびにその中間体を調製するプロセスに関する。本願は、式IIIおよび式IVの中間化合物、ならびにその調製プロセスも提供する。一態様においては、本願は、フィパメゾールまたはその塩を精製するプロセスであって、a)アルコール溶媒中のフィパメゾールまたはその塩の混合物を用意すること、b)溶液をケトン貧溶媒と混合し、冷却して沈殿を形成すること、c)精製フィパメゾールまたはその塩を回収することを含む、プロセスを提供する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願の態様は、フィパメゾール(fipamezole)、その薬学的に許容される塩、およびその中間体を調製するプロセスに関する。特定の態様においては、フィパメゾール塩酸塩を調製するプロセス、および該プロセスに使用される中間体に関する。
【背景技術】
【0002】
採用名「フィパメゾール」の薬物化合物は、化学名4−(2−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル)−1H−イミダゾールまたは4−[(2RS)−2−エチル−5−フルオロインダン−2−イル]−1H−イミダゾールであり、構造的に式Iで表される。
【0003】
【化1】

フィパメゾールは、極めて選択的な長時間作用性アドレナリン作動性アルファ2受容体拮抗物質であり、現在、ジスキネジア、運動症状の変動、および認知障害などの進行型パーキンソン病の症候を治療する臨床試験が行われている。フィパメゾールは、良好な経口生物学的利用能を有し、認知障害の治療に有用である。
【0004】
特許文献1は、フィパメゾールを含む置換イミダゾール誘導体、および薬学的に許容されるその塩を開示している。この特許は、尿素硝酸塩および濃硫酸を使用して4−(2−エチル−2,3−ジヒドロ−1H−インデン−2−イル)−1H−イミダゾールをニトロ化すること、生成したニトロ化合物をPtOを使用してアミノ化合物に還元すること、ならびにアミノ化合物をフルオロホウ酸および亜硝酸ナトリウムと反応させてフィパメゾールを得ること、次いでそれをその塩酸塩に転化させることを含む、フィパメゾールの調製プロセスも開示している。
【0005】
特許文献2は、アルカリ金属チオシアン酸塩がイミダゾール環の形成に使用される、フィパメゾールを調製するプロセスを開示している。
【0006】
フィパメゾールを高純度および高収率で調製する新しい改善されたプロセスが引き続き必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,498,623号明細書
【特許文献2】国際公開第04/063168号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様においては、本願は、フィパメゾールまたはその塩の調製プロセスに関し、複数の実施形態は、
a)式IIの5−フルオロ−1−インダノンを塩基の存在下で低級アルキルエステル試薬と反応させて、式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【0009】
【化2】

b)式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを塩基の存在下でハロゲン化エチルと反応させて、式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【0010】
【化3】

c)式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを還元試薬で還元して、式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【0011】
【化4】

d)式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを臭素化剤と反応させて、式VIの2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、および
【0012】
【化5】

e)ホルムアミドを使用して、場合によってはアンモニアの存在下で、2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンをフィパメゾールまたはその塩に転化させること
を含む。
【0013】
この多段階プロセスにおいては、各ステップは、フィパメゾールの調製に対して、別々に、または2つ以上のステップの組合せで、企図される。
【0014】
一態様においては、本願は、フィパメゾールまたはその塩を精製するプロセスであって、
a)アルコール溶媒中のフィパメゾールまたはその塩の混合物を用意すること、
b)溶液をケトン貧溶媒と混合し、冷却して沈殿を形成すること、
c)精製フィパメゾールまたはその塩を回収すること
を含む、プロセスを提供する。
【0015】
一態様においては、本願は、式IIIの中間化合物1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンおよび式IVの中間化合物1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノン、ならびにフィパメゾールまたはその塩の調製におけるその使用を提供する。
【0016】
【化6】

本発明の一態様は、フィパメゾールまたはその塩を調製するプロセスであって、
a)式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを還元試薬と反応させて、式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【0017】
【化7】

b)式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを臭素化剤と反応させて、式VIの2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、および
【0018】
【化8】

c)2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンをフィパメゾールまたはその塩に転化させること
を含む、プロセスを提供する。
【0019】
本発明の一態様は、式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンの調製プロセスであって、
【0020】
【化9】

a)式IIの5−フルオロ−1−インダノンを塩基の存在下で低級アルキルエステル試薬と反応させて、式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、および
【0021】
【化10】

b)式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを塩基の存在下でハロゲン化エチルと反応させて、式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること
を含む、プロセスを提供する。
【0022】
本発明の一態様は、式IIIの化合物1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを提供する。
【0023】
【化11】

本発明の一態様は、式IVの化合物1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを提供する。
【0024】
【化12】

【発明を実施するための形態】
【0025】
一態様においては、本願は、フィパメゾールまたはその塩の調製プロセスに関し、複数の実施形態は、
a)式IIの5−フルオロ−1−インダノンを塩基の存在下で低級アルキルエステル試薬と反応させて、式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【0026】
【化13】

b)式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを塩基の存在下でハロゲン化エチルと反応させて、式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【0027】
【化14】

c)式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを還元試薬で還元して、式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【0028】
【化15】

d)式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを臭素化剤と反応させて、式VIの2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、および
【0029】
【化16】

e)ホルムアミドを使用して、場合によってはアンモニアの存在下で、2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンをフィパメゾールまたはその塩に転化させること
を含む。
【0030】
ステップa)は、式IIの5−フルオロ−1−インダノンを塩基の存在下で低級アルキルエステル試薬と反応させて、式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成するものである。
【0031】
5−フルオロ−1−インダノンは、塩基の存在下で、低級アルキルアセタートとのクライゼン縮合に供して、2−アセチル−5−フルオロ−インダン−1−オンを生成することができる。
【0032】
ステップa)に使用することができる適切な低級アルキルエステルとしては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸t−ブチルなどが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0033】
反応に使用することができる適切な塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムアミドなどが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0034】
反応は、テトラヒドロフラン(THF)、例えばトルエン、キシレンなどの炭化水素、およびその混合物などの不活性溶媒の存在下で実施することができ、またはアルキルエステルを溶媒として使用することができる。
【0035】
適切には、反応は、温度約20から70℃、または約50から55℃で実施することができる。
【0036】
Cアルキル化インダノンが75%を超える収率で専ら単離されることが認められ、Oアルキル化生成物はこの反応では実質的に認められない。
【0037】
ステップb)は、式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを塩基の存在下でハロゲン化エチルと反応させて、式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成するものである。
【0038】
使用することができる適切なハロゲン化エチルとしては、フッ化エチル、塩化エチル、臭化エチルおよびヨウ化エチルが挙げられる。
【0039】
使用することができる適切な塩基としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属(alkali metal)水酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性金属(alkaline metal)水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸セシウムなどのアルカリ金属炭酸塩;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどのアルカリ土類金属炭酸塩;および炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどのアルカリ金属炭酸水素塩が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0040】
ステップb)の反応に使用することができる適切な溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、ホルムアミド、アセトアミド、プロパンアミドなどの極性非プロトン性溶媒;テトラヒドロフラン(THF);例えば、トルエン、キシレンなどの炭化水素;例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素;およびその任意の混合物が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0041】
適切には、反応は、温度約20から70℃、または約50から55℃で実施することができる。
【0042】
反応終了後、水を徐々に添加して反応をクエンチすることができ、次いでHClなどの鉱酸で酸性化することができる。生成物を水非混和性有機溶媒で抽出し、溶媒を蒸留して生成物を残留物として得ることができる。
【0043】
ステップc)は、式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを還元剤で還元して、式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成するものである。
【0044】
極性溶媒中で酸の存在下で実施される化学選択的水素化反応によって、ハロゲン化アリール1,3−ジケトンのベンジルケトンを除去することができる。
【0045】
ステップc)の反応に使用することができる適切な還元剤としては、水素と組み合わせた、例えば、ニッケル、白金、パラジウム、イリジウム、ルテニウムなどの金属触媒が挙げられるが、それだけに限定されない。これらの金属触媒は、チャコール、アルミナなどの不活性固体担体上で濃度約2〜20%w/w、または5〜10%w/wで使用することができる。
【0046】
ステップc)の反応に使用することができる適切な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのC1〜6直鎖または分枝アルコール;例えば、トルエン、キシレンなどの炭化水素;およびその任意の混合物が挙げられるが、それだけに限定されない。
【0047】
反応は、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸などの酸の存在下で実施することができる。
【0048】
反応終了後、触媒をろ過除去することができる。生成物を含む有機層は、蒸留して、生成物を残留物として得ることができ、またはそれを次のステップに直接使用することができる。
【0049】
ステップd)は、式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを臭素化剤と反応させて、式VIの2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成するものである。
【0050】
適切な臭素化剤としては、液体臭素、HBr水溶液、酢酸HBr、N−ブロモスクシンアミド(NBS)などが挙げられる。
【0051】
ステップd)の反応に使用することができる適切な溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのC1〜6直鎖または分枝アルコールが挙げられるが、それだけに限定されない。
【0052】
一実施形態においては、2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンは、臭素およびメタノールを使用して温度約0〜40℃で約2から6時間調製して、ジブロモ不純物の形成を最小にする。
【0053】
ステップe)は、ホルムアミドを使用して、場合によってはアンモニアの存在下で、2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンをフィパメゾールまたはその塩に転化させるものである。
【0054】
一実施形態においては、2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンからフィパメゾールへの転化は、ホルムアミドおよびアンモニアを使用して実施される。
【0055】
複数の実施形態においては、適切な反応温度は約70〜180℃または約145〜155℃の範囲であり、反応は約1から4時間または1から2時間実施される。より長い時間も使用することができる。
【0056】
プロセスの特定の一実施形態においては、2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンとホルムアミドを含む反応混合物にアンモニアガスを150〜155℃で約1から2時間注入する。
【0057】
反応終了後、反応混合物を0〜10℃に冷却し、濃HClを使用してpHを約2〜3に調節することができる。反応混合物をジクロロメタンなどの水非混和性溶媒で洗浄する。水層をアンモニア水で塩基性にし、生成物を酢酸エチルなどの有機溶媒で抽出する。有機層は、濃縮して残留物を得ることができ、またはそれを次のステップに直接使用することができる。
【0058】
得られたフィパメゾールは、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどの適切な溶媒中で、酸との反応によって、薬学的に許容される塩に転化させることができる。
【0059】
薬学的に許容される酸としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、酢酸および多数の他の酸が挙げられる。
【0060】
この多段階プロセスにおいては、各ステップは、フィパメゾールの調製に対して、別々に、または任意の2つ以上のステップの組合せで、企図される。
【0061】
一態様においては、本願は、フィパメゾールまたはその塩を精製するプロセスも提供し、実施形態は、
a)アルコール溶媒中のフィパメゾールまたはその塩の混合物を用意すること、
b)溶液をケトン貧溶媒と混合し、次いで混合物を冷却して沈殿を形成すること、
c)精製フィパメゾールまたはその塩を回収すること
を含む。
【0062】
溶液を用意するステップは、フィパメゾールもしくはその塩をアルコール溶媒に溶解すること、またはフィパメゾールが合成されるステップから溶液を得ることを含む。任意の方法によって得られる、結晶形、非晶形、非晶形と結晶形の任意の割合の混合物などのフィパメゾールまたはその塩の任意の形態が、溶液形成に許容される。
【0063】
使用することができる適切なアルコール溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのC1〜6直鎖または分枝アルコールが挙げられる。
【0064】
適切なケトン貧溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられる。
【0065】
複数の実施形態においては、フィパメゾールとアルコールの混合物は、使用するアルコール溶媒の還流温度で提供される。ケトン貧溶媒は、還流温度以下で添加することができる。あるいは、溶液を沸点までの任意の温度でケトン貧溶媒に添加することができる。次いで、溶液を温度約0〜30℃または20〜25℃に冷却する。
【0066】
固体材料を最終混合物から回収する方法は、デカンテーション、重力または吸引ろ過、遠心分離などの技術のいずれかとすることができる。こうして単離された固体は、少量の吸蔵母液を有し得る。必要に応じて、固体を適切な溶媒または種々の割合の溶媒混合物で洗浄して、母液を洗い流すことができる。
【0067】
乾燥は、棚段乾燥機、真空乾燥機、空気乾燥器、流動層乾燥機、スピンフラッシュドライヤー、フラッシュドライヤーなどの装置を使用して適切に実施することができる。乾燥は、温度約35℃から約70℃で実施することができる。乾燥は、約1から約25時間、またはそれより長くなど、所望の純度を得るのに必要な任意の期間実施することができる。
【0068】
複数の実施形態においては、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)などの技術を使用し特徴づけた場合に約0.5重量%未満または約0.1重量%未満のプロセス関連不純物を含む、高純度のフィパメゾールまたはその塩を提供する。
【0069】
複数の態様においては、本願は、式IIIの中間化合物1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンおよび式IVの中間化合物1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノン、ならびにフィパメゾールまたはその塩の調製におけるその使用を提供する。
【0070】
【化17】

一態様においては、本願は、1種類以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に、本願のプロセスによって調製されたフィパメゾールまたは薬学的に許容されるその塩を含む、医薬製剤も含む。
【0071】
この開示のある特定の態様および実施形態を以下の実施例で記述するが、実施例は、単なる説明のためのものにすぎず、本開示の範囲を決して限定するものではない。
【実施例】
【0072】
(実施例1) 5−フルオロ−1−インダノン(式II)の調製
A)3−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−プロパン−1−オンの調製
AlCl(9.02g)およびジクロロメタン(DCM、50mL)を丸底フラスコに窒素雰囲気下で充填する。塩化クロロプロピオニル(7.93g)を25〜30℃で20分間添加する。フルオロベンゼン(5g)を30℃で約15分間添加する。混合物を25〜30℃で約12時間維持する。反応終了後、水(50mL)を徐々に添加し、混合物を15分間撹拌する。水層を分離し、DCM(50mL)で抽出する。混合有機層を硫酸ナトリウムで脱水し、50℃未満で減圧蒸留する。n−ヘキサン(15mL)を残留物に添加し、20分間撹拌する。固体をろ過し、n−ヘキサン(10mL)10mLで洗浄する。湿潤固体を乾燥させて3−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−プロパン−1−オン6.9gを得る。
【0073】
B)5−フルオロ−1−インダノン(式II)の調製
3−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)−プロパン−1−オン(10g)および濃硫酸(60mL)を窒素ガス流を備える250mL丸底フラスコに充填し、120℃に加熱する。混合物を115〜120℃で約30分間撹拌する。反応終了を薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて確認する。反応混合物を氷水(30mL)に注ぎ、続いて約15分間撹拌する。物質をクロロホルム(150mL)で抽出し、有機層を50℃未満で減圧濃縮する。得られた残留物をシリカゲルおよび勾配溶離剤としてn−ヘキサン/酢酸エチルを使用したカラムクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物3.7gを得る。
【0074】
(実施例2) 2−アセチル−5−フルオロインダン−1−オン(式III)の調製
窒素ガス流を備える250mL丸底フラスコに水素化ナトリウム(1.6g、鉱油中60%分散物)、THF(15mL)、5−フルオロ−1−インダノン(3g)および酢酸エチル(3.52g)を充填し、混合物を30℃で約15分間撹拌する。混合物を50℃に加熱し、窒素雰囲気下で約3時間維持する。反応終了後、混合物を30℃に冷却し、氷水(40mL)を添加し、10%HCl水溶液(4mL)を使用してpHを約5に調節する。混合物を酢酸エチル(90mL)で抽出し、有機層を55℃未満で減圧濃縮する。イソプロパノール(15mL)を残留物に添加し、30℃で約1時間撹拌する。固体をろ過し、イソプロパノール(15mL)で洗浄して、標記化合物2.3gを固体として得る。
【0075】
【化18】

(実施例3) 2−アセチル−2−エチル−5−フルオロインダン−1−オン(式IV)の調製
窒素ガス流を備える500mL丸底フラスコに炭酸カリウム(18.03g)、DMF(125mL)および2−アセチル−5−フルオロ−インダン−1−オン(25g)を充填し、25〜35℃で約10分間撹拌する。混合物を50〜55℃に加熱し、約1時間維持して、オフホワイトの陰イオン複合体を形成する。ヨウ化エチル(24.5g)を添加し、混合物を50〜55℃で約6時間維持する。反応終了後、混合物を25〜35℃に冷却する。混合物をろ過して固体材料を除去する。水(250mL)をろ液に添加し、pHを濃HCl(25mL)で約3に調節する。生成物をトルエン(375mL)で抽出し、有機層を水(125mL)で洗浄する。有機層を55℃未満で減圧濃縮する。得られた残留物をシリカゲルおよび移動相としてn−ヘキサン中の3%酢酸エチルを使用したカラムクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物21gを得る。
【0076】
GC純度:98.6%
【0077】
【化19】

(実施例4) 2−(2−エチル−5−フルオロインダン−2−イル)−エタノン(式V)の調製
チャコール担持パラジウム(palladium on charcoal)(5重量%、5g)、エタノール(100mL)、酢酸(50mL)および2−アセチル−2−エチル−5−フルオロ−インダン−1−オン(5g)をステンレス鋼容器に25〜35℃で充填する。混合物を50〜60℃で340〜415kPa(50〜60psi)の水素圧力下で約6時間維持する。反応終了をTLCを用いて確認する。混合物をろ過し、ろ液を50℃未満で減圧濃縮して、標記化合物4.6gを得る。
【0078】
【化20】

(実施例5) 2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロインダン−2−イル)エタノン(式VI)の調製
メタノール(30mL)および2−(2−エチル−5−フルオロインダン−2−イル)−エタノン(5g)を窒素ガス流を備える250mL丸底フラスコに充填し、混合物を−10℃から0℃に冷却する。臭素(3.9g)とメタノール(12.5mL)の混合物を−5℃から0℃で徐々に添加する。混合物を約4時間撹拌する。反応終了後、水(25mL)および亜硫酸ナトリウム(1.25g)を添加し、混合物を30℃にし、約10分間撹拌する。混合物をトルエン(37.5mL)で抽出し、有機層を炭酸水素ナトリウム水溶液(10%、25mL)で洗浄する。有機層を55℃未満で減圧濃縮する。得られた残留物をシリカゲルおよび移動相として酢酸エチル/n−ヘキサンを使用したカラムクロマトグラフィーによって精製して、標記化合物4.2gを得る。
【0079】
(実施例6) フィパメゾール塩酸塩の調製
ホルムアミド(12mL)および2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロインダン−2−イル)エタノン(4g)を窒素ガス流を備える100mL丸底フラスコに充填し、混合物を約150℃に加熱する。混合物を約3時間撹拌し、次いでアンモニアガスを反応混合物に150〜155℃で約2時間注入する。反応終了後、混合物を0〜5℃に冷却し、水(20mL)を添加する。pHを濃HCl(4mL)で約2に調節する。混合物を25〜35℃にし、ジクロロメタン(8mL)で洗浄する。水層のpHをアンモニア水溶液(25%、8mL)で約9〜10に調節し、水層を酢酸エチル(40mL)で抽出する。有機層を分離し、水(20mL)および塩化ナトリウム水溶液(10%、50mL)で洗浄する。有機層を55℃未満で減圧濃縮して、残留物3.1gを得る。
【0080】
塩化水素のエタノール溶液(7%w/v、31mL)を残留物に添加し、25〜30℃で約1時間撹拌する。混合物を55℃未満で減圧濃縮して、フィパメゾールHCl 3.2gを得る。
【0081】
HPLC純度:98.94%
(実施例7) フィパメゾール塩酸塩の精製
イソプロピルアルコール(9.6mL)および実施例6のフィパメゾールHCl(3.2g)を窒素ガス流を備える100mL丸底フラスコに充填し、混合物を加熱還流させる。混合物を約40分間撹拌し、次いでアセトン(32mL)を還流温度で添加する。次いで、混合物を25〜30℃に冷却し、撹拌を約6時間続ける。形成された固体をろ過し、冷アセトンで洗浄する。湿潤固体を乾燥させて、精製フィパメゾールHCl 2.1gを白色固体として生成する。
【0082】
HPLC純度:99.8%
(実施例8) 5−フルオロ−1−インダノン(式II)の調製
A)3−フルオロケイ皮酸の調製
マロン酸(15g)、ピリジン(35mL)および4−フルオロベンズアルデヒド(10g)を窒素ガス流を備える500mL丸底フラスコに25℃で充填する。ピペリジン(0.6g)を添加し、混合物を25〜35℃で10分間撹拌する。混合物を110℃に加熱し、110〜115℃で約5時間撹拌する。反応終了後、混合物を25℃に冷却し、氷水(210mL)と濃HCl(56mL)の混合物を添加して反応をクエンチする。混合物を約15分間撹拌する。得られた固体をろ過し、水(20mL)で洗浄する。湿潤固体を水(132mL)とメタノール(66mL)の混合物を含むフラスコに充填し、60℃に加熱する。混合物を約30分間撹拌し、次いで25〜35℃に冷却する。固体をろ過し、50℃未満で乾燥させて、3−フルオロケイ皮酸12gを固体として得る。
【0083】
B)3−(3−フルオロフェニル)プロパン酸の調製
チャコール担持パラジウム(5%w/w、2.5g)、メタノール(50mL)、THF(50mL)および3−フルオロケイ皮酸(10g)をステンレス鋼容器に25〜35℃で充填する。混合物を25〜35℃で415〜485kPa(60〜70psi)の水素圧力下で約4時間維持する。反応終了をTLCを用いて確認する。混合物をろ過し、固体をTHF(25mL)で洗浄する。ろ液を50℃未満で減圧濃縮して、3−(3−フルオロフェニル)プロパン酸10gを得る。
【0084】
C)5−フルオロ−1−インダノン(式II)の調製
ポリリン酸(200g)を窒素ガス流を備える500mL丸底フラスコに充填し、約90℃に加熱する。3−(3−フルオロフェニル)プロパン酸(10g)を90℃で添加し、混合物を110℃に更に加熱する。混合物を100〜110℃で約30分間撹拌する。反応終了後、混合物を0〜5℃に冷却し、冷水(1000mL)を添加する。混合物を酢酸エチル(200mL)で抽出する。有機層を分離し、炭酸水素ナトリウム水溶液(10%、100mL)で洗浄する。有機層を55℃未満で減圧濃縮して、標記化合物8.5gを固体として得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィパメゾールまたはその塩を調製するプロセスであって、
a)式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを還元試薬と反応させて、式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、
【化21】

b)式Vの1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを臭素化剤と反応させて、式VIの2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、および
【化22】

c)2−ブロモ−1−(2−エチル−5−フルオロ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンをフィパメゾールまたはその塩に転化させること
を含む、プロセス。
【請求項2】
還元剤が、水素と組み合わせた金属触媒を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
金属触媒がニッケル、白金、パラジウム、イリジウムおよびルテニウムを含む、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
金属触媒が固体不活性担体上に存在する、請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
前記ステップa)の反応が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸または酢酸を含む酸の存在下で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
臭素化剤が、液体臭素、HBr水溶液、酢酸HBrまたはNBSを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記b)の反応が、C〜C直鎖または分枝アルコールを含む溶媒中で実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記b)の反応が約0〜40℃の範囲の温度で約2から6時間実施される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
c)の転化させることが、場合によってはアンモニアの存在下で、ホルムアミドと反応させることを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
フィパメゾールを薬学的に許容される酸と反応させて塩を形成することを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
薬学的に許容される酸が、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸または酢酸を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンの調製プロセスであって、
【化23】

a)式IIの5−フルオロ−1−インダノンを塩基の存在下で低級アルキルエステル試薬と反応させて、式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること、および
【化24】

b)式IIIの1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを塩基の存在下でハロゲン化エチルと反応させて、式IVの1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノンを形成すること
を含む、プロセス。
【請求項13】
低級アルキルエステル試薬が、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチルまたは酢酸t−ブチルを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
a)の塩基が、水素化ナトリウム、水素化カリウム、ナトリウムメトキシドまたはナトリウムアミドを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記ステップa)の反応が、テトラヒドロフラン、トルエンまたはキシレンを含む溶媒中で実施される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項16】
ハロゲン化エチルが、フッ化エチル、塩化エチル、臭化エチルまたはヨウ化エチルを含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項17】
b)で使用される塩基が、アルカリ金属水酸化物、アルカリ性金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩またはアルカリ金属炭酸水素塩を含む、請求項12に記載のプロセス。
【請求項18】
前記b)の反応が、極性非プロトン性溶媒、テトラヒドロフラン、炭化水素、ハロゲン化炭化水素およびその任意の混合物を含む溶媒中で実施される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項19】
フィパメゾールまたはその塩を精製するプロセスであって、
a)アルコール溶媒中のフィパメゾールまたはその塩の溶液を用意すること、
b)前記溶液をケトン貧溶媒と混合し、冷却して沈殿を形成すること、
c)精製フィパメゾールまたはその塩を回収すること
を含む、プロセス。
【請求項20】
アルコール溶媒がC1〜6直鎖または分枝アルコールを含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項21】
アルコール溶媒がメタノール、エタノール、イソプロパノールまたはブタノールを含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項22】
ケトン貧溶媒がアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルイソブチルケトンを含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項23】
精製フィパメゾールまたはその塩が、約0.5重量%未満のプロセス関連不純物を含む、請求項19に記載のプロセス。
【請求項24】
式IIIの化合物1−(5−フルオロ−1−オキソ−2,3−ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノン
【化25】


【請求項25】
式IVの化合物1−(2−エチル−5−フルオロ−1−オキソ−2,3,ジヒドロ−1H−2−インデニル)−1−エタノン
【化26】



【公表番号】特表2013−500983(P2013−500983A)
【公表日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−523023(P2012−523023)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/043643
【国際公開番号】WO2011/014613
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(399131150)ドクター・レディーズ・ラボラトリーズ・リミテッド (19)
【出願人】(506017137)ドクター レディズ ラボラトリーズ, インコーポレイテッド (24)
【Fターム(参考)】