説明

フィブリノーゲンの調製方法

フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質を分離し精製する方法を提供すること。
本発明の方法は、プラスミノーゲンからフィブリノーゲンを分離するため、ならびにフィブリノーゲンおよび因子XIIIを同時精製するために、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーの使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィブリノーゲンの精製方法に関し、ならびに容易に可溶化するフィブリノーゲン調製品に関する。
【背景技術】
【0002】
フィブリノーゲンは、凝血塊(clot)生成に関係する血液の血漿タンパク質である。フィブリノーゲンは、血漿プロテアーゼのトロンビンの作用によってフィブリン・モノマーに変換される。フィブリン・モノマーは、互いに結集して弱い凝血塊を形成し、次いで活性化因子XIII(すなわち因子XIIIa)の作用により架橋されてより強固な凝血塊を形成する。フィブリノーゲンは、治療においてトロンビンと併用して、止血を達成し、傷口を封鎖し、および組織の癒着をコントロールするためのいわゆるフィブリン密封材として使用される。フィブリノーゲン濃縮物もまた、先天的または後天的なフィブリノーゲン欠乏血症患者の代替療法の処置に使用される。
【0003】
あらゆる臨床的な利用のためには、例えば不必要な汚染タンパク質の存在に起因する、望ましくない副作用いずれも最少とするために高度に純粋なフィブリノーゲンとすることが重要である。特に、臨床用のフィブリノーゲン調製品は、プラスミノーゲンおよびプラスミンを含まないことが要求される (Blomback B. , Blomback M., "ヒトおよびウシフィブリノーゲンの精製", Arkiv for Kemi 1956; 10: 415-443, およびMosesson M. W., "ヒトのプラスミノーゲンフリー・フィブリノーゲンの調製", Biochim Biophys Acta 1962, 57: 204-213)。
【0004】
プラスミノーゲンは、フィブリン凝血塊を消化するフィブリン分解酵素であるプラスミンの不活性前駆体である。したがって、インビボでの使用を意図されたフィブリノーゲン調製品中にプラスミノーゲンが存在することは、望ましくない。なぜならば、プラスミノーゲンから生成したプラスミンいずれも、凝血塊の生成部位でそれを不安定にするかも知れないためである。
【0005】
プラスミノーゲンは、フィブリノーゲンと一緒に精製される傾向にあり、その除去が困難となることもある。したがって、臨床用フィブリノーゲン調製品の中には、存在するプラスミンまたはプラスミノーゲンを阻害するために抗フィブリン分解剤(例えばプラスミ
ンのウシ・タンパク質性阻害剤のアプロチニン、または神経毒性副作用にも関係している合成プラスミン阻害剤のトラネキサム酸(tranexamic acid))を含有しているものある。フィブリノーゲンからプラスミノーゲンを分離する利点の一つは、そのようなフィビリノーゲン分解阻害剤を臨床用フィブリノーゲン調製品に使用する必要がないことである。
【0006】
加えて、ヒトまたは動物材料に由来するフィブリノーゲンを、存在するかも知れない血液由来のウィルス、例えば肝炎ウィルスまたはHIVをすべて不活性化する処置を施すこと
は極めて望ましい。ウィルスを不活性化する様々な方法が、当該技術分野で知られており、パスツール法(pasteurisation)、乾熱処理、および溶媒-界面活性剤処理(“不安定な血液製剤における病原体不活性化”、不安定血液製剤の病原体不活性化に関する欧州専門家委員会および輸血研究班の協議会、Transfusion Medicine, 2001,11, 149-175)などが
挙げられる。
【0007】
乾熱処理は、エンベロープウィルスおよびある非エンベロープウィルスの不活性化に有効であることが知られている。他方、溶媒-界面活性剤処理は、B型肝炎ウィルスなどのエンベロープ(すなわち脂質被覆)ウィルスの不活性化に有効である。
【0008】
様々なフィブリノーゲン精製方法が当業界ではこれまで知られている。しかしながら従来技術の精製方法は、種々の問題点を抱えている。例えば、沈降法に溶媒-界面活性剤(SD)ウィルス不活性化工程を組み込ませることは容易ではない。なぜならばSD試薬の除去が
クロマトグラフィー的にはるかに容易になしえるからである。クロマトグラフィー法は単一の工程でフィブリノーゲンをプラスミノーゲンから分離することはできないであろう。このためプラスミノーゲンを吸着する追加のクロマトグラフィーが必要となるか、あるいは残存プラスミノーゲンを不活性にするために最終フィブリノーゲン調製品に抗フィブリン分解剤を加える必要が生じる。さらに、従来技術の方法は、必ずしも広範囲のフィブリノーゲン含有溶液(血漿および組換え体画分を含む)からのフィブリノーゲン精製に向いているとは限らない。
【0009】
先にUS 5,169, 936は、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー (IMAC)がヒトフィブリノーゲン調製に使用できるかも知れないと示唆していた。しかし、そのような方法の諸例が開示もされなければ、IMACがプラスミノーゲンからフィブリノーゲンの分離に用い得るとの示唆もなかった。
【0010】
フィブリノーゲン濃縮物の溶解は容易ではなく、往々にして高温または長時間の撹拌を要することが知られている(US 5,260, 420および EP-A 0804933参照)。フィブリノーゲンの液体溶液が経時的に不安定であるために、臨床用のフィブリノーゲン調製品は、急速低温凍結溶液の形態であるか、または乾燥粉末 (すなわち凍結乾燥した調製品)として市販
化されている。使用前にかかる市販製品は、解凍させるか、乾燥粉末を水で戻さなければならない。これらの手順は、それなりの時間と手間を要する。
【発明の開示】
【0011】
かくしてフィブリノーゲンの精製のための代替方法を、特にフィブリノーゲンを含有するいかなる出発材料にも適用可能であり、しかも1またはそれ以上のウィルス不活性化工程を組み込めるような方法を提供することは有益となるであろう。プラスミノーゲンからフィブリノーゲンを分離する方法を提供することも有益であろう。さらに室温で容易に再溶解することができるフィブリノーゲン濃縮物で、凍結乾燥した、そして好ましくは加熱処理したものを提供することもまた有益になる。
【0012】
それゆえ本発明の一面は、フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質を分離し精製する方法を提供し、次の工程を含む。
(a)フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質を含む溶液を、固定化金属
イオンアフィニティクロマトグラフィー充填剤に、フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質がともに該充填剤に結合するような条件下で載せる工程。および
(b)前記フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質を別々に、前記充填剤
から選択的に溶出する工程。そのフィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質は、別々に回収され、各々はさらに必要な処理を行なわれてもよい。
【0013】
好ましくは、フィブリノーゲンを含む溶液は、フィブリノーゲン含有血漿画分であり、好ましくは少なくとも一つの他のタンパク質はプラスミノーゲンである。
別の面において本発明は、プラスミノーゲンからフィブリノーゲンを分離する方法を提供し、その方法は固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーの使用を含む。好ましくは、該方法は、次の工程を含む。
(a)フィブリノーゲンおよびプラスミノーゲンを含む溶液を、固定化金属イオンアフィニ
ティクロマトグラフィー充填剤に、少なくともフィブリノーゲンが該充填剤に結合するような条件下で載せる工程、および
(b)フィブリノーゲンを前記充填剤から選択的に溶出する工程。好ましくはプラミノーゲ
ンもまた該充填剤に結合するが、そのフィブリノーゲンおよびプラスミノーゲンは、別々に該充填剤から選択的に溶出される。
【0014】
本明細書において、フィブリノーゲンの分離および/または精製の言及は、フィブリノ
ーゲンおよび因子XIIIをともに含む出発材料から、フィブリノーゲンと因子XIIIとの共通分離および/または同時精製を含むものである。.
本発明の方法のための出発材料は、フィブリノーゲンを含むいかなる溶液であってもよく、ヒトまたは動物の血漿または血漿画分、遺伝子組換え工学からの細胞培養画分、トランスジェニック動物からの乳汁からの画分などが挙げられる。好ましい材料は、寒冷沈降物、ヘパリン沈降物および低温沈降物といった血漿画分である。より好ましい出発材料は、ヘパリン沈降物および寒冷沈降物を含む。他の好ましい出発材料は、さらにプラスミノーゲンおよび/または因子XIIIを含有する。
【0015】
出発材料は、遺伝子操作を介した、例えば細胞培養またはトランスジェニック生物種を含む、従来技術で知られた任意の適当な方法によって調製されてもよい。
例えば, 寒冷沈降物は、Gunson H. H., Bidwell E., Lane R.S., Wensley R. T., Snape T. J.,"Variables involved in cryoprecipitate production and their effect on Factor VIII activity", British Journal of Haematology, 1978; 43: 287-295; による方法で、ヘパリン沈降物は、Winkelman L., Owen N. E., Evans D. R. , Evans H. E. , Haddon M. E. , Smith J. K. , Prince P. J. , Williams J. D., Lane R. S. ,"Severely heated therapeutic Factor VIII concentrate of high specific activity", Vox Sanguinis, 1989 ; 57: 97-103; による方法で、ならびに低温沈降物は、Smith J. K. , Evans
D. R. , Stone V., Snape T. J. ,"A Factor VIII concentrate of intermediate purity and higher potency", Transfusion, 1979; 19 : 299-306による方法で調製できる。
【0016】
本発明の方法を用いて、フィブリノーゲから分離される出発材料中の望ましくない汚染物質は、他のタンパク質(例えばプラスミノーゲンといった血漿タンパク質), 前の処理工程からの試薬類(例えば細胞培養培地の成分、または溶媒-界面活性剤試薬)、ウィルスお
よびプリオンなどである。プラスミノーゲンが除去されることがとりわけ望ましく、その結果としてプラスミン阻害剤(抗フィブリン分解剤) をフィブリノーゲンに添加すること
は回避することができる。
【0017】
フィブリノーゲン含有溶液がIMAC充填材に載せられる。好ましくは、その充填材は、処理をた易くするためにカラム内に存在する。適切な金属イオンならいずれも用いてもよいが、例えば銅、亜鉛、またはニッケル、好ましくは銅である。本発明の方法に使用するための固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーのゲルとして、側鎖スペーサーにマルチ置換リガンドを有するメタクリレートゲル (例えばメルク社のFractogel EMD Chelate)、スペーサーアーム(spacer arm)に単一のキレート化基を有するメタクリレートゲル (例えば、Tosoh Biosep社のToyopearl Chelate) および架橋アガロースゲル(例えばアマシャムバイオサイエンス社のChelating Sepharose FF)が挙げられる。好ましいゲルは
、Tosoh Biosep社のToyopearl AF chelate 650 (M) である。
【0018】
使用する緩衝液を含め、載せるための(適用)条件は、出発材料中にフィブリノーゲン、存在するなら因子XIIIもすべてゲルに結合するような条件を選択するべきである。ゲルに結合しない不要の不純物は、洗浄により除去することができる。例えば、出発材料が予め溶媒-界面活性剤不活性化工程を済ませているなら、残存しているいかなる溶媒または
界面活性剤試薬もゲルに結合せず、洗浄により容易に除去することができる。代わりに不要の不純物がゲルに結合しているならば、フィブリノーゲンが溶離する前に、選択的に溶出することによって除去することができ、あるいはフィブリノーゲンが選択的に溶出される一方で、ゲルに結合させたままであってもよい。さらに、ゲルおよび結合したタンパク
質を洗浄することは、クロマトグラフィー供給原料に存在するかも知れないウィルスを除去するのに役立つであろう。
【0019】
プラスミノーゲンは、フィブリノーゲンまたは因子XIIIよりも金属キレートクロマトグラフィーゲルに緩やかに結合することが見出された。よって出発材料に存在するいずれのプラスミノーゲンも、フィブリノーゲンを結合させたままで、洗浄により、低分子量の競合的キレート化物質の低濃度溶液を用いる選択的溶出により、あるいはその結合力を減衰させるような条件の変更、例えばpHまたはイオン強度を低下させることにより、除去することができる。適切なキレート化化合物として、アミノ酸、例えばアラニン、ロイシンおよびリジン、またイミダゾール、クエン酸塩およびエチレンジアミン四酢酸 (EDTA)など
が挙げられる。プラスミノーゲンを溶出するための好ましいキレート化化合物は、アラニンである。キレート化化合物の濃度は、フィブリノーゲンがゲルに結合したままである一方、プラスミノーゲンが溶離するように選ぶべきである。その正確な濃度は用いる溶出液によるであろう。例えば、約20mM未満の濃度では、フィブリノーゲンを結合させたままプラスミノーゲンが選択的に取り除かれる。プラスミノーゲンの適切な溶出濃度として、例えば20mM以下のアラニンもしくはロイシン、10mM以下のリジンおよび10mM未満のイミダゾールが挙げられる。
【0020】
次いでフィブリノーゲンは、同一または異なるキレート化物質のより高濃度を用いることにより、あるいはpHまたはイオン強度を低下させることにより溶出することができる。フィブリノーゲンを溶出するための好ましいキレート化化合物は、アミノ酸、好ましくはリジン、アルギニン、またイミダゾールである。より好ましい溶出化合物は、アルギニンを含む。例えばフィブリノーゲンは、20mMより高いキレート化化合物の溶液を用いることにより溶出されるだろう。フィブリノーゲンを溶出するその条件(濃度およびpH)は、
フィブリノーゲンがゲルから除かれるが、生成物に金属イオンの混入を最小限にするために、金属イオンがゲルから離れないように選ぶべきである。
【0021】
プラスミノーゲンを除去することは、臨床用調製品に何ら抗フィブリン分解の製剤を加える必要がなくそのフィブリノーゲンがそのまま臨床的に使用できるために有益である。さらに有利な特徴は、IMACによりフィブリノーゲンから分離されたプラスミノーゲンが、臨床用のプラスミノーゲン濃縮物を製造するためにさらに処理を進めることができることにある。したがってIMACはプラスミノーゲンおよびフィブリノーゲンをともに含有する出発溶液からプラスミノーゲンおよびフィブリノーゲンの両方の調製に用いることができる。
【0022】
本発明の方法の有利な特徴は、出発材料中の因子XIIIがすべてフィブリノーゲンとともに同時に溶離する傾向にあることである。フィブリノーゲンが臨床的に使用される場合、最終フィブリノーゲン調製品中に測定可能な(>1u/ml)因子XIIIが存在することは有用である。因子XIIIのその濃度は、フィブリン密封材のインビトロ試験においてある効果を有することが示されている。もっとも因子XIIIが臨床上の効能に必要であるとの証拠は存在しない。また因子XIII活性が検出できないフィブリン密封材の製品が、臨床効果を有して使用されている。血流環境において使用されるとき(例えば止血)、患者の内因性因子XIIIは、凝血塊の架橋化に作用するために存在する。そうした場合でないときに、因子XIIIの製品中の存在が有益である可能性もある。因子XIIIが触媒的酵素であるため、それが低濃度であっても有効に作用することができる。
【0023】
したがって本発明は、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーの使用を含み、フィブリノーゲンおよび因子XIIIの同時精製の方法を提供する。好ましくは、本方法は、以下の工程を含む:
(a)フィブリノーゲンおよび因子XIIIを含む溶液を、固定化金属イオンアフィニティクロ
マトグラフィー充填剤に、フィブリノーゲンおよび因子XIIIがともに該充填剤に結合するような条件下で載せる工程。および
(b)フィブリノーゲンおよび因子XIIIを前記充填剤から選択的に溶出する工程。
【0024】
所望する場合には、フィブリノーゲンを含有する出発材料は、固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーの前に、溶媒-界面活性剤ウィルス不活性化処理を行ってもよ
い。その溶媒-界面活性剤ウィルス不活性化は、当業界に知られた試薬および方法を用い
て行うことができる(例えば、US 4,481,189、US 4,613,501および US 4,540,573を参照。これらは本明細書に参照により含まれる。)。適切な溶媒として、トリ-n-ブチルリン酸 (TnBP)およびエーテルが挙げられ、好ましくはTnBPである。適切な界面活性剤としてポ
リソルベート(polysorbate)(トゥイーン(Tween)(R))80、ポリソルベート(トゥイーン) 20 およびトリトンX-100(R)が挙げられ、好ましい界面活性剤は、ポリソルベート20であり、とりわけポリソルベート20およびTnBPの組み合わせが望ましい。
【0025】
フィブリノーゲン含有画分は、存在するすべてのエンベロープウィルスを不活性化するのに充分なある温度および時間、溶媒-界面活性剤試薬とともに撹拌混合してもよい。例
えば、溶媒-界面活性剤処理を約1時間、25°Cで行ってもよい。
【0026】
クロマトグラフィー工程から回収されたフィブリノーゲンは、次に臨床用途にそれを配合するため、さらに処理を進めることができる。例えば、限外濾過によりおおよそ15〜30
mg/ml濃度まで濃縮してもよく、および/または病原体を減らす工程、例えばナノ濾過(nanofiltration)にかけてもよい。
【0027】
上記濃縮物は、適当な安定化剤の組み合わせを添加して配合してもよい。例えば、アミノ酸、炭水化物、塩および界面活性剤である。特に、その調製品は、抗フィブリン分解剤または安定化タンパク質、例えばアルブミンを何ら添加することなく配合するのがよい。配合した製剤は、次に長期間保存のためにろ過および凍結乾燥(フリーズドライ)により無菌化してもよい。必要に応じて上記凍結乾燥製剤は、さらにウィルス不活性化工程における乾熱処理をおこなってもよい。例えば、約80°Cでおよそ72時間、または約100°Cで
およそ24時間加熱してもよい。
【0028】
フィブリノーゲン製品の配合に用いられるアミノ酸、塩、炭水化物および界面活性剤の組み合わせは、凍結乾燥工程から最終の乾熱処理工程にわたって、それを安定化させることに役立つ。また、凍結乾燥製品を再び水に溶かして戻すことを容易化させる。特に安定化剤は、製品中に存在する因子XIIIを安定化させる。因子XIIIは、極度に不安定であることが知られている。
【0029】
凍結乾燥され、乾燥熱処理された製品は、水を用いて室温で15分未満、好ましくは10分未満、ならびに最も好ましくは5分未満で、少なくとも約60 mg/mlの濃度を有するフィブ
リノーゲン溶液となるように溶かして戻すことができる。
【0030】
プラスミノーゲンが除去され、これにより抗フィブリン分解剤を最終のフィブリノーゲン調製品に添加することを回避できることは、本発明の方法の有益な特徴である。
本発明のもう一つの特徴として、本発明の方法に従って調製したフィブリノーゲン、炭水化物、緩衝液、塩、アミノ酸および界面活性剤、ならびに任意に因子XIIIを含有し、凍結乾燥し、好ましくは乾熱処理したフィブリノーゲン調製品が提供される。その調製品は、部屋の温度で15分未満、好ましくは10分未満、より好ましくは5分未満で水に溶解し、
フィブリノーゲン溶液を与える。そのフィブリノーゲン最終溶液の濃度は、少なくとも約60 mg/mlであることが好ましい。
【0031】
理論に拘束されることを望むわけではないが、塩、界面活性剤、アミノ酸および炭水化物の組み合わせは、上記調製品の急速溶解を促進すると確信される。炭水化物は、また存在するいずれの因子XIII活性を保護するのに役立つと信じられている。緩衝液は、製剤のpHを調整する。
【0032】
また調製品に炭水化物、緩衝液、塩、アミノ酸および界面活性剤の組み合わせを使用することは、他の安定化剤、例えばアルブミンといったタンパク質を添加することを必要とせずに、フィブリノーゲン、さらに存在するいずれの因子XIIIを安定化するものである。このことは、他のタンパク質の添加が、製品にウィルス汚染または他の汚染の原因になりかねないために有益である。かくして本発明のフィブリノーゲン調製品は、安定化剤のタンパク質、特にアルブミンを含まない。本発明のフィブリノーゲン調製品が、抗フィブリン分解剤を含まないことが望ましい。
【0033】
適切なアミノ酸として、アルギニン、適切な炭水化物としてスクロース、トレハロースおよびラフィノースが挙げられ、好ましくはスクロースである。適切な緩衝剤として、クエン酸塩(例えばクエン酸ナトリウム)およびリン酸塩(例えばリン酸ナトリウム)が挙げられ、適切な塩として塩化ナトリウムが、適切な界面活性剤としてポリソルベート20が挙げられる。
【0034】
最終調製品に使用される界面活性剤は、先行する溶媒-界面活性剤ウィルス不活性化工
程に使用される界面活性剤と同じものが好ましく、調製品のアミノ酸は、金属キレートカラムからフィブリノーゲンを溶出するために使用するアミノ酸と同じものが好ましく、ならびに塩および緩衝液の成分は、精製の間に使用されるものと同じものが好ましい。そうすることで、製品からこれらの微量成分を取り除く必要性が避けられる。製造中に生成物を多種類の薬剤に曝すことを最少限にとどめることが望ましい。使用される各薬剤が製品の汚染または望ましくない修飾の原因になり得るためである。したがって、最終製品の配合成分が、処理の間に既に使用した薬剤であるならば、好ましい。
【0035】
種々の成分の適切な濃度は、フィブリノーゲンの性質と供給源に依存する。このため、ルーチンの試行錯誤の実験により決定してもよい。凍結乾燥前の適切な濃度範囲として、炭水化物(好ましくはスクロース): 約0.5〜2. 5% w/w 、
界面活性剤(好ましくはポリソルベート20):約0.1〜0.5% w/w
塩(好ましくは塩化ナトリウム): 約50〜250mM、好ましくは約50mM
アミノ酸(好ましくはアルギニン): 約50〜120mM、好ましくは約110mM
が挙げられる。
【0036】
充分な緩衝液が、所望するpH、例えば約pH 7.5に調整するために添加される。
好ましい製剤は、約pH 7.5で約0.5〜2. 5% w/w スクロース、約0.1〜0. 5% W/W ポリソルベート(polysorbate)20、約50〜250mM、より好ましくは約50mMの塩化ナトリウムおよび約50〜120mMのアルギニンを含むものである。
【0037】
本発明のフィブリノーゲン調製品は、諸成分の溶液を調製し、次いで該溶液を凍結乾燥することにより調製される。凍結乾燥後、乾燥調製品は、好ましくはエンベロープウィルスおよび非エンベロープウィルスを不活性化するために、最終の加熱処理工程に付される。例えば、約80°Cでおよそ72時間加熱してもよく、または約100°Cでおよそ24時間加熱
してもよい。加熱処理は、タンパク質を変性することが知られ、それは凝固を起こし得る。その結果、加熱処理生成物の溶解性を低下させる。本発明調製品の他の成分は、加熱処理工程の間、フィブリノーゲンおよび存在する因子XIIIを安定化させるのに役立つ。
【0038】
本発明の好ましい態様について、より詳細な説明が以下に与えられる。
血漿からの寒冷沈降物の回収
凍結ヒト血漿を−11°C前後に置いて−0.5と2°Cとの間で解凍させる。生成した寒冷沈降物を遠心分離により回収してもよい。その寒冷沈降物は、< 4°Cで洗浄し、次いで遠心分離により回収する。かかる寒冷沈降物は凍結して保存する。
沈降
上記寒冷沈降物をその中に含有されるタンパク質を回収するために、緩衝液を用いて解凍する(すなわち再溶解である)。フィブリノーゲン、フィブロネクチンおよび因子XIIIを、適当な化学薬剤、例えばヘパリン、ポリエチレングリコール(PEG)またはエタノールを
用いて沈殿させてもよく、あるいは温度およびpHの調整によって沈殿させてもよい。沈降物は例えば遠心分離により回収する。かかる沈降物は凍結して保存するのがよい。
沈降物の再懸濁
次にヘパリン沈降物または他の沈降物は、適切な緩衝液を用いて再懸濁させ、適当な時間、適切な温度で撹拌する。生成した生成物を、例えば深層ろ過(depth filtration)または遠心分離により清澄化させる。その後0.45μmまたはそれ以下のろ過によって、存在
して溶媒-界面活性剤不活性化試薬からウィルスを遮蔽するかも知れない凝集物をいずれ
も取り除く。
溶媒-界面活性剤処理
上記の濾液に溶媒および界面活性剤を添加して、混合物を適切な温度で撹拌し、エンベロープウィルスを不活性化する。好ましい溶媒は、トリ-n-ブチルリン酸(TnBP)であり、
界面活性剤は、ポリソルベート20、ポリソルベート80またはトリトンX-100であり、好ま
しくはポリソルベート20である。
クロマトグラフィー
上記の溶媒−界面活性剤処理材料は、直接金属キレートクロマトグラフィー・カラムに載せてもよい。その金属イオンは銅であるか、または他の適当なイオンである。緩衝液の条件および適用は、溶媒-界面活性剤の成分が吸着剤に保持されずに、フィブリノーゲン
が吸着されるようなものである。その後結合しているすべてのプラスミノーゲンは、低分子量のキレート化化合物、例えばアラニンの低濃度を使用して選択的に溶出してもよい。
【0039】
プラスミノーゲンを含有する溶出・洗浄画分は、さらに処理を進めてプラスミノーゲン濃縮物を生成し、これは臨床用に使用されてもよい。その後フィブリノーゲンは、高濃度の同一または別のキレート化化合物、例えばアルギニンを用いて、高収率で溶出することができる。因子XIIIは、フィブリノーゲンと同時に溶出される。フィブリノーゲンは、通常、溶出液におよそ3〜20 mg/mlの濃度で存在する。
【0040】
カラム溶出は、いかなる適当な方法により追跡してもよく、例えば280ナノメーターの
波長での紫外部吸光度によって、溶出液中のタンパク質濃度の計測を与え、フラクションの収集および/または緩衝液の変化のきっかけとして用い得る。
濃度
必要に応じてフィブリノーゲン溶出液は、限外ろ過を用いて最終濃度約15〜30 mg/ml、好ましくは約20〜25 mg/mlとなるように濃縮してもよい。
配合
フィブリノーゲン濃縮物は、アミノ酸、炭水化物、緩衝液、塩および界面活性剤を組み合わせた配合物を添加することにより配合してもよい。配合生成物は、0.2μmまでの滅菌濾過を行い、次いで充填される。このようなろ過により、ウィルスおよび他の病原体、例えば現在プリオンであると信じられている伝染性海綿状脳症(TSE)の原因物質を除去する
か、または低下せしめることができる。
【0041】
配合緩衝液(および凍結乾燥の条件)は、好ましくはフィブリノーゲン栓(plug)が室温で水に10分未満で溶解して戻されるように選択される。好ましい配合は、110mM アルギニン、1.5% w/w スクロース, 0.1% w/w ポリソルベート20、50 mM NaCl、10 mMクエン酸三
ナトリウムである。
凍結乾燥および加熱処理
上記生成物は凍結乾燥され、次に必要であればエンベロープウィルスおよび非エンベロープウィルスを不活性化するために、高温で加熱処理される。
【0042】
この処理の間における微生物汚染は、IMAC媒体の適切な清浄化の処置(sanitization)ならびに細菌汚染を除くために緩衝液の濾過(例えば0.2μm フィルターの使用)によって最少化される。
【0043】
本発明の方法を用いて調製されたフィブリノーゲンは、単独で臨床用とすることができ、あるいはフィブリン密封材キットにおいてトロンビンと組み合わせて用いることもできる。したがって本発明は、本発明の方法により得られた臨床用のフィブリノーゲンのほかに、本発明の方法により得られるフィブリノーゲンをトロンビンとの組み合わせで含有する医薬的なキットを提供する。好ましくはそのキットは、本発明の方法により調製されたフィブリノーゲン、ならびに2002年7月10日に出願された英国出願No. 0216002.6号の優
先権を主張して「トロンビンの調製方法」なる名称で、本出願人の同時係属PCT出願(番
号未定)に開示された方法によるトロンビンを含む。その開示内容は、本明細書に参照により取り込まれる。
【0044】
本発明を、以下の限定の意味に解されるべきでない実施例でさらに説明する。
[実施例]
フィブリノーゲンは、次の方法を用いて測定した。加熱沈降アッセイは、次の刊行物の方法に基いている:Desvignes, P.およびBonnet, P. , "Direct Determination of plasma Fibrinogen levels by Heat Precipitation. A comparison of the Technique against
Thrombin Clottable Fibrinogen with Spectrophotometry and Radial Immune Diffusion", Clinica Chimica Acta, 110 (1981), 9-17.
凝血塊時間アッセイは、Claussの方法(Clauss, A. , Gerinnungsphysiologische Schnellmethode zur Bestimmung des Fibrinogens. Acta Haematol 1957; 17:234-46)により、また総量凝血塊(Total Clottable)アッセイは、BlombackおよびBlomback, Arkiv fur Chemi., 1956, Chapter 10,415-443による方法に基いている。
【0045】
因子XIIIは、測光的定量(標準-正常ヒト血漿)によって測定した。その方法は次の文献
に基いている: Fickenscher, K. , Aab, A., Stueber, W. , "A Photometric Assay for
Blood Coagulation Facotr XIII", Thromb. Haemostas. 65 (1991), 535-540 および Solleder, E., Demuth, D. , Pfeiffer, C., Bomhard, M., Mayer, J. , Eller, T., Brauer, P. , Keller, F. , Grun, J. , Fickenscher, K., Wagner, C. ,"Klinische Prufung
eines neuen photometrischen Tests zur Bestimmung der Factor XIII Aktivitat im Plasma", Lab Med. 16 (1992), 48-53.
プラスミノーゲンおよび因子XIIIは、ELISA法により測定した。
【実施例1】
【0046】
血漿からの寒冷沈降物の回収
血漿は、使用まで−30°C未満の温度で保存した。必要とする重量の血漿を、包装をは
がす前に−11°Cに置いた。血漿プールは2.5°C未満の温度で解凍させて、フィブリノー
ゲン、因子VIII、von Willebrand因子(vWF)およびフィブロネクチンの寒冷沈降物を血漿
から回収した。この沈降物は遠心分離により回収し、凍結して保存した。
【実施例2】
【0047】
沈降
実施例1によって調製した寒冷沈降物を20 mM Tris/HCl、pH 6.7に血漿プール正味重量
の0.024×の比で再懸濁し、20〜40°Cの間で20分より長く暖めることにより解凍した。次いでpHを0.1 M HC1で6.55に調整した。ヘパリンストック溶液を最終濃度、0.88 mg/mlと
なるように添加し、生成混合物を2分間より長く撹拌した。これにより、因子VIIIおよびvWFを溶液中に残してフィブリノーゲンおよびフィブロネクチンが沈降した。ヘパリン沈降物は遠心分離により回収し、凍結して保存した。
【実施例3】
【0048】
沈降物の再懸濁
実施例2により調製されたヘパリン沈降物を、次に20 mM NaH2PO4/Na2HPO4、10 mM クエン酸三ナトリウム、0.5 M NaCl、pH 6.0に、沈降物1部に対して緩衝液5部の比で再懸濁した。この懸濁液を40°Cまで加温し、1時間より長く混合しながらインキュベートした。
再懸濁したヘパリン沈降物は、後続の溶媒-界面活性剤処理からウィルスを遮蔽するかも
知れない凝集物を確実に除去するために、2層の深層フィルター(Cuno 05SPおよびCuno 30LA)およびメンブレンフィルター(Sartobran 0.65/0.45μm)を通すろ過により清澄化させた。
【実施例4】
【0049】
溶媒-界面活性剤処理
20% v/vポリソルベート20および6%v/v TnBPの溶媒-界面活性剤ストック溶液を、1% v/v ポリソルベート20および0.3% v/v TnBPの最終濃度となるように、上記濾液に添加した。生成した混合物を室温で1時間以上撹拌した。
【実施例5】
【0050】
クロマトグラフィー
実施例4により調製した溶媒-界面活性剤処理済みのヘパリン沈降物は、5ベッドボリ
ューム以上の緩衝液1 (EW1 : 20 mM NaH2PO4/Na2HPO4、10 mM クエン酸三ナトリウム、 0.5 M NaCl, pH 6.0)で予め平衡化させた銅担持Toyopearl AF キレート650 (M)カラムに載せた。そのカラムには次いで3ベッドボリュームの処理済みヘパリン沈降物を載せた。そ
の載せる速度は、77 cm/hrよりも大きくなかった。該ベッドを18ベッドボリュームの緩衝液1で洗浄した。結合したプラスミノーゲンを15 ベッドボリュームの緩衝液2 (EW2: 20 mM Na2HPO4、15 mM アラニン、0.5 M NaCl, pH 7.5)を使用して洗い出した。溶離したプ
ラスミノーゲンは、さらに臨床用に使用できるような濃縮物を与えるようにさらに処理した。次に緩衝液条件を5ベッドボリュームの緩衝液3 (EW3: 10 mM クエン酸三ナトリウム、50 mM NaCl、 pH 7.0)を用いて調整した。結合しているフィブリノーゲンは、次いで充分なベッドボリュームの緩衝液4 (EW4: 50 mM アルギニン、10 mM クエン酸三ナトリウム、50 mM NaCl、pH 7.5)を用いて溶出したところ、A280nm (280 nm波長でのUV吸収)はベースラインに戻った。銅イオンはその後5 ベッドボリュームの20 mM Na2HPO4、0.25 M NaCl、50 mM EDTA、 pH 7.0を用いて樹脂から離脱させた。
【実施例6】
【0051】
濃度
実施例5で調製した溶出フィブリノーゲンは、100 kDa 分子量カットオフ膜(Sartocon Sartorius)を用いて濃縮した。該膜は50 mM アルギニン、10 mM クエン酸三ナトリウム、50 mM NaCl、pH 7.5を用いて予め洗浄した。フィブリノーゲン標的濃度は、22 mg/mlであった。
【実施例7】
【0052】
配合
実施例6により調製した濃縮フィブリノーゲン溶液に、710 mMアルギニン、16.5% w/w
スクロース、1.1% w/w ポリソルベート20、50 mM NaCl、10 mM クエン酸三ナトリウム, p
H 7.5を1:10の比で添加することにより配合した。最終製剤の濃度は、110 mM アルギニン、1. 5% w/w スクロース, 0.1 % w/w ポリソルベート20、50 mM NaCl、10 mM クエン酸三ナトリウムであった。配合した生成物を0.2μm (Sartobran 0.45/0.2μm, Sartorius)で
濾過した。
【実施例8】
【0053】
凍結乾燥および加熱処理
実施例7の生成物を無菌的にガラス製バイアルに、バイアルあたり15 ml量、充填し、
凍結乾燥してから栓をして密封した。このバイアルは、80°Cで72時間以上加熱処理して
エンベロープウィルスおよび非エンベロープウィルスを不活性化した。
【実施例9】
【0054】
フィブリノーゲン濃縮物のパイロットスケール・クロマトグラフィー
1274 gのヘパリン沈降物(実施例2により調製したもの)を、5倍容量の20 mM NaH2PO4/Na2HPO4、10 mM クエン酸三ナトリウム、0.5 M NaCl、pH 6.0に40°Cの水浴上で1時間より
長く終始撹拌しながら再懸濁した。生成溶液を0.45μmのCuno 05SP, Cuno 30LAおよびSartobran P 0.65/0.45μmフィルター列で濾過した。溶媒-界面活性剤混合物を添加して、最終濃度を1% v/v ポリソルベート20および0.3% v/v TnBPとした。次いでその混合液を室
温で1時間撹拌した。
【0055】
6391 gの溶媒-界面活性剤処理ヘパリン沈降物を、2123 mLのToyopearl AF キレート 650 (M)樹脂を詰めたAmicon Vantage 130カラムに載せたところ、16 cmの高さに落ち着いた。そのクロマトグラフィーカラムを5ベッドボリュームの0.5M NaOHを用いて清浄化し、次に約5ベッドボリュームの緩衝液1(EW1, 20 mM NaH2PO4/Na2HPO4、10 mM クエン酸三ナト
リウム、0.5 M NaCl、 pH 6.0)で平衡化させた。これを約5ベッドボリュームの蒸留水で
洗い通した。樹脂に約5ベッドボリュームの3 mg/ml 硫酸銅溶液を用いて金属イオンを担
持させた。ゆるく結合した金属イオンは、約5ベッドボリュームの50 mM アルギニン、10mM クエン酸三ナトリウム、50 mM NaCl、 pH 7.5、次いで約10ベッドボリュームの緩衝液1を用いて除去した。次に「積荷(load)」を載せて、樹脂床(bed)を約18ベッドボリュー
ムの緩衝液1で洗浄した。結合したプラスミノーゲンを約16ベッドボリュームの緩衝液2 (EW2: 20 mM NaH2PO4/Na2HPO4、15 mM アラニン、0.5 M NaCl、pH 7.5)を用いて洗い
流した。緩衝液の条件をその後、約5ベッドボリュームの緩衝液3(EW3: 10 mM クエン酸三ナトリウム、50 mM NaCl、pH 7.0)を用いて調整した。次に、結合していたフィブリノー
ゲンを約5ベッドボリュームの緩衝液4(EW4: 50 mM アルギニン、10 mM クエン酸三ナトリウム、50 mM NaCl、pH 7.5)を用いて溶出した。銅イオンは、約5ベッドボリュームの20 mM Na2HPO4、0.25 M NaCl、50 mM EDTA、 pH 7.0を用いて樹脂からはずした。
【0056】
フィブリノーゲン、プラスミノーゲンおよび因子XIIIの濃度および回収率が表1に与えられている。TnBPおよびポリソルベート20のクリアランスが表2に示されている。
【0057】
【表1】

【0058】
使用した略号: FT = 流入(Flowthrough); EW1 = 平衡化洗浄(equilibration wash)1
; EW2 = 平衡化洗浄2; EW3 = 平衡化洗浄3; EP1 = 溶出ピーク1 (溶出ピークのリーディング端); EP2 = 溶出ピーク2 (溶出ピークの本体); EP3 = 溶出ピーク3 (溶出ピークのテーリング端).
【0059】
【表2】

【0060】
使用した略号:EP2 = 溶出ピーク2 (溶出ピークの本体)
上記の結果は、3つのタンパク質、フィブリノーゲン、プラスミノーゲンおよび因子XIIIが効率よくCu2+担持Toyopearlに捕捉され、次いで93%の捕捉プラスミノーゲンが選択的に15mM アラニン緩衝液(EW2)で洗うことにより取り除かれたことを示す。溶出されたフィブリノーゲン生成物は、適用したフィブリノーゲンおよび因子XIIIのそれぞれ76%および56%を含有していた。溶媒-界面活性剤薬剤のクリアランスもまた効率的であった。クロマ
トグラフィー後の生成物には、適用したTnBPおよびポリソルベート20のわずか0.3および0.4%がそれぞれ残っていただけである。
【実施例10】
【0061】
フィブリノーゲンのパイロットスケール限外ろ過
2つのポリスルホンSartoriusスライスカセット(各々0.1 m2)を、 Sartorius膜ホルダ
ーに組み込み、7リットルの脱イオン水でフラッシュした。該装置を40°Cまで加温した1M
NaOH、1リットルでフラッシュし、次いで5リットルのNaOHを1時間、再循環させて
清浄化した。このシステムを10リットルの脱イオン水を用いて、880ml/分の通過流速でフラッシュした。膜は、5リットルのEW4 (50 mM アルギニン、10 mM クエン酸三ナトリウム、50 mM NaCl、pH 7.5)で、同一の通過速度により背圧をかけずに作製した。
【0062】
8960 mlの溶出フィブリノーゲン画分を当初フィブリノーゲン濃度として5.24 mg/mlで
、それぞれ1.4および0.7 bar (140,000および 70,000 Pa)の最大流入圧および膜通過圧で適用した。限外ろ過は1時間36分かかり、1227 mlの保持液ならびに23.8 mg/mlフィブリノーゲンを与えた。平均流量は、28.8 L/m2/h、ならびに予測されたゲル化濃度(gelling concentration)は、31.0 mg/mlであった。
【実施例11】
【0063】
フィブリノーゲン精製用IMACゲルの選択
フィブリノーゲンを結合し、次いで放出する能力について、いくつかの金属キレートクロマトグラフィー用のゲルを試験した。これらが下記の表3に記載されている。
【0064】
【表3】

【0065】
出発材料は、フィブリノーゲンを含有する寒冷沈降物であった。この沈降物を緩衝液I (250mM 塩化ナトリウムまたは500mM 塩化ナトリウムのいずれかを含有する20mM リン酸ナトリウム緩衝液、pH 7)中に再溶解した。キレート化するゲルに金属イオン(銅、ニッケ
ルまたは亜鉛)を担持させ、緩衝液Iで平衡化した。再溶解した寒冷沈降物を、担持し平
衡化されたゲルが充填されたカラムに適用した。すべての物質が適用された後、そのカラムを緩衝液Iで洗浄した。フィブリノーゲンは、該カラムを緩衝液II (250 mM塩化ナトリ
ウムまたは500 mM塩化ナトリウムのいずれかを含有する20 mM リン酸ナトリウム、0.05 M
EDTAの緩衝液、pH 7)、緩衝液III (20 mMリン酸ナトリウム, 50 mM アルギニン、250 mM
塩化ナトリウム、pH 7.5)または緩衝液 IV (20mMリン酸ナトリウム、200mM アルギニン
、250mM 塩化ナトリウム pH7.0)で洗うことにより溶出された。
【0066】
その結果は表4に示されている。
【0067】
【表4】

【0068】
a緩衝液II.で溶出
b緩衝液IIIで溶出
c 緩衝液IVで溶出
その結果は、フィブリノーゲンおよび因子XIIIが、フィブリノーゲン含有溶液から、多様なIMAC系の充填材化学物質および金属イオンを有する固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)を用いることにより単離できることを示している。
【実施例12】
【0069】
出発材料の選択
様々なフィブリノーゲン含有溶液からフィブリノーゲンを精製する固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィー(IMAC)の能力について調べられた。
フィブリノーゲン含有溶液として、
A.解凍ヒト血漿から得られた再溶解寒冷沈降物 (実施例1に基いて調製).
B.ヘパリンと混合した再溶解寒冷沈降物から得られる再溶解ヘパリン沈降物 (実施例2に基いて調製).
C.再溶解寒冷沈降物を冷却することにより得られる再溶解低温沈降物.
D.ヒト血漿から得られ、クロマトグラフィーにより因子VIII, von Willebrand因子(vWF)
およびフィブロネクチンを激減させたフィブリノーゲン含有溶液.
Cにおいて用いられた低温沈降物は、以下のようにして調製できる:実施例1のように
して調製された寒冷沈降物は、その重量の4倍量の50μM 塩化カルシウム溶液に28°Cで
再溶解し、1M 酢酸を用いてpHを6.8に調整し、溶液を10°Cまで冷却した。10分より長い
時間混合してから、生成した沈降物を遠心分離により回収した。
【0070】
約1〜20mg/ mlのフィブリノーゲンを含有するA-Dの各溶液は、ウィルスを不活性化するために溶媒-界面活性剤にインキュベートした。その後、銅イオンを担持し、20mM リン酸ナトリウム、250 mM 塩化ナトリウム pH 7.0で平衡化させた Toyopearl キレート IMAC樹脂のカラムに適用した。充填後に該樹脂を同一緩衝液で洗った。
【0071】
フィブリノーゲンは、25 mM イミダゾール(緩衝液X)を流すか、あるいは50mM アルギニン、20 mM リン酸ナトリウム、250 mM 塩化ナトリウムpH 7.5 (緩衝液Y)を流すことによ
り溶出した。
【0072】
その結果が表5に示されている。
【0073】
【表5】

【0074】
上記の結果は、IMACがフィブリノーゲンを含有する様々な出発材料から、フィブリノーゲンを調製するために用いることができることを示している。
【実施例13】
【0075】
凍結乾燥および加熱処理後のフィブリノーゲンが迅速溶解可能となる配合
実施例9および10に従ってIMAC樹脂から溶出され、50mM アルギニン、20mM リン酸、pH 7.5の中に(表6および8)、あるいは50mM アルギニン, 10mM クエン酸三ナトリウム、pH 7.5の中に(表7)、約15 mg/mlまで濃縮されたフィブリノーゲンを種々の化合物を加えて配合し、これをガラスバイアル(バイアル当り20 ml)中に詰めて凍結乾燥した。凍結乾燥が終
わり次第、それらのバイアルは、減圧下で密封して、ウィルスを不活性化するために80°Cで72時間、加熱処理した。次いで、バイアル内容物は、適当な室温(18°C〜25°C)で
水(バイアル当り5 ml)を用いて戻した。水を添加した時点と、固形物残渣がなく清澄な均一溶液が観察されるまでの時点との間の時間として、戻すのに要した時間を測定した。
【0076】
その結果を表6、7および8に示す。
【0077】
【表6】

【0078】
【表7】

【0079】
【表8】

【0080】
表6〜8で使用した略号:
Arg =アルギニン Poly = ポリソルベート20 Cit =クエン酸 Suc =スクロース Fi
b =フィブリノーゲン Recons =乾燥物を戻すこと Carbo = 炭水化物 Phos =リン酸
上記結果から、製剤の有効な濃度の範囲は以下のとおり:
スクロース:0.5〜2.5% ポリソルベート20:0.1〜0.5% 塩化ナトリウム: 50〜250mM
(因子XIII保持には50mM) アルギニン:50〜120mM
アルギニン、ポリソルベート20および緩衝剤塩と組み合わせた塩化ナトリウムの高濃度(250 mM)は、凍結乾燥され加熱処理を受けたフィブリノーゲンを迅速に戻すのに有効であるが、因子XIII活性は失われた。塩化ナトリウム含量を減らし、スクロースを添加することにより、迅速な戻しと因子XIII活性の保持との両方を可能とした。
【0081】
アルギニン、ポリソルベート20、塩化ナトリウム、適切な緩衝剤塩および炭水化物との適切な組み合わせは、凍結乾燥し、加熱処理した生成物をフィブリノーゲンおよび因子XIIIの活性を保持しながら室温で急速に水で戻すことを可能とする、フィブリノーゲンおよび因子XIIIの配合を提供した。
【実施例14】
【0082】
限外ろ過、配合、凍結乾燥および加熱処理
4つの独立の実験(A〜D)において、ヘパリン沈降物は、実施例3に従って再懸濁し、実
施例4に基いて溶媒-界面活性剤で処理した。生じた溶液を実施例9によるクロマトグラフィーで分画すると、フィブリノーゲンおよび因子XIIIに富む溶出画分を与えた。次にこの溶出液を実施例10に従って濃縮した。その濃縮物は、110mM アルギニン、1.5% w/w スク
ロース、0.1% w/w ポリソルベート 20、50 mM NaCl、10 mM クエン酸三ナトリウムなる対象に配合し、ならびに実施例7に倣って無菌的に0.2μmに濾過した。濾過した濃縮物は、その後無菌的に充填され、実施例8に基いて凍結乾燥および加熱処理を施して、二重にウ
ィルスを不活性化した製品を与えた。
【0083】
溶出液、濾過した濃縮物および製品が凝固性タンパク質および因子XIII活性について分析され、その結果が表9に示されている。
【0084】
【表9】

【0085】
上記の結果は、フィブリノーゲンが限外ろ過を用いて、約20 mg/mLまで濃縮できることを示している。配合条件によっては、因子XIIIの濃度が> 1 U/mLであり、戻しの時間が<
< 15分である製品を提供されることも示している。
【実施例15】
【0086】
キレート樹脂からのフィブリノーゲンおよび銅の溶出への溶出用緩衝液の濃度およびpH効果
寒冷沈降物を緩衝液1(0.25 M NaClを含有する20 mMリン酸緩衝液pH6.0)に再溶解し、ならびに実施例4のように溶媒-界面活性剤処理をした。キレート樹脂(Toyopearl AF キレ
ート 650(M) )は、銅イオンを担持させ、適当な溶出緩衝液で先行的に洗浄し、次いで緩
衝液1で平衡化させた。上記物質を充填された銅担持樹脂上に載置した。すべての物質が
適用された後、該カラムを15〜20容量部の緩衝液1で洗浄した。次にそのカラムを5〜7ベ
ッドボリュームの緩衝液2(0.25 M NaClを含有する20mM リン酸緩衝液、pH7.0)で洗浄した。
【0087】
上記カラムを、緩衝液(20 mMリン酸、0.25 M NaCl およびある範囲の濃度のアルギニ
ンを含み、ある範囲のpH)で溶出した。
その結果が表10に示されている。
【0088】
【表10】

【0089】
上記結果から、溶出緩衝液中のアルギニン濃度の減少は、フィブリノーゲン溶出画分中の銅濃度を低下させるが、フィブリノーゲン回収には不利に作用することが示された。50mMアルギニン溶出緩衝液のpHを7.5まで上昇させると、高いフィブリノーゲン回収となり
、同時に溶離してくる銅のレベルは著しく低下した。
【実施例16】
【0090】
ヘパリン沈降物の処理
凍結ヘパリン沈降物を20 mMリン酸ナトリウム、500 mM 塩化ナトリウム, 10 mM クエン酸三ナトリウム pH 6.0中に1:5の重量比で再溶解した。
【0091】
2つの再溶解の方法を比較した。
方法 1. ヘパリン沈降物を室温で上記緩衝液に添加した。混合物を40°Cまで加温し、40
°Cで1時間インキュベートした。
方法 2. 上記緩衝液を予め40°Cに加温しておき、次いでヘパリン沈降物を、温度を36°Cより上に保ちながらある速度で添加した。すべての沈降物を添加してから、混合物を40°Cで1時間インキュベートした。
【0092】
沈降物の3つの異なるバッチを試験した。各ケースで、方法2の再溶解は、著しく高い
濾過容量となった。さらに最終の濾過液重量およびフィブリノーゲン濃度もまた同じく高くなり、フィブリノーゲン収率の向上をもたらした(表11を参照)。
【0093】
【表11】

【0094】
注記
1 ベンチスケール濾過面積(Bench scale filter area)= 0.00173 m2; パイロットスケール濾過面積(pilot scale filter area)= 0.3 m2。 濾過中、最初に適用した空気圧は、ベンチスケールで0.25 bar (25,000 Pa)およびパイロットスケールで0.1〜0.2 bar (10,000-20,000 Pa)であった。
2 濾過容量(Filter capacity)は、濾過された再溶解物質を濾過面積で割った最大量と
して計算される。"よりも多い"なる容量を示す実験例は、実験条件下で濾過を妨げなかった。
3 この場合のフィブリノーゲン収率は、濾過で回収されたフィブリノーゲンmg (= 回収濃度mgmL-1× mL 回収濾液)を、出発材料容量にあるフィブリノーゲンmg (=適用した濃度mgmL-1× mL回収濾液)で除したもの×100 として計算される(%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質を分離し精製する方法であり、次の工程を含む方法:
(a)フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質を含む溶液を、固定化金属
イオンアフィニティクロマトグラフィー充填剤に、フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質がともに該充填剤に結合するような条件下で載せる工程、および
(b)フィブリノーゲンおよび少なくとも1つの他のタンパク質を別々に、前記充填剤から
選択的に溶出する工程。
【請求項2】
少なくとも1つの他のタンパク質がプラスミノーゲンであることを特徴とする請求項1
に記載の方法。
【請求項3】
プラスミノーゲンからフィブリノーゲンを分離する方法であり、次の工程を含む方法:(a)フィブリノーゲンおよびプラスミノーゲンを含む溶液を、固定化金属イオンアフィニ
ティクロマトグラフィー充填剤に、少なくともフィブリノーゲンが該充填剤に結合するような条件下で載せる工程、および
(b)フィブリノーゲンを前記充填剤から選択的に溶出する工程。
【請求項4】
プラスミノーゲンおよびフィブリノーゲンが、別々に前記充填剤から選択的に溶出されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
フィブリノーゲンを含む溶液が、フィブリノーゲン含有血漿画分であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
フィブリノーゲンを含む溶液がさらに因子XIIIを含み、その因子XIIIが前記充填剤からフィブリノーゲンと同時に溶出されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
フィブリノーゲンおよび因子XIIIの同時精製の方法であり、次の工程を含む方法:
(a)フィブリノーゲンおよび因子XIIIを含む溶液を、固定化金属イオンアフィニティクロ
マトグラフィー充填剤に、フィブリノーゲンおよび因子XIIIがともに該充填剤に結合するような条件下で載せる工程、および
(b)フィブリノーゲンおよび因子XIIIを前記充填剤から選択的に同時溶出する工程。
【請求項8】
プラスミノーゲンからフィブリノーゲンを分離するために固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーの使用。
【請求項9】
フィブリノーゲンおよびプラスミノーゲンを調製するために固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーの使用。
【請求項10】
フィブリノーゲンおよび因子XIIIを同時精製するために固定化金属イオンアフィニティクロマトグラフィーの使用。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法により調製されたフィブリノーゲン。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法により調製され、治療に使用されるフィブリノーゲン。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって調製されるフィブリノーゲンをトロンビン
とともに含む医薬的キット。
【請求項14】
以下の工程:
(a) プロトロンビンおよび因子Xを含む溶液の溶媒-界面活性剤でウィルスを不活性化すること、
(b) 工程(a)の生成物をアニオン交換媒体に載せること、
(c) 工程(a)において溶媒-界面活性剤ウィルス不活性化に使用した薬剤類を除去するために上記媒体を洗浄すること、
(d) トロンビンを形成するように、カルシウムイオンの添加により媒体上のプロトロンビンを活性化すること、
を含み、さらに
(e) 上記アニオン交換媒体から選択的にトロンビンを溶出すること
を含んでもよい方法により、トロンビンが調製されることを特徴とする請求項13に記載のキット
【請求項15】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法によって調製されるフィブリノーゲンを含む医薬製剤。
【請求項16】
請求項1〜7のいずれかに記載の方法に従って調製したフィブリノーゲン、因子XIII、炭水化物、アミノ酸、塩、緩衝液および界面活性剤を含有し、室温で15分未満、好ましくは10分未満、より好ましくは5分未満で水に溶解してフィブリノーゲン溶液を与えることを
特徴とする凍結乾燥したフィブリノーゲン製剤。
【請求項17】
フィブリノーゲン溶液の濃度が、少なくとも約60 mg/mlであることを特徴とする請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
ウィルスを不活性化するために加熱処理をされることを特徴とする請求項16または17に記載の製剤。
【請求項19】
抗フィブリン分解剤を含まないことを特徴とする請求項16〜18のいずれかに記載の製剤。
【請求項20】
アルブミンのような安定化タンパク質を含まないことを特徴とする請求項16〜19のいずれかに記載の製剤。

【公表番号】特表2006−505508(P2006−505508A)
【公表日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−520819(P2004−520819)
【出願日】平成15年7月7日(2003.7.7)
【国際出願番号】PCT/GB2003/002928
【国際公開番号】WO2004/007533
【国際公開日】平成16年1月22日(2004.1.22)
【出願人】(505013424)ナショナル ブラッド オーソリティ (1)
【Fターム(参考)】