説明

フィブロネクチンED−Bに対する抗体L19とインターロイキン12との融合タンパク質

体内の細胞または組織、例えば、新生物増殖または血管新生の領域に、治療剤もしくは診断剤または薬剤を標的化するためのコンジュゲート。in vivoでの診断または治療、例えば、腫瘍増殖もしくは転移の阻害、血管新生の阻害、および/または癌の治療のためのコンジュゲートの使用。コンジュゲートは、オリゴマータンパク質、例えば、ヘテロダイマータンパク質としての治療剤または診断剤を含み、ここで、該タンパク質の第1および第2のサブユニットは、それぞれ特異的結合メンバー、例えば、scFvなどの抗体フラグメントにコンジュゲートされる。オリゴマーのサブユニットを、融合タンパク質として特異的結合メンバーにコンジュゲートさせることができる。コンジュゲートは、新生物増殖および血管新生に関連する細胞外マトリックス成分に対してIL-12を標的化するためのscFv L19またはTN11に各サブユニットが融合された2つのサブユニットを有するIL-12ヘテロダイマーを含みうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的特異的結合メンバーとのコンジュゲーションにより所望のin vivo部位に薬剤を標的化することに関する。本発明は特に、癌および他の腫瘍、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、加齢性筋肉変性および血管腫の治療などの、病的な血管新生の阻害などの治療用途のためのIL12と抗体分子とのコンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
ヘテロダイマー性サイトカインであるインターロイキン-12(IL12)は、強力な抗腫瘍活性および抗転移活性を有する先天性免疫および細胞性免疫の重要なメディエーターである[4-6]。それは現在(Spring 2005)、癌および感染症の治療について第II相臨床試験において治験が行われている。IL12は、主にTおよびNK細胞に対して作用し、その活性およびインターフェロン-γ(IFN-γ)の分泌を刺激する[7]。しかしながら、多くの他のサイトカインと同様、組換えヒトIL12の投与は、1μg/kg/日という低い用量でさえ、重篤な毒性を伴い[8,9]、そのことが抗癌剤としてのその開発を妨げている。
【0003】
腫瘍環境へのIL12の標的化された送達を用いて、サイトカインの治療指数を増加させうる。
【0004】
Lexigenの科学者らは、IL2およびIL12などのサイトカインを特異的に標的化するために、これらのサイトカインと免疫グロブリンとの融合物を記載した[17, 49-51]。しかしながら、我々本発明者らは、そのような手法には限界があると考えている。本発明者らは、IgG-サイトカイン融合物は、実際には多機能性タンパク質であり、そのため抗原結合性およびサイトカイン活性に加えて、これらのIgGに基づく融合タンパク質は補体を活性化しFc受容体と相互作用することができると認識している。本発明者らの見解では、サイトカインがFc受容体を担持する細胞(マクロファージ、好中球およびナチュラルキラー細胞など)の近傍にもたらされると、腫瘍標的化が妨げられ、非特異的細胞活性化が引き起こされるため、これはIgG-サイトカイン融合物の望ましくない特性である。本発明者らは、完全な免疫グロブリンの代わりに、一本鎖Fv抗体フラグメント(scFv)などのFcを欠いた抗体分子を用いることがより望ましいと考えている。
【0005】
本発明者らは、癌のげっ歯類モデルにおいて、マウスサイトカインIL12のサブユニットp40およびp35を連続的にコードする一本鎖ポリペプチド(「scIL12」)と、ヒト一本鎖Fv抗体フラグメントL19(「scFv(L19)」)とを融合させることにより、IL12の治療的潜在能力をかなり増加させることができることを以前に証明した。scFv(L19)は、癌を有する患者において選択的に腫瘍を標的化することができることが示されている[16]。L19は、血管新生の最もよく知られたマーカーの1つであるフィブロネクチン・アイソフォームB-FNのED-Bドメインに特異的に結合する[14, 25]。ED-Bは、B-FNアイソフォーム中に認められる91アミノ酸の追加ドメインであり、マウス、ラット、ウサギ、イヌおよびヒトにおいて同一である。B-FNは、侵攻性腫瘍、および増殖期の子宮内膜などの血管新生を経験している他の組織における新血管構造、ならびに病的状態のいくつかの眼の構造の周辺に蓄積するが、そうではなく正常な成体組織においては検出されない[1-3]。
【0006】
融合タンパク質scIL12-scFv(L19)は、マウスにおける無関係な特異性のscFvに融合したscIL12、および組換えマウスIL12よりはるかに優れた治療指数を示した。これらの実験は、IL12の治療的潜在能力を改良するための手段としての、抗体に基づくサイトカイン融合タンパク質の潜在能力を明確に証明した[15]。これらの結果の治療的潜在能力はかなりのものである。
【0007】
L19を用いることなどの、腫瘍血管のレベルでのIL12の標的化は、いくつかの理由で治療上有益である。第一に、腫瘍新血管系は、腫瘍細胞よりも静脈内投与された治療剤に接近しやすく、これは固形腫瘍の間質性高血圧に伴う問題を回避するのに役立つ[10]。第二に、血管新生(元々存在する血管からの新しい毛細血管の成長)は、大多数の侵攻性固形腫瘍の特徴である[11]。新血管系へのIL12の標的化は、様々な腫瘍型の免疫治療を可能にするはずである。第三に、IL12は抗血管新生活性を示し、これはその下流のメディエーターIP-10により与えられる[12, 13]。
【0008】
本発明者らは、scIL12-scFv(L19)の腫瘍標的化性能、およびまた別の抗腫瘍サイトカインであるIL2に融合したscFv(L19)(「scFv(L19)-IL2」)の性能についても既に広く研究してきた[18]。scFv(L19)-IL2は、静脈内注入の24時間後に、腫瘍:血管および腫瘍:器官比で30:1という高い比を示す、腫瘍を担持するマウスにおける優れた腫瘍標的化性能を示す。対照的に、同じ動物モデルにおけるscIL12-scFv(L19)の腫瘍標的化能はより穏やかであり、24時間のときに通常は10:1より低い腫瘍:血管および腫瘍:器官比、ならびに低い値の腫瘍:肝臓および腫瘍:脾臓比を示す[15]。これらの標的化の結果はそれでもなお、鶏卵リゾチームに対して特異的であるがマウスにおける抗原特異的認識部位を含まない融合タンパク質scIL12-scFv(HyHEL10)と比較して優れていた。
【0009】
scFv(L19)の腫瘍標的化特性は、scFv(L19)がヒトIgEのCH4ドメインを介してダイマー化され、「小免疫タンパク質」すなわちSIPとも呼ばれるミニ抗体構造を構築する場合に改善されることが示された。SIP(L19)の腫瘍標的化特性は以前に記載されている[21]。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、我々本発明者らが、それぞれ異なる形式のサイトカインおよび/または抗体を有する、IL12とscFv(L19)との3種のコンジュゲートの腫瘍標的化能力を比較し、scIL12-scFv(L19)の腫瘍標的化能力を、特定の方法で該コンジュゲートの形式を変化させることにより改善することができることを見出した研究に基づくものである。
【0011】
本発明者らが試験した1つの形式は、図1Aに示されるscIL12-scFv(L19)であった。このコンジュゲートは、従来技術の知見と一致する、控えめな腫瘍標的化能力を示した。
【0012】
別の形式では、上記のダイマーSIP(L19)構築物を用いて、図1Bに示されるscIL12-SIP(L19)のホモダイマーを作製した。しかしながら、L19の腫瘍標的化特性を、SIP形式を用いて改善することができるという従来技術の示唆にも関わらず、本発明者らは、腫瘍によるこのコンジュゲートの取込みの増加を観察しなかった。
【0013】
別の形式は、IL12のp40およびp35サブユニットのヘテロダイマーであって、各サブユニットがscFv(L19)と融合しているものであり、これは図1Cに示されるscFv(L19)-p35/p40-scFv(L19)へテロダイマーを形成する。このヘテロダイマー形式に関して、本発明者らは、腫瘍によるこのコンジュゲートの取込みの顕著な改善を達成した。
【0014】
かくして、本発明者らは、IL12のp40およびp35サブユニットを介してヘテロダイマー化した2個のscFvフラグメントからなる新しい抗体-IL12融合タンパク質形式が、完全なIL12活性を保持し、優れた腫瘍標的化能力を示すことを発見した。
【0015】
これらの結果は、腫瘍ならびに、例えば関節リウマチ、糖尿病性網膜症、加齢性筋肉変性および血管腫を治療するための、病的な血管新生の他の部位に対するIL12の改善された標的化のための有意な治療的示唆を有する。本発明の有用性は、scFv(L19)へのIL12の融合物だけでなく、他の特異的結合メンバーと他の薬剤および物質とのコンジュゲートにも拡張される。例えば、コンジュゲートを、腫瘍関連抗原(例えば、テネイシンCのアイソフォーム)に特異的な他の抗体フラグメントなどの、IL12サブユニットにコンジュゲートさせたscFv(L19)以外の特異的結合メンバーを用いて構築し、腫瘍標的化および癌治療に用いることができる。より広範な示唆はまた、診断方法ならびに疾患および他の病的状態の予防および治療などの、in vivoでの物質の標的化を伴う様々な他の用途も含む。
【0016】
様々な態様での本発明は、新規コンジュゲート、それらを製造する方法、該コンジュゲートまたはその成分をコードする核酸、該コンジュゲートを含む医薬組成物、および治療方法における該コンジュゲートの使用に関する。
【0017】
一態様においては、本発明は、第1および第2のサブユニットがそれぞれ特異的結合メンバーにコンジュゲートされた、該第1および第2のサブユニットを有するタンパク質を含むコンジュゲートである。
【0018】
このタンパク質は、一般的にはダイマーであり、好ましくはヘテロダイマーであり、典型的には、生物活性を有する物質または薬剤、通常は治療剤または診断剤を含む。
【0019】
かくして、前記コンジュゲートは、通常、以下の形式:
[特異的結合メンバー]-[第1のサブユニット]-[第2のサブユニット]-[特異的結合メンバー]
を有する。
【0020】
特異的結合メンバーは通常は抗体分子、好ましくは一本鎖Fv(scFv)である。一本鎖Fv(scFv)抗体分子は、その小さいサイズのため、本発明において特に好ましく、これは前記コンジュゲートのin vivoでの使用のための生理学的および治療的利点を提供する。さらに、scFvはFc領域を欠いており、これは抗イディオタイプ反応を潜在的に低下させ、これはまた、腫瘍標的化を妨げ非特異的細胞活性化を引き起こし得る補体の活性化とFc受容体との相互作用に関する望ましくない特性を、最小化する。
【0021】
従って、前記コンジュゲートの好ましい形式は、
[scFv]-[第1のサブユニット]-[第2のサブユニット]-[scFv]
である。
【0022】
あるいは、特異的結合メンバーは、単一ドメイン抗体および/または抗体フラグメントであってもよい。特異的結合メンバーおよび抗体分子を、以下でより詳細に説明する。
【0023】
前記コンジュゲートは、融合タンパク質、すなわち、2つ以上の遺伝子もしくは核酸コード化配列を1つのオープンリーディングフレーム(ORF)に融合したものから得られる翻訳産物であるポリペプチドであるか、またはそれを含むものでありうる。2つの遺伝子またはORFの融合発現産物を、ペプチドリンカー(短い2〜20個、好ましくは2〜15個の残基の一続きのアミノ酸)によりコンジュゲートさせることができる。一実施形態においては、ペプチドリンカーは6残基の配列GSADGG(配列番号15)である。この融合タンパク質は、通常は特異的結合メンバーおよびサブユニットの上流(5'側)に位置する、シグナルペプチド配列を含んでもよい。
【0024】
本発明のコンジュゲートにおいては、一般的には、第1および第2のサブユニットが連結され、例えば、これらは1個以上のジスルフィド結合などを介して共有結合されうる。前記タンパク質はオリゴマー(例えば、ダイマー、好ましくはヘテロダイマー)であってよく、オリゴマー形態で天然に存在してもよく、かくして前記コンジュゲート中の第1および第2のサブユニットはその自然な方法で互いに結合していてもよい。従って、本発明は、コンジュゲートでの天然の形式のタンパク質の使用および維持を可能にする。これは、薬剤の一本鎖変異体を構築または使用する必要性を回避し、薬剤がコンジュゲート中でその完全な活性を保持する可能性を最大化する。さらに、前記サブユニット間のコンジュゲーションにより、該コンジュゲートを都合よく構築し、第1および第2のサブユニットをオリゴマーとして結合させる(例えば、ダイマー化する)ことによって組み立てることができる。かくして、典型的には、第1および第2のサブユニットを特異的結合メンバーにそれぞれ結合させて、該サブユニットを介して結合する一対の特異的結合メンバー-サブユニット構築物(例えば、ヘテロダイマー)を形成させることができる。好ましい実施形態においては、第1のサブユニットを、第1の融合タンパク質として特異的結合メンバーとコンジュゲートさせ、第2のサブユニットを、第2の融合タンパク質として特異的結合メンバーとコンジュゲートさせる。
【0025】
好ましくは、前記コンジュゲートは、250 kDa以下、より好ましくは、200 kDa、150 kDa、125 kDa、120 kDaまたは115 kDa以下の分子量(すなわち、250000、200000、150000、125000、120000または115000以下のMr)を有する。これは、実際に測定された分子量(グリコシル化を伴うか、もしくは伴わない)であってもよく、または、例えば、コンジュゲートの予想分子量(グリコシル化を伴ってもよいが、通常は伴わない)に基づいて評価された値であってもよい。比較的小さいサイズのコンジュゲートでは、組織に浸透し標的部位(例えば、血管新生、腫瘍または疾患の部位)にアクセスするその能力が増大し、かくして、標的へのコンジュゲートの多価(一般的には、二価)結合を依然として達成しながら、その治療効力が増大し、必要とされる用量が低下する。
【0026】
一般的には、前記タンパク質および特異的結合メンバーを、前記コンジュゲートの意図される使用に従って選択する。好ましい実施形態においては、前記タンパク質はIL12である。上記で考察したように、IL12は、癌を治療し、腫瘍の増殖および転移を阻害し、ならびに病的な血管新生に関連する他の状態を治療するのに好適である。コンジュゲート中の1つまたは両方の特異的結合メンバーは、新生物(特に、腫瘍)の増殖および/または血管新生に関連するマーカー、例えば、新生物増殖および/または血管新生の部位に位置するマーカーに特異的に結合しうる。細胞外マトリックスはこれらのプロセスの間に再モデリングされるため、細胞外マトリックス成分は、新生物増殖および/または血管新生のマーカーであってもよい。
【0027】
1つの例は、上記で説明したように、追加のドメインED-Bを含むフィブロネクチンのB-FNアイソフォームである。本発明の特異的結合メンバーは、フィブロネクチン・アイソフォームB-FNのED-Bに特異的に結合するのが好ましい。特異的結合メンバーは、L19のVH CDR1(配列番号25)、VH CDR2(配列番号26)および/もしくはVH CDR3(配列番号27)配列ならびに/またはL19のVL CDR1(配列番号28)、VL CDR2(配列番号29)および/もしくはVL CDR3(配列番号30)配列を含むアミノ酸配列を有してもよい。例えば、特異的結合メンバーは、L19のVH CDR1、VH CDR2および/もしくはVH CDR3を含むアミノ酸配列を有するVHドメイン、ならびにL19のVL CDR1、VL CDR2および/もしくはVL CDR3を含むアミノ酸配列を有するVLドメインを有するscFvであってよい。特異的結合メンバーは、配列番号22に記載のL19 VHドメインのアミノ酸配列との少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVHドメインを含んでもよく、および/または配列番号23に記載のL19 VLドメインのアミノ酸配列との少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有するVLドメインを含む。好ましくは、特異的結合メンバーは、L19 VHドメイン(配列番号22)およびL19 VLドメイン(配列番号23)を含むscFv(L19)である。好ましい実施形態においては、特異的結合メンバーは、配列番号5のアミノ酸配列を有するscFv(L19)である(図10)。
【0028】
別の例は、様々なアイソフォームで存在するテネイシンC(TnC)である。新生物組織においては、さらなるドメインを含有するTnC、特に、ドメインCを含有するアイソフォーム(cTN-C)[33]は、通常の組織よりも幅広く発現される。かくして、本発明のコンジュゲートにおける特異的結合メンバーは、新生物組織に関連するテネイシンCアイソフォーム、特に、cTN-Cに特異的に結合することができる。特異的結合メンバーは、配列番号21に記載の配列を有するTN11 scFvであってもよい(図11)[33]。
【0029】
あるいは、本発明のコンジュゲート中の特異的結合メンバーは、他の腫瘍関連抗原、すなわち、通常の細胞環境(非腫瘍細胞上など)におけるよりも腫瘍環境(腫瘍細胞上など)においてより広く存在する抗原に結合してもよい。
【0030】
通常、コンジュゲート中の2つの特異的結合メンバーは同一であるか、または少なくとも、同じ標的、抗原もしくはエピトープに対して両方とも特異的なものである。
【0031】
本発明の特に好ましい実施形態においては、前記コンジュゲートは、2つの特異的結合メンバー、好ましくはscFv(L19)とコンジュゲートされ、かつそれらの間にコンジュゲートされているヒトIL12へテロダイマーを含み;ここで、
該へテロダイマーは、第1の(通常はp40)サブユニットおよび第2の(通常はp35)サブユニットを有し;
第1の、またはp40サブユニットは、第1の融合タンパク質として第1の特異的結合メンバーにコンジュゲートされ;
第2の、またはp35サブユニットは、第2の融合タンパク質として第2の特異的結合メンバーにコンジュゲートされている。
【0032】
上記のように、第1および第2のサブユニットは、典型的には、共有結合され、例えば、ジスルフィド結合される。
【0033】
好ましくは、第1の、またはp40サブユニットは、特異的結合メンバーのN末端に融合され、すなわち、該サブユニットは、融合タンパク質およびそれをコードする核酸中で特異的結合メンバーの上流にある。従って、この形態では、p40のN末端は遊離(融合していない)していてもよく、それはその活性を最大化させると考えられる。
【0034】
好ましくは、第2の、またはp35サブユニットは、特異的結合メンバーのC末端に融合され、すなわち、該サブユニットは、融合タンパク質およびそれをコードする核酸中で特異的結合メンバーの下流にある。特に、上流のN末端シグナルペプチドを有する特異的結合メンバーを容易に発現させることができ、かくして融合タンパク質の効率的な発現が可能になるため、これにより融合タンパク質の発現を増強することができる。
【0035】
好ましくは、第1の融合タンパク質は、配列番号1に示されるp40-scFv(L19)のアミノ酸配列を有する。好ましくは、第2の融合タンパク質は、配列番号2に示されるscFv(L19)-p35のアミノ酸を有する。
【0036】
本発明のコンジュゲートを、任意の利用可能な方法で、例えば、組換え技術を用いて、例えば、コンジュゲートの全部または一部を融合タンパク質として発現させることにより、製造することができる。
【0037】
例えば、コンジュゲートを、以下:
第1のサブユニットおよび特異的結合メンバーを含む第1の融合タンパク質を発現させること;
第2のサブユニットおよび特異的結合メンバーを含む第2の融合タンパク質を発現させること;ならびに
第1および第2のサブユニットを1つにコンジュゲートさせること、
を含む方法で、製造することができる。
【0038】
通常、この方法は、発現後に第1および第2の融合タンパク質を精製することを含む。
【0039】
通常、この発現を、融合タンパク質をコードする核酸を含む宿主細胞、例えば、HEKもしくはCHO細胞などの培養真核細胞、または大腸菌などの細菌細胞中で行う。従って、発現はそのような宿主細胞を培養することを含んでもよい。第1および第2の融合タンパク質を同じ細胞(例えば、2つの融合タンパク質をコードする核酸で同時トランスフェクトされたか、もしくはそれらを含む細胞)中で発現させる場合、前記サブユニットのヘテロダイマー化もしくはオリゴマー化は、該細胞中で起こるか、または細胞からの融合タンパク質の精製の際に起こってもよい。他の場合、第1および第2の融合タンパク質を別々に発現させ(例えば、異なる細胞中で)、次いで、第1および第2のサブユニットがヘテロダイマー化するか、またはさもなければ結合するように1つに合わせる(混合する)ことができる。
【0040】
サブユニットを1つにコンジュゲートさせることは、能動的または受動的プロセスであってもよい。コンジュゲーションは、第1および第2のサブユニットが1つにコンジュゲートされる(例えば、結合するか、もしくはオリゴマー化/へテロダイマー化する)条件に第1および第2の融合タンパク質を曝露するか、または供することを含んでもよい。コンジュゲーションは、サブユニット間のジスルフィド結合形成、または別の共有結合の形成を含んでもよい。ジスルフィド結合形成などのコンジュゲーションは、非還元条件下で起こりうるので、従って、コンジュゲーションは第1および第2の融合タンパク質を非還元条件に曝露することを含んでもよい。
【0041】
本発明に従って融合タンパク質を発現させ、コンジュゲートを製造するための好適な方法を、下記実施例で詳細に説明する。
【0042】
さらなる工程として、前記方法は、前記コンジュゲートを医薬組成物に製剤化することを含んでもよい。一般的には、これは前記コンジュゲートを精製し、それを生理学的に許容し得る担体と混合することを含む。医薬組成物は下記により詳細に説明する。
【0043】
前記コンジュゲートおよびその一部をコードする(例えば、融合タンパク質をコードする)核酸分子も、本発明の一部を形成する。
【0044】
一態様においては、本発明は、以下:
特異的結合メンバーおよび第1のタンパク質サブユニットを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子;ならびに
特異的結合メンバーおよび第2のタンパク質サブユニットを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子、
を含む組成物である。
【0045】
前記核酸分子は、融合タンパク質中で特異的結合メンバーとサブユニットがペプチドリンカーにより連結されている、特異的結合メンバーと該サブユニット間のペプチドリンカーをコードしてもよい。コードされうる特定の融合タンパク質、サブユニット、特異的結合メンバーおよびリンカーを、本明細書の他の箇所でより詳細に説明する。特定の実施形態においては、第1および第2のサブユニットは、それぞれIL12ヘテロダイマーサブユニット(典型的には、p40およびp35サブユニット)であり、好ましくは、特異的結合メンバーはscFv、特に、scFv(L19)である。一実施形態においては、第1の核酸分子は、配列番号1に記載のIL12p40-scFv(L19)のアミノ酸配列をコードし、および/または第2の核酸分子は、配列番号2に記載のscFv(L19)-IL12p35のアミノ酸配列をコードする。
【0046】
前記核酸分子は、ベクター、例えば、前記ヌクレオチド配列の発現にとって好適なプラスミドであってもよい。かくして、第1および第2の核酸分子は、第1および第2のベクターであってもよい。通常は該ヌクレオチド配列は、転写のためのプロモーターなどの調節エレメントに機能し得る形で連結される。
【0047】
第1および第2の核酸分子を、該核酸分子で同時トランスフェクトされた細胞またはそのような細胞の娘細胞であってよい宿主細胞中に含有させることができる。前記核酸分子を含む細胞、特に、真核細胞、例えば、HEKおよびCHO細胞、または細菌細胞、例えば、大腸菌も、本発明の一部を形成する。
【0048】
前記核酸から発現させた後、融合タンパク質を、サブユニットを介してコンジュゲートさせて、本明細書の他の箇所に記載のような本発明のコンジュゲートを形成させることができる。
【0049】
本発明によるコンジュゲートを、患者に該コンジュゲートを投与することを含む、該患者(典型的には、ヒト患者)における疾患または障害の治療(予防的処置を含んでもよい)方法などの、ヒトまたは動物体の治療方法において用いることができる。
【0050】
前記コンジュゲートを用いて治療可能な状態としては、癌、他の腫瘍および新生物状態が挙げられる。前記コンジュゲートを用いて、血管新生を阻害し、それによって、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、加齢性筋肉変性、血管腫および癌などの腫瘍を治療することができる。治療は、予防的処置を含んでもよい。前記コンジュゲートを、診断方法、例えば、上記病的状態のいずれかに関連し得る血管新生の標的化および診断において投与することもできる。他の疾患および病的状態を、前記コンジュゲートに含まれるタンパク質治療剤または診断剤の性質、および特異的結合メンバーの特異性に従って、診断および治療することもできる。
【0051】
従って、本発明のさらなる態様は、本発明のコンジュゲートを投与することを含む治療方法、そのようなコンジュゲートを含む医薬組成物、および病的状態もしくは疾患の治療のための医薬の製造における、例えば、生理学的に許容し得る担体もしくは賦形剤と共に該コンジュゲートを製剤化することを含む医薬もしくは医薬組成物の製造方法における、そのようなコンジュゲートの使用を提供する。
【0052】
本発明に従えば、提供される組成物を患者に投与することができる。投与は、好ましくは、「治療上有効量」で行われ、これは患者に対する恩恵を示すのに十分なものである。そのような恩恵は、少なくとも1つの症候が少なくとも改善されることであってよい。投与する実際の量、ならびに投与の速度および時間経過は、治療しようとするものの性質および重篤度に依存するであろう。治療の処方、例えば、投薬量などの決定は、一般的な開業医および他の医師の職責の範囲内にある。抗体の好適な用量は当業界でよく知られている[26, 27]。
【0053】
抗体抗原結合ドメインを含むものを始めとする本発明のコンジュゲートを、治療を必要とする患者に対して、任意の好適な経路を介して、通常は血流への注入により、および/または治療しようとする部位、例えば、腫瘍もしくは腫瘍血管系への直接的注入により、投与することができる。投与の正確な用量およびその頻度は、多くの要因、治療の経路、治療しようとする領域(例えば、腫瘍)の大きさおよび位置、抗体の正確な性質(例えば、scFv分子)、ならびにコンジュゲート中に含まれる検出可能な標識もしくは他の分子の性質に依存するであろう。
【0054】
組成物を、治療しようとする状態に応じて、単独で、または他の治療と同時にもしくは連続的に組合わせて、投与することができる。他の治療としては、好適な用量の非ステロイド系抗炎症剤(例えば、アスピリン、パラセタモール、イブプロフェンもしくはケトプロフェン)またはモルヒネなどのアヘン剤などの疼痛緩和薬剤、または制吐剤の投与が挙げられる。
【0055】
かくして、本発明による医薬組成物、および本発明に従う使用のための医薬組成物は、活性成分(コンジュゲート)に加えて、製薬上許容し得る賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者にはよく知られた他の材料を含んでもよい。そのような材料は非毒性であるべきであり、前記活性成分の効力を妨げるべきではない。担体または他の材料の正確な性質は、経口、または例えば、静脈内などの注入によるものであってよい投与経路に依存するであろうは。静脈内注入、または苦痛部位への注入のためには、前記活性成分は、発熱物質を含まず好適なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容し得る水性溶液の形態であるであろう。
【0056】
本発明のコンジュゲートにおいては、前記タンパク質は通常、組換え生産された第1および第2のポリペプチドサブユニットを含む。このサブユニットはグリコシル化されていてもよく、そのようなグリコシル化の程度および性質を、該サブユニットを発現するような好適な宿主細胞の選択により制御することができる。このタンパク質は、生物活性物質、すなわち、それを投与する対象生物の構造またはその機能に影響する物質を含んでもよい。通常、このタンパク質は、診断剤または治療剤を含む。例えば、それは疾患または病的状態の診断、予防または治療に用いられる物質を含んでもよい。前記タンパク質は、例えば診断のための、マーカーまたは標識化剤を含んでもよい。本発明の内容においては、前記タンパク質は通常、例えば、癌および他の腫瘍、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、加齢性筋肉変性および血管腫の治療において、病的状態、特に、血管新生を治療または予防するための治療物質を含む。それは、例えば、毒素、酵素、またはサイトカインなどの免疫のメディエーターを含んでもよい。
【0057】
前記タンパク質は、天然または組換えのインターロイキン-12(IL12)であってよい。本発明において有用なIL12を、任意の動物、例えば、ヒト、げっ歯類(例えば、ラット、マウス)、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、イヌなどから得ることができる。ヒトIL12が、ヒトへの投与のためのコンジュゲートにおいて好ましい。IL12は、40 kDa(p40)サブユニットおよび35 kDa(p35)サブユニットから構成されるヘテロダイマータンパク質として天然に存在する。前記サブユニットの実際の分子量は、例えば、異なる生物種で発現される場合、ならびにタンパク質がグリコシル化されているかどうか、およびそのグリコシル化パターンに応じて様々でありうる。従って、用語「p40」および「p35」は、前記サブユニットがそれぞれ正確に40 kDaおよび35 kDaの分子量を有することを意味するわけではない。むしろ、これらの用語を用いて、IL12の2つのヘテロダイマーサブユニットを同定および識別し、これらはそれらのアミノ酸配列の点でより正確に規定することができる。ヘテロダイマーIL12は、それぞれ、ヒトIL12のp40サブユニットおよびp35サブユニットと相同であるか、または同一である第1および第2のポリペプチドサブユニットを含む。典型的には、IL12の第1のサブユニットは、配列番号3に記載のヒトIL12サブユニットp40のアミノ酸配列との少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。典型的には、IL12の第2のサブユニットは、配列番号4に記載のヒトIL12サブユニットp35のアミノ酸配列との少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。本発明のコンジュゲート中のIL12は、IL12の生物活性、例えば、活性化されたTおよびNK細胞に対して増殖因子として作用する能力、NK/リンホカインにより活性化されたキラー細胞の溶解活性を増強する能力、PMBCを休止させることによりIFN-γの産生を刺激する能力、血管新生を阻害する能力(例えば、下流のメディエーターIP-10を介して)ならびに/または腫瘍増殖および/もしくは転移を阻害する能力を保持する。
【0058】
特異的結合メンバーは、互いに対する結合特異性を有する一対の分子のメンバーである。特異的結合対のメンバーは、天然に由来するか、または全体的もしくは部分的に合成により製造されたものであってもよい。分子対の一方のメンバーは、その表面上に領域、または空洞を有し、それは、前記分子対の他方のメンバーの特定の空間的および極性構成に特異的に結合し、かつ、それゆえそれに対して相補的である。かくして、前記対のメンバーは互いに特異的に結合する特性を有する。
【0059】
前記特異的結合メンバーは通常、抗原結合部位を有する分子を含む。例えば、特異的結合メンバーは、抗原結合部位を含む抗体分子または非抗体タンパク質であってよい。抗原結合部位を、フィブロネクチンもしくはシトクロムBなどの非抗体タンパク質足場(scaffold)上の相補性決定領域(CDR)の配置により[29, 30, 31]、またはタンパク質足場内のループのアミノ酸残基をランダム化するか、もしくは突然変異させることにより提供し、所望の標的に対する結合特異性を付与することができる。タンパク質中に新規結合部位を作製するための足場が詳細に総説されている[31]。少なくとも1つのランダム化されたループを有するフィブロネクチンのIII型ドメインを含むタンパク質(抗体模倣物質)などの、抗体模倣物質のためのタンパク質足場が開示されている[32]。1つ以上のCDR、例えば、HCDRのセットを移植するのに好適な足場を、免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリーの任意のドメインメンバーにより提供することができる。この足場はヒトまたは非ヒトタンパク質であってよい。
【0060】
非抗体タンパク質足場の利点は、それが少なくとも一部の抗体分子よりも小さく、および/または製造が容易である足場分子中に抗原結合部位を提供することができることである。小さいサイズの特異的結合メンバーは、細胞に進入する能力、組織中に深く浸透する能力もしくは他の構造物内に標的を到達させる能力、または標的抗原のタンパク質空洞内に結合する能力などの有用な生理学的特性を付与し得る。
【0061】
非抗体タンパク質足場中での抗原結合部位の使用は、[34]に総説されている。典型的なものは、安定な骨格および1つ以上の可変ループを有するタンパク質であり、このループのアミノ酸配列を特異的に、またはランダムに突然変異させて、標的抗原に結合するための特異性を有する抗原結合部位を作る。そのようなタンパク質としては、S.aureusに由来するプロテインA、トランスフェリン、テトラネクチン、フィブロネクチン(例えば、10番目のフィブロネクチンIII型ドメイン)およびリポカリンのIgG結合ドメインが挙げられる。他の手法としては、シクロチド(分子内ジスルフィド結合を有する小さいタンパク質)に基づく、合成「ミクロボディー」(Selecore GmbH)が挙げられる。
【0062】
記載のように、CDRを、フィブロネクチンまたはシトクロムBなどの足場により担持させることができるが[29, 30, 31]、本発明のCDRまたはCDRのセットを担持させるための構造は、CDRまたはCDRのセットが、再配置された免疫グロブリン遺伝子によりコードされる天然のVHおよびVL抗体可変ドメインのCDRまたはCDRのセットに対応する位置に位置する抗体の重鎖もしくは軽鎖配列またはその実質的な部分のものであるのが好ましいであろう。免疫グロブリン可変ドメインの構造および位置を、Kabatら[35]および現在ではインターネット上で利用可能なそのアップデートを参照することにより決定することができる(http://immuno.bme.nwu.eduまたは任意の検索エンジンを用いて「Kabat」を発見することができる)。
【0063】
抗体分子は、天然に産生されるか、または部分的もしくは全体的に合成的に産生された免疫グロブリンである。この用語はまた、抗体抗原結合部位を含む任意のポリペプチドまたはタンパク質をも含む。
【0064】
モノクローナル抗体および他の抗体を取得し、組換えDNA技術を用いて、元の抗体の特異性を保持する他の抗体またはキメラ分子を製造することができる。そのような技術は、抗体の免疫グロブリン可変領域、またはCDRをコードするDNAを、異なる免疫グロブリンの定常領域、または定常領域+フレームワーク領域に導入することを含んでもよい[37, 38, 39]。抗体を産生するハイブリドーマまたは他の細胞を、産生される抗体の結合特異性を変化させても、もしくは変化させなくてもよい遺伝子突然変異または他の変化に供することができる。
【0065】
抗体は様々な方法で改変することができるので、用語「抗体分子」は、必要とされる特異性を有する抗体抗原結合部位を有する任意の特異的結合メンバーまたは物質を包含すると解釈されるべきである。かくして、この用語は、天然のものであるか、または全体的もしくは部分的に合成されたものであるかに関わらず、抗体抗原結合部位を含む任意のポリペプチドなどの抗体フラグメントおよび誘導体を包含する。従って、別のポリペプチドに融合された、抗体抗原結合部位を含むキメラ分子、またはその等価物が包含される。キメラ抗体のクローニングおよび発現はよく知られている[40, 41]。
【0066】
抗体工学の分野で利用可能なさらなる技術により、ヒトおよびヒト化抗体を単離することが可能になっている。例えば、ヒトハイブリドーマを、以前に記載のように作製することができる[36]。特異的結合メンバーを作製するための別の確立された技術であるファージディスプレイが詳細に記載されている[36, 42]。マウス免疫系の他の成分を無傷のままにしながら、マウス抗体遺伝子を不活化し、ヒト抗体遺伝子と機能的に置換したトランスジェニックマウスを用いて、ヒト抗体を単離することができる[43]。
【0067】
合成抗体分子を、好適な発現ベクター内で合成し、組み立てたオリゴヌクレオチドを用いて生成された遺伝子からの発現により作製することができる[44, 45]。
【0068】
全抗体のフラグメントは結合抗原の機能を実行できることが示されている。抗体フラグメントは、そのサイズが小さく、他の分子および受容体(例えば、Fc受容体)との相互作用が最小化されるため、本発明のコンジュゲートにおいて好ましい。特に好ましいのは、VHドメインおよびVLドメインが、2つのドメインを結合させて抗原結合部位を形成させるペプチドリンカー[46, 47]により連結された一本鎖Fv分子(scFv)である。scFvを、VHおよびVLドメインを連結するジスルフィド架橋の組込みにより安定化することができる[48]。
【0069】
別の小さい抗原結合抗体フラグメントは、dAb(ドメイン抗体)、すなわち、抗体重鎖または軽鎖の可変領域である[28]。VH dAbは、ラクダ科動物(例えば、ラクダ、ラマ)において天然に存在し、標的抗原を用いてラクダ科動物を免疫し、抗原特異的B細胞を単離し、個々のB細胞からdAb遺伝子を直接クローニングすることにより産生することができる。dAbは培養細胞中でも産生可能である。その小さいサイズ、良好な溶解性および温度安定性により、dAbは選択および親和性成熟にとって特に生理学的に有用かつ好適になる。
【0070】
単一ドメイン特異的結合メンバー、特に、dAbなどの単一ドメイン抗体を本発明において用いることができ、Domantis、Phylos、PierisおよびAffibodyから市販されている。
【0071】
抗原結合部位は、標的抗原の全部または一部に結合し、かつそれに対して相補的である分子の一部である。抗体分子においては、それを抗体抗原結合部位と呼び、それは標的抗原の全部または一部に特異的に結合し、かつそれに対して相補的である抗体の一部を含む。抗原が大きい場合、抗体は、エピトープと呼ばれる、抗原の特定の部分にのみ結合することができる。抗体抗原結合部位を、1個以上の抗体可変ドメインにより提供することができる。好ましくは、抗体抗原結合部位は、抗体の軽鎖可変領域(VL)および抗体の重鎖可変領域(VH)を含む。
【0072】
用語「特異的」は、特異的結合対の一方のメンバーが、その特異的結合パートナー以外の分子への有意な結合を示さないであろう状況を指して用いられうる。この用語はまた、例えば、抗原結合部位が、多数の抗原により担持される特定のエピトープに特異的である場合にも適用できるが、その場合、抗原結合部位を担持する特異的結合メンバーは、該エピトープを担持する様々な抗原に結合することができるであろう。
【0073】
L19は、フィブロネクチン・アイソフォームB-FNのED-Bドメインに特異的なヒト組換え抗体である。この抗体およびその配列は以前に記載されている[20]。L19の一本鎖Fvも記載されており、本発明のコンジュゲートにおいて優先的に用いられる。scFv(L19)は、L19 VHドメインおよびL19 VLドメインを含むscFvであって、そのVHおよびVLがペプチドリンカー配列により単一のポリペプチド鎖として結合されているものである。図10に示されるように、VHドメインはVH CDR1、CDR2およびCDR3配列を含み、VLドメインはVL CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む。このL19 CDR配列は、以下:
VH CDR 1 SFSMS 配列番号25
VH CDR 2 SISGSSGTTYYADSVKG 配列番号26
VH CDR 3 PFPYFDY 配列番号27
VL CDR 1 RASQSVSSSFLA 配列番号28
VL CDR 2 YASSRAT 配列番号29
VL CDR 3 QQTGRIPPT 配列番号30
である。
【0074】
VHドメインは配列番号22に記載のアミノ酸配列を有してもよく、VLドメインは配列番号23に記載のアミノ酸配列を有してもよい(図10)。通常、VHおよびVLドメインは、配列番号24の12残基のリンカーなどのペプチドリンカーにより連結されている(図10)。好ましくは、scFv(L19)は、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有する。
【実施例】
【0075】
ここで、本発明の態様および実施形態を、以下の実施例の節において説明する。
【0076】
ここで、本発明者らは、3つの異なる形式でのIL12-L19コンジュゲートの製造および特性評価について記載し、それはin vivo標的化について本願で特許請求するその形式の顕著な優位性を証明する。
【0077】
図1A、BおよびCに例示される3つの形式は、それぞれ、scIL12-scFv(L19)、scIL12-SIP(L19)ホモダイマーおよびp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35へテロダイマーである。
【0078】
図1Aに記載されるscIL12-scFv(L19)は、scIL12およびscFv(L19)の融合タンパク質である。このコンジュゲートは、1分子あたり1個のscFv抗原結合部位のため、一価である。
【0079】
図1Bに記載されるscIL12-SIP(L19)ホモダイマーは、scIL12、scFv(L19)およびヒトIgEのCH4ドメインをそれぞれ含む2つの融合タンパク質のホモダイマーである。このコンジュゲートは、2つのCH4ドメイン間のジスルフィド結合を介してダイマー化し、ミニ抗体またはSIP構造を形成する。このコンジュゲートは、1分子あたり2個のscFv(L19)抗原結合部位の存在のため、二価である。
【0080】
図1Cに例示されるp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35へテロダイマーは、2個の異なる融合タンパク質のヘテロダイマーである。第1の融合タンパク質は、6アミノ酸のペプチドリンカーGSADGG(配列番号15)を介してscFv(L19)のN末端に融合させたヒトIL12 p40サブユニットを含有する。第2の融合タンパク質は、6アミノ酸のペプチドリンカーGSADGG(配列番号15)を介してヒトIL12 p35サブユニットのN末端に融合させたscFv(L19)を含有する。2つの融合タンパク質を、p40とp35サブユニット間のジスルフィド結合を介してヘテロダイマー化させて、ヘテロダイマーp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35を形成させる。このコンジュゲートは、1分子あたり2個のscFv(L19)抗原結合部位の存在のため、二価である。
【0081】
FLAGタグを有しないscIL12-scFv(L19)
以前に記載の元の融合タンパク質[15]はC末端にFLAGタグ(「scIL12-scFv(L19)-FLAG」)を伴ってクローニングされたため、我々は、チロシンを含むFLAGタグが生体内分布実験における人為的結果の原因となりうる可能性を考慮すべきである。前記タンパク質のチロシンを放射性標識するときに、溶媒に曝露されたFLAGタグのチロシンも同様にヨウ素化されうる。FLAGタグを、後にin vivoでタンパク質分解することができる。この融合タンパク質の腫瘍標的化特性をより良く研究するために、本発明者らはFLAGタグを有しないscIL12-scFv(L19)融合タンパク質をクローニングし、発現させた。
【0082】
scIL12-scFv(L19)のクローニングおよび発現
scIL12-scFv(L19)のDNA断片を、鋳型としてscIL12-scFv(L19)-FLAG[15]の遺伝子を含むpCH33ベクターを用いて増幅した。p40の内因性分泌配列にアニーリングし、その5'末端にエンドヌクレアーゼEcoR1の制限部位を付加するプライマーsp40backEco (5' ccg gaattc atg tgt cct cag aag cta acc atc 3')(配列番号6)、およびscIL12-L19融合タンパク質の3'末端に3つの停止コドンを、その後ろにエンドヌクレアーゼNot1の制限部位を付加し、それによってFLAGタグを欠失させるプライマーL19stopNotfor(5' ttt tcc ttt t gcggccgc cta tca tca ttt gat ttc cac ctt ggt ccc 3')(配列番号7)を用いて、PCR反応を実施した。DNA断片を、哺乳動物細胞発現ベクターpcDNA3.1(+)ベクター(Invitrogen, Basel, Switzerland)中に、該ベクターのEcoR1およびNot1制限部位を用いてクローニングした。
【0083】
HEK293細胞に、前記ベクターをトランスフェクトし、G418(500μg/ml)の存在下で安定なトランスフェクタントを選択した。G418耐性細胞のクローンを、抗原としてヒトフィブロネクチンの組換えED-Bドメインを用いて、ELISAにより、融合タンパク質の発現についてスクリーニングした。この融合タンパク質を、以前に記載のように[19, 20]抗原カラム上でのアフィニティークロマトグラフィーにより細胞培養培地から精製し、4℃で一晩透析することにより脱塩した。この融合タンパク質を、アリコートに分けて、-20℃で凍結させた。scIL12-scFv(L19)融合タンパク質のサイズを、SDS-PAGE上で還元条件下および非還元条件下で、またSuperdex S-200カラム(Amersham Pharmacia Biotech)上でのFPLCゲル濾過による未変性条件下で分析した(図2)。モノマーである元のscIL12-scFv(L19)-FLAG融合タンパク質と違って、IL12-L19タンパク質画分の約3分の1がダイマーであることが示された。
【0084】
scIL12-scFv(L19)の特性評価
FLAGタグを有しないscIL12-scFv(L19)のin vivoでの標的化を、生体内分布実験を用いて評価した。そこで、融合タンパク質のモノマー画分を、Superdex S-200カラム上でのFPLCゲル濾過により精製した。この画分を、精製後すぐにヨウ素化し、F9マウス奇形癌腫瘍を担持する129SvEv免疫応答性マウス中に注入した。マウスを注入の4および24時間後に犠牲にし、その器官を計量し、放射活性を計測した。代表的な器官および腫瘍における蓄積を、組織1グラムあたりの注入用量%(%ID/g)で表した(図3)。24時間後、腫瘍部位での蓄積を観察することはできなかった。従って、本発明者らは、FLAGタグが生体内分布の結果を妨害しなかったと考える。
【0085】
scIL12-SIP(L19)ホモダイマー
scFv(L19)の腫瘍標的化特性は、scFv(L19)がヒトIgEのCH4ドメインのおかげでダイマー化され、「小免疫タンパク質(small immune protein)」すなわちSIPとも呼ばれるミニ抗体構造を構築した場合、改善されることが示された。SIP(L19)の腫瘍標的化特性は以前に記載されている[21]。従って、本発明者らは、scIL12-SIP(L19)のホモダイマーを構築して、この形式が腫瘍に対するIL12の標的化をも改善するかどうかを試験した。
【0086】
本発明者らは、scIL12-scFv(L19)-FLAG融合タンパク質[22]のC末端にヒトIgE免疫グロブリンのCH4ドメインを融合することにより、scIL12-SIP(L19)融合タンパク質を構築した。
【0087】
scIL12-L19-SIPホモダイマーのクローニングおよび発現
scIL12-L19フラグメントのC末端へのCH4ドメインの融合を、1ラウンドのPCRおよび既にCH4ドメインを含むベクター中へのそのPCR断片の挿入により実施した。
【0088】
scIL12-scFv(L19)断片を、scIL12-scFv(L19)-FLAG[15]の遺伝子を含むpCH33ベクターから増幅した。p40分泌配列の5'末端にアニーリングし、EcoR1をHindIII制限部位に変更するプライマーsp40backHind(5' ccgta aagctt atg tgt cct cag aag cta acc atc 3')(配列番号8)、および3'末端にアニーリングし、FLAGタグを欠失し、BspE1により付着末端を提供するAge1制限部位を導入するプライマーL19forAgeIBsp(5' tgt ggg accggt ttt gat ttc cac ctt ggt ccc 3')(配列番号9)を用いて、制限部位を交換した。一度連結されたAge1/BspE1制限部位はもはやBspE1を用いて再切断することはできない。scIL12配列はBspE1制限部位を含むため、この工程は必須である。ここで、エンドヌクレアーゼHindIIIおよびBspE1を用いて、前記断片を、その5'末端にBspE1制限部位を有するCH4ドメインを既に含む哺乳動物細胞pcDNA3.1(+)発現ベクター[21]中にクローニングした。
【0089】
scIL12-SIP(L19)のためのトランスフェクション、発現および精製手順を、scIL12-scFv(L19)融合タンパク質について上記のように実施した。IL12-SIP(L19)融合タンパク質のサイズを、SDS-PAGE上で還元条件および非還元条件下、ならびにSuperdex S-200カラム上でのFPLCゲル濾過による未変性条件下で、同様に分析した(図4)。
【0090】
scIL12-SIP(L19)ホモダイマーの特性評価
scIL12-SIP(L19)タンパク質を、ゲル濾過Superdex S-200カラム上での第2工程において精製し、回収後すぐにダイマー画分を放射性ヨウ素化した。標識されたタンパク質を、F9マウス奇形癌腫瘍を担持する129SvEv免疫応答性マウス中に注入した。マウスを注入の4および24時間後に犠牲にし、その器官を計量し、放射活性を計測した。代表的な器官および腫瘍における蓄積を、組織1グラムあたりの注入用量%(%ID/g)で表した(図5)。scIL12-SIP(L19)タンパク質はBIAcoreにおいてED-Bへの改善された結合を示したが、腫瘍による取込みの増加は観察できず、腫瘍による取込みは少ないままであった。
【0091】
p40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35へテロダイマー
p40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35へテロダイマーは、2つのサブユニットからなる。1つは、IL12のp35サブユニットのN末端に融合されたscFv(L19)断片を含む(scFv(L19)-p35)。2つ目においては、IL12のサブユニットp40は、scFv(L19)のN末端に融合される(p40-scFv(L19))。次いで、融合タンパク質は、p40とp35の間のジスルフィド結合を用いてヘテロダイマーp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35を構築する。
【0092】
このヘテロダイマー抗体-サイトカイン融合タンパク質コンジュゲートは、グリコシル化されていない場合、114 kDのサイズを有することが予想される。異なるグリコシル化状態のため、前記コンジュゲートの分子量は、異なるグリコシル化パターンのため、それが発現される生物種によって様々でありうる。翻訳後のグリコシル化がされないDNA配列の長さに基づけば、融合タンパク質の理論上のサイズは、p40-L19については65 kDa、L19-p35については49 kDaおよびヘテロダイマーp40-L19/L19-p35については114 kDaであった。
【0093】
p40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35のクローニングおよび発現
2つのサブユニットp40-scFv(L19)およびscFv(L19)-p35を、2つの異なるベクター(その第1のものは検出のためにmycタグを含み、第2のものは検出のためにhisタグを含む)中に別々にクローニングした。
【0094】
p40-scFv(L19)-myc断片を、scIL12-scFv(L19)-FLAGタンパク質をコードする遺伝子を含むpCH33ベクター[15]およびSIP(L19)断片をコードする遺伝子を含むpLBベクター[21]を鋳型として用いてPCR組立により作製した。p40部分を含む第1の断片Aは、鋳型としてpCH33を用いて構築した。IL12のp40サブユニットの分泌配列にアニーリングし、その5'末端にエンドヌクレアーゼHindIIIの制限部位を導入する第1のプライマーHindSp40back(5' ccc aagctt atg tgt cct cag aag cta acc atc 3')(配列番号10)、およびp40の3'末端にアニーリングし、第2の断片Bに融合されるべきリンカー(GSADGG)の一部を付加する第2のプライマーSp40HaLifor(5' acc tcc atc agc gct tcc gga tcg gac cct gca gg 3')(配列番号11)を用いて、PCR反応を実施した。scFv(L19)部分に寄与するこの断片Bは、鋳型のpLB、そして、scFvL19の5'末端にアニーリングし、リンカー(GSADGG)(配列番号15)の一部を付加する第1のプライマーLinkL19back(5' gga agc gct gat gga ggt gag gtg cag ctg ttg gag tc 3')(配列番号12)、およびscFv(L19)の3'末端にアニーリングし、C末端にmycタグを付加する第2のプライマーL19mycstoBamfor(5' att cag atc ctc ttc tga gat gag ttt ttg ttc ttt gat ttc cac ctt ggt ccc ttg 3')(配列番号13)を用いて2ラウンドのPCRで構築した。この断片を、プライマーLinkL19back、ならびに3つの停止コドンおよびBamH1の制限部位を断片Bの5'末端に付加する第3のプライマーmycstoBamfor(5' cgc ggatcc cta tca tca att cag atc ctc ttc tga gat gag ttt 3')(配列番号14)を用いて、第2ラウンドのPCRで仕上げた。鋳型として両断片を用いて、プライマーHindSp40backおよびmycstoBamforを用いるPCR組立を行って、可撓性リンカーGSADGGが連結された抗体フラグメントscFv(L19)のN末端に、p40断片を融合させて、断片p40-GSADGG-L19-mycを作製した。次いで、制限部位としてHindIIIおよびBamH1を用いて、この断片を、選択のためのハイグロマイシン耐性を提供する哺乳動物発現ベクターpcDNA3.1+/Hygro中にクローニングした。CHO細胞に該ベクターをトランスフェクトし、安定なトランスフェクタントをハイグロマイシン(500μg/ml)を用いて選択した。検出のために抗原としての組換えED-Bおよび抗myc抗体を用いるELISAにより、陽性クローンをスクリーニングした。タンパク質を発現させ、以前に記載のように[19, 20]、抗原アフィニティークロマトグラフィーにより細胞培養培地から精製し、4℃で一晩透析することにより脱塩した。融合タンパク質をアリコートに分けて、-20℃で凍結した。SDS PAGEサイズ分析により、このタンパク質が2つの異なるグリコシル化状態にある約50%のモノマーおよび約50%のホモダイマー[23]であることが示された。
【0095】
scFv(L19)-p35-Hisフラグメントを、同様に、鋳型として同じプラスミドpCH33およびpLBを用いてPCR組立により作製した。scFv(L19)部分に対応する第1の断片Cを、scFvL19の分泌配列にアニーリングしその5'末端にエンドヌクレアーゼEcoR1の制限部位を導入する第1のプライマーEcoLonSL19back(5' ccg gaattc gct tgt cga cca tgg gct g 3')(配列番号16)およびscFv(L19)の3'末端にアニーリングしリンカー(GSADGG)の一部を導入する第2のプライマーL19HaLifor(5' acc tcc atc agc gct tcc ttt gat ttc cac ctt ggt ccc 3')(配列番号17)を用いて、鋳型pLBから構築した。p35部分を含む第2の断片Dを、成熟p35サブユニットの5'末端にアニーリングしその5'末端にリンカー(GSADGG)の一部を付加する第1のプライマーHaLip35back(5' gga agc gct gat gga ggt agg gtc att cca gtc tct gga 3')(配列番号18)およびp35サブユニットの3'末端にアニーリングしhisタグを付加する第2のプライマーp35hisfor(5' gtg atg gtg atg atg atg ggc gga gct cag ata gcc 3')(配列番号19)を用いて、鋳型pCH33を用いて2ラウンドのPCRで構築した。第2ラウンドのPCRにおいて、3つの停止コドンおよびNot1の制限部位を、プライマーHaLip35backおよび第3のプライマーp35hisstoNot1for(5' ttt tcc ttt t gcggccgc cta tca tca gtg atg gtg atg atg atg ggc 3')(配列番号20)を用いて断片Dの3'末端に付加した。ここで、p35サイトカインサブユニットを、プライマーEcoLonSL19backおよびp35hisstoNot1forを用いるPCR組立によりscFv(L19)フラグメントのC末端に融合させて、L19-GSADGG-p35-hisを作製した。ここで、この断片を、EcoR1およびNot1制限部位を用いて、ネオマイシン耐性をもたらすpcDNA3.1哺乳動物発現ベクター中にクローニングした。HEK293細胞をトランスフェクトし、安定なトランスフェクタントをG418(500μg/ml)を用いて選択した。トランスフェクトされた細胞を、検出のために抗原としてのヒト組換えEDBおよび抗his抗体を用いるELISAにより、融合タンパク質を発現する耐性クローンについてスクリーニングした。融合タンパク質を、以前に記載のように[19, 20]、抗原カラム上でのアフィニティークロマトグラフィーにより細胞培養培地から精製し、4℃で一晩透析することにより脱塩した。SDS PAGE分析により、その発現は非常に弱いことが示され、前記タンパク質はモノマー、ダイマーおよびより高次のオリゴマーからなることが示された。
【0096】
次いで、scFv(L19)-p35およびp40-scFv(L19)をコードする2つのベクターを用いるHEK293細胞の同時トランスフェクションを同時に実施した。両方の融合タンパク質を含む安定なトランスフェクタントの選択を、G418(500μg/ml)およびハイグロマイシン(500μg/ml)を用いて実施した。細胞を、検出のために抗原としての組換えEDBおよび抗myc抗体ならびに抗his抗体を用いるELISAにより、両タンパク質の発現についてスクリーニングした。融合タンパク質を、以前に記載のように[19, 20]、ED-B抗原カラム上でのアフィニティークロマトグラフィーによる第1工程において精製し、4℃で一晩透析することにより脱塩した。次いで、この第1の画分を、ヘテロダイマー(p40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35)として結合しなかった遊離のp40-scFv(L19)フラグメントを洗浄除去するHisTrap HP 1 ml Ni2+カラム(Amersham Biosciences)上での第2工程において精製した。保存のために、0.1%Tween 80をタンパク質に添加した後、アリコートに分けて、-80℃で凍結した。SDS PAGE分析により、非還元条件下では、このタンパク質は2つのグリコシル化状態のダイマーであるが、還元条件下では異なるサイズの2つのヘテロモノマーであってそのp40-L19モノマーがその2つの異なるグリコシル化状態にあることが示された。Superdex S-200カラムを用いるゲル濾過を実施することにより、前記タンパク質は未変性条件下で純粋なダイマーであることが示された(図6)。
【0097】
p40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35の特性評価
前記融合タンパク質の正確な折畳みおよび正確なジスルフィド結合の構築を、精製されたヘテロダイマータンパク質のIL12活性により判定した。
【0098】
IL-12活性を、T細胞増殖アッセイ[24]を実施することにより決定した。簡単に述べると、静止期のヒト末梢血単球(PBMC)を、分裂促進因子(フィトヘマグルチニン(PHA)およびIL-2)と共に3日間培養した後、融合タンパク質または標準物としての市販の組換えマウスIL-12(R&D Systems Europe Ltd, Abingdon, United Kingdom)の連続希釈液と共にインキュベートした。続いて、増殖を[3H]チミジン取込みにより測定した。
【0099】
FPLCゲル濾過Superdex S-200カラム上で精製し、放射性ヨウ素化したp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35タンパク質を用いて、生体内分布実験を実施した。標識されたタンパク質を、F9マウス奇形癌腫瘍を担持する129SvEv免疫応答性マウス中に注入した。マウスを注入の4および24時間後に犠牲にし、その器官を計量し、放射活性を計測した。代表的な器官および腫瘍における蓄積を、1グラムの組織あたりの注入用量%(%ID/g)で表した。ヘテロダイマー形式を用いて、本発明者らは24時間でほぼ10%の腫瘍取込みを達成した(図7)。
【0100】
参考文献
引用された全ての参考文献は、参照により本明細書に特に組み入れられるものとする。 ADDIN EN.REFLIST
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【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1(A)は、scIL12-scFv(L19)を示す。(B)はIL12-SIP(L19)ホモダイマーを示す。(C)はp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35ヘテロダイマーを示す。
【図2】図2(A)は、還元条件および非還元条件下でのscIL12-scFv(L19)融合タンパク質のSDS-PAGE分析を示す。(B)は未変性条件下でのscIL12-scFv(L19)融合タンパク質のゲル濾過プロフィールを示し、これはダイマーであることを示す。
【図3】図3は、生体内分布実験を用いて評価されたscIL12-scFv(L19)のin vivo標的化を示す。蓄積を、(A)4時間後および(B)24時間後の組織1グラムあたりの注入用量%(%ID/g)で表す。示された組織は、左から右に、腫瘍、脾臓、肝臓、肺、心臓、腸、血液および腎臓である。
【図4】図4は、還元条件および非還元条件下でのscIL12-SIP(L19)融合タンパク質のSDS-PAGE分析を示す。(B)は、未変性条件下でのscIL12-SIP(L19)融合タンパク質のゲル濾過プロフィールを示し、これはダイマーであることを示す。
【図5】図5は、生体内分布実験を用いて評価されたscIL12-SIP(L19)のin vivo標的化を示し、その蓄積は、(A)4時間後および(B)24時間後の組織1グラムあたりの注入用量%(%ID/g)で表す。示された組織は、左から右に、腫瘍、脾臓、肝臓、肺、心臓、腸、血液および腎臓である。
【図6】図6(A)は、還元条件および非還元条件下でのp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35融合タンパク質のSDS-PAGE分析を示す。(B)は、未変性条件下でのp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35融合タンパク質のゲル濾過プロフィールを示し、これはダイマーであることを示す。
【図7】図7は、生体内分布実験を用いて評価されたp40-scFv(L19)/scFv(L19)-p35のin vivo標的化を示し、その蓄積は、(A)4時間後および(B)24時間後の組織1グラムあたりの注入用量%(%ID/g)で表す。示された組織は、左から右に、腫瘍、脾臓、肝臓、肺、心臓、腸、血液および腎臓である。
【図8】図8は、アミノ酸配列(配列番号1)を示す。この配列は、N末端からC末端に、(i)シグナルペプチド;(ii)ヒトIL12 p40サブユニット(破線の下線で示す-配列番号3);(iii)ペプチドリンカー(配列番号15);(iv)scFv(L19)(下線で示す-配列番号5);および(v)myc;を含み、これはすなわち、シグナルペプチド-ヒトp40-リンカー-L19-mycである。本発明者らが用いたコード化核酸配列においては、mycタグの後ろに3つの停止コドンが続いていた。
【図9】図9は、アミノ酸配列(配列番号2)を示す。この配列は、N末端からC末端に、(i)シグナルペプチド;(ii)scFv(L19)(下線で示す-配列番号5);(iii)ペプチドリンカー(配列番号15);(iv)ヒトIL12 p35サブユニット(破線の下線を示す-配列番号4);および(v)6Hisタグ;を含み、これはすなわち、シグナルペプチド-L19-リンカー-ヒトp35-6×Hisである。本発明者らが用いたコード化核酸配列において、6個のヒスチジンの後ろに3つの停止コドンが続いていた。
【図10】図10は、scFv(L19)のアミノ酸配列(配列番号5)を示す。VHおよびVLドメインを別々に示す(それぞれ配列番号22および配列番号23)。VHおよびVLドメインの両方のCDR1、2および3配列を下線で示す。VHおよびVLドメインは、12残基のペプチドリンカー配列(配列番号24)により分離されている。
【図11】図11は、抗テネイシンC scFv TN11のアミノ酸配列(配列番号21)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2のサブユニットを有するヘテロダイマータンパク質を含むコンジュゲートであって、該第1および第2のサブユニットはそれぞれ一本鎖Fv(scFv)にコンジュゲートされ、該ヘテロダイマータンパク質は治療剤または診断剤を含む、前記コンジュゲート。
【請求項2】
第1のサブユニットが第1の融合タンパク質としてscFvにコンジュゲートされ、第2のサブユニットが第2の融合タンパク質としてscFvにコンジュゲートされている、請求項1に記載のコンジュゲート。
【請求項3】
前記ヘテロダイマータンパク質の第1および第2のサブユニットが、ジスルフィド結合を介して共有結合されている、請求項1または2に記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記ヘテロダイマータンパク質がIL12である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項5】
前記コンジュゲートが250,000以下の分子量を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項6】
前記コンジュゲートが150,000以下の分子量を有する、請求項5に記載のコンジュゲート。
【請求項7】
前記コンジュゲートが120,000以下の分子量を有する、請求項6に記載のコンジュゲート。
【請求項8】
2つのscFvが同一である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項9】
2つのscFvとコンジュゲートされ、かつそれらの間にコンジュゲートされているヒトIL12ヘテロダイマーを含む請求項1〜8のいずれか1項に記載のコンジュゲートであって、
IL12ヘテロダイマーが第1および第2のサブユニットを有し、
第1のサブユニットが第1の融合タンパク質としてscFvにコンジュゲートされ、そして
第2のサブユニットが第2の融合タンパク質としてscFvにコンジュゲートされている、
前記コンジュゲート。
【請求項10】
第1の融合タンパク質が配列番号1に記載のアミノ酸配列を有する、請求項9に記載のコンジュゲート。
【請求項11】
第2の融合タンパク質が配列番号2に記載のアミノ酸配列を有する、請求項9または10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
一方または両方のscFvが、新生物増殖および/または血管新生に関連する細胞外マトリックス成分に特異的に結合する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
前記成分がフィブロネクチンED-Bである、請求項12に記載のコンジュゲート。
【請求項14】
前記scFvが、配列番号25、配列番号26および配列番号27のアミノ酸配列を含むVHドメイン、ならびに配列番号28、配列番号29および配列番号30のアミノ酸配列を含むVLドメインを有するscFv(L19)である、請求項13に記載のコンジュゲート。
【請求項15】
前記scFvが、配列番号5に記載のアミノ酸配列を有するscFv(L19)である、請求項14に記載のコンジュゲート。
【請求項16】
前記成分がテネイシンCのアイソフォームである、請求項12に記載のコンジュゲート。
【請求項17】
前記scFvが、配列番号21に記載のアミノ酸配列を有するscFv(TN11)である、請求項16に記載のコンジュゲート。
【請求項18】
請求項4〜17のいずれか1項に記載のコンジュゲートを製造する方法であって、
第1および第2の融合タンパク質を発現させること;ならびに
第1および第2のサブユニットをコンジュゲートさせて、ヘテロダイマータンパク質を形成させること、
を含む前記方法。
【請求項19】
両方の融合タンパク質をコードする核酸を含む細胞中で、第1および第2の融合タンパク質を発現させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コンジュゲートを医薬組成物に製剤化することをさらに含む、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
scFvおよびヘテロダイマータンパク質の第1のサブユニットを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第1の核酸分子;ならびに
scFvおよびヘテロダイマータンパク質の第2のサブユニットを含む融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む第2の核酸分子、
を含む組成物。
【請求項22】
前記scFvが請求項12〜17のいずれか1項において定義されるものである、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
第1のサブユニットがIL12 p40サブユニットであり、第2のサブユニットがIL12 p35サブユニットである、請求項21または22に記載の組成物。
【請求項24】
第1および第2の核酸分子が第1および第2のベクターである、請求項21〜23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
請求項21〜24のいずれか1項で定義された第1および第2の核酸分子を含む宿主細胞。
【請求項26】
請求項1〜17のいずれか1項に記載のコンジュゲートを含む医薬組成物。
【請求項27】
療法によるヒトまたは動物体の治療における使用のための請求項1〜17のいずれか1項に記載のコンジュゲート。
【請求項28】
患者における血管新生および/または新生物増殖を阻害するための医薬の製造における、請求項10〜17のいずれか1項に記載のコンジュゲートの使用。
【請求項29】
前記医薬が、腫瘍、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、加齢性筋肉変性または血管腫を治療するためのものである、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
請求項10〜17のいずれか1項に記載のコンジュゲートを患者に投与することを含む、該患者における新生物増殖および/または血管新生を阻害する方法。
【請求項31】
血管新生を阻害することにより、腫瘍、関節リウマチ、糖尿病性網膜症、加齢性筋肉変性または血管腫を治療することを含む、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2008−543278(P2008−543278A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510449(P2008−510449)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004114
【国際公開番号】WO2006/119897
【国際公開日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【出願人】(507147231)
【Fターム(参考)】