説明

フィプロニルおよびその類似体を調製する方法

本発明は、駆虫剤フィプロニル用中間体として有用である、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−(トリフルオロメチルチオ)−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル(以下式Iの化合物と呼ぶ)を調製する新規なおよび効率的な方法、および5−アミノ−3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(以下式IIの化合物またはフィプロニルと呼ぶ)を調製する方法に関する。一態様では、a)還元/ハロゲン化剤の存在下、CFS(=O)ONaを式IIIの化合物と反応させる段階と、b)適切な条件下、選択的酸化剤の存在下で、段階a)で得られた式Iの化合物を酸化する段階とを含み、ここで、選択的酸化剤は、対応するスルホキシド、フィプロニルへの(I)の酸化を選択的に実施する、フィプロニルを調製する方法を提供する。ある例示的な実施形態では、選択的酸化剤はMHSOであり、ここで、Mはアルカリ金属カチオンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権
本出願は、2007年12月19日に出願した米国特許仮出願第61/014,769号および2008年1月8日に出願した仏国特許出願第08/50084号(これらの出願のそれぞれの内容全体を参照により本明細書に組み込む)の優先権を主張するものである。
【0002】
本発明は、駆虫剤フィプロニル用中間体として有用である、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−4−(トリフルオロメチルチオ)−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル(以下式Iの化合物と呼ぶ)を調製する新規なおよび効率的な方法、および5−アミノ−3−シアノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(以下式IIの化合物またはフィプロニルと呼ぶ)を調製する方法に関する。

【0003】
具体的には、構造式(II)の化合物は、PClまたはPBrなどの還元/ハロゲン化剤の存在下、CFSONaを5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル(以下式(III)の化合物と呼ぶ)と反応させて、式(I)の化合物を高純度で調製し、次いで、式(I)の化合物を酸化剤と反応させて、スルフィドのスルホキシドへの選択的酸化を起こさせることによって調製することができる。ある特定の実施形態では、この酸化剤は、MHSO(式中、Mはアルカリ金属カチオンである)である。
【0004】
以下において、括弧([ ])内の文献は、先行技術文献の欄に列挙された文献である。
【背景技術】
【0005】
フィプロニルは、農業および園芸業で広範に使用されている周知の殺虫剤である。その調製のための多くの方法が報告されている。最も重要なものは、式IIIのピラゾール前駆体を化学的に変換して、ピラゾール環の非置換部位上にトリフルオロメチルスルフィニル基の導入を達成することからなる。

【0006】
複素環式化合物のスルフィニル化、即ち、RS(=O)基の導入は、典型的には従来の2つの方法の1つで実施する。
【0007】
第1のものは、試薬RSXと複素環式化合物との間で反応させて、スルフィド置換複素環を得て、次にこれを酸化することからなる。報告した方法で遭遇する問題点としては、(i)実施するのが困難な酸化プロセス(例えば、TFA/Hが使用されているが、これは、in situでのフッ化水素の形成によって、工程を腐食性にする)、および(ii)出発試薬のあるもの(例えば、CFSCl)の毒性がある。
【0008】
第2のものは、複素環の直接的スルフィニル化が関与する。例えば、中国特許第1176078C号[特許文献1]には、POCl、PClまたはSOClなどの塩素化剤の存在下、CFSOKとCFSONaの混合物を用いたスルフィニル化プロセスが記載されている。しかし、この収率は、実験室規模で中位(74〜80%)であった。同様に、EP0668269[特許文献2]には、試薬RS(=O)Xが複素環と反応して、所望のスルフィニル化化合物をもたらすことが関与する一工程スルフィニル化プロセスが記載されている。しかし、この反応は、特に、スルフィニル化プロセスを実施するのに試薬CFSOHまたはCFSONaを使用する場合は、必ずしも所望通り進行するとは限らない。なぜなら、この場合は、潜在的に有害なSOClまたはホスゲンをさらに使用しなければならないからである。
【0009】
第3のアプローチは、試薬RXをジスルフィド中間体のS−S結合と反応させて、対応するスルフィドを得て、次にこれを酸化することからなる。例えば、欧州特許第0374061号[特許文献3]およびJ−L.Clavelら、J.Chem.Soc.Perkin I、(1992)、3371〜3375[非特許文献1]には、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−3−シアノピラゾール−4−イルジスルフィドの調製、ならびにこのジスルフィドの、60℃で低圧(典型的には13バール)のオートクレーブ中、N,N−ジメチルホルムアミド中、ギ酸ナトリウムおよび二酸化硫黄の存在下、臭化トリフルオロメチルとの反応による殺虫剤として活性な5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−3−シアノ−4−トリフルオロメチルチオピラゾールへのさらなる変換が記載されている。しかし、より大きなスケールに関しては、この反応は非常に発熱性であり、容器中でかなりの圧力上昇が生じ、操作員の危険が伴う。さらに、ジスルフィド、ギ酸ナトリウム、二酸化硫黄およびN,N−ジメチルホルムアミドの混合物は、不安定であることが見出されている(典型的には、50℃で2時間以内に望ましくない副生成物への55%の分解が生じる)ので、臭化トリフルオロメチルを迅速に添加する必要がある(通常、0.5時間以内)。臭化トリフルオロメチルの迅速な添加に関するこの要求事項は、反応の発熱性と適合しない。
【0010】
したがって、当技術分野で知られている方法は、厳しい制約を有する。
特に、これらの方法は、以下の事項の少なくとも1つで制約されることが多い。
− これらの方法が、毒性が高すぎる試薬を使用する;
− これらの方法が、取り扱い難いおよび/または有害な試薬を使用する;
− これらの方法が、いくぶんか腐食性の試薬を使用する;
− これらの方法が、スケールアップが困難であり、したがって、工業への適用には向かない傾向がある;
− これらの方法は、農業または園芸業で使用するための殺虫剤活性を有する化合物を調製することを目的とする。したがって、生成物の品質、特にその純度は、必ずしも治療用使用に適合するとは限らない;
− 収率が、実験室規模で中位である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】中国特許第1176078C号
【特許文献2】EP0668269
【特許文献3】欧州特許第0374061号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】J−L.Clavelら、J.Chem.Soc.Perkin I、(1992)、3371〜3375
【非特許文献2】Nicolaou,K.C.;Magolda,R.L.;Sipio,W.J.;Barnette,W.E.;Lysenko,Z.;Joullie,M.M.、J.Am.Chem.Soc.1980.102、3784
【非特許文献3】Khodaeiら、「H2O2/Tf2O System:An Efficient Oxidizing Reagent for Selective Oxidation of Sulfanes」、Synthesis 2008(11)1682
【非特許文献4】Y.Venkateswarluら、「A novel rapid sulfoxidation of sulfides with cyclohexylidenebishydroperoxide」、Tetrahedron Letters 2008(49)3463
【非特許文献5】Aliら、「Ceric Ammonium Nitrate Catalyzed Oxidation of Sulfides to Sulfoxides」、Synthesis 2007(22)3507
【非特許文献6】Yu Yuan、Yubo Bian、「Gold(III) catalyzed oxidation of sulfides to sulfoxides with hydrogen peroxide」Tetrahedron Letters 2007(48)8518
【非特許文献7】S.B.Halligudiら、「One−step synthesis of SBA−15 containing tungsten oxide nanoclusters:a chemoselective catalyst for oxidation of sulfides to sulfoxides under ambient conditions」、Chem.Commun.2007 4806
【非特許文献8】Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、これらの欠点がない、効率的および工業的に実行可能な方法を開発することが依然として求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
一態様では、本発明は、フィプロニルを調製するための実行可能および効率的な方法であって、
a)還元/ハロゲン化剤の存在下、CFS(=O)ONaを式IIIの化合物

と反応させる段階と、
b)適切な条件下、選択的酸化剤の存在下で、段階a)で得られた式Iの化合物

を酸化する段階とを含み、
ここで、選択的酸化剤は、対応するスルホキシド、フィプロニルへの(I)の酸化を選択的に実施する方法を提供する。ある特定の実施形態では、選択的酸化剤はMHSOであり、ここで、Mはアルカリ金属カチオンである。
【0015】
別の態様では、本発明は、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実施する段階と、前記方法で得られたフィプロニルを薬剤として許容される担体、補助剤またはビヒクルと混合する段階とを含む、駆虫薬を製造する実行可能な方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、前述の欠点を克服することを目的とする。即ち、本発明は、駆虫剤の調製のための改良された、より安全なまたはより実行可能な方法を提供することを追求する。
【0017】
第1の態様では、本発明は、フィプロニルの合成のための重要な中間体である、式Iの化合物を調製する好都合な方法を提供する。
【0018】
第2の態様では、本発明は、フィプロニルを調製するための安全、高収率および工業的に適用可能な方法を提供する。本発明の方法は、治療用途に適するようにする、高純度のフィプロニルの調製を可能にする。
したがって、一態様では、式Iの化合物

を調製する方法であって、
還元/ハロゲン化剤の存在下、CFS(=O)ONaを式IIIの化合物

と反応させる段階を含む方法を提供する。
【0019】
別の態様では、式IIの化合物

を調製する方法であって、
適切な条件下、選択的酸化剤の存在下で式Iの化合物

を酸化する段階を含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、この選択的酸化剤はMHSOであり、ここで、Mはアルカリ金属カチオンである。
【0020】
第3の態様では、フィプロニルを調製する方法であって、
a)還元/ハロゲン化剤の存在下、CFS(=O)ONaを式IIIの化合物

と反応させる段階と、
b)適切な条件下、選択的酸化剤の存在下で、段階a)で得られた式Iの化合物

を酸化する段階と
を含む方法を提供する。ある特定の実施形態では、選択的酸化剤はMHSOであり、ここで、Mはアルカリ金属カチオンである。
【0021】
ある特定の実施形態では、本発明の方法の段階b)は、スルホン(IV)の形成がほとんど起こらないまたは起こらないように実施される。
【0022】
ある特定の実施形態では、Mは、Li、NaまたはKを表す。特定の例示的な実施形態では、MはKである。
【0023】
本明細書で使用される場合の「還元/ハロゲン化剤」という用語は、CFS(=O)ONaの硫黄原子における同時還元によって、化合物IIIのピラゾール環のスルフェニル化を果たすハロゲン化剤を指す。
【0024】
本発明の重要な一態様は、PClまたはPBrなどの選択されたハロゲン化剤はまた、ピラゾール環の硫黄官能化の過程においてCFS(=O)ONaの硫黄を還元する能力を有し、それによって式Iのスルフィド化合物の形成をもたらすことの発見にある。
【0025】
種々の塩素化剤が、類似の反応条件でピラゾール環のスルフィニル化を果たすことが報告されているので、これはまったく予想外であった。例えば、EP0668269[特許文献2]には、試薬RS(=O)Xと複素環との反応が関与して、所望のスルフィニル化化合物をもたらす一工程スルフィニル化プロセスが記載されている。EP0668269によれば、ホスゲン、クロロホルメート、PClおよびSOClなどの典型的な塩素化剤は、試薬RSOXとの組合せで、Xの性質に応じてピラゾール環の直接的スルフィニル化を果たすことができる。この同じ文献では、直接的スルフィニル化はまた、SOClまたはホスゲンなどの塩素化剤との組合せでCFSOHまたはCFSONaの使用でも記載されていた。同様に、中国特許第1176078C号[特許文献1]には、POCl、PClまたはSOClなどの塩素化剤の存在下、CFSOKとCFSONaとの混合物を用いたスルフィニル化プロセスが記載されている。これら2つの文献のどちらも、塩素化剤とCFS(=O)ONaなどの試薬の組合せによるスルフィドを入手する可能性は報告されていなかった。実際、これらの両方のプロセスは、このようなスルフィドの形成、および所望のスルホキシド(例えば、フィプロニル)を得るのに次の酸化段階の必要性を回避する利点を有するものとして記載されていた。
【0026】
本明細書で使用される場合の「選択的酸化剤」という用語は、チオエーテルの対応するスルホキシドへの選択的な酸化を果たし、同時にスルホンの形成を最小限に抑える酸化剤を指す。より特定すれば、本発明による「選択的酸化剤」は、チオエーテル(I)または(IA)の、それぞれ対応するスルホキシド(II)または(IIA)への選択的な酸化を果たす。この文脈で使用される場合の「選択的に」という用語は、対応するスルホンに優先して、所望のスルホキシド(II)(または(IIA))が支配的に形成されることを意味する。ある特定の実施形態では、本発明の方法の段階b)は、スルホキシド(II)およびその対応するスルホン(IV)(またはスルホキシド(IIA)およびその対応するスルホン(IVA))の形成を、>50:50、例えば≧55:45、例えば≧60:40、例えば≧65:35、例えば≧70:30、例えば≧75:25、例えば≧80:20、例えば≧85:15、例えば≧90:10、例えば≧95:5、例えば≧96:4、例えば≧97:3、例えば≧98:2、例えば≧99:1、例えば100:0のスルホキシド:スルホンの比でもたらす。
【0027】
この選択性の制御は、酸化剤それ自体の性質、またはそれが使用される反応条件、あるいは両方によってもよい。
【0028】
チオエーテルの対応するスルホキシドへの選択的酸化を果たすための、このような選択的酸化剤、および適した反応条件は、当技術分野で知られている。
【0029】
例えば、酸化剤の中でm−クロロ過安息香酸(「MCPBA」)は、ジクロロメタン溶媒の存在下、低温(通常、−78℃〜0℃)で、当量で使用された場合、スルフィド化合物を対応するスルホキシドに選択的に酸化することができ、一方、室温で、2当量で使用された場合、スルフィドは対応するスルホンに選択的に酸化することができることが報告されている(Nicolaou,K.C.;Magolda,R.L.;Sipio,W.J.;Barnette,W.E.;Lysenko,Z.;Joullie,M.M.、J.Am.Chem.Soc.1980.102、3784;[非特許文献2])。
【0030】
実際には、MCPBAは、商業的に60〜80%純度で売買されるために、正確な量を評価することができないので、典型的には過剰量で使用される。MCPBAはまた、比較的高価であり、副生成物としてのm−クロロ安息香酸を処理する問題を伴う。したがって、MCPBAは、工業規模に関するプロセスにはほとんど使用されない。しかしながら、MCPBAは(例えば、実験室規模に関する)工程のプロセスを実施するためには使用することができ、したがって、本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
【0031】
他の選択的酸化剤が報告されている。例えば、以下の最近の公表物を挙げることができる。
1.Khodaeiら、「H/TfO System:An Efficient Oxidizing Reagent for Selective Oxidation of Sulfanes」、Synthesis 2008(11)1682[非特許文献3];
2.Y.Venkateswarluら、「A novel rapid sulfoxidation of sulfides with cyclohexylidenebishydroperoxide」、Tetrahedron Letters 2008(49)3463[非特許文献4];
3.Aliら、「Ceric Ammonium Nitrate Catalyzed Oxidation of Sulfides to Sulfoxides」、Synthesis 2007(22)3507[非特許文献5];
4.Yu Yuan、Yubo Bian、「Gold(III) catalyzed oxidation of sulfides to sulfoxides with hydrogen peroxide」Tetrahedron Letters 2007(48)8518[非特許文献6];
5.S.B.Halligudiら、「One−step synthesis of SBA−15 containing tungsten oxide nanoclusters:a chemoselective catalyst for oxidation of sulfides to sulfoxides under ambient conditions」、Chem.Commun.2007 4806[非特許文献7]。
【0032】
上記公表物は、すべてがスルホキシドへのモノ酸化に対する高い選択性を報告している。したがって、そこに記載された酸化方法は、所望のスルホキシド(II)または(IIA)への高い選択性を合理的に強く期待して、本発明の方法の段階b)に適用してもよい。
【0033】
これらの方法を実施する例示的な縮小が、実施例9から12に例示されている。この実施例に例示した手順は、フィプロニル(II)、より一般的には式(IIA)の化合物を高収率および高純度で得るための最適条件を決めるために、当業者であれば修正および調整することができるものと理解される。
【0034】
上記公表物および以下の実施例9から12に記載された酸化剤は、本発明の範囲に含まれる。しかし、本発明の方法に使用するのに適した選択的酸化剤は、これらの例に限定されない。チオエーテル(I)または(IA)のそれぞれ対応するスルホキシド(II)または(IIa)への選択的酸化を引き起こす任意の酸化剤または条件は、本発明の範囲に含まれると考えられるものと理解される。
【0035】
例えば、本発明の別の重要な態様は、MHSO、特にオキソン(KHSO)は、式Iのスルフィドの、対応するスルホンの過剰な形成なしに、式IIのスルホキシド(フィプロニル)への制御された酸化を可能にする有効な酸化剤であることの認識である。当業者であれば理解するように、克服するべき1つの問題は、「バランスが取れた」酸化力を有する酸化剤を識別することである。一方では、この酸化剤は、他のスルフィドより容易に酸化され難いトリフルオロメチルスルフィドなどの電子不足のスルフィドの酸化を可能にするために十分に反応性であるべきである。他方では、この酸化剤は、望ましくないスルホンの過剰な形成が起こるほど強力であるべきでない。本発明者らは、試薬MHSOは、この目的を果たす適切な化学的特性を有することを認識している。本発明者らはまた、望ましくない式IVのスルホン

に優先して、フィプロニルの選択的形成を可能にする適正な酸化反応条件を開発し、設計した。
【0036】
本発明の第1の態様および本発明の第3の態様の段階a)に関する実施形態
ある特定の実施形態では、還元/ハロゲン化剤の少なくとも1当量が、CFS(=O)ONaのモル量に基づき使用される。ある特定の例示的な実施形態では、還元/ハロゲン化剤(RHA)およびCFS(=O)ONaは、1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.7、より好ましくは1.0〜1.5、最も好ましくは1.0〜1.3にわたるRHA/CFS(=O)ONaのモル比で使用される。ある特定の例示的な実施形態では、還元/ハロゲン化剤は、PClまたはPBrである。ある特定の好ましい実施形態では、還元/ハロゲン化剤はPClである。
【0037】
ある特定の実施形態では、RSONaの構造を有する試薬(ここで、Rは、C1〜4ハロアルキルである)を、CFSONaの代わりに使用することができる。したがって、本発明は式IAおよびIIAの化合物

を調製する方法を提供する。
【0038】
ある特定の実施形態では、本発明の方法の段階b)は、スルホン(IVA)

の形成がほとんど起こらないまたは起こらないように実施される。
【0039】
ある特定の例示的な実施形態では、RはC1〜3ハロアルキル基を表す。ある特定の例示的な実施形態では、RはC1〜2ハロアルキル基を表す。ある特定の例示的な実施形態では、Rはハロメチル基である。ある特定の他の例示的な実施形態では、RはCFである。
【0040】
ある特定の実施形態では、この方法は、アミンが一級、二級または三級アミンであるアミン塩の存在下で実施される。例えば、アミン塩は、メチルアミン塩、エチルアミン塩、プロピルアミン塩、イソプロピルアミン塩、ピリジン塩、ジメチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリメチルアミン塩またはトリエチルアミン塩であってもよい。ある特定の実施形態では、アミン塩は塩酸塩である。ある特定の実施形態では、アミン塩はスルホン酸塩である。ある特定の例示的な実施形態では、アミン塩は、メチルスルホン酸塩(メシレート)、ベンゼンスルホン酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩(PTSA、トシレート塩)である。ある特定の例示的な実施形態では、この方法は、ジメチルアミントシレート塩(NHMe・PTSA)の存在下で実施される。
【0041】
ある特定の実施形態では、アミン塩と式IIIの化合物の間のモル比は、<1である(アミン塩は、触媒量で使用される)。ある特定の例示的な実施形態では、アミン塩と式IIIの化合物の間のモル比は、1.0から2.0の間、好ましくは1.0から1.9の間、より好ましくは1.0から1.8の間、より好ましくは1.0から1.7の間、より好ましくは1.0から1.6の間、最も好ましくは1.0から1.5の間である。
【0042】
この方法は、種々の溶媒、または溶媒の混合物中で実施してもよい。関与する様々な試薬および/または化合物の反応を可能にする任意の溶媒または溶媒の混合物を使用してもよい。例えば、この溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−テトラヒドロフラン(MeTHF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの2つ以上の組合せから選択してもよい。他の実施形態では、溶媒は、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、DMF、THF、クロロホルム、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはCCl、あるいはこれらの2つ以上の組合せから選択してもよい。溶媒の混合物を使用してもよく、この溶媒は、極性が異なっていてもよい。例えば、トルエンとDMFの混合物を使用してもよい。
【0043】
ある特定の実施形態では、反応の進行を例えば、分光手段(例えば、H NMR、13C NMRおよび/またはLCMS)ならびに/あるいはクロマトグラフ手段(例えば、HPLCおよび/またはTLC)によって監視してもよい。例えば、反応混合物アリコートを反応全体にわたり周期的にサンプリングし、分析して、変換比[式IIIの化合物]/[式Iの化合物]を決定してもよい。
【0044】
本発明の第2の態様、および本発明の第3の態様の段階b)に関する実施形態
チオエーテル(I)または(IA)のそれぞれ対応するスルホキシド(II)または(IIa)への選択的酸化を引き起こす任意の酸化剤または条件を、チオエーテル(I)(または(IA))を対応するスルホキシドに選択的に酸化するために使用してもよい。
【0045】
ある特定の実施形態では、選択的酸化剤は、H/TfOであってもよい。当業者であれば、本発明の方法の段階b)を実施するために、非特許文献3に記載された方法および反応条件を適合させることができる。例示的な(しかし、限定的ではない)方法は、以下の実施例9に記載されている。
【0046】
ある特定の他の実施形態では、選択的酸化剤は、シクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシドであってもよい。当業者であれば、本発明の方法の段階b)を実施するために、特許文献4に記載された方法および反応条件を適合させることができる。例示的な(しかし、限定的ではない)方法は、以下の実施例10に記載されている。
【0047】
ある特定の他の実施形態では、選択的酸化剤は硝酸セリウムアンモニウム(CAN)および臭素酸ナトリウム(NaBrO)であってもよい。当業者であれば、本発明の方法の段階b)を実施するために、非特許文献5に記載された方法および反応条件を適合させることができる。例示的な(しかし、限定的ではない)方法は、以下の実施例11に記載されている。
【0048】
ある特定の他の実施形態では、選択的酸化剤は、テトラクロロ金(III)酸水和物の存在下、Hであってもよい。当業者であれば、本発明の方法の段階b)を実施するために、非特許文献6に記載された方法および反応条件を適合させることができる。例示的な(しかし、限定的ではない)方法は、以下の実施例12に記載されている。
【0049】
ある特定の他の実施形態では、選択的酸化剤は、適切な条件下、MHSO(ここで、Mはアルカリ金属カチオンである)であってもよい。
【0050】
パラグラフ[0065]から[0080]は、選択的酸化剤がMHSO(ここで、Mはアルカリ金属カチオンである)である実施形態に関する。
【0051】
当業者であれば理解するように、KHSOの存在下、式Iの化合物を酸化する段階は、反応条件が好都合の場合、(式IVの)対応するスルホン

の形成を引き起こす可能性がある。
【0052】
しかしながら、反応条件の慎重な制御は、所望の式IIのスルフィニル化化合物(フィプロニル)の選択的形成を可能にする。例えば、使用するMHSOの量、反応温度、オキソンの添加速度、反応時間および/または溶媒系などの1つまたは複数のパラメータの制御は、酸化反応を対応する式IVのスルホンに優先して、式IIの化合物の選択的形成に方向付けるのを援助することができる。
【0053】
MHSOの量は、過剰では対応するスルホン(式IVの化合物)の形成を引き起こし、一方、不足では不完全な変換を引き起こし、どちらの場合も不純な最終生成物が得られるので、酸化反応に影響を与える。したがって、この反応段階を実施するのに使用されるMHSOのモル量は、適正な注意が払われる。ある特定の実施形態では、式Iの化合物およびMHSOは、1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.8、より好ましくは1.0〜1.6、最も好ましくは1.0〜1.4にわたる化合物I/MHSOのモル比で使用される。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSO(オキソン)である。
【0054】
ある特定の実施形態では、対応する式IVのスルホンに優先する、フィプロニルの選択的形成が、反応温度を制御することによって全体または一部として達成される。したがって、ある特定の実施形態では、酸化反応は、−20℃〜−10℃、好ましくは−15℃〜−10℃にわたる温度で実施される。ある特定の例示的な実施形態では、酸化反応は−20℃〜−5℃にわたる温度で実施される。ある特定の例示的な実施形態では、酸化反応は−15℃±3℃で実施される。
【0055】
ある特定の実施形態では、対応する式IVのスルホンに優先する、フィプロニルの選択的形成が、式Iの化合物を含む反応混合物へのMHSOの添加速度を制御することによって全体または一部として達成される。したがって、ある特定の実施形態では、式Iの化合物を酸化する段階において、MHSOを少しずつ添加する。ある特定の例示的な実施形態では、反応温度を−20℃から−10℃、より好ましくは−15℃から−10℃の間、最も好ましくは約−10℃に維持しながら、MHSOを少しずつ添加する。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSOであり、反応温度を約−10℃に維持しながら、KHSOの添加を分けて実施する。
【0056】
ある特定の実施形態では、対応する式IVのスルホンに優先する、フィプロニルの選択的形成が、酸化段階b)を実施するのに使用される溶媒系を制御することによって全体または一部として達成される。
【0057】
例えば、ある特定の例示的な実施形態では、溶媒は、トリフルオロ酢酸(TFA)または酢酸などの有機酸を含む。ある特定の例示的な実施形態では、有機酸はトリフルオロ酢酸(TFA)である。ある特定の例示的な実施形態では、TFAが、溶媒としてまたは溶媒系の一部として使用される場合、反応温度を−20℃から−10℃、より好ましくは−15℃から−10℃の間、最も好ましくは約−10℃に維持しながら、MHSOを少しずつ添加する。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSOであり、反応温度を約−10℃に維持しながら、KHSOの添加を分けて実施する。反応時間は、実験的に最適化してもよい。ある特定の例示的な実施形態では、TFAが、溶媒としてまたは溶媒系の一部として使用される場合、酸化段階b)は、例えば上記の温度範囲で、6〜12時間、より好ましくは8〜12時間、最も好ましくは約8時間にわたる期間実施することができる。
【0058】
他の実施形態では、溶媒は、テトラフルオロプロパノール(TFP)などのハロゲン化アルコールを含む。ある特定の例示的な実施形態では、溶媒はTFPである。一般に、TFPが、溶媒としてまたは溶媒系の一部として使用される場合、酸化段階b)を25から55℃の間、より好ましくは25から45℃の間、最も好ましくは25から30℃の間で実施することができる。反応時間は、実験的に最適化してもよい。ある特定の例示的な実施形態では、TFPが溶媒として、または溶媒系の一部として使用される場合、MHSOを少しずつ添加してもよく、酸化段階b)を例えば上記の温度範囲で、24〜72時間、より好ましくは24〜48時間実施することができる。反応条件(例えば、オキソンの添加温度、反応時間および/または温度)を実験的に最適化してもよい。
【0059】
ある特定の実施形態では、対応する式IVのスルホンに優先する、フィプロニルの選択的形成が、酸化反応時間(即ち、MHSO(例えば、オキソン、またはKHSO)を式Iの化合物と反応させる時間)を制御することによって全体または一部として達成される。したがって、ある特定の実施形態では、式Iの化合物を酸化させる段階において、酸化反応が約−15℃で実施される場合、MHSOを式Iの化合物と6〜12時間、より好ましくは8〜12時間、最も好ましくは約8時間にわたる期間反応させる。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSOであり、酸化反応を約−15℃で約8時間実施する。
【0060】
ある特定の実施形態では、対応する式IVのスルホンに優先する、フィプロニルの選択的形成は、(i)使用するMHSOの量、(ii)反応温度、(iii)式Iの化合物を含む反応混合物へのMHSOの添加速度および(iv)酸化反応時間(即ち、MHSOを式Iの化合物と反応させる時間)を制御することによって、全体または一部として達成される。
【0061】
したがって、ある特定の実施形態では、式Iの化合物を酸化する段階において、TFAなどの有機酸を溶媒として、または溶媒系の一部として使用し、ならびに
(i)式Iの化合物およびMHSOは、1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.8、より好ましくは1.0〜1.6、最も好ましくは1.0〜1.4にわたる化合物I/MHSOのモル比で使用される。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSO(オキソン)であり;
(ii)酸化反応を−20℃〜−10℃、好ましくは−15℃〜−10℃にわたる温度、最も好ましくは約−15℃で実施し;
(iii)反応温度を−20℃から−10℃、より好ましくは−15℃から−10℃の間、最も好ましくは約−10℃に維持しながら、MHSOを少しずつ添加し;
(iv)MHSOを式Iの化合物と、6〜12時間、より好ましくは8〜12時間にわたる期間、最も好ましくは約8時間反応させる。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSOであり、酸化反応を約−15℃で約8時間実施する。
【0062】
ある特定の実施形態では、酸化する段階をトリフルオロ酢酸(TFA)または酢酸などの有機酸の存在下で実施する。ある特定の例示的な実施形態では、有機酸はトリフルオロ酢酸(TFA)である。
【0063】
ある特定の実施形態では、有機酸をMHSOのモル量に対して、大過剰(>10当量)で使用する。ある特定の例示的な実施形態では、有機酸はTFAである。
【0064】
ある特定の他の実施形態では、式Iの化合物を酸化する段階において、TFPなどのハロゲン化アルコールを溶媒として、または溶媒系の一部として使用し、ならびに
(i)式Iの化合物およびMHSOを1.0〜2.0、好ましくは1.0〜1.8、より好ましくは1.0〜1.6、最も好ましくは1.0〜1.4にわたる化合物I/MHSOのモル比で使用する。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSO(オキソン)であり;
(ii)酸化反応を25および55℃の間、より好ましくは25および45℃の間、最も好ましくは25および30℃の間にわたる温度で実施し;
(iii)反応温度を−20℃から−10℃、より好ましくは−15℃から−10℃の間、最も好ましくは約−10℃に維持しながら、MHSOを少しずつ添加し;
(iv)MHSOを式Iの化合物と、24〜72時間、より好ましくは24〜48時間にわたる期間反応させる。ある特定の例示的な実施形態では、MHSOはKHSOであり、酸化反応を約27〜30℃で約48時間実施する。
【0065】
一般に、選択的酸化剤に関するすべての上記実施形態に適用されるように、この方法の段階b)は、種々の溶媒、または溶媒の混合物中で実施されてもよい。関与する様々な試薬および/または化合物の反応を可能にする、任意の溶媒または溶媒の混合物を使用してもよい。例えば、溶媒は、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、テトラヒドロフラン(THF)、2−メチル−テトラヒドロフラン(MeTHF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、トルエン、ベンゼン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、またはこれらの2つ以上の組合せから選択してもよい。他の実施形態では、溶媒は、n−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、DMF、THF、クロロホルム、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはCCl、またはこれらの2つ以上の組合せから選択してもよい。溶媒の混合物を使用してもよく、この溶媒は極性が異なっていてもよい。ある特定の実施形態において、TFAなどの有機酸が溶媒として使用される。
【0066】
ある特定の実施形態では、選択的酸化剤に関するすべての上記実施形態に適用されるように、酸化反応の進行を例えば、分光手段(例えば、H NMR、13C NMRおよび/またはLCMS)ならびに/あるいはクロマトグラフ手段(例えば、HPLCおよび/またはTLC)によって監視してもよい。例えば、反応混合物アリコートを反応全体にわたり周期的にサンプリングし、分析して、変換比[式Iの化合物]/[式IIの化合物]を決定し、および/または望ましくない式IVのスルホンの存在/形成を監視してもよい。
【0067】
ある特定の実施形態では、選択的酸化剤に関するすべての上記実施形態に適用されるように、本発明の方法によって得られたフィプロニル(式IIの生成物)を適切な溶媒中で再結晶してもよい。例えば、フィプロニルをトルエン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、またはこれらの2つ以上の組合せなどの適切な溶媒系から再結晶してもよい。ある特定の例示的な実施形態では、フィプロニルをトルエンから再結晶する。
【0068】
ある特定の実施形態では、選択的酸化剤に関するすべての上記実施形態に適用されるように、本発明の方法は、純度>95.0%、より好ましくは≧95.1%、さらに好ましくは≧95.3%、さらに好ましくは≧95.5%、さらに好ましくは≧95.7%、さらに好ましくは≧95.9%、さらに好ましくは≧96.0%、さらに好ましくは≧96.5%、さらに好ましくは≧97.0%、さらに好ましくは≧97.5%、さらに好ましくは≧98.0%、さらに好ましくは≧98.5%、さらに好ましくは≧99.0%、さらに好ましくは≧99.1%、さらに好ましくは≧99.2%、さらに好ましくは≧99.3%、さらに好ましくは≧99.4%、さらに好ましくは≧99.5%、さらに好ましくは≧99.6%、さらに好ましくは≧99.7%、さらに好ましくは≧99.8%、さらに好ましくは≧99.9%でフィプロニルの調製を可能にする。ある特定の例示的な実施形態では、本発明の方法によって得られるフィプロニルは、97から98%にわたる純度を有する。ある特定の実施形態では、この純度をHPLCによって評価する。
【0069】
別の態様では、選択的酸化剤に関するすべての上記実施形態に適用されるように、本発明の方法によって得られる式IIAの化合物を提供する。ある特定の実施形態では、本発明の方法によって得られる式IIAの化合物は、>95.0%、より好ましくは≧95.1%、さらに好ましくは≧95.3%、さらに好ましくは≧95.5%、さらに好ましくは≧95.7%、さらに好ましくは≧95.9%、さらに好ましくは≧96.0%、さらに好ましくは≧96.5%、さらに好ましくは≧97.0%、さらに好ましくは≧97.5%、さらに好ましくは≧98.0%、さらに好ましくは≧98.5%、さらに好ましくは≧99.0%、さらに好ましくは≧99.1%、さらに好ましくは≧99.2%、さらに好ましくは≧99.3%、さらに好ましくは≧99.4%、さらに好ましくは≧99.5%、さらに好ましくは≧99.6%、さらに好ましくは≧99.7%、さらに好ましくは≧99.8%、さらに好ましくは≧99.9%の純度を有する。ある特定の例示的な実施形態では、本発明の方法によって得られる式IIAの化合物は、97から98%にわたる純度を有する。ある特定の実施形態では、この純度をHPLCによって評価する。
【0070】
第4の態様において、治療用使用の駆虫用組成物の調製のための、本明細書に記載の方法によって得られたフィプロニルの使用を提供する。
【0071】
第5の態様において、治療用使用の駆虫用組成物の調製のための、本明細書に記載の方法の使用を提供する。詳細には、本発明の第3の態様の様々な実施形態に記載された方法を実施する段階と、前記方法によって得られたフィプロニルを薬剤として許容される担体、補助剤またはビヒクルと混合する段階とを含む駆虫薬を製造する方法を提供する。
【0072】
上記第4および第5の態様のある特定の実施形態では、この駆虫用組成物は、獣医学の用途のために使用される。ある特定の実施形態では、この駆虫用組成物は、ネコおよびイヌなどの家畜を処理するために使用される。ある特定の例示的な実施形態では、本発明の方法によって得られるフィプロニルは、ネコおよびイヌなどの家畜おけるノミおよびマダニなどの害虫を予防または根絶するための駆虫剤として使用される。
【0073】
本発明の方法は、既知の方法と比較していくつかの利点を有する。
【0074】
第1に、この方法は、式Iのチオエーテル中間体を技術的により容易に入手する機会を得ることを可能にする。このチオエーテルを調製する既知の方法は、典型的には、気体の、揮発性の、高価なおよび不安定なトリフルオロメチルスルフェニルクロリド(CFSCl)を使用することを伴う。対照的に、本発明の方法は、技術的により安全であり、およびガスの収納のための圧力設備の使用を必要としない試薬を使用する。
【0075】
第2に、<3.5%、好ましくは<2.5%の過酸化を伴う式Iのチオエーテル中間体を好都合に入手する可能性は、それ自体として利点である。特に、本発明者らは、スルホキシドは、一般により反応性であり、式IVの化合物までより酸化されやすく、これは望ましくない(<3.5%、好ましくは<2.5%)ことに注目する。したがって、本発明の方法は、より安定なスルフィドの形態でフィプロニルの貯蔵を可能にするものと見ることができる。したがって、本発明の方法は、フィプロニルを、最終酸化段階を実施するまでそのより安定なスルフィドの形態で調製し、貯蔵することができるので、大量のフィプロニルが、限定された(生成物の分解に起因する)損失で調製することができるという経済的利点をもたらす。
【0076】
第3に、本発明の方法は、高純度(例えば、≧96%)でのフィプロニルの調製を可能にする。したがって、この駆虫剤の合成は、その純度レベルが決定的ではない農業および/または園芸用使用とは対照的に、特に治療用使用に適している。
【0077】
最後に、本発明の方法は、優れた収率でフィプロニルの調製を可能にする。
【0078】
要約すると、本発明の方法は、実行可能および効率的な工業的プロセスに必要なすべての必須の特徴を有する。したがって、当技術分野で既知の他の方法とは異なり、本発明の方法は、特に「治療等級」フィプロニル(即ち、治療用使用に適している十分に純粋なフィプロニル)の大量生産に適している。
【0079】
上で論じたように、本発明は、駆虫薬として使用するための、本発明の方法によって得られるフィプロニルを含む組成物を提供する。したがって、本発明の別の態様では、組成物が、本明細書に記載の本発明の方法によって得られるフィプロニルを含み、薬剤として許容される担体、補助剤またはビヒクルを場合によって含む薬剤として許容される組成物を提供する。ある特定の実施形態では、これらの組成物は、1種または複数の追加の治療薬を場合によってさらに含む。
【0080】
上記のように、本発明の薬剤として許容される組成物は、薬剤として許容される担体、補助剤またはビヒクルをさらに含み、本明細書で使用される場合、これには、所望の特定の剤形に適合する、溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤または乳化剤、防腐剤、固体結合剤、滑沢剤等の任意のおよびすべてのものが含まれる。Remington’s Pharmaceutical Sciences、第16版、E.W.Martin(Mack Publishing Co.、Easton、Pa.、1980[非特許文献8])には、薬剤として許容される組成物を処方するのに使用される様々な担体、およびこれらの調製のための既知の技術を開示している。任意の従来の担体媒体が、任意の望ましくない生物学的作用を生じさせるまたはさもなければ薬剤として許容される組成物の任意の他の成分(複数可)と有害な方法で相互作用するなど、本発明の化合物と適合性がない範囲にあるものを除いて、その使用は本発明の範囲内であるものと企図される。薬剤として許容される担体としての機能を果たすことのできる材料のいくつかの例には、限定するものではないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝剤物質、グリシン、ソルビン酸、またはソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分的グリセリド混合物、水、プロタミン硫酸塩、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩などの塩または電解質、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロックポリマー、羊毛脂、ラクトース、グルコースおよびスクロースなどの糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロースなどのセルロースおよびその誘導体;粉末状トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐薬用ロウなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油;ベニバナ油;ゴマ油;オリーブ油;トウモロコシ油および大豆油などの油;プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張性生理食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、ならびにリン酸塩緩衝液が含まれ、ならびにラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性相溶性滑沢剤、ならびに着色剤、離型剤、被覆剤、甘味料、香味料および香料、防腐剤および酸化防止剤も、調剤者の判断により、組成物中に存在させることができる。
【0081】
本発明の組成物の局所または経皮投与用剤形には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入薬またはパッチが含まれる。この活性成分(フィプロニル)は、通常、無菌条件下、薬剤として許容される担体、および必要に応じて任意の必要な防腐剤または緩衝剤と混合される。
【0082】
治療キット
他の実施形態では、本発明は、本発明による方法を好都合におよび有効に実施するためのキットに関する。一般に、薬剤パックまたはキットは、本発明の薬剤組成物の1種または複数の成分で充填された1つまたは複数の容器を含む。このようなキットは、液体の局所用形態の配送に特に適している。このようなキットは、好ましくは、いくつかの単位剤形を含み、これらの使用目的の順に並べた投与量を有するカードを含んでもよい。必要に応じて、例えば、数値、文字、または他のマーキングの形態の記憶の補助具を、あるいは用量を投与することができる治療スケジュールの日にちを示すカレンダーの差込物と共に提供することができる。このような容器(複数可)に場合によって付随するものは、医薬品の製造、使用または販売を管理する行政機関によって規定された書式の注意書であることができ、この注意書は、動物への投与のための製造、使用または販売の同機関による承認を示す。
【0083】
等価物
以下の代表例は、本発明を例示するものとし、本発明の範囲を限定するものではなく、またはそのように解釈するべきではない。実際、本明細書に示され、記載されたものに加えて、以下の実施例および本明細書に引用された科学的および特許文献の参照を含むこの文書のすべての内容から、当業者であれば本発明の様々な修正およびこれらの多くの他の実施形態が明らかになる。これらの引用された参考文献の内容は、現況技術を例示するのを援助するために参照により本明細書に組み込むものとさらに理解するべきである。
【0084】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態およびこれらの等価物における本発明の実施に適応することが可能な、重要な追加の情報、例示およびガイダンスを含む。
【0085】
例示
本発明の方法、および実施するためのその縮小の方式は、以下の実施例によってさらに理解することができる。しかし、これらの実施例は、本発明を限定しないものと理解される。現在知られているまたはさらに明らかになる本発明の変形は、本明細書に記載の通りおよび以下に特許請求されるように、本発明の範囲に含まれるものと考えられる。
【実施例1】
【0086】
CFSONaの工業規模の精製
500Lの反応器中に、市販のCFSONa75.0kg、続いて酢酸エチル210kgを加えた。得られた混合物を25±5℃で1時間撹拌した。ケイ素ゲル(10.7kg)を添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いで遠心分離によってろ過した。このフィルターケーキ(残留物)を200L反応器に加え、酢酸エチル76.3kgを添加した。得られた混合物を25±5℃で1時間撹拌し、次いで遠心分離によってろ過した。フィルターケーキ(残留物)を反応器中に再導入し、この手順(酢酸エチルおよびろ過)を、酢酸エチル76.3kgを用いてもう一度反復した。この洗浄プロセスを2〜3回反復した。
【0087】
ろ液を合わせ、純粋な脱イオン水106.6kgを加えた。得られた混合物を50±5℃まで加熱し、この温度で30分間撹拌し、次いで室温まで冷却した。有機層を分離し、水106.6kgを加えた。得られた混合物を50±5℃まで加熱し、この温度で30分間撹拌し、次いで20±5℃まで冷却した。この水層と有機層を分離した。合わせた水層を1度にCHCl73.5kgで3回に分けて抽出した。有機層を減圧下、70℃で濃縮した。残渣にトルエン(100.0kg)を添加した。得られた混合物を真空下70℃で蒸留し、残留する水を分離して除いた。残渣にトルエン84.0kgを添加した。CFSONaをトルエン中の溶液として貯蔵した。
【実施例2】
【0088】
触媒PTSA−NHMeの工業規模の調製
200L反応器中にPTSA70.0kgを加えた。MeNH(5805g、30%水溶液)を、25±5℃で滴下で添加した。得られた溶液をこの温度で1時間撹拌した。次いでこの溶液を真空下、70±5℃で濃縮した。残渣にトルエン(100.0kg)を添加した。残留する水を真空下、70±5℃で共沸蒸留によって除去した。さらなる残留水がもはや分離し得ない場合、この混合物を20±5℃まで冷却し、圧力窒素パージを用いて1.0mm多孔質チタン合金ろ過カートリッジでろ過した。フィルターケーキを真空下、70±5℃で乾燥させた。
【実施例3】
【0089】
式Iの化合物の工業規模の調製
200L反応器中に、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル(式IIIの化合物)12.0kg、実施例1で得られたCFSONa11.7kg、実施例2で得られた触媒PTSA・NHMe12.4kg、およびトルエン90.8kgを加えた。得られた混合物を室温で(25+/−5℃)で15分間撹拌し、DMF0.11kgを添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。この混合物を0±2℃まで冷却し、PCl(5.1g)をこの温度で滴下で添加した。得られた混合物を0±2℃で1時間撹拌した。次いで、これを室温まで加温し、20±5℃で1時間撹拌した。次いで、この混合物を約65〜70℃まで加熱し、この温度で8時間撹拌した。
【0090】
水(48.0kg)および酢酸エチル16.1kgを添加した。得られた混合物を30分間撹拌し、室温で冷却し、分離させた。有機層を真空下、65℃で濃縮した。残渣にトルエン(31.1kg)を添加した。得られた混合物を90±5℃まで加熱し、次いで、緩徐に約10〜15℃まで冷却し、この温度で2時間撹拌した。この混合物をろ過し、フィルターケーキを真空下、60±2℃で乾燥させた。この粗生成物の純度が<96%であった場合は、これをトルエンから再結晶した。
【実施例4】
【0091】
式IIの化合物の工業規模の調製
100L反応器中に、実施例3で得られた粗生成物(または再結晶した生成物)10.0kgおよびTFA74.0kgを加えた。得られた混合物を15分間撹拌し、次いで、−15℃まで冷却した。オキソン(13.9kg)を−15±5℃で少しずつ添加した。得られた混合物をこの温度で、反応混合物中の出発材料(式Iの化合物)の量が≦1.5%になるまで、または反応混合物中に検出される対応するスルホン(式IVの化合物)の量が≧2%になるまで撹拌した。次いで、反応混合物を脱イオン水220kg中のNaSO12.0kgの冷たい(−20〜−10℃)溶液中に注いだ。得られた混合物を30分間撹拌し、次いでろ過した。ペルオキシドの存在をKI+デンプン試験紙で点検した。フィルターケーキに酢酸エチル(44.8kg)および水30.0kgを加えた。得られた混合物を30分間撹拌した。次いで、この混合物のpHをNaCOの飽和水溶液で約8〜9に調整した。水層を分離し、酢酸エチル26.9kgで1回抽出した。合わせた有機層をブライン40.0kgで洗浄した。有機層を分離し、真空下、50℃で濃縮した。残渣にCHCl(40.0kg)を添加した。混合物を35±5℃で3時間撹拌した。次いで、これを10±5℃まで冷却し、2時間撹拌し、次いでろ過した。フィルターケーキにトルエン(73.5kg)を添加した。得られた混合物を還流加熱し(約105℃)、ろ過し、次いで約10〜15℃まで緩徐に冷却し、この温度で2時間撹拌した。混合物をろ過し、フィルターケーキを真空下、60±5℃で乾燥させた。この粗生成物の純度が<96%であった場合は、トルエン中で再結晶して、純度を>96%に上昇させた。50%の全体的収率が得られた。
【実施例5】
【0092】
CFSONaの実験室規模の精製
温度計および機械的撹拌機を装備した10L四口フラスコ中に、市販のCFSONa1.759kg、続いて酢酸エチル5.50Lを加えた。得られた混合物を20±5℃で1時間撹拌した。ケイ素ゲル(250g)を添加した。得られた混合物を15分間撹拌し、次いでろ過した。フィルターケーキ(残留物)をフラスコに加え、酢酸エチル2.0Lを添加した。得られた混合物を20±5℃で1時間撹拌し、次いでろ過した。合わせたろ液に水2.50Lを加えた。得られた混合物を50±5℃まで加熱し、この温度で30分間撹拌し、次いで20±5℃まで冷却した。有機層を分離し、水2.50Lを加えた。得られた混合物を50±5℃まで加熱し、この温度で30分間撹拌し、次いで20±5℃まで冷却した。水層と有機層を分離した。合わせた水層をCHCl1.30Lで抽出した。有機層を減圧下、72℃で濃縮した。残渣にトルエン(1.00L)を添加した。得られた混合物を真空下、72℃で共沸蒸留して、CFSONa767.7gを得た(72.7%)。
【実施例6】
【0093】
触媒PTSA−NHMeの実験室規模の調製
温度計、滴下漏斗および機械的撹拌機を装備した2L四口フラスコ中に、PTSA500.0gを加えた。MeNH(418.0g、30%水溶液)を25±5℃で滴下で添加した。得られた溶液をこの温度で1時間撹拌した。次いで溶液を真空下、70±5℃で濃縮した。残渣にトルエン(300.0mL)を添加した。残留する水を真空下、70±5℃で共沸蒸留によって除去した。この蒸留をトルエン160.0mLと共に反復した。残渣にイソプロピルアルコール(IPA)160mLを添加した。得られた混合物を90℃まで加熱し、この温度で(90±5℃)1.5時間撹拌した。4℃まで冷却した後、混合物をろ過した。フィルターケーキを真空下、65±5℃で乾燥させて、所望の生成物561.1gを得た(収率98.3%)。
【実施例7】
【0094】
式Iの化合物の実験室規模の調製
温度計、滴下漏斗および機械的撹拌機を装備した3L四口フラスコ中に、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル(式IIIの化合物)200g、実施例5で得られたCFSONa194.4g、実施例6で得られた触媒PTSA・NHMe206.2g、およびトルエン1750mLを加えた。得られた混合物を室温(25+/−5℃)で15分間撹拌し、DMF2.00mLを添加した。得られた混合物を室温で30分間撹拌した。混合物を0±2℃まで冷却し、PCl(85.0g)をこの温度で滴下で添加した。得られた混合物を0±2℃で1時間撹拌した。次いで、これを室温まで加温し、20±5℃で1時間撹拌した。次いで混合物を70℃±5℃まで加熱し、この温度で6時間撹拌した。
【0095】
水(800mL)および酢酸エチル300mLを加えた。得られた混合物を30分間撹拌し、室温で冷却し、分離した。有機層を真空下、50℃で濃縮して、残渣350.7gを得た。残渣にトルエン(600mL)を添加した。得られた混合物を90±5℃まで加熱し、次いで約10〜15℃まで緩徐に冷却し、この温度で2時間撹拌した。混合物をろ過し、フィルターケーキを真空下、60±2℃で乾燥させて、所望の生成物181.7gを得た(収率66.7%、純度97.7%)。
【0096】
この反応は、種々の他の溶媒中でも優れた収率で実施された。例えば、チオエーテル(I)は、DMFがn−ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、キシレン、tert−ブチルメチルエーテル(TBME)、THF、クロロホルム、酢酸エチル、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、アセトニトリルまたはCClで置換された上記の実験的プロトコルを用いて、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−(トリフルオロメチル)フェニル)−1H−ピラゾール−3−カルボニトリル(式IIIの化合物)から調製することができる。
【実施例8】
【0097】
酸化剤としてオキソンを用いた式IIの化合物の実験室規模の調製
温度計および機械的撹拌機を装備した1L四口フラスコ中に、実施例7で得られた粗生成物100gおよびTFA700mLを加えた。得られた混合物を15分間撹拌し、次いで−15℃まで冷却した。オキソン(139.3g)を−15±5℃で少しずつ添加した。得られた混合物をこの温度で、反応混合物中の出発材料(式Iの化合物)の量が≦1.5%になるまで、または反応混合物中に検出される対応するスルホン(式IVの化合物)の量が≧2%になるまで撹拌した。次いで反応混合物を水2200g中のNaSO120gの冷たい(−20〜−10℃)溶液中に注いだ。得られた混合物を30分間撹拌し、次いでろ過した。フィルターケーキに酢酸エチル(500mL)および水300mLを加えた。得られた混合物を30分間撹拌した。次いで混合物のpHをNaCOの飽和水溶液を用いて8に調整した。水層を分離し、酢酸エチル300mLで1回抽出した。合わせた有機層をブライン400mLで洗浄した。有機層を分離し、真空下、50℃で濃縮した。残渣にトルエン(850mL)を添加した。得られた混合物を還流加熱し(約105℃)、ろ過し、次いで約10〜15℃まで緩徐に冷却し、この温度で2時間撹拌した。混合物をろ過し、フィルターケーキを真空下、60±2℃で乾燥させた。この生成物にCHCl(200mL)を添加した。混合物を25〜35℃で2時間撹拌し、次いでろ過した。この生成物にCHCl(300mL)を添加した。混合物を25〜35℃で1時間撹拌し、次いでろ過した。この生成物にCHCl(250mL)を添加した。混合物を25〜35℃で5時間撹拌し、次いでろ過し、真空下、50℃で乾燥させて、所望の生成物56.8gを得た(収率55.4%、純度97.1%)。
【実施例9】
【0098】
酸化剤としてH/TfOを用いた式IIの化合物の実験室規模の調製

【0099】
滴下漏斗、還流凝縮器、機械的撹拌機、温度計および不活性ガス供給源を装備した、0.5リットル三口丸底フラスコ中で、チオエーテル(I)16.84g(40mmol)を窒素下、エタノール200ml中に溶解し、30%過酸化水素水溶液8.0ml(80mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物3.3ml(20mmol)で処理した。得られた混合物を、温度を18〜22℃の範囲に維持しながら、TLC分析によって溶液中に出発材料(I)が検出されなくなるまで20分間撹拌した。反応混合物に、水(脱イオンした)200mlを加え、混合物を酢酸エチル100mlで4回抽出した(酢酸エチル総計400ml)。合わせた有機抽出物を硫酸ナトリウム約50gで乾燥させ、ろ過し、蒸発乾燥させて、フィプロニル(II)15.1g(86%)を得た。
【0100】
反応条件(例えば、使用するEtOHの量、反応時間等)、収率および純度を実験的に最適化してもよい。
【実施例10】
【0101】
酸化剤としてシクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシド系を用いた式IIの化合物の実験室規模の調製

【0102】
a)シクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシドの調製
滴下漏斗、還流凝縮器、機械的撹拌機、温度計および不活性ガス供給源を装備した0.5リットル三口丸底フラスコ中で、窒素下、ヨウ素1.02g(4mmol)をアセトニトリル200ml中に溶解し、シクロヘキサノン3.92g(40mmol)および30%過酸化水素水溶液18.1ml(160mmol)で処理した。得られた反応混合物を室温で24時間撹拌した。TLCによって監視して反応の完了後、溶媒を減圧下で除去し、水(脱イオンした)200mlを加え、混合物をジクロロメタン200mlで3回抽出した(ジクロロメタン総計600ml)。合わせた有機層を硫酸ナトリウム50gで乾燥させ、ろ過し、蒸発乾燥させて、試薬シクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシド5.50g(93%)を得た。
【0103】
大規模な反応に対しては、試薬シクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシドの熱的安定性を含む安全面を十分に試験するべきである。
【0104】
b)2の酸化反応
滴下漏斗、還流凝縮器、機械的撹拌機、温度計および不活性ガス供給源を装備した250ml三口丸底フラスコ中で、ジクロロメタン150ml中のチオエーテル(I)8.42g(20mmol)の溶液をシクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシド2.96g(20mmol、aで調製)で処理した。反応混合物を、TLC分析によって証明してすべての出発材料(I)が反応するまで60分間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を蒸発乾燥させて、フィプロニル(II)7.9g(90%)を得た。
【0105】
反応条件(例えば、反応時間等)、収率および純度を実験的に最適化してもよい。
【実施例11】
【0106】
酸化剤としてCANで触媒された系を用いた式IIの化合物の実験室規模の調製

【0107】
滴下漏斗、還流凝縮器、機械的撹拌機、温度計および不活性ガス供給源を装備した0.5リットル三口丸底フラスコ中で、シリカゲル(無水)50gを水(脱イオンした)20ml中の硝酸セリウムアンモニウム1.10g(CAN、2mmol)および臭素酸ナトリウム3.32g(NaBrO、22mmol)の溶液で5分間の滴下で処理し、淡黄色−橙色に着色した自由に流動する固体が得られるまで激しく撹拌した。ジクロロメタン200mlを添加した後、撹拌した不均一な混合物にジクロロメタン50ml中のチオエーテル(I)8.42g(20mmol)の溶液を10分間にわたって滴下で添加して、黄色−橙色は瞬時に消滅した。TLC分析によって証明してすべての出発材料(I)が反応するまで、反応混合物を20分間撹拌した。反応の完了後、混合物をろ過し、フィルターケーキをジクロロメタン600mlで洗浄した。合わせたろ液を蒸発乾燥させて、フィプロニル(II)7.9g(90%)を得た。
【0108】
反応条件(例えば、反応時間等)、収率および純度を実験的に最適化してもよい。
【実施例12】
【0109】
金(III)で触媒された酸化を用いた式IIの化合物の実験室規模の調製

【0110】
滴下漏斗、還流凝縮器、機械的撹拌機、温度計および不活性ガス供給源を装備した200ml三口丸底フラスコ中で、メタノール10ml中のチオエーテル(I)8.42g(20mmol)を、窒素下、撹拌しながらテトラクロロ金(III)酸水和物82mg(HAuCl×4HO、0.2mmol)で処理した。反応混合物に、30%過酸化水素水溶液4.08ml(40mmol)を添加し、反応混合物を、TLCによって監視してすべての出発材料(I)が消滅するまで、室温で1時間撹拌した。反応の完了後、反応混合物を酢酸エチル60mlで3回(総計180mlで)抽出した。合わせた有機抽出物を水(脱イオンした)100mlで洗浄し、硫酸ナトリウム約50gで乾燥させ、ろ過し、蒸発乾燥させて、フィプロニル(II)7.9g(90%)を得た。
【0111】
反応条件(例えば、反応時間等)、収率および純度を実験的に最適化してもよい。
【比較例13】
【0112】
既知の方法による、N−フェニルピラゾール出発材料(III)の直接スルフィニル化を試験した。したがって、POCl、SOClまたはPBrなどのハロゲン化剤の存在下、CFSONaを用いてスルフィニル化を試みた。

試験した反応試薬および条件を以下の表Iに示す。
【0113】
【表1】

【0114】
結果を以下の表IIに示す。
【表2】

【0115】
ハロゲン化剤としてSOClまたはPOClが使用された場合、反応は所望の生成物、フィプロニルまで進行した。しかし、PBrでは、所望の生成物が得られず、または少なくとも許容される収率で得られなかった(HPLCによれば反応混合物中には、(II)が約6%〜8%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)還元/ハロゲン化剤の存在下、CFS(=O)ONaを式IIIの化合物

と反応させる段階と、
b)適切な条件下、選択的酸化剤の存在下で、段階a)で得られた式Iの化合物

を酸化する段階とを含み、ここで、選択的酸化剤は、対応するスルホキシド、フィプロニルへの(I)の酸化を選択的に実施する、フィプロニルを調製するための方法。
【請求項2】
選択的酸化剤が、H/TfO、シクロヘキシリデンビスヒドロペルオキシド、硝酸セリウムアンモニウム/臭素酸ナトリウム、テトラクロロ金(III)酸水和物の存在下でH、またはMHSO(ここで、Mはアルカリ金属カチオンである)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
選択的酸化剤がオキソン(KHSO)である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
還元/ハロゲン化剤が、PClまたはPBrである、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
還元/ハロゲン化剤が、PClである、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記方法の段階a)が、一級、二級または三級アミンの塩酸塩、メチルスルホン酸塩(メシレート)、ベンゼンスルホン酸塩またはp−トルエンスルホン酸塩(トシレート塩)の存在下で実施される、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法の段階a)が、ジメチルアミントシレート塩の存在下で実施される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
選択的酸化剤がKHSOであり、段階b)において、式Iの化合物およびMHSOが、1.0〜2.0にわたる化合物I/KHSOのモル比で使用される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
段階b)において、オキソンが、溶媒としての有機酸中で反応温度を約−10℃に維持しながら、少しずつ添加される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
段階b)において、酸化反応が、溶媒としての有機酸中で−15℃±3℃で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
KHSOを式Iの化合物と6〜12時間にわたる期間反応させる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
有機酸がトリフルオロ酢酸である、請求項9、10または11に記載の方法。
【請求項13】
段階b)において、酸化反応が、溶媒としてのTFP中において25℃〜30℃で実施される、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
KHSOを式Iの化合物と24〜48時間にわたる期間反応させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
段階a)が、DMF、トルエン、2−メチル−テトラヒドロフラン、およびこれらの混合物からなる群から選択される溶媒の存在下で実施される、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法を実施する段階と、前記方法で得られたフィプロニルを薬剤として許容される担体、補助剤またはビヒクルと混合する段階とを含む、駆虫薬を製造する方法。


【公表番号】特表2011−507828(P2011−507828A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538942(P2010−538942)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/IB2008/003576
【国際公開番号】WO2009/077853
【国際公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【出願人】(510170707)
【Fターム(参考)】