説明

フィルタユニット

【課題】枠体とフィルタ濾材との接着力と、枠体の剛性との両立に適したフィルタユニットを提供する。
【解決手段】プリーツ加工されたフィルタ濾材1と、フィルタ濾材1を支持する枠体2とを備え、枠体2が樹脂により構成されており、フィルタ濾材1の周縁部が枠体2に枠体2の内周側から埋め込まれて固定されたフィルタユニット100であって、枠体2は、外周側に配置された剛性保持層21と、内周側に配置された、ポリオレフィン系樹脂に極性基が導入された接着性ポリオレフィン系樹脂を含む接着層21とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン等の吸気口や、掃除機の排気口等において使用されるフィルタユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン等の吸気口にはエアフィルタが設けられている。これらの用途におけるエアフィルタとしては、フィルタ濾材と、それを支持する枠体とを有する複数のフィルタユニットを、外周面が互いに接するように連結させて構成したフィルタユニットパネルが適している。特許文献1には、フィルタユニットおよびフィルタユニットを連結したフィルタユニットパネルの一例が開示されている。
【0003】
特許文献1に記載のフィルタユニットは、射出成形により、フィルタ濾材と枠体とを一体化して製造される。射出成形は、枠体形状に対応した樹脂の流路を有する金型にフィルタ濾材を装填し、そこへ枠体用の樹脂(必要により充填剤等を含む)を射出することで行う。ここで、フィルタユニットは、その用途、要求性能により、用いるフィルタ濾材の材質が異なるため、フィルタ濾材と枠体との接着性が低下しないよう、フィルタ濾材に応じて枠体の材質が選定される。一般的に、フィルタ濾材としては、ガラス繊維濾材、フッ素樹脂系濾材、PET不織布等が用いられる。また、これらを複合化したフィルタ濾材が用いられる場合もある。また、枠体には、汎用樹脂であるPS(ポリスチレン)、ABS樹脂、PC(ポリカーボネート)等が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−119683号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、フィルタ濾材の性能(捕集効率、粉塵保持性能、アウトガス特性等)の向上が望まれ、フィルタ濾材の材質が多様化している。そのため、フィルタユニットにおいて、従来から使用されている枠体の材質との接着性が低いフィルタ濾材が用いられることもあり、枠体とフィルタ濾材との接着性が低下するという問題が発生した。
【0006】
枠体を、フィルタ濾材との接着性がよい樹脂により構成すると、接着性を改善することはできる。しかし、単に枠体の材料を接着性に優れたものに変更したのでは、枠体の剛性が低下することがある。
【0007】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされた発明であり、その目的は、枠体とフィルタ濾材との接着力と、枠体の剛性との両立に適したフィルタユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のフィルタユニットは、プリーツ加工されたフィルタ濾材と、前記フィルタ濾材を支持する枠体とを備え、前記枠体が樹脂により構成されており、前記フィルタ濾材の周縁部が前記枠体に当該枠体の内周側から埋め込まれて固定されたフィルタユニットであって、前記枠体は、外周側に配置された剛性保持層と、内周側に配置された、ポリオレフィン系樹脂に極性基が導入された接着性ポリオレフィン系樹脂を含む接着層とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、枠体とフィルタ濾材との接着力と、枠体の剛性との両立に適した、フィルタユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るフィルタユニットパネルの一形態の斜視図である。
【図2】図1のフィルタユニットの断面図である。
【図3】図1のフィルタユニットの断面図である(図2の断面図とは断面観察方向が直交する)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を例示する。
【0012】
図1は、本発明に係るフィルタユニットパネルの一形態の斜視図である。フィルタユニット100はフィルタ濾材1と、フィルタ濾材1を支持する枠体2とを備え、フィルタ濾材1の周縁部は、枠体2により支持されている。フィルタ濾材1は、濾過面積の増加のためにプリーツ加工(ひだ折り加工)されている。フィルタ濾材1は、平面視(フィルタ濾材を通過する気流に沿って見た状態を指す)で矩形であり、枠体2は、平面視でその内周および外周がそれぞれ矩形を描く額縁形状を有する。
【0013】
枠体2の外周面には嵌合部4、5’が形成されている。嵌合部4、5’は、枠体2の周方向に伸長し、枠体2の高さ方向に交互に配列した凸部(峰部)および凹部(谷部)から構成されている。嵌合部4、5’は、複数のフィルタユニット100を一体化するときに、隣接するフィルタユニット100の嵌合部と嵌め合わせられることになる。
【0014】
図2(嵌合部5’が伸長する方向に沿ったフィルタユニット100の一端付近における断面図)および図3(嵌合部4が伸長する方向に沿ったフィルタユニット100の断面図)を図1とともに参照しながら、フィルタユニット100についてさらに説明する。フィルタユニット100において、嵌合部4が形成された枠体2の外周面とフィルタ濾材1を挟んで反対側の外周面には、嵌合部4とは凸部と凹部との配置が逆になった形状の嵌合部(図示せず)が形成され、嵌合部4と嵌め合わせ可能である。同様に、嵌合部5’が形成された枠体2の外周面とフィルタ濾材1を挟んで反対側の外周面には嵌合部5が形成されている。嵌合部5も、嵌合部5’とは凹凸が反転した形状を有し、嵌合部5’と嵌め合わせ可能である。
【0015】
枠体2の上面および下面には凸部3が形成されている。凸部3は枠体2の外周面を延伸した壁面を有する。また、凸部3は上面および下面のそれぞれにおいて枠体2を周回するように形成されている。凸部3は、複数のフィルタユニット100を一体化するときに溶着リブとして機能する。
【0016】
枠体2は、剛性保持層21と接着層22とが積層された2重構造を有し、外周側に剛性保持層21が配置され、内周側に接着層22が配置されている。剛性保持層21および接着層22は、平面視において、それぞれの内周および外周がそれぞれ矩形を描く額縁形状を有する。剛性保持層21および接着層22は、それぞれの内周側および外周側が互いに接して一体となり、枠体2を構成している。剛性保持層21は、接着層22よりも剛性が高く、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂(芳香族アミド系樹脂を含む)、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリスチレン系樹脂(ABS樹脂等)、ポリカーボネート系樹脂により構成される。剛性保持層21を構成する樹脂は、2種以上を混合して用いてもよい。また、この樹脂には、ガラス繊維、炭素繊維等の充填剤、顔料、抗菌剤等を添加してもよい。なお、剛性保持層21は、ガラス繊維を含むABS樹脂により構成されることが好ましく、ガラス繊維の含有率は10〜30重量%が好ましい。
【0017】
また、接着層22は、フィルタ濾材1の材質によらず、フィルタ濾材1との間に高い接着性を有する材料により構成されることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂に極性基が導入された接着性ポリオレフィン系樹脂により構成することとすればよい。接着性ポリオレフィン樹脂は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−α−オレフィン共重合体などのベース樹脂にグラフト変性により極性基を導入して得ることができる。極性基を導入するための化合物としては、不飽和カルボン酸もしくはその誘導体が好適である。不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸およびこれらの酸の誘導体などが挙げられるが、マレイン酸の誘導体である無水マレイン酸が、特に好ましい。これら極性基の導入量を適宜選択することにより、フィルタ濾材1との接着力を向上させることが可能である。接着層22は、ポリオレフィン系樹脂に極性基が導入された接着性ポリオレフィン系樹脂により構成するとよいが、射出成形時の流動性のコントロールや剛性保持層21との接着性向上のため、接着層22をポリオレフィン系樹脂に極性基が導入された接着性ポリオレフィン系樹脂と、これ以外の樹脂(例えば剛性保持層21を構成する樹脂)との混合樹脂により構成してもよい。
【0018】
本発明において使用されるフィルタ濾材1の種類には、特に制限はなく、公知のフィルタ濾材およびそれと同等以上の防塵性能を有するフィルタ濾材を使用すればよい。フィルタ濾材1としては、ガラス濾材、メルトブロー不織布濾材、エレクトレット不織布濾材、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)多孔質膜濾材等が挙げられる。これらの中でも、発塵しないクリーンな材料であり、集塵性能が高いことから、PTFE多孔質膜濾材を用いることが好ましい。さらに、フィルタ濾材1は、PTFE多孔質膜と繊維製通気多孔質膜との積層体であることが好ましい。繊維製通気多孔質膜は、例えば高分子繊維材料から構成されることとすればよい。フィルタ濾材1の材料としてはガラス繊維も知られているが、ガラス繊維を用いると焼却処分が難しくなる。
【0019】
PTFE多孔質膜としては、公知のフィルタ濾材に用いられているPTFE多孔質膜、またはそれと同等以上のフィルタ特性を有するものを使用することができ、例えば、以下のようにして製造することができる。また市販品を用いてもよい。
【0020】
まず、PTFEファインパウダーに液状潤滑剤を加えたペースト状の混和物を予備成形する。液状潤滑剤は、PTFEファインパウダーの表面を濡らすことができ、抽出や加熱により除去できるものであれば特に制限されない。例えば、炭化水素類の流動パラフィン、ナフサ、トルエン、キシレン、その他、アルコール類、ケトン類、エステル類、フッ素系溶剤等である。また、これらの内、2種類以上の混合物を使用してもよい。液状潤滑剤の添加量は、シート状成形方法によって異なるが、通常、PTFEファインパウダー100重量部に対して約5〜50重量部程度が適当である。上記予備成形において、PTFEファインパウダーがシリンダーにより圧縮され、ラム押出し機から押出されることで、シート状に成形される。具体的には、ラム押出し機の、対になったロール間で適当な厚み(通常は0.05〜0.5mm)に圧延される。なお、予備成形は、液状潤滑剤が絞り出されない程度の圧力で行われる。
【0021】
次に、予備成形された液状潤滑剤を含んだシートは、液状潤滑剤が蒸発しない温度(通常は常温)で、幅方向にもとの長さの1.5〜20倍に延伸される。この延伸は、液状潤滑剤で満たされた浴槽中で行ってもよい。さらに、液状潤滑剤が、加熱法もしくは抽出法によって除去され、シート状成形体が得られる。まず、シート状成形体は、初めに長手方向に延伸される。このときの延伸倍率は40〜200倍が好ましく、さらに60〜160倍がより好ましい。延伸倍率が低すぎると、最終的に得られる膜のフィブリル長さが短く、孔が小さくなり、高通気性を有する膜を得ることができない。また、延伸倍率が高すぎると、破断が起こり、膜を得ることができない。
【0022】
長手方向に延伸されたシート状成形体は、次に、幅方向に、通常40〜400℃の温度でもとの幅の3〜40倍に延伸される。このとき高通気性を得るため、かつ延伸時に破断が起きないようにするためには、延伸温度は100〜300℃が好ましい。
【0023】
PTFE多孔質膜の製造においては、工業的には工程数が少ない方が好ましいが、延伸工程を複数回にわけて行ってもよい。また、初めに長手方向に延伸すれば、その後の長手方向または幅方向への延伸順序や組み合わせは特に規定されない。また、PTFE多孔質膜の捕集効率は、試験粒子径を0.3〜0.5μmとした場合に、95.0%以上であることが好ましく、さらに好ましくは99.97%以上である。また、PTFE多孔質膜の圧力損失は、試験風速を5.3cm/sとした場合に、200Pa以下であることが好ましく、さらに好ましくは80〜150Paである。
【0024】
なお、繊維製通気多孔質膜としては、その材料、形態等に特に制限はない。例えば、フェルト、不織布、織布、メッシュ(網目状シート)、その他の多孔質材料等が挙げられる。強度、捕集性、柔軟性および作業性の観点からは不織布が好ましい。材料の例としては、ポリオレフィン(例、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)など)、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)、ポリアミド(脂肪族ポリアミドおよび芳香族ポリアミド)、およびこれらの複合材が挙げられる。また、繊維製通気多孔質膜の形態が不織布である場合は、高融点材料が芯部を形成し、低融点材料が鞘部を形成する芯鞘構造の繊維からなる不織布としてもよい。PTFE多孔質膜に積層する繊維製通気多孔質膜は、ポリプロピレン樹脂(PP)により構成されることが好ましい。また、ポリプロピレン樹脂からなるナノファイバー濾材を用いてもよい。それにより、フィルタ濾材1の粉塵保持機能が向上する。
【0025】
上記のPTFE多孔質膜と繊維製通気多孔質膜とを積層させることにより、PTFE多孔質膜濾材を製造することができるが、その積層方法には特に限定はない。ただ単にこれらを重ね合わせるだけでもよいし、接着剤ラミネート、熱ラミネート等の方法によって積層してもよい。例えば、熱ラミネートにより積層する場合は、加熱により、不織布などの繊維製通気多孔質膜の一部を溶融させて接着積層すればよい。また、ホットメルトのような融着剤を介在させて接着積層してもよい。
【0026】
積層に用いるPTFE多孔質膜および繊維製通気多孔質膜は、それぞれ1枚でもよいし、2枚以上でもよい。2枚以上用いる場合には、それらは同一の種類であってもよいし、異なる種類であってもよい。
【0027】
フィルタ濾材1は、通気面積および捕集面積を増大させるために、プリーツ加工されたものである。すなわち、フィルタ濾材は、山折と谷折が交互に繰り返されたプリーツ形状を有する。プリーツの山高さ、開き角度等については、公知の、プリーツ形状を有するフィルタ濾材と同等であってよい。
【0028】
フィルタ濾材1は枠体2の内周側において固定されている。フィルタ濾材1は、枠体2を射出成形する工程において枠体2に固定される。射出成形は、枠体2の形成とフィルタ濾材1の枠体2への接合とを同時に行う方法であり、フィルタユニット100の製造工程を簡略化することができる。また、射出成形を用いて得たフィルタユニット100では、フィルタ濾材1の周縁部は枠体2の内部に埋め込まれ、枠体2を構成する樹脂がフィルタ濾材1の周縁部に浸透する。
【0029】
フィルタユニット100を作製する場合は、枠体2が2重構造であることから、いわゆる2色成形を用いることが好ましい。2色成形を用いることで、1つの射出成形用の金型を用いて、2種類の樹脂からなる多層構造を形成できる。2色成形は、枠体2の形状に対応するキャビ型およびコア型を有し、コア型がスライド可能である射出成形用金型を用いて行うことができる。まず、金型内にフィルタ濾材1を装填し、剛性保持層21用の樹脂を射出により金型内に充填する(1回目の射出)。この1回目の射出の際には、金型により形成される樹脂の流路は、剛性保持層21の形状に対応する。1回目の射出の後、金型および剛性保持層21を十分に冷却させ、コア型をスライドさせることで、剛性保持層21とコア型との間に、接着層22の形状に対応する流路が形成される。そして、接着層22用の樹脂を射出により金型内に充填する(2回目の射出)。このようにして、フィルタユニット100が作製される。2色成形を用いて、フィルタユニット100を作製することで、剛性保持層21および接着層22を備えた、2重構造の枠体2を容易に作製することができる。また、剛性保持層21および接着層22と、フィルタ濾材1との接続が、剛性保持層21および接着層22の作製と同時に行うことができる。
【0030】
上述のように、作製されたフィルタユニット100においては、枠体2が、剛性の高い剛性保持層21と、フィルタ濾材1との接着性の高い接着層22とを有する2重構造により構成されている。したがって、フィルタユニット100において、枠体2およびフィルタ濾材1間の接着力を十分な値とし、かつ枠体2の剛性を十分な値とすることができる。また、枠体2の材料として、剛性が高く、かつフィルタ濾材1との接着性が高い材料を選定する必要がないため、枠体2およびフィルタ濾材1の設計の自由度を大幅に向上させることができる。
【0031】
このようなフィルタユニット100を組み合わせて、パネルを構成することもできる。まず、複数のフィルタユニット100を準備し、所望のパネル形状および大きさを参照しつつ、隣接するフィルタユニットにおける対応する嵌合部を嵌め合わせる。その後、隣接する枠体の凸部3を溶着リブとして溶着を行う。溶解した凸部3は、隣接する枠体2を跨いで枠体2の表面を覆うように広がり、その状態で固化する。このようにして、フィルタパネル100同士が固定される。また、軟化した凸部3が、フィルタパネル100の連結部を覆うように変形して、固化することで連結部もシールされることになる。なお、溶着の種類は、特に制限されず、超音波溶着、熱溶着、レーザー溶着であってよい。なお、凸部3は、枠体2に予め形成しておく必要はなく、別途準備したものであってもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0033】
(実施例1)
フィルタ濾材は、ナノファイバー濾材、不織布、PTFE多孔質膜、不織布が、この順に積層された構成とした。まず、PTFE多孔質膜を2枚の不織布で挟んだ状態で、180℃に加熱した1対のロール間を通過させて熱ラミネートを行い、厚さが0.32mm、圧力損失が170Pa、捕集効率が99.99%のフィルタ濾材を得た。不織布は、PETを芯部とし、PEを鞘部とする芯鞘構造を有する不織布(ユニチカ社製「エルベスT0303WDO」、目付け量30g/m2)を用いた。さらに、このフィルタ濾材に、合成ゴムを主成分とするホットメルト(松村石油研究所製「モレスコメルト」)を点状に塗布し、通気を維持しながら、PP樹脂からなるナノファイバー濾材(三井化学社製「SYNTEXnano(シンテックスナノ),6type」)を貼り合わせて、実施例1のフィルタ濾材を得た。なお、ナノファイバー濾材の繊維径はモードで0.6μmである。このフィルタ濾材は、射出成形前に、山高さ22mmで、93山となるようにプリーツ加工した。
【0034】
フィルタ濾材に用いたPTFE多孔質膜は、以下の方法で製造した。PTFEファインパウダー(ダイキン社製F104)100重量部に対して液状潤滑材(ドデカン)20重量部を均一に混合し、得られた混合物を予備成形した。次に、予備成形物をロッド状にペースト押出しし、得られたロッド状成形体を1対の金属圧延ロール間に通して、厚さ200μmの長尺シートとした。この長尺シートを、200℃の圧延温度において長手方向に10倍延伸し、さらにテンター法により、80℃の延伸温度において幅方向に20倍に延伸した。このようにして得られた未焼成PTFE多孔質膜を400℃で焼成して、PTFE多孔質膜(厚さ10μm)を得た。
【0035】
枠体は、無水マレイン酸変性PPである接着性ポリオレフィン(三井化学社製「アドマーSF731」)からなる接着層と、ガラス繊維の充填量が30重量%であるABS樹脂(ダイセルポリマー社製「セビアン VGR30」)により構成される剛性保持層との2重構造とし、2色成形により、枠体の形成と、フィルタ濾材と枠体との接続とを同時に行い、図1〜3に示したような構造を有するフィルタユニットを作製した。
【0036】
(実施例2)
繊維径がモードで0.9μmであるナノファイバー濾材(三井化学社製「SYNTEXnano」,10type)を使用した以外は、実施例1と同様にしてフィルタユニットを作製した。
【0037】
(比較例)
フィルタ濾材は、実施例1に用いたものと同様のものを用いた。枠体は、1つの材料により構成し、その形状および大きさは実施例1と同様とした。具体的には、ガラス繊維の充填量が30重量%であるABS樹脂(ダイセルポリマー社製「セビアン VGR30」)を用いて、射出成形により、枠体の形成と、フィルタ濾材と枠体との接続とを同時に行い、フィルタユニットを作製した。
【0038】
実施例1、2および比較例から得たフィルタユニットについて、フィルタ濾材と枠体との接着力の評価を行った。評価には、ASTMに準拠したインストロン社5582型の引張試験機を使用した。試験機に30kNのロードセルを装着し、治具でフィルタユニットを固定し、引張試験を実施した。フィルタ濾材と枠体との剥離および枠体の破損のいずれが先に生じるかを確認し、生じた時の最大応力を測定し、測定結果を表1に示した。
【0039】
【表1】

【0040】
表1からわかるように、実施例1、2のフィルタユニットでは、先に枠体の破損が生じており、比較例のフィルタユニットでは、先にフィルタ濾材と枠体との剥離が生じている。また、実施例1、2におけるフィルタユニットが破損した時の最大応力は、比較例におけるフィルタ濾材と枠体との剥離が生じた時の最大応力に比べて大きい。したがって、実施例1、2における枠体とフィルタ濾材との接着力が、比較例における枠体とフィルタ濾材との接着力に比べて十分大きいことが分かる。
【0041】
また、実施例1および2において、フィルタユニットが破損した時の最大応力は、同程度である。したがって、枠体とフィルタ濾材との接着力は、ナノファイバー濾材の繊維径に関係なく、向上すると考えられる。
【0042】
ポリプロピレン樹脂とガラス繊維を含むABS樹脂とは接着しにくいが、実施例1、2のように、フィルタ濾材にポリプロピレン樹脂からなるナノファイバー濾材を用い、枠体にガラス繊維を含むABS樹脂を用いた構成であっても、枠体とフィルタ濾材との接着力が高いフィルタユニットを実現できる。本発明によれば、枠体に用いる材料とフィルタ濾材とが、このように接着性の低い組合せであっても、枠体とフィルタ濾材の接着性を高めることができるため、枠体とフィルタ濾材との接着力と、枠体の剛性とが両立されたフィルタユニットを提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のフィルタユニットは、クリーンルーム、空調設備、ガスタービン、蒸気タービン等の吸気口や、掃除機の排気口等に使用されるエアフィルタに好適である。
【符号の説明】
【0044】
1 フィルタ濾材
2 枠体
3 凸部
4、5、5’ 嵌合部
21 剛性保持層
22 接着層
100 フィルタユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリーツ加工されたフィルタ濾材と、前記フィルタ濾材を支持する枠体とを備え、前記枠体が樹脂により構成されており、前記フィルタ濾材の周縁部が前記枠体に当該枠体の内周側から埋め込まれて固定されたフィルタユニットであって、
前記枠体は、外周側に配置された剛性保持層と、内周側に配置された、ポリオレフィン系樹脂に極性基が導入された接着性ポリオレフィン系樹脂を含む接着層とを備える、フィルタユニット。
【請求項2】
前記フィルタ濾材が、ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜と、繊維製通気多孔質膜とを有し、
前記繊維製多孔質膜がポリプロピレン樹脂により構成された、請求項1に記載のフィルタユニット。
【請求項3】
前記剛性保持層が、ガラス繊維を含むABS樹脂により構成された、請求項1に記載のフィルタユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−183339(P2011−183339A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53082(P2010−53082)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】