説明

フィルタ内蔵アンテナ及び電子機器

【課題】電子機器に実装するフィルタ内蔵アンテナのインピーダンスマッチングをとることである。
【解決手段】ハンディターミナル1に実装されるフィルタ内蔵アンテナ30は、アンテナエレメント31と、アンテナエレメント31に接続された回路基板部40と、を備える。回路基板部40は、アンテナエレメント31の入出力信号のフィルタリングを行うフィルタ回路と、アンテナエレメント31のインピーダンスマッチングをとるマッチング回路と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ内蔵アンテナ及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無線通信機能を有するハンディターミナル、PDA(Personal Digital Assistant)等の電子機器が知られている。この電子機器には、無線通信用のアンテナが搭載される。
【0003】
アンテナは、無線通信の送信部の設計によっては意図していない周波数に対して不要輻射をしてしまうことがある。この課題を解決するには、送信回路や電子機器の構造の変更を行い不要周波数の送信を無くすことが必要である。しかし、すでに作り上げて完成した電子機器に対して、変更を行うことが難しかった。
【0004】
不要周波数の送信を防ぐために、放射素子が接続された積層誘電体構造体にフィルタを形成したフィルタ内蔵アンテナが知られている(例えば、特許文献1、2参照)。このフィルタにより、送信信号の不要周波数成分を減衰する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−40579号公報
【特許文献2】国際公開第2002/067379号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のフィルタ内蔵アンテナを電子機器の小さな筐体に実装すると、グランドとアンテナエレメントが近くなってその間の容量成分が大きくなり、結果的にインピーダンスが低くなるおそれがあった。
【0007】
本発明の課題は、電子機器に実装するフィルタ内蔵アンテナのインピーダンスマッチングをとることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明のフィルタ内蔵アンテナは、
電子機器に実装されるフィルタ内蔵アンテナであって、
アンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに接続された回路基板部と、を備え、
前記回路基板部は、
前記アンテナエレメントの入出力信号のフィルタリングを行うフィルタ回路と、
前記アンテナエレメントのインピーダンスマッチングをとるマッチング回路と、を有する。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記アンテナエレメントが取り付けられたアンテナエレメント取付基板部と、
前記アンテナエレメント取付基板部及び前記回路基板部に接続されたコネクタと、を備え、
前記コネクタは、前記アンテナエレメント取付基板部の配線部分とピン接続するピン接点を有する。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記アンテナエレメント及び前記アンテナエレメント取付基板部を、前記電子機器の筐体から突出した位置に実装する実装具を備える。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項3に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記実装具は、前記電子機器の筐体に螺子止めされる。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項2から4のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記アンテナエレメント、前記アンテナエレメント取付基板部、前記コネクタ及び前記回路基板部が、一体的に前記電子機器にフローティング実装されている。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記回路基板部は、配線部分に同軸ケーブルを介して給電される。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記アンテナエレメントは、トラップコイルを有するモノポールマルチバンドアンテナである。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記トラップコイルの中空部に取り付けられ、螺子溝が施されたボビンを備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナにおいて、
前記回路基板部のグランド部に接続され、前記電子機器のメイン基板及び無線通信部の間に配置されたグランドシートを備える。
【0017】
請求項10に記載の発明の電子機器は、
請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナと、
前記フィルタ内蔵アンテナを介して外部機器と無線通信する無線通信部と、
前記無線通信部を制御する制御部と、
を備える。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電子機器に実装するフィルタ内蔵アンテナのインピーダンスマッチングを確実にとることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態のハンディターミナルの正面側の斜視図である。
【図2】ハンディターミナルの背面側の斜視図である。
【図3】背面側のケースを外した状態のハンディターミナルの背面側の斜視図である。
【図4】ハンディターミナルの機能構成を示すブロック図である。
【図5】フィルタ内蔵アンテナの正面側の斜視図である。
【図6】フィルタ内蔵アンテナの背面図である。
【図7】(a)は、回路基板部の表面及び同軸ケーブルを示す図である。(b)は、回路基板部の裏面の平面図である。
【図8】フィルタ回路及びマッチング回路の等価回路を示す図である。
【図9】グランドシートの平面図である。
【図10】実装具の斜視図である。
【図11】ケースへのフィルタ内蔵アンテナが実装された実装具の取り付けを示す図である。
【図12】実装具が取り付けられたケースへのカバー部の取り付けを示す図である。
【図13】(a)は、変形例のボビンを外したアンテナエレメントの構成を示す図である。(b)は、ボビンを取り付けたアンテナエレメントの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明に係る好適な実施の形態、その変形例を順に詳細に説明する。なお、本発明は、図示例に限定されるものではない。
【0021】
図1〜図12を参照して本発明に係る実施の形態を説明する。先ず、図1〜図3を参照して本実施の形態のハンディターミナル1の全体の装置構成を説明する。図1に、本実施の形態のハンディターミナル1の正面側の構成を示す。図2に、ハンディターミナル1の背面側の構成を示す。図3に、ケース2Bを外した状態のハンディターミナル1の背面側の構成を示す。図4に、ハンディターミナル1の機能構成を示す。
【0022】
本実施の形態の電子機器としてのハンディターミナル1は、ユーザ操作による情報の入力、情報の記憶、RFID(Radio Frequency IDentification)の情報の読み書き、磁気読み取り等の機能を有する携帯機器である。また、ハンディターミナル1は、電話回線通信方式により基地局を介して外部機器と通信を行う機能を有する。この電話回線通信方式は、GSM(Global System for Mobile Communications)と、WCDMA(Wideband Code Division Multiple Access)と、であるものとする。
【0023】
図1に示すように、ハンディターミナル1は、筐体としてのケース2A,2Bを有する。ハンディターミナル1は、正面側のケース2Aに、表示部14、各種キー12A等を備える。また、ハンディターミナル1は、背面側のケース2Bの先端に、フィルタ内蔵アンテナ30を備える。また、図1及び図2に示すように、ハンディターミナル1は、ケース2Bの両側面に、キー12Bを備える。また、ハンディターミナル1は、ケース2Bに、磁気リーダ部20を備える。
【0024】
各種キー12Aは、数字等の文字入力キー、各種機能キー等である。キー12Bは、例えば、表示部14に表示されたカーソルを上下するための上下入力キーである。ケース2A,2Bは、樹脂等により構成されている。
【0025】
表示部14は、操作画面等の各種表示を行う。RFIDリーダライタ部19は、表示部14の周りのベゼル部分にコイルアンテナが設けられ、このコイルアンテナにより、表示部14に近付けられた非接触ICカード等の情報を読み出し及び書き込みする。
【0026】
磁気リーダ部20は、磁気記憶部を有する信用金庫の通帳等の読み取り対象物を差し込むことが可能であり、差し込まれた読み取り対象物の磁気記憶部に記憶されている情報を読み取る。フィルタ内蔵アンテナ30は、携帯電話通信方式の無線通信を行うアンテナであり、後述するアンテナエレメント31がカバー部70に覆われ、ケース2A,2Bから突き出された突出構造を有する。
【0027】
図3に示すように、ハンディターミナル1は、ケース2Bを取り外した状態で、ケース2A内部に、メイン基板3と、無線通信モジュール16Aと、フィルタ内蔵アンテナ30は、同軸ケーブル80と、フィルタ内蔵アンテナ30と、を有する。但し、図3では、フィルタ内蔵アンテナ30は、後述するカバー部70及び実装具60は、省略されている。
【0028】
メイン基板3は、ハンディターミナル1のメインのPCB(Printed Circuit Board)である。無線通信モジュール16Aは、携帯電話通信方式の無線通信を行うためのモジュールであり、同軸ケーブル80が接続されている。無線通信モジュール16Aは、フィルタ内蔵アンテナ30に無線送信用の信号を出力し、またフィルタ内蔵アンテナ30から無線受信された信号が入力される。
【0029】
フィルタ内蔵アンテナ30は、アンテナエレメント31と、アンテナエレメント取付基板部32と、コネクタ33と、回路基板部40と、を有する。銅等の金属ワイヤーにより構成されるマルチバンドモノポールアンテナである。アンテナエレメント31は、先端部311と、トラップコイル312と、接続部313と、を有する。
【0030】
先端部311は、アンテナエレメント31の先端に位置する直線形状の金属ワイヤーである。トラップコイル312は、先端部311の次に位置するコイル形状の金属ワイヤーである。先端部311の延在方向と、トラップコイル312の軸方向とは、ケース2A,2Bの先端面と平行な方向である。接続部313は、トラップコイル312の次に位置し、90度に曲げられた形状の金属ワイヤーである。接続部313は、アンテナエレメント取付基板部32に接続される。
【0031】
アンテナエレメント31は、アンテナエレメント取付基板部32との接続部から先端までの長さに対応する共振周波数と、アンテナエレメント取付基板部32との接続部からトラップコイル312までの長さに対応する共振周波数との2つの共振周波数の周波数帯を有する。
【0032】
例えば、一方の共振周波数の周波数帯が、GSM方式のGSM850、GSM900と、WCDMA方式のBandV、BandVI、BandVIIIと、の通信周波数帯をカバーしている。もう一方の共振周波数の周波数帯が、GSM方式のGSM1800(DCS(Digital Cellular System)1800)、GSM1900(PCS(Personal Communication Service)1900)と、WCDMA方式のBandI、BandIIと、の通信周波数帯をカバーしている。
【0033】
アンテナエレメント取付基板部32は、アンテナエレメント31が取り付けられたPCBである。回路基板部40は、同軸ケーブル80及びコネクタ33に接続され、後述するフィルタ回路44及びマッチング回路46が形成されているPCBである。コネクタ33は、回路基板部40の配線をアンテナエレメント取付基板部32の配線にピン接続するコネクタである。アンテナエレメント取付基板部32は、ピン接続によりコネクタ33から容易に離間(取り外し)可能である。
【0034】
グランドシート50は、回路基板部40のグランド部に接続され、フィルタ内蔵アンテナ30のグランド部となる。グランドシート50は、メイン基板3と、無線通信モジュール16Aとの間に挟み込まれて実装されている。
【0035】
図4に示すように、ハンディターミナル1は、制御部としてのCPU(Central Processing Unit)11と、操作部12と、RAM(Random Access Memory)13と、表示部14と、ROM(Read Only Memory)15と、フィルタ内蔵アンテナ30と、無線通信部16と、フラッシュメモリ17と、I/F(InterFace)部18と、RFIDリーダライタ部19と、磁気リーダ部20と、電源部21と、を備える。CPU11、操作部12、RAM13、表示部14、ROM15、無線通信部16、フラッシュメモリ17、I/F部18、RFIDリーダライタ部19、磁気リーダ部20は、バス22を介して接続されている。
【0036】
CPU11は、ハンディターミナル1の各部を制御する。CPU11は、ROM15に記憶されているシステムプログラム及び各種アプリケーションプログラムの中から指定されたプログラムをRAM13に展開し、RAM13に展開されたプログラムとの協働で、各種処理を実行する。
【0037】
CPU11は、各種プログラムとの協働により、操作部12を介する操作情報の入力を受け付け、ROM15から各種情報を読み出し、フラッシュメモリ17に各種情報の読み書きを行う。また、CPU11は、無線通信部16及びフィルタ内蔵アンテナ30により、携帯電話通信方式で基地局を介して外部機器と通信を行い、RFIDリーダライタ部19により、非接触ICカード等の情報の読み書きを行い、磁気リーダ部20により、通帳等の磁気記憶部から情報を読み取り、I/F部18を介して外部機器と有線通信を行う。
【0038】
操作部12は、各種キー12A、キー12Bを含み、操作者から押下入力された各キーの操作信号をCPU11に出力する。また、操作部12は、表示部14と一体的に設けられたタッチパネルのタッチパッドを含む構成としてもよい。
【0039】
RAM13は、情報を一時的に格納する揮発性のメモリであり、実行される各種プログラムやこれら各種プログラムに係るデータ等を格納するワークエリアを有する。表示部14は、LCD(Liquid Crystal Display)、ELD(ElectroLuminescent Display)等で構成され、CPU11からの表示信号に従って各種表示を行う。
【0040】
ROM15は、各種プログラム、各種データが記憶される読み出し専用の半導体メモリである。
【0041】
無線通信部16は、フィルタ内蔵アンテナ30と接続され、フィルタ内蔵アンテナ30を介して携帯電話通信方式により基地局と情報の送受信を行う。無線通信部16は、変調部、復調部、信号処理部等を有する無線通信モジュール16Aを含む。基地局は、外部機器とハンディターミナル1との間の通信の中継を行う。つまり、ハンディターミナル1は、無線通信部16及びフィルタ内蔵アンテナ30により、基地局にネットワーク接続された外部機器と通信を行うことができる。
【0042】
フラッシュメモリ17は、各種データ等の情報が読み出し及び書き込み可能な半導体メモリである。
【0043】
I/F部18は、通信ケーブルを介して外部機器と有線接続され、この外部機器と情報を送受信する有線通信部である。
【0044】
RFIDリーダライタ部19は、表示部14の周りに設けられたコイルアンテナにより、非接触ICカードやICタグと電磁界を用いた近距離の無線通信を行い、非接触ICカードやICタグに記憶されている情報の読み出し及び書き込みを行うRFIDのリーダライタ部である。
【0045】
磁気リーダ部20は、通帳等が差し込まれる差込部と、この差込部に差し込まれた通帳等の読み取り対象物の磁気記憶部に位置するヘッダ部とを有する。磁気リーダ部20は、差込部に差し込まれた読み取り対象物の磁気記憶部に記憶されている情報を磁気によりヘッダ部で読み取りCPU11に出力する。
【0046】
電源部21は、2次電池等で構成され、ハンディターミナル1の各部に電源供給を行う。
【0047】
次いで、図5〜図9を参照して、フィルタ内蔵アンテナ30の装置構成を詳細に説明する。図5に、フィルタ内蔵アンテナ30の正面側の構成を示す。図6に、フィルタ内蔵アンテナ30の背面側の構成を示す。図7(a)に、回路基板部40の表面の構成及び同軸ケーブル80を示す。図7(b)に、回路基板部40の裏面の構成を示す。図8に、フィルタ回路44及びマッチング回路46の等価回路を示す。図9に、グランドシート50の構成を示す。
【0048】
図5及び図6に示すように、フィルタ内蔵アンテナ30は、アンテナエレメント31と、アンテナエレメント取付基板部32と、コネクタ33と、回路基板部40と、を有する。回路基板部40の配線には、同軸ケーブル80が電気的に接続されている。また、回路基板部40は、螺子穴401,402,403を有する。螺子穴401,402,403は、螺子によりグランドシート50を回路基板部40に取り付けるための螺子穴(雌螺子)である。また、回路基板部40の配線は、コネクタ33に電気的に接続されている。
【0049】
コネクタ33は、ピン接点331を有する。アンテナエレメント取付基板部32は、接触部321と、アンテナエレメント取付部322と、を有する。コネクタ33のピン接点331は、接触部321に接触(当接)される。これにより、回路基板部40の配線は、コネクタ33を介してアンテナエレメント取付基板部32の接触部321に電気的に接続される。
【0050】
接触部321とアンテナエレメント取付部322とは、アンテナエレメント取付基板部32の配線を介して接続されている。アンテナエレメント取付部322には、アンテナエレメント31がハンダ付けにより取り付けられている。
【0051】
また、アンテナエレメント取付基板部32は、穴323を有する。穴323は、アンテナエレメント31及びアンテナエレメント取付基板部32を実装する後述する実装具60をケース2Bの螺子穴201に螺合するための螺子を通す穴である。
【0052】
図7及び図8を参照して、回路基板部40を詳細に説明する。図7(a)、図7(b)に示すように、回路基板部40は、基板41上に金属のパターンが形成され、またチップが取り付けられている。但し、図7(a)、図7(b)では、回路基板部40の螺子穴401,402,403は、省略されている。図7(a)に示すように、回路基板部40の表面には、グランド部42と、接続部43と、フィルタ回路44と、配線部45と、マッチング回路46と、接続部47と、が配置されている。
【0053】
グランド部42は、電位がグランドの電位にされている導体のパターンである。接続部43は、同軸ケーブル80に接続される配線パターンである。フィルタ回路44は、アンテナ電流の所定周波数より低い周波数成分を通し、高い周波数成分を除去するローパスフィルタである。配線部45は、フィルタ回路44とマッチング回路46とを接続する配線パターンである。
【0054】
マッチング回路46は、フィルタ内蔵アンテナ30(アンテナエレメント31)のインピーダンマッチングをとるπ型マッチング回路である。アンテナ電流の所定周波数より低い成分を通し、高い周波成分を除去するローパスフィルタである。マッチング回路46は、コンデンサ461と、インダクタ462と、コンデンサ463と、を有する。コンデンサ461,463は、チップコンデンサである。インダクタ462は、チップインダクタである。接続部47は、コネクタ33に接続される配線パターンである。
【0055】
また、回路基板部40には、同軸ケーブル80が接続されている。同軸ケーブル80は、断面(延在方向に垂直な面)の中心から外側へ、銅線等の芯線81、ポリエチレン等の絶縁体82、網状の銅線等の外部導体83、絶縁体としての保護被覆部84、を順に同心円状に備える。同軸ケーブル80の一端の芯線81が、接続部43とハンダ付けにより接続されている。同じ一端の外部導体83が、グランド部42とハンダ付けにより接続されている。この同軸ケーブル80と、回路基板部40との接続部分を給電点とする。また、同軸ケーブル80の他端は、無線通信部16(の無線通信モジュール16A)に接続されている。無線通信部16から同軸ケーブル80を介して、フィルタ内蔵アンテナ30の給電点に高周波電力が給電される。
【0056】
また、グランド部42は、スルーホール421を有する。また、接続部47は、スルーホール471を有する。図7(b)に示すように、回路基板部40の裏面には、グランド部48と、スルーホール471と、が配置されている。グランド部48は、スルーホール421を介して、表面のグランド部42と電気的に接続されている。また、裏面のスルーホール471は、表面のグランド部42と電気的に接続されており、コネクタ33に電気的に接続される。
【0057】
図8に示すように、フィルタ回路44は、インダクタ441,442と、コンデンサ443,444,445,446,447と、を有する。インダクタ441,442は、チップインダクタである。コンデンサ443,444,445,446,447は、チップコンデンサである。
【0058】
インダクタ441,442は、接続部43と配線部45との間に直列に接続されている。同様に、コンデンサ444,446は、接続部43と配線部45との間に直列に接続されている。コンデンサ443は、インダクタ441及びコンデンサ444の一端並びに接続部43と、グランド部42との間に接続されている。コンデンサ445は、インダクタ441及びコンデンサ444の他端と、グランド部42との間に接続されている。コンデンサ447は、インダクタ442及びコンデンサ446の他端並びに配線部45と、グランド部42との間に接続されている。
【0059】
コンデンサ461は、インダクタ462の一端及び配線部45と、グランド部42との間に接続されている。インダクタ462は、配線部45と接続部47との間に直列に接続されている。コンデンサ463は、インダクタ462の他端及び接続部47と、グランド部42との間に接続されている。
【0060】
本実施の形態では、フィルタ回路44を、ローパスフィルタとするが、これに限定されるものではない。例えば、フィルタ回路44を、バンドパスフィルタ等としてもよい。また、本実施の形態では、マッチング回路46を、π型マッチング回路とするが、これに限定されるものではない。例えば、マッチング回路46を、L型マッチング回路等、他のマッチング回路としてもよい。
【0061】
次いで、図9を参照して、グランドシート50の構成を説明する。図9に、グランドシート50を示す。
【0062】
図9に示すように、グランドシート50は、穴501,502,503,504,505,506,507,508を有する。穴501,502,503は、回路基板部40の螺子穴401,402,403に対応する位置に配置されている。一本の螺子が穴501を通され螺子穴401に螺合され、もう一本の螺子が穴502を通され螺子穴402に螺合され、さらにもう一本の螺子が穴503を通され螺子穴403に螺合されることにより、グランドシート50が回路基板部40に取り付けられる。
【0063】
穴504,505,506,507,508は、無線通信モジュール16Aとメイン基板3とを螺合する螺子を通すための穴である。無線通信モジュール16Aは、穴504,505,506,507,508を介した螺子の螺合により、メイン基板3のフレームグランドに電気的に接続される。
【0064】
グランドシート50は、ポリイミド等の絶縁体のフィルムに銅箔等の導体が形成された構成を有する。穴501,502を通る螺子は、回路基板部40のグランド部42に導通されているため、グランドシート50の導体もグランドの電位にされている。回路基板部40とグランドシート50とが、螺子3本で接続されるため、その接続インピーダンスを低くすることができる。また、グランドシート50がメイン基板3と無線通信モジュール16Aとに挟まれている。
【0065】
次いで、図10を参照して、アンテナエレメント31を実装する実装具60を説明する。図10に、実装具60の構成を示す。
【0066】
フィルタ内蔵アンテナ30は、実装具60を有する。実装具60は、樹脂等で形成され、アンテナエレメント実装部61と、穴62と、を有する。アンテナエレメント実装部61には、アンテナエレメント取付基板部32に取り付けられた状態のアンテナエレメント31が実装(格納)される。穴62は、実装具60をケース2Bの螺子穴201に螺合させるための螺子を通す穴である。
【0067】
アンテナエレメント31及びアンテナエレメント取付基板部32は、実装具60に実装されているが、固定されているのではない。アンテナエレメント31、アンテナエレメント取付基板部32、コネクタ33及び回路基板部40が、一体的にハンディターミナル1にフローティング実装されている。
【0068】
次に、図11及び図12を参照して、ケース2A,2Bへのフィルタ内蔵アンテナ30の取り付け手順を説明する。図11に、ケース2A,2Bへのフィルタ内蔵アンテナ30が実装された実装具60の取り付けを示す。図12に、実装具60が取り付けられたケース2A,2Bへのカバー部70の取り付けを示す。
【0069】
図11に示すように、ハンディターミナル1のケース2A,2B内に、メイン基板3及び各種内部部品と、フィルタ内蔵アンテナ30のコネクタ33及び回路基板部40と、が実装された状態にあるものとする。ケース2Bは、螺子穴201,202,203を有する。
【0070】
また、実装具60には、アンテナエレメント31及びアンテナエレメント取付基板部32が実装されているものとする。ここで、螺子(雄螺子)63が、穴62及び穴323を通されて、螺子穴201に螺合される。これにより、アンテナエレメント31等が実装された実装具60は、ハンディターミナル1のケース2Bに取り付けられる。
【0071】
そして、図12に示すように、ハンディターミナル1のケース2A,2Bに、実装具60が取り付けられたものとする。カバー部70は、実装具カバー部71と、螺子カバー部72,73と、螺子74,75と、を備える。実装具カバー部71は、穴76,77を有する。このとき、コネクタ33のピン接点331が、アンテナエレメント取付基板部32の接触部321に当接され、電気的に接続される。
【0072】
実装具カバー部71は、実装具60を覆うカバー部である。螺子カバー部72,73は、螺子74,75を覆うカバー部である。実装具カバー部71及び螺子カバー部72,73は、樹脂等で形成されている。また、ケース2Bは、螺子穴202,203を備える。穴76,77は、螺子穴202,203の位置に配置されている。
【0073】
螺子74が、穴76を通されて螺子穴202に螺合される。また、螺子75が、穴77を通されて螺子穴203に螺合される。そして、螺子カバー部72,73が、実装具カバー部71の穴76,77が位置する凹部に嵌合される。このようにして、カバー部70が、実装具60が取り付けられたケース2A,2Bに取り付けられる。
【0074】
以上、本実施の形態によれば、フィルタ内蔵アンテナ30は、アンテナエレメント31と、アンテナエレメント31に接続された回路基板部40と、を備える。回路基板部40は、フィルタ回路44及びマッチング回路46を備える。
【0075】
このため、フィルタ回路44により、不要輻射が多いハンディターミナル1であっても、本体の改造をすることなくフィルタ内蔵アンテナ30を使うことで不要輻射を低減できるとともに、マッチング回路46により、小型の電子機器であるハンディターミナル1に実装するフィルタ内蔵アンテナ30のインピーダンスマッチングを確実にとることができる。特に、アンテナエレメント31は、接続部313が曲がっているので、インピーダンスが50Ωよりも小さくなるが、マッチング回路46により、インピーダンスマッチングを確実にとることができる。
【0076】
また、フィルタ内蔵アンテナ30は、アンテナエレメント31が取り付けられたアンテナエレメント取付基板部32と、アンテナエレメント取付基板部32にピン接続するピン接点331を有するコネクタ33と、を備える。このため、アンテナエレメント31及びアンテナエレメント取付基板部32を、コネクタ33(及び回路基板部40)から容易に外すことができ、修理時等にアンテナエレメント31及びアンテナエレメント取付基板部32を容易に交換できる。
【0077】
また、フィルタ内蔵アンテナ30は、アンテナエレメント31及びアンテナエレメント取付基板部32を、ハンディターミナル1の筐体としてのケース2A,2Bから突出した位置に実装する実装具60を備える。このため、ケース2A,2B内のメイン基板3等の部品からフィルタ内蔵アンテナ30のアンテナ特性への影響を低減できる。
【0078】
また、実装具60は、ハンディターミナル1の筐体としてのケース2Bに1本の螺子63で螺子止めされる。このため、実装具60並びにアンテナエレメント31及びアンテナエレメント取付基板部32をさらに容易にケース2Bから取り外して交換できる。
【0079】
また、フィルタ内蔵アンテナ30は、アンテナエレメント31、アンテナエレメント取付基板部32、コネクタ33及び回路基板部40が、一体的にハンディターミナル1にフローティング実装されている。このため、落下等によるフィルタ内蔵アンテナ30への衝撃を干渉することができる。また、ピン接点331が衝撃で力を受けることが無くなり、接触不良や接点劣化をなくすことができる。
【0080】
また、フィルタ内蔵アンテナ30は、回路基板部40の配線部分に同軸ケーブル80を介して給電される。このため、フィルタ内蔵アンテナ30の給電点に回路基板部40を配置でき、フィルタ内蔵アンテナ30の構造を簡単にでき、フィルタ内蔵アンテナ30を容易に製造できる。
【0081】
また、アンテナエレメント31は、トラップコイル312を有するモノポールマルチバンドアンテナである。このため、マルチバンドの無線通信を行うことができるとともに、アンテナエレメント31の構造を簡単にでき、アンテナエレメント31を容易に製造できる。
【0082】
また、フィルタ内蔵アンテナ30は、回路基板部40のグランド部42に接続され、メイン基板3及び無線通信部16の間に配置されたグランドシート50を備える。このため、無線通信モジュール16Aとメイン基板3のフレームグランドとの接続インピーダンスを下げることができる。
【0083】
また、ハンディターミナル1は、フィルタ内蔵アンテナ30、無線通信部16及びCPU11を備える。このため、インピーダンスマッチングをとることができるフィルタ内蔵アンテナ30を備えた小型のハンディターミナル1を実現できる。
【0084】
(変形例)
図13を参照して、上記実施の形態の変形例を説明する。図13(a)に、本変形例のボビン314を外したアンテナエレメント31aの構成を示す。図13(b)に、ボビン314を取り付けたアンテナエレメント31aの構成を示す。
【0085】
本変形例は、上記実施の形態のハンディターミナル1において、フィルタ内蔵アンテナ30のアンテナエレメント31をアンテナエレメント31aに替えた構成である。このため、アンテナエレメント31aについてのみ説明する。
【0086】
図13(a)に示すように、アンテナエレメント31aは、先端部311と、トラップコイル312と、接続部313と、ボビン314と、を有する。ボビン314は、樹脂等で構成され、トラップコイル312の中空部分に対応した円筒形状を有し、表面に螺子溝が施されている。
【0087】
図13(b)に示すように、ボビン314は、トラップコイル312の中空部に取り付けられる。ボビン314の螺子溝に、トラップコイル312が嵌合される。
【0088】
以上、本変形例によれば、本変形例のアンテナエレメント31aを有するフィルタ内蔵アンテナ及びハンディターミナルは、トラップコイル312の中空部に取り付けられ、螺子溝が施されたボビン314を備える。このため、上記実施の形態のフィルタ内蔵アンテナ30及びハンディターミナル1と同様の効果を有するとともに、ボビン314がトラップコイル312を固定でき、トラップコイル312の変形を防ぐことができ、フィルタ内蔵アンテナの製造品質を良くすることができ、部品管理及び輸送を容易にすることができる。
【0089】
なお、上記実施の形態及び変形例における記述は、本発明に係るフィルタ内蔵アンテナ及び電子機器の一例であり、これに限定されるものではない。
【0090】
また、上記実施の形態及び変形例では、無線通信機能を有する電子機器としてハンディターミナルを用いる構成としたが、これに限定されるものではない。無線通信機能を有する電子機器としては、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯電話機、PHS(Personal Handyphone System)端末、ネットブック、電子ブックリーダ等、他の電子機器としてもよい。また、電子機器は、1次元バーコード等のシンボルを読み取るレーザスキャナや、イメージスキャナを備える構成としてもよい。
【0091】
また、上記実施の形態及び変形例では、2つの通信帯域を有するマルチバンドアンテナとしてのフィルタ内蔵アンテナを説明したが、これに限定されるものではない。フィルタ内蔵アンテナとして、1つの通信帯域を有するシングルバンドアンテナや、3つ以上の通信帯域を有するマルチバンドアンテナを用いる構成としてもよい。また、金属ワイヤーのアンテナエレメントを有するフィルタ内蔵アンテナに限定されるものではなく、フィルムアンテナ等、別の構造のアンテナエレメントを用いるフィルタ内蔵アンテナとしてもよい。
【0092】
また、上記各実施の形態及び変形例におけるフィルタ内蔵アンテナ及びハンディターミナルの各構成要素の細部構成及び細部動作に関しては、本発明の趣旨を逸脱することのない範囲で適宜変更可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0093】
1 ハンディターミナル
2A,2B ケース
201,202,203 螺子穴
3 メイン基板
11 CPU
12 操作部
12A 各種キー
12B キー
13 RAM
14 表示部
15 ROM
16 無線通信部
16A 無線通信モジュール
17 フラッシュメモリ
18 I/F部
19 RFIDリーダライタ部
20 磁気リーダ部
21 電源部
22 バス
30 フィルタ内蔵アンテナ
31,31a アンテナエレメント
311 先端部
312 トラップコイル
313 接続部
314 ボビン
32 アンテナエレメント取付基板部
321 接触部
322 アンテナエレメント取付部
323 穴
33 コネクタ
331 ピン接点
40 回路基板部
401,402,403 螺子穴
41 基板
42,48 グランド部
421,471 スルーホール
43,47 接続部
44 フィルタ回路
46 マッチング回路
441,442,462 インダクタ
443,444,445,446,447,461,463 コンデンサ
45 配線部
50 グランドシート
501,502,503,504,505,506,507,508 穴
60 実装具
61 アンテナエレメント実装部
62 穴
63 螺子
70 カバー部
71 実装具カバー部
72,73 螺子カバー部
74,75 螺子
76,77 穴
80 同軸ケーブル
81 芯線
82 絶縁体
83 外部導体
84 保護被覆部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に実装されるフィルタ内蔵アンテナであって、
アンテナエレメントと、
前記アンテナエレメントに接続された回路基板部と、を備え、
前記回路基板部は、
前記アンテナエレメントの入出力信号のフィルタリングを行うフィルタ回路と、
前記アンテナエレメントのインピーダンスマッチングをとるマッチング回路と、を有するフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項2】
前記アンテナエレメントが取り付けられたアンテナエレメント取付基板部と、
前記アンテナエレメント取付基板部及び前記回路基板部に接続されたコネクタと、を備え、
前記コネクタは、前記アンテナエレメント取付基板部の配線部分とピン接続するピン接点を有する請求項1に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項3】
前記アンテナエレメント及び前記アンテナエレメント取付基板部を、前記電子機器の筐体から突出した位置に実装する実装具を備える請求項2に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項4】
前記実装具は、前記電子機器の筐体に螺子止めされる請求項3に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項5】
前記アンテナエレメント、前記アンテナエレメント取付基板部、前記コネクタ及び前記回路基板部が、一体的に前記電子機器にフローティング実装されている請求項2から4のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項6】
前記回路基板部は、配線部分に同軸ケーブルを介して給電される請求項1から5のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項7】
前記アンテナエレメントは、トラップコイルを有するモノポールマルチバンドアンテナである請求項1から6のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項8】
前記トラップコイルの中空部に取り付けられ、螺子溝が施されたボビンを備える請求項7に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項9】
前記回路基板部のグランド部に接続され、前記電子機器のメイン基板及び無線通信部の間に配置されたグランドシートを備える請求項1から8のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナ。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載のフィルタ内蔵アンテナと、
前記フィルタ内蔵アンテナを介して外部機器と無線通信する無線通信部と、
前記無線通信部を制御する制御部と、
を備える電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−74790(P2012−74790A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216370(P2010−216370)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】