説明

フィルムの製造方法

【課題】ブロッキングし難く、およびフィルムのフィッシュアイを低減することができるフィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を環状ダイからチューブ状に溶融押出しし、チューブ状フィルム3を得、チューブ状フィルム3を安定板4により扁平状に折りたたみ、扁平状折りたたみフィルム5を得、扁平状折りたたみフィルム5の両端の折り目部をトリミングして除去し、二枚の重ねられたフィルムを得、さらに二枚の重ねられたフィルムを一枚ずつに分け、二枚のフィルムのそれぞれについて、複数の加熱ロール7,8を用いて、熱可塑性樹脂の融点より5〜30℃低い温度まで加熱することにより、加熱されたフィルムを得、加熱されたフィルムを、表面が鏡面である加熱ロール9と、表面が非鏡面である弾性ロール10とで挟圧して、挟圧されたフィルムを得、挟圧されたフィルムを冷却して、冷却されたフィルムを得、冷却されたフィルムを巻き取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムの片面に微粘着性を有し、保護フィルム等に用いられるフィルムの製造方法であって、フィルムをロール状に巻き取ったり、又は積み重ねたりする際にブロッキングし難く、およびフィルムのフィッシュアイを低減することができるフィルムの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルムにいわゆるフィッシュアイと呼ばれる欠陥が多いと、外観の悪化、印刷時の印刷抜け等の問題が生じることがあり、特に樹脂フィルム、樹脂板、金属板(以下、「被着物」と記載することがある。)の表面を保護するために、これらの表面に貼り合わされる表面保護フィルムにおいては、被着物に凹み傷がついたり、被着物の異物検査時に誤検知されたりすることからフィッシュアイの低減が求められていた。
【0003】
このようなフィッシュアイを低減させる方法として、例えば、特許文献1には、押出機に取り付けられたダイスからシート状に押し出された非晶性熱可塑性樹脂フィルムを冷却ロールに密着させる際に、表面粗さRyが0.5μm以下である弾性変形可能なタッチロールと剛体の冷却ロールで挟圧する、光学フィルムの製造方法が記載されている。
また、特許文献2には、磨かれたクロムロールとゴムロールとの間で溶融ポリエチレンを圧縮することによって、片側がつやけしエンボス加工されたポリエチレンフィルムを製造することが記載され、該ポリエチレンフィルムは、吹込み(blown)フィルムプロセスによって製造することができることも記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−330651号公報
【特許文献2】特開平1−128825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載された方法においても、フィルムの片面に微粘着性を有するフィルムにおいて、フィルムをロール状に巻き取ったり、又は積み重ねたりする際にブロッキングし難く、およびフィルムのフィッシュアイを低減させるために、更なる改良が求められていた。
【0006】
かかる状況の下、本発明の課題は、フィルムの片面に微粘着性を有し、保護フィルム等に用いられるフィルムの製造方法であって、フィルムをロール状に巻き取ったり、又は積み重ねたりする際にブロッキングし難く、およびフィルムのフィッシュアイを低減することができるフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意検討の結果、本発明が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂(成分(A))を環状ダイからチューブ状に溶融押出しし、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を得、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を空気で膨らませることによって、少なくとも1層以上の熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を得、熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を、エアリング装置により空冷し、少なくとも1層以上のチューブ状フィルム(成分(D))を得、チューブ状フィルム(成分(D))を安定板により扁平状に折りたたみ、扁平状折りたたみフィルム(成分(E))を得る工程(工程1)、工程1で得られた扁平状折りたたみフィルム(成分(E))の両端の折り目部をトリミングして除去し、二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を得、さらに二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を一枚ずつに分ける工程(工程2)、工程2で分けられた二枚のフィルム(成分(G))のそれぞれについて、回転速度がひとつ前の加熱ロールと同じか、またはひとつ前の加熱ロールより大きく設定された複数の加熱ロールを用いて、熱可塑性樹脂(成分(A))の融点より5〜30℃低い温度まで加熱することにより、加熱されたフィルム(成分(H))を得る工程(工程3)、工程3で得られた加熱されたフィルム(成分(H))を、表面が鏡面である加熱ロールと、表面が非鏡面である弾性ロールとで挟圧して、挟圧されたフィルム(成分(I))を得る工程(工程4)、工程4で得られた挟圧されたフィルム(成分(I))を冷却して、冷却されたフィルム(成分(J))を得る工程(工程5)、および工程5で得られた冷却されたフィルム(成分(J))を巻き取る工程(工程6)を有する、フィルムの製造方法にかかるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、片面に微粘着性を有し、ロール状に巻き取ったり、又は積み重ねたりする際にブロッキングし難く、およびフィッシュアイが低減されたフィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に関わる装置の一態様を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0012】
本発明のフィルムの製造方法は、少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂(成分(A))を環状ダイからチューブ状に溶融押出しし、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を得、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を空気で膨らませることによって、少なくとも1層以上の熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を得、熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を、エアリング装置により空冷し、少なくとも1層以上のチューブ状フィルム(成分(D))を得、チューブ状フィルム(成分(D))を安定板により扁平状に折りたたみ、扁平状折りたたみフィルム(成分(E))を得る工程(工程1)、工程1で得られた扁平状折りたたみフィルム(成分(E))の両端の折り目部をトリミングして除去し、二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を得、さらに二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を一枚ずつに分ける工程(工程2)、工程2で分けられた二枚のフィルム(成分(G))のそれぞれについて、回転速度がひとつ前の加熱ロールと同じか、またはひとつ前の加熱ロールより大きく設定された複数の加熱ロールを用いて、熱可塑性樹脂(成分(A))の融点より5〜30℃低い温度まで加熱することにより、加熱されたフィルム(成分(H))を得る工程(工程3)、工程3で得られた加熱されたフィルム(成分(H))を、表面が鏡面である加熱ロールと、表面が非鏡面である弾性ロールとで挟圧して、挟圧されたフィルム(成分(I))を得る工程(工程4)、工程4で得られた挟圧されたフィルム(成分(I))を冷却して、冷却されたフィルム(成分(J))を得る工程(工程5)、および工程5で得られた冷却されたフィルム(成分(J))を巻き取る工程(工程6)を有する。
【0013】
工程1は、少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂(成分(A))を環状ダイからチューブ状に溶融押出しし、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を得、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を空気で膨らませることによって、少なくとも1層以上の熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を得、熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を、エアリング装置により空冷し、少なくとも1層以上のチューブ状フィルム(成分(D))を得、チューブ状フィルム(成分(D))を安定板により扁平状に折りたたみ、扁平状折りたたみフィルム(成分(E))を得る工程である。溶融押出する温度は用いる熱可塑性樹脂(成分(A))の溶融粘度により適宜選択すればよいが、例えば、190℃、2.16kgfの荷重におけるメルトフローレートが2g/10min程度の樹脂であれば、通常、130〜200℃である。
【0014】
工程1で用いる熱可塑性樹脂(成分(A))としては、例えば、公知の熱可塑性樹脂を用いてよく、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂が挙げられる。特にインフレーションフィルム成形の容易さからポリエチレン系樹脂が好ましい。また、熱可塑性樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、エチレンと炭素数4〜12のα−オレフィンとの共重合体、超低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸エステルとの共重合体が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられ、不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、エチルアクリレート、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、グリシジルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、グリシジルメタクリレートが挙げられる。ポリエチレン系樹脂に含まれるエチレンに由来する構造単位の含有量(重量%)として、好ましくは、60重量%以上であり、より好ましくは、70重量%以上であり、更に好ましくは、80重量%以上である(ただし、ポリエチレン系樹脂の全重量を100重量%とする。)。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレンと、エチレンおよび炭素数4〜12のα−オレフィンの1種以上との共重合体、主にプロピレンからなるモノマーを重合して得られる重合体成分と、プロピレンとエチレンおよび/または炭素数4〜12のα−オレフィンからなるモノマーを共重合して得られる共重合体成分を、少なくとも2段以上の多段で製造して得られるポリプロピレン系共重合体等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂に含まれるプロピレンに由来する構造単位の含有量(重量%)として、好ましくは、60重量%以上であり、より好ましくは、70重量%以上であり、更に好ましくは、80重量%以上である(ただし、ポリプロピレン系樹脂の全重量を100重量%とする。)。
【0017】
工程1で用いる熱可塑性樹脂は(成分(A))、1種単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上の混合物とする方法は、通常の混合操作、例えば、タンブラーブレンダー法、ヘンシェルミキサー法、バンバリーミキサー法、押出造粒法、または計量混合機を用いてペレットを所定の配合比に混合する方法等が挙げられ、これらの方法によって得られた混合物を押出機に投入すればよい。
【0018】
また、本発明のフィルムは単層であってもよく、または複数の層が積層されたものであってもよい。複数の層を積層とする場合は、例えば、共押出法によって、2層以上のフィルムを得ることができる。
【0019】
工程1で用いる熱可塑性樹脂(成分(A))には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて、添加剤を混合して用いてもよい。添加剤としては、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、金属不活性剤、抗ブロッキング剤等が挙げられる。被着物への残存付着物を少なくするという観点から、熱可塑性樹脂に対する添加剤の濃度として好ましくは、2000ppm以下であり、より好ましくは、1000ppm以下であり、さらに好ましくは、500ppm以下である。
【0020】
これらの添加剤は、低密度ポリエチレンや直鎖状低密度ポリエチレン等の樹脂に予め練り込まれたマスターバッチの形態であってもよく、本発明の効果を損なわない限りマスターバッチのベース樹脂の種類に特に制限はない。
【0021】
工程2は、工程1で得られた扁平状折りたたみフィルム(成分(E))の両端の折り目部をトリミングして除去し、二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を得、さらに二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を一枚ずつに分ける工程である。扁平状折りたたみフィルム(成分(E))の両端の折り目部をトリミングする方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、シアーカット方式やレザーカット方式が挙げられる。二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を一枚ずつに分ける方法は、巻取機を二系列用意し、それぞれに巻き取らせればよい。
【0022】
工程3は、工程2で分けられた二枚のフィルム(成分(G))のそれぞれについて、回転速度がひとつ前の加熱ロールと同じか、またはひとつ前の加熱ロールより大きく設定された複数の加熱ロールを用いて、熱可塑性樹脂(成分(A))の融点より5〜30℃低い温度まで加熱することにより、加熱されたフィルム(成分(H))を得る工程である。各加熱ロールの回転速度を、ひとつ前のロールより大きくした場合には、該加熱されたフィルムが引取り方向に延伸され、延伸されたフィルムが得られる。
【0023】
工程3において、フィルムが各加熱ロールを通過するにつれ、徐々にフィルムが軟化し、工程4での挟圧時にフィッシュアイ部がロール間で押し潰されやすくなる。さらに工程4で該加熱されたフィルムを表面が鏡面である加熱ロールと、表面が非鏡面である弾性ロールとで挟圧する際に、表面が鏡面である加熱ロールと接触するフィルム面では、鏡面ロールの平滑性がフィルム面に転写されやすく、得られるフィルム表面が平滑になりやすいため、得られたフィルムを被着物に貼り合わせた際の密着性が高まり好ましく、また表面が非鏡面である弾性ロールと接触するフィルム面では、非鏡面ロールの表面あれが転写されるため、得られるフィルム表面がブロッキングしにくいという特性が発現される。各加熱延伸ロールの設定温度は上流側から下流側に向かって徐々に高くなるようにし、最下流側の加熱ロールで、熱可塑性樹脂の融点より5〜30℃低い温度が好ましく、より好ましくは5〜20℃低い温度であり、さらに好ましくは5〜15℃低い温度である。この温度より高いと、フィルムがロールに巻きつきやすくなり好ましくない。また低すぎると工程4で、フィッシュアイの押し潰し効果が小さくなりやすく、好ましくない。
【0024】
さらにフィルムが加熱ロールを通過する際に、各加熱ロールの回転速度をひとつ前のロールより大きくすることにより、加熱されたフィルムを引取り方向に延伸し、延伸されたフィルムが得られる。フィルムが延伸されることにより、表面保護フィルムが被着物に貼り合わされるときに伸びにくくなり、貼り合わせた後に積層フィルムが反り難くなる。各加熱ロールの回転速度をひとつ前のロールより大きくする場合の各ロールの回転速度の設定に特に制限はないが、例えば最初の加熱ロールに対する最後の加熱ロールの回転速度が1.01倍〜2倍程度になるようにすればよい。またひとつ前のロールと同じ速度の場合があっても構わない。
【0025】
工程4は、工程3で得られた加熱されたフィルム(成分(H))を、表面が鏡面である加熱ロールと、表面が非鏡面である弾性ロールとで挟圧して、挟圧されたフィルム(成分(I))を得る工程である。工程4で用いる表面が鏡面である加熱ロールは、工程3で用いる最後の加熱ロールにあたる。表面が非鏡面である弾性ロールは、その表面の表面粗さが、最大高さ(Rmax)で、好ましくは、2.0μm以上であり、より好ましくは、2.5μm以上であり、さらに好ましくは、4.5μm以上である。表面の表面粗さが、最大高さ(Rmax)で2.0μm以上である弾性ロールを用いると、該弾性ロールの表面あれがフィルムの片面に転写され、該弾性ロールに接触した側のフィルムの表面が適度にあれることにより、製造するフィルムが、ブロッキングし難くなる。このような弾性ロールの例としては、例えば、シリコンゴムロールが挙げられる。製造するフィルムのフィッシュアイ検査が容易であるという観点から、最大高さ(Rmax)として、好ましくは、10μm以下であり、より好ましくは、8μm以下であり、更に好ましくは、6μm以下である。なお、最大高さ(Rmax)は、JIS B0601−1982に規定されている。また、弾性ロールの表面の硬度は、ゴムロールではJIS K6253 デュロメータ タイプAによる測定で50°以上であることが好ましく、より好ましくは、60°以上であり、さらに好ましくは、70°以上である。表面硬度が50°未満であると、フィッシュアイの押し潰し効果が不十分な場合がある。
【0026】
工程4で用いる表面が鏡面である加熱ロールは、その表面の表面粗さが、最大高さ(Rmax)で0.5μm以下であることを意味し、好ましくは、0.3μm以下であり、より好ましくは、0.2μm以下である。表面が鏡面である加熱ロールを用いると、表面が平滑であり、これがフィルムの片面に転写されることにより、製造するフィルムの表面の平滑性が高まり、フィルムとして被着物に貼り合わせる際に密着しやすくなり、すなわち微粘着性の効果が得られる。
表面が鏡面である加熱ロールの表面の表面粗さが、最大高さ(Rmax)で0.5μmを超えると、被着物を貼り合わす面の平滑性が悪く、粘着性が低下するため、被着物への貼り合わせが不十分となりやすくなる。最大高さ(Rmax)として好ましくは、0.01〜0.5μmである。
【0027】
表面が鏡面である加熱ロールの材質は金属製のものが好ましいが、一般的にフィルム加工機用のロールとして用いられているものであれば特に制限はなく、例えば、炭素鋼やステンレス鋼が挙げられ、さらにこれらに硬質クロムメッキ処理を施したものが挙げられる。
【0028】
工程4で用いる表面が鏡面である加熱ロールと表面が非鏡面である弾性ロールの表面粗さを所定のあらさに加工する方法としては、例えば、バフ研磨等の公知の表面仕上げ方法を用いることができる。
【0029】
工程4で用いる表面が鏡面である加熱ロールの温度は、ロール内に冷却水が流れる場合には、ロール入口での冷却水温度が熱可塑性樹脂の融点より5〜30℃低い温度であることが好ましい。ロール内に冷却水が流れない場合は、ロールの幅方向の中央部で、樹脂が接触する直前のロール部分の表面温度が、熱可塑性樹脂の融点より5〜30℃低い温度であることが好ましい。温度が低すぎると表面が鏡面である加熱ロールや表面が非鏡面である弾性ロールの表面形状がフィルムに転写されにくくなり、高すぎるとフィルムが表面が鏡面である加熱ロールや表面が非鏡面である弾性ロールに巻きつきやすくなる。より好ましくは、熱可塑性樹脂の融点より5〜20℃低い温度であり、さらに好ましくは、熱可塑性樹脂の融点より5〜15℃低い温度である。
【0030】
工程4における挟圧とは、表面が鏡面である加熱ロールに表面が非鏡面である弾性ロールを押し付けることによって、これらのロールの間を通過するフィルムを挟むことである。この際に、表面が鏡面である加熱ロールと接触したフィルムの片面が平滑となり、得られるフィルムの片面が微粘着性を発現する。また、表面が非鏡面である弾性ロールと接触したフィルムの片面は、表面あれが転写され、得られるフィルムの片面がブロッキングを起こしにくくなるとともに、フィルムの加工時においてもフィルムが滑りやすくなるために、きれいに巻き取りやすくなる。さらにフィルムを繰り出す際にフィルム同士のブロッキングも軽減されているため、繰り出しやすくなる。さらに挟圧によってフィッシュアイが押し潰され、フィッシュアイが低減する。
【0031】
表面が鏡面である加熱ロールと表面が非鏡面である弾性ロールとで、フィルムを挟圧する方法としては、例えば、表面が鏡面である加熱ロールの位置を固定し、表面が非鏡面である弾性ロールを移動させて押し付ける方法、表面が非鏡面である弾性ロールの位置を固定し、表面が鏡面である加熱ロールを押し付ける方法等が挙げられ、好ましくは、表面が鏡面である加熱ロールの位置を固定し、表面が非鏡面である弾性ロールを押し付ける方法である。押し付ける際の圧力は、フィルムが表面が鏡面である加熱ロールに完全に密着する圧力以上であればよく、フィルムの軟化度や厚みなどによって適宜調整すればよい。
【0032】
工程4は、工程3を行った後、連続して直ちに工程4を行うことが好ましい。
【0033】
工程5は、工程4で得られた挟圧されたフィルム(成分(I))を冷却して、冷却されたフィルム(成分(J))を得る工程である。挟圧されたフィルムを冷却する方法としては、例えば、冷却ロールを用いて冷却する方法が挙げられる。冷却効率の点から冷却ロールの表面材質は金属製が好ましい。冷却温度は特に制限はないが、好ましくは、10〜50℃であり、より好ましくは、10〜30℃である。低すぎるとロールが結露しやすくなり好ましくない。
【0034】
工程6は、工程5で得られた冷却されたフィルム(成分(J))を巻き取る工程である。巻き取る方法としては、巻取機で巻き取る等、通常の方法で巻き取ればよい。なお工程5の後、工程6で巻き取るまでの間に、再度フィルム両端をトリミングして、所定のフィルム幅となるようにしてもよい。
【0035】
本発明の製造方法によって得られるフィルムは、表面保護フィルムとして好適に用いられる。表面保護フィルムとしては、例えば、樹脂板、金属板;液晶ディスプレイ用基盤ガラス、液晶表示用偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散シート等のフラットパネルディスプレイ(FPD)用部材;ブルーレイディスク、DVD等の光ディスクを構成するフィルム;等の表面を保護するためのフィルムとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0036】
1 押出機
2 環状ダイ
3 熱可塑性樹脂溶融バブル
4 安定板
5 扁平状折りたたみフィルム
6 トリミング装置
7 第一加熱ロール
8 第二加熱ロール
9 表面が鏡面である加熱ロール
10 表面が非鏡面である弾性ロール
11 第一冷却ロール
12 第二冷却ロール
13 巻取機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種以上の熱可塑性樹脂(成分(A))を環状ダイからチューブ状に溶融押出しし、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を得、チューブ状熱可塑性樹脂(成分(B))を空気で膨らませることによって、少なくとも1層以上の熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を得、熱可塑性樹脂溶融バブル(成分(C))を、エアリング装置により空冷し、少なくとも1層以上のチューブ状フィルム(成分(D))を得、チューブ状フィルム(成分(D))を安定板により扁平状に折りたたみ、扁平状折りたたみフィルム(成分(E))を得る工程(工程1)、工程1で得られた扁平状折りたたみフィルム(成分(E))の両端の折り目部をトリミングして除去し、二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を得、さらに二枚の重ねられたフィルム(成分(F))を一枚ずつに分ける工程(工程2)、工程2で分けられた二枚のフィルム(成分(G))のそれぞれについて、回転速度がひとつ前の加熱ロールと同じか、またはひとつ前の加熱ロールより大きく設定された複数の加熱ロールを用いて、熱可塑性樹脂(成分(A))の融点より5〜30℃低い温度まで加熱することにより、加熱されたフィルム(成分(H))を得る工程(工程3)、工程3で得られた加熱されたフィルム(成分(H))を、表面が鏡面である加熱ロールと、表面が非鏡面である弾性ロールとで挟圧して、挟圧されたフィルム(成分(I))を得る工程(工程4)、工程4で得られた挟圧されたフィルム(成分(I))を冷却して、冷却されたフィルム(成分(J))を得る工程(工程5)、および工程5で得られた冷却されたフィルム(成分(J))を巻き取る工程(工程6)を有する、フィルムの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−245751(P2011−245751A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−121479(P2010−121479)
【出願日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】