説明

フィルムを製造するための方法及び装置

本発明は、選択的に多色のフィルムの簡単且つ費用効率的な製造を可能にする方法及び装置に関する。この方法において、フィルムを製造するために、最初にトナーを輸送ベルトに、印刷ユニットを用いて付与し、本質的に不断のトナー層が前記輸送ベルト上に形成されるようにする。次いで、前記輸送ベルト上の前記トナーを、第1の熱源により、前記トナーの融点よりも高い温度に加熱し、次いで、前記トナーの融点よりも低い温度に冷却する。最後に、前記トナーを凝集材料層として前記輸送ベルトから取り外す。本発明の装置は、輸送ベルトと、トナーを前記輸送ベルトに付与するために配置された印刷ユニットと、熱源とを備える。前記輸送ベルトの移動方向において、前記印刷ユニットの下流に、前記熱源が配置されて、前記輸送ベルト上に存在する前記トナーを加熱することができるように、且つ、前記トナーを前記トナーの融点よりも高い温度に加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムを製造するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルムを製造するための非常に多くの様々な方法が当分野で知られており、これらのうち、押出及びカレンダリング技術が、代表的な従来の方法である。
【0003】
一般的に、これらの方法により製造が可能であるのは、白黒フィルム及び透明フィルムのみである。多色フィルム、又は、画像若しくはテキストを有するフィルムを製造するためには、これらのフィルムを最初のフィルム製造ステップの後に印刷しなければならず、これは非常に複雑であり、また、接着の問題を生じることが多い。さらに、原則として、この方法が可能であるのは、付与されたトナー粒子を融着するために通常適用される温度に耐えられる特別なフィルムを用いた場合のみである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルムを製造するための従来の方法及び装置に基づき、本発明の目的は、選択的に多色のフィルムの製造を簡単且つ費用効率的に可能にする方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、この目的は、請求項1に記載されている方法、及び請求項19に記載されている装置を用いて達成される。本発明のさらなる実施形態は従属請求項から明らかである。
【0006】
詳細には、フィルムを製造するための方法が提供される。この方法において、トナーを輸送ベルトに、少なくとも1つの印刷ユニットを用いて付与し、本質的に不断のトナー層が前記輸送ベルト上に形成されるようにする。次いで、前記輸送ベルト上のトナーが、少なくとも1つの第1の熱源により、前記トナーの融点よりも高い温度に加熱され、次いで、前記トナーの融点よりも低い温度に冷却され、そして、前記輸送ベルトから凝集材料層として取り外される。上記の方法を用いることにより、トナーから直接フィルムを製造することが簡単に可能にされ、これは、特に、多色(及び、必要であればフルカラー)画像フィルムの形成を可能にする。本件において、用語「本質的に不断のトナー層」(an essentially uninterrupted toner layer")とは、トナーを前記トナーの融点よりも高い温度に加熱する時に互いに接触して合体し、それにより凝集材料層を形成するトナー粒子を有するトナー層を意味する。しかし、この層の特定の位置に開口部を設けることも可能である。詳細には、トナー層の特定の位置に開口部を設け、それにより、任意の種類の形状を、トナー層のトリミングを全く必要とせずに複製することが可能である。この方法は、連続的なフィルムウェブを製造すること、そしてまた、トリミングを必要としないシートタイプのフィルム部分を製造することの、簡単且つ費用効率的な方法を可能にする。シートタイプのフィルムは、例えば、トナーをフィルムの形態で、適切なフリースペースが後続フィルムに対して残された状態で付与することにより製造される。
【0007】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記トナーのポリマー鎖が、前記トナーが前記フィルムの安定性をさらに増大するために溶融されているときに架橋される。これを行うために、熱架橋トナーが、前記トナーの前記融点よりも高い温度に、少なくとも1秒間、好ましくは、1秒〜10秒間維持される。或いは、又は、さらに、紫外線架橋トナーに紫外線を、前記トナーが前記トナーの前記融点よりも高い温度を有しているときに照射することも可能である。
【0008】
好ましくは、少なくとも第2の熱源が、前記トナーの温度を予め特定された時間にわたり前記トナーの前記融点よりも高い温度に維持するために設けられる。好ましくは、前記トナーは、前記トナーと接触していない熱源により加熱され、且つ/又は、前記融点よりも高い温度に維持される。非常に急速な非接触加熱のために、特には、マイクロ波アプリケータを熱源として設けることが可能である。前記トナーの温度を維持するために、特には、赤外線源を第2の熱源として設けることが可能である。また、本質的に閉鎖されているオーブンチャンバを熱源として設けることも可能であり、この場合、トナーが付与された前記輸送ベルトが前記オーブンチャンバを通って移動される。或いは、ホットエアを前記トナーに向けさせる熱源を用いることも考えられる。
【0009】
本発明の一実施形態において、前記トナーは、冷却されているときに、前記輸送ベルトの片面と、前記輸送ベルトに対向する循環ベルトとの間に挟まれる。このように2つのベルトの間に挟むことにより、画定された面構造でのフィルム形成が可能になる。好ましくは、前記トナーは、加熱されているときにも前記輸送ベルトの片面と前記循環ベルトとの間に挟まれる。
【0010】
本発明の特に好ましい実施形態によれば、複数の印刷ユニットが異なるトナーを前記輸送ベルトに付与し、これにより、多色フィルム(必要であれば、パターン又は任意の画像も施される)を形成することを可能にする。これを行うために、異なる色を有するトナーが付与されることが好ましい。好ましくは、少なくとも1つの無色のトナーが、本質的に不断の無色トナー層が形成されるように付与される。この無色トナー層は、例えば、連続的な支持層又は接着層として機能し得る。そして、異なる色のトナーが、必要に応じて、例えば画像及び構造を形成するために用いられ得る。好ましくは、前記無色のトナーは、用いられている他のトナーの平均粒径よりも大きい平均粒径を有し、それにより、前記トナー粒子の溶融堆積後に十分に安定した溶融トナー層をもたらす。
【0011】
本発明の好ましい実施形態において、トナーが前記輸送ベルトに、電子写真印刷方法により付与される。
【0012】
また、本発明の目的は、フィルムを製造するための装置により達成される。前記装置は、輸送ベルトと、トナーを付与するために前記輸送ベルト上に配置された少なくとも1つの印刷ユニットと、前記輸送ベルトの移動方向において前記少なくとも1つの印刷ユニットの下流に、前記輸送ベルト上に存在するトナーを加熱することができるように配置された少なくとも1つの熱源とを備える。前記熱源は、前記トナーを前記トナーの融点よりも高い温度に加熱することに適している。このような装置は、先に述べた方法によりトナーから直接フィルムを製造することを可能にし、従って、前記方法と同一の利点ももたらす。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの冷却ユニットが、前記輸送ベルトの移動方向において前記少なくとも1つの熱源の下流に、前記輸送ベルト上に存在するトナーを冷却することができるように配置されて設けられ、前記冷却ユニットは、前記トナーを前記トナーの前記融点よりも低い温度に冷却することに適している。好ましくは、前記輸送ベルトの輸送速度及び/又は前記熱源を制御するための少なくとも1つの制御ユニットが、前記トナーの適切な溶融堆積を保証するために設けられる。一実施形態において、少なくとも1つの紫外線源が、紫外線を前記輸送ベルトの前記少なくとも1つの熱源の領域内に向けさせ、それにより前記トナーの溶融状態での紫外線架橋が可能であるように設けられる。
【0014】
また、前記輸送ベルトの移動方向において前記少なくとも1つの第1の熱源の下流に配置され、且つ前記トナーを前記トナーの前記融点よりも高い温度に維持するのに適した第2の熱源を設けることも可能である。前記第2の熱源は、特には、熱架橋トナーに対して、前記トナーが所定の時間にわたりトナーの溶融温度よりも高い温度に維持されることを可能にする。好ましくは、少なくとも1つの熱源が、前記トナーを、前記トナーの構造と、従って前記トナーにより形成される画像又はパターンとを損なわないように非接触式に加熱するのに適している。適切な熱源は、特には、マイクロ波アプリケータ、赤外線源、赤外線成分及び紫外線成分を有する(前記赤外線成分及び前記紫外線成分の両方が少なくとも20%である)照射線源、本質的に閉鎖されているオーブンチャンバ、及び/又はホットエア源である。或いは、前記熱源として、互いに対して付勢された2つのローラを設けることも可能であり、前記ローラの少なくとも一方が、対応する加熱装置を介して加熱可能であり、前記輸送ベルトが前記ローラ間のニップを通過される。印刷技術において、このようなローラが、画像を支持基板に融着させるものとして知られている。本発明の一実施形態によれば、循環ベルトが設けられ、前記ベルトは、前記輸送ベルトに、前記少なくとも1つの熱源及び前記少なくとも1つの冷却ユニットの少なくとも有効領域を覆う領域に沿って接触する。先に述べたように、このような追加の循環ベルトは、画定された面構造をフィルム上に形成することを可能にする。前記第1の熱源が、対向して配置された2つのローラを有する場合、前記ローラの一方が、好ましくは、前記循環ベルトのための偏向ローラである。
【0015】
有利には、前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトは、グロッサベルトとして設計されて、高光沢性フィルムを製造することを可能にする。グロッサベルトは、印刷技術にて知られているように、非常に低い表面粗度を示すベルトである。好ましくは、前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトが粘着防止材料から成り、又は粘着防止材料のような材料によりコーティングされ、それにより、前記フィルムを良好に取り外すことを可能にする。これを達成するために、前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトは、例えば、ポリイミド材料から成り、又はポリイミド材料のような材料によりコーティングされる。
【0016】
割れ目が可能な限り少ない連続フィルムウェブを製造するために、前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトは、好ましくはシームレス(継ぎ目無し)のウェブ材料から成る。或いは、前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトは、継ぎ目が形成された場合においても前記継ぎ目が画像化されないように、本質的に平坦な外面を有し得る。前記輸送ベルト上の前記トナーへの直接の照射を可能にするために、前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトは、本発明の一実施形態において透明な材料から成る。
【0017】
本発明の特に好ましい実施形態は、異なるトナーを前記輸送ベルト上に付与するための複数の印刷ユニットを有し、これにより、例えば、多色画像、特にはフルカラー画像、又は、パターンを有する構造を形成することができる。この実施形態において、好ましくは、少なくとも1つの印刷ユニットが、本質的に不断のトナーカバーを前記輸送ベルト上に設けることができ、前記トナーカバーは、例えば、粘着性支持体又は接着層として機能する。好ましくは、少なくとも1つの印刷ユニットが電子写真印刷ユニットである。本発明の別の実施形態が、前記輸送ベルト及び/又は前記循環ベルトをクリーニングするための少なくとも1つのクリーニング装置を提供する。
【0018】
以下に、本発明を、図面を参照しつつ、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】フィルムを製造するための装置の概略側面図である。
【図2】フィルムを製造するための別の装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明において、位置及び/又は方向に関する情報は、図面に示された内容に関連しているが、本出願を限定するためのものでは全くない。
【0021】
図1は、フィルム3を製造するための装置1の概略側面図である。装置1は、複数の印刷ユニット5、輸送ユニット7、クリーニングユニット9、冷却ユニット10、融着ユニット12、及びトレイ14を備える。
【0022】
図1によれば、フィルム3がシート(枚葉)の形態で示されており、トレイ14上にフィルムシートスタックとして置かれている。前記トレイは、二重矢印Aにより示されているように高さ調節可能である。しかし、後にさらに詳細に説明するように、連続フィルムを装置1により製造し、次いで、この連続フィルムを、例えばロール上に巻き取ることも可能である。
【0023】
図示されている装置1は5つの印刷ユニット5を示し、印刷ユニット5は、例えば、黒色、シアン、マゼンタ、黄色、及び、透明なトナーと共に動作されることができる。当業者に明らかであるように、もちろん、異なる色のトナーと共に動作する別の個数の印刷ユニットを設けることも可能である。
【0024】
印刷ユニット5は電子写真印刷ユニットとして示されており、各々が、イメージング(画像形成)シリンダ16を含む。イメージングシリンダ16は、図示されているように、輸送ユニット7に直接接触している。もちろん、イメージングシリンダ16と輸送ユニット7との間の中間シリンダも設けられ得る。イメージングシリンダ16の各々が、輸送ユニット7より上に配置され、且つ、前記輸送ユニットにより回転方向に駆動される。これに関しては、以下に、より詳細に説明する。イメージングシリンダ16の各々が、対向して配置された圧力ローラ17に関連付けられている。このような印刷ユニット5の多数が当分野にて既に知られているため、詳細には説明しない。
【0025】
輸送ユニット7は、本質的に輸送ベルト18から成り、輸送ベルト18は、閉じた移動経路をもたらすように適切なガイドローラ又は駆動ローラ19の周りにガイドされている。輸送ベルト18は、それぞれの印刷ユニット5のイメージングシリンダ16と圧力ローラ17との間のニップを通過する。輸送ベルト18は、イメージングシリンダ16及び圧力ローラ17と直接摩擦係合し、これにより、輸送ベルトが回転されているときにイメージングシリンダ16及び圧力ローラ17を回転させる。中間シリンダが設けられる場合、このシリンダが輸送ベルト18及びイメージングシリンダ16と摩擦係合することになり、従って、前記シリンダは、間接的にではあるがなお輸送ベルト18により駆動される。
【0026】
好ましくは、輸送ベルト18は粘着防止材料から成り、又は粘着防止材料のような材料によりコーティングされる。このような材料の明らかな例は、例えばポリイミド材料である。輸送ベルト18は、好ましくはシームレス(継ぎ目無し)ベルト材料から成り、或いは、継ぎ目が設けられているならば、少なくとも1つの本質的に平坦な外面を有する。また、輸送ベルトは、融着ユニット12内部の温度により損傷されない材料から成るべきであり、また、透明でもあるべきである。輸送ベルト18の外面は、印刷技術において周知のように、いわゆるグロッサベルト(glosser belt)、すなわち、低表面粗度を示すベルトとして構成され、それにより、高光沢性をトナー像にもたらす。
【0027】
図示されていないが、回転エンコーダが、それぞれのイメージングシリンダ16上に、及び、輸送シリンダ及び/又はガイドシリンダ19の少なくとも1つの上に、前記要素のそれぞれの回転位置を検出するために設けられ得る。これは、既知の方法での、印刷ユニット5による異なる色分解画像の完全位置合わせ(register perfect)印刷を可能にする。この目的のために、及び、キャリブレーションのために、装置1は、レジスタセンサ(図示せず)も含み得る。レジスタセンサは電子写真印刷機にて一般的であり、また、例えば、本出願の出願人に帰する、公開前でないDE 10 2008 052 397に既に記載されている。
【0028】
クリーニングユニット9が、輸送ベルト18の循環方向(矢印Bを参照)にて印刷ユニット5及び融着ユニット12の下流に配置されているのが見られる。クリーニングユニット9は、輸送ベルト18をクリーニングするための適切な手段(例えば、回転ブラシ及び/又は不動ストリッパ)を含む。
【0029】
冷却ユニット10が、輸送ベルト18の循環方向にて、クリーニングユニット9の下流の、且つ印刷ユニット5の上流に配置されているのも見られる。冷却ユニット10は、冷気を、例えば輸送ベルト18の内面又は外面に向けさせ、これにより、前記ベルトを予め特定された温度にすることが可能である。
【0030】
融着ユニット12が印刷ユニット5とクリーニングユニット9との間に配置されている。また、融着ユニット12は、輸送ベルト18が前記融着ユニットを通って延在するように配置されている。少なくとも1つの熱源が融着ユニット12内に設けられており、前記熱源は、輸送ベルト18上のトナーをトナーの溶融温度よりも高い温度に加熱することができる。絶対に必須ではないが、この熱源は、好ましくは、トナーを非接触式に加熱することができる熱源であり、例えば、マイクロ波源、赤外線源、ホットエア源、適切な加熱要素を有する本質的に閉鎖されたオーブンチャンバなどによる熱源である。また、用いられるトナーに応じて、融着ユニット12内に紫外線源を設けることも可能であり、前記紫外線源は、輸送ベルト18、及び、輸送ベルト18上に付与されたトナーに紫外線を向けることができるように配置される。これを達成するために、赤外線成分の他に紫外線成分を有する照射線源が設けられることが可能であり、赤外線成分及び紫外線成分の両方が少なくとも20%であるべきである。
【0031】
もちろん、輸送ベルト18に接触する熱源を設けることも可能であり、前記熱源は、互いに対して作用する2つのローラを含み、例えば、前記ローラの少なくとも一方が加熱される。このような融着ローラは印刷技術において公知である。好ましくは、第2の熱源(詳細に示さず)が融着ユニット内に設けられ、前記熱源は、輸送ベルト18上に存在するトナーをトナーの融点よりも高い温度に、長時間(好ましくは1秒〜10秒、又はそれよりも長時間)にわたり維持することができるように配置される。第2の熱源は、第1の熱源と同一のタイプの熱源であっても、或いは、異なるタイプの熱源であってもよいが、原則として第1の熱源ほど多くのエネルギーをもたらす(couple in)必要がない。なぜなら、特定の温度の維持のみが必要であり、融点温度を超える温度への加熱は必要ないからである。
【0032】
融着装置12内に、又は、輸送ベルト18の循環方向にて融着ユニット12の末端領域に、若しくはさらに下流に、さらなる冷却ユニット(詳細に示さず)が、輸送ベルト18上に存在するトナーをトナーの融点よりも低い温度に冷却するために設けられ得る。
【0033】
以下に、装置1の動作をより詳細に説明する。最初に、輸送ベルト18が循環方向Bにて動作される。次いで、輸送ベルト18の循環方向Bにて上流に見られる4つの印刷ユニット5が、各トナー画像の完全に位置合わせされた異なる色分解画像を輸送ベルト18上に印刷するために用いられ、この印刷により、様々な(必要に応じて不完全な)輸送ベルト18上のトナーカバーがもたらされ得る。輸送ベルト18の循環方向Bにおける最後の印刷ユニット5が、透明トナーを、本質的に不断のトナー層が輸送ベルト18の上に形成されるように輸送ベルト18に付与する。本文中、「本質的に不断の」(essentially uninterrupted)とは、隣り合うトナー粒子が、溶融されたときに凝集層を形成するように互いに接触している状態を示すための用語である。しかしまた、「本質的に不断の」(essentially uninterrupted)とは、1つの印刷画像内又は隣り合う印刷画像間に、自由空間が、特定の形状を形成するように特定的に設けられる状況を含むことも意味する。シートタイプのフィルム3の製造を示すための図1において、シート印刷にて一般的であるように、互いに距離を有する印刷画像を形成することが可能である。また、このような場合、輸送ベルトがシームレス(継ぎ目無し)であることは必須ではない。なぜなら、輸送ベルト18が、輸送ベルト18の継ぎ目の周辺領域が印刷から除外されるように印刷され得るからである。しかし、例えば、連続フィルムが印刷される場合には(これは、トナーを印刷ユニット5により連続的に付与することにより達成される)、輸送ベルト18が継ぎ目を有さないことが有利であろう。なぜなら、前記継ぎ目がフィルム内で画像として形成される可能性があるからである。
【0034】
トナーが上記の方法で輸送ベルト18に付与された後、トナーがその上に存在する輸送ベルト18は融着ユニット12を通過する。融着ユニット12内部で、少なくとも第1の熱源が、トナーを、トナーの融点よりも高い温度に加熱し、次いで、第2の熱源が、融点よりも高い温度を、予め特定された時間(例えば1秒〜10秒)にわたって維持する。このプロセス中に、個々のトナー粒子が溶融し、凝集トナー層を形成する。このトナー層は、トナーの融点よりも低い温度に冷却されると、フィルム3の形態の凝集層として輸送ベルト18から取り外され得る。熱架橋トナーが用いられる場合、トナーのポリマー鎖の架橋反応が生じ、これにより、フィルム3の安定性が増大する。トナーが紫外線架橋要素を含む場合、好ましくは、紫外線がトナーに融着ユニット12の内部にて照射され、これにより、さらなる架橋と、従って、フィルム3の安定性の増大とがもたらされる。この場合、紫外線はトナー内に、トナーがその融点よりも高い温度に加熱されているときに導入される。
【0035】
次いで、トナーは、融着ユニット内で、又は融着ユニットの下流にて、前記トナーの融点よりも低い温度に、能動的又は受動的に冷却される。これは、その後にトナーがフィルム3として輸送ベルト18から取り外されるためである。トナーの能動的冷却が好ましい。しかし、適切な輸送距離にわたる、輸送ベルト18により覆われた受動的な冷却を行うことも可能である。能動的冷却のために、例えば、冷気をトナー層の上面及び/又は輸送ベルト18の裏面に向けることが可能である。もちろん、他の冷却機構も考えられる。例えば、輸送ベルト18が1以上の冷却されたローラの上を移動してもよく、或いは、トナーと直接接触する1以上の冷却されたローラを設けることも可能である。当業者に明らかであるように、トナーをトナーの融点よりも低温に冷却し、それにより、その後トナーをフィルム3として輸送ベルト18から取り外すことを可能にする非常に多様な可能性が存在する。
【0036】
当業者にはさらに明らかであるように、上記の方法は、支持材料を用いずにトナーフィルムを製造することを可能にする。すなわち、フィルムはトナー粒子のみから成る。さらに、上記の方法は、任意の着色(フルカラー画像も含む)、及び任意の形態でのフィルムの製造を可能にする。
【0037】
図2は、連続フィルム3の製造を示す、別の装置1の概略側面図である。図2に示されている図において、図1と同一の又は類似の要素が設けられている場合、同一の参照番号が用いられている。
【0038】
図2の装置1も、複数の印刷ユニット5、輸送ユニット7、クリーニングユニット9、冷却ユニット10、及び融着ユニット12を有する。図2においては、高さ調節可能なトレイ14の代わりに、連続フィルム3のための巻取ローラ24を用いる。もちろん、この装置においても、装置1がシートタイプのフィルム3の製造を目的とする場合には、高さ調節可能なトレイ14を設けることも可能であろう。
【0039】
この装置においても、イメージングシリンダ16を有する電子写真タイプの5つの印刷ユニット5が示されている。前記印刷ユニットは、この装置においても圧力ローラ17に関連付けられている。
【0040】
また、輸送ユニット7は、本質的に、複数のガイドローラ及び/又は駆動ローラ19を通って循環するようにガイドされる輸送ベルト18を含む上記の輸送ユニットと同一の方法で構成されている。この装置においても、輸送ベルト18は、それぞれの印刷ユニット15のイメージングシリンダ16と、関連する圧力ローラ17との間の対応するニップを通って延在する。詳細には、この実施形態において、輸送ベルトは、継ぎ目のない輸送ベルト18であり、例えば、ポリイミド材料からつくられる。或いは、継ぎ目が、フィルム3内では全く又はほとんど形成されない程十分に平坦であってもよい。しかし、継ぎ目を、フィルム3を前記継ぎ目の範囲内の寸法にカットするためのカッティングエッジの目標として用いて、例えば、輸送ベルト18の長さに対応するフィルム3のカッティングを可能にすることもできよう。循環ベルト30が融着ユニット12の領域に設けられており、前記ベルトは輸送ベルト18の外面の1つに接触している。トナーが輸送ベルト18上に存在する場合、前記トナーは、融着ユニット12の領域にて、輸送ベルト18とベルト30との間に挟まれる。
【0041】
ベルト30は、輸送ベルト30を輸送ベルト18の速度で循環させるように駆動する第1のローラ32及び第2のローラ34(好ましくは、ローラ32,34のうちの少なくとも一方)の周りを循環するようにガイドされる。
【0042】
或いは、輸送ベルト30は、輸送ベルト18との摩擦係合により移動されることも可能である。ベルト30はシームレス(継ぎ目無し)ベルトであり、グロッサベルトとして低表面粗度を示す。詳細には、ベルト30は、輸送ベルト18と同一の材料から成り得る。ローラ32は、好ましくは加熱ローラであり、ローラ32の下に配置された、輸送ユニット7の一部であり得るローラ36に押し付けられる。ローラ32,36の一方が加熱されて、輸送ベルト18上に存在するトナーを、ローラの温度により(及び、随意にはローラ間の圧力により)、トナーの溶融温度よりも高い温度に急速に加熱する。これとは反対に、ローラ19又はローラ34の一方が、例えば冷却ローラとして構成されることができ、これにより、輸送ベルト18上に存在するトナーを、前記トナーの融点よりも低い温度に冷却する。
【0043】
さらに、クリーニングユニット39及び冷却ユニット40が輸送ベルト30の領域に設けられており、これらのユニットは、輸送ベルト18のためのクリーニングユニット9及び冷却ユニット10に対応している。さらに、輸送ベルト18とベルト30とが互いに接触している領域に熱源42が設けられており、前記熱源は、先に記載したタイプの熱源である。この熱源は、輸送ベルト18とベルト30との間に受け入れられたトナーを前記トナーの融点よりも高い温度に加熱し、又は、前記温度を特定の時間にわたり維持することができる。これを達成するために、熱源42は、任意の適切なタイプの熱源であり得る。さらに、輸送ベルト18とベルト30とが互いに接触している領域に冷却ユニット44が設けられている。冷却ユニット44は、例えば、冷却空気をそれぞれのベルトに向けさせ、それにより、輸送ベルト18とベルト30との間に存在するトナー層を、特には、前記トナー層の融点よりも低い温度に冷却する。
【0044】
図2に記載されている装置1の動作は、先に記載した装置の動作と本質的に同一であるが、印刷ユニット5は、本質的に、トナー材料の連続層を循環輸送ベルト18上に形成する。次いで、この連続層が融着ユニット12内で溶融堆積され、適切であれば、架橋反応により架橋される。融着ユニット12内のトナーは、冷却ユニット44を用いて、トナーの融点よりも低い温度に冷却される。そして、このようにして製造された連続フィルムの形態の凝集トナー層が融着ユニット12の領域から移動され、巻き取りローラ24により巻き取られる。
【0045】
以上に記載したように、本発明は、支持材料を用いずにトナーから直接フィルムを製造すること可能にする。本発明を、本発明の好ましい実施形態に関して記載してきたが、本発明は、具体的に例示された実施形態に限定されない。詳細には、異なる実施形態の異なる要素を互いに組み合わせること又は交換することが可能である。詳細には、用いられる印刷ユニットの個数は、当然、例示された個数と異なり得る。印刷ユニット5が、少なくとも一緒に、又は個々にでも、本質的に不断のトナー層を形成することができることが非常に重要である。好ましくは、少なくとも1つの印刷ユニットが、本質的に完全なトナー層を、例えば、透明トナーにより形成することが可能であるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムを製造するための方法であって、
トナーを輸送ベルトに、少なくとも1つの印刷ユニットを用いて付与し、本質的に不断のトナー層が前記輸送ベルト上に形成されるようにするステップと、
前記輸送ベルト上の前記トナーを、少なくとも第1の熱源により、前記トナーの融点よりも高い温度に加熱するステップと、
前記トナーを、前記トナーの融点よりも低い温度に冷却するステップと、
前記トナーを凝集材料層として前記輸送ベルトから取り外すステップとを含む方法。
【請求項2】
前記トナーを容融する間に前記トナーのポリマー鎖の架橋反応を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記トナーが、少なくとも1秒間の時間にわたり、前記トナーの前記融点よりも高い温度に維持されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記トナーが、1秒〜10秒間の時間にわたり、前記トナーの前記融点よりも高い温度に維持されることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記トナーが前記トナーの前記融点よりも高い温度を有しているときに前記トナーに紫外線が照射されることを特徴とする先行請求項のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記トナーが、少なくとも第2の熱源により前記融点よりも高い温度に維持されることを特徴とする請求項3〜5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記トナーが、前記トナーと接触していない熱源により、前記融点よりも高い温度に加熱され且つ/又は維持されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
少なくとも1つの熱源、特には前記第1の熱源がマイクロ波アプリケータを含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの熱源、特には前記第2の熱源が赤外線源を含むことを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの熱源、特には前記第2の熱源が、本質的に閉鎖されているオーブンチャンバを含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの熱源、特には前記第2の熱源がホットエア源を含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記トナーが、少なくとも冷却されているときに、前記輸送ベルトの片面と、前記輸送ベルトに対向する循環ベルトとの間に挟まれることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記トナーが、加熱されているときにも前記輸送ベルトの片面と前記循環ベルトとの間に挟まれることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
複数の印刷ユニットが異なるトナーを付与することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
異なる色のトナーが付与されることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの無色のトナーが、本質的に不断の無色トナー層が形成されるように付与されることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
前記無色のトナーが、用いられている他のトナーの平均粒径よりも大きい平均粒径を有することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
トナーが前記輸送ベルト上に電子写真印刷ユニットにより付与されることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1つに記載の方法。
【請求項19】
フィルムを製造するための装置であって、
トナーを輸送ベルトに付与するために配置された少なくとも1つの印刷ユニットと、
前記輸送ベルトの移動方向において前記少なくとも1つの印刷ユニットの下流に、前記輸送ベルト上に存在するトナーを加熱することができるように配置された少なくとも第1の熱源と、を備え、
前記熱源が前記トナーを前記トナーの融点よりも高い温度に加熱することに適している装置。
【請求項20】
前記輸送ベルトの移動方向において前記少なくとも1つの熱源の下流に、前記輸送ベルト上に存在するトナーを冷却することができるように配置された、前記トナーを前記トナーの融点よりも低い温度に冷却することに適している少なくとも1つの冷却ユニットにより特徴付けられる請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記輸送ベルトの輸送速度及び/又は前記熱源を制御するための少なくとも1つの制御ユニットにより特徴付けられる請求項19又は20に記載の装置。
【請求項22】
前記少なくとも1つの熱源の領域にて前記輸送ベルトに紫外線を向けさせるように配置された少なくとも1つの紫外線源により特徴付けられる請求項19又は21に記載の装置。
【請求項23】
少なくとも第2の熱源が設けられ、前記熱源が、前記輸送ベルトの移動方向にて前記少なくとも1つの第1の熱源の下流に配置され、且つ、前記トナーを前記トナーの前記融点よりも高い温度に維持するのに適していることを特徴とする請求項19〜22のいずれか1つに記載の装置。
【請求項24】
少なくとも1つの熱源が前記トナーを非接触式に加熱するのに適していることを特徴とする請求項19〜23のいずれか1つに記載の装置。
【請求項25】
少なくとも1つの熱源、特には前記第1の熱源がマイクロ波アプリケータを含むことを特徴とする請求項19〜24のいずれか1つに記載の装置。
【請求項26】
少なくとも1つの熱源、特には前記第2の熱源が赤外線源を含むことを特徴とする請求項19〜25のいずれか1つに記載の装置。
【請求項27】
少なくとも1つの熱源が、赤外線成分及び紫外線成分を有する照射線源を含み、前記赤外線成分及び前記紫外線成分の両方が少なくとも20%である請求項19〜26のいずれか1つに記載の装置。
【請求項28】
少なくとも1つの熱源、特には前記第2の熱源が、本質的に閉鎖されているオーブンチャンバを含むことを特徴とする請求項19〜27のいずれか1つに記載の装置。
【請求項29】
少なくとも1つの熱源、特には前記第2の熱源がホットエア源を含むことを特徴とする請求項19〜28のいずれか1つに記載の装置。
【請求項30】
前記第1の熱源が、互いに対して付勢された2つのローラを含み、前記ローラの少なくとも一方が、対応する加熱装置を介して加熱可能であり、且つ、前記輸送ベルトが前記ローラ間のニップを通過されることを特徴とする請求項19〜29のいずれか1つに記載の装置。
【請求項31】
前記少なくとも1つの熱源及び前記少なくとも1つの冷却ユニットの少なくとも有効領域を覆う領域に沿って前記輸送ベルトに接触する循環ベルトにより特徴付けられる請求項19〜30のいずれか1つに記載の装置。
【請求項32】
少なくとも1つのローラが前記循環ベルトのための偏向ローラであることを特徴とする請求項28及び31項に記載の装置。
【請求項33】
前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトがグロッサベルトとして構成されていることを特徴とする請求項19〜32のいずれか1つに記載の装置。
【請求項34】
前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトが粘着防止材料から成り、又は前記粘着防止材料のような材料によりコーティングされていることを特徴とする請求項19〜33のいずれか1つに記載の装置。
【請求項35】
前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトがポリイミド材料から成り、又はポリイミド材料のような材料によりコーティングされていることを特徴とする請求項19〜34のいずれか1つに記載の装置。
【請求項36】
前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトがシームレスベルト材料から成ることを特徴とする請求項19〜35のいずれか1つに記載の装置。
【請求項37】
前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトが、各々、本質的に平坦な外面を有することを特徴とする請求項19〜36のいずれか1つに記載の装置。
【請求項38】
前記循環ベルト及び/又は前記輸送ベルトが輸送材料から成ることを特徴とする請求項19〜37のいずれか1つに記載の装置。
【請求項39】
異なるトナーを前記輸送ベルトに付与するために複数の印刷ユニットが設けられていることを特徴とする請求項19〜38のいずれか1つに記載の装置。
【請求項40】
少なくとも1つの印刷ユニットが、本質的に不断のトナーカバーを前記輸送ベルト上に提供することができることを特徴とする請求項19〜39のいずれか1つに記載の装置。
【請求項41】
少なくとも1つの印刷ユニットが電子写真印刷ユニットであることを特徴とする請求項19〜40のいずれか1つに記載の装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2012−514226(P2012−514226A)
【公表日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544010(P2011−544010)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066076
【国際公開番号】WO2010/076108
【国際公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】