説明

フィルムキャリアテープの製造方法および無電解スズめっき装置

【課題】形成されためっき面の外観不良が発生しないフィルムキャリアテープの製造方法とその製造に用いられる無電解スズめっき装置を提供する。
【解決手段】無電解スズめっき装置は、フィルムキャリアテープ2に無電解スズめっきを施すめっき槽1と、該めっき槽1のめっき液面より上に配置された液切り治具11とシャワー装置10とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルムキャリアテープの製造方法および無電解スズめっき装置に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性フィルムの片面に所定の配線パターンが形成され、スプロケットホールやデバイスホール等が穿設されているフィルムキャリアテープは、その配線に無電解スズめっきが施されている。この無電解スズめっきは、めっき前処理工程、無電解めっき処理工程、めっき後処理工程を経てめっきが形成される。例えば、特許文献1には、めっき前処理後、めっき槽により無電解スズめっきを施し、次に水洗槽により常温の純水で洗浄し、次にリン酸三ナトリウム槽により無電解スズめっき処理で生じた異常結晶を除去する技術が記載されている。
【特許文献1】特開2001−35890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この方法では、無電解スズめっき槽から次の水洗槽に行くまでの間に、フィルムキャリアテープに付着しているめっき液によって、形成したスズめっき結晶が溶解したり、置換反応によりめっきムラが発生したりするという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、形成されためっき面の外観不良が発生しないフィルムキャリアテープの製造方法とその製造に用いられる無電解スズめっき装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明によるフィルムキャリアテープの製造方法は、フィルムキャリアテープの片面に形成された配線にめっき槽で無電解スズめっきを施した後、該フィルムキャリアテープを水洗槽で洗浄する工程において、前記スズめっきから水洗槽で洗浄するまでの間に、シャワーによる洗浄を行い、スズめっきからシャワーによる洗浄の間に液切り治具によりフィルムキャリアテープからめっき液を除去するようにしたことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、好ましくは、前記フィルムキャリアテープの前記片面はシャワーで洗浄され、スズめっき液は液切り治具により前記フィルムキャリアテープの反対側の面から除去されるようになっている。
【0007】
また、本発明によれば、好ましくは、前記フィルムキャリアテープがスズめっき液から出てきた直後に、前記めっき槽上で前記フィルムキャリアテープからのスズめっき液の除去と前記フィルムキャリアテープの室温の純水での洗浄が行われるよういなっている。
【0008】
また、本発明によれば、好ましくは、前記スズめっき液の除去は、ローラーまたは前記フィルムキャリアテープと同等もしくは前記フィルムキャリアテープよりも軟らかいフィルム片により行われるようになっている。
【0009】
本発明による無電解スズめっき装置は、フィルムキャリアテープに無電解スズめっきを施すめっき槽が、めっき液面より上に液切り治具とシャワー機構を備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、好ましくは、前記シャワー機構は前記フィルムキャリアテープの無電解スズめっきが形成された表面側に備えられ、前記液切り治具は前記フィルムキャリアテープの裏面側に備えられている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、無電解スズめっきが形成されたフィルムキャリアテープは、形成したスズめっき結晶の溶解や置換反応によるめっきムラが発生せず、良好な外観の製品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明による無電解スズめっき装置は、無電解スズめっき槽1と図示しない水洗槽との間において、図1に示すように、無電解スズめっき槽1のめっき液面の上方で、フィルムキャリアテープ2の裏面に接触するように配置された液切り治具11と、その上方表面側に室温の純水でめっきが形成されているフィルムキャリアテープ2の表面を洗浄するシャワー装置10とを備えている。
【0013】
本発明によれば、上記無電解スズめっき装置を用い、公知の方法で表面に配線を形成したフィルムキャリアテープ2を無電解スズめっき槽1のめっき液中に浸漬させることにより、フィルムキャリアテープ2の配線上にめっきを施し、そして、めっき液中から出てきた直後のフィルムキャリアテープ2の裏面側に付着している無電解スズめっき液を、液切り治具11によって除去する。このようにして、フィルムキャリアテープ2の裏面側の無電解スズめっき液を除去した後、めっきが形成されているフィルムキャリアテープ2の表面側を、所定の吐出量のシャワー装置10によって洗浄することにより、めっきムラの無いフィルムキャリアテープ2を得る。
【0014】
このように、本発明によれば、無電解スズめっき槽1のめっき液表面上方に液切り治具11とシャワー装置10を備えているため、フィルムキャリアテープ2の裏面側から除去された無電解スズめっき液とシャワーによる洗浄液(純水)は、無電解スズめっき槽1の中に落下し、特別な配管や処理を必要としない。
【0015】
以下、実施例について説明する。
実施例1
実施例1では、液切り治具11として、フィルムキャリアテープ2の裏面に接触する回転自在なローラーを用い、シャワー装置10として、室温の純水を霧状にしてめっきが形成されているフィルムキャリアテープ2の表面側を洗浄する方式のものを使用した。
液温が50〜70℃の無電解スズめっき液の液中に、表面に配線を形成したフィルムキャリアテープを浸漬することにより、フィルムキャリアテープの表面側の配線上にめっきを施した。めっき液から出てきたフィルムキャリアテープの裏面に付着している無電解スズめっき液が、スプロケットホール等のフィルムキャリアテープに設けられた孔から表面側(配線面側)に流れ出して、その孔周辺にある配線表面で異常な反応を起こすことを防止するため、シャワー洗浄の手前で裏面側に付着した無電解スズめっき液を除去するようにした。かくして裏面側の無電解スズめっき液を除去した後、室温の純水によりめっきが形成されているフィルムキャリアテープの表面側を50〜100ml/minの吐出量でミストシャワーによって洗浄を行った。この洗浄は、室温の純水を用いたため冷却効果も得られた。
その後、従来通りの工程である水洗槽による洗浄等のめっき後処理を行って、製造されたフィルムキャリアテープを約200pcs(ピース:ここでは製品200個と同意)観察したところ、めっきムラの発生は無かった。
【0016】
実施例2
実施例1の液切り治具を無効にして、他の条件は実施例1と同様にして製造したフィルムキャリアテープを約170pcs観察したところ、8pcsにめっきムラの発生が確認できた。
【0017】
実施例3
実施例1の液切り治具およびシャワー装置を無効にして、従来通りで製造したフィルムキャリアテープを約170pcs観察したところ、めっきムラが20pcs以上発生していた。
【0018】
実施例4
実施例1のローラーを用いた液切り治具のローラー11(a)をフィルムキャリアテープに使用しているポリイミドフィルム片11(b)に変更し、他の条件は実施例1と同様にして製造したフィルムキャリアテープを約170pcs観察したところ、めっきムラの発生は無かった。
この実施例では、液切り治具としてポリイミドフィルム片を用いたが、ポリイミドフィルムに代えて、これよりも柔らかいフィルム片を用いるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明装置の一実施例を示す概略図である。
【図2】本発明装置に用いられる液切り治具の互いに異なる構成例を示し、(1)は回転ローラーを用いた場合、(2)はポリイミドフィルム片を用いた場合の説明図である。
【図3】各実施例によるフィルムキャリアテープの観察数とめっきムラの判定結果を一覧にまとめた表である。
【符号の説明】
【0020】
1 無電解スズめっき液槽
2 フィルムキャリアテープ
3 搬送ローラー
10 シャワー装置
11 裏面液切り治具
11(a) 裏面液切り治具としての回転ローラー
11(b) 裏面液切り治具としてのフィルム片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルムキャリアテープの片面に形成された配線にめっき槽で無電解スズめっきを施した後、該フィルムキャリアテープを水洗槽で洗浄する工程において、前記スズめっきから水洗槽で洗浄するまでの間に、シャワーによる洗浄を行い、スズめっきからシャワーによる洗浄の間に液切り治具によりフィルムキャリアテープからめっき液を除去するようにしたことを特徴とするフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項2】
前記フィルムキャリアテープの前記片面はシャワーで洗浄され、スズめっき液は液切り治具により前記フィルムキャリアテープの反対側の面から除去されるようになっていることを特徴とする請求項1に記載のフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項3】
前記フィルムキャリアテープがスズめっき液から出てきた直後に、前記めっき槽上で前記フィルムキャリアテープからのスズめっき液の除去と前記フィルムキャリアテープの室温の純水での洗浄が行われるようになっていることを特徴とする請求項1または2に記載のフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項4】
前記スズめっき液の除去は、ローラーまたは前記フィルムキャリアテープと同等もしくは前記フィルムキャリアテープよりも軟らかいフィルム片により行われるようになっていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のフィルムキャリアテープの製造方法。
【請求項5】
フィルムキャリアテープに無電解スズめっきを施すめっき槽は、めっき液面より上に液切り治具とシャワー装置を備えていることを特徴とする無電解スズめっき装置。
【請求項6】
前記シャワー装置は前記フィルムキャリアテープの無電解スズめっきが形成された表面側に備えられ、前記液切り治具は前記フィルムキャリアテープの裏面側に備えられていることを特徴とする請求項5に記載の無電解スズめっき装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−259856(P2009−259856A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−103626(P2008−103626)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】