説明

フィルム及びそれを含有してなる積層体

【課題】エラストマーフィルムとアクリル系樹脂フィルムとの両フィルムの優れた特性を維持しながら、エラストマーフィルムの問題点であるブロッキング性、意匠性の向上と、アクリル系樹脂フィルムに乏しい耐衝撃性、柔軟性を付与することであり、加えて新しい機能の持つフィルムとして、伸縮性に優れ、光の透過性を制御でき、かつ種々の材料に加温等により接着するという機能を発現するフィルムを提供する。
【解決手段】有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)の存在下、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)を、(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム。(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性エラストマーと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーの重合体を含有してなるフィルムに関する。より詳しくは、意匠性、伸縮特性、光の透過特性、接着特性に優れ、さらに伸縮により光の透過性を制御できるという特性を有するフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性エラストマーを用いたフィルムは、柔軟性や伸縮性を有するため多くの分野での用途が期待されており、衣料、各種包装材、医療用器具、生理衛生用品等に用いられている。またその特性から、ポリ塩化ビニルの代替の用途への展開も図られている。このフィルムは、一般的に多量の可塑剤を含むため経時での可塑剤のブリードアウトが密着或いは接着不良を起こす。さらに、近年、環境問題の観点から脱塩素化の流れもあり、代替材料の研究も行われている。しかしながら、エラストマーフィルムは、粘着性が高いため、シートあるいはフィルムとしたときにブロッキングを起こしやすく、ハンドリングが悪いという問題や、その構造から意匠性が悪いという問題があった。
【0003】
また、アクリル系樹脂フィルムは透明性や光沢が優れるため、各種成形品、表示パネルの表層部材として用いられている。しかしながら、アクリル系樹脂フィルムは耐衝撃性、柔軟性が乏しいという問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、上記の背景技術に記載の優れた特性を維持しながら、エラストマーフィルムの問題点であるブロッキング性、意匠性の向上と、アクリル系樹脂フィルムに乏しい耐衝撃性、柔軟性を付与することであり、加えて新しい機能の持つフィルムとして、伸縮性に優れ、光の透過性を制御でき、かつ種々の材料に加温等により接着するという機能を発現するフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を達成するフィルムの開発に鋭意研究および検討を重ねてきた結果、熱可塑性エラストマーとα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーからなる重合体を含有してなるフィルムが、上記課題を発現するために極めて有効である事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の[1]〜[14]または[1a]〜[11a]で特定される。
[1]熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体からなるフィルム。
【0007】
[2]有機溶媒、熱可塑性エラストマー(A)、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体からなる樹脂溶液を乾燥してなるフィルム。
【0008】
[3]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)の存在下、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を、(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた後、更にラジカルを発生
させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルム。
【0009】
[4]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とを、(A)/(C)=5/95〜95/5の重量比でラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルム。
【0010】
[5]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた樹脂溶液を乾燥してなるフィルム。
【0011】
[6]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)とを(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた後、更にラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルム。
【0012】
[7]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とを、(A)/(C)=5/95〜95/5の重量比でラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルム。
【0013】
[8]活性水素及び/又は水酸基を有する[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂溶液を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を含有する樹脂溶液を乾燥、硬化してなるフィルム。
【0014】
[9]相分離構造を有することを特徴とする[1]〜[8]のいずれかに記載のフィルム。
[10]意匠性を有することを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のフィルム。
【0015】
[11]伸縮に再現性があることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のフィルム。
[12]伸縮により光の透過性を制御できることを特徴とする[1]〜[9]のいずれかに記載のフィルム。
【0016】
[13]樹脂、金属、紙、木材、繊維、皮革、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリートからなる群から選ばれたいずれかと[1]〜[9]のいずれかに記載のフィルムを含有してなる積層体。
【0017】
[14]オレフィン系樹脂と[1]〜[9]のいずれかに記載のフィルムを含有してなる積層体。
[1a]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)の存在下、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)を、(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの
2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【0018】
[2a]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とを、(A)/(C)=5/95〜95/5の重量比で混合し、重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【0019】
[3a]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)に水酸基含有ビニル類を反応させて得られる、熱可塑性エラストマー(A)の一部が該水酸基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)とを、(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【0020】
[4a]有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)に水酸基含有ビニル類を反応させて得られる、熱可塑性エラストマー(A)の一部が該水酸基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とを、(A)/(C)=5/95〜95/5の重量比で混合し、重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【0021】
[5a]前記共重合性モノマー(B)として、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル類及びカルボキシル基含有ビニル類を用いることを特徴とする前記[1a]〜[4a]のいずれかに記載のフィルム。
【0022】
[6a]前記共重合性モノマー(B)として、水酸基含有ビニル類及びカルボキシル基含有ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体を用いて得られた前記[1a]〜[4a]のいずれかに記載の樹脂溶液を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤とを混合したものを乾燥、硬化してなり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【0023】
[7a]前記[3a]または[4a]に記載の樹脂溶液を含有する主剤と、水酸基と反応可能な硬化剤とを混合したものを乾燥、硬化してなり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【0024】
[8a](1)'未延伸時のフィルムの光線透過率が80〜89%、90〜92%また
は93%以上であり、(2)'フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が50〜
79%または49%以下であり、(3)’フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80〜89%、90〜92%または93%以上であることを特徴とする前記[1a]〜[7a]のいずれかに記載のフィルム。
【0025】
[9a]光学材料用であることを特徴とする前記[1a]〜[8a]のいずれかに記載のフィルム。
[10a]前記[1a]〜[8a]のいずれかに記載のフィルムと、樹脂、金属、紙、木材、繊維、皮革、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリートからなる群から選ばれたいずれかとを積層して得られることを特徴とする積層体。
【0026】
[11a]前記[1a]〜[8a]のいずれかに記載のフィルムと、オレフィン系樹脂とを積層して得られることを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0027】
本発明のフィルムは、上記手段により、柔軟性、耐衝撃性、伸縮性、透明性、光沢、耐ブロッキング性、意匠性を付与できるという利点があり、さらにはフィルムの伸縮により光の透過性を制御でき、また種々の材料に加温等で接着するという機能を発現するという利点もある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に本発明を実施するための最良の形態を説明する。
本発明のフィルムは、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体を含有する樹脂からなり、下記手法により得られた樹脂或いは樹脂溶液を用いてキャスティング法、カレンダー法、剥離フィルム上に塗工する方法等で製造することができる。本発明のフィルムの厚さは、5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。
【0029】
上記の樹脂或いは樹脂溶液は、熱可塑性エラストマー(A)に、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後、或いは熱可塑性エラストマー(A)とα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に、重合開始剤をフィードしながら重合せしめた後に、さらにラジカルを発生させ反応を行なう方法で製造することができる。また、熱可塑性エラストマー(A)に、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)を添加した後、ラジカルを発生させて反応を行なう方法でも製造することができ、これらは有機溶媒存在下でも製造できる。本発明のフィルムを得るための方法として、後者の方が好ましい。
【0030】
さらに、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものに、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)と重合開始剤をフィードしながら重合させる、或いは熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものとα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)に、重合開始剤をフィードしながら重合させる方法で製造することができる。このようにして得られたものに更にラジカルを発生させ反応させて製造することもでき、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものにα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその
他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)を添加した後、ラジカルを発生させて反応させて製造することもでき、これらは有機溶媒存在下でも製造できる。本発明のフィルムを得るため方法として、後者の方が好ましい。
【0031】
本発明に用いられる熱可塑性エラストマー(A)としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ブテン、ポリ−3−メチル−1−ペンテン、ポリ−4−メチル−1−ペンテン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・1
−ブテン共重合体、プロピレン・1−ブテン共重合体で代表される、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィンの単独または2種類以上の共重合体の熱可塑性エラストマ−が挙げられる。
【0032】
上記の中でも、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、プロピレン−オクテン共重合体が好ましく、これらは単独又は2種類以上を組み合わせて用いられる。
【0033】
また、その重量平均分子量(以下、Mwと略記する)は通常は、5千〜20万の範囲、好ましくは1万〜10万、さらに好ましくは4万〜10万である。
その他、熱可塑性エラストマー(A)としては、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物、スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物が挙げられ、スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物の構成としてはスチレン−共役ジエンのジブロック共重合体の水素添加物、スチレン−共役ジエン−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。ここで用いられる共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレンが挙げられる。
【0034】
上記の中でも、スチレン−イソプレン−スチレンのトリブロック共重合体の水素添加物、スチレン−ブタジエンのランダム共重合体の水素添加物が好ましい。
ここで用いられる熱可塑性エラストマーは、そのスチレンの含有量が3〜60重量%、より好ましくは3〜45重量%の範囲のものである。
【0035】
また、その重量平均分子量(以下、Mwと略記する)が5千〜70万の範囲が好ましく、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体の水素添加物では5千〜50万、さらには1万〜30万が好ましい。また、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物では1万〜70万、さらには5万〜50万が好ましい。
【0036】
上記の熱可塑性エラストマーは、単独或いは2種以上併用して用いることができる。
さらに、熱可塑性エラストマー(A)の一部が官能基で変性されたものは、上記記載の熱可塑性エラストマー、またはこれら2種以上の混合物に、以下記載の官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーを反応させて得られるが、一部に反応しないものを含んでも何ら問題ない。
【0037】
ここで用いられる官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート
等のカルボキシル基含有ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、メチロールメタクリルアミド等の窒素化合物、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類が挙げられ、これらは単独でも、2種以上でも使用できる。上記官能基を含有したα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーの添加量は、熱可塑性エラストマーの重量の0.5〜20%の範囲、より好ましくは1〜15%である。
【0038】
本発明に用いられる、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)を以下に挙げる。
α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ラウロイル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート等の水酸基含有ビニル類、アクリル酸、メタアクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート等のカルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有ビニル類、ビニルイソシアナート、イソプロペニルイソシアナート等のイソシアナート基含有ビニル類、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン等の芳香族ビニル類、その他アクリロニトリル、メタクリルニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、及びメチロールメタクリルアミド、エチレン、プロピレン、C4〜C20のα−オレフィン等が挙げられる。また、上記単量体、或いはその共重合体をセグメントに有し、末端にビニル基を有するマクロモノマー類等も使用できる。
【0039】
また、本発明に用いられるその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマーとしては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等の無水カルボン酸類等が挙げられる。
また、ここに記載されたメチル(メタ)アクリレートのような記載は、メチルアクリレート及びメチルメタアクリレートを示す。
【0040】
これらは、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分として用いることが好ましい。また、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体を主成分に、その他共重合可能な単量体を併用することもできる。
【0041】
本発明で用いられる重合体(C)は、下記記載のα,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)により構成される。
【0042】
本発明において、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)或いはこれらの重合体(C)の比率は、重量比で(A)/(B)=5/95〜95/5、或いは(A)/(C)=5/95〜95/5、好ましくは(A)/(B)=10/90〜90/10、或いは(A)/(C)=10/90〜90/10で、更に好ましくは(A)/(B)=15/85〜85/15、或いは(A)/(C)=15/85〜85/15である。
【0043】
本発明で用いられる樹脂溶液の有機溶媒としては、キシレン、トルエン、エチルベンゼン等の芳香族炭化水素、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素、酢酸エチル、n−酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3メトキシブチルアセテート等のエステル系、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒等の有機溶剤を用いることもでき、これらの2種以上からなる混合物であっても構わない。これらの中でも、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、及び脂環式炭化水素が好適に用いることができる。有機溶媒の量は、熱可塑性エラストマー(A)を有機溶媒に溶解させたときの不揮発分が5〜60重量%となる範囲で用いることができる。
【0044】
本発明で用いる重合開始剤としては、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、クメンハイドロパーオキサイド等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、4,4'−アゾビス(4−シアノペンタ酸)、2,2'−アゾビス(2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオアミド)等のアゾ化合物が挙げられる。これらは、単独或いは2種以上併用して用いることができる。
【0045】
また、更にラジカルを発生させて反応を行う場合のラジカル発生方法は、例えば、光重合開始剤の存在下に光を照射する方法、又は有機過酸化物を添加する方法等、公知の方法を使用することができる。
【0046】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、ベンジルメチルケタール、アントラキノン、クロルアントラキノン、エチルアントラキノン、ブチルアントラキノン、ジフェニルスルファイド、ジチオカーバメイト、2−クロルチオキサントン、α−クロロメチルナフタレンアントラセン、3,3'−4,4'−テトラ−ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド等が挙げられるが、これらは単独或いは2種以上併用して用いても良い。又、これらの光重合開始剤には、ミヒラーケトン、トリメチレンアミン、アルキルモルフォリン等のアミンを併用して用いても良い。
【0047】
上記光重合開始剤の使用量は、前記熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)或いは重合体(C)との総重量に対し、通常、0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲で用いる事で安定性に大きな効果が現れる。
【0048】
また、有機過酸化物としては、分子内にtert−ブチル基及び/又はベンジル基を有する、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエイト、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。これらは、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
本発明では、上記した有機過酸化物のうちでも、ジ−tert−ブチルパーオキサイドやtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートがより好適に用いられる。すなわち、分子内にtert−ブチル基及び/又はベンジル基を有する有機過酸化物は水素引抜能力が比較的高く、ポリオレフィンとのグラフト率を向上させる効果がある。
【0050】
上記有機過酸化物の使用量は、熱可塑性エラストマー(A)と、共重合性モノマー(B)或いは重合体(C)との総重量に対し、通常2〜50重量%、より好ましくは3〜30
重量%の範囲で用いる事で安定性に大きな効果が現れる。上記した範囲で有機過酸化物を使用する場合は、なるべく時間をかけ、これを少量ずつ添加することが好ましい。
【0051】
上記樹脂を製造するにあたり、油脂類、油脂類の誘導体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1つ以上を第3成分として用いることができる。
第3成分として用いられる油脂類としては、アマニ油、大豆油、ヒマシ油及びこれらの精製物が挙げられる。
【0052】
第3成分として用いられる油脂類の誘導体としては、無水フタル酸等の多塩基酸とグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール等の多価アルコールを骨格としたものを油脂(脂肪酸)で変性した短油アルキッド樹脂、中油アルキッド樹脂、長油アルキッド樹脂等、或いはこれにさらに天然樹脂、合成樹脂および重合性モノマーで変性したロジン変性アルキッド樹脂、フェノール変性アルキッド樹脂、エポキシ変性アルキッド樹脂、アクリル化アルキド樹脂、ウレタン変性アルキッド樹脂等が挙げられる。
【0053】
また、第3成分として用いられるエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ノボラック等をグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂、ビスフェノールAにプロピレンオキサイド、またはエチレンオキサイドを付加しグリシジルエーテル化したエポキシ樹脂等を挙げることができる。また、多官能アミンをエポキシ基に付加したアミン変性エポキシ樹脂等を用いても良い。さらに、脂肪族エポキシ樹脂、脂環エポキシ樹脂、ポリエーテル系エポキシ樹脂等が挙げられる。
【0054】
また、第3成分として用いられるポリエステル樹脂は、カルボン酸成分とアルコール成分を縮重合したものであり、カルボン酸成分として例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、トリメリット酸、マレイン酸、フマル酸等の多価カルボン酸およびその低級アルコールエステル、パラオキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸、および安息香酸等の1価カルボン酸等を用いる事ができ、また2種類以上併用する事も可能である。
【0055】
また、アルコール成分として例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−ペンタンジオール、2,2'−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1
,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、水添ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物等を用いることができ、また2種類以上併用する事も可能である。
【0056】
また、水酸基を有する上記ポリエステル樹脂に、分子内に重合性不飽和結合を有する無水カルボン酸を付加させることによって得られた分子内に重合性不飽和結合を含有させた樹脂も使用可能である。
【0057】
上記、第3成分は、1種類でも使用できるし、2種類以上で併用しても何ら構わない。また、反応器中へフィードしながら添加することも、また最初に反応器内に仕込んで使用することも可能である。また第3成分の添加量は、樹脂成分に対し通常0.5〜60重量%、好ましくは2〜40重量%で用いる。
【0058】
特に、第3成分として油脂類及び油脂類の誘導体を用いた樹脂組成物は、とりわけ安定
性が良く、また他樹脂との相溶性も良好で、特にひまし油を含むものは効果が大きい。
本発明のうちで、構成単位としてヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタアクリル酸等を含み、活性水素及び/又は水酸基を持つ組成物は、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を用いることができる。
【0059】
例えば、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤の一つである分子内にイソシアナート基を有する硬化剤と混合することで、ウレタン結合を有するフィルム、プライマー及び接着剤として用いることができる。
【0060】
活性水素及び/又は水酸基と反応可能な分子内にイソシアナート基を有する硬化剤としては、フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート等の芳香族ジイソシアナート類、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、リジンジイソシアナート等の脂肪族ジイソシアナート類、イソホロンジイソシアナート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート等の脂環族ジイソシアナート類、リジントリイソシアネ−トなどの3価以上のポリイソシアネート類、またこれらイソシアナート化合物の多量体であるビュレット体、イソシアヌレート体、アロファネート体、その他上記イソシアナートの一種又は二種以上と、エチレングリコール、プロピレングリコール、キシリレングリコール、ブチレングリコール等の2価アルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の3価アルコール等の多価アルコールとの付加物、イソシアナート基と反応可能な官能基を有する低分子量ポリエステル樹脂または水等との付加物、さらに低級1価アルコール、メチルエチルケトオキシム等公知のブロック剤でイソシアナート基をブロックしたもの等が使用できる。イソシアナートプレポリマーを使用する場合についても、例えば、ジブチルチンジラウレート、トリエチルアミン等の外部触媒を添加することができる。
【0061】
また、これらのイソシアネート化合物の多量体であるイソシアヌレートやビウレット型付加物に加えて、多価アルコールや低分子量ポリエステル樹脂に付加したものも利用できる。また、上記イソシアネート硬化剤のイソシアネート基はその一部または全部がアルコール系、フェノール系、ラクタム系、オキシム系、活性メチレン系などの活性水素化合物でブロックされたいわゆるブロックイソシアネートも使用可能である。
【0062】
本発明では、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤は任意の割合で使用する事ができる。活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤がイソシアナート基を有する硬化剤である場合の配合割合は、活性水素とイソシアナート基の当量比で0.5:1.0〜1.0:0.5の範囲が好ましく、0.8:1.0〜1.0:0.8の範囲が更に好ましい。上記に記載の硬化剤を混合したものは、乾燥硬化させる必要があり、必要に応じて反応性触媒を併用することもできる。
【0063】
本樹脂或いは樹脂溶液、或いは本樹脂或いは樹脂溶液に活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤を混合したものを本発明のフィルムにするのに特に限定するものではないが、キャスティング法、カレンダー法、剥離フィルム上に塗工する方法等により得ることができる。
【0064】
本発明のフィルムがとる構造としては、相分離構造がある。具体的には、熱可塑性エラストマー(A)、熱可塑性エラストマー(A)の少なくとも一部が官能基で変性された樹脂を中心とした成分と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及びその他共重合可能な単量体からなる共重合性モノマー(B)の重合体を中心とした成分がそれぞれ相を形成する。その構造は、一方がマトリックスを形成し、他方が球状、楕円等の独立相を
有する海島構造や、両方の樹脂がそれぞれ相構造を持ち、その相構造が3次元的に連続している相分離構造、即ち共連続構造をとるものがある。海島構造をとるものは部分的に島同士がつながったものを有していても良く、また共連続構造を有するものは部分的に途切れた箇所や海島構造を含有していても良い。
【0065】
これらの構造において、海島構造を有するものは、その平均粒子径が0.0001〜10μmの範囲が好ましく、0.0005〜5μmの範囲がさらに好ましい。また、共連続構造を有するものは、その網目の寸法は、厚さ方向に0.0001〜10μmの範囲が好ましく、0.0005〜5μmの範囲がさらに好ましい。
【0066】
また、本発明のフィルムは、フィルム作成時に、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂等を混合することができる。
上記で得られる本発明のフィルムは、そのままでも使用できるが、フィルム作成時に必要に応じて酸化防止剤や耐候安定剤、耐熱防止剤等の各種安定剤、無機顔料、有機顔料等の着色剤、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤等の成分を含有させることができる。
【0067】
本発明のフィルムは、柔軟性、耐衝撃性、伸縮性、透明性、光沢、耐ブロッキング性、意匠性に優れるため、衣料、各種包装材、医療用器具、生理衛生用品、各種成形品、表示パネルの表層部材、光学材料等の用途に使用する事ができる。また、伸縮により光の透過性を制御することが可能であり、さらに透過光を散乱させることができるため、遮光フィルムや光量制御フィルム等の光学材料として使用する事もできる。
【0068】
本発明のフィルムは、樹脂、金属、紙、木材、繊維、皮革、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリートへの密着に優れるためこれらへの接着剤用フィルムの用途にも適用できる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明のフィルムの製法および各種試験例を挙げ、更に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。また、以下において、部および%は特記していない限り重量基準である。
【0070】
[実施例1]
樹脂溶液の製造
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑性エラストマーとしてベストプラスト750を100部とメチルシクロヘキンサンを250部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート45部とイソブチルメタアクリレート20部とエチルアクリレート14部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部とプラクセルFM−3を15部とメタクリル酸1部とtert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1部(以下、PBOと略記する)の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後にメチルシクロヘキサンを100部添加するとともに、PBOを0.5部添加した。このPBO添加より1時間後にPBOを6部添加した。さらに1時間経過後に2部、更にそれより1時間経過後に2部を添加し反応させた。最後のPBO添加より2時間放置して反応させ樹脂溶液を得た。
【0071】
上記で得られた樹脂溶液を、PETフィルム上に乾燥膜厚が40μmとなるよう塗工し、80℃、10分の条件で乾燥させたのち、PETフィルムから剥離してフィルムを得た。
【0072】
なお、上記で熱可塑性エラストマーとして用いたベストプラスト750はデグサヒュルス(株)製のプロピレン−ブテン−エチレン共重合体で、重合可能な単量体として用いたプラクセルFM−3はダイセル化学工業(株)製の不飽和脂肪酸ヒドロキシアルキルエーテル修飾イプシロン−カプロラクトンである。
【0073】
[実施例2]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑性エラストマーとしてベストプラスト750を100部とメチルシクロヘキサンを200部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、下記の方法で得られた滴下用樹脂溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後に30分後にPBOを1部添加した。このPBO添加より1時間後にPBOを6部添加した。さらに1時間経過後に2部、更にそれより1時間経過後に2部を添加し反応させた。最後のPBO添加より2時間放置して反応させ樹脂溶液を得た。
【0074】
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
滴下用樹脂溶液
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、トルエン70部とメチルイソブチルケトン30部を仕込み、窒素置換しながら100℃に加熱昇温した。次いでこの中に、メチルメタアクリレート45部とイソブチルメタアクリレート20部とエチルアクリレート14部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部とプラクセルFM−3を15部とメタクリル酸1部とPBO1部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後にPBOを0.5部添加した。このPBO添加より更に1時間後にPBOを0.5部添加し反応させた。最後のPBO添加より2時間放置して反応させ樹脂溶液を得た。
【0075】
[実施例3]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑性エラストマーとしてベストプラスト750を100部とメチルシクロヘキサンを150部仕込み、窒素置換しながら95℃に加熱昇温した。次いでこの中に、官能基を有する重合性モノマーとしてプラクセルFM−3を5部添加、分散させた後、PBOを5部添加して2時間反応させた。その後メチルシクロヘキサン200部を添加して、熱可塑性エラストマーの一部が官能基で変性された樹脂を得た。次いで、反応器内を95℃に保持したまま、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート45部とイソブチルメタアクリレート20部とエチルアクリレート14部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部とプラクセルFM−3を15部とメタクリル酸1部とPBO1部の混合液を4時間かけてフィードした。フィード終了より1時間後にメチルシクロヘキサンを100部添加するとともに、PBOを0.5部添加し、更に1時間後にPBOを0.5部添加した。このPBO添加より2時間放置して反応させ樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0076】
[実施例4]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑性エラストマーとしてベストプラスト750を100部とメチルシクロヘキサンを150部仕込み、窒素置換しながら130℃に加熱昇温した。次いでこの中に、官能基を有する重合性モノマーとしてプラクセルFM−3を5部添加、分散させた後、PBOを5部添加して2時間反応させた。その後メチルシクロヘキサンを200部を添加して、熱可塑性エラストマーの一部が官能基で変性された樹脂を得た。次いで、反応器内を95℃に保持したまま、重合可能な単量体としてメチルメタアクリレート45部とイソブチルメタアクリレート20部とエチルアクリレート14部と2−ヒドロキシエチルメタクリレート5部とプラクセルFM−3を15部とメタクリル酸1部とPBO1部の混合液を4時間かけてフィ
ードした。フィード終了より1時間後にメチルシクロヘキサンを100部添加するとともに、PBOを0.5部添加した。これより1時間後にPBOを3部添加し、更に2時間放置して反応させ樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0077】
[実施例5]
攪拌機、温度計、還流冷却装置、及び窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、熱可塑性エラストマーとしてベストプラスト750を100部とメチルシクロヘキサンを150部仕込み、窒素置換しながら130℃に加熱昇温した。次いでこの中に、官能基を有する重合性モノマーとしてプラクセルFM−3を5部添加、分散させた後、PBOを5部添加して2時間反応させた。その後メチルシクロヘキサンを50部仕込み熱可塑性エラストマーの一部が官能基で変性された樹脂を得た。次いでこの中に、上記の実施例2で得られた滴下用樹脂溶液を1時間かけて滴下し、滴下終了後に30分後にPBOを1部添加した。このPBO添加より1時間後にPBOを6部添加した。このPBO添加より1時間経過後に2部、更にそれより1時間経過後に2部を添加し反応させた。最後のPBO添加より2時間放置して反応させ樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0078】
[実施例6]
熱可塑性エラストマーをセプトン2002に変更した以外は実施例1と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
なお、上記で熱可塑性エラストマーとして用いたセプトン2002はクラレ(株)製の水素添加スチレン−イソプレン共重合体である。
【0079】
[実施例7]
実施例6で得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法で乾燥膜厚が2mmとなるフィルムを作成した。
【0080】
[実施例8]
熱可塑性エラストマーをセプトン2002に変更した以外は実施例2と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0081】
[実施例9]
熱可塑性エラストマーをセプトン2002に変更した以外は実施例3と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0082】
[実施例10]
熱可塑性エラストマーをセプトン2002に変更した以外は実施例4と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0083】
[実施例11]
熱可塑性エラストマーをセプトン2002に変更した以外は実施例5と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0084】
[実施例12]
熱可塑性エラストマーをダイナロン1320Pに、初期に仕込むメチルシクロヘキサンを400部に変更した以外は実施例1と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
なお、上記で熱可塑性エラストマーとして用いたダイナロン1320PはJSR(株)製の水素添加スチレン−ブタジエン共重合体である。
【0085】
[実施例13]
熱可塑性エラストマーをダイナロン1320Pに、初期に仕込むメチルシクロヘキサンを400部に変更した以外は実施例2と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0086】
[実施例14]
熱可塑性エラストマーをダイナロン1320Pに、初期に仕込むメチルシクロヘキサンを400部に変更した以外は実施例3と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0087】
[実施例15]
熱可塑性エラストマーをダイナロン1320Pに、初期に仕込むメチルシクロヘキサンを400部に変更した以外は実施例4と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0088】
[実施例16]
熱可塑性エラストマーをダイナロン1320Pに、初期に仕込むメチルシクロヘキサンを400部に変更した以外は実施例5と同様の方法で樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0089】
[実施例17]
実施例1で得られた各樹脂溶液組成物に硬化剤としてD−177N(三井武田ケミカル(株)製、製品名)を、OH/NCOで1/1(モル比)となるようにそれぞれ混合し、樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0090】
[実施例18]
実施例6で得られた各樹脂溶液組成物に硬化剤としてD−177N(三井武田ケミカル(株)製、製品名)を、OH/NCOで1/1(モル比)となるようにそれぞれ混合し、樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0091】
[実施例19]
実施例11で得られた各樹脂溶液組成物に硬化剤としてD−177N(三井武田ケミカル(株)製、製品名)を、OH/NCOで1/1(モル比)となるようにそれぞれ混合し、樹脂溶液を得た。
得られた樹脂溶液を用い、実施例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0092】
[比較例1]
メチルシクロヘキンサンを150部と熱可塑性エラストマーとしてベストプラスト750を100部とを、90℃に加熱し、得られた樹脂溶液を用い、実施例1同様の方法でフィルムを作成したが、フィルムを得ることができなかった。
【0093】
[比較例2]
熱可塑性エラストマーをセプトン2002に変更した以外は比較例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0094】
[比較例3]
熱可塑性エラストマーをダイナロン1320Pに変更した以外は比較例1と同様の方法でフィルムを得た。
【0095】
[比較例4]
実施例2の滴下用樹脂溶液に記載の方法で得られた樹脂溶液を用い、実施例1同様の方法でフィルムを作成した。
【0096】
<<評価>>
実施例、比較例で得られたフィルムについて、以下の評価結果を実施し、その結果を実施例については表−1及び表−2に、比較例については表−3に示した。尚、フィルムが得られなかったものについては評価を実施しなかった。
【0097】
<フィルムの評価−光線透過率>
(i)光線透過率の評価
実施例1〜19で得られたフィルムの光線透過率を、分光光度計(日立製作所製:U4100)を用い測定した。フィルムの光線透過率が、93%以上を◎、90〜92%を○、80〜89%を●、50〜79%を△、49%以下を×として記載した。また、フィルムが白濁するまで延伸した時のフィルムの伸び率と、その時の光線透過率を測定し、上記と同様に記載した。
【0098】
(ii)伸縮繰返し試験
実施例1〜19、比較例1〜4で得られたフィルムについて、一方向に実施例1〜11、17、18、比較例1〜4については150%、実施例12〜16、19については250%、1秒間延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返し、再現性のあるものは○、再現性のないものは×とし、再現性のあるものについては、試験後のフィルムの光線透過率を測定し、上記の(i)と同様の評価を行った。尚、延伸できないものについては×と記載した。
【0099】
(iii)光線散乱率の評価
実施例1〜19で得られたフィルムについて、積分球を用いてフィルムを透過する光から直進光を除いた散乱光を測定した。フィルムの光線散乱率が、50%以上を◎、30〜49%を○、10〜29%を△、9%以下を×として記載した。
【0100】
<フィルムの評価−接着性試験>
実施例1〜19で得られたフィルムを、アルミ箔とポリプロピレンシート(東セロ#500T−T)に挟み、150℃で1秒間、0.098MPaの圧力を懸けてヒートシールし、試料を得た。試験片を幅15mmの短冊状に切り、180°剥離試験を常温で行った。ピール強度が1500g/15mm以上のものを○、500g/15mm以上1500g/15mm未満のものを△、500g/15mm未満のものを×として記載した。
【0101】
<フィルム断面の観察>
塗膜の断面の観察は、透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、H−7000)を用いた。試料は、四酸化ルテニウムで染色された超薄切片で行ない、形態を観察し、相分離構造をとるものを○、とらないものを×として記載した。
【0102】
<耐ブロッキング試験>
実施例1〜19、比較例1〜4で得られたフィルムを重ね合わせ、25℃、24時間、100g/cm2荷重をかけ試験片を得た。試験片が剥がれる場合を○、剥がれない場合
を×として記載した。尚、耐ブロッキング性が×のものについては、その他の評価を実施しなかった。
【0103】
<意匠性>
実施例1〜19、比較例1〜4で得られたフィルムに、インキ(大日精化(株)製、VYSインキ(黄))を乾燥後の膜厚で2μmとなるように塗工し、100℃、20秒の条件で乾燥したものについて、セロテープ(登録商標)剥離試験を行った。インキの剥離がない場合を○、インキの剥離がある場合を×として記載した。
【0104】
【表1】

【0105】
【表2】

【0106】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明のフィルムは、柔軟性、耐衝撃性、透明性、光沢、耐ブロッキング性に優れるとともに、伸縮性に優れ、その再現性も良好であるため、衣料、各種包装材、医療用器具、生理衛生用品、各種成形品、表示パネルの表層部材、光学材料等の用途に使用する事ができる。また、伸縮により光の透過性を制御することが可能であり、さらに透過光を散乱させることができるため、遮光フィルムや光量制御フィルム等の光学材料として使用する事もできる。
【0108】
さらに、本発明のフィルムは、樹脂、金属、紙、木材、繊維、皮革、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリートへの密着に優れるためこれらへの接着剤用フィルムの用途に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)の存在下、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)を、(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【請求項2】
有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)と、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とを、(A)/(C)=5/95〜95/5の重量比で混合し、重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【請求項3】
有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)に水酸基含有ビニル類を反応させて得られる、熱可塑性エラストマー(A)の一部が該水酸基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)とを、(A)/(B)=5/95〜95/5の重量比で重合せしめた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【請求項4】
有機溶媒中、熱可塑性エラストマー(A)に水酸基含有ビニル類を反応させて得られる、熱可塑性エラストマー(A)の一部が該水酸基で変性されたものと、α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体及び無水カルボン酸類から選択される少なくとも1種の共重合性モノマー(B)で構成された重合体(C)とを、(A)/(C)=5/95〜95/5の重量比で混合し、重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた後、更に重合開始剤をフィードしてラジカルを発生させ反応させた樹脂溶液を乾燥してなるフィルムであり、
該熱可塑性エラストマー(A)が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセンから選択されるα−オレフィンの2種類以上の共重合体;スチレン−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物;スチレン−共役ジエンランダム共重合体の水素添加物から選択される少なくとも1種の共重合体であり、
該α,β−モノエチレン性不飽和基を有する単量体が、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有ビニル類、カルボキシル基含有ビニル類及びこれらのモノエステル化物、エポキシ基含有ビニル類、イソシアネート基含有ビニル類、芳香族ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体であり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【請求項5】
前記共重合性モノマー(B)として、少なくとも(メタ)アクリル酸エステル類及びカルボキシル基含有ビニル類を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のフィルム。
【請求項6】
前記共重合性モノマー(B)として、水酸基含有ビニル類及びカルボキシル基含有ビニル類から選択される少なくとも1種の単量体を用いて得られた請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂溶液を含有する主剤と、活性水素及び/又は水酸基と反応可能な硬化剤とを混合したものを乾燥、硬化してなり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【請求項7】
請求項3または4に記載の樹脂溶液を含有する主剤と、水酸基と反応可能な硬化剤とを混合したものを乾燥、硬化してなり、
下記要件(1)〜(3)を満たすことを特徴とするフィルム;
(1)未延伸時のフィルムの光線透過率が80%以上であり、
(2)フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が79%以下であり、
(3)フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80%以上である。
【請求項8】
(1)'未延伸時のフィルムの光線透過率が80〜89%、90〜92%または93%
以上であり、(2)'フィルムが白濁するまで延伸した時の光線透過率が50〜79%ま
たは49%以下であり、(3)’フィルムが白濁するまで延伸し、その後に開放するという伸縮運動を100回繰返した後のフィルムの光線透過率が80〜89%、90〜92%または93%以上であることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のフィルム。
【請求項9】
光学材料用であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のフィルム。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれかに記載のフィルムと、樹脂、金属、紙、木材、繊維、皮革、ガラス、ゴム、セラミック、コンクリートからなる群から選ばれたいずれかとを積層して得られることを特徴とする積層体。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のフィルムと、オレフィン系樹脂とを積層して得られることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2009−30066(P2009−30066A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−236439(P2008−236439)
【出願日】平成20年9月16日(2008.9.16)
【分割の表示】特願2003−368273(P2003−368273)の分割
【原出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】