説明

フィルム外装電気デバイス用ケースおよびフィルム外装電気デバイス集合体

【課題】個々の電池を十分に冷却可能なフィルム外装電気デバイス用ケースおよびフィルム外装電気デバイス集合体を提供する。
【解決手段】充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイス1を収納するフィルム外装電気デバイス用ケース10に係る。この態様において、フィルム外装電気デバイス1を冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路13Aと、フィルム外装電気デバイス1のフィルムに設けられたガス排出部から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路部11cと、を有し、冷却路13Aを形成する壁面のうちの少なくとも一つが排ガス通路部11cの側壁面である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池やキャパシタに代表される、電気デバイス要素を外装フィルムに収容したフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースおよびフィルム外装電気デバイス集合体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ駆動用のバッテリを搭載する電気自動車やハイブリッド電気自動車(以下、単に「電気自動車等」ともいう)の開発が急速に進められつつある。電気自動車等に搭載される電池にも、操縦特性、走行距離を向上させるため、当然ながら、軽量、薄型化が求められている。電池を軽量かつ薄型とするため、ラミネート材を用いたフィルム外装電池が開発されている。ラミネート材はアルミニウムなどの金属層と熱溶着性の樹脂層とを接着剤層を介して重ね合わせて薄いフィルムである。また、ラミネート材は、一般に、アルミニウム等の薄い金属層の両表面を薄い樹脂層で被覆した構造をなしており、酸やアルカリに強く、かつ軽量で柔軟な性質を有する。
【0003】
発電要素をラミネート材で被覆したフィルム外装電池は軽量である一方、剛性が低く、振動、衝撃の影響を受け易いため、車両に搭載する場合、これらの課題を解決する必要がある。この課題を解決するため、ケース内にフィルム外装電池を挟持固定する技術が従来より知られている。しかしながら、ケース内にフィルム外装電池を収納した場合、フィルム外装電池の冷却が問題となる。電池の性能を十分に引き出すためには温度上昇を冷却風により十分且つ均等に抑制しないと、電池の劣化が早まると共に、内部抵抗上昇による回生効率の悪化を招くことになるためである。
【0004】
電気自動車等の駆動源としてフィルム外装電池を用いる場合、複数のフィルム外装電池を多数積層すると共に、積層された各電池同士を電気接続して所望の出力電圧が得られるようにした電池セル集合体(以下「組電池」)とする必要がある。従来、組電池を構成する各電池間を冷却風が均等に流れるようにする技術が開示されている。特許文献1では、電池ケース内における各電池間の並列方向の隙間サイズが、冷却風の取入口近辺よりも遠方の方を大きくする構成が開示されている。この構成は、各電池を均等に冷却するため、取入口から近い部分の隙間を流れる冷却風と、遠い部分の隙間を流れる冷却風の量を均一化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−1150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、電池の配列間隔となる冷却路を冷却風の流れ方向に向けて拡大させることで各電池の均等冷却を図っている。しかしながら、組電池化された状態において各電池を均等に冷却する必要性の他、個々の電池を効率よく冷却する必要もある。また、冷却風は電池から熱を奪うことで高温となるため、下流に向かうにつれ膨張する。すなわち、組電池を冷却する場合、組電池全体としての冷却の他、個々の電池を十分に冷却可能で、かつ温度上昇による冷却風の状態変化をも考慮した冷却構造が必要となる。
【0007】
そこで、本発明は、個々の電池を十分に冷却可能なフィルム外装電気デバイス用ケースおよびフィルム外装電気デバイス集合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースであって、
フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路と、
フィルム外装電気デバイスのフィルムに設けられたガス排出部から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路部と、を有し、
冷却路を形成する壁面のうちの少なくとも一つが排ガス通路部の側壁面である。
【0009】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースであって、
フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路を有し、
フィルム外装電気デバイス用ケースが枠体からなり、冷却路を形成する壁面のうちの少なくとも一つが枠体の一部である。
【0010】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースであって、
フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路と、冷却路の流路の途中に外部からの冷却風を供給する冷却風供給路を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースおよびフィルム外装電気デバイス集合体によれば、個々の電池を十分に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に適用可能なフィルム外装電池の外観斜視図である。
【図2】フィルム外装電池を収納する、第1の実施形態のセルケースの分解斜視図である。
【図3】フィルム外装電池を収納した状態のセルケースの上面図である。
【図4】フィルム外装電池を収納した状態のセルケースの側断面図である。
【図5】フィルム外装電池を収納した状態のセルケースを2段積層した状態の側断面図である。
【図6】セルケースを積層してなる組電池の一例を示す斜視図である。
【図7】流入口の断面形状の一例を示す模式的な断面図である。
【図8】第2の実施形態のセルケースの外観斜視図である。
【図9】第3の実施形態のセルケースの外観斜視図である。
【図10】第4の実施形態のセルケースの外観斜視図である。
【図11】冷却風の風速に対するフィルム外装電池の各部の表面温度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第1の実施形態)
図1に本実施形態のフィルム外装電池の外観斜視図を示す。
【0014】
本実施形態のフィルム外装電池1は、正極側活電極、負極側活電極、および電解液を有する発電要素2と、アルミニウムなどの金属フィルムと熱融着性の樹脂フィルムとを重ね合わせて形成したラミネートフィルム7とを有する。フィルム外装電池1は、2枚のラミネートフィルム7によって発電要素2を密封した構造を有している。すなわち、本実施形態のフィルム外装電池1は、ラミネートフィルム7の4辺である熱融着部7aのうち、まず3辺を熱融着して袋状としておく。内部の空気は真空引きにより開放している残りの1辺から排気される。最後に、残りの1辺の熱融着部7aが熱融着されることで2枚のラミネートフィルム7によって発電要素2が密封封止される。なお、1枚のラミネートフィルムを折り曲げて残る3辺を熱融着することで袋状に形成してもよい。
【0015】
フィルム外装電池1の発電要素2は、セパレータを介して積層された正極側活電極と負極側活電極とからなる積層型であってもよい。あるいは、発電要素2は、帯状の正極側活電極と負極側活電極とをセパレータを介して重ねこれを捲回した後、扁平状に圧縮することによって正極側活電極と負極側活電極とが交互に積層された構造の捲回型であってもよい。
【0016】
また、発電要素2としては、正極、負極および電解質を含むものであれば、通常の電池に用いられる任意の発電要素が適用可能である。一般的なリチウムイオン二次電池における発電要素は、リチウム・マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム等の正極活物質をアルミニウム箔などの両面に塗布した正極板と、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料を銅箔などの両面に塗布した負極板とを、セパレータを介して対向させ、それにリチウム塩を含む電解液を含浸させて形成される。発電要素2としては、この他に、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の発電要素が挙げられる。さらに、本発明は、電気二重層キャパシタなどのキャパシタや電解コンデンサといった電気エネルギを内部に蓄積する電気デバイス要素を外装フィルムで封止した電気デバイスにも適用可能である。
【0017】
フィルム外装電池1の短手方向の熱融着部7aからは、正極側活電極に電気的に接続された正極用電極端子3および負極側活電極に電気的に接続された負極用電極端子4がそれぞれ対向して延出している。正極用電極端子3としてはアルミニウムが多く用いられ、また、負極用電極端子4としては銅またはニッケルがその電気的特性により多く用いられている。以下、正極用電極端子3と負極用電極端子4を単に電極と称する場合もある。
【0018】
フィルム外装電池1の長手方向の熱融着部7aにはその一部を、他の部分よりも熱融着強度を弱くし、他の部分よりも低い圧力で融着が剥がれるようにしたガス排出部8が設けられている。
【0019】
電池の使用時において、電池に規格範囲外の電圧が印加されたりすると、電解液溶媒の電気分解によりガスが発生し、電池の内圧が上昇することがある。さらに、電池が規格範囲外の高温で使用されたりしても、電解質塩の分解などによりガスが生成されたりする。基本的には、規格範囲内で電池を使用してガスを発生させないようにすることが理想的であるが、電池の制御回路が何らかの原因で故障して異常な電圧が印加されたり、何らかの原因で周囲が異常に高温となったりすると、場合によっては大量にガスが発生することもある。
【0020】
このような、電池内部でのガスの発生は、電池の内圧上昇をもたらす。内圧が極度に上昇し電池が暴発することを防ぐために、外装材として金属缶を用いた電池の多くは、電池の内圧が上昇した際にガスを電池の外部に逃がす圧力安全弁を有している。しかし、フィルムを外装材とするフィルム外装電池においては、圧力安全弁を設けることが構造上難しい。フィルム外装電池では内圧が上昇しすぎるとフィルムが膨張し、最終的には外装材が破裂しその箇所からガスが噴出するが、破裂がどの箇所で発生するか特定できないため、破裂した箇所によっては周囲の機器等に悪影響を及ぼすことがある。
【0021】
そこで、フィルム外装電池1においては、こういった電池内部でのガスの発生による不具合を解消するため、上述したようなガス排出部8を熱融着部7aに設けている。
【0022】
図2は本実施形態のセルケースの分解斜視図である。図3はセルケース内に収納されたフィルム外装電池の上面図である。図4はフィルム外装電池を収納したセルケースの模式的な側断面図である。図5はセルケースを2つ積層させた状態における模式的な側断面図である。また、図6はセルケースを積層してなる組電池の一例を示す斜視図である。
【0023】
セルケース10は第1の枠体11と第2の枠体12とを有し、これらの間にフィルム外装電池1を挟持する構成となっている。各枠体11、12の形状はそれぞれ枠状であり、フィルム外装電池1の発電要素2に対応した箇所に開口部13が形成されている。
【0024】
第1の枠体11は、対向する2つの長辺11aと、これら各長辺11aに略直交し、かつ互いに対向して形成された2つの短辺11bからなる矩形の枠である。フィルム外装電池1は、その熱融着部7aが、第1の枠体11の対向面11A(あるいは内面と称する)と第2の枠体12の対向面12A(あるいは内面と称する)とに形成された挟持部にて部分的に挟持されることでセルケース10内に収納保持される。
【0025】
各長辺11aはフィルム外装電池1のガス排出部8から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路11cで繋がっている。
【0026】
図2、3を参照すると、排ガス通路11cは、幅広部11c側から幅狭部11cに向かって概ね窄まった形状となっている。より詳細には、排ガス通路11cは、幅広部11cと、幅狭部11cと、絞り部11cと、を有する。幅広部11cは流入口13a(ガス排出部8側)側に位置する。幅狭部11cは、流出口13b側に位置し幅広部11cに対して幅が狭く形成されている。絞り部11cは、幅広部11cと幅狭部11cとの間を滑らかに繋いでいる。この排ガス通路11cの断面形状はコ字断面(図4参照)であり、主面11cと主面11cの両端から立ち上げられて形成された排ガス通路側面11cとを有する。後述するように排ガス通路11cは、短辺11bおよびフィルム外装電池1とともに冷却路13Aを構成する。排ガス通路側面11cは冷却路13Aの第2の冷却路側壁13dとして流用される。排ガス通路側面11c(第2の冷却路側壁13d)とフィルム外装電池1の表面との間には冷却路13Aを流れる冷却風が排ガス通路11c内へと流れ込むことができる程度の隙間10a(図4、5参照)が形成されている。なお、冷却風は不図示の外部の冷却風供給装置から供給される。
【0027】
本実施形態では、フィルム外装電池1のガス排出部8が熱融着部7aの概ね中央に形成されている。排ガス通路11cはこれにあわせて長辺11aの概ね中央に形成されている。また、長辺11aの一方であって排ガス通路11cの一端にはガス排出口16を形成するための切欠11dが形成されている。
【0028】
第1の枠体11の各短辺11bにはセルケース10に収納されている状態のフィルム外装電池1の電極を外部へと延出させるための切欠11eがそれぞれ形成されている。
【0029】
各短辺11bの表面のうち、フィルム外装電池1の各短辺11bと当接する側となる内面に対して反対側の外面11bは、各長辺11aに掛け渡された排ガス通路11cと各短辺11bとの間の部分の長辺11aの外面11aよりも1.0mm高い位置にある。
【0030】
外面11bは、外面11aよりも1.0mm高い位置にある。外面11bは、フィルム外装電池1の各短辺11bと当接する面の反対側の面である。外面11aは各長辺11aに掛け渡された排ガス通路11cと各短辺11bとの間の部分である。また、排ガス通路11cの主面11cも長辺11aの外面11aよりも1.0mm高い位置にある。換言すれば、短辺11bの外面11bおよび排ガス通路11cの主面11cと、長辺11aの外面11aとの間には1.0mmの段差11gが存在している。
【0031】
第2の枠体12も基本的な構成は第1の枠体11と同様である。第2の枠体12も2つの長辺12aおよび2つの短辺12bからなる矩形の枠である。長辺12aの一方には、ガス排出口16を形成するための切欠12dが形成されている。なお、第2の枠体12には第1の枠体11と異なり、排ガス通路11cは設けられていない。また、第2の枠体12は第1の枠体11の切欠11eに嵌り込む電極保持部12eが設けられている。電極保持部12eの厚さは、電極保持部12eが切欠11eに嵌り込んだ状態で電極を延出可能な開口ができるような厚さに形成されている。
【0032】
次に、排ガス通路11c、短辺11bおよびフィルム外装電池1からなる冷却路13Aの構成について以下に説明する。
【0033】
冷却路13Aは、フィルム外装電池1の発電要素2を冷却するための冷却風の通路であり、セルケース10を積層することで形成される。すなわち、冷却路13Aは、第1の冷却路側壁13cと、第2の冷却路側壁13dと、フィルム外装電池1の放熱面13eとで構成される(図4および図5参照)。第1の冷却路側壁13cは短辺11bの端面からなる。第2の冷却路側壁13dは、コ字断面の排ガス通路11cのガス通路側面11cからなる。放熱面13eは、セルケース10内に収納されたフィルム外装電池1の表面と、隣接するセルケース10内に収納されたフィルム外装電池1の表面とからなる。
【0034】
冷却風は冷却路13Aの流入口13aから冷却路13A内に流入し、流出口13bから流出する。すなわち、冷却風はフィルム外装電池1の表面と接触して熱を奪い、膨張しながら図3中矢印a方向に流れる。
【0035】
流入口13aは、排ガス通路11cの幅広部11c側の段差11gと、隣接して積層された第2の枠体12の外面とにより形成される。また、流出口13bは、排ガス通路11cの幅狭部11c側の段差11gと、隣接して積層された第2の枠体12の外面とにより形成される。本実施形態においては流入口13aは高さ1mmで幅w1は38mmであり、流出口13bは高さ1mmでw2は58.5mmである。また、これら流入口13aおよび流出口13bは排ガス通路11cの両側に形成されている。すなわち、流入口13aおよび流出口13bはそれぞれ2箇所形成されている。よって、本実施形態においては流入口13aの開口面積は1mm×38mm×2=76mm2であり、流出口13bの開口面積は1mm58.5mm×2=117mm2である。
【0036】
図5を参照すると、排ガス通路11cの冷却路側壁13dとフィルム外装電池1の表面との間には隙間10aが形成されている。隙間10aから排ガス通路11c内に冷却風が流入可能となっている。また、図5においては、排ガス通路11cの主面11cは、隣接するフィルム外装電池1の表面の表面に密着したように描かれているが、この主面11cとフィルム外装電池1の表面との間にも若干の隙間が形成されている。この隙間も冷却風が通過可能である。
【0037】
再び図3を参照すると、冷却路13Aは、流入領域Bと、拡大領域Bと、流出領域Bとに大きく分けられる。流入領域Bは幅w(<w)の領域であり、流出領域Bは幅wの領域である。拡大領域Bは、流路幅が幅wから幅wへと拡大していくことで流路断面が拡大していく領域である。換言すれば、拡大領域Bは第1の冷却路側壁13cと排ガス通路側面11c(第2の冷却路側壁13d)との間の距離が、流入口13aから流出口13bに向かうにつれ大きくなる領域である。冷却路13Aの流入領域Bは排ガス通路11cの幅広部11cに対応する。冷却路13Aの拡大領域Bは排ガス通路11cの絞り部11cに対応する。冷却路13Aの流出領域Bは排ガス通路11cの幅狭部11cに対応する。
【0038】
冷却風の主流は以下のように冷却路13A内を流れる。
【0039】
冷却風の主流は、まず狭い流入口13aから冷却路13A内へと流入する。冷却路13A内に流入した冷却風の主流は、流入領域Bにてフィルム外装電池1の表面から熱を奪い始めることで膨張しはじめる。膨張した冷却風の主流は、除々に拡がる拡大領域Bへと流れ込む。冷却風の主流は、拡大領域Bにて熱を奪うことでさらに膨張しながら、流入領域Bよりも広い流出領域Bへと流れ込む。さらに冷却風の主流は、流出領域Bにてまたさらに熱を奪い膨張を続けながら流出口13bに向けて流れる。熱を奪って膨張した冷却風の主流は、最終的に、流入口13aより広い流出口13bより流出される。また、上述したように、冷却風の一部は排ガス通路11c内にも流れ込み、この排ガス通路11cに面した領域のフィルム外装電池1の表面を冷却する。
【0040】
なお、本実施形態においては、流入口13a端面から長さ24mmまでが流入領域Bであり、流入口13a端面から74mmまでが拡大領域Bとなっている。また、排ガス通路11cの排ガス通路側面11c(第2の冷却路側壁13d)は、流入領域Bと拡大領域Bとの境界部分、および拡大領域Bと流出領域Bとの境界部分が、冷却風の流れを阻害させないように曲面で形成されている。本実施形態においては境界部分はR30で形成されている。
【0041】
以上のように、本実施形態の冷却路13Aは、流入口13a側の開口面積よりも流出口13b側の開口面積を大きくしている。流入口13a側を流れる冷却風は、未だフィルム外装電気デバイスから熱を奪っておらず低温状態で高密度である。一方、流出口13b側を流れる冷却風は、フィルム外装電池1から熱を奪うことで高温となり膨張している。すなわち、本実施形態の冷却路13Aは、膨張による冷却風の体積増加に併せて流出口13b側の開口面積を大きくしている。これにより、高温となった冷却風が冷却路A内で淀んでしまうことなく流出口13bから良好に排出することができる。
【0042】
また、本実施形態の冷却路13Aは、第1の冷却路側壁13cが短辺11b、12bを流用したものであり、第2の冷却路側壁13dが排ガス通路側面11cを流用したものであるため、新たに冷却路を構成する必要がなく、構造が簡単になるとともにコスト面でも有利である。
【0043】
なお、本実施形態においては排ガス通路側面11cを第2の冷却路側壁13dとして流用して形成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、排ガス通路側面11cとは別に流れ方向に流路幅が広がるような側壁を別途設けるものであってもよい。また、本実施形態においては短辺11b、12bからなる第1の冷却路側壁13cが直線形状のものを例示したが、これに限定されるものではない。すなわち、第1の冷却路側壁13cも第2の冷却路側壁13dと同様に流れ方向に流路幅を広げる形状の側壁としてもよい。
【0044】
また、本実施形態では流入領域Bと流出領域Bとは流路幅がそれぞれ一定で、拡大領域Bのみ流路幅が冷却風の流れ方向に向けて拡がる構成を例に示したが、これに限定されるものはない。すなわち、冷却路13Aは、流入口13aから流出口13bに向けての全ての領域において流路幅、あるいは流路面積が漸次拡大している構成としてもよい。
【0045】
また、本実施形態では流入口13aおよび流出口13bの高さを同一とした例を示したがこれに限定されるものでもなく、流出口13b側の高さを流入口13aの高さよりも高くした構成とすることで、高さ方向にも流路が拡大するような構成としてもよい。また、本実施形態では2つ形成された冷却路13はいずれも中心線Lに対して対称なる形状のものを例示したが、これに限定されるものではなく、非対称な形状であってもよい。さらには、冷却路13は2つに限定されるものではなく、1つのみ形成されているものであってもよいし、あるいは3つ以上形成されているものであってもよい。
【0046】
また、第1および第2の枠体11、12は開口部13が形成されている構成を示したが、これに限定されるものではなく、開口部13の部分に壁面が設けられている構成であってもよい。すなわち、本実施形態では、冷却路13Aの壁面のうちの一つを、隣接するセルケース10内に収納されたフィルム外装電池1の表面により構成しているため、冷却路13Aを形成するにはフィルム外装電池1を収納したセルケース10が少なくとも2個必要となる。これに対して、開口部13を塞ぐ壁面を設け、これを冷却路13Aを構成する壁面とすることで、1つのセルケース10にて冷却路13Aを構成できる。開口部13を塞ぐ壁面は、第1および第2の枠体11、12と一体的に構成されているものであってもよいし、あるいは別体であってもよい。また、開口部13を塞ぐ壁面は、図6に示すような組電池20の積層された両端側に位置するセルケース10のみに適用されるものであってもよい。
【0047】
また、本実施形態では第1の枠体11にのみ、冷却風の流れ方向に対して除々に拡大する冷却路13Aを形成する排ガス通路11cが設けられている構成を示したが、これに限定されるものではなく、第2の枠体12側にも冷却風の流れ方向に対して除々に拡大する冷却路を構成する構造体が設けられているものであってもよい。
【0048】
また、本実施形態では、熱融着部7aの長辺の概ね中央にガス排出部8が形成されているフィルム外装電池1を用いている。よって、排ガス通路11cは、ガス排出部8の位置にあわせて長辺11aの概ね中央に形成されている。そして、冷却路13Aは、この排ガス通路11cの排ガス通路側面11cを利用して構成したものである。このため、冷却路13Aは冷却風の流れ方向が一方の長辺11aから他方の長辺11aに向けて流れる構成となっている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、セルケース10は、冷却風が一方の短辺11bから他方の短辺11bへと流れる構成の冷却路を有するものであってもよい。
【0049】
また、本実施形態では上述した説明より、冷却路13Aの断面形状は概ね矩形となるが、これに限定されるものではない。冷却風を流動損失を低減させるべく、フィルム外装電池1の表面に接触する部分を滑らかなR形状としたり、さらには第1の冷却路側壁13cおよび第2の冷却路側壁13dも平面形状ではなく、円弧形状としてもよい。
【0050】
セルケース10を積層して構成した組電池20は、図6に示すように、流出口13bが上方となるようにして用いるとより好適である。冷却路13Aは冷却風の熱膨張を考慮し、膨張した冷却風の流れを阻害しないようにするべく、冷却風の流れ方向に向けて拡大する構成となっている。一般に流体は加熱されと密度が下がり、軽くなることで上方へと流れていく性質を有する。よって、このような流体の特性も考慮するならば、流出口13bが上方となるようにして用いると、より好適である。
【0051】
なお、流入口13aの断面形状は、冷却風の流入領域B1への流入効率を上げるため、図7に示すように流入口13aに曲面部13aが形成されたものであってもよい。この曲面部13aは、冷却風が流入領域Bへと流れ込み易い形状であればどのようなものであってもよく、例えば、単にRをつけたものでもよいし、インボリュート曲線を用いて形成した曲面であってもよい。
【0052】
なお、本実施形態に示した各数値は一例であり、これらに限定されるものではない。
【0053】
(第2の実施形態)
本実施形態では並列に配置された2つのフィルム外装電池をまとめて冷却する構成を例示する。
【0054】
図8に本実施形態のセルケースの外観斜視図を示す。本実施形態のセルケース110は、並列に配置された収納部110aと収納部110bとを有する。収納部110a内にはフィルム外装電池1aが収納され、収納部110b内にはフィルム外装電池1bが収納されている。
【0055】
冷却路113Aは、排ガス通路111cの両側に2つ形成されている。また、冷却路113Aは、収納部110aと収納部110bとを連通して形成されており、冷却風は収納部110a側から流れ込み、収納部110bから排出される。すなわち、冷却風は、まず、フィルム外装電池1aを冷却し、その後続いてフィルム外装電池1bを冷却してから排出される。本実施形態の冷却路113Aも、第1の実施形態で示した冷却路10Aと同様に流入口側から流出口に向けて流路断面が拡大する形状を有している。つまり、本実施形態の冷却路113Aは、膨張による冷却風の体積増加に併せて流出口側の開口面積を大きくしているので、高温となった冷却風が冷却路113A内で淀んでしまうことなく流出口から良好に排出することができる。
【0056】
また、本実施形態の場合、複数の電池をまとめて収納することができるセルケース110を採用しているので、部品点数を少なくすることができる。
【0057】
なお、本実施形態では2つの電池を並列に収納可能な形状のケースに本願発明を適用した例を示したが、これに限定されるものではなく、本願発明は3つ以上の電池を並列に収納するケースにも適用可能である。
【0058】
(第3の実施形態)
図9に本実施形態のセルケースの外観斜視図を示す。本実施形態のセルケース210も、第2の実施形態のセルケース110と同様に、並列に配置された収納部210aと収納部210bとを有する。収納部210a内にはフィルム外装電池1aが収納され、収納部210b内にはフィルム外装電池1bが収納されている。このように、本実施形態のセルケース210は電池を収納する構成においては、第2の実施形態のセルケース110と同様である。しかしながら、セルケース110は冷却路113Aが排ガス通路111cの両側に2つ形成されているのに対し、本実施形態のセルケース210は1つの冷却路213Aのみを有する構成となっている。
【0059】
本実施形態の冷却路213Aも、膨張による冷却風の体積増加に併せて流出口側の開口面積を大きくしているので、高温となった冷却風が冷却路213A内で淀んでしまうことなく流出口から良好に排出することができる。
【0060】
(第4の実施形態)
図10に本実施形態のセルケースの外観斜視図を示す。本実施形態のセルケース310も、第2の実施形態のセルケース110と同様に、並列に配置された収納部310aと収納部310bとを有する。収納部310a内にはフィルム外装電池1aが収納され、収納部310b内にはフィルム外装電池1bが収納されている。しかしながら、本実施形態のセルケース310の排ガス通路311cには、冷却風供給路320が形成されている点で第2の実施形態のセルケース110と異なる。
【0061】
冷却風供給路320は、冷却路313Aの流れ方向の概ね中間点に冷却風を供給するために設けられたものである。
【0062】
冷却風供給路320は、2つに分かれる分岐路321を有している。各分岐路321は冷却風供給路320内に流れ込んだ冷却風を排ガス通路311cの両側に形成された2つの冷却路313Aのそれぞれに供給する。冷却風供給路320内に流れ込んだ冷却風は各分岐路321から冷却路313Aの中間点に供給される。なお、冷却路313Aの中間点とは、本実施形態の場合、収納部310aと収納部310bとの間となる。
【0063】
冷却路313A内を流れる冷却風は下流に向かうにつれ、温度が上昇する。このため冷却風の温度は、フィルム外装電池1bを冷却する冷却風のほうがフィルム外装電池1aを冷却する冷却風よりも高温となる。しかしながら、分岐路321から温度の低い冷却風が冷却路313Aの中間点に供給されることで、フィルム外装電池1bを冷却する冷却風の温度を下げることができる。
【0064】
なお、本実施形態では、冷却風は収納部310aと収納部310bとの間である中間点に供給される例を示したが、これに限定されるものではない。分岐路321からの冷却風の供給は、中間点より上流側であってもよいし、あるいは下流側であってもよい。
【0065】
また、本実施形態の分岐路321は各冷却路313Aに対して冷却風を1箇所から供給する構成であるが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、1つの冷却路313Aに対して2箇所以上から冷却風供給路320からの冷却風が供給される構成であってもよい。
【0066】
また、本実施形態の構成は、複数のフィルム外装電池を収納するセルケースだけでなく、一つの電池を収納するセルケースにも適用可能である。
【0067】
(実施例)
第1の実施形態で示したセルケース10内に冷却風を導入させた場合のフィルム外装電池1の表面上の各部の温度を測定した測定結果を図11のグラフに示す。
【0068】
本実施例ではフィルム外装電池1を収納したセルケース10を4個積層させた組電池を用いた。よって、冷却路13Aは3つ形成された状態となる。
【0069】
図11のグラフの横軸の「風速」は流出口13bにおける冷却風の風速であり、縦軸は各風速に対するフィルム外装電池1の各点における表面温度である。
【0070】
本実施例では冷却風の風速を3m/s、6m/s、10m/sと変化させ、各風速に対するフィルム外装電池1のA〜F点(図3参照)における表面温度を測定した。なお、外気温は25℃であり、グラフ中における「セル」とはフィルム外装電池1を意味する。
【0071】
流入口13aおよび流出口13bの寸法、流入領域Bおよび拡大領域Bの距離は上述した通りである。すなわち、流入口13aの開口面積は76mmであり、流出口13bの開口面積は117mmである。また、流入口13a端面から長さ24mmまでが流入領域Bであり、流入口13a端面から74mmまでが拡大領域Bである。
【0072】
図3のA〜F点はいずれもフィルム外装電池1の表面の温度を測定した測定点を示している。A〜C点は冷却路13A内の温度を測定しており、D〜F点は排ガス通路11c内の温度を測定している。なお、排ガス通路11cの両側壁の端面はフィルム外装電池1の表面に当接するものの封止剤等が充填されているわけではない。よって、冷却路13A内を流れる冷却風は排ガス通路11c内へと流入する。しかしながら、排ガス通路11c内は冷却風に直接的にさらされず、冷却風の流量が冷却路13A内と比較すると少ないため、電池を冷却しにくい状況にある。
【0073】
A点は流入口13a付近の温度を測定するための測定点であり、流入口13aの中心に位置する。
【0074】
B点は流入口13aと流出口13bとの中間地点の温度を測定するための測定点であり、図2の中心線L2上であって、中心線L1と冷却路側壁13cとの中点に位置する。
【0075】
C点は流出口13b付近の温度を測定するための測定点であり、流出口13b近傍であって、中心線L1と冷却路側壁13cとの中点に位置する。
【0076】
D点は排ガス通路11c内であって流入口13a付近に位置する。E点は排ガス通路11c内であって拡大領域B2の終端部分近傍に位置する。F点は排ガス通路11c内であって流出口13b付近に位置する。
【0077】
図11のグラフに示すように、冷却路13A内の流入口13a側から流出口13bまでの温度分布は5℃以内に収まっている。また、排ガス通路11c内のD〜F点を含めても全体としての温度分布が約10℃の範囲内となることが明らかとなった。
【0078】
また、風速10m/sとすることで、フィルム外装電池1の表面温度を所望の温度範囲内(35〜45℃)とすることが確認できた。
【0079】
従来の冷却路の一般的な構成は本願発明とは逆に流入口側の流路断面が流出口側よりも広い。流入口側を拡げることで流入口近傍の冷却風の流速を抑えておき、低い流速でフィルム外装電池の表面を流れることによりフィルム外装電池から熱を奪う時間を稼ぐためである。また、熱を奪って高温となった冷却風を流出口付近では流路面積を絞ることで流速を速めて素早く外部に排気するためである。このような従来の冷却方法も好適とも思われる。しかしながら、この方法は、冷却風が熱膨張により体積が増加していくのに反して流路面積を絞っているため、冷却風の流れが阻害されるおそれがある。
【0080】
一方、本発明の冷却路13Aは、冷却風が熱膨張により体積が増加していくのに応じて流路断面が拡大していく。このような冷却路13Aに所定の風速の冷却風を供給することで、フィルム外装電池1の表面温度を所望の温度範囲内に収めることが可能であり、その効果は本実施例により確認された。
【0081】
本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースにおいて、
フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路を有し、冷却路の流出口となる部分の開口面積が冷却路の流入口となる部分の開口面積よりも大きいことを特徴とする。
【0082】
上記の通りの構成の本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、流入口側の開口面積よりも流出口側の開口面積を大きくしている。流入口側の開口内を流れる冷却風は、未だフィルム外装電気デバイスから熱を奪っておらず低温状態で高密度である。一方、流出口側の開口内を流れる冷却風は、フィルム外装電気デバイスから熱を奪うことで高温となり膨張している。すなわち、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、膨張して体積が増加した冷却風に併せて流出口側の開口面積を大きくしているので高温となった冷却風が冷却路内で淀んでしまうことなく流出口から良好に排出することができる。これにより、良好な冷却特性を得ることができる。
【0083】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、冷却路を形成する壁面のうち、対向する壁面の間隔が流入口から流出口に向かうにつれ大きくなる領域を有するものであってもよい。例えば、矩形形状の流路断面を有する冷却路の場合、膨張しながら流れていく冷却風の流れに応じて対向する壁面の間隔が拡がっていくので、冷却風を流出口までスムーズに導くことが可能となる。これにより、高温となった冷却風は淀みなく排出され、冷却特性は良好となる。
【0084】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、冷却路の流路断面が流入口から流出口に向かうにつれ大きくなる領域を有するものであってもよい。壁面形状が円弧形状等である冷却路の場合、膨張しながら流れていく冷却風の流れに併せて流路断面を拡大させていくので、冷却風を流出口までスムーズに導くことが可能となる。これにより、高温となった冷却風は淀みなく排出され、冷却特性は良好となる。
【0085】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、フィルム外装電気デバイスの外装フィルムに設けられたガス排出部から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路部を有し、冷却路を形成する壁面のうちの少なくとも一つが排ガス通路部の側壁面であってもよい。すなわち、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、冷却路を別途設けることなく、排ガス通路部の側壁面を流用して冷却路を構成することができるので構造が簡単になるとともにコスト面でも有利である。
【0086】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、フィルム外装電気デバイス用ケースが枠体からなり、冷却路を形成する壁面のうちの少なくとも一つが枠体の一部であってもよい。この場合も同様に、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、冷却路を別途設けることなく、排ガス通路部の側壁面を流用して冷却路を構成することができるので構造が簡単になるとともにコスト面でも有利である。
【0087】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、冷却路を流れる冷却風が並列に収納された複数のフィルム外装電気デバイスを順次冷却するものであってもよい。この場合、複数の電池を一つのケースに収納し、まとめて冷却することができるため部品点数を削減することができる。
【0088】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、冷却路の流路の途中に外部からの冷却風を供給する冷却風供給路を有するものであってもよい。この場合、冷却路内で高温となった冷却風に低温の冷却風を供給して、冷却風の温度を低下させることができるので、冷却効率を向上させることができる。
【0089】
本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納する2つの枠体からなるとともに、いずれか一方の枠体に、フィルム外装電気デバイスのフィルムに設けられたガス排出部から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路部を有するフィルム外装電気デバイス用ケースであって、
枠体の互いに対向する対向面に、フィルムの周縁の熱融着部にて熱融着された熱融着部を挟持する内面が形成されており、内面と反対側の面となる外面に凹凸が設けられ、
他のフィルム外装電気デバイス用ケースと重ね合わされた際に、枠体の外面と他のフィルム外装電気デバイス用ケースの枠体との間に、フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路の流入口および流出口が形成され、
冷却路の壁面が、排ガス通路部の側壁、枠体、フィルム外装電気デバイス用ケース内のフィルム外装電気デバイスの表面および他のフィルム外装電気デバイス用ケース内の他のフィルム外装電気デバイスの表面とを含み、
流出口の開口面積が流入口の開口面積よりも大きく、かつ冷却路の流路断面が流入口から流出口に向かうにつれ大きくなる領域を有するものである。
【0090】
上記の通りの本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、フィルム外装電気デバイスを収納した状態で他のフィルム外装電気デバイス用ケースと重ね合わせることで、冷却路およびその流入口と流出口とが形成される。すなわち、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、組電池化した場合、他のフィルム外装電気デバイス用ケースの要素を用いて冷却路を形成することができる。このため、構造が簡単になり部品点数を少なくすることができるのでコスト面でも有利である。また、組電池の大型化を回避することもできる。
【0091】
また、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、流入口側の開口面積よりも流出口側の開口面積を大きくしている。流入口側は、フィルム外装電気デバイスから未だ熱を奪っておらず低温状態で高密度の冷却風が流れる。また、流出口側はフィルム外装電気デバイスから熱を奪うことで高温となり膨張した冷却風が流れる。すなわち、流出口側の開口面積は膨張して体積が増加した冷却風に併せて大きくしており、流路断面は膨張しながら流れていく冷却風の流れに併せて拡大させている。よって、本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、冷却風を冷却路内で淀ませることなく流出口までスムーズに導くことが可能となる。これにより、良好な冷却特性を得ることができる。
【0092】
本発明のフィルム外装電気デバイス集合体は、フィルム外装電気デバイスを収納した本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースが2以上積層されてなる。
【0093】
これらの実施形態によれば、高温となることで膨張して体積が増加した冷却風に併せて流出口側の開口面積を大きくしているので、冷却風の膨張による流れへの影響を少なくすることができ、よって、良好な冷却特性を得ることができる。
【符号の説明】
【0094】
1 フィルム外装電池
2 発電要素
3 正極用電極端子
4 負極用電極端子
7 ラミネートフィルム
8 ガス排出部
10 セルケース
11 第1の枠体
11c 排ガス通路
12 第2の枠体
13 開口部
13A 冷却路
16 ガス排出口
20 組電池
110 セルケース
111c 排ガス通路
113A 冷却路
210 セルケース
213A 冷却路
310 セルケース
311c 排ガス通路
313A 冷却路
320 冷却風供給路
321 分岐路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースであって、
前記フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路と、
前記フィルム外装電気デバイスの前記フィルムに設けられたガス排出部から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路部と、を有し、
前記冷却路を形成する壁面のうちの少なくとも一つが前記排ガス通路部の側壁面であるフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項2】
充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースであって、
前記フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路を有し、
前記フィルム外装電気デバイス用ケースが枠体からなり、前記冷却路を形成する壁面のうちの少なくとも一つが前記枠体の一部であるフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項3】
充放電可能な電気デバイス要素がフィルムによって被覆されたフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースであって、
前記フィルム外装電気デバイスを冷却する外部より供給される冷却風が流れる冷却路と、前記冷却路の流路の途中に外部からの冷却風を供給する冷却風供給路を有するフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項4】
前記冷却路を形成する壁面のうち、対向する前記壁面の間隔が前記流入口から前記流出口に向かうにつれ大きくなる領域を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項5】
前記冷却路の流路断面が前記流入口から前記流出口に向かうにつれ大きくなる領域を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項6】
前記冷却路を流れる冷却風は並列に収納された複数のフィルム外装電気デバイスを順次冷却する、請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項7】
前記フィルム外装電気デバイスを収納した請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス用ケースが2以上積層されてなるフィルム外装電気デバイス集合体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−199255(P2012−199255A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−162956(P2012−162956)
【出願日】平成24年7月23日(2012.7.23)
【分割の表示】特願2006−550742(P2006−550742)の分割
【原出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】