説明

フィルム外装電気デバイス用ケースおよび該フィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法

【課題】重量増加を抑制しつつ、良好な振動吸収特性および冷却特性を得ることが可能なフィルム外装電気デバイス用ケースを提供する。
【解決手段】充放電可能な電気デバイス要素2と、電気デバイス要素2を包囲して配された外装フィルム7とを有するフィルム外装電気デバイス1を収納するフィルム外装電気デバイス用ケース10は、挟持面にてフィルム外装電気デバイス1を挟持し、電気デバイス要素2に対応する領域に開口部13が形成された枠部材11,12と、枠部材11,12の挟持面上に設けられた、フィルム外装電気デバイス1を保持する保持材30とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池やキャパシタに代表される、電気デバイス要素を外装フィルムに収容したフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースおよび該フィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、モータ駆動用のバッテリを搭載する電気自動車やハイブリッド電気自動車(以下、単に「電気自動車等」ともいう)の開発が急速に進められつつある。電気自動車等に搭載される電池にも、電気自動車の操縦特性、走行距離を向上させるため、当然ながら、軽量、薄型化が求められている。電池を軽量かつ薄型とするため、その外装体にアルミニウムなどの金属層と熱溶着性の樹脂層とを接着剤層を介して重ね合わせて薄いフィルムとなしたラミネート材を用いたフィルム外装電池が開発されている。ラミネート材は、一般に、アルミニウム等の薄い金属層の両表面を薄い樹脂層で被覆した構造をなしており、酸やアルカリに強く、かつ軽量で柔軟な性質を有するものである。
【0003】
発電要素をラミネート材で被覆したフィルム外装電池は軽量である一方、剛性が低く、振動、衝撃の影響を受け易いため、車両に搭載する場合、これらの課題を解決する必要がある。この課題を解決するため、特許文献1に開示されているように、ケース内にフィルム外装電池を挟持固定する技術が従来より知られている。この方法は、剛性の確保、あるいは衝撃からの保護といった点では有利であるが、振動を吸収することは困難である。
【0004】
振動を吸収する方法としては低硬度のゴムを圧縮して用いる方法がある。しかしながら、低硬度のゴムであっても、ゴムが圧縮された場合のその反力は、圧縮変形量に比べて急激に立ち上がることは既知であり、良好な振動吸収特性を得ることは困難であった。また、ゴムの場合、重量が増加してしまう場合がある。
【0005】
一方、特許文献2には、フィルム外装電池をケース内に収納し、ケースとフィルム外装電池との間にポッティング材を充填するモジュール電池が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−012278号公報
【特許文献2】特開2004−39485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示されている構造は、ゴムのように反力が急激に立ち上がることもなく、また、ゴムに比べて軽量化が可能である。しかしながら、特許文献2に開示されている構造は、ポッティング材が発電要素を含む電池全体を覆い尽くすようにしてケースと電池との間に充填されているものである。このため、放熱特性に問題を生じる場合がある。すなわち、ポッティング材が断熱材として機能してしまい、発電要素からの熱を外部に放熱しきれず、電池が過熱状態となり、その結果、電池寿命を短くしてしまう場合がある。
【0008】
また、ゴムに比べて軽量であるとはいえ、ケースと電池との間に隙間なくポッティング材が充填された構成の電池を複数接続して組電池化すると、やはり重量が増加してしまう。
【0009】
本発明は上述のような課題に鑑みてなされたものであり、重量増加を抑制しつつ、良好な振動吸収特性および冷却特性を得ることが可能なフィルム外装電気デバイス用ケースおよび該フィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、充放電可能な電気デバイス要素と、電気デバイス要素を包囲して配された外装フィルムとを有するフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースにおいて、挟持面にてフィルム外装電気デバイスを挟持し、電気デバイス要素に対応する領域に開口部が形成された枠部材と、枠部材の挟持面に設けられた、フィルム外装電気デバイスを保持する保持材とを有することを特徴とする。
【0011】
上記の通り構成された本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースは、保持材を、開口部が形成された枠部材の挟持面に有し、この保持材がフィルム外装電気デバイスを保持する。すなわち、保持材は、開口部には設けられていないので電気デバイス要素が発生した熱を蓄熱してしまうことがなく、また、冷却風が供給された場合、保持材が冷却を阻害することもない。また、フィルム外装電気デバイスは保持材によって保持されていることで、外部からの衝撃、あるいは振動がフィルム外装電気デバイスに伝わるのを防止することができる。さらに、電気デバイス要素の部分に保持材がない分だけ軽量化を図ることができる。
【0012】
本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法は、充放電可能な電気デバイス要素と、電気デバイス要素を包囲して配された外装フィルムとを有するフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法において、挟持面にてフィルム外装電気デバイスを挟持し、電気デバイス要素に対応する領域に開口部を有する枠部材を成形する際に、フィルム外装電気デバイスを保持する保持材を、枠部材の挟持面上に成形する工程を含むことを特徴とする。
【0013】
上記の通りの本発明のフィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法によれば、枠部材の成形と同時に保持材を成形することができるため、別途、保持材を取り付けるといった工程を省略することができる。また、本発明の製造方法は保持材を成形加工するので保持材の形状の自由度が高くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、枠部材の収納部内にのみ保持材を設け、これによりフィルム外装電気デバイスを保持し、開口部には保持材は設けていないので、重量増加を抑制しつつ、良好な振動吸収特性および放熱特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に適用可能なフィルム外装電池の外観斜視図である。
【図2】フィルム外装電池を収納する、本発明のセルケースの一例の分解斜視図である。
【図3】フィルム外装電池、および該フィルム外装電池を収納したセルケースの断面図である。
【図4】フィルム外装電池を収納したセルケースの斜視図である。
【図5】保持材の他の形状の例を示す斜視図である。
【図6】保持材の配置例を示すためのフィルム外装電池の斜視図である。
【図7A】2色成形工法により成形した、波型と凹部で構成された保持材の断面形状例を示す断面図である。
【図7B】2色成形工法により成形した、互いに対向する凸部で構成された保持材の断面形状例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の一形態を図面を参照して以下に説明する。
【0017】
図1に本実施形態のフィルム外装電池の外観斜視図を示す。
【0018】
本実施形態のフィルム外装電池1は、正極側活電極、負極側活電極、および電解液を有する発電要素2と、アルミニウムなどの金属フィルムと熱融着性の樹脂フィルムとを重ね合わせて形成したラミネートフィルム7とを有する。フィルム外装電池1は、2枚のラミネートフィルム7によって発電要素2を密封した構造である。すなわち、本実施形態のフィルム外装電池1は、ラミネートフィルム7の4辺である熱融着部7aのうち、まず3辺を熱融着して袋状としておく。内部の空気は真空引きにより開放している残りの1辺から排気される。最後に、残りの1辺の熱融着部7aが熱融着されることで2枚のラミネートフィルム7によって発電要素2が密封封止される。
【0019】
フィルム外装電池1の発電要素2は、セパレータを介して積層された正極側活電極と負極側活電極とからなる積層型であってもよい。あるいは、発電要素2は、帯状の正極側活電極と負極側活電極とをセパレータを介して重ねこれを捲回した後、扁平状に圧縮することによって正極側活電極と負極側活電極とが交互に積層された構造の捲回型であってもよい。
【0020】
また、発電要素2としては、正極、負極および電解質を含むものであれば、通常の電池に用いられる任意の発電要素が適用可能である。一般的なリチウムイオン二次電池における発電要素は、リチウム・マンガン複合酸化物、コバルト酸リチウム等の正極活物質をアルミニウム箔などの両面に塗布した正極板と、リチウムをドープ・脱ドープ可能な炭素材料を銅箔などの両面に塗布した負極板とを、セパレータを介して対向させ、それにリチウム塩を含む電解液を含浸させて形成される。発電要素2としては、この他に、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、リチウムメタル一次電池あるいは二次電池、リチウムポリマー電池等、他の種類の化学電池の発電要素が挙げられる。さらに、本発明は、電気二重層キャパシタなどのキャパシタや電解コンデンサといった電気エネルギを内部に蓄積する電気デバイス要素を外装フィルムで封止した電気デバイスにも適用可能である。
【0021】
発電要素2は、複数の正極側活電極と複数の負極側活電極とを有し、最も外側が負極側活電極となるように、これらが交互に積層されている(図3参照)。正極側活電極と負極側活電極との間、および最も外側の負極側活電極のさらに外側には、それぞれセパレータが配置されている。正極側活電極および負極側活電極の1辺からは、それぞれタブ2aが突出して設けられている。正極側活電極のタブ2aと負極側活電極のタブ2aは、正極側活電極のタブ2a同士、および負極側活電極のタブ2a同士が重なるように、互いに異なる位置に設けられている。
【0022】
これら正極側活電極のタブ2a同士、および負極側活電極のタブ2a同士は、一括して超音波溶接され、それぞれ正極集電部3aおよび負極集電部4aを形成する。正極集電部3aには正極用電極端子3が接続され、負極集電部4aには負極用電極端子4が接続される。
【0023】
フィルム外装電池1の短手方向の熱融着部7aからは、正極側活電極に接続された正極用電極端子3および負極側活電極に接続された負極用電極端子4がそれぞれ対向して延出している。正極用電極端子3としてはアルミニウムが多く用いられ、また、負極用電極端子4としては銅またはニッケルがその電気的特性により多く用いられている。以下、正極用電極端子3と負極用電極端子4とをまとめて単に電極と称する場合もある。
【0024】
フィルム外装電池1の長手方向の熱融着部7aにはその一部を、他の部分よりも熱融着強度を弱くし、他の部分よりも低い圧力で融着が剥がれるようにしたガス排出部8が設けられている。
【0025】
電池の使用時において、電池に規格範囲外の電圧が印加されたりすると、電解液溶媒の電気分解によりガスが発生し、電池の内圧が上昇することがある。さらに、電池が規格範囲外の高温で使用されたりしても、電解質塩の分解などによりガスが発生する場合がある。基本的には、規格範囲内で電池を使用してガスを発生させないようにすることが理想的であるが、電池の制御回路が何らかの原因で故障して異常な電圧が印加されたり、何らかの原因で周囲が異常に高温となったりすると、場合によっては大量にガスが発生することもある。
【0026】
このような、電池内部でのガスの発生は、電池の内圧上昇をもたらす。内圧が極度に上昇し電池が暴発することを防ぐために、外装材として金属缶を用いた電池の多くは、電池の内圧が上昇した際にガスを電池の外部に逃がす圧力安全弁を有している。しかし、フィルムを外装材とするフィルム外装電池においては、圧力安全弁を設けることが構造上難しい。フィルム外装電池では内圧が上昇しすぎるとフィルムが膨張し、最終的には外装材が破裂しその箇所からガスが噴出するが、破裂がどの箇所で発生するか特定できないため、破裂した箇所によっては周囲の機器等に悪影響を及ぼすことがある。
【0027】
そこで、フィルム外装電池1においては、こういった電池内部でのガスの発生による不具合を解消するため、上述したようなガス排出部8を熱融着部7aに設けている。
【0028】
図2にフィルム外装電池を収納するセルケースの分解斜視図を示す。また、図3にフィルム外装電池、および該フィルム外装電池を収納したセルケースの断面図を示す。
【0029】
フィルム外装電池1の周囲を囲むセルケース10は、第1の枠体11および第2の枠体12を有し、これらの間にフィルム外装電池1を挟持面にて挟持する構成となっている。各枠体11、12の形状はそれぞれ枠状であり、フィルム外装電池1の発電要素2に対応した箇所に開口部13が形成されている。
【0030】
第1の枠体11は、対向する2つの長辺11aと、これら各長辺11aに略直交し、かつ互いに対向して形成された2つの短辺11bからなる矩形の枠である。各長辺11aはフィルム外装電池1のガス排出部8から排出されたガスを外部へと誘導するための排ガス通路11cで繋がっている。本実施形態では、フィルム外装電池1のガス排出部8が熱融着部7aの概ね中央に形成されていることより、排ガス通路11cもこれにあわせて長辺11aの概ね中央に形成されており、開口部13を2分割している。また、長辺11aの一方であって排ガス通路11cの一端にはガス排出口16を形成するための切欠11dが形成されている。
【0031】
第1の枠体11の各短辺11bにはセルケース10に収納されている状態のフィルム外装電池1の電極を外部へと延出させるための切欠11eがそれぞれ形成されている。また、各短辺11bには後述する保持材30を保持するための凹形状の収納部15がそれぞれ形成されている。収納部15は、フィルム外装電池1の短手方向の熱融着部7aの電極が延出している部分に対応する電極対応部15aと、この両側にフィルム外装電池1の隅部に対応する隅部対応部15bとを有する。なお、本実施形態において、フィルム外装電池1の隅部とは、フィルム外装電池1の4隅を意味する。つまり、隅部とはラミネートフィルム7が特に破損しやすい領域(図1および図2中、Aで囲んだ領域)である。各隅部は集電部3a、4aの幅方向(図2中B方向)の両端部3a’、4a’が存在するため破損しやすい。
【0032】
第2の枠体12も基本的な構成は第1の枠体11と同様である。第2の枠体12も2つの長辺12aおよび2つの短辺12bからなる矩形の枠であり、長辺12aの一方にガス排出口16を形成するための切欠12dが形成されている。また、各短辺12bには電極対応部15aおよび隅部対応部15bからなる収納部15が形成されている。なお、第2の枠体12には第1の枠体11と異なり、排ガス通路11cが設けられていない。また、第2の枠体12には第1の枠体11の切欠11eに嵌り込む電極保持部12eが設けられている。電極保持部12eは切欠11eに嵌り込んだ状態で電極を延出可能な開口ができるような厚さに形成されている。
【0033】
保持材30としては、ウレタン系、あるいはブチル系の発泡性樹脂が好ましい。なお、保持材30を収納部15内に充填した後に硬化させる場合には、保持材30は、熱硬化型樹脂ではなく、紫外線硬化型の樹脂を用いるのがより好ましい。紫外線硬化型樹脂の場合、紫外線を照射することで硬化するため、硬化時にフィルム外装電池1に対して熱による影響が及ばないからである。
【0034】
次に、予め硬化しておいた保持材30を用いた場合の、フィルム外装電池1のセルケース10への収納手順について説明する。
【0035】
まず、収納部15の形状に合わせて形成された保持材30を第1の枠体11および第2の枠体12の計4箇所の収納部15内に嵌め込む。なお、保持材30は収納部15に、両面テープあるいは接着剤等にて固定してもよい。
【0036】
次に、フィルム外装電池1を、その長手方向の熱融着部7aを第1の枠体11の長辺11aと第2の枠体12の長辺12aとで挟み込み、また、短手方向の熱融着部7aを短辺11bと短辺12bとで挟み込む。すなわち、第1の枠体11と第2の枠体12との挟持面(第1の枠体11と第2の枠体12とを対向して配置した際に向かい合う面)にて熱融着部7aを挟持する。なお、この際、ガス排出部8がガス排出口16に位置するようにする。
【0037】
収納部15内に収納された保持材30は、図3に示すように、熱融着部7aおよび密着部7bの表面に密着し、フィルム外装電池1をセルケース10内にて保持する。保持材30は、熱融着部7aおよび密着部7bにて適度に圧縮されている。なお、保持材30を圧縮している熱融着部7aは、4辺のうちの、フィルム外装電池1の電極が延出している短手方向のものである。また、密着部7bとは、熱融着はされていないが真空引きによりラミネートフィルム7が集電部3a、4aに密着している領域を指す。
【0038】
保持材30は、この状態でフィルム外装電池1の隅部を覆い込んでいる。なお、保持材30は、開口部13に面する発電要素2の本体部分は保持していない。すなわち、保持材30は、亀裂等が発生しやすい隅部を保護するように覆いこむが、発電要素2の本体部分は覆っていない。つまり、フィルム外装電池1は保持材30によって電極近傍は挟持されているが発電要素2の本体部分は大気に開放されている。フィルム外装電池1をこのようにして保持する保持材30は、外部からの衝撃がフィルム外装電池1に伝わるのを防止し、振動を吸収する。また、保持材30は、電極と、電極が延出している開口との間にできる隙間を埋める。開口部13に供給された冷却風の上記隙間から漏れると発電要素2の冷却効率は低下する。しかしながら、保持材30が上記隙間を埋めるので冷却風漏れによる発電要素2の冷却効率の低下を防止できる。
【0039】
図4にセルケース10内に収納保持されたフィルム外装電池1の斜視図を示す。なお、各電極3、4は折り曲げた状態で示されている。図4に示すように、発電要素2の本体部分の表面には保持材30は存在しない。よって、保持材30が蓄熱材として機能してしまうことなく、発電要素2が発した熱を効率よく外部に放熱することができる。また、発電要素2の本体部分は、開口部13にて大気に開放されていることから、冷却風を直接発電要素2にあてて冷却することができるので良好な冷却特性を得ることができる。また、保持材30が発電要素2の本体部分を覆っていないので、その分軽量となる。さらに、保持材30は上述したように電極に対応する部分にのみ設けられており、ガス排出口16の部分には設けられていないので、保持材30によってガス排出部8から排出されたガスの排気が阻害されるということはない。
【0040】
なお、保持材30の形状は図5に示すように、電極の両端部分、すなわち、特に破損しやすい電池の隅部のみを保持し、電極の中央部分は保持しないものであってもよい。この場合、さらなる軽量化を図ることができる。
【0041】
上述した例では、保持材30は、電極が延出している短手方向の熱融着部7aに配置されていたが、本発明はこれに限定されるものではなく、図6に示すように、長手方向の熱融着部7aであって、ガス排出部8からのガスの排気を阻害しない位置7cに保持材30が配置されるような構成としてもよい。すなわち、保持材30はセルケース10の、ガス排出口16以外の領域に設けられている構成としてもよい。この場合、ガスを所望の方向へ排出させることができるとともに、保持材30により保持される箇所が増えることで振動を吸収する箇所が増えるので振動吸収特性がより向上する。
【0042】
また、上述した例では、保持材30は、セルケース10とは別に形成しておき、フィルム外装電池1をセルケース10内に収納する前に収納部15内に嵌め込む例、あるいは充填する例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、セルケース10を成形する際に同時に保持材30を成形する、いわゆる2色成形工法を用いて成形するものであってもよい。
【0043】
保持材を充填する方法の場合、最適な充填量および充填状態を得るためのテストショットが必要となる。また、セルケースを成形する工程の他に保持材を充填する工程が必要となる。さらに、充填方式の場合、保持材の形状は充填される領域の形状に依存することとなり、自由な形状とすることができない。また、保持材を別に形成しておく方法も保持材を収納部内に嵌め込む工程が必要となる。
【0044】
これに対し、2色成形工法によりセルケースと同時に保持材を成形する製造方法の場合、成形工程の簡略化を図ることができるだけでなく、保持材の形状の自由度を高くすることができる。
【0045】
図7Aおよび図7Bに2色成形工法により成形した保持材の断面形状の例を示す。
【0046】
電極を局部的に強い力で把持したいような場合、例えば図7Aに示す保持材31、32としてもよい。保持材31は電極部分に接触する接触部31aが波型であり、これに対して保持材32は波型の接触部31aを受けるような形状の凹部32aが形成されている。このような互いにかみ合うような形状に成形することで把持力を上げることが可能となる。
【0047】
また、発電要素2を冷却するための冷却風が電極とセルケース10との隙間から逃げるのを確実に防止したい場合、例えば図7Bに示すような形状の保持材33を成形するものであってもよい。凸部33a同士が互いに対向する保持材33を用いることで電極部分に対する保持材33の密着度を高め、これにより、冷却風が電極とセルケース10との隙間から逃げないようにすることができる。
【0048】
また、保持材33のように上下同じ形状とすることでコストが高くなるのを抑制することも期待できる。
【0049】
なお、2色成形工法によりセルケース10および保持材31〜33を成形する場合、セルケース10の材質を、例えば、PA(ポリアミド)6、あるいはPA66とし、保持材の材質をPA11としてもよい。
【0050】
なお、上述した例では、第1の枠体11と第2の枠体12とがフィルム外装電池1の熱融着部7aを挟持面にて挟持するとともに保持材30がフィルム外装電池1を保持する構成を例に示したが、フィルム外装電池1が保持材30によってのみセルケース10内で保持されている構成であってもよい。
【0051】
また、上述した例では保持材30は、収納部15内に収納された例について説明したが、収納部15のような凹部を形成するのではなく、第1の枠体11と第2の枠体12とのフィルム外装電池1を挟持する挟持面上に保持材30が設けられているものであってもよい。
【0052】
以上説明したように、本実施形態のセルケース10は、保持材30がフィルム外装電池1の隅部は覆うが発電要素2の本体部分は覆わないようにフィルム外装電池1を挟持する構成となっている。この保持方式により、発電要素2の本体部分の好適な冷却が可能となるだけでなく、振動を良好に吸収しつつフィルム外装電池1を保持することができ、さらには軽量化も図ることができる。また、電極と、電極が延出している開口との間にできる隙間を埋めるようにして保持材30を設けた場合は、冷却風が隙間から漏れてしまうのを防止でき、発電要素2の冷却効率が低下してしまうのを防止することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充放電可能な電気デバイス要素と、前記電気デバイス要素を包囲して配された外装フィルムとを有するフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースにおいて、
挟持面にて前記フィルム外装電気デバイスを挟持し、前記電気デバイス要素に対応する領域に開口部が形成された枠部材と、
前記枠部材の前記挟持面上に設けられた、前記フィルム外装電気デバイスを保持する保持材とを有することを特徴とするフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項2】
前記保持材は、前記フィルム外装電気デバイスの内部で発生したガスを排気するガス排出口以外の領域に配置されている、請求項1に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項3】
前記保持材が、矩形形状の前記フィルム外装電気デバイスの隅部のみを保持している、請求項1または2に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項4】
前記保持材が、前記フィルム外装電気デバイスの電極に対応する部分にのみ設けられている、請求項1または2に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項5】
前記保持材の前記電極に接触する部分が波型である、請求項4に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項6】
前記保持材の前記電極に接触する部分が凸部形状である、請求項4に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項7】
前記保持材が、前記電極を挟んで互いに対向して設けられ、前記保持材の互いに対向する部分が同じ形状である、請求項4に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項8】
前記保持材が紫外線硬化型樹脂である、請求項1から7のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項9】
前記枠部材には、前記開口部を2分割するように、前記フィルム外装電気デバイスの内部で発生したガスを外部へと誘導するための排ガス通路が設けられている、請求項1から8のいずれか1項に記載のフィルム外装電気デバイス用ケース。
【請求項10】
充放電可能な電気デバイス要素と、前記電気デバイス要素を包囲して配された外装フィルムとを有するフィルム外装電気デバイスを収納するフィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法において、
挟持面にて前記フィルム外装電気デバイスを挟持し、前記電気デバイス要素に対応する領域に開口部を有する枠部材を成形する際に、前記フィルム外装電気デバイスを保持する保持材を、前記枠部材の前記挟持面上に成形する工程を含むことを特徴とするフィルム外装電気デバイス用ケースの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate


【公開番号】特開2013−101950(P2013−101950A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−287567(P2012−287567)
【出願日】平成24年12月28日(2012.12.28)
【分割の表示】特願2006−547701(P2006−547701)の分割
【原出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【出願人】(000005348)富士重工業株式会社 (3,010)
【Fターム(参考)】