説明

フィルム成形装置

【課題】フィルム成形装置において、反転方向を変化させながらフィルムを反転させる作動が、円滑、かつ、作業性よく行なえる転向用ローラを提供する。
【解決手段】第一、第二転向用ローラ17、18を、移送部を構成する支持バーに回転自在に支持される回転支軸19と、回転支軸19の外周に設けられ、周回り方向に分割されたフィルム案内部20aとスライド変位部20bとを備えた複数のスライドユニット20とで構成し、各フィルム案内部20aを、回転支軸19と一体回転するよう構成するとともに、回転支軸19の軸芯方向に変位自在となるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばチューブ状に成形したフィルムをシート状として巻取り体に巻取るように成形するフィルム成形装置の技術分野に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、インフレーション方式で製造されるフィルムのなかには、例えば、フィルム成形部において溶融樹脂を吹き出してチューブ状のフィルムを形成し、該チューブ状のフィルムを上方に延出することに伴い冷却して凝縮硬化せしめ、その後、チューブ状のフィルムをピンチローラで扁平化してシート状とし、複数のガイドローラを備えた移送部において繰り返し反転する状態で円筒状の巻取り体に移送し、該巻取り体に巻取るようにしものが知られている。このものにおいて、フィルムには、成形用のダイの開口部の精度、ダイから延出するフィルムの冷却工程等、種々の外的要因等により、フィルムに肉厚の厚い部分と薄い部分とが形成されて幅方向に偏肉が発生し、フィルムをシート状として巻取り体に巻装した場合に、肉厚の厚い部分については堅く巻締められ、肉厚の薄い部分については軟らかく巻取られる現象が生じ、フィルムを巻取り体から巻き戻したときに波を打ったような癖がついていることがあり、このようになると、印刷等の二次加工が困難になるという問題がある。そこで、従来、チューブ状のフィルムを扁平化するためのピンチローラを旋回自在に構成して、チューブ状のフィルムを扁平化する箇所を周回り方向に連続的に変化させることにより、フィルムをシート状としたときに、フィルムの偏肉位置が幅方向に分散されて巻取り体への巻装状態が均一になるようにしたものが提唱されている。このものでは、ピンチローラが旋回するのに対し、巻取り体の配設位置が一定位置であるため、ピンチローラから延出するフィルムを巻取り体に向けて誘導するガイドローラのうち、二つのガイドローラを、ピンチローラに追随して旋回する転向用ローラとして、反転方向を変化させながらフィルムを反転する構成とし、これによって、フィルムを固定された巻取り体に移送するようにしている。
しかるに、転向用ローラによりフィルムの反転方向を変化させる場合では、フィルムは、転向用ローラの外周面をつるまき線を描くように、即ち、回転方向の変位だけでなく軸芯方向の変位をする状態で反転することになり、転向用ローラが単純に軸芯回りに回転したのでは、フィルムを円滑に反転、移送させることはできない。そこで、転向用ローラを筒状とする一方、筒部に複数の貫通孔を開設し、筒孔内から貫通孔を介してエアーを吹き出すことにより、フィルムを転向用ローラの外周面から浮せた状態で反転させる構成として、フィルムの円滑な反転、移送と、保護が図れるようにしたものが提唱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平1−22190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の転向用ローラは、エアーの吹き出し圧によりフィルムを浮かせて反転させる構成であるため、フィルムを幅方向全長にわたって浮かせるようにエアーの吹き出し圧を調整をするのが難しく、フィルムが転向用ローラの外周面を擦って損傷を生じてしまうことがあるという問題がある。さらには、フィルム自体が滑りにくい性質を有したものである場合では、転向用ローラの外周面に擦るだけでなく、転向用ローラに引っかかってしまうことがあり、フィルムの種類によってはこのような転向用ローラを使用することができないという問題もあり、これらに本発明の解決すべき課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、成形部から延出するシート状のフィルムを、移送部を経由して巻取り体に巻装してなるフィルム成形装置において、前記移送部に、フィルムの反転方向を変化させながら反転せしめる転向用ローラを設けるにあたり、前記転向用ローラを、移送部を構成する支持部材に回転自在に支持される回転支軸と、回転支軸の外周に設けられ、周回り方向に分割されたフィルム案内部を備えた複数の分割体とで構成し、各分割体のフィルム案内部を、回転支軸と一体回転し、かつ、回転支軸の軸芯方向に変位自在となるように構成したことを特徴とするフィルム成形装置である。
請求項2の発明において、分割体は、回転支軸と同芯状の外周面を有した円弧状のフィルム案内部と、回転支軸の軸芯方向に変位するスライド変位部とを備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム成形装置である。
請求項3の発明において、フィルム案内部は、フィルムの反転に伴い軸芯方向一方に変位するものとし、転向用ローラに、軸芯方向一方に変位したフィルム案内部を元位置に戻す復帰手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム成形装置である。
請求項4の発明において、分割体は、回転支軸の外周面から軸芯方向に沿って外径方向に突出する複数の支持プレートと、これら各支持プレートの少なくとも軸芯方向両端部に軸承されるプーリーと、これらプーリー間に懸回されてプーリーの回転に基づいて回転支軸の軸芯方向に変位する無端状のフィルム案内部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム成形装置である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1、2、4の発明とすることにより、フィルムを転向用ローラに当接させ、安定した状態で、かつ、円滑に反転させることが可能となって、作業性が向上する。
請求項3、4の発明とすることにより、フィルム案内部によるフィルムの反転をエンドレスに行なうことができて、作業性のさらなる向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】フィルム成形装置を説明する全体側面図である。
【図2】図2(A)、(B)、(C)はそれぞれフィルム移送部の側面図、フィルム扁平化部が基準位置に位置する場合のフィルム移送部の平面図、フィルム扁平化部が第一回転位置に位置する場合のフィルム移送部の平面図である。
【図3】第一の実施の形態における第一、第二転向用ローラの側面図である。
【図4】図3におけるX−X断面図である。
【図5】第二の実施の形態における転向用ローラの側面図である。
【図6】第三の実施の形態における転向用ローラを説明する一部断面正面図である。
【図7】図6におけるX−X断面図である。
【図8】第三の実施の形態におけるフィルム案内部とガイド体との関係を説明する展開図である。
【図9】第四の実施の形態における転向用ローラの側面断面図である。
【図10】第四の実施の形態におけるフィルム案内部とガイド体との関係を説明する展開図である。
【図11】第五の実施の形態における転向用ローラの側面図である。
【図12】図11におけるX−X断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の第一の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1、図2(A)の図面において、1はインフレーション式のフィルム成形装置であって、該フィルム成形装置1は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂である樹脂材を貯蔵、供給するホッパ2、該ホッパ2から供給された樹脂材を溶融する加熱シリンダ3、該加熱シリンダ3に内装されるスクリュー(図示せず)を駆動させる押出し機としての駆動装置4、該駆動装置4の駆動に基づいて回転するスクリューにより加熱シリンダ3から搬送された溶融樹脂を、所定の肉厚を有したチューブ状のフィルム5として吐出して押し出すダイ6、該ダイ6から吐出されて上方に向けて延出されるチューブ状のフィルム5を外部から冷却するためのエアリング7、該エアリング7の上方に設けられ、エアリング7により冷却されたチューブ状のフィルム5の揺れを防止するための揺れ止め装置8、該揺れ止め装置8の上方に設けられ、チューブ状のフィルム5を扁平化してシート状とし、該シート状のフィルム5を図示しない巻取り体に巻装するフィルム回収装置9とを備えて構成されている。
【0009】
前記フィルム回収装置9は、チューブ状のフィルム5をシート状とするフィルム扁平化部9aと、シート状のフィルム5を繰り返し反転せしめる反転経路を経由して巻取り体に向けて誘導するフィルム移送部9b(本発明の移送部に相当する)とを備えて構成されており、フィルム扁平化部9aから延出するフィルム5は、巻取り体の回転駆動に基づいて巻取り体に向けて移送されるように構成されている。
前記フィルム扁平化部9aは、本発明の成形部の構成部材に相当しており、チューブ状のフィルム5の外周部において固定状に設置される基台10と、該基台10に対して旋回自在に設けられ、フィルム5の外周部において正逆回転するように設けられる旋回体11とを備えて構成されている。前記旋回体11には、上端ほど対向間が狭くなるよう傾斜状に配設され、チューブ状のフィルム5がシート状になるように誘導する一対のガイド板11aと、これらガイド板11aの板幅方向両端部に位置し、ガイド板11aよりも上方に突出して配設される一対の支持体11bとが設けられており、これら支持体11bのガイド板11a上端部対向部位に、フィルム5をシート状に扁平化するピンチローラ11cが回転自在に支持されている。
【0010】
前記各支持体11bの上端部には、さらに上方に突出する支持バー11dがそれぞれ設けられており、支持体11bおよび支持バー11dに、フィルム5を巻取り体に向けて移送するフィルム移送部9bが設けられている。前記フィルム移送部9bは、第一〜第五ガイドローラ12、13、14、15、16と、本発明が実施された第一、第二転向用ローラ17、18とを用いて構成されており、これら各ローラ12〜18にフィルム5を適宜懸け回すことによりフィルム5が所定の移送方向に案内されるように構成されている。前記第一〜第三ガイドローラ12、13、14は支持体11bに回転自在に支持されており、旋回体11とともに一体的な旋回をしてピンチローラ11cから上方に向けて延出するフィルム5を、ピンチローラ11cの左上方に向けて誘導(移送)するように構成されている。
また、第四ガイドローラ15、および、第一、第二転向用ローラ17、18は、後述する支持手段を介して支持バー11dに回転自在に支持されることにより反転経路を構成しており、第三ガイドローラ14から誘導されたフィルム5を繰り返し反転せしめるように構成されている。
また、第五ガイドローラ16は両端部が巻取り体の近傍に位置して固定されるブラケット(図示せず)に回転自在に支持されており、旋回体11とともに旋回変位する反転経路から延出するフィルム5を巻取り体に誘導するように構成されている。
【0011】
ここで、前記反転経路の構成について詳述する。前記第四ガイドローラ15と第一、第二転向用ローラ17、18とは、前述したように、支持手段を介して支持バー11dに上下方向に隣接して支持されている。前記第四ガイドローラ15、第一、第二転向用ローラ17、18の各支持手段は、それぞれ支持バー11dに旋回自在に外嵌する嵌合部15a、17a、18aと、該嵌合部15a、17a、18aから外径方向に突出するアーム部15b、17b、18bと、該アーム部15b、17b、18bの突出端部に設けられるローラ支持部15c、17c、18c(本発明の支持部材に相当する)とを備えて構成されている。前記第四ガイドローラ15は、第一、第二転向用ローラ17、18の上下方向中間部に設けられるとともに、第四ガイドローラ15のアーム部15bは、第一、第二転向用ローラ17、18のアーム部17b、18bよりも長く形成されており、第一、第二転向用ローラ17、18は、ピンチローラ11cから延出するフィルム5の直上近傍に位置するように設定されているのに対し、第四ガイドローラ15は、図1において、第一、第二転向用ローラ17、18の左方であって、第三ガイドローラ14の左上方に位置するように設定されている。そして、第四ガイドローラ15、第一、第二転向用ローラ17、18は、旋回体11(支持体11b、支持バー11d)が基台10に対して旋回変位した場合に、それぞれ嵌合部15a、17a、18aが支持バー11dに対して適宜旋回するように構成されており、これによって、旋回体11と一体に旋回するピンチローラ11c、第一、第二、第三ガイドローラ12、13、14に対し、それぞれ後述する所定の角度を存した状態で旋回変位するように設定されている。
【0012】
そして、ピンチローラ11cからシート状に延出するフィルム5は、巻取り体の回転駆動に伴い、第一、第二、第三ガイドローラ12、13、14を経由して第二転向用ローラ18に至ることにより第一の反転(矢印A)がなされ、該第二転向用ローラ18に懸け回されて第四ガイドローラ15に至ることにより第二の反転(矢印B)がなされ、第四ガイドローラ15に懸け回されて第一転向用ローラ17に至ることにより第三の反転(矢印C)がなされ、第一転向用ローラ17に掛け回されて第五ガイドローラ16に至ることにより第四の反転(矢印D)がなされるように構成されている。このように、フィルム扁平化部9aのピンチローラ11cから延出するシート状のフィルム5は、第四ガイドローラ15および第一、第二転向用ローラ17、18により構成される反転経路において、繰り返し反転がなされた状態で第五ガイドローラ16側に誘導され、該第五ガイドローラ16を経由して巻取り体に巻装されるように構成されている。
【0013】
この工程において、フィルム扁平化部9aの旋回体11は、予め設定される速度で正逆旋回(往復旋回)を繰り返すように構成されており、図2(A)、(B)に示すように、ピンチローラ11cと固定状に設けられる第五ガイドローラ16とが平行となる位置関係を基準位置とし、図2(C)に示すように、平面視で反時計回り方向に90度旋回する第一旋回位置を経由して180度旋回する位置と、前記基準位置から平面視で時計回り方向に90度旋回する第二旋回位置を経由して180度旋回する位置との間を往復旋回(オシレート)するように構成されている。このように、ガイド板11aとピンチローラ11cとを往復旋回させながらチューブ状に延出するフィルム5を扁平化する(折畳む)ことにより、折畳み箇所が周回り方向に連続的に変化して、シート状となったフィルム5の偏肉位置を幅方向に分散するように構成されている。
【0014】
そして、図2(A)、(B)に示すように、フィルム扁平化部9aが基準位置にある場合では、第一〜第五ガイドローラ12、13、14、15、16、そして、第一、第二転向用ローラ17、18とは、全て互いに平行となる位置関係となっている。これに対し、旋回体11が旋回すると、第五ガイドローラ16以外の各ローラ12、13、14、15、17、18が旋回体11の旋回に追随して旋回するが、第四ガイドローラ15は第一〜第三ガイドローラ12、13、14の旋回量の半分の旋回角度で同方向に向けて旋回するように設定されており、これによって、第一旋回位置になった状態では、図2(C)に示すように、第一〜第三ガイドローラ12、13、14は旋回体11と同様に90度旋回変位し、第四ガイドローラ15は45度旋回変位するように設定されている。このとき、第一、第二転向用ローラ17、18は、第一〜第四回転ローラ12、13、14、15の旋回変位に対して適宜旋回角度で旋回変位するように構成されており、第二転向用ローラ18は、第三ガイドローラと第四ガイドローラ15との間の位置であって、前記第一旋回位置では、第四ガイドローラ15を基準とする基準直線Mに対して反時計回り方向に22.5度旋回した位置に位置し、第一転向用ローラ17は、第四ガイドローラ15と第五ガイドローラ16の間の位置であって、前記第一旋回位置では、第四ガイドローラ15に対して時計回り方向に22.5度旋回した位置に位置するように設定されている。
【0015】
このように構成することにより、第一、第二転向用ローラ17、18に懸け回されるフィルム5は、幅方向両側縁部の軌跡がつるまき線を描くようにして懸け回されて、第一、第二転向用ローラ17、18に至る方向から反転方向を変化させながら(最大45度の角度)反転するが、第一の形態の第一、第二転向用ローラ17、18は次のように構成されていて、反転方向を変化させながらフィルム5を反転させるものでありながら、フィルム5を第一、第二転向用ローラ17、18の外周面に当接させた状態で傷付けることなく反転させることができて、円滑で、かつ、安定した反転を実現できるように構成されている。尚、第一、第二転向用ローラ17、18は、本実施の形態では同様の構成となっている。
【0016】
図3、図4に示す前記第一、第二転向用ローラ17、18は、それぞれ支持手段を構成する一対のローラ支持部17c、18cに回転自在に支持される回転支軸19を備えて構成されている。前記回転支軸19は、一対のローラ支持部17c、18cに軸受け19aを介してそれぞれ支持される一対のベース軸19bと、これらベース軸19bを一体的に連結する大径筒体19cとにより構成されており、大径筒体19cの外周に、周回り方向複数に分割された本発明の分割体に相当するスライドユニット20がそれぞれ放射状に設けられている。
前記スライドユニット20は、本実施の形態では、回転支軸19(大径筒体19c)の外周に八個のものが設けられており、各スライドユニット20は、回転支軸19と同芯状の円弧形状に形成され、フィルム5を反転せしめるフィルム案内部20aと、該フィルム案内部20aの内周面に設けられ、フィルム案内部20aが回転支軸19の外周上を軸芯方向に変位するためのスライド変位部20bとを備えて構成されている。前記スライド変位部20bは、本実施の形態では、ボール体20cが間に介装されて互いに抜止めされた状態で円滑なスライド変位をするレール体20dと走行体20eとにより構成されている。そして、スライド変位部20bのレール体20dを、大径筒体19cの外周面に一体的に固定する一方、走行体20eをフィルム案内部20aの内周面に一体的に固定することにより、各スライドユニット20のフィルム案内部20aが、回転支軸19と一体回転するとともに、走行体20eがレール体20dを走行することに基づいて回転支軸19の軸芯方向に変位自在となるように構成されている。
尚、本実施の形態では、レール体20dは軸芯方向に二つに分割して設けられ、走行体20eは、各レール体20dに対応してフィルム案内部20aの二箇所に設けられている。このとき、各レール体20dの長さは、走行体20eの軸芯方向の長さと、フィルム5の反転に伴い必要とする軸芯方向の変位ストロークとに基づいて設定されているが、レール体20dは、大径筒体19の長尺方向全長にわたって設ける構成としても勿論よい。
【0017】
さらに、大径筒体19cの軸芯方向両端部にはそれぞれ外方に突出する突片19dが突設されており、これら突片19dにプーリー19eがそれぞれ軸承されている。また、各スライドユニット20に設けられる各走行体20eの軸芯方向外側となる端部には、それぞれ軸芯方向外端側に向けて延出する連結ワイヤ20fの一端部が連結されている。これら各連結ワイヤ20fの他端部は、スライドユニット20の軸芯方向の各端部に設けられるプーリー19eに懸け回され、ベース軸19bに軸芯方向に位置ズレして開設された四つの貫通孔19fのうち一つの貫通孔19fを貫通して、前記連結ワイヤ20fの一端部が連結されるスライドユニット20に対して直径方向に対向する(180度の間隔を存した)スライドユニット20側に引出され、その直径方向に対向するスライドユニット20の軸芯方向の各端部に設けられたプーリー19eを介して走行体20eの軸芯方向外側の端部にそれぞれ連結されるように構成されている。これによって、図4に示すように、互いに直径方向に対向するスライドユニット20同士は、フィルム案内部20a同士が軸芯方向両端部においてそれぞれ連結された連結ワイヤ20fを介して環状となるように連結され、一方のスライドユニット20のフィルム案内部20aが軸芯方向一方に変位することに伴い、直径方向に対向する他方のスライドユニット20のフィルム案内部20aが、前記一方のフィルム案内部20aと同様の変位ストロークで軸芯方向他方に向けて変位するように構成されている。
【0018】
このように構成された第一、第二転向用ローラ17、18を備えた反転経路において、第一、第二転向用ローラ17、18が旋回体11の旋回に伴い第五ガイドローラ16に対して所定角度を存した位置関係となり、第一、第二転向用ローラ17、18において、周回り方向に八分割されたスライドユニット20のうちの複数のフィルム案内部20aに当接するフィルム5は、第一、第二転向用ローラ17、18の外周面に沿う回転変位と回転支軸19の軸芯方向の変位をしながら反転することになるが、このとき、フィルム案内部20aは、フィルム5の変位に伴い回転支軸19に対して一体回転するとともに、回転支軸19の軸芯方向に変位するように構成されている。これによって、フィルム5は、第一、第二転向用ローラ17、18に当接する状態で反転するものでありながら、フィルム5がフィルム案内部20aを擦って損傷するようなことがなく、円滑な反転作動ができるように構成されている。
因みに、扁平化部9aが基準姿勢で、第一、第二転向用ローラ17、18によりフィルム5が反転方向を変えることなく反転する場合では、フィルム5は、フィルム案内部20aを軸芯方向に変位させることのない状態で円滑に反転するように構成されている。
【0019】
ここで、フィルム5は、図1に示すように、第一、第二転向用ローラ17、18を180度回転変位させることに基づいて反転するように設定されている。このため、例えば、任意のフィルム案内部20aに注目してみると、該任意のフィルム案内部20aは、フィルム5が当接した状態から180度の回転変位でフィルム5とともに軸芯方向一方に変位する。そして、180度の回転変位がなされた状態となると、前記任意のフィルム案内部20aは所定の変位ストロークで軸芯方向一方に変位している。一方、任意のフィルム案内部20aに直径方向に対向し、連結ワイヤ20fにより環状に連結したスライドユニット20のフィルム案内部20a(以降、連結されたフィルム案内部20a)は、前記任意のフィルム案内部20aが所定の変位ストロークで軸芯方向一方に変位することに伴い同様の変位ストロークで軸芯方向他方に変位しており、任意のフィルム案内部20aが180度の回転変位を終了してフィルム5との当接が解除されることに伴い、連結されたフィルム案内部20aにフィルム5が当接して軸芯方向一方への変位を開始するように構成されている。これによって、径方向に対向するフィルム案内部20a同士は、半回転毎に軸芯方向反対方向への変位、即ち、180度の回転毎に軸芯方向の往復反転変位がなされるように構成されており、該構成が発明の復帰手段に相当しており、これによって、第一、第二転向用ローラ17、18は、フィルム5を傷付けることなく円滑に反転させることをエンドレスに行えるように構成されている。
【0020】
叙述の如く構成された本形態において、フィルム5の巻取り体への巻装状態を扁平化するため、フィルム回収装置9の扁平化部9aを旋回変位する構成とすると、フィルム移送部9bの第一、第二転向用ローラ17、18は、扁平化部9aの旋回体11の旋回変位に伴い回転する。この旋回状態では、フィルム5は、第一、第二転向用ローラ17、18において軸芯方向への変位、即ち、反転方向を変化させながら反転することになるが、この場合に、第一、第二転向用ローラ17、18は、フィルム5を案内する外周面が周回り方向複数に分割されたフィルム案内部20aを備えたスライドユニット20により構成され、各フィルム案内部20aが、フィルム5の変位に追随して回転支軸19とともに一体回転し、かつ、回転支軸19の軸芯方向に変位する構成となっているので、フィルム5を傷付けることなく、第一、第二転向用ローラ17、18のフィルム案内部20aに当接させた状態で反転させることができる。この結果、従来のエアーによりフィルムを浮かせて反転させるもののように、転向用ローラの構成が複雑になることがなく、しかも、安定した状態で、かつ、円滑に反転させることが可能となって、作業性を向上することができる。
【0021】
さらに、このものにおいて、フィルム案内部20aは、フィルム5が反転方向を変化しながら反転したときに軸芯方向一方に変位するが、このものでは、復帰手段を、直径方向に対向するスライドユニット20のフィルム案内部20a同士を連結ワイヤ20fにより環状に連結する構成として、フィルム案内部20aの180度の回転毎にフィルム案内部20aが軸芯方向に往復反転変位するようにしたので、フィルム5を傷付けることなくエンドレスに反転させることができて、作業性のさらなる向上を図れる。
【0022】
尚、本発明は前期実施の形態に限定されないことは勿論であって、フィルム扁平化部における旋回体の旋回角度は、前記第一の実施の形態のものに限定されることはなく、適宜角度に設定することができる。
また、転向用ローラの周回り方向の分割数は、前記第一の実施の形態のように八個に限定されることはなく、ローラの外径等、各種条件に基づいて設定することができる。
以下、他の実施例について説明するが、これら各実施例において説明する転向用ローラは、前記第一の実施の形態に示される第一、第二転向用ローラに換えて用いることができることは勿論であり、また、第一の実施の形態とは異なる構成において用いることも可能であり、フィルムを反転方向を変えながら反転させる場合に用いられる転向用ローラである。
【0023】
図5に示す第二の実施に示す転向用ローラ21は、前記第一の実施の形態の回転支軸19(大径筒体19c)とスライドユニット20とにより構成された上下二つの第一、第二ローラ22、23を一つの転向用ローラとして用いるように構成されている。これら二つの第一、第二ローラ22、23の構成の詳細は、前記第一の実施の形態と同様の符号を付すことで説明を省略する。
そして、前記転向用ローラ21を用いて、フィルム5の反転方向を所定の角度で変えながら反転させる場合では、第二ローラ23により前記所定の角度の半分の角度を存して上方に向けて引出されて第一ローラ22に移送され、該第一ローラ22により所定の角度の半分の角度の方向転換をして反転するように構成されており、各第一、第二ローラ22、23におけるフィルム案内部20aの軸芯方向の変位ストロークが、フィルム5が反転するのに必要な全変位ストロークの半分となるように構成されている。
これによって、第一の実施の形態と同様に、フィルム5が転向用ローラ21に当接する状態で、フィルム5を傷付けることなく、しかも、円滑に反転させることができるうえ、各第一、第二ローラ22、23のフィルム案内部20aの軸芯方向の変位ストロークを短くできるという利点がある。
【0024】
さらに、図6、7、8に第三の実施の形態を示す。
前記第三の実施の形態の転向用ローラ24は、回転支軸25と周回り方向に複数分割(本実施の形態では八個に分割)された分割体26とにより構成されている。前記回転支軸25は、固定軸25aと、該固定軸25aに回転自在に外嵌する大径筒体25bとにより構成されており、固定軸25aが移送部を構成する支持部材に一体的に支持されるように構成されている。そして、大径筒体25bの外周に八個の分割体26が放射状に設けられている。
前記分割体26は、第一の実施の形態と同様に、回転支軸25と同芯状の外周面を有した円弧状のフィルム案内部26aと、スライド変位部26bとで構成されており、スライド変位部26bを構成するレール体26cは、軸芯方向二分割され、大径筒体25bの外周面に固定され、各レール体26cを走行する二つの走行体26dは、フィルム案内部26aの内周面に固定されている。そして、フィルム案内部26aは、大径筒体25b(回転支軸25)と一体回転し、かつ、走行体26dがレール体26cを走行することで、大径筒体25bに対して軸芯方向にスライド変位自在となるように構成されている。
そして、このものでも、フィルム5の回転変位と軸芯方向の変位に追随してフィルム案内部26aが変位することができるため、フィルム案内部26aにフィルム5が当接する状態で、フィルム5を傷付けることなく、しかも、円滑に反転させることができる。
【0025】
さらに、このものでは、フィルム5の反転に伴い軸芯方向一方に変位したフィルム案内部26aを元位置に復帰させるための復帰手段としてガイド体27が固定軸25aの軸芯方向両端部に設けられている。つまり、フィルム案内部26aの軸芯方向両端部には案内ローラ26eが設けられている一方、固定軸25aの軸芯方向両端部には山形状に形成されたリング状のガイド体27が、頂部27aが軸芯方向内側を向き、かつ、頂部27a同士が周回り方向に同位置となる状態で一体的に固定されている。そして、図6の図面向かって左側のフィルム案内部26aのように、両端部の案内ローラ26eが軸芯方向両端部に設けられたガイド体27の頂部27aに干渉する状態を中立位置とするように設定されている。そして、この状態から、フィルム案内部26aが、フィルム5の反転方向を変えた反転により、180度の回転変位と軸芯方向一方への変位がなされると、ガイド体27の裾部27bに達し、その後、180度の回転変位をすることにより、案内ローラ26eがガイド体27の山形面にガイドされる状態で頂部27aに達し、これによって、前記中立位置に復帰するように構成されており、これによって、フィルム5をエンドレスに反転させることができるように構成されている。尚、図8にガイド体27とフィルム案内部26aとの関係を説明する展開図を示すが、ガイド体27の頂部の高さ(長さ)は、フィルム5の反転時における軸芯方向の最大の変位ストロークに相当して形成されている。
【0026】
また、図9、10に示す第四の実施の形態の転向用ローラ28は、回転支軸25(固定支軸25aと大径筒体25b)と分割体26とにより構成された上下二つの第一、第二ローラ29、30を一つの転向用ローラとして用いるように構成されている。これら二つの第一、第二ローラ29、30の構成の詳細は、前記第一の実施の形態と同様の符号を付すことで説明を省略する。そして、このものにおいて、フィルム5の回転変位と軸芯方向の変位に追随してフィルム案内部26aが変位することになって、フィルム5をフィルム案内部26aに当接させた状態で、傷付けることなく、円滑に反転させることができる。
さらに、このものにおいて、各第一、第二ローラ29、30を構成する分割体26の各フィルム案内部26aは、フィルム5を反転する際の軸芯方向の変位ストロークが、前記第三の実施の形態の場合の半分となる利点があり、そのため、回転支軸25を構成する固定軸25aの軸芯方向両端部に設けられるガイド体31は、図10に示すように、頂部31aの高さ(長さ)を、前記第三の実施の形態のガイド体の半分に設定することができるとともに、フィルム5が当接する状態で回転する角度範囲が90度となるため、フィルム案内部26cを復帰させる側のガイド体31の傾斜を緩傾斜とすることができ、復帰動作を一層円滑に行うことができる。
【0027】
つぎに、図11、12に示す第五の実施の形態の転向用ローラ32について説明する。
前記転向用ローラ32は、移送部の支持部材に回転自在に支持される回転支軸33と回転支軸33の外周に設けられる周回り方向複数の分割体34とにより構成されている。前記分割体34は、回転支軸33の外周面から軸芯方向に沿う状態で外径方向に突出する複数(8枚)の支持プレート34aと、これら各支持プレート34aの軸芯方向両端部に軸承される主プーリー34bと、前記主プーリー34bの間に懸け回される無端状のフィルム案内部としてのベルト体34cと、前記主プーリー34bの間に適間隔を存して軸承されて、前記ベルト体34cの弛みを防止する複数の副プーリー34dとで構成されている。そして、フィルム5は各分割体34に懸け回されているベルト体34cの外径側部位に当接することで反転するように構成されており、このとき、フィルム案内体としてのベルト体34cは、支持プレート34aが回転支軸33と一体回転することに基づいて回転変位し、かつ、主、副プーリー35b、35dの回転に基づいてエンドレスに回転することにより軸芯方向の変位がなされることで、フィルム5をベルト体34cに当接した状態で、フィルム5を傷付けることなく、円滑に反転させることができる。
尚、このものでは、ベルト体34cがエンドレスに主プーリー34b間を回転することにより、復帰手段を別途設ける必要がないという利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、インフレーション方式でフィルムを成形し、該フィルムを反転方向を変えながら反転させる移送経路に利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
1 フィルム成形装置
2 ホッパ
5 フィルム
9 フィルム回収装置
9a フィルム扁平化部
9b フィルム移送部
11 旋回体
11a ガイド板
11d 支持バー
12 第一ガイドローラ
17 第一転向用ローラ
17a 嵌合部
18 第二転向用ローラ
19 回転支軸
19b ベース軸
19c 大径筒体
20 スライドユニット
20a フィルム案内部
20b スライド変位部
20d レール体
20e 走行体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形部から延出するシート状のフィルムを、移送部を経由して巻取り体に巻装してなるフィルム成形装置において、前記移送部に、フィルムの反転方向を変化させながら反転せしめる転向用ローラを設けるにあたり、前記転向用ローラを、移送部を構成する支持部材に回転自在に支持される回転支軸と、回転支軸の外周に設けられ、周回り方向に分割されたフィルム案内部を備えた複数の分割体とで構成し、各分割体のフィルム案内部を、回転支軸と一体回転し、かつ、回転支軸の軸芯方向に変位自在となるように構成したことを特徴とするフィルム成形装置。
【請求項2】
分割体は、回転支軸と同芯状の外周面を有した円弧状のフィルム案内部と、回転支軸の軸芯方向に変位するスライド変位部とを備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム成形装置。
【請求項3】
フィルム案内部は、フィルムの反転に伴い軸芯方向一方に変位するものとし、転向用ローラに、軸芯方向一方に変位したフィルム案内部を元位置に戻す復帰手段を設けたことを特徴とする請求項1または2に記載のフィルム成形装置。
【請求項4】
分割体は、回転支軸の外周面から軸芯方向に沿って外径方向に突出する複数の支持プレートと、これら各支持プレートの少なくとも軸芯方向両端部に軸承されるプーリーと、これらプーリー間に懸回されてプーリーの回転に基づいて回転支軸の軸芯方向に変位する無端状のフィルム案内部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルム成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−264631(P2010−264631A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116716(P2009−116716)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(394012588)北進産業株式会社 (4)
【Fターム(参考)】