説明

フィルム状部材及びその貼り付け方法

【課題】曲面状の面を有する部材に貼り付ける際に皺が発生し難いフィルム状部材、及び、曲面状の面を有する部材に前記フィルム状部材を貼り付けるフィルム状部材の貼り付け方法を提供すること。
【解決手段】本フィルム状部材の貼り付け方法は、曲面状の面を有する部材に平面状のフィルム状部材を貼り付けるフィルム状部材の貼り付け方法であって、前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付けた場合に、前記フィルム状部材が平面状であったときに比べて高い応力が発生する領域を解析により特定する第1工程と、前記フィルム状部材の前記高い応力が発生する領域にスリットを形成する第2工程と、前記スリットが形成された前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付ける第3工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、曲面状の面を有する部材に貼り付けられるフィルム状部材、及び、曲面状の面を有する部材にフィルム状部材を貼り付けるフィルム状部材の貼り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、携帯電話機等の携帯端末装置は、通信を行うためのアンテナを有する。又、携帯端末装置の高機能化により、携帯端末装置の内部に複数のアンテナを収容するものも提供されている。
【0003】
一方、携帯端末装置は使用者が携帯することから、小型化、薄型化、及びデザイン性の向上が強く要望されている。これらの理由より、近年ではアンテナを携帯端末装置の筐体内部に配置する構成のものが増加している(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようにアンテナを携帯端末装置の筐体内部に配置する場合、アンテナパターンをフレキシブル基板等のフィルム状部材に形成し、これを携帯端末装置の筐体内に収容される部材に貼り付けることが行われている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−117944号公報
【特許文献2】特開2005−348066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、携帯端末装置はデザイン性の向上も望まれており、その筐体も曲面状の面を有する形状となりつつある。このような曲面状の面を有する筐体にアンテナパターンが形成されたフィルム状部材を貼り付ける場合、フィルム状部材は平面状であるため、貼り付ける際に皺が発生し、アンテナパターンが適正形状から変形する問題があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、曲面状の面を有する部材に貼り付ける際に皺が発生し難いフィルム状部材、及び、曲面状の面を有する部材に前記フィルム状部材を貼り付けるフィルム状部材の貼り付け方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本フィルム状部材の貼り付け方法は、曲面状の面を有する部材に平面状のフィルム状部材を貼り付けるフィルム状部材の貼り付け方法であって、前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付けた場合に、前記フィルム状部材が平面状であったときに比べて高い応力が発生する領域を解析により特定する第1工程と、前記フィルム状部材の前記高い応力が発生する領域にスリットを形成する第2工程と、前記スリットが形成された前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付ける第3工程と、を有することを要件とする。
【0009】
本フィルム状部材は、曲面状の面を有する部材に貼り付けられる平面状のフィルム状部材であって、前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付けた場合に、前記フィルム状部材が平面状であったときに比べて高い応力が発生する領域にスリットを有することを要件とする。
【発明の効果】
【0010】
開示の技術によれば、曲面状の面を有する部材に貼り付ける際に皺が発生し難いフィルム状部材、及び、曲面状の面を有する部材に前記フィルム状部材を貼り付けるフィルム状部材の貼り付け方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施の形態に係るフレキシブル基板を例示する斜視図である。
【図2】図1のフレキシブル基板を挟持する上部材及び下部材を例示する斜視図である。
【図3】図1のフレキシブル基板が上部材及び下部材に挟持された状態を例示する斜視図である。
【図4】フレキシブル基板の高い応力が発生する領域の解析について説明する図(その1)である。
【図5】フレキシブル基板の高い応力が発生する領域の解析について説明する図(その2)である。
【図6】フレキシブル基板の高い応力が発生する領域の解析について説明する図(その3)である。
【図7】フレキシブル基板の高い応力が発生する領域の解析について説明する図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0013】
[フレキシブル基板の構造]
図1は、本実施の形態に係るフレキシブル基板を例示する斜視図である。図1を参照するに、フレキシブル基板10は平面状のフレキシブル基板であり、平面視長方形状の4つのスリット10xが形成されている。スリット10xは、フレキシブル基板10を曲面状の面を有する部材に貼り付ける際に皺が生じ難くするために、後述する高い応力が発生する領域に形成されている。フレキシブル基板10の厚さは、例えば、50μm程度とすることができる。フレキシブル基板10は、例えば、アンテナパターン(図示せず)を有しており、携帯端末装置のアンテナとして機能する。フレキシブル基板10は、本発明に係るフィルム状部材の代表的な一例である。
【0014】
なお、本願において、曲面状とは、少なくとも1つの曲面を有する形状を指すが、必ずしも一様な曲率を有する形状には限らず、三次元的な複雑な曲面形状も含むものとする。又、本願において、平面状とは、所定の部材に貼り付けられる面が任意の一平面に含まれる形状(曲面を有さない形状)を指すが、所定の部材に貼り付けられる面が全体的に見て任意の一平面に含まれていればよく、表面に微少な凹凸等が形成されていても構わない。
【0015】
図2は、図1のフレキシブル基板を挟持する上部材及び下部材を例示する斜視図である。図2を参照するに、上部材11及び下部材12は、例えば、ABS樹脂等の樹脂成型体であり、同一形状の部材である。上部材11及び下部材12は、それぞれが曲面状の面を有する。上部材11及び下部材12の有する曲面状の面は、一様な曲率を有するものではなく、三次元的な複雑な曲面形状である。上部材11及び下部材12の有する曲面状の面は、例えば、携帯端末装置の筐体のデザイン面から設定され、上部材11及び下部材12は、例えば、携帯端末装置の筐体に収容される。なお、上部材11及び下部材12の材料は樹脂に限定されるものではなく、金属,ゴム等の材料を用いることも可能である。又、フレキシブル基板10がアンテナとして機能する場合には、アンテナ特性を向上させるため、ABS樹脂に代えて高誘電体樹脂等を用いてもよい。
【0016】
図3は、図1のフレキシブル基板が上部材及び下部材に挟持された状態を例示する斜視図である。図3を参照するに、フレキシブル基板10は、上部材11及び下部材12に挟持されている。フレキシブル基板10の両面には、例えば、両面接着テープ(図示せず)が配設されている。フレキシブル基板10を両面接着テープ(図示せず)を介して上部材11及び下部材12で挟持することにより、フレキシブル基板10は上部材11と下部材12の間に貼り付けられる。なお、両面接着テープ(図示せず)に代えて、例えば、接着剤等を用いてもよい。又、接着剤や両面接着テープ(図示せず)の種類に応じて、フレキシブル基板10を上部材11及び下部材12で挟持した後に加熱処理や加圧処理を実施してもよい。
【0017】
従来、平面状のフレキシブル基板を曲面状の面を有する部材に貼り付けると、皺が生じるため、アンテナパターンが適正形状から変形してアンテナ特性が低下する等の問題があった。しかし、本実施の形態に係るフレキシブル基板10は、平面状のフレキシブル基板ではあるが、4つのスリット10xが形成されているため、曲面状の面を有する上部材11及び下部材12に貼り付けても皺が生じ難くすることができる。
【0018】
平面状のフレキシブル基板10を曲面状の面を有する上部材11及び下部材12に貼り付ける際に生じる皺が生じ難くするためには、フレキシブル基板10の適切な位置に適切な形状のスリット10xを形成する必要がある。発明者らは、平面状のフレキシブル基板を曲面状の面を有する部材に貼り付ける際にフレキシブル基板に生じる高い応力の発生をFEM解析し、FEM解析により特定された高い応力が発生する領域にスリットを形成することにより、皺が生じ難くすることができることを見出した。
【0019】
つまり、平面状のフレキシブル基板10を曲面状の面を有する上部材11及び下部材12に貼り付ける際にフレキシブル基板10に生じる高い応力が発生する領域をFEM解析し、FEM解析により特定された高い応力が発生する領域に4つのスリット10xを形成している。その結果、上部材11及び下部材12に貼り付けられたフレキシブル基板10に皺が生じ難くすることができる。
【0020】
なお、本願において、『高い応力』は、平面状のフレキシブル基板の応力を基準として、それよりも高い応力を意味している。平面状のフレキシブル基板が曲面状に折り曲げられ表面張力によって応力が集中して『高い応力』が発生する。
【0021】
[フレキシブル基板の高い応力が発生する解析]
次に、平面状のフレキシブル基板10を曲面状の面を有する上部材11及び下部材12に貼り付ける際にフレキシブル基板10に生じる高い応力が発生する領域をFEM解析する方法について説明する。
【0022】
まず、図4に示すように平面状のフレキシブル基板10A、並びに、曲面状の面を有する上部材11及び下部材12を準備し、図5に示すようにフレキシブル基板10Aを上部材11及び下部材12で挟持する。図4において平面状であったフレキシブル基板10Aは、図5において上部材11及び下部材12で挟持されて、上部材11及び下部材12の有する曲面状の面に対応した曲面状に変形する。なお、フレキシブル基板10Aは、フレキシブル基板10にスリット10xを形成する前のフレキシブル基板である。
【0023】
次に、図5の状態で、フレキシブル基板10Aに生じる高い応力が発生する領域をFEM解析する。なお、フレキシブル基板10Aは左右対称であるため、FEM解析はフレキシブル基板10Aの半分の形状を用いて実行した。図6は、スリットが形成されていないフレキシブル基板に生じる高い応力が発生する領域をFEM解析した結果を例示する図である。図6に示すFEM解析の結果では、フレキシブル基板10Aをフレキシブル基板10Aに生じる高い応力の発生に応じて領域(1)から領域(5)の5個の領域に分割して表示している。領域(1)が最も高い応力が発生する領域であり、領域(2)から領域(4)にいくに従って応力は低くなり、領域(5)が最も応力の低い領域である。このように、FEM解析により、図6に示すように、フレキシブル基板10Aの紙面下方に、最も高い応力が発生する領域(1)が存在することが確認された。
【0024】
次に、スリットを形成する高い応力が発生する領域を特定する。スリットを形成する高い応力が発生する領域は、最も高い応力が発生する領域(1)のみとしてもよいし、領域(1)及び領域(2)を含むようにしてもよい。つまり、スリットを形成する高い応力が発生する領域は、フレキシブル基板の高い応力を低減できるように、最も高い応力が発生する領域(1)近傍の領域を任意に特定してよい。本実施の形態では、領域(1)及び領域(2)をスリットを形成する高い応力が発生する領域とする。
【0025】
次に、図5において、フレキシブル基板10Aを高い応力が発生する領域にスリット10xが形成されているフレキシブル基板10(図1参照)に置換して、FEM解析を実行する。図7は、高い応力が発生する領域にスリットが形成されているフレキシブル基板に生じる高い応力をFEM解析した結果を例示する図である。図7に示すように、フレキシブル基板10では、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域にスリット10xを形成したことにより、図6に示す領域(1)や領域(2)のような領域が消滅している。つまり、フレキシブル基板10において、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域に対応する領域では、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域に比べて、大幅に応力が低減された。このように、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域にスリットが形成されているフレキシブル基板10についてFEM解析を実行し、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域に比べて、大幅に応力が低減されていれば、高い応力が発生する領域の特定が適切であったことが確認できる。
【0026】
以上のように、平面状のフレキシブル基板10を曲面状の面を有する上部材11及び下部材12に貼り付けるためには、まず、平面状のフレキシブル基板10A(スリット10x形成前のフレキシブル基板10)を曲面状の面を有する上部材11及び下部材12に貼り付けた場合に高い応力が発生する領域をFEM解析により特定する。そして、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域にスリット10xを形成し、スリット10xが形成されたフレキシブル基板10を作製する。そして、フレキシブル基板10を上部材11と下部材12で挟持して上部材11及び下部材12に貼り付ければよい。これにより、フレキシブル基板10において、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域に対応する領域では、フレキシブル基板10Aの高い応力が発生する領域に比べて、大幅に応力を低減することが可能となり、フレキシブル基板10に皺が生じ難くすることができる。
【0027】
又、フレキシブル基板10がアンテナである場合には、皺の発生に起因してアンテナパターンが適正形状から変形することを回避でき、アンテナ特性が低下することを防止可能となる。
【0028】
なお、フレキシブル基板10Aの高い応力の発生領域に形成するスリット10xは4個には限定されず、1〜3個や5個以上であっても構わない。高い応力が発生する領域に任意形状のスリットを任意の個数形成した状態でFEM解析を実行し、フレキシブル基板10に生じる応力が低減されていれば問題ない。
【0029】
又、スリット10xの形状は平面視長方形状には限定されず、平面視楕円形状等であっても構わない。又、スリット10xの形状を平面視長方形状とし、長方形の短辺をR形状にしても構わない。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳説したが、本発明は、上述した実施の形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0031】
例えば、フレキシブル基板は、必ずしも上部材及び下部材で挟持する必要はなく、曲面状の面を有する一の部材に接着剤や両面接着テープを介して貼り付けてもよい。
【0032】
又、フレキシブル基板を貼り付ける曲面状の面を有する部材は、携帯端末装置に収容される部材には限定されない。曲面状の面を有する部材は、例えば、TVに収容される部材、自動車のフロントガラスやリヤガラス等でも構わない。
【0033】
又、曲面状の面を有する部材に貼り付ける対象物は、平面状のフレキシブル基板には限定されず、フィルムアンテナ等の平面状のフィルム状部材であればよい。ここで、平面状のフィルム状部材とは、長さや幅に比べて厚さが小さく、最大厚さが任意の値に限定されており、柔軟性を有し変形可能な平面状の部材をいう。
【符号の説明】
【0034】
10、10A フレキシブル基板
10x スリット
11 上部材
12 下部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面状の面を有する部材に平面状のフィルム状部材を貼り付けるフィルム状部材の貼り付け方法であって、
前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付けた場合に、前記フィルム状部材が平面状であったときに比べて高い応力が発生する領域を解析により特定する第1工程と、
前記フィルム状部材の前記高い応力が発生する領域にスリットを形成する第2工程と、
前記スリットが形成された前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付ける第3工程と、を有することを特徴とするフィルム状部材の貼り付け方法。
【請求項2】
前記第1工程では、FEM解析により、前記高い応力が発生する領域を特定することを特徴とする請求項1記載のフィルム状部材の貼り付け方法。
【請求項3】
前記第3工程は、前記曲面状の面を有する部材を2つ準備し、前記フィルム状部材を2つの前記曲面状の面を有する部材で挟持する工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載のフィルム状部材の貼り付け方法。
【請求項4】
曲面状の面を有する部材に貼り付けられる平面状のフィルム状部材であって、
前記フィルム状部材を前記曲面状の面を有する部材に貼り付けた場合に、前記フィルム状部材が平面状であったときに比べて高い応力が発生する領域にスリットを有することを特徴とするフィルム状部材。
【請求項5】
前記フィルム状部材にはアンテナパターンが形成されていることを特徴とする請求項4記載のフィルム状部材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−109393(P2012−109393A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256933(P2010−256933)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000176833)三菱製鋼株式会社 (69)
【Fターム(参考)】