フィードフォワード増幅器
【課題】 フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することができるフィードフォワード増幅器を提供する。
【解決手段】 フィードフォワード歪補償方式の性質を利用し、歪検出ループ19において、可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧V_PH1,V_AT1をずらして設定(変更)した場合に、制御回路18内の加算電圧検出部185からの出力電圧V_detを制御部181が検出して、当該出力電圧が最小となるよう可変移相器4に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、可変減衰器5に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1を調整するフィードフォワード増幅器である。
【解決手段】 フィードフォワード歪補償方式の性質を利用し、歪検出ループ19において、可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧V_PH1,V_AT1をずらして設定(変更)した場合に、制御回路18内の加算電圧検出部185からの出力電圧V_detを制御部181が検出して、当該出力電圧が最小となるよう可変移相器4に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、可変減衰器5に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1を調整するフィードフォワード増幅器である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードフォワード増幅器に係り、特に、歪検出ループの制御方法を変化させることで、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することが可能なフィードフォワード増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
一般に高いピーク/平均電力比を持つ変調波信号を増幅する場合、効率を高めるために増幅器のバック・オフを小さくすると線形性が悪化し、大きな歪を生じる。反対に線形性を良くするためにバック・オフを大きくすると効率が悪くなる。
【0003】
また、移動体通信で使用されているCDMA(Code Division Multiple Access)等の多数のキャリアを小さな周波数間隔で並べる多重化方式を採用する場合、増幅器の非線形性により、キャリア同士の相互変調が生じ、その結果キャリア信号近傍に相互変調歪が発生する。
【0004】
[フィードフォワード増幅器:図14,15]
このような小さなバック・オフで生じる相互変調歪をはじめとする各種の歪成分を補償する方法として図14及び図15に示すフィードフォワード歪補償方式がある。図14は、フィードフォワード増幅器におけるキャリア成分の信号の流れを示すブロック図であり、図15は、フィードフォワード増幅器における歪成分の信号の流れを示すブロック図である。
【0005】
フィードフォワード歪補償方式では、歪検出ループ19及び歪除去ループ20という2種類のフィードフォワードループを用いる。
歪検出ループ19では、信号経路(2)に示すように、入力端子1から入力された信号が電力分配器3により2つの信号に分割され、一方の信号は可変移相器4及び可変減衰器5を通り、パイロット信号発生器15から生成されるパイロット信号が注入された後に、主増幅器6を通り電力分配器7にて電力合成器11に入力される信号に分割される。
【0006】
電力分配器3で分割された他の信号は、信号経路(3)に示すように遅延線10を通り、電力合成器11に供給される。
信号経路(2)及び信号経路(3)にて供給された信号は、電力合成器11で結合されることにより電力合成器11の出力点(A)において歪信号を生成している。
【0007】
歪信号のキャリア成分の残留を抑え、主増幅器6にて発生する歪成分のみを歪信号として取り出すため、信号経路(2)及び信号経路(3)における遅延時間は一致するよう設定されており、2種類の信号中のキャリア成分の振幅及び位相を可変移相器4及び可変減衰器5により同振幅及び逆位相にし、キャリア検出器16において検波電力が最小となるように制御回路18により制御される。
【0008】
また、歪除去ループ20では、信号経路(1)に示すように、主増幅器6の出力信号を電力分配器7及び遅延線8を介し電力合成器9に供給させる一方で、信号経路(4)に示すように、歪信号を可変移相器12、可変減衰器13及び誤差増幅器14を介し電力合成器9に供給させる。
信号経路(1)及び信号経路(4)にて供給された信号は、電力合成器9で結合させることにより低歪出力信号として出力端子2から出力される。
【0009】
低歪出力信号の歪成分の残留を抑えるため、図15に示すように、主増幅器6の出力を起点とした信号経路(5)及び信号経路(6)における遅延時間は一致するよう設定されており、低歪出力信号生成のため結合の対象となる2種類の信号中の歪成分の振幅及び位相を可変移相器12及び可変減衰器13により同振幅および逆位相にし、パイロット信号検出器17において歪成分の帯域に注入されたパイロット信号が最小となるように制御回路18により制御される。
【0010】
すなわちフィードフォワード歪補償方式では、電力合成器11の出力点(A)において2信号を合成し、その電力を最小とすることで誤差増幅器14の動作点を最小とし、結果として誤差増幅器14の消費電力及び誤差増幅器14で発生する歪を最小にし、さらに低歪出力信号へ誤差増幅器14で発生する歪の影響を最小としている。
【0011】
一般に2信号の利得偏差 ΔG[[dB]、逆位相からの位相偏差 Δd[deg]とすると、2信号の合成におけるキャンセル量P[dB]の関係は、(1)式に示されることが知られている。
【0012】
【数1】
【0013】
(1)式の関係を示したのが図16である。図16は、2信号の利得偏差、位相偏差とキャンセル量の関係を示す図である。
しかしながら、実際のフィードフォワード歪補償方式における歪検出ループ19では、利得偏差及び位相偏差の周波数特性により広帯域にキャリア成分の大きなキャンセル量をとることは難しく、キャリア成分のキャンセル量は最大でも−35[dB]程度となることが多い。
【0014】
また、実際の主増幅器6の動作点における3次相互変調歪は−35[dBc]程度となるため、実際のフィードフォワード歪補償方式における歪検出ループ19における残留キャリア成分の電力と歪のみの成分の電力はほぼ同等であることが多い。
【0015】
すなわち、歪検出ループ19における残留キャリア成分の電力や歪のみの成分との相対位相の関係により、誤差増幅器14に入力される残留キャリア成分を含む歪信号の電力及びピーク/平均電力比が変化し、よって誤差増幅器14の消費電力および誤差増幅器14から出力される歪信号が変化し、結果としてフィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果が変化する。
さらに、使用する主増幅器6及び誤差増幅器14の利得の周波数特性や歪特性によっても様々に変化する。
【0016】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2008−147820号公報「フィードフォワード増幅器」(出願人:株式会社日立国際電気/特許文献1)、Nick Pothecary "Feedforward Linear Amplifiers" Jul, 1999, Artech House Microwave Library(非特許文献1)がある。
【0017】
特許文献1には、フィードフォワード増幅器において、制御回路19で主増幅器6の利得低下分及び副増幅器14の利得低下分に応じて減衰量を小さくなるよう可変減衰器4,12を制御し、制御回路23で主増幅器6の周囲温度及び副増幅器14の周囲温度に応じた最適な減衰量となるよう可変減衰器21,22を制御することが示されている。
【0018】
非特許文献1には、モバイル通信システム、ワイヤレスマルチメディアサービスのためのリニアフィードフォワード型パワーアンプの分析を提供し、高速データレートのアプリケーション用として、効率的なスペクトル線形変調方式及び広帯域での使用に関連した解説が為されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−147820号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Nick Pothecary "Feedforward Linear Amplifiers" Jul, 1999, Artech House Microwave Library
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、従来のフィードフォワード歪補償方式では、ある一定のアルゴリズムに基づき可変移相器4及び可変減衰器5を変化させ、(A)点における電力を最小とすることで歪検出ループ19の制御を自動的に行っていた。
【0022】
このため、抽出された残留キャリア成分を含む歪信号の電力及びピーク/平均電力比の状態によりフィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスが自動的に決定されるため、使用する主増幅器6及び誤差増幅器14の様々な特性に応じた消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することが難しいという問題点があった。
【0023】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することができるフィードフォワード増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、歪検出ループが、主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、歪除去ループが、第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、主増幅器からの出力と誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、第1の制御手段と第2の制御手段を備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、第1の可変移相器への制御電圧V_PH1、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1、第1の可変減衰器への制御電圧V_AT1、キャリア検出器の出力電圧Vdet_Ref、乗算係数α、乗算係数β、加算器における帰還抵抗R、加算器の入力端子に設けられた抵抗R1,R2,R3とした場合に、加算器からの出力電圧V_detを以下の演算式で求め、
V_det=R1/R・α・V_AT1・V_Ref_AT1+R2/R・β・V_PH1・V_Ref_PH1+R3/R・Vdet_Ref
制御電圧V_PH1,V_AT1を変更した場合に、出力電圧V_detが最小となるようR,R1,R2,R3,V_Ref_PH1,V_Ref_AT1を調整することを特徴とする。
【0025】
本発明は、上記フィードフォワード増幅器において、主増幅器の周囲の温度を検出し、温度情報を出力する温度検出部を備え、制御回路は、検出温度に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を記憶する温度テーブルを有する記憶部と、温度検出部からの温度情報に基づいて、温度テーブルを参照して、温度情報に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値から第1の基準電圧と第2の基準電圧を出力する制御部とを備えることを特徴とする。
【0026】
本発明は、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、歪検出ループが、主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、歪除去ループが、第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、主増幅器からの出力と誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、第1の制御手段と第2の制御手段を備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、第1の乗算器からの出力と、第2の乗算器からの出力と、キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、第1の可変移相器への制御電圧、第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう第1の基準電圧、第2の基準電圧を調整する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器において、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、第1の可変移相器への制御電圧V_PH1、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1、第1の可変減衰器への制御電圧V_AT1、キャリア検出器の出力電圧Vdet_Ref、乗算係数α、乗算係数β、加算器における帰還抵抗R、加算器の入力端子に設けられた抵抗R1,R2,R3とした場合に、加算器からの出力電圧V_detを以下の演算式で求め、
V_det=R1/R・α・V_AT1・V_Ref_AT1+R2/R・β・V_PH1・V_Ref_PH1+R3/R・Vdet_Ref
制御電圧V_PH1,V_AT1を変更した場合に、出力電圧V_detが最小となるようR,R1,R2,R3,V_Ref_PH1,V_Ref_AT1を調整するようにしているので、消費電力を最小となるよう第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できる効果がある。
【0028】
本発明によれば、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器において、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、第1の乗算器からの出力と、第2の乗算器からの出力と、キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、第1の可変移相器への制御電圧、第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう第1の基準電圧、第2の基準電圧を調整する制御部とを有するようにしているので、消費電力を最小となるよう第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器の制御回路の構成ブロック図である。
【図2】加算電圧検出部の回路図である。
【図3】一般的な乗算回路のブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る可変減衰器5の制御電圧と加算回路23の出力電圧の関係を示す図である。
【図5】従来の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
【図6】従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
【図7】従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪(IM3_low)の関係の実験値を示す図である。
【図8】従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪(IM3_high)の関係の実験値を示す図である。
【図9】本実施の形態の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
【図10】本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
【図11】本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
【図12】本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
【図13】従来及び本実施の形態の制御方法における自動制御範囲での各項目の規格値からの差の平均値を示す図である。
【図14】フィードフォワード増幅器におけるキャリア成分の信号の流れを示すブロック図である。
【図15】フィードフォワード増幅器における歪成分の信号の流れを示すブロック図である。
【図16】2信号の利得偏差、位相偏差とキャンセル量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器は、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有し、制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、第1の乗算器からの出力と、第2の乗算器からの出力と、キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、第1の可変移相器への制御電圧、第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう第1の基準電圧、第2の基準電圧を調整する制御部とを有するようにしているので、消費電力を最小となるよう第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できるものである。
【0031】
[本増幅器の構成]
本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器(本増幅器)は、図14、図15に示した構成と基本的には同様であるが、制御回路18の構成及び処理に特徴があり、それにより、消費電力を最小となるよう可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での可変移相器又は可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できるものである。
【0032】
本増幅器について、図14,15を参照しながら説明する。
本増幅器は、入力端子1から入力された信号は分配器3により分配される。分配された一方の信号は、可変移相器4、可変減衰器5を通りパイロット信号発生器15から生成されるパイロット信号が注入された後、主増幅器6へ入力される。ここで、可変移相器4及び可変減衰器5は、制御回路18により制御される。
また、分配器3で分配された他方の信号は、遅延線10で遅延されて合成器11に入力される。
【0033】
主増幅器6の出力は分配器7に入力され、一方は遅延線8を通り合成器9へ、また他方は合成器11へ入力される。
合成器11では、遅延線10を通った信号と分配器7の出力とが合成される。合成器11の出力は、可変移相器12、可変減衰器13を通り誤差増幅器(副増幅器)14に入力される。ここで、可変移相器12及び可変減衰器13は制御回路18により制御される。
【0034】
誤差増幅器14の出力は、合成器9により遅延線8を通ってきた信号と合成され出力端子2より出力される。
また、合成器11の出力点においては、キャリア検出器16によりキャリア成分を検出し、この検出キャリアレベルを制御回路18へ入力する。
また、合成器9の出力点においては、パイロット信号検出器17により注入されたパイロット信号レベルを検出して制御回路18へ入力する。
【0035】
[本増幅器の動作]
次に、本増幅器の動作について説明する。
入力端子1から入力された信号は分配器3により分配され、一方の信号経路と他方の信号経路に出力される。一方の信号経路と他方の信号経路とは合成器11で合成され、合成出力のキャリア成分がキャリア検出器16で検出されて制御回路18に入力される。
【0036】
制御回路18は、キャリア検出器16の出力が最小になるように、可変移相器4及び可変減衰器5を制御する。このように制御することで、一方の信号経路と他方の信号経路とは同振幅、逆位相になり合成器11の出力において主増幅器6の歪成分のみが抽出されることになる。
【0037】
また、合成器11により抽出された歪成分は可変移相器12、可変減衰器13を通り誤差増幅器14で増幅された後、合成器9で遅延線8を通ってきた信号と合成される。合成器9の出力に含まれるパイロット信号成分はパイロット検出器17により検出されて制御回路18へ入力される。
【0038】
制御回路18は、パイロット検出器17の出力が最小になるように、可変移相器12及び可変減衰器13を制御する。このように制御することで、分配器7で分配された一方の信号経路と他方の信号経路とは同振幅、逆位相になり、主増幅器6で発生した歪を打ち消すことができる。
【0039】
[動作原理]
次に、本実施の形態を理解するために、動作原理として、フィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19及び歪除去ループ20とフィードフォワード歪補償方式の利得の関係について説明する。
図14、図15に示すフィードフォワード歪補償方式において、分配器3において入力端子1から可変移相器4への分配比をc1とし、入力端子1から遅延線10への分配比をγ1とする。
【0040】
分配器7において主増幅器6から合成器11への分配比をc2とし、主増幅器6から遅延線8への分配比をγ2とする。
合成器9において誤差増幅器14から出力端子2への合成比をc3とし、遅延線8から出力端子2への合成比をγ3とする。
合成器11において分配器7から可変移送器12への合成比をc4とし、遅延線10から可変移送器12への合成比をγ4とする。
【0041】
遅延線8及び遅延線10の損失をそれぞれl1(エル1)、l2(エル2)とする。
可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得をGMとし、可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得をGEとする。
入力端子1に入力される入力電圧をVinとし、出力端子2に出力される出力電圧をVoutとする。
【0042】
ここでc1からc4までの各値と、γ1からγ4までの各値と、l1とl2及びGMとGE及びVin、Voutは、すべてキャリア成分であり、かつ真数であるとする。このとき図14に示すフィードフォワード歪補償方式の利得Gffは(2)式で表される。
【0043】
【数2】
【0044】
出力電圧Voutは、主増幅器と誤差増幅器の合成から求められるので(3)式にて表される。
【数3】
【0045】
ただし、合成器11での2信号の位相差は逆位相であるとする。(2)式及び(3)式からフィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、(4)式で表される。
【数4】
【0046】
ここで、歪検出ループ19が完全に機能している場合、すなわち2信号の利得偏差及び位相偏差が無い場合は、信号経路(2)と信号経路(3)の値が等しいので、(5)式が成立する。
【数5】
【0047】
更に、それを基に可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GMを求めると(6)式になる。
【数6】
【0048】
(5)式と(6)式を(4)式に代入すると、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、(7)式で表される。
【数7】
【0049】
すなわち、歪検出ループ19が完全に機能(歪検出)している場合、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GM及び可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEによらず一定である。
【0050】
また、歪除去ループ20が完全に機能している場合、すなわち2信号の利得偏差及び位相偏差が無い場合、図15において信号経路(5)と信号経路(6)の値が等しいので、(8)式が成立する。
【数8】
【0051】
更に、それを基に可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEを求めると(9)式になる。
【数9】
【0052】
(8)式と(9)式を(4)式に代入すると、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、(10)式で表される。
【数10】
【0053】
すなわち、歪除去ループ20が完全に機能している場合、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GM及び可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEによらず一定である。
よって、歪検出ループ19と歪除去ループ20のどちらか一方のキャンセルが取れている時、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GM、及び可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEによらず一定である。
【0054】
本発明の実施の形態では、上記フィードフォワード歪補償方式の性質を利用し、歪検出ループ19の制御方法を変化させることで、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することを可能にするものである。
つまり、消費電力より歪補償効果に重みを置く設定と、歪補償効果より消費電力に重みを置く設定が可能となる。
【0055】
[制御回路:図1]
本増幅器における制御回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器の制御回路の構成ブロック図である。
本増幅器の制御回路18は、図1に示すように、制御部181と、記憶部182と、第1の基準電圧供給部183と、第2の基準電圧供給部184と、加算電圧検出部185とを基本的に有している。
尚、制御部181は、制御回路18内の各部に接続している。
【0056】
[制御回路の各部]
本増幅器の制御回路の各部について具体的に説明する。
制御部181は、キャリア検出部16で検出されたキャリア成分を入力し、キャリア成分が最小になるよう可変移相器4に対して制御電圧V_PH1を出力すると共に可変減衰器5に対して制御電圧V_AT1を出力する。
また、制御部181は、パイロット信号検出部17で検出されたパイロット信号成分を入力し、パイロット信号成分が最小になるよう可変移相器12に対して制御電圧V_PH2を出力すると共に可変減衰器13に対して制御電圧V_AT2を出力する。尚、図1において、可変移相器12と可変減衰器13に対して出力される制御電圧は省略している。
【0057】
制御部181は、主増幅器6の周囲の温度を検出する温度検出部24から検出した温度データを入力する。
また、制御部181は、第1の基準電圧供給部183に第1の基準電圧の値を出力し、第2の基準電圧供給部184に第2の基準電圧の値を出力する。
【0058】
制御部181は、加算電圧検出部185からの出力電圧V_detの値が最小になるよう第1の基準電圧の値、第2の基準電圧の値を設定する。
また、制御部181は、温度検出部24から入力された温度データを読み込み、記憶部182の温度テーブル182aを参照し、当該温度データに対応する第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を読み取り、第1の基準電圧供給部183と第2の基準電圧供給部184に設定するようにしてもよい。
【0059】
また、制御部181は、外部からオペレータによって可変移相器4の制御電圧V_PH1又は/及び可変減衰器5の制御電圧V_AT1をずらして設定する調整できるものとなっている。
そして、制御部181は、上記制御電圧をずらして設定された場合に、加算電圧検出部185からの出力電圧V_detを検出し、第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を変更し、出力電圧V_detの値が最小になるよう第1の基準電圧の値、第2の基準電圧の値を調整して設定する。
【0060】
記憶部182は、温度テーブル182a等を記憶している。
温度テーブル182aは、温度検出部24で検出された温度の値に対応した最適な第1の基準電圧の値及び第2の基準電圧の値を記憶している。
【0061】
第1の基準電圧供給部183は、制御部181からの第1の基準電圧の値に基づいて第1の基準電圧V_Ref_PH1を出力する。第1の基準電圧は、可変移相器4に対応した基準電圧である。
第2の基準電圧供給部184は、制御部181からの第2の基準電圧の値に基づいて第2の基準電圧V_Ref_AT1を出力する。第2の基準電圧は、可変減衰器5に対応した基準電圧である。
【0062】
加算電圧検出部185は、制御部181から出力された可変移相器4への制御電圧V_PH1と可変減衰器5への制御電圧V_AT1を入力し、第1の基準電圧供給部183から第1の基準電圧V_Ref_PH1を入力し、第2の基準電圧供給部184から第2の基準電圧V_Ref_AT1を入力し、キャリア検出部16から出力電圧(キャリア検出信号)Vdet_refを入力し、乗算処理及び加算処理を行い、出力電圧V_detを制御部181に出力する。
加算電圧検出部185の詳細は後述する。
【0063】
[加算電圧検出部185:図2]
次に、制御回路18における加算電圧検出部185の具体的回路について図2を参照しながら説明する。図2は、加算電圧検出部の回路図である。
加算電圧検出部185は、図2に示すように、乗算器21と、乗算器22と、加算器23とを備えている。
【0064】
[加算電圧検出部の各部]
乗算器21は、可変減衰器5の制御電圧V_AT1と第2の基準電圧V_Ref_AT1とを乗算する。尚、乗算器21では、乗算係数αが乗算される。
乗算器22は、可変移相器4の制御電圧V_PH1と第2の基準電圧V_Ref_PH1とを乗算する。尚、乗算器22では、乗算係数βが乗算される。
【0065】
加算器23は、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refと乗算器21の出力電圧と乗算器22の出力電圧を加算する。
加算器23は、乗算器21からの出力電圧を入力する端子には抵抗R1が接続され、乗算器22からの出力電圧を入力する端子には抵抗R2が接続され、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refを入力する端子には抵抗R3が接続され、抵抗R1,R2,R3を介してオペアンプの入力端子(−)に入力している。オペアンプの入力端子(+)は抵抗を介して接地され、オペアンプの出力は、抵抗Rを介して入力端子(−)に帰還している。
【0066】
[乗算回路:図3]
図3は、一般的な乗算回路のブロック図である。図3において係数Kは入力電圧V2に反比例して抵抗値を変化させることができる素子の抵抗係数である。
図3において、V1はFET(Field Effect Transistor)のソース(S)に接続し、V2はFETのゲート(G)に入力し、FETのドレイン(D)がオペアンプの入力端子(−)に接続し、入力端子(+)が接地され、オペアンプの出力が抵抗Rを介して入力端子(−)に帰還している。
【0067】
図3において、FETのソース(S)とドレイン(D)間の抵抗Rdsは、
Rds=K/V2 であり、
オペアンプからの出力電圧Voは、
Vo=−R/K*V1*V2 となる。
【0068】
また、図2において、αを乗算器21の乗算係数、βを乗算器22の乗算係数とすると、加算器23の出力電圧V_detは、(11)式で表される。
【数11】
【0069】
(11)式は、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refに可変減衰器5の制御電圧V_AT1に比例する電圧と可変移相器4の制御電圧V_PH1に比例する電圧を加算している。
例えば、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refが(12)式に示すような可変減衰器5の制御電圧V_AT1のみの関数であり、かつ基準電圧V_Ref_PH1=0であるとして、(11)式は、(13)式のようになる。また、(11)式における一部分を(14)式に示すように、「ε」とおく。
【0070】
【数12】
【数13】
【数14】
【0071】
従来方法によるキャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refの最小値は、(12)式よりV_AT1 = δで与えられる。ここで、δは任意の値とする。
(13)式では電圧V_detの最小値が V_AT1 = δ − ε/2 で与えられるため、R1/Rの値により加算器23の出力電圧V_detの最小値を得る可変減衰器5の制御電圧を任意にずらすことが可能となる。
【0072】
歪除去ループ20の制御方法は従来通り、すなわち、歪除去ループ20が完全に機能しているとすることで、フィードフォワード歪補償方式の利得GffはV_AT1の値によらず一定となる。
キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refが可変移相器4の制御電圧V_PH1のみの関数であるとした場合も、同様に最小値を得る可変減衰器5の制御電圧を任意にずらすことが可能となる。
【0073】
[可変減衰器5の制御電圧と加算回路23の出力電圧の関係:図4]
図4は、本実施の形態に係る可変減衰器5の制御電圧と加算回路23の出力電圧の関係を示す図である。
図4に示したように、実際にはキャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refは、可変移相器4の制御電圧V_PH1と可変減衰器5の制御電圧V_AT1の関数として表されるので、(11)式に示す本実施の形態による加算器23の出力電圧の最小値をとる可変移相器4の制御電圧V_PH1と可変減衰器5の制御電圧V_AT1をR、R1、R2、R3、V_Ref_AT1、V_Ref_PH1を適切に設定することで任意にずらすことが可能となる。
【0074】
[実験結果]
次に、従来の自動制御範囲、従来の効率、従来の下側3次相互変調歪の関係、従来の上側3次相互変調歪の関係と比較しながら、本実施の形態における自動制御範囲、効率、下側3次相互変調歪の関係、上側3次相互変調歪の関係について図5〜図12を参照しながら説明する。
【0075】
[従来の自動制御範囲:図5]
図5は、従来の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
ここで、AT1は可変減衰器5における制御電圧のある基準電圧からの差を示す制御値番号であり、PH1は可変移相器4における制御電圧のある基準電圧からの差を示す制御値番号である。
このとき、歪除去ループ20は完全にキャンセルが取れている状態であり、AT1及びPH1を変化させてもフィードフォワード歪補償方式増幅器の利得及び出力電力は一定である。
【0076】
[従来の効率:図6]
また、図6は、従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
[従来の下側3次相互変調歪:図7]
図7は、従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪(IM3_low)の関係の実験値を示す図である。
[従来の上側3次相互変調歪:図8]
図8は、従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪(IM3_high)の関係の実験値を示す図である。
【0077】
[実施の形態の自動制御範囲:図9]
また、図9は、本実施の形態の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
[実施の形態の効率:図10]
図10は、本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
【0078】
[実施の形態の下側3次相互変調歪:図11]
図11は、本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
[実施の形態の上側3次相互変調歪:図12]
図12は、本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
【0079】
図5から図8において、図15に示す従来の制御方法における自動制御範囲は、効率、下側3次相互変調歪、上側3次相互変調歪の最適範囲からずれた範囲となっている。
しかしながら、図10から図12において、図9に示す本実施の形態の制御方法における自動制御範囲は、効率、下側3次相互変調歪、上側3次相互変調歪の最適範囲のバランスがよい範囲となっている。
【0080】
[従来と本実施の形態の効率等比較:図13]
図13は、従来及び本実施の形態の制御方法における自動制御範囲での各項目の規格値からの差の平均値を示す図である。
従来の制御方法では、上側3次相互変調歪の取り得る平均値に余裕があるが、本実施の形態による制御方法では、下側及び上側3次相互変調歪の取り得る平均値はバランスが取れかつ効率も向上している結果となっている。
また、(11)式の計算を行う演算処理機能を備えることでも同様の効果が期待できる。
【0081】
[実施の形態の効果]
本増幅器によれば、フィードフォワード歪補償方式の性質を利用し、歪検出ループ19において、可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧V_PH1,V_AT1をずらして設定(変更)した場合に、制御回路18内の加算電圧検出部185からの出力電圧V_detを検出して、当該出力電圧が最小となるよう可変移相器4に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、可変減衰器5に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1を調整するようにしているので、消費電力を最小となるよう可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧V_PH1,V_AT1をずらして設定することができ、主増幅器6、誤差増幅器14の特性に応じて、最小消費電力での可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧を任意に設定できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することができるフィードフォワード増幅器に好適である。
【符号の説明】
【0083】
1…入力端子、 2…出力端子、 3…分配器、 4…可変移相器、 5…可変減衰器、 6…主増幅器、 7…分配器、 8…遅延線、 9…合成器、 10…遅延線、 11…合成器、 12…可変移相器、 13…可変減衰器、 14…誤差増幅器、 15…パイロット信号発生器、 16…キャリア検出器、 17…パイロット信号検出器、 18…制御回路、 19…歪検出ループ、 20…歪除去ループ、 21…乗算器、 22…乗算器、 23…加算器、 24…温度検出部、 181…制御部、 182…記憶部、 182a…温度テーブル、 183…第1の基準電圧供給部、 184…第2の基準電圧供給部、 185…加算電圧検出部
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィードフォワード増幅器に係り、特に、歪検出ループの制御方法を変化させることで、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することが可能なフィードフォワード増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
[従来の技術]
一般に高いピーク/平均電力比を持つ変調波信号を増幅する場合、効率を高めるために増幅器のバック・オフを小さくすると線形性が悪化し、大きな歪を生じる。反対に線形性を良くするためにバック・オフを大きくすると効率が悪くなる。
【0003】
また、移動体通信で使用されているCDMA(Code Division Multiple Access)等の多数のキャリアを小さな周波数間隔で並べる多重化方式を採用する場合、増幅器の非線形性により、キャリア同士の相互変調が生じ、その結果キャリア信号近傍に相互変調歪が発生する。
【0004】
[フィードフォワード増幅器:図14,15]
このような小さなバック・オフで生じる相互変調歪をはじめとする各種の歪成分を補償する方法として図14及び図15に示すフィードフォワード歪補償方式がある。図14は、フィードフォワード増幅器におけるキャリア成分の信号の流れを示すブロック図であり、図15は、フィードフォワード増幅器における歪成分の信号の流れを示すブロック図である。
【0005】
フィードフォワード歪補償方式では、歪検出ループ19及び歪除去ループ20という2種類のフィードフォワードループを用いる。
歪検出ループ19では、信号経路(2)に示すように、入力端子1から入力された信号が電力分配器3により2つの信号に分割され、一方の信号は可変移相器4及び可変減衰器5を通り、パイロット信号発生器15から生成されるパイロット信号が注入された後に、主増幅器6を通り電力分配器7にて電力合成器11に入力される信号に分割される。
【0006】
電力分配器3で分割された他の信号は、信号経路(3)に示すように遅延線10を通り、電力合成器11に供給される。
信号経路(2)及び信号経路(3)にて供給された信号は、電力合成器11で結合されることにより電力合成器11の出力点(A)において歪信号を生成している。
【0007】
歪信号のキャリア成分の残留を抑え、主増幅器6にて発生する歪成分のみを歪信号として取り出すため、信号経路(2)及び信号経路(3)における遅延時間は一致するよう設定されており、2種類の信号中のキャリア成分の振幅及び位相を可変移相器4及び可変減衰器5により同振幅及び逆位相にし、キャリア検出器16において検波電力が最小となるように制御回路18により制御される。
【0008】
また、歪除去ループ20では、信号経路(1)に示すように、主増幅器6の出力信号を電力分配器7及び遅延線8を介し電力合成器9に供給させる一方で、信号経路(4)に示すように、歪信号を可変移相器12、可変減衰器13及び誤差増幅器14を介し電力合成器9に供給させる。
信号経路(1)及び信号経路(4)にて供給された信号は、電力合成器9で結合させることにより低歪出力信号として出力端子2から出力される。
【0009】
低歪出力信号の歪成分の残留を抑えるため、図15に示すように、主増幅器6の出力を起点とした信号経路(5)及び信号経路(6)における遅延時間は一致するよう設定されており、低歪出力信号生成のため結合の対象となる2種類の信号中の歪成分の振幅及び位相を可変移相器12及び可変減衰器13により同振幅および逆位相にし、パイロット信号検出器17において歪成分の帯域に注入されたパイロット信号が最小となるように制御回路18により制御される。
【0010】
すなわちフィードフォワード歪補償方式では、電力合成器11の出力点(A)において2信号を合成し、その電力を最小とすることで誤差増幅器14の動作点を最小とし、結果として誤差増幅器14の消費電力及び誤差増幅器14で発生する歪を最小にし、さらに低歪出力信号へ誤差増幅器14で発生する歪の影響を最小としている。
【0011】
一般に2信号の利得偏差 ΔG[[dB]、逆位相からの位相偏差 Δd[deg]とすると、2信号の合成におけるキャンセル量P[dB]の関係は、(1)式に示されることが知られている。
【0012】
【数1】
【0013】
(1)式の関係を示したのが図16である。図16は、2信号の利得偏差、位相偏差とキャンセル量の関係を示す図である。
しかしながら、実際のフィードフォワード歪補償方式における歪検出ループ19では、利得偏差及び位相偏差の周波数特性により広帯域にキャリア成分の大きなキャンセル量をとることは難しく、キャリア成分のキャンセル量は最大でも−35[dB]程度となることが多い。
【0014】
また、実際の主増幅器6の動作点における3次相互変調歪は−35[dBc]程度となるため、実際のフィードフォワード歪補償方式における歪検出ループ19における残留キャリア成分の電力と歪のみの成分の電力はほぼ同等であることが多い。
【0015】
すなわち、歪検出ループ19における残留キャリア成分の電力や歪のみの成分との相対位相の関係により、誤差増幅器14に入力される残留キャリア成分を含む歪信号の電力及びピーク/平均電力比が変化し、よって誤差増幅器14の消費電力および誤差増幅器14から出力される歪信号が変化し、結果としてフィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果が変化する。
さらに、使用する主増幅器6及び誤差増幅器14の利得の周波数特性や歪特性によっても様々に変化する。
【0016】
[関連技術]
尚、関連する先行技術として、特開2008−147820号公報「フィードフォワード増幅器」(出願人:株式会社日立国際電気/特許文献1)、Nick Pothecary "Feedforward Linear Amplifiers" Jul, 1999, Artech House Microwave Library(非特許文献1)がある。
【0017】
特許文献1には、フィードフォワード増幅器において、制御回路19で主増幅器6の利得低下分及び副増幅器14の利得低下分に応じて減衰量を小さくなるよう可変減衰器4,12を制御し、制御回路23で主増幅器6の周囲温度及び副増幅器14の周囲温度に応じた最適な減衰量となるよう可変減衰器21,22を制御することが示されている。
【0018】
非特許文献1には、モバイル通信システム、ワイヤレスマルチメディアサービスのためのリニアフィードフォワード型パワーアンプの分析を提供し、高速データレートのアプリケーション用として、効率的なスペクトル線形変調方式及び広帯域での使用に関連した解説が為されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−147820号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Nick Pothecary "Feedforward Linear Amplifiers" Jul, 1999, Artech House Microwave Library
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
しかしながら、従来のフィードフォワード歪補償方式では、ある一定のアルゴリズムに基づき可変移相器4及び可変減衰器5を変化させ、(A)点における電力を最小とすることで歪検出ループ19の制御を自動的に行っていた。
【0022】
このため、抽出された残留キャリア成分を含む歪信号の電力及びピーク/平均電力比の状態によりフィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスが自動的に決定されるため、使用する主増幅器6及び誤差増幅器14の様々な特性に応じた消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することが難しいという問題点があった。
【0023】
本発明は上記実情に鑑みて為されたもので、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することができるフィードフォワード増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、歪検出ループが、主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、歪除去ループが、第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、主増幅器からの出力と誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、第1の制御手段と第2の制御手段を備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、第1の可変移相器への制御電圧V_PH1、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1、第1の可変減衰器への制御電圧V_AT1、キャリア検出器の出力電圧Vdet_Ref、乗算係数α、乗算係数β、加算器における帰還抵抗R、加算器の入力端子に設けられた抵抗R1,R2,R3とした場合に、加算器からの出力電圧V_detを以下の演算式で求め、
V_det=R1/R・α・V_AT1・V_Ref_AT1+R2/R・β・V_PH1・V_Ref_PH1+R3/R・Vdet_Ref
制御電圧V_PH1,V_AT1を変更した場合に、出力電圧V_detが最小となるようR,R1,R2,R3,V_Ref_PH1,V_Ref_AT1を調整することを特徴とする。
【0025】
本発明は、上記フィードフォワード増幅器において、主増幅器の周囲の温度を検出し、温度情報を出力する温度検出部を備え、制御回路は、検出温度に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を記憶する温度テーブルを有する記憶部と、温度検出部からの温度情報に基づいて、温度テーブルを参照して、温度情報に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値から第1の基準電圧と第2の基準電圧を出力する制御部とを備えることを特徴とする。
【0026】
本発明は、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、歪検出ループが、主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、歪除去ループが、第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、主増幅器からの出力と誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、第1の制御手段と第2の制御手段を備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、第1の乗算器からの出力と、第2の乗算器からの出力と、キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、第1の可変移相器への制御電圧、第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう第1の基準電圧、第2の基準電圧を調整する制御部とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器において、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、第1の可変移相器への制御電圧V_PH1、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1、第1の可変減衰器への制御電圧V_AT1、キャリア検出器の出力電圧Vdet_Ref、乗算係数α、乗算係数β、加算器における帰還抵抗R、加算器の入力端子に設けられた抵抗R1,R2,R3とした場合に、加算器からの出力電圧V_detを以下の演算式で求め、
V_det=R1/R・α・V_AT1・V_Ref_AT1+R2/R・β・V_PH1・V_Ref_PH1+R3/R・Vdet_Ref
制御電圧V_PH1,V_AT1を変更した場合に、出力電圧V_detが最小となるようR,R1,R2,R3,V_Ref_PH1,V_Ref_AT1を調整するようにしているので、消費電力を最小となるよう第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できる効果がある。
【0028】
本発明によれば、主増幅器と、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器において、検出したキャリア成分が最小となるよう第1の可変移相器と第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段と、検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう第2の可変移相器と第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを備える制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、第1の乗算器からの出力と、第2の乗算器からの出力と、キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、第1の可変移相器への制御電圧、第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう第1の基準電圧、第2の基準電圧を調整する制御部とを有するようにしているので、消費電力を最小となるよう第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器の制御回路の構成ブロック図である。
【図2】加算電圧検出部の回路図である。
【図3】一般的な乗算回路のブロック図である。
【図4】本実施の形態に係る可変減衰器5の制御電圧と加算回路23の出力電圧の関係を示す図である。
【図5】従来の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
【図6】従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
【図7】従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪(IM3_low)の関係の実験値を示す図である。
【図8】従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪(IM3_high)の関係の実験値を示す図である。
【図9】本実施の形態の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
【図10】本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
【図11】本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
【図12】本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
【図13】従来及び本実施の形態の制御方法における自動制御範囲での各項目の規格値からの差の平均値を示す図である。
【図14】フィードフォワード増幅器におけるキャリア成分の信号の流れを示すブロック図である。
【図15】フィードフォワード増幅器における歪成分の信号の流れを示すブロック図である。
【図16】2信号の利得偏差、位相偏差とキャンセル量の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器は、主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有し、制御回路が、第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、第1の乗算器からの出力と、第2の乗算器からの出力と、キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、第1の可変移相器への制御電圧、第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう第1の基準電圧、第2の基準電圧を調整する制御部とを有するようにしているので、消費電力を最小となるよう第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での第1の可変移相器又は第1の可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できるものである。
【0031】
[本増幅器の構成]
本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器(本増幅器)は、図14、図15に示した構成と基本的には同様であるが、制御回路18の構成及び処理に特徴があり、それにより、消費電力を最小となるよう可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧をずらして設定することができ、主増幅器、誤差増幅器の特性に応じて、最小消費電力での可変移相器又は可変減衰器に対する制御電圧を任意に設定できるものである。
【0032】
本増幅器について、図14,15を参照しながら説明する。
本増幅器は、入力端子1から入力された信号は分配器3により分配される。分配された一方の信号は、可変移相器4、可変減衰器5を通りパイロット信号発生器15から生成されるパイロット信号が注入された後、主増幅器6へ入力される。ここで、可変移相器4及び可変減衰器5は、制御回路18により制御される。
また、分配器3で分配された他方の信号は、遅延線10で遅延されて合成器11に入力される。
【0033】
主増幅器6の出力は分配器7に入力され、一方は遅延線8を通り合成器9へ、また他方は合成器11へ入力される。
合成器11では、遅延線10を通った信号と分配器7の出力とが合成される。合成器11の出力は、可変移相器12、可変減衰器13を通り誤差増幅器(副増幅器)14に入力される。ここで、可変移相器12及び可変減衰器13は制御回路18により制御される。
【0034】
誤差増幅器14の出力は、合成器9により遅延線8を通ってきた信号と合成され出力端子2より出力される。
また、合成器11の出力点においては、キャリア検出器16によりキャリア成分を検出し、この検出キャリアレベルを制御回路18へ入力する。
また、合成器9の出力点においては、パイロット信号検出器17により注入されたパイロット信号レベルを検出して制御回路18へ入力する。
【0035】
[本増幅器の動作]
次に、本増幅器の動作について説明する。
入力端子1から入力された信号は分配器3により分配され、一方の信号経路と他方の信号経路に出力される。一方の信号経路と他方の信号経路とは合成器11で合成され、合成出力のキャリア成分がキャリア検出器16で検出されて制御回路18に入力される。
【0036】
制御回路18は、キャリア検出器16の出力が最小になるように、可変移相器4及び可変減衰器5を制御する。このように制御することで、一方の信号経路と他方の信号経路とは同振幅、逆位相になり合成器11の出力において主増幅器6の歪成分のみが抽出されることになる。
【0037】
また、合成器11により抽出された歪成分は可変移相器12、可変減衰器13を通り誤差増幅器14で増幅された後、合成器9で遅延線8を通ってきた信号と合成される。合成器9の出力に含まれるパイロット信号成分はパイロット検出器17により検出されて制御回路18へ入力される。
【0038】
制御回路18は、パイロット検出器17の出力が最小になるように、可変移相器12及び可変減衰器13を制御する。このように制御することで、分配器7で分配された一方の信号経路と他方の信号経路とは同振幅、逆位相になり、主増幅器6で発生した歪を打ち消すことができる。
【0039】
[動作原理]
次に、本実施の形態を理解するために、動作原理として、フィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19及び歪除去ループ20とフィードフォワード歪補償方式の利得の関係について説明する。
図14、図15に示すフィードフォワード歪補償方式において、分配器3において入力端子1から可変移相器4への分配比をc1とし、入力端子1から遅延線10への分配比をγ1とする。
【0040】
分配器7において主増幅器6から合成器11への分配比をc2とし、主増幅器6から遅延線8への分配比をγ2とする。
合成器9において誤差増幅器14から出力端子2への合成比をc3とし、遅延線8から出力端子2への合成比をγ3とする。
合成器11において分配器7から可変移送器12への合成比をc4とし、遅延線10から可変移送器12への合成比をγ4とする。
【0041】
遅延線8及び遅延線10の損失をそれぞれl1(エル1)、l2(エル2)とする。
可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得をGMとし、可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得をGEとする。
入力端子1に入力される入力電圧をVinとし、出力端子2に出力される出力電圧をVoutとする。
【0042】
ここでc1からc4までの各値と、γ1からγ4までの各値と、l1とl2及びGMとGE及びVin、Voutは、すべてキャリア成分であり、かつ真数であるとする。このとき図14に示すフィードフォワード歪補償方式の利得Gffは(2)式で表される。
【0043】
【数2】
【0044】
出力電圧Voutは、主増幅器と誤差増幅器の合成から求められるので(3)式にて表される。
【数3】
【0045】
ただし、合成器11での2信号の位相差は逆位相であるとする。(2)式及び(3)式からフィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、(4)式で表される。
【数4】
【0046】
ここで、歪検出ループ19が完全に機能している場合、すなわち2信号の利得偏差及び位相偏差が無い場合は、信号経路(2)と信号経路(3)の値が等しいので、(5)式が成立する。
【数5】
【0047】
更に、それを基に可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GMを求めると(6)式になる。
【数6】
【0048】
(5)式と(6)式を(4)式に代入すると、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、(7)式で表される。
【数7】
【0049】
すなわち、歪検出ループ19が完全に機能(歪検出)している場合、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GM及び可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEによらず一定である。
【0050】
また、歪除去ループ20が完全に機能している場合、すなわち2信号の利得偏差及び位相偏差が無い場合、図15において信号経路(5)と信号経路(6)の値が等しいので、(8)式が成立する。
【数8】
【0051】
更に、それを基に可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEを求めると(9)式になる。
【数9】
【0052】
(8)式と(9)式を(4)式に代入すると、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、(10)式で表される。
【数10】
【0053】
すなわち、歪除去ループ20が完全に機能している場合、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GM及び可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEによらず一定である。
よって、歪検出ループ19と歪除去ループ20のどちらか一方のキャンセルが取れている時、フィードフォワード歪補償方式の利得Gffは、可変移送器4と可変減衰器5及び主増幅器6の合計利得GM、及び可変移送器12と可変減衰器13及び誤差増幅器14の合計利得GEによらず一定である。
【0054】
本発明の実施の形態では、上記フィードフォワード歪補償方式の性質を利用し、歪検出ループ19の制御方法を変化させることで、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することを可能にするものである。
つまり、消費電力より歪補償効果に重みを置く設定と、歪補償効果より消費電力に重みを置く設定が可能となる。
【0055】
[制御回路:図1]
本増幅器における制御回路について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るフィードフォワード増幅器の制御回路の構成ブロック図である。
本増幅器の制御回路18は、図1に示すように、制御部181と、記憶部182と、第1の基準電圧供給部183と、第2の基準電圧供給部184と、加算電圧検出部185とを基本的に有している。
尚、制御部181は、制御回路18内の各部に接続している。
【0056】
[制御回路の各部]
本増幅器の制御回路の各部について具体的に説明する。
制御部181は、キャリア検出部16で検出されたキャリア成分を入力し、キャリア成分が最小になるよう可変移相器4に対して制御電圧V_PH1を出力すると共に可変減衰器5に対して制御電圧V_AT1を出力する。
また、制御部181は、パイロット信号検出部17で検出されたパイロット信号成分を入力し、パイロット信号成分が最小になるよう可変移相器12に対して制御電圧V_PH2を出力すると共に可変減衰器13に対して制御電圧V_AT2を出力する。尚、図1において、可変移相器12と可変減衰器13に対して出力される制御電圧は省略している。
【0057】
制御部181は、主増幅器6の周囲の温度を検出する温度検出部24から検出した温度データを入力する。
また、制御部181は、第1の基準電圧供給部183に第1の基準電圧の値を出力し、第2の基準電圧供給部184に第2の基準電圧の値を出力する。
【0058】
制御部181は、加算電圧検出部185からの出力電圧V_detの値が最小になるよう第1の基準電圧の値、第2の基準電圧の値を設定する。
また、制御部181は、温度検出部24から入力された温度データを読み込み、記憶部182の温度テーブル182aを参照し、当該温度データに対応する第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を読み取り、第1の基準電圧供給部183と第2の基準電圧供給部184に設定するようにしてもよい。
【0059】
また、制御部181は、外部からオペレータによって可変移相器4の制御電圧V_PH1又は/及び可変減衰器5の制御電圧V_AT1をずらして設定する調整できるものとなっている。
そして、制御部181は、上記制御電圧をずらして設定された場合に、加算電圧検出部185からの出力電圧V_detを検出し、第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を変更し、出力電圧V_detの値が最小になるよう第1の基準電圧の値、第2の基準電圧の値を調整して設定する。
【0060】
記憶部182は、温度テーブル182a等を記憶している。
温度テーブル182aは、温度検出部24で検出された温度の値に対応した最適な第1の基準電圧の値及び第2の基準電圧の値を記憶している。
【0061】
第1の基準電圧供給部183は、制御部181からの第1の基準電圧の値に基づいて第1の基準電圧V_Ref_PH1を出力する。第1の基準電圧は、可変移相器4に対応した基準電圧である。
第2の基準電圧供給部184は、制御部181からの第2の基準電圧の値に基づいて第2の基準電圧V_Ref_AT1を出力する。第2の基準電圧は、可変減衰器5に対応した基準電圧である。
【0062】
加算電圧検出部185は、制御部181から出力された可変移相器4への制御電圧V_PH1と可変減衰器5への制御電圧V_AT1を入力し、第1の基準電圧供給部183から第1の基準電圧V_Ref_PH1を入力し、第2の基準電圧供給部184から第2の基準電圧V_Ref_AT1を入力し、キャリア検出部16から出力電圧(キャリア検出信号)Vdet_refを入力し、乗算処理及び加算処理を行い、出力電圧V_detを制御部181に出力する。
加算電圧検出部185の詳細は後述する。
【0063】
[加算電圧検出部185:図2]
次に、制御回路18における加算電圧検出部185の具体的回路について図2を参照しながら説明する。図2は、加算電圧検出部の回路図である。
加算電圧検出部185は、図2に示すように、乗算器21と、乗算器22と、加算器23とを備えている。
【0064】
[加算電圧検出部の各部]
乗算器21は、可変減衰器5の制御電圧V_AT1と第2の基準電圧V_Ref_AT1とを乗算する。尚、乗算器21では、乗算係数αが乗算される。
乗算器22は、可変移相器4の制御電圧V_PH1と第2の基準電圧V_Ref_PH1とを乗算する。尚、乗算器22では、乗算係数βが乗算される。
【0065】
加算器23は、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refと乗算器21の出力電圧と乗算器22の出力電圧を加算する。
加算器23は、乗算器21からの出力電圧を入力する端子には抵抗R1が接続され、乗算器22からの出力電圧を入力する端子には抵抗R2が接続され、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refを入力する端子には抵抗R3が接続され、抵抗R1,R2,R3を介してオペアンプの入力端子(−)に入力している。オペアンプの入力端子(+)は抵抗を介して接地され、オペアンプの出力は、抵抗Rを介して入力端子(−)に帰還している。
【0066】
[乗算回路:図3]
図3は、一般的な乗算回路のブロック図である。図3において係数Kは入力電圧V2に反比例して抵抗値を変化させることができる素子の抵抗係数である。
図3において、V1はFET(Field Effect Transistor)のソース(S)に接続し、V2はFETのゲート(G)に入力し、FETのドレイン(D)がオペアンプの入力端子(−)に接続し、入力端子(+)が接地され、オペアンプの出力が抵抗Rを介して入力端子(−)に帰還している。
【0067】
図3において、FETのソース(S)とドレイン(D)間の抵抗Rdsは、
Rds=K/V2 であり、
オペアンプからの出力電圧Voは、
Vo=−R/K*V1*V2 となる。
【0068】
また、図2において、αを乗算器21の乗算係数、βを乗算器22の乗算係数とすると、加算器23の出力電圧V_detは、(11)式で表される。
【数11】
【0069】
(11)式は、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refに可変減衰器5の制御電圧V_AT1に比例する電圧と可変移相器4の制御電圧V_PH1に比例する電圧を加算している。
例えば、キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refが(12)式に示すような可変減衰器5の制御電圧V_AT1のみの関数であり、かつ基準電圧V_Ref_PH1=0であるとして、(11)式は、(13)式のようになる。また、(11)式における一部分を(14)式に示すように、「ε」とおく。
【0070】
【数12】
【数13】
【数14】
【0071】
従来方法によるキャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refの最小値は、(12)式よりV_AT1 = δで与えられる。ここで、δは任意の値とする。
(13)式では電圧V_detの最小値が V_AT1 = δ − ε/2 で与えられるため、R1/Rの値により加算器23の出力電圧V_detの最小値を得る可変減衰器5の制御電圧を任意にずらすことが可能となる。
【0072】
歪除去ループ20の制御方法は従来通り、すなわち、歪除去ループ20が完全に機能しているとすることで、フィードフォワード歪補償方式の利得GffはV_AT1の値によらず一定となる。
キャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refが可変移相器4の制御電圧V_PH1のみの関数であるとした場合も、同様に最小値を得る可変減衰器5の制御電圧を任意にずらすことが可能となる。
【0073】
[可変減衰器5の制御電圧と加算回路23の出力電圧の関係:図4]
図4は、本実施の形態に係る可変減衰器5の制御電圧と加算回路23の出力電圧の関係を示す図である。
図4に示したように、実際にはキャリア検出器16の出力電圧Vdet_Refは、可変移相器4の制御電圧V_PH1と可変減衰器5の制御電圧V_AT1の関数として表されるので、(11)式に示す本実施の形態による加算器23の出力電圧の最小値をとる可変移相器4の制御電圧V_PH1と可変減衰器5の制御電圧V_AT1をR、R1、R2、R3、V_Ref_AT1、V_Ref_PH1を適切に設定することで任意にずらすことが可能となる。
【0074】
[実験結果]
次に、従来の自動制御範囲、従来の効率、従来の下側3次相互変調歪の関係、従来の上側3次相互変調歪の関係と比較しながら、本実施の形態における自動制御範囲、効率、下側3次相互変調歪の関係、上側3次相互変調歪の関係について図5〜図12を参照しながら説明する。
【0075】
[従来の自動制御範囲:図5]
図5は、従来の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
ここで、AT1は可変減衰器5における制御電圧のある基準電圧からの差を示す制御値番号であり、PH1は可変移相器4における制御電圧のある基準電圧からの差を示す制御値番号である。
このとき、歪除去ループ20は完全にキャンセルが取れている状態であり、AT1及びPH1を変化させてもフィードフォワード歪補償方式増幅器の利得及び出力電力は一定である。
【0076】
[従来の効率:図6]
また、図6は、従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
[従来の下側3次相互変調歪:図7]
図7は、従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪(IM3_low)の関係の実験値を示す図である。
[従来の上側3次相互変調歪:図8]
図8は、従来の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪(IM3_high)の関係の実験値を示す図である。
【0077】
[実施の形態の自動制御範囲:図9]
また、図9は、本実施の形態の制御方法におけるフィードフォワード歪補償方式の歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と自動制御範囲の関係の実験値を示す図である。
[実施の形態の効率:図10]
図10は、本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と効率の関係の実験値を示す図である。
【0078】
[実施の形態の下側3次相互変調歪:図11]
図11は、本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と下側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
[実施の形態の上側3次相互変調歪:図12]
図12は、本実施の形態の制御方法における歪検出ループ19の可変移送器4及び可変減衰器5の制御電圧を示す制御値番号と上側3次相互変調歪の関係の実験値を示す図である。
【0079】
図5から図8において、図15に示す従来の制御方法における自動制御範囲は、効率、下側3次相互変調歪、上側3次相互変調歪の最適範囲からずれた範囲となっている。
しかしながら、図10から図12において、図9に示す本実施の形態の制御方法における自動制御範囲は、効率、下側3次相互変調歪、上側3次相互変調歪の最適範囲のバランスがよい範囲となっている。
【0080】
[従来と本実施の形態の効率等比較:図13]
図13は、従来及び本実施の形態の制御方法における自動制御範囲での各項目の規格値からの差の平均値を示す図である。
従来の制御方法では、上側3次相互変調歪の取り得る平均値に余裕があるが、本実施の形態による制御方法では、下側及び上側3次相互変調歪の取り得る平均値はバランスが取れかつ効率も向上している結果となっている。
また、(11)式の計算を行う演算処理機能を備えることでも同様の効果が期待できる。
【0081】
[実施の形態の効果]
本増幅器によれば、フィードフォワード歪補償方式の性質を利用し、歪検出ループ19において、可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧V_PH1,V_AT1をずらして設定(変更)した場合に、制御回路18内の加算電圧検出部185からの出力電圧V_detを検出して、当該出力電圧が最小となるよう可変移相器4に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、可変減衰器5に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1を調整するようにしているので、消費電力を最小となるよう可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧V_PH1,V_AT1をずらして設定することができ、主増幅器6、誤差増幅器14の特性に応じて、最小消費電力での可変移相器4又は可変減衰器5に対する制御電圧を任意に設定できる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、フィードフォワード歪補償方式での全体の消費電力及び歪補償効果のバランスを任意に設定することができるフィードフォワード増幅器に好適である。
【符号の説明】
【0083】
1…入力端子、 2…出力端子、 3…分配器、 4…可変移相器、 5…可変減衰器、 6…主増幅器、 7…分配器、 8…遅延線、 9…合成器、 10…遅延線、 11…合成器、 12…可変移相器、 13…可変減衰器、 14…誤差増幅器、 15…パイロット信号発生器、 16…キャリア検出器、 17…パイロット信号検出器、 18…制御回路、 19…歪検出ループ、 20…歪除去ループ、 21…乗算器、 22…乗算器、 23…加算器、 24…温度検出部、 181…制御部、 182…記憶部、 182a…温度テーブル、 183…第1の基準電圧供給部、 184…第2の基準電圧供給部、 185…加算電圧検出部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主増幅器と、前記主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、前記主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、
前記歪検出ループが、
前記主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、
前記主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、
前記主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と前記主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、
前記第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、
前記検出したキャリア成分が最小となるよう前記第1の可変移相器と前記第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、
前記歪除去ループが、
前記第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、
前記主増幅器からの出力と前記誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、
前記第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、
前記検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう前記第2の可変移相器と前記第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、
前記第1の制御手段と前記第2の制御手段を備える制御回路が、
前記第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、前記第1の可変移相器への制御電圧V_PH1、前記第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1、前記第1の可変減衰器への制御電圧V_AT1、前記キャリア検出器の出力電圧Vdet_Ref、乗算係数α、乗算係数β、加算器における帰還抵抗R、前記加算器の入力端子に設けられた抵抗R1,R2,R3とした場合に、
前記加算器からの出力電圧V_detを以下の演算式で求め、
V_det=R1/R・α・V_AT1・V_Ref_AT1+R2/R・β・V_PH1・V_Ref_PH1+R3/R・Vdet_Ref
前記制御電圧V_PH1,V_AT1を変更した場合に、前記出力電圧V_detが最小となるようR,R1,R2,R3,V_Ref_PH1,V_Ref_AT1を調整することを特徴とするフィードフォワード増幅器。
【請求項2】
主増幅器の周囲の温度を検出し、温度情報を出力する温度検出部を備え、
制御回路は、検出温度に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を記憶する温度テーブルを有する記憶部と、
前記温度検出部からの温度情報に基づいて、前記温度テーブルを参照して、前記温度情報に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値から第1の基準電圧と第2の基準電圧を出力する制御部とを備えることを特徴とする請求項1記載のフィードフォワード増幅器。
【請求項3】
主増幅器と、前記主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、前記主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、
前記歪検出ループが、
前記主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、
前記主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、
前記主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と前記主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、
前記第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、
前記検出したキャリア成分が最小となるよう前記第1の可変移相器と前記第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、
前記歪除去ループが、
前記第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、
前記主増幅器からの出力と前記誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、
前記第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、
前記検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう前記第2の可変移相器と前記第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、
前記第1の制御手段と前記第2の制御手段を備える制御回路が、
前記第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と前記第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、前記第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と前記第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、前記第1の乗算器からの出力と、前記第2の乗算器からの出力と、前記キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、
前記第1の可変移相器への制御電圧、前記第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、前記加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう前記第1の基準電圧、前記第2の基準電圧を調整する制御部とを有することを特徴とするフィードフォワード増幅器。
【請求項1】
主増幅器と、前記主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、前記主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、
前記歪検出ループが、
前記主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、
前記主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、
前記主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と前記主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、
前記第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、
前記検出したキャリア成分が最小となるよう前記第1の可変移相器と前記第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、
前記歪除去ループが、
前記第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、
前記主増幅器からの出力と前記誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、
前記第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、
前記検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう前記第2の可変移相器と前記第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、
前記第1の制御手段と前記第2の制御手段を備える制御回路が、
前記第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧V_Ref_PH1、前記第1の可変移相器への制御電圧V_PH1、前記第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧V_Ref_AT1、前記第1の可変減衰器への制御電圧V_AT1、前記キャリア検出器の出力電圧Vdet_Ref、乗算係数α、乗算係数β、加算器における帰還抵抗R、前記加算器の入力端子に設けられた抵抗R1,R2,R3とした場合に、
前記加算器からの出力電圧V_detを以下の演算式で求め、
V_det=R1/R・α・V_AT1・V_Ref_AT1+R2/R・β・V_PH1・V_Ref_PH1+R3/R・Vdet_Ref
前記制御電圧V_PH1,V_AT1を変更した場合に、前記出力電圧V_detが最小となるようR,R1,R2,R3,V_Ref_PH1,V_Ref_AT1を調整することを特徴とするフィードフォワード増幅器。
【請求項2】
主増幅器の周囲の温度を検出し、温度情報を出力する温度検出部を備え、
制御回路は、検出温度に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値を記憶する温度テーブルを有する記憶部と、
前記温度検出部からの温度情報に基づいて、前記温度テーブルを参照して、前記温度情報に対応した第1の基準電圧の値と第2の基準電圧の値から第1の基準電圧と第2の基準電圧を出力する制御部とを備えることを特徴とする請求項1記載のフィードフォワード増幅器。
【請求項3】
主増幅器と、前記主増幅器の歪成分を検出する歪検出ループと、前記主増幅器の出力に検出された歪成分を注入して歪除去を行う歪除去ループとを有するフィードフォワード増幅器であって、
前記歪検出ループが、
前記主増幅器の入力にパイロット信号を供給するパイロット信号発生器と、
前記主増幅器の入力経路に設けられた第1の可変移相器と第1の可変減衰器と、
前記主増幅器への入力信号の一部を分岐した信号と前記主増幅器の出力の一部とを合成する第1の合成器と、
前記第1の合成器からの出力からキャリア成分を検出するキャリア検出器と、
前記検出したキャリア成分が最小となるよう前記第1の可変移相器と前記第1の可変減衰器を制御する第1の制御手段とを有し、
前記歪除去ループが、
前記第1の合成器からの出力を増幅する誤差増幅器と、
前記誤差増幅器の入力経路に設けられた第2の可変移相器と第2の可変減衰器と、
前記主増幅器からの出力と前記誤差増幅器からの出力を合成する第2の合成器と、
前記第2の合成器からの出力からパイロット信号を検出するパイロット信号検出器と、
前記検出したパイロット信号のレベルが最小となるよう前記第2の可変移相器と前記第2の可変減衰器を制御する第2の制御手段とを有し、
前記第1の制御手段と前記第2の制御手段を備える制御回路が、
前記第1の可変移相器に対応する第1の基準電圧と前記第1の可変移相器への制御電圧を乗算する第1の乗算器と、前記第1の可変減衰器に対応する第2の基準電圧と前記第1の可変減衰器への制御電圧を乗算する第2の乗算器と、前記第1の乗算器からの出力と、前記第2の乗算器からの出力と、前記キャリア検出器の出力を加算する加算器とを備える加算電圧検出部と、
前記第1の可変移相器への制御電圧、前記第1の可変減衰器への制御電圧を変更した場合に、前記加算電圧検出部からの出力電圧が最小となるよう前記第1の基準電圧、前記第2の基準電圧を調整する制御部とを有することを特徴とするフィードフォワード増幅器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−182005(P2011−182005A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−41463(P2010−41463)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】
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