説明

フィールド機器

【課題】膨大な工数及び費用を必要とすることなく無線通信を実現することができるフィールド機器を提供する。
【解決手段】無線フィールド機器1aは、表示部21を駆動する表示ドライバ22を有するLCDボードB2と、表示ドライバ22を制御するセンサ制御部14を有するセンサボードB1と、LCDボードB2の表示ドライバ22とセンサボードB1のセンサ制御部14とを接続する通信ラインL1とを備えており、LCDボードB2には、通信ラインL1に並列接続されてセンサボードB1のセンサ制御部14との間で通信ラインL1を介したデータの授受が可能な無線制御部23が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントや工場等に設置されるフィールド機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラントや工場等においては、高度な自動操業を実現すべく、フィールド機器と呼ばれる現場機器(測定器、操作器)と、これらを制御する制御装置とが通信手段を介して接続された分散制御システム(DCS:Distributed Control System)が構築されている。このような分散制御システムの基礎をなす通信システムは、有線によって通信を行うものが殆どであったが、近年においては、ISA100.11a等の無線通信規格に準拠した無線によって通信を行うものも実現されている。
【0003】
上記のフィールド機器は、設計の容易化及びにコスト低減を図るために、機器で実現される機能のうちの1つ又は幾つかの機能を実現するボード(基板)を複数組み合わせて構成されるのが一般的である。例えば、無線通信が可能なフィールド機器(無線フィールド機器)は、物理量(温度、圧力等)の測定や機器の全体的な制御を行う機能を実現するセンサボード、無線通信機能を実現する無線ボード、及びLCD(Liquid Crystal Display:液晶表示装置)の表示制御を行う機能を実現するLCDボードを備える構成である。
【0004】
上記のセンサボード及び無線ボードは接続ケーブルによって互いに接続され、これらボード間において接続ケーブルを介した各種データ(例えば、無線ボードから送信すべきデータや無線ボードで受信されたデータ)の授受が行われる。また、上記のセンサボード及びLCDボードも接続ケーブルによって互いに接続され、LCDに表示させるべき表示データ等が接続ケーブルを介してこれらボード間で授受される。尚、以下の特許文献1には、信号伝送器に設けられる表示器への表示方式を改良した従来の信号伝送器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−6287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、通信機能を備えない従来のフィールド機器、或いは、有線による通信機能を備えるフィールド機器から、無線通信に対応した無線フィールド機器を開発する場合には、上述した無線ボードを追加して、追加した無線ボードを接続ケーブルによってセンサボードに接続すれば良いと考えられる。しかしながら、フィールド機器は、プラント等に設置される組み込み機器であるため、設置スペースの制約を受ける関係から外形形状や大きさが先に規定されてしまう。このため、新たに追加する無線ボードを収容するスペースを確保することが困難であるという問題がある。
【0007】
無線ボードを新たに追加することができない場合には、本来のセンサボードの機能に無線ボードで実現される無線通信機能を加えた新たなセンサボードを設計する必要があると考えられる。しかしながら、このような新たなセンサボードを設計するには、ハードウェアの変更(例えば、無線通信を実現する集積回路の追加)のみならず、ソフトウェアの変更(例えば、ファームウェアの変更)が必要になるため設計に長時間を要してしまい、また、設計が終了した後には電気的な評価を行う時間も必要になる。このように、新たなセンサボードを設計しようとすると、膨大な工数と費用が必要になるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、膨大な工数及び費用を必要とすることなく無線通信を実現することができるフィールド機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のフィールド機器は、表示装置(21)を駆動する駆動部(22)を有する第1基板(B2)と、前記駆動部を制御する制御部(14)を有する第2基板(B1)と、前記第1基板に設けられた前記駆動部と前記第2基板に設けられた前記制御部とを接続する接続線(L1)とを備えるフィールド機器(1a,1b)において、前記第1基板に設けられ、前記接続線に並列接続されて前記第2基板に設けられた前記制御部との間で前記接続線を介したデータの授受が可能な無線制御部(23)を備えることを特徴としている
この発明によると、第1基板に設けられた駆動部と第2基板に設けられた制御部との間で接続線を介したデータの送受信が行われるとともに、第1基板に設けられて接続線に並列接続された無線制御部と第2基板に設けられた制御部との間で接続線を介したデータの送受信が行われる。
また、本発明のフィールド機器は、前記制御部が、前記接続線を介した前記駆動部への表示用データの送信を定期的に行っており、前記無線制御部が、前記制御部による前記表示用データの送信が行われない空き時間を利用して、前記接続線を介した前記制御部との間のデータの授受を行うことを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記無線制御部が、前記制御部から前記接続線を介して前記駆動部に送信される表示用データを、無線通信により送信可能なデータ形式に変換する処理を行うことを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記制御部が、前記表示用データを前記駆動部に送信する場合には、前記表示用データの送信に先立って前記駆動部を選択する旨を示す選択信号(SL)を前記駆動部に送信し、前記駆動部からの送信要求信号(RQ)を受信した場合には、前記選択信号を前記駆動部に送信してから前記駆動部からのデータを受信することを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記無線制御部が、前記接続線のうちの前記制御部へのデータ送信に用いられる送信用信号線のレベルを変化させることによって前記制御部に対するデータの送信要求を行うことを特徴としている。
また、本発明のフィールド機器は、前記制御部が、前記駆動部に対する前記選択信号の送信を行っておらず、且つ、前記駆動部からの前記送信要求信号を受信していない状態で、前記送信用信号線のレベル変化が生じた場合に、前記無線制御部からのデータを受信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、表示装置を駆動する駆動部を有する第1基板に対し、第1基板に設けられた駆動部と第2基板に設けられた制御部とを接続する接続線に並列接続されて、第2基板に設けられた制御部との間で接続線を介したデータの授受が可能な無線制御部を設けたため、膨大な工数及び費用を必要とすることなく無線通信を実現することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態によるフィールド機器が用いられる無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態によるフィールド機器の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図4】本発明の一実施形態によるフィールド機器の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態によるフィールド機器について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態によるフィールド機器が用いられる無線通信システムの全体構成を示すブロック図である。図1に示す通り、無線通信システムCSは、無線フィールド機器1a,1b(フィールド機器)、無線ゲートウェイ2、及びホスト装置3を備えており、無線通信ネットワークN1及びバックボーンネットワークN2を介した通信が可能である。尚、図1では2つの無線フィールド機器1a,1bを示しているが、無線フィールド機器の数は任意である。
【0013】
無線フィールド機器1a,1bは、例えば流量計や温度センサ等のセンサ機器、流量制御弁や開閉弁等のバルブ機器、ファンやモータ等のアクチュエータ機器、その他のプラントや工場に設置される機器であり、インダストリアル・オートメーション用無線通信規格であるISA100.11aに準拠した無線通信を行う。尚、無線フィールド機器1a,1bの内部構成の詳細については後述する。
【0014】
無線ゲートウェイ2は、無線フィールド機器1a,1bが接続される無線通信ネットワークN1と、ホスト装置3が接続されるバックボーンネットワークN2とを接続し、無線フィールド機器1a,1bとホスト装置3との間で送受信される各種データの中継を行う。この無線ゲートウェイ2は、上記の無線通信規格ISA100.11aに準拠した無線通信が可能であり、無線通信ネットワークN1を介して行われる無線通信の制御や、無線フィールド機器を無線通信ネットワークN1に参入させるか否かの参入処理等も行う。
【0015】
ホスト装置3は、有線ネットワークであるバックボーンネットワークN2に接続されており、例えば無線通信システムCSの管理者に操作される装置である。このホスト装置3は、管理者の操作に応じて、例えば無線ゲートウェイ2との間で通信を行って、無線フィールド機器1a,1bに関する情報(測定データ、異常を示す情報(アラーム)等)を取得して無線フィールド機器1a,1bの管理に用いる。
【0016】
次に、無線フィールド機器1a,1bの内部構成について詳細に説明する。図2は、本発明の一実施形態によるフィールド機器の要部構成を示すブロック図である。尚、無線フィールド機器1a,1bは同様の構成であるため、以下では無線フィールド機器1aのみについて説明し、無線フィールド機器1bについての説明は省略する。また、図2では、無線フィールド機器1aに設けられた構成のうち、本発明の説明を行う上で必要な構成のみを図示している。
【0017】
図2に示す通り、無線フィールド機器1aは、センサボードB1(第2基板)、LCDボードB2(第1基板)、及びLCD通信ラインL1(接続線)を備える。センサボードB1は、物理量(温度、圧力等)の測定や無線フィールド機器1aの動作を統括制御する機能を実現する基板である。これに対し、LCDボードB2は、センサボードB1の制御の下で、LCD(Liquid Crystal Display:液晶表示装置)に対する表示や無線通信の機能を実現する基板である。
【0018】
LCD通信ラインL1は、センサボードB1とLCDボードB2とを接続する接続線であって、例えば送信用信号線、受信用信号線、クロック信号線等の複数の信号線を有する通信ラインである。このLCD通信ラインL1を介して、センサボードB1とLCDボードB2との間では、例えばSPI(Serial Peripheral Interface)通信等の同期式のシリアル通信が行われる。
【0019】
上記のセンサボードB1には、機器固有処理部11、フラッシュメモリ12、強誘電体メモリ13、センサ制御部14(制御部)、電源部15、及びコネクタCが設けられている。機器固有処理部11は、センサ制御部14の制御の下で無線フィールド機器1aに固有の処理を行う。ここで、無線フィールド機器1aに固有の処理とは、例えば温度の測定処理、バルブの開閉処理、アクチュエータの操作処理等である。本実施形態では、機器固有処理部11には温度センサが設けられており、上記の固有の処理として温度の測定処理が行われるものとする。
【0020】
フラッシュメモリ12は、不揮発性の半導体メモリであって、無線フィールド機器1aの動作を規定するプログラム(図示省略)を格納する。強誘電体メモリ13は、強誘電体の履歴現象(ヒステリシス)を利用した不揮発性の半導体メモリであって、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)とも呼ばれ、無線フィールド機器1aで用いられる各種のパラメータを格納する。
【0021】
センサ制御部14は、センサボードB1に設けられた各ブロックに加えて、LCDボードB2に設けられた各ブロックを制御することによって、無線フィールド機器1aの動作を統括的に制御する。具体的に、センサ制御部14は、機器固有処理部11を制御して温度の測定結果を取得する制御、コネクタCを介したLCDボードB2との間の通信制御、及び無線フィールド機器1aの状態を監視する制御等を行う。
【0022】
尚、センサ制御部14は、上記のLCDボードB2との間で行われる通信を通じて、LCDボードB2に設けられる表示ドライバ22及び無線制御部23の制御も行う。例えば、LCDボードB2に設けられた表示部21に表示させるべきデータ(表示用データ)を表示ドライバ22に定期的に送信し、その表示用データに応じた表示を表示ドライバ22に表示させる制御を行う。尚、上記の表示用データは、プロセス値(例えば、温度の測定結果を示す情報)、プロセス値に付随する情報(例えば、単位を示す情報)、及びアラームを示す情報等を含むデータである。
【0023】
電源部15は、例えばリチウムイオン電池等の二次電池を備えており、無線フィールド機器1aを動作させるために必要な電力をセンサボードB1及びLCDボードB2の各部に供給する。コネクタCは、センサボードB1をLCDボードB2に接続するための接続端子であって、LCD通信ラインL1の一端が接続される。センサ制御部14は、このコネクタCを介して通信ラインL1に接続される。
【0024】
上記のLCDボードB2には、表示部21(表示装置)、表示ドライバ22(駆動部)、無線制御部23、無線通信部24、アンテナ25、及びコネクタCが設けられている。ここで、表示部21及び表示ドライバ22は、LCDボードB2の本来の機能である表示機能を実現する構成であり、無線制御部23、無線通信部24、及びアンテナ25は、無線通信機能を実現する構成である。LCDボードB2は、部品点数が少なく、空きスペースが多いため、本来の表示機能を実現する構成に加えて無線通信機能を実現する構成を設けている。
【0025】
表示部21は、セグメント表示或いはドット・マトリクス表示が可能なLCD等の表示装置を備えており、表示ドライバ22の駆動に応じた表示を行う。表示ドライバ22は、センサボードB1に設けられたセンサ制御部14によって制御され、センサ制御部14から送信されるデータ(表示用データ)の内容が表示部21に表示されるように表示部21を駆動する。
【0026】
この表示ドライバ22は、通信ラインL1に対し、センサ制御部14に送信すべき送信データTx及びデータ送信要求信号RQ(送信要求信号)を出力する。ここで、表示ドライバ22から出力される送信データTxは、例えば表示ドライバ22に異常が生じた旨をセンサ制御部14に通知するためのデータである。また、データ送信要求信号RQは、センサ制御部14に対し、センサ制御部14への送信データTxの送信を要求する信号である。
【0027】
また、表示ドライバ22には、センサ制御部14から通信ラインL1を介して送信されてくるクロック信号CK、受信データRx、及びチップセレクト信号SL(選択信号)が入力される。ここで、クロック信号CKは、無線フィールド機器1aに設けられる各ブロックの動作を同期させるために用いられる一定周波数の信号である。表示ドライバ22に入力される受信データRxは、センサ制御部14から送信されて通信ラインL1を介して送信されてくる表示用データである。チップセレクト信号SLは、センサ制御部14が表示ドライバ22を選択する旨を示す信号である。
【0028】
無線制御部23は、図1に示す無線通信ネットワークN1を介した無線ゲートウェイ2との間の無線通信を実現すべく、センサ制御部14の制御の下で無線通信部24を制御する。この無線制御部23は、表示ドライバ22が接続された通信ラインL1(正確には、LCDボードB2に設けられたコネクタCと表示ドライバ22との間の通信ライン)に並列接続され、言い換えれば、表示ドライバ22と無線制御部23とは並列に通信ラインL1に接続され、センサ制御部14との間で通信ラインL1を介したデータの送受信が可能である。
【0029】
ここで、センサ制御部14から通信ラインL1を介した表示ドライバ22への表示用データの送信は定期的に行われる。無線制御部23は、表示ドライバ22が接続されている通信ラインL1に並列接続されているため、表示用データの送信が行われている間においては、センサ制御部14との間の通信を行うことはできない。このため、無線制御部23は、センサ制御部14による表示用データの送信が行われない空き時間を利用して、通信ラインL1を介したセンサ制御部14との間のデータの送受信を行う。
【0030】
この無線制御部23は、センサ制御部14に送信すべき送信データTxを通信ラインL1に出力する。ここで、無線通信部23から出力される送信データTxは、例えば図1に示す無線ゲートウェイ2から送信されて無線通信部24で受信されたデータである。また、無線制御部23には、センサ制御部14から通信ラインL1を介して送信されてくるクロック信号CK及び受信データRxが入力される。無線制御部23に入力される受信データRxは、上記の表示ドライバ22に送信される表示用データ、或いは無線通信部24から図1に示す無線ゲートウェイ2に送信すべきデータである。
【0031】
尚、無線制御部23は、上記の表示ドライバ22に送信される表示用データが入力された場合には、そのデータを無線通信部24から送信可能なデータ形式に変換する処理も行う。これは、表示部21に表示される表示用データの内容(例えば、温度の測定結果)を、図1に示す無線通信ネットワークN1を介して無線ゲートウェイ2に送信するためである。
【0032】
無線通信部24は、無線制御部23の制御の下で、無線通信(図1に示す無線通信ネットワークN1を介した無線ゲートウェイ2との間の無線通信)を実現する。つまり、無線制御部23から出力されるデータに応じた無線信号を生成してアンテナ25から送信するとともに、アンテナ25で受信された無線信号を復調等して無線制御部23に出力する。アンテナ25は、例えばロッドアンテナであり、無線信号を送信するとともに、送信されてきた無線信号を受信する。
【0033】
次に、上記構成における無線フィールド機器1aの動作について説明する。図3,図4は、本発明の一実施形態によるフィールド機器の動作を説明するためのタイミングチャートである。ここで、本実施形態における無線フィールド機器1aの動作は、センサ制御部14と表示ドライバ22との間でデータの送受信が行われる動作(以下、「第1送受信動作」という)と、センサ制御部14と無線制御部23との間でデータの送受信が行われる動作(以下、「第2送受信動作」という)とに大別される。
【0034】
上記の第1送受信動作のうち、センサ制御部14が表示ドライバ22に対して表示用データを送信する動作は定期的に(例えば、数秒程度の時間間隔で)行われ、表示ドライバ22がセンサ制御部14に対してデータを送信する動作は不定期に行われる。これに対し、上記の第2送受信動作は、第1送受信動作が行われないタイミングで(空き時間に)行われる。図3に示すタイミングチャートは上記の第1送受信動作を説明するものであり、図4に示すタイミングチャートは上記の第2送受信動作を説明するものである。以下、これら図3,図4を参照して第1,第2送受信動作を順に説明する。
【0035】
〈第1送受信動作〉
センサ制御部14から表示ドライバ22に対して表示用データが送信される場合には、図3に示す通り、まずチップセレクト信号SLがセンサ制御部14によって「L(ロー)」レベルにされて表示ドライバ22が選択される。チップセレクト信号SLが「L」レベルになることにより、表示ドライバ22は、センサ制御部14からの表示用データの受信が可能な状態になる。
【0036】
次に、クロック信号CKと表示用データとしての受信データRxが、センサ制御部14から通信ラインL1を介して表示ドライバ22に送信される。この受信データRxを受信すると、表示ドライバ22は、表示部21を駆動して受信データRxの内容を表示部21に表示させる。これにより、例えば機器固有処理部11で測定された温度の測定結果が表示部21に表示されることになる。
【0037】
ここで、無線制御部23は、表示ドライバ22が接続されている通信ラインL1に並列接続されているため、センサ制御部14から表示ドライバ22に送信された表示用データとしての受信データRxが無線制御部23にも受信される。無線通信部23で受信された受信データRxは、データ形式が変換された上で無線通信部24に出力され、無線通信部24の処理によって無線ゲートウェイ2に送信される。以上の動作が定期的に繰り返されることにより、表示部21の表示が定期的に更新されるとともに、表示用データの内容が無線ゲートウェイ2に定期的に送信される。
【0038】
表示ドライバ22からセンサ制御部14に対してデータが送信される場合には、図3に示す通り、まずデータ送信要求信号RQが表示ドライバ22によって一時的に「L」レベルにされる。尚、データ送信要求信号RQを一時的に「L」レベルにする処理は、チップセレクト信号SLが「H(ハイ)」レベルである場合(つまり、センサ制御部14による表示ドライバ22の選択が行われていない場合)に行われる。
【0039】
データ送信要求信号RQが「L」レベルになると、チップセレクト信号SLがセンサ制御部14によって「L」レベルにされて表示ドライバ22が選択される。次いで、クロック信号CKがセンサ制御部14から通信ラインL1を介して表示ドライバ22に送信され、このクロック信号CKに同期して表示ドライバ22から通信ラインL1を介してセンサ制御部14に送信データTxが送信される。
【0040】
〈第2送受信動作〉
センサ制御部14から無線制御部23に対してデータが送信される場合には、図4に示す通り、データ送信要求信号RQ及びチップセレクト信号SLが共に「H」レベルであるときに、クロック信号CKと送信すべきデータとしての受信データRxが、センサ制御部14から通信ラインL1を介して無線制御部23に送信される。無線通信部23で受信された受信データRxは、無線通信部24に出力されて無線通信部24の処理によって無線ゲートウェイ2に送信される。
【0041】
ここで、前述した通り、センサ制御部14から表示ドライバ22への表示用データの送信は、チップセレクト信号SLが「L」レベルである場合に行われていた。また、データ送信要求信号RQが一時的に「L」レベルにならなければ、表示ドライバ22からセンサ制御部14へのデータ送信も行われない。従って、データ送信要求信号RQ及びチップセレクト信号SLが共に「H」レベルである場合には、通信ラインL1は使用されていない状態であるため、かかる場合にセンサ制御部14から無線制御部23に対するデータの送信を行うこととしている。尚、チップセレクト信号SLが「H」レベルであるため、センサ制御部14から無線制御部23に送信されるデータが、表示ドライバ22に受信されることはない。
【0042】
無線制御部23からセンサ制御部14に対してデータが送信される場合には、図4に示す通り、まずデータ送信要求信号RQ及びチップセレクト信号SLが共に「H」レベルであるときに、送信データTxの送信に用いられる送信用信号線が無線制御部23によって「L」レベルにされる。これにより、センサ制御部14は、無線制御部23からのデータの受信が可能な状態になる。次いで、クロック信号CKがセンサ制御部14から通信ラインL1を介して無線制御部23に送信され、このクロック信号CKに同期して無線制御部23から通信ラインL1を介してセンサ制御部14に送信データTxが送信される。
【0043】
このように、センサ制御部14から無線制御部23に対するデータ送信、及び、無線制御部23からセンサ制御部14に対するデータ送信は何れも、データ送信要求信号RQ及びチップセレクト信号SLが共に「H」レベルであって、通信ラインL1は使用されていない状態で行われる。このため、センサ制御部14と無線制御部23との間における通信ラインL1を介したデータの送受信を、センサ制御部14と表示ドライバ22との間における通信ラインL1を介した表示用データ等の送受信と混信することなく行うことができる。
【0044】
以上の通り、本実施形態では、表示部21及び表示ドライバ22等の表示機能を実現する構成に加えて、無線制御部23、無線通信部24、及びアンテナ25等の無線通信機能を実現する構成をLCDボードB2に搭載している。そして、センサボードB1とLCDボードB2とを接続する通信ラインL1に無線制御部23を並列接続して、センサボードB1に設けられたセンサ制御部14との間で通信ラインL1を介したデータの授受を可能にしている。これにより、無線通信を実現するセンサボードB1を新たに設計する必要が無く、従来のセンサボードB1を殆ど変更することなく用いることができるため、膨大な工数及び費用を必要とすることなく無線通信を実現することができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態によるフィールド機器について説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されることなく、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、上記実施形態では、無線通信機能を追加する例について説明したが、フィールド機器1a,1bで実装されていない通信プロトコルで通信を行う機能を追加する場合にも本発明を適用することができる。ここで、フィールド機器1a,1bで実装されていない通信プロトコルとしては、例えばHART(Highway Addressable Remote Transducer:登録商標)、ファンデーションフィールドバス(Foundation Fieldbus:登録商標)、プロフィバス(PROFIBUS:登録商標)、又はBRAIN等のプロセス工業用の汎用通信プロトコルが挙げられる。
【符号の説明】
【0046】
1a,1b 無線フィールド機器
14 センサ制御部
21 表示部
22 表示ドライバ
23 無線制御部
B1 センサボード
B2 LCDボード
L1 通信ライン
RQ データ送信要求信号
SL チップセレクト信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示装置を駆動する駆動部を有する第1基板と、前記駆動部を制御する制御部を有する第2基板と、前記第1基板に設けられた前記駆動部と前記第2基板に設けられた前記制御部とを接続する接続線とを備えるフィールド機器において、
前記第1基板に設けられ、前記接続線に並列接続されて前記第2基板に設けられた前記制御部との間で前記接続線を介したデータの授受が可能な無線制御部を備えることを特徴とするフィールド機器。
【請求項2】
前記制御部は、前記接続線を介した前記駆動部への表示用データの送信を定期的に行っており、
前記無線制御部は、前記制御部による前記表示用データの送信が行われない空き時間を利用して、前記接続線を介した前記制御部との間のデータの授受を行う
ことを特徴とする請求項1記載のフィールド機器。
【請求項3】
前記無線制御部は、前記制御部から前記接続線を介して前記駆動部に送信される表示用データを、無線通信により送信可能なデータ形式に変換する処理を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のフィールド機器。
【請求項4】
前記制御部は、前記表示用データを前記駆動部に送信する場合には、前記表示用データの送信に先立って前記駆動部を選択する旨を示す選択信号を前記駆動部に送信し、
前記駆動部からの送信要求信号を受信した場合には、前記選択信号を前記駆動部に送信してから前記駆動部からのデータを受信する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3記載のフィールド機器。
【請求項5】
前記無線制御部は、前記接続線のうちの前記制御部へのデータ送信に用いられる送信用信号線のレベルを変化させることによって前記制御部に対するデータの送信要求を行うことを特徴とする請求項4記載のフィールド機器。
【請求項6】
前記制御部は、前記駆動部に対する前記選択信号の送信を行っておらず、且つ、前記駆動部からの前記送信要求信号を受信していない状態で、前記送信用信号線のレベル変化が生じた場合に、前記無線制御部からのデータを受信することを特徴とする請求項5記載のフィールド機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−62589(P2013−62589A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198316(P2011−198316)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】