説明

フイルム剥離装置

【課題】フイルム付シートの移送通路途中の狭い空間にでも容易に組み込むことができる据付スペース幅の小さなフイルム剥離装置を提供する。
【解決手段】仮接合ステーション5と積層ステーション6間の剥離開始ステーションAから剥離完了ステーションBへ、第2搬送テーブル13を第2搬送テーブル13上のフイルム付シート2の剥離始端側隅角部2aから剥離終端側隅角部2bの対角線に沿う方向へ移動可能に設ける。また、剥離開始ステーションAにフイルム剥離装置1の剥離ヘッド25を設ける。剥離ヘッド25の粘着テープをフイルム26の剥離始端側隅角部26aに接着し、第2搬送テーブル13をフイルム付シート2の対角線に沿う方向へ移動し、剥離ヘッド25によりフイルム26の剥離始端側隅角部26aから剥離終端側隅角部26bへ向けてフイルム26を剥離するように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、積層チップコンデンサー等の積層電子部品を製造するセラミックグリーンシート等のフイルム付シートからフイルムを剥離するフイルム剥離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフイルム剥離装置には、特許文献1〜4に記載のものが提案されている。
特許文献1には、グリーンセラミックス基板を保持する保持台の上方位置に水平方向に移動できる台車を設け、その台車にフイルムの耳を剥離する粘着ローラを備えたアームと、粘着ローラにより剥離されたフイルムの耳を開閉爪で把持して斜め上方へ引き上げる引上げ機構とを設け、粘着ローラをフイルム付基板の端部に接触させた状態で台車を移動させ、粘着ローラが回転することで基板端部のフイルムの耳を剥離し、そのフイルムの耳を引上げ機構の開閉爪で把持して引上げると共に台車を移動させてフイルムを剥離し、開閉爪がフイルムの把持を開放するようにしたフイルム剥離装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、ドラムを回転させる回転駆動機構と、ドラムを周速と等速度で径方向に移動させるリニア駆動機構と、ドラムを上下させる上下動機構とを備え、ドラムの円周面の一部に設けた平坦な吸着面をセラミックグリーンシートの端縁部に当ててその端縁部を吸着し、その状態でドラムを他方の端縁部に向かって移動させると共に転がり回転させ、キャリアフイルムをドラムの周面で押えた状態でそのキャリアフイルムを剥離し、吸着面での吸着を解除してキャリアフイルムを廃棄するようにしたキャリアフイルム剥離装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、フイルム付シート体を固定支持する支持手段と、粘着部を有し、シート体のフイルム端部に接着した状態で振動しながら回転してフイルムを巻き取る剥しローラと、剥しローラをシート体に沿って移動させる走査スライダと、剥しローラを上下動させる上下スライダと、剥しローラからフイルムを回収する回収ローラを備え、シート体端部のフイルムに接着させた剥しローラを回転させてフイルムを巻き取り、剥しローラを逆転させてフイルムを巻戻して回収ローラに挟持させ、回収ローラの回転によってフイルムを剥しローラの粘着部から剥離して回収するようにしたフイルム剥離装置が記載されている。
【0005】
特許文献4には、シートを固定するための保持部材と、粘着性の外周面を有してキャリアフイルムの一部をセラミックグリーンシートから剥離する剥がし代形成用粘着ロールと、粘着性の外周面を有してキャリアフイルムをセラミックグリーンシートから除去するための除去用粘着ロールから成るロール部と、ロール部のシートに対する相対的な位置を調整する位置調整機構とを備え、キャリアフイルムに押し当てた粘着ロールを転動させることでキャリアフイルムの一部を巻取って剥離する部分剥離工程と、粘着ロールを転動の逆向きに回転させてキャリアフイルムから離す工程とを含む剥がし代形成工程と、剥がし代の領域のうち端部を避けた位置に粘着ロールを押し当てて回転させてキャリアフイルムを引き剥がすキャリアフイルム除去工程と、セパレータにより粘着ロールの外周面からキャリアフイルムを剥ぎ取って回収筒に回収する工程を行うキャリアフイルム剥離装置が記載されている。
【0006】
【特許文献1】実開平5−16220号公報
【特許文献2】特開平6−255880号公報
【特許文献3】特開平9−267423号公報
【特許文献4】特開平2004−17623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のものでは、粘着ローラをグリーンセラミックス基板の端部に接触させた状態で大型の台車を移動させることで粘着ローラを回転させてフイルムの耳を剥離するようになっているので、フイルム剥離の為に台車移動用の大きなスペースを必要とし、装置が大嵩になる問題があり、また、基板の粘着ローラ接着部に台車移動方向の力が作用して基板を損傷させたり変形させる問題があり、しかも、フイルムの耳を開閉爪で把持して引上げるので、装置の構造が複雑になったり誤作動を起こし易い問題がある。
【0008】
特許文献2に記載のものでは、ドラムの吸着面でセラミックグリーンシートの端縁部を吸着した状態でドラムを他方の端縁部に向かって移動させると共に転がり回転させてキャリアフイルムを剥離するようにしているので、ドラムをシートの全長に亘って転がす為の大きなスペースを必要とし、装置が大嵩になる問題があり、また、ドラムの移動と回転によってセラミックグリーンシートを損傷させ易い問題がある上に、ドラムの移動と回転を同期させるための装置が複雑になってコスト高になる問題がある。
【0009】
特許文献3に記載のものでは、特許文献2と同様に、フイルム付シート体の端部に接着させた剥しローラを回転させると共にシート体に沿って移動させてフイルムを巻き取るようにしているので、剥しローラをシート体に沿って移動させる為の大きなスペースを必要とし、装置が大嵩になる問題があり、また、剥しローラの回転と移動によってシート体を損傷させ易い問題がある上に、剥しローラの移動と回転を同期させるための装置が複雑になってコスト高になり、しかも、剥しローラの粘着力の低下により誤作動を起こし易い問題がある。
【0010】
特許文献4に記載のものでは、キャリアフイルムに押し当てた粘着ロールをセラミックグリーンシートの移動により転動させることでキャリアフイルムの端部を剥がした後、キャリアフイルムの端部を避けた部分に粘着ロールを再び押し当て、セラミックグリーンシートの移動により転動させることでキャリアフイルムの全体を巻取って剥離するようにしているので、セラミックグリーンシートの移動通路の途中に剥離したキャリアフイルムを処理する為の大きなスペースを必要とし、装置が大嵩になる問題があり、また、特許文献1と同様に、セラミックグリーンシートの粘着ロール接着部にシート移動方向の力が作用してシートを損傷させたり変形させる問題がある。また、剥がし代形成用粘着ロールと除去用粘着ロールとでキャリアフイルムを剥離するようにしているので、工程が複雑になって処理時間が長くなったり機構が複雑になる問題があり、しかも、セパレータによって粘着ロールの外周面からキャリアフイルムを剥ぎ取るようにしているので、粘着ロールからのキャリアフイルムの剥ぎ取りが不安定で誤作動を起こし易い問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記各特許文献の課題に鑑み、フイルム付シートの移送通路途中の狭い空間にでも容易に組み込むことができる据付スペース幅の小さなフイルム剥離装置を提供することや、シートに損傷や変形を加えることなくフイルムを円滑に確実に剥離できるようにした簡易な構成のフイルム剥離装置を提供することや、シートから剥離したフイルムを容易に回収できるようにしたフイルム剥離装置を提供すること等を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願の請求項1の発明は、前記課題を達成するため、テーブル上に保持した矩形のフイルム付シートのフイルムをフイルム把持手段を用いてシートから剥離するようにしたフイルム剥離装置において、テーブルをそのフイルム付シートの剥離終端側隅角部から対角位置の剥離始端側隅角部方向へテーブル移動装置によって剥離開始ステーションから剥離完了ステーションへ移動可能に設けると共に、剥離開始ステーションに位置されるテーブルの移動軌跡の上方に剥離ヘッドを設け、その剥離ヘッドにフイルム把持手段をテーブル上のフイルム付シートの剥離始端側隅角部のフイルムを把持可能でかつフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へフイルム把持手段移動装置によって所定量移動可能に備え、フイルム把持手段がフイルム把持手段移動装置によってフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ所定量移動した後にテーブルがテーブル移動装置によって剥離開始ステーションから剥離完了ステーションへ移動してフイルムを剥離するようにして成ることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明は、フイルム把持手段は、フイルム付シートの剥離始端側隅角部のフイルム上に接着可能な粘着体であり、フイルム把持手段移動装置によって粘着体を移動可能に構成して成ることを特徴とする。
【0014】
また、請求項3の発明は、剥離ヘッドをテーブルの移動軌跡を横切る方向へ移動可能とするヘッド移動装置備え、その剥離ヘッドの一方の移動端側に剥離後のフイルムを収容可能なフイルム回収容器を備え、シートから剥がされたフイルムをヘッド移動装置によってフイルム回収容器上に搬送して回収するようにしたことを特徴とする。
【0015】
また、請求項4の発明は、剥離ヘッドのヘッド本体にフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ移動可能に備えた移動体とその移動体をフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ所定量移動可能な直線駆動装置によってフイルム把持手段移動装置を構成し、その移動体に粘着体を備えて成ることを特徴とする。
【0016】
また、請求項5の発明は、粘着体を下側が粘着面の粘着テープで構成し、その粘着テープの剥離終端側隅角部側の端部をヘッド本体に、粘着テープの剥離始端側隅角部側の端部を移動体に夫々保持させ、粘着テープをフイルムの剥離始端側隅角部に接着させた状態で移動体を剥離終端側隅角部方向へ移動させて粘着テープの剥離始端側隅角部側の端部のみを剥離終端側隅角部方向へ所定量移動可能にしたことを特徴とする。
【0017】
また、請求項6の発明は、下側が粘着面の粘着テープの一端側に繋がる粘着テープ巻付体を回転可能に支持するテープ支持装置を移動体に、粘着テープの他端側に繋がる粘着テープ巻取体を巻取り回転可能な巻取り装置をヘッド本体に夫々備え、粘着テープ巻取体を巻取り回転させて粘着テープ巻付体の粘着テープを引き出し、フイルム付シートの剥離始端側隅角部上に接着させる粘着テープの接着部を新しくできるようにしたことを特徴とする。
【0018】
また、請求項7の発明は、剥離ヘッドに、粘着テープの接着位置より剥離終端側の粘着テープが下側へ弛むのを防止する弛み防止手段を備えて成ることを特徴とする。
【0019】
また、請求項8の発明は、剥離ヘッドに、粘着テープの剥離始端側部分を剥離終端側方向へ移動させることでフイルム付シートのフイルムの剥離始端側隅角部がシートから剥がれて折り返されたことを検出可能な検出器を備えて成ることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本願の請求項1の発明は、テーブルをそのフイルム付シートの剥離終端側隅角部から対角位置の剥離始端側隅角部方向へテーブル移動装置によって剥離開始ステーションから剥離完了ステーションへ移動可能に設けると共に、剥離開始ステーションに位置されるテーブルの移動軌跡の上方に剥離ヘッドを設け、その剥離ヘッドにフイルム把持手段をテーブル上のフイルム付シートの剥離始端側隅角部のフイルムを把持可能でかつフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へフイルム把持手段移動装置によって所定量移動可能に備え、フイルム把持手段がフイルム把持手段移動装置によってフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ所定量移動した後にテーブルがテーブル移動装置によって剥離開始ステーションから剥離完了ステーションへ移動してフイルムを剥離するようにしてあるので、剥離ヘッドやヘッド移動装置のテーブル移動軌跡方向の据付スペース幅を小さくでき、テーブル移動軌跡上方の狭いスペース幅に装置を容易に組む込むことができ、その結果、例えば、積層機の作業ステーション間の狭いスペース幅に容易に設置できて装置全体の省スペース化を図ることができる利点がある。
また、剥離ヘッドに備えたフイルム把持手段によりフイルム付シートの剥離始端側隅角部のフイルムを把持させた後、フイルム把持手段をフイルムの剥離始端側隅角部から対角位置の剥離終端側隅角部方向へ所定量移動させることで、フイルム付シートのフイルムの剥離始端側隅角部を確実に剥離でき、その後、テーブル移動装置を作動させて剥離ヘッドを剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ相対移動させることで、フイルム付シートのフイルムの全体を確実に剥離できる。
【0021】
また、請求項2の発明は、フイルム把持手段は、フイルム付シートの剥離始端側隅角部のフイルム上に接着可能な粘着体であり、フイルム把持手段移動装置によって粘着体を移動可能に構成してあるので、簡易な構成で、粘着テープがフイルム付シートに無理な力を加えることなくフイルムの剥離始端側角隅部を引上げるので、シートを破損させたり変形させることなく確実に剥離でき、シートの品質を高く維持できる。
【0022】
また、請求項3の発明は、剥離ヘッドをテーブルの移動軌跡を横切る方向へ移動可能とするヘッド移動装置備え、その剥離ヘッドの一方の移動端側に剥離後のフイルムを収容可能なフイルム回収容器を備え、シートから剥がされたフイルムをヘッド移動装置によってフイルム回収容器上に搬送して回収するようにしたので、剥離ヘッドをテーブルの移動軌跡を横切る方向へ移動可能に設けているので、剥離後のフイルムをテーブルの移動軌跡の側方へ搬送して容易に回収できる効果を奏する。しかも、剥離ヘッドのヘッド移動装置を利用して剥離したフイルムをテーブル移動軌跡の側方へ搬送してフイルム回収容器に回収でき、フイルムの後処理を容易にできる。
【0023】
また、請求項4の発明は、剥離ヘッドのヘッド本体にフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ移動可能に備えた移動体とその移動体をフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ所定量移動可能な直線駆動装置によってフイルム把持手段移動装置を構成し、その移動体に粘着体を備えているので、移動体を移動させて粘着体をフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ移動させることで剥離始端側隅角部のフイルムを確実に剥離できる。
【0024】
また、請求項5の発明は、粘着体を下側が粘着面の粘着テープで構成し、その粘着テープの剥離終端側隅角部側の端部をヘッド本体に、粘着テープの剥離始端側隅角部側の端部を移動体に夫々保持させ、粘着テープをフイルムの剥離始端側隅角部に接着させた状態で移動体を剥離終端側隅角部方向へ移動させて粘着テープの剥離始端側隅角部側の端部のみを剥離終端側隅角部方向へ所定量移動可能にしたので、フイルム剥離の接着部として粘着テープを有効に利用できる。
【0025】
また、請求項6の発明は、下側が粘着面の粘着テープの一端側に繋がる粘着テープ巻付体を回転可能に支持するテープ支持装置を移動体に、粘着テープの他端側に繋がる粘着テープ巻取体を巻取り回転可能な巻取り装置をヘッド本体に夫々備え、粘着テープ巻取体を巻取り回転させて粘着テープ巻付体の粘着テープを引き出し、フイルム付シートの剥離始端側隅角部上に接着させる粘着テープの接着部を新しくできるようにしたので、粘着テープの巻取りにより粘着テープの中間部の接着部を新たな粘着部に変更でき、フイルム剥離に市販の巻付け粘着テープを長期間使用でき、また、粘着テープの消費量を必要最小限に少なくでき、粘着テープの交換時間を少なくして装置の稼働率を良くできる。
【0026】
また、請求項7の発明は、剥離ヘッドに、粘着テープの接着位置より剥離終端側の粘着テープが下側へ弛むのを防止する弛み防止手段を備えているので、接着部より剥離始端側の粘着テープを剥離終端側方向へ大きく移動させる場合でも粘着テープの剥離終端側がフイルム付シートに接着するトラブルを防止でき、剥離ヘッドの移動のみで粘着テープを移動させてフイルムを剥離でき、簡易な構成にできる。
【0027】
また、請求項8の発明は、剥離ヘッドに、粘着テープの剥離始端側部分を剥離終端側方向へ移動させることでフイルム付シートのフイルムの剥離始端側隅角部がシートから剥がれて折り返されたことを検出可能な検出器を備えているので、フイルム付シートのフイルム剥離の誤作動を未然に防止でき、フイルム付シートの損傷を阻止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、本発明の最良の実施形態について、図に基づいて詳細に説明する。図1、図2は、本願発明のフイルム剥離装置1を備えたシート積層体の製造装置3を示したものである。シート積層体の製造装置(以下、単に積層装置という)3は、セラミックグリーンシート(以下、単にシートという)2を1枚ずつ搬入するための搬入ステーション4と、搬送されたシート2を積層して先のシート2に仮接合するための仮接合ステーション5と、仮接合した積層シートを加熱すると共に加圧して熱圧着するための積層ステーション6と、熱圧着されたシート積層体を搬出するための搬出ステーション7とが、一列に順に配置されている。
【0029】
また、積層装置3のフレーム3Aの支持板8上には、搬入ステーション4と仮接合ステーション5の間を往復移動可能な第1搬送装置9と、仮接合ステーション5と積層ステーション6の間を往復移動可能な第2搬送装置10と、積層ステーション6と搬出ステーション7の間を往復移動可能な第3搬送装置11とが設けられている。第1搬送装置9には、シート2の下面を吸着保持可能な第1昇降テーブル12が設けられており、第2搬送装置10には、同様にシート2の下面を吸着保持可能な第2搬送テーブル13が設けられている。一方、第3搬送装置11には、積層ステーション6に移動された状態で積層ステーション6の第2昇降テーブル13の上方へ張り出し、第2昇降テーブル13上の熱圧着されたシート積層体の四隅際を保持して搬出ステーション7の搬出テーブル14上に搬出するための図示しない保持手段が設けられている。
【0030】
上記した第1搬送装置9、第2搬送装置10は、夫々案内レール15と端部にサーボモータ16B,17Bが連結されたねじ軸16A,17Aとから成る第1テーブル移動装置16、第2テーブル移動装置17を備えている。この第1テーブル移動装置16により第1昇降テーブル12が搬入ステーション4と仮接合ステーション5とに往復案内されるようになっている。また、第2テーブル移動装置17により第2搬送テーブル13が仮接合ステーション5と積層ステーション6とに往復案内されるようになっている。また、第1昇降テーブル12は、図示しない昇降手段により昇降可能に構成されている。また、第2搬送テーブル13は、図示しない昇降手段により昇降可能に構成された第2昇降テーブル13aに垂直軸線回りに45度回転割出される割出テーブル13bが備えられて構成されている。割出テーブル13bは、第2搬送テーブル13が仮接合ステーション5から積層ステーション6へ移動する時、図3に示すように、割出テーブル13b上に載置されたフイルム付シート2の一辺が移動方向に沿うように割り出される。即ち、割出テーブル13bの一辺が移動軌跡Lに沿っている。一方、割出テーブル13bは、積層ステーション6から剥離開始ステーションAに移動し、図4に示すようにフイルム付シート2が移動軌跡Lに沿うように45度回転割出され、後述の剥離動作が行われる。
【0031】
また、仮接合ステーション5において、支持板8上に立設された4本の支柱19の上部に固着された支持部材20には、仮接合装置21が設けられている。仮接合装置21は、図示しない適宜な機構により位置決め移動可能なアライメントテーブルを備え、アライメントテーブルに受け渡されてアライメントテーブルにより位置決めされたシート2を先に位置決めされた第2搬送テーブル13上のシート2の上面に重ねて伝熱コテ等により仮接合可能と成っている。一方、積層ステーション6においては、支持板8上に立設された4本の支柱22の上部に固着された支持部材23に、仮接合された第2搬送テーブル13の上の複数のシート2からなる積層シートを加熱可能な図示しない加熱装置と、加熱した積層シートを上側から加圧可能なプレス装置24とが設けられている。
【0032】
また、仮接合ステーション5と積層ステーション6との間には、剥離開始ステーションAが配置されている。剥離開始ステーションAでは、フイルム剥離装置1の剥離ヘッド25が剥離開始ステーションAに位置した45度割出された第2搬送テーブル13上のフイルム付シート2の剥離始端側隅角部2aに対応して位置し、フイルム付シート2のフイルム26の剥離を開始可能となっている。また、仮接合ステーション5は剥離完了ステーションBとなっている。剥離開始ステーションAから第2搬送テーブル13が仮接合ステーション5へ向けて移動することで、剥離ヘッド25がフィルム付シート2の剥離始端側隅角部2aから対角位置の剥離終端側隅角部2bに相対移動してフイルム26の剥離を行うようなっている。
【0033】
フイルム剥離装置1は、図1、図2に示すように、仮接合装置21とプレス装置24との間で支持部材20上に設けられており、第2搬送テーブル13の移動軌跡Lの上方に位置している。フイルム剥離装置1は、図3〜図5に示すように、第2搬送テーブル13の移動軌跡Lを横切る方向に支持されているヘッド移動装置29と、そのヘッド移動装置29によって、第2搬送テーブル13の上方で、図2〜図4に示すように一方の移動端側の接着ステーションDと、図5に示すように他方の移動端側である回収ステーションCの間を、第2搬送テーブル13の移動軌跡Lを横切る方向へ往復移動可能にしてある剥離ヘッド25を備えている。また、フイルム剥離装置1は、剥離ヘッド25の回収ステーションC付近に剥離後のフイルム26を収容可能なフイルム回収容器30と、剥離ヘッド25の回収ステーションCへの移動によってシート2から剥がされたフイルム26をフイルム回収容器30の上方で保持可能なフイルム保持手段31と、そのフイルム保持手段31をフイルム回収容器30の上方でフイルム26を保持可能な位置に移動可能な図1に示す移動手段32とを備えている。
【0034】
前記ヘッド移動装置29は、モータ駆動の長いアクチュエータ33によって構成されている。アクチュエータ33は、長いアクチュエータ本体34と、アクチュエータ本体34内に回転自在に支承されている図示しないねじ軸と、アクチュエータ本体34の端部に固着されてねじ軸を回転駆動するサーボモータ36と、アクチュエータ本体34に固着された案内レール35に案内されてねじ軸の回転によって長手方向へ移動されるスライダ37を備えている。尚、ヘッド移動装置29は、モータによって移動されるベルトによってスライダ37を移動させるように構成した装置等の他の手段でも良い。
【0035】
剥離ヘッド25は、図1〜図5に示すように、ヘッド移動装置29のスライダ37に固着されて接着ステーションDと回収ステーションCとの間を往復移動可能なヘッド本体38を備えている。ヘッド本体38は、図6〜図8に示すように、フイルム把持手段移動装置としての粘着体移動装置41を備えている。粘着体移動装置41は、ヘッド本体38に第2搬送テーブル13の移動軌跡Lに沿う方向に固着された直線駆動装置としてのエアシリンダ39と、エアシリンダ39によって第2搬送テーブル13の移動軌跡Lに沿う方向へ所定量往復移動可能な移動体40によって構成される。粘着体移動装置41は、移動体40にフイルム把持手段としての下側が粘着部の片面粘着テープ42で構成された粘着体を備えてある。エアシリンダ39は、ヘッド本体38にエアシリンダ39の軸線が第2搬送テーブル13の移動軌跡Lに沿う方向へ向くように固着されているシリンダ本体43と、シリンダ本体43に設けた案内レール44に案内されて図示しないピストンロッドによってヘッド本体38の移動方向へ移動可能な摺動体45を備え、その摺動体45に移動体40が固着されている。シリンダ本体43には、摺動体45に設けられた当接片46を受け止めるストッパ47と摺動体45の端面を受け止めるストッパ49が装着され、摺動体45に設けた移動体40を図6に示す初期剥離開始位置と図8に示す初期剥離終了位置とに移動させて保持するようになっている。
【0036】
移動体40には、図6に示すように、粘着部が下側の片面粘着テープ42の剥離始端側の端部に繋がる粘着テープ巻付体50を回転可能に支持するテープ支持装置51と、片面粘着テープ42の中間部を案内するガイドローラ52と、片面粘着テープ巻付体50の巻戻し回転を阻止する為の回転阻止装置53と、片面粘着テープ42の一部を押下げてフイルム付シート2の剥離始端側隅角部2a上のフイルム26に接着可能な押圧手段54と、移動体40が剥離終端側へ移動する際に片面粘着テープ42をガイドローラ52の下端部近くに保持可能なテープ保持片55とが装着されている。また、ヘッド本体38には、粘着テープ42の剥離終端側の端部に繋がる粘着テープ巻取体56を巻取り回転可能な巻取り装置57と、粘着テープ42の中間部を案内するガイドローラ58と、粘着テープ42の中間部の押圧手段54による押下げ位置より剥離終端側部分が下側へ弛むのを防止する弛み防止手段59が装着されている。弛み防止手段59は、粘着テープ42の中間部が弛んで粘着テープ42がフイルム26に接着するのを防止するためのもので、粘着テープ42のフイルム26への接着の恐れがないときは省略しても良い。ガイドローラ52とガイドローラ58は、第2昇降テーブル13の上方に僅かな間隔をあけてほぼ同じ高さに配置され、ガイドローラ52とガイドローラ58間の粘着テープ42を第2昇降テーブル13の上方でほぼ水平に支持するようになっている。ガイドローラ52は回転自在でも固定的でも何れでも良い。
【0037】
テープ支持装置51は、図6に示すように、移動体40に一端部が枢軸60により揺動自在に枢着されている揺動アーム61と、その揺動アーム61の他端部に図示しない支軸を介して回転自在に支承されている回転体62を備え、回転体62には粘着テープ巻付体50が嵌着され、その粘着テープ巻付体50がガイドローラ52に自重で当接されている。回転阻止装置53は、粘着テープ巻付体50をガイドローラ52に押付け可能なエアシリンダ63によって構成され、エアシリンダ63のシリンダ本体63aが移動体40に固着された支持プレート64に固着され、エアシリンダ63のピストンロッド63bに弾性部材から成る押当具63cが固着されている。
【0038】
押圧手段54は、粘着テープ42の一部を押下げ可能なエアシリンダ65によって構成され、エアシリンダ65のシリンダ本体65aが移動体40に固着された支持プレート64に固着され、エアシリンダ65のピストンロッド65bに弾性部材から成る押圧具65cがフイルム付シート2の剥離始端側隅角部2aに対向するように固着されている。ピストンロッド65bは移動体40に固着された案内具66によって摺動自在に案内されている。
【0039】
巻取り装置57は、図6に示すようにヘッド本体38に固着されている支承体67に回転自在に支承されている回転体68と、回転体68を巻取り方向へ所定量ずつ間欠回転可能な回転駆動装置69を備えている。回転体68には、ラチェット歯車68aが設けられ、また、粘着テープ巻取体56を取付ねじ70によって着脱自在に嵌着可能となっている。ラチェット歯車68aは、ヘッド本体38に枢着されて自重によって垂下している逆止爪71に係合され、巻取り方向と逆方向への回転を阻止し、巻取り方向への回転を許すようになっている。回転駆動装置69は、ラチェット歯車68aに係合する可動逆止爪72を所定量往復移動可能なエアシリンダ73によって構成され、エアシリンダ73のシリンダ本体73aがヘッド本体38に固着されている取付板74に固着され、エアシリンダ73のピストンロッド73bに可動逆止爪72が枢着されている。可動逆止爪72は、自重によってラチェット歯車68aに当接し、往復移動されることでラチェット歯車68aを爪ピッチ分回動させて回転体68を巻取り方向へ所定量回転させるようになっている。回転体68が巻取り方向へ所定量回転すると、粘着テープ巻取体56が粘着テープ42を所定長さ分巻取ると共に、テープ支持装置51の粘着テープ巻付体50を巻戻し回転させて粘着テープ42を引き出し、その結果、押圧手段54によって押下げる粘着テープ42の中間部の接着部が新しい部分に変更されるようになっている。
【0040】
弛み防止手段59は、ヘッド本体38に固着されている枢軸75に回動自在に装着されて図示しない付勢ばねまたはウエイトによって図6において反時計回り方向へ付勢されている引張りレバー76によって構成されている。引張りレバー76の先端部は押圧手段54による押下げ位置より剥離終端側部分の粘着テープ42を引っ掛けて側方へ引っ張り移動させるようになっている。尚、弛み防止手段59は、エアシリンダ等の弱いエア圧によって移動する移動部材によって粘着テープ42を引っ張り移動させるように構成しても良い。
【0041】
フイルム保持手段31は、移動手段32により移動可能な吸引パッド81を備えており、吸引力の作用により吸引パッド81でフイルム26を吸着するように構成されている。吸引パッド81は、図5に実線で示す回収ステーションCの下方で剥離始端側に向いた吸着保持開放位置Eに移動可能になっており、剥離ヘッド25の第2搬送テーブル13に対する剥離終端側への相対移動によってシート2から剥がされて垂れ下がるフイルム26の前面に対向させてフイルム26を確実に吸着保持できるようになっている。また、フイルム保持手段31は、次に示すフイルム回収容器30の上方の吸着保持開放位置Eで吸引パッド81からの空気吸引を停止、または、空気吐出してフイルム26の吸着保持を開放できるようになっている。フイルム保持手段31の吸引パッド81は移動手段32により吸引パッド81を図2〜図4に実線で示す退避位置Fとフイルム回収容器30の上方の図2に仮想線または図5に示す吸着保持開放位置Eに移動させるようになっている。
【0042】
図1に示すように支持部材20の下面には取付部材82が固着され、その取付部材82に図8に示すようにシート2のフイルム26の隅角部26aがシート2から剥がれて折り返されたことを検出可能な検出器83が取着されている。検出器83は、例えば押圧手段54による押下げ位置より剥離始端側の粘着テープ42を剥離終端側方向へ所定量移動させた時点におけるフイルム26迄の距離を光学的または電波的に測定することでフイルム26の隅角部26aの剥離を検出できるようになっている。
【0043】
次に、前記積層装置3におけるフイルム剥離装置1の作動について説明する。以下の説明では、積層装置3により初めから必要な枚数のシート2を積層したシート積層体を製造するものとする。積層装置3において、先ず、搬入ステーション4に位置する第1搬送装置9の第1昇降テーブル12上に1枚目のフイルム付シート2を載せて吸着保持させる。そして、第1搬送装置9によりフイルム付シート2は仮接合ステーション5に搬送される。第1昇降テーブル12が仮接合ステーション5に搬送されると、第1昇降テーブル12が上昇し、フイルム付シート2が仮接合装置21の下面に吸着固定されて受け渡され、その後、第1昇降テーブル12が下降を開始すると共に搬入ステーション4に復帰移動する。仮接合ステーション5では、受け渡されたフイルム付シート2をアライメント位置決めする。搬入ステーション4では2枚目のフイルム付シート2が第1昇降テーブル12上に載置される。また、フイルム付シート2が仮接合装置21に受け渡されると、第2搬送装置10の第2搬送テーブル13が仮接合ステーション5まで移動される。仮接合ステーション5で第2搬送テーブル13は上昇してフイルム付シート2を吸引固定し、フイルム付シート2を仮接合装置21から受け渡される。フイルム付シート2が第2搬送テーブル13に受け渡されると、下降すると共に剥離開始ステーションAに移動する。剥離開始ステーションAでは、第2搬送テーブル13の第2割出テーブル13bが45度回転割出され、フイルム付シート2の剥離始端側隅角部2aから剥離終端側隅角部2bへ向かう対角線が第2搬送テーブル13の移動軌跡Lに一致される。
【0044】
1枚目のフイルム付シート2が第2搬送装置10により剥離開始ステーションAに搬送されると、2枚目のフイルム付シート2が載置された第1昇降テーブル12が搬入ステーション4から仮接合ステーション5に搬送され、仮接合装置21にフイルム付シート2が受け渡される。仮接合装置21にフイルム付シート2が受け渡されると、第1昇降テーブル12が搬入ステーション4に移動する。
【0045】
第2搬送テーブル13が剥離開始ステーションAへ移動すると、図3に示す接着ステーションDで待機していた剥離ヘッド25のエアシリンダ39を作動させて図6に示すように摺動体45を剥離始端側の移動端に移動させ、移動体40を第2昇降テーブル13のフイルム付シート2上方で剥離始端側の初期剥離開始位置に位置し、剥離ヘッド25のガイドローラ52とガイドローラ58間の粘着テープ42がフイルム付シート2の上方において剥離始端側隅角部2a側から剥離終端側隅角部2b側へ延びるように位置され、また、押圧手段54の押圧具65cがシート2の剥離始端側隅角部2aの上方に粘着テープ42を挟んで位置される。ここで剥離始端側とは、第2昇降テーブル13が剥離開始ステーションAに位置するときの剥離始端側隅角部2a側であり、また、剥離終端側隅角部2b側を剥離終端側とする。
【0046】
この状態で、押圧手段54のエアシリンダ65が作動されて押圧具65cが下降され、この押圧具65cがガイドローラ52とガイドローラ58間に延びている粘着テープ42の中間部を図7に示すように押下げ、粘着テープ42の接着部をフイルム付シート2のフイルム26の剥離始端側隅角部26a上に接着させる。押圧具65cがガイドローラ52とガイドローラ58間の粘着テープ42を押下げるとき、ガイドローラ52とガイドローラ58間の粘着テープ42が僅かに引き延ばされることになるが、この粘着テープ42の延び分は、弛み防止手段59の引張りレバー76が引き戻されることで与えられる。
【0047】
粘着テープ42の接着部をフイルム26の剥離始端側隅角部26aに接着させた後は、押圧手段54のエアシリンダ65を作動させて押圧具65cを上昇位置に保持させる。その後、回転阻止装置53のエアシリンダ63を作動させて押当具63cを粘着テープ巻付体50に当接させ、粘着テープ巻付体50をガイドローラ52に押圧させて粘着テープ巻付体50の自由回転を阻止する。尚、回転阻止装置53による粘着テープ巻付体50の押圧は、押圧手段54による粘着テープ42の押下げより前に行っても良い。
【0048】
次に、図8に示すように、エアシリンダ39を作動させて摺動体45を剥離終端側の移動端に移動させ、摺動体45に固着されている移動体40を初期剥離終了位置に移動させる。この移動体40の剥離終端側方向への移動により、テープ支持装置51やガイドローラ52やテープ保持片55が図8に示すように同方向へ移動され、フイルム26の剥離始端側隅角部26aに接着された粘着テープ42の接着部より剥離始端側の粘着テープ42の端部がテープ保持片55によってシート2に近い位置に保持されたまま剥離終端側方向へ引張り移動(第1剥離移動)され、その結果、フイルム26の剥離始端側隅角部26aが急激に折り返されてフイルム26の剥離始端側隅角部26aがシート2から剥離され、折り返されたフイルム26の剥離始端側隅角部26aを剥離終端側方向へ引張り移動させてフイルム26をシート2から剥がしていく。この場合、ヘッド本体38は剥離終端側方向へ移動されることなく位置保持されているので、フイルム26の剥離始端側隅角部26aに接着された粘着テープ42の接着部より剥離終端側の粘着テープ42の端部が剥離終端側方向へ移動することがなく、フイルム26の剥離始端側隅角部26aに接着されている粘着テープ42の接着部に剥離終端側方向への引張力が作用することがない。従って、フイルム26がシート2を変形させたり破損させるトラブルが防止される。
【0049】
次に、粘着テープ42の所定量移動によりフイルム26を所定量剥した後、第2搬送テーブル13を第2テーブル移動装置17により剥離開始ステーションAから剥離完了ステーションB即ち仮接合ステーション5に向けて移動させる。この第2テーブル移動装置17による第2搬送テーブル13の移動により、剥離ヘッド25が剥離始端側隅角部26aから対角位置の剥離終端側隅角部26bに向けてフイルム付シート2の対角線上を相対移動する。この第2搬送テーブル13の剥離完了ステーションBへの移動による剥離ヘッド25の剥離終端側隅角部26bへ向けての相対移動により、図8に示す状態の剥離ヘッド25のテープ支持装置51やガイドローラ52や巻取り装置57やガイドローラ58が剥離終端側方向へ移動され、その結果、フイルム26の剥離始端側隅角部26aに接着された粘着テープ42の接着部より剥離始端側の粘着テープ42の端部がテープ保持片55によってシート2に近い位置に保持されたまま剥離終端側方向へ引き続き引張り移動され、シート2から剥離されて折り返されたフイルム26の剥離始端側隅角部26aが更に剥離終端側方向へ移動されてフイルム26をシート2から剥離していく。尚、この場合、粘着テープ42は、フイルム26の剥離始端側隅角部26aに接着された粘着テープ42の接着部より剥離終端側の粘着テープ42が弛みそうな状態になっても、弛み防止手段59の引張りレバー76が粘着テープ42を引っ掛けて側方へ引っ張っているので、ガイドローラ52とガイドローラ58間の粘着テープ42が弛むことがなく、粘着テープ42の下側の粘着面がシート2のフイルム26に接着してフイルム26を引っ張り移動させるトラブルを防止できる。
【0050】
前記のように、剥離開始ステーションAで第2搬送テーブル13の第2割出テーブル13bを45度回転割出した状態で第2搬送テーブル13を剥離完了ステーションBに向けて移動させると、剥離ヘッド25が剥離終端側へ相対移動されることになり、接着部より剥離始端側と剥離終端側の粘着テープ42の両端部が剥離終端側方向へ移動(第2剥離移動)され、フイルム26の全面がシート2から剥がされ、図9に示すように位置Gで剥離されたフイルム26の剥離始端側隅角部26aが粘着テープ42に接着された状態で垂れ下がる。この場合、フイルム接着部より剥離終端側の粘着テープ42は、弛み防止手段59の引張りレバー76が粘着テープ42を引っ掛けて側方へ引っ張り移動することで弛みが吸収され、ガイドローラ52とガイドローラ58間の粘着テープ42は略水平に維持される。次に、剥離ヘッド25のエアシリンダ39を作動させて移動体40を剥離始端側へ移動させる。その結果、ガイドローラ52、58間の粘着テープ42を剥離始端側へ引張って弛み防止手段59の引張りレバー76を引き戻し、図6に示す初期の状態になり、粘着テープ42に接着されて図9の位置Gで垂れ下がっているフイルム26が図9に示すように剥離始端側の位置Hへ移動される。その状態で、剥離ヘッド25のアクチュエータ33を作動させて剥離ヘッド25を第2搬送テーブル13の移動軌跡Lを横切る方向へ移動させ、図5に示すように接着ステーションDから回収ステーションCに位置させる。
【0051】
次に、フイルム保持手段31を移動させるため移動手段32を作動し、フイルム保持手段31の吸引パッド81を退避位置Fから剥離ヘッド25の剥離回収ステーションC下方の吸着保持開放位置Eに移動させる。その結果、フイルム保持手段31の吸引パッド81は、粘着テープ42から垂れ下がっているフイルム26の後面に対向し、この状態で吸引を開始して剥離ヘッド25から垂れ下がっている剥離後のフイルム26を吸着保持する。即ち、粘着テープ42の移動によりシート2から剥がされて略水平状態の粘着テープ42の中間部分から垂れ下がっているフイルム26をフイルム保持手段31によって保持する。
【0052】
その後、回収ステーションCにおいて、再び剥離ヘッド25のエアシリンダ39を作動させて移動体40を剥離終端側へ移動させ、図10に示すフイルム分離位置とする。移動体40のフイルム分離位置への移動により、粘着テープ42の剥離始端側の端部が第2剥離移動と同方向(フイルム26から遠去かる方向)へ移動され、その結果、粘着テープ42がフイルム26を折り返した状態で引き離され、粘着テープ42の接着部がフイルム26からスムーズに剥離され、フイルム26が粘着テープ42から分離される。この場合、粘着テープ42の剥離始端側の端部はフイルム保持手段31の吸引パッド81に対して接近する関係になるので、フイルム26を引っ張ることがなく、前記粘着テープ42の移動によるフイルム26の分離を確実にできる。尚、前記説明では、シート2から剥がされたフイルム26をフイルム保持手段31によって保持させた状態で、移動体40を第2剥離移動と同方向へ移動させて接着部より剥離終端側の粘着テープ42をフイルム26から遠去けることで粘着テープ42とフイルム26の接着を剥がしているが、フイルム保持手段31を図示しない移動手段により剥離始端側方向または下方へ移動させてフイルム26を粘着テープ42から剥がすようにしても良い。
【0053】
次に、フイルム回収容器30の上方で、吸引パッド81の吸引力が解除され、吸引パッド81が吸着保持していたフイルム26はフイルム回収容器30内に落下されて回収される。この場合、吸引パッド81から空気を吐出して吸引パッド81からフイルム26を積極的に分離するようにすると、フイルム26の回収動作を速くすることができる。吸引パッド81は、フイルム26の吸着保持を解除した後、移動手段32によって再び図3、図4に示すように退避位置Fに移動され、次に剥離されてくるフイルム26の保持に備える。また、移動体40は、エアシリンダ39によって剥離始端側に移動されると共に、剥離ヘッド25は、ヘッド移動装置29によって再び接着ステーションDへ移動され、次のシート2のフイルム剥離に備える。
【0054】
次に、必要に応じて、回転阻止装置53のエアシリンダ63を作動させて押当具63cを上昇位置に保持させ、この状態で、巻取り装置57のエアシリンダ73を作動させて可動逆止爪72を一時的に所定量突出させ、その結果、可動逆止爪72がラチェット歯車68aを次の爪が逆止爪71に係合される位置まで爪の1ピッチ分以上回動させて回転体68を巻取り方向へ所定量回転させる。回転体68の巻取り方向への回転によって、粘着テープ巻取体56が粘着テープ42を所定長さ分巻き取り、テープ支持装置51の粘着テープ巻付体50を巻戻し回転させ、押圧手段54によって押下げる粘着テープ42の接着部が新しい部分に変更される。従って、粘着テープ42を各シート2のフイルム26の剥離始端側隅角部26a上に確実に接着させることができる。粘着テープ42の巻取りは各シート2のフイルム26を剥離する度に行なっても良いし、所定枚数のシート2のフイルム26を剥離したときや任意枚数のシート2のフイルム26を剥離したときに行なうようにしても良い。
【0055】
第2搬送テーブル13上の1枚目のシート2からフイルム26が剥離されると、仮接合ステーション5では、第2昇降テーブル13が上昇して前記フイルム26が剥離された1枚目のシート2が2枚目のフイルム付シート2に重合された後、2枚のシート2が仮接合装置21により仮接合される。1枚目のシート2と2枚目のフイルム付シート2が仮接合されると、第2搬送テーブル13は積層シート2を吸着保持した状態で下降すると共に積層ステーション6に移動し、仮接合された1枚目のシート2と2枚目のフイルム付シート2が、プレス装置24により熱圧着される。仮接合された1枚目のシート2と2枚目のフイルム付シート2が積層ステーション6においてプレス装置24により熱圧着される際、2枚目のシート2にフイルム26が付いた状態で熱圧着することで、シート2の熱変位を小さく抑える効果があり、また、プレス装置24にシート2が貼り付くことを防止することができる効果がある。また、シート2に塵埃が付着することを防止できる。これにより、積層精度を高精度に維持できて最終的に製造されるシート積層体の品質を高くすることができる。
【0056】
一方、そのように1枚目のシート2と2枚目のフイルム付シート2が熱圧着されている間に、3枚目のフイルム付シート2が搬入ステーション4の第1搬送装置9の第1昇降テーブル12上に載置され、仮接合ステーション5に搬送されて仮接合装置21に3枚目のフイルム付シート2が吸引固定されて受け渡される。3枚目のフイルム付シート2が受け渡されると第1昇降テーブル12は搬入ステーション4に移動する。
【0057】
次に、熱圧着された1枚目のシート2と2枚目のフイルム付シート2を吸着保持した第2搬送テーブル13が剥離開始ステーションAに移動する。第2搬送テーブル13には、2枚目のフイルム付シート2が最上部に位置しており、前記1枚目のフイルム付シート2のフイルム26の剥離と同様に、第2搬送テーブル13の剥離開始ステーションAから剥離完了ステーションBへの移動による第2搬送テーブル13と剥離ヘッド25の相対移動により、2枚目のフイルム付シート2からフイルム26が剥離される。2枚目のシート2からフイルム26が剥離されると、前記1枚目のフイルム26が剥離されたシート2と同様な動作が行われ、仮接合装置21により1、2枚目のシート2,2と3枚目のフイルム付シート2が仮接合された後、積層ステーション6でプレス装置24によって熱圧着される。そして、上記したような搬入、仮接合、熱圧着、フイルム剥離を所定回数だけ繰り返すことによって、最終的に必要な枚数のシート2を積層したシート積層体が形成される。しかる後、形成されたシート積層体は第3搬送装置11に保持され、積層ステーション6から搬出ステーション7へと搬出された後、積層装置3から搬出される。尚、複数のシート2が積層されることでシートが厚くなるが、押圧具65cが弾性部材から成ることで粘着テープ貼付け時に積層されたシート2の厚さの変化にあまり影響されない。
【0058】
また、上記実施の形態では、第2搬送テーブル13に第2割出テーブル13bを設けて剥離開始ステーションAで45度回転割出した状態でフイルム26の剥離を行っているが、初めから第2搬送テーブル13にフイルム付シート2をフイルム付シート2の剥離始端側隅角部2aと剥離終端側隅角部2bとの対角線が第2搬送テーブル13の移動軌跡Lと平行となるように載せた状態で各ステーションA,Bに搬送するようにしても良い。この場合、仮接合装置21での仮接合やプレス装置24での熱圧着もフイルム付シート2の対角線が第2搬送テーブル13の移動軌跡Lと平行な状態のまま行えるように設ければ割出テーブルが不要となる。
【0059】
また、上記実施の形態では、フイルム付シート2を吸引固着した状態の第2搬送テーブル13を剥離開始ステーションAから剥離完了ステーションBへ向けて移動することで、剥離ヘッド25との相対移動でフイルム26を剥離しているが、第1昇降テーブル12上に第1割出テーブル12bを設け、搬入ステーション4と仮接合ステーション5間に剥離開始ステーションAと剥離終了ステーションBを設けてその剥離開始ステーションAにフイルム剥離装置1を配置し、第1昇降テーブル12にフイルム付シート2を吸着固定した状態で第1昇降テーブル12を剥離開始ステーションAまで移動し、第1割出テーブル12aを45度回転割出してフイルム付シート2をフイルム付シート2の対角線が第1昇降テーブル12の移動軌跡と平行として、剥離開始ステーションAから剥離完了ステーションBへ向けて移動することでフイルム26を剥離するようにしても良い。また、フイルム把持手段としての粘着体を粘着テープ42で構成したが、負圧により吸着する負圧吸着手段で構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明のフイルム剥離装置を備えた積層装置の正面図である。
【図2】図1のフイルム剥離装置を備えた積層装置の平面図である。
【図3】第2搬送ステージを仮接合ステーションとした平面図である。
【図4】第2搬送ステージを剥離開始ステーションとした平面図である。
【図5】第2搬送ステージを剥離完了ステーションとした平面図である。
【図6】図2のVI視図である。
【図7】図6の剥離ヘッドの作動状態を示す剥離ヘッドの部分図である。
【図8】図6の剥離ヘッドの作動状態を示す剥離ヘッドの正面図である。
【図9】フイルム剥離装置の作動状態を示す部分正面図である。
【図10】フイルム剥離装置の作動状態を示す部分正面図である。
【符号の説明】
【0061】
1 フイルム剥離装置
2 フイルム付シート
2a,26a 剥離始端側隅角部
2b,26b 剥離終端側隅角部
13 第2搬送テーブル
17 第2テーブル移動装置
25 剥離ヘッド
26 フイルム
29 ヘッド移動装置
30 フイルム回収容器
38 ヘッド本体
39 エアシリンダ(直線駆動装置)
40 移動体
41 粘着体移動装置(フイルム把持手段移動装置)
42 粘着テープ(フイルム把持手段)
50 粘着テープ巻付体
51 テープ支持装置
56 粘着テープ巻取体
57 巻取り装置
59 弛み防止手段
83 検出器
A 剥離開始ステーション
B 剥離完了ステーション
L 移動軌跡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル上に保持した矩形のフイルム付シートのフイルムをフイルム把持手段を用いてシートから剥離するようにしたフイルム剥離装置において、テーブルをそのフイルム付シートの剥離終端側隅角部から対角位置の剥離始端側隅角部方向へテーブル移動装置によって剥離開始ステーションから剥離完了ステーションへ移動可能に設けると共に、剥離開始ステーションに位置されるテーブルの移動軌跡の上方に剥離ヘッドを設け、その剥離ヘッドにフイルム把持手段をテーブル上のフイルム付シートの剥離始端側隅角部のフイルムを把持可能でかつフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へフイルム把持手段移動装置によって所定量移動可能に備え、フイルム把持手段がフイルム把持手段移動装置によってフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ所定量移動した後にテーブルがテーブル移動装置によって剥離開始ステーションから剥離完了ステーションへ移動してフイルムを剥離するようにして成るフイルム剥離装置。
【請求項2】
フイルム把持手段は、フイルム付シートの剥離始端側隅角部のフイルム上に接着可能な粘着体であり、フイルム把持手段移動装置によって粘着体を移動可能に構成して成る請求項1記載のフイルム剥離装置。
【請求項3】
剥離ヘッドをテーブルの移動軌跡を横切る方向へ移動可能とするヘッド移動装置備え、その剥離ヘッドの一方の移動端側に剥離後のフイルムを収容可能なフイルム回収容器を備え、シートから剥がされたフイルムをヘッド移動装置によってフイルム回収容器上に搬送して回収するようにした請求項1または2記載のフイルム剥離装置。
【請求項4】
剥離ヘッドのヘッド本体にフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ移動可能に備えた移動体とその移動体をフイルムの剥離始端側隅角部から剥離終端側隅角部方向へ所定量移動可能な直線駆動装置によってフイルム把持手段移動装置を構成し、その移動体に粘着体を備えて成る請求項1乃至3の何れかに記載のフイルム剥離装置。
【請求項5】
粘着体を下側が粘着面の粘着テープで構成し、その粘着テープの剥離終端側隅角部側の端部をヘッド本体に、粘着テープの剥離始端側隅角部側の端部を移動体に夫々保持させ、粘着テープをフイルムの剥離始端側隅角部に接着させた状態で移動体を剥離終端側隅角部方向へ移動させて粘着テープの剥離始端側隅角部側の端部のみを剥離終端側隅角部方向へ所定量移動可能にした請求項1乃至4の何れかに記載のフイルム剥離装置。
【請求項6】
下側が粘着面の粘着テープの一端側に繋がる粘着テープ巻付体を回転可能に支持するテープ支持装置を移動体に、粘着テープの他端側に繋がる粘着テープ巻取体を巻取り回転可能な巻取り装置をヘッド本体に夫々備え、粘着テープ巻取体を巻取り回転させて粘着テープ巻付体の粘着テープを引き出し、フイルム付シートの剥離始端側隅角部上に接着させる粘着テープの接着部を新しくできるようにした請求項5記載のフイルム剥離装置。
【請求項7】
剥離ヘッドに、粘着テープの接着位置より剥離終端側の粘着テープが下側へ弛むのを防止する弛み防止手段を備えて成る請求項5または6記載のフイルム剥離装置。
【請求項8】
剥離ヘッドに、粘着テープの剥離始端側部分を剥離終端側方向へ移動させることでフイルム付シートのフイルムの剥離始端側隅角部がシートから剥がれて折り返されたことを検出可能な検出器を備えて成る請求項5乃至7の何れかに記載のフイルム剥離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−119984(P2008−119984A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307527(P2006−307527)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000241588)豊和工業株式会社 (230)
【Fターム(参考)】