説明

フェネチルニコチンアミド誘導体含有医薬

【課題】NO産生促進剤及び/又はeNOS活性化として有用な化合物を提供する。
【解決手段】
本発明医薬の有効成分であるフェネチルニコチンアミド誘導体は,優れた血管内皮性NO産生促進及び/又はeNOS活性化作用による血流循環改善作用を有し、更に、血小板凝集抑制・抗血栓作用、抗増殖作用、抗炎症作用などの作用も有する。本発明医薬は、血管内皮性NO産生低下及び/又はeNOS機能低下を起因とする血管内皮機能不全が病因である疾患又は病理学的状態の改善、殊に、末梢動脈閉塞症(PAOD)、動脈硬化、虚血性心疾患などの循環不全等の疾患の治療剤として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)産生促進剤及び/又は内皮性一酸化窒素合成酵素(eNOS)活性化剤として有用な医薬に関する。また、本発明は、フェネチルニコチンアミド誘導体を有効成分とする医薬に関する。更に、血管内皮性NO産生促進作用及び/又はeNOS活性化作用を有し、医薬として有用な新規なフェネチルニコチンアミド誘導体及びその塩に関する。
【背景技術】
【0002】
NO(一酸化窒素)はL−アルギニンが酸化されL−シトルリンになる際に産生され、その反応はNO合成酵素(NO Synthase:NOS)によって触媒される。NO産生は生体内の様々な組織、細胞種で観察されるが、恒常的にNOを産生、放出する代表的な細胞種が血管内皮細胞である。血管内皮細胞で産生されるNO(血管内皮性NO)が内皮由来血管弛緩因子(EDRF)であることが報告されている〔Nature, 1987,327,524-526 ; Proc.Natl.Acad.Sci.USA, 1987, 84, 9265-9269〕。
高脂血症・動脈硬化などの動脈硬化性疾患にみられる血管内皮の機能障害は、eNOSから産生されるNOの低下による内皮依存性血管弛緩・拡張反応(EDR)の減弱がその大きな原因であると言われている。
またeNOSにより産生される血管内皮性NOは、血管弛緩作用だけでなく、血小板凝集抑制・抗血栓作用、抗増殖作用、抗炎症作用などを有する(医学のあゆみ 204(4), 621-625, 2003)。
NOがEDRFの本体であることが判明し、更にNOが全身の循環調節において重要な役割を果たすことが明らかになったことから、循環不全治療薬としてニトログリセリン製剤をはじめとするNO供与製剤(硝酸剤)が臨床的に頻用されるようになった。しかし、NO供与製剤は作用持続時間が短く、長期服用した際に耐性が生じやすい。また対象臓器特異性に乏しいことから副作用として全身血圧低下、血圧下降による頻脈、頭痛、めまいが出現する。また、過度のNO産生は細胞毒性を生じることが知られている。
また、NOSの基質であるL−アルギニンの効果がNOに関連する疾患で検討されてきたが、L−アルギニン長期投与の効果は微弱で部分的であると報告されている〔Hypertension, 1994, 23, 752-756 ; Hypertension, 1996, 25, 898-902〕。
【0003】
これら知見より、血管内皮細胞での自発的かつ十分量のNO産生を促進する化合物、及び/又はeNOS活性化作用を有する化合物が、血管内皮機能を改善し、血流障害、動脈硬化、高脂血症、虚血性心疾患や各種臓器での循環不全等の血管内皮機能低下に起因する疾患等の疾患に対して優れた治療剤になると考えられる。
これまで知られている血管内皮性NO産生促進又はeNOSに関する作用を有する化合物としては、HMG-CoA還元酵素阻害剤(コレステロール合成阻害剤)が、血管内皮細胞においてeNOSのmRNA量を増加させることにより、NO産生を促進することが報告されている。また、4-フルオロ-N-インダン-2-イルベンズアミド(特許文献1)、ヘテロ環基又はアリールでアシル化されたインダニルアミノ誘導体(特許文献2)、ヘテロ環基又はアリールでアシル化された6,7,8,9-テトラヒドロ-5H-ベンゾシクロヘプチルアミノ誘導体(特許文献3)、及びヘテロ環基等でアシル化された1,2,3,4-テトラヒドロナフチルアミン(特許文献4)がeNOS発現亢進作用を有することが開示されている。また、ソイステロール、ピリドキシン類、リボフラビン類、タウリン、イノシトールヘキサニコチネート及びパンテチンも血管内皮性一酸化窒素の合成促進及び/又は内皮性酸化窒素血中濃度の維持・向上作用を有することが知られている(特許文献5)
しかしながら、本発明化合物はこれらの化合物とは構造的に異なる。
一方、フェネチルニコチンアミド誘導体としては、以下の化合物が知られている。
フェネチルニコチンアミド誘導体のうち、フェネチルニコチンアミド及びベンゼン環の2位が塩素で置換された化合物は製造中間体として知られているが(特許文献6)、これらの化合物は弱いカリウムチャンネル開口作用及び弱い血管拡張作用を有することも知られている(非特許文献1)。
ベンゼン環の3又は4位が塩素でジ置換された化合物(それぞれ、非特許文献2、CASレジストリー番号489416-65-1)、及び3位がフッ素で1置換された化合物(特許文献7)は、合成中間体または試薬として知られている。
また、ベンゼン環の2及び4位が塩素でジ置換され、かつピリジン環上の5位が臭素で置換された化合物は、合成中間体(特許文献8)として、またベンゼン環の2及び4位が塩素でジ置換され、かつピリジン環上の6位が塩素で置換された化合物は、試薬(CASレジストリー番号380470-94-0)として知られている。
しかしながら、本発明のベンゼン環が少なくとも1つのハロゲンで置換されたフェネチルニコチンアミド誘導体が血管内皮性NO産生促進作用及び/又はeNOS活性化作用を有することは、上記文献には開示も示唆もない。
【0004】
【特許文献1】国際公開WO02/064146パンフレット
【特許文献2】国際公開WO02/64545パンフレット
【特許文献3】国際公開WO02/64546パンフレット
【特許文献4】国際公開WO02/64565パンフレット
【特許文献5】特開2004-115507
【特許文献6】特開平7-33729
【特許文献7】特開昭61-289087
【特許文献8】国際公開WO02/18327パンフレット
【非特許文献1】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 4(20),2485-2488, 1994
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、新規な血管内皮性NO産生促進剤及び/又はeNOS活性化剤を提供することである。また、フェネチルニコチンアミド誘導体を有効成分とする医薬、更に、血管内皮性NO産生促進作用及び/又はeNOS活性化作用を有する新規なフェネチルニコチンアミド誘導体およびその塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、血管内皮性NO産生促進作用及び/又はeNOS活性化作用を有する化合物について鋭意検討した結果、ベンゼン環が少なくとも1以上のハロゲンで置換された化合物が、優れた血管内皮性NO産生促進作用を有することを知見し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、下記一般式(I)で示されるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする血管内皮性NO産生促進及び/又はeNOS活性化剤に関する。
【化4】

(式中の記号は、以下の意味を示す。
Hal:ハロゲン、
R:NO2、CN、低級アルキル、OH、ハロゲノ低級アルキル、COOH、-O-低級アルキル、-COO-低級アルキル、-CONH2、-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、又は-低級アルキレン-O-低級アルキル、
R1:H、ハロゲン、低級アルキル、-O-低級アルキル、-S-低級アルキル、又はハロゲノ低級アルキル、
R2:H、低級アルキル、-低級アルキレン-COOH、-低級アルキレン-CONH2、又は-低級アルキレン-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、
m:1乃至5の整数、
n:0、又は1 但し、m+n≦5、
X:N、又はN-オキシド。)
また、本発明は、これまで医薬としての用途が知られていなかった下記一般式(I)で示されるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分とする医薬に関する。
【化5】

(式中の記号は、前記の意味を示す。
但し、2−クロロフェネチル−3−ニコチンアミドを除く。)
更に、本発明は、医薬、殊に血管内皮性NO産生促進剤として有用な新規なフェネチルニコチンアミド誘導体又はその塩に関する。
【化6】

(式中の記号は、以下の意味を示す。
R1a:H、低級アルキル、-O-低級アルキル、-S-低級アルキル、又はハロゲノ低級アルキル、
Hal,R, R2及びXは前記の意味を示す。
但し、HalがCl又はFでありかつmが1のときは、nは1を示す。)
【発明の効果】
【0007】
本発明医薬の有効成分であるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその塩は,優れた血管内皮性NO産生促進及び/又はeNOS活性化作用による血流循環改善作用を有し、更に、血小板凝集抑制・抗血栓作用、抗増殖作用、抗炎症作用などの作用も有する。本発明医薬は、血管内皮性NO産生低下及び/又はeNOS機能低下を起因とする血管内皮機能不全が病因である疾患又は病理学的状態の改善、殊に、末梢動脈閉塞症(PAOD)、動脈硬化、虚血性心疾患などの循環不全等の疾患の治療剤として有用である。また、本発明医薬は血圧や心拍に対する影響が少ないことも期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の好ましい態様を以下に示す。
(1)一般式(Ia)において、mが2乃至5の整数であり、nが0であるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその塩、及びこれらを有効成分として含有する医薬、殊に血管内皮性NO産生促進及び/又はeNOS活性化剤。
(2)一般式(Ia)において、mが2であり、nが0、R1aがH、かつXがNであるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその塩、及びこれらを有効成分として含有する医薬、殊に血管内皮性NO産生促進及び/又はeNOS活性化剤。
(3)一般式(I)で示されるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬が、末梢動脈閉塞症、動脈硬化、又は虚血性心疾患の予防・治療剤である剤。
【0009】
更に本発明を詳述する。
「ハロゲン」としては、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素原子が挙げられる。
なお、mが2以上を示す場合には、それぞれのハロゲンは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
「低級アルキル」とは、直鎖又は分岐状飽和のC1-6アルキルであり、好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、ヘキシルである。
「ハロゲノ低級アルキル」とは、前記低級アルキルの任意の1以上の水素原子が前記ハロゲンに置換された基を意味する。好ましくはハロゲノC1-3アルキルであり、更に好ましくは、トリフルオロメチル、トリフルオロエチルである。
「モノ又はジ低級アルキルアミノ」とは、アミノ基の水素が1または2の低級アルキルで置換された対称又は非対称のアミノ基であり、好ましくは、メチルアミノ、ジメチルアミノである。
本発明の化合物には、プロドラッグを形成する基に置換された化合物も含まれる。
ここに、本発明のプロドラッグを形成する基としては、Prog. Med.、5、2157-2161 (1985)や「医薬品の開発」第7巻(廣川書店、1990年)分子設計163-198頁に記載の基等が挙げられる。
【0010】
本発明化合物(I)及び(Ia)は、酸付加塩又は置換基の種類によっては塩基との塩を形成する場合もあり、かかる塩が製薬学的に許容され得る塩である限りにおいて本発明に包含される。具体的には、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸や、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、又はグルタミン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム等の無機塩基、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、リシン、オルニチン等の有機塩基との塩やアンモニウム塩等が挙げられる。本発明は、本発明化合物及びその製薬学的に許容され得る塩の各種の水和物や溶媒和物、及び結晶多形も包含する。
本発明化合物は基の種類によっては、光学異性体(光学活性体、ジアステレオマー等)が存在する。また、本発明化合物はアミド結合を有する化合物であり、互変異性体が存在する。本発明には、これらの異性体の分離されたもの、あるいは混合物を包含する。
また、本発明には、本発明化合物を放射性同位元素でラベル化した化合物も包含する。
【0011】
(製造法)
本発明化合物及びその製薬学的に許容され得る塩は、その基本骨格あるいは置換基の種類に基づく特徴を利用し、種々の公知の合成法を適用して製造することができる。
その際、官能基の種類によっては、当該官能基を原料乃至中間体の段階で適当な保護基(容易に当該官能基に転化可能な基)に置き換えておくことが製造技術上効果的な場合がある。このような官能基としては例えばアミノ基、水酸基、カルボキシ基等であり、それらの保護基としては例えばグリーン(Greene)及びウッツ(Wuts)著、「Protective Groups in Organic Synthesis(第3版)」に記載の保護基等を挙げることができ、これらを反応条件に応じて適宜選択して用いればよい。このような方法では、当該保護基を導入して反応を行った後、必要に応じて保護基を除去することにより、所望の化合物を得ることができる。
以下、本発明化合物の代表的な製造法を説明する。なお、本発明の製造法は以下図示した例に限られるわけではない。
以下の文章中の記号は、次の通りである。
【0012】
第1製法(アミド化)
【化7】

(式中の記号は前記の通りである。以下同様)
本発明化合物(I)は、対応するカルボン酸化合物(II)と式(III)で示されるフェネチルアミンとを公知の方法(例えばM. Bodanszky、Peptide Chemistry、p55−73(1988)、泉屋信夫ら,ペプチド合成の基礎と実験,p89−142,(1985)などが参照される)によりアミド化することにより製造できる。なお、XがN−オキシドである本発明化合物(I)は、対応するカルボン酸誘導体(II)のN−オキシドを用いて製造することができる。
好ましくは、カルボン酸化合物(II)を反応性誘導体(例えば酸クロリド、酸ブロミド等の酸ハライド;酸アジド;メタノール、エタノール、ベンジルアルコール、置換していてもよいフェノール、N−ヒドロキシスクシンイミド等を用いて調整できる活性エステル;対称酸無水物;アルキル炭酸;p−トルエンスルホン酸等との混合酸無水物等)に変換した後、化合物(III)と反応させることにより行うことができる。カルボン酸の反応性誘導体を用いる場合、塩基(水酸化ナトリウム等の無機塩基、又はトリエチルアミン(TEA)、ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン等の有機塩基)を添加することが好ましい。更にアミド化はカルボン酸を縮合剤(1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(WSC)、1,1’−カルボニルビス−1−1H−イミダゾール(CDI)等)の存在下に反応させることによって行うこともできる。その際1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)等の添加剤を加えてもよい。
反応温度は、原料化合物に応じて適宜選択できる。溶媒は不活性溶媒、例えばベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、1、4−ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)などのエーテル系の溶媒、N、N−ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられ、原料化合物の種類等に従い適宜選択され、単独、或いは2種以上混合して用いられる。
【0013】
第2製法(アルキル化)
【化8】

(Yはハロゲンまたはスルホネート等の脱離基、R2aは低級アルキル、−Z−COORb(Rbは低級アルキル、Zは低級アルキレン基)を示す。)
本発明化合物中、式(I)で示される化合物のうち、R2が低級アルキル又は−Z−COORbで置換されたアミド化合物(Ib)は、対応するR2がHのアミド化合物(IV)及び式(V)で示されるアルキル化剤と反応させる常法のN−アルキル化反応によって製造できる。
反応は適当な不活性溶媒(好ましくは、THFなどのエーテル系溶媒あるいはDMF)中、反応対応量の化合物(IV)と化合物(V)あるいはいずれか一方の過剰量を用い、必要ならば酸補足剤として、例えば水素化ナトリウム、カリウム tert−ブトキシド、炭酸カリウム、TEA等の無機または有機塩基を加え、冷却下、室温下又は加熱下に実施するのが有利である。
【0014】
第3製法(ケン化)
【化9】

(式中の記号は前記の通りである。)
本発明化合物中、式(I)で示される化合物のうち、R2が低級アルキレン-COOHで置換されたアミド化合物(VII)は、対応するエステル化合物(VI)のケン化によって製造できる。
反応は常法を適用して行うことができ、適当な不活性溶媒(好ましくは、メタノール、エタノールなどのアルコール溶媒)中、適当な無機塩基、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を添加し、冷却下、室温下又は加熱下に実施するのが有利である。
【0015】
第4製法(アミド化)
【化10】

(式中、R3及びR4は低級アルキルを意味する。)
本発明化合物中、式(I)で示される化合物のうち、R2が低級アルキレン−CONH2、低級アルキレン−CO−モノ又はジ低級アルキルアミノで置換されたアミド化合物(X)は、対応するカルボン酸化合物(VIII)又はその活性化体と式(IX)で示されるアンモニア又はモノ−若しくはジ−低級アルキルアミンとを、第1製法と同様にアミド化(アンモニアの時はアンモノリシス)することにより製造できる。
【0016】
本発明化合物は、遊離化合物、その製薬学的に許容される塩、水和物、溶媒和物、あるいは結晶多形の物質として単離され、精製される。本発明化合物(I)の製薬学的に許容される塩は、常法の造塩反応に付すことにより製造することもできる。
単離、精製は、抽出、分別結晶化、各種分画クロマトグラフィー等通常の化学操作を適用して行われる。
各種の異性体は、適当な原料化合物を選択することにより、あるいは異性体間の物理化学的性質の差を利用して分離することができる。例えば、光学異性体は適当な原料を選択することにより、あるいはラセミ化合物の光学分割法(例えば、一般的な光学活性な塩基又は酸とのジアステレオマー塩に導き、光学分割する方法、キラルカラム等を用い分取する方法等)により、立体化学的に純粋な異性体に導くことができる。
以上、本製造法と同様にして後述の実施例化合物の他に下表の化合物が得られる。また当該下表中一部の化合物を得た。
本発明有効成分並びに本発明化合物又はその製薬学的に許容され得る塩は単独でも医薬として供しうるが通常1種又は2種以上の有効成分を、当分野において通常用いられている薬剤用担体、賦形剤等を用いて通常使用されている方法によって調製することができる。投与は錠剤、丸剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤等による経口投与、又は、関節内、静脈内、筋肉内等の注射剤、坐剤、点眼剤、眼軟膏、経皮用液剤、軟膏剤、経皮用貼付剤、経粘膜液剤、経粘膜貼付剤、吸入剤等による非経口投与のいずれの形態であってもよい。
本発明による経口投与のための固体組成物としては、錠剤、散剤、顆粒剤等が用いられる。このような固体組成物においては、1種又は2種以上の有効成分を、少なくとも1種の不活性な希釈剤、例えば乳糖、マンニトール、ブドウ糖、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、デンプン、ポリビニルピロリドン、及び/又はメタケイ酸アルミン酸マグネシウム等と混合される。組成物は、常法に従って、不活性な希釈剤以外の添加剤、例えばステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤や繊維素グリコール酸カルシウムのような崩壊剤、安定化剤、溶解補助剤を含有していてもよい。錠剤又は丸剤は必要によりショ糖、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどの糖衣又は胃溶性若しくは腸溶性物質のフィルムで被膜してもよい。
【0017】
経口投与のための液体組成物は、薬剤的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤又はエリキシル剤等を含み、一般的に用いられる不活性な希釈剤、例えば精製水又はエタノールを含む。当該液体組成物は不活性な希釈剤以外に可溶化剤、湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、芳香剤、防腐剤を含有していてもよい。
非経口投与のための注射剤は、無菌の水性又は非水性の溶液剤、懸濁剤又は乳濁剤を含有する。水性の溶液剤又は懸濁剤としては、例えば注射用蒸留水又は生理食塩液が含まれる。非水溶性の溶液剤又は懸濁剤としては、例えばプロピレングリコール、ポリエチレングリコール又はオリーブ油のような植物油、エタノールのようなアルコール類、又はポリソルベート80(局方名)等がある。このような組成物は、さらに等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、又は溶解補助剤を含んでもよい。これらは例えばバクテリア保留フィルターを通す濾過、殺菌剤の配合又は照射によって無菌化される。また、これらは無菌の固体組成物を製造し、使用前に無菌水又は無菌の注射用溶媒に溶解又は懸濁して使用することもできる。
経鼻剤等の経粘膜剤は固体、液体又は半固体状のものが用いられ、従来公知の方法に従って製造することができる。例えば公知のpH調整剤、防腐剤、増粘剤や賦形剤が適宜添加され、固体、液体若しくは半固体状に成形される。経鼻剤は通常のスプレー器具、点鼻容器、チューブ、又は鼻腔内挿入具等を用いて投与される。
通常経口投与の場合、1日の投与量は、約0.001〜1000mg、好ましくは0.1〜300mg、更に好ましくは0.1〜100mgが適当であり、これを1回であるいは2乃至4回に分けて投与する。静脈内投与される場合は、1日の投与量は、約0.0001〜500mgが適当で、1日1回乃至複数回に分けて投与する。また、経粘膜剤としては、約0.001〜500mgを1日1回乃至複数回に分けて投与する。投与量は症状、年令、性別等を考慮して個々の場合に応じて適宜決定される。
【0018】
[実施例]
以下、実施例に基づき本発明を更に詳細に説明する。本発明化合物は下記実施例に記載の化合物に限定されるものではない。また原料化合物の製法を参考例に示す。
なお、明細書中の略号は、以下の通りである。
FAB-MS:高速原子衝撃イオン化質量分析法による測定値; EI-MS;電子衝撃イオン化質量分析法による測定値; NMR(DMSO):NMR(DMSO-d6、TMS内部標準)の特徴的ピークδppm; Me:メチル;null:存在しない;Salt:塩

参考例1 2−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)エチルアミン
(4−ブロモ−2−クロロフェニル)メタノール2.6gのクロロホルム30ml溶液に、室温下塩化チオニル1.7mlを加え1時間撹拌した。溶媒を減圧下留去し、残留物2.4gを得た。得られた残留物はそのまま次反応に用いた。
残留物のアセトニトリル30ml溶液に、室温下シアン化カリウム2.4gおよび18−クラウン−6−エーテル3.4gを順次加え80℃で一晩撹拌した。室温まで冷却後、反応液に水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:ヘキサン)に付し、淡黄色油状物を得た。得られた淡黄色油状物はこれ以上の精製を行うことなくそのまま次反応に用いた。
淡黄色油状物のTHF20ml溶液に、ボラン−THF錯体(1MTHF溶液)20mlを加え4時間加熱還流した。室温まで冷却後、1M塩酸水溶液を加えさらに1時間加熱還流した。再び室温まで冷却後、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え反応系を塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層より1M塩酸水溶液で抽出し、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え塩基性とした後、再度酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去し、2−(4−ブロモ−2−クロロフェニル)エチルアミン772mgを淡黄色油状物として得た。
FAB-MS:234、236(M+1)
【0019】
参考例2 2−[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミン
[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]アセトニトリル787mgのTHF7ml溶液に、ボラン−ジメチルスルフィド錯体1.66mlを加え6時間加熱還流した。室温まで冷却後、4M塩酸水溶液を加えさらに1時間加熱還流した。再び室温まで冷却後、水層をジエチルエーテルで洗浄し、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え水層を塩基性とした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去し、2−[2−クロロ−5−(トリフルオロメチル)フェニル]エチルアミン(参考例2-1)682mgを無色油状物として得た。
同様にして、(表1)に示される化合物を製造した。
【0020】
【表1】

【0021】
参考例3 2−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)エチルアミン
4−ブロモ−2−フルオロベンジルクロリド1.0gのアセトニトリル30ml溶液に、室温下シアン化カリウム874mgおよび18−クラウン−6−エーテル1.4gを順次加え60℃で二晩撹拌した。室温まで冷却後、反応液に水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去した。得られた残留物864mgはそのまま次反応に用いた。
残留物864mgのTHF10ml溶液に、ボラン−THF錯体(1MTHF溶液)20mlを加え2時間加熱還流した。室温まで冷却後、1M塩酸水溶液を加えさらに1時間加熱還流した。再び室温まで冷却後、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え反応系を塩基性とした後、酢酸エチルで抽出した。有機層より1M塩酸水溶液で抽出し、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え塩基性とした後、再度酢酸エチルで抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去し、2−(4−ブロモ−2−フルオロフェニル)エチルアミン388mgを淡黄色油状物として得た。
FAB-MS:218, 220(M+1)

参考例4 (4−クロロ−2−メトキシフェニル)アセトニトリル
(4−クロロ−2−メトキシフェニル)メタノール5.3gのTHF100ml溶液に、氷冷下塩化チオニル2.7mlを加え30分間撹拌した。室温まで昇温後、溶媒を減圧留去し、残留物を無色油状物として得た。得られた残留物はそのまま次反応に用いた。
残留物のアセトニトリル100ml溶液に、室温下シアン化カリウム3.0gおよび18−クラウン−6−エーテル12.3gを順次加え60℃で一晩撹拌した。室温まで冷却後、反応液をある程度まで減圧留去した。残留物に水を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル−ヘキサン=1:2)で精製し、(4−クロロ−2−メトキシフェニル)アセトニトリル3.6gを淡黄色固体として得た。
FAB-MS:180(M-1)

参考例5 2−(4−クロロ−4−メトキシフェニル)エチルアミン
(4−クロロ−2−メトキシフェニル)アセトニトリル3.6g、ラネーニッケル約10g、30%アンモニア水溶液およびエタノールの混液を水素気流下6時間撹拌した。セライトを用いてろ過後、溶媒を減圧下留去し、2−(4−クロロ−4−メトキシフェニル)エチルアミン3.5gを無色油状物として得た。
ES-MS:186, 188(M+1)
【0022】
製造例1 N−[2−(2−クロロフェニル)エチル]ニコチンアミド塩酸塩
2−(2−クロロフェニル)エチルアミン778mgのピリジン4mlおよび1、4−ジオキサン4mlの混液に、ニコチン酸クロリド塩酸塩890mgを徐々に加え80℃で2時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物を4M塩酸酢酸エチル溶液を用いて塩酸塩とした後、メタノール-酢酸エチルにて析出した結晶をろ取し、N−[2−(2−クロロフェニル)エチル]ニコチンアミド塩酸塩1.36gを白色固体として得た。

製造例2乃至4 製造例1と同様にして、後記(表2)に示す製造例2乃至4の化合物を製造した。
製造例5及び6 後記実施例51と同様にして、後記(表2)に示す製造例5及び6の化合物を製造した。
【0023】
実施例1 製造例1と同様に後記(表3)に示す実施例1の化合物を製造した。

実施例2 N−[2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチル]ニコチンアミド塩酸塩
(1)(2−クロロ−4−フルオロフェニル)アセトニトリル10.2gのTHF100ml溶液に、ボラン−ジメチルスルフィド錯体17mlを加え一晩加熱還流した。室温まで冷却後、4M塩酸酢酸エチル溶液を加え2時間攪拌した。溶媒を減圧留去した後、1M塩酸水溶液を加え酢酸エチルで洗浄し、1M水酸化ナトリウム水溶液を加え水層を塩基性とした後、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し溶媒を減圧留去し、2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチルアミン(参考例2-9)7.35gを得た。
(2)2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチルアミン1.05gのピリジン3mlおよび1、4−ジオキサン4mlの混液に、ニコチン酸クロリド塩酸塩1.2gを徐々に加え80℃で1時間撹拌した。室温まで冷却後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物を4M塩酸酢酸エチル溶液を用いて塩酸塩とした後、エタノール-酢酸エチルにて析出した結晶をろ取した。得られた結晶をエタノールより再結晶し、N−[2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチル]ニコチンアミド塩酸塩1.18gを白色固体として得た。

実施例3乃至39 実施例2(2)と同様にして、後記(表3)乃至(表6)に示す実施例3乃至39の化合物を製造した。
【0024】
実施例40 N−[2−(2、3、4−トリフルオロフェニル)エチル]ニコチンアミド塩酸塩
(2、3、4−トリフルロフェニル)アセトニトリル428mgのTHF5ml溶液に、ボラン−ジメチルスルフィド錯体1.19mlを加え、6時間加熱還流した。室温まで冷却後、4M塩酸水溶液を加え、さらに1時間加熱還流した。再び室温まで冷却後、水層をジエチルエーテルで洗浄した。1M水酸化ナトリウム水溶液を加え水層を塩基性とした後、ジエチルエーテルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物270mgはそのまま次反応に用いた。
残留物270mgのピリジン3.1mlおよび1、4−ジオキサン6.2mlの混液に、ニコチン酸クロリド塩酸塩329mgを加え80℃で30分間撹拌した。室温まで冷却後、反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出した。有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物を4M塩酸酢酸エチル溶液を用いて塩酸塩とした後、エタノールにて析出した結晶をろ取し、N−[2−(2、3、4−トリフルオロフェニル)エチル]ニコチンアミド塩酸塩235mgを白色固体として得た。

実施例41 実施例40と同様にして後記(表6)に示す実施例41の化合物を製造した。
【0025】
実施例42 N−[2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチル]−2−メチルニコチンアミド塩酸塩
2−メチルニコチン酸206mgのDMF4ml溶液に、室温下HOBt243mgおよびWSC塩酸塩575mgを順次加えた。30分後、2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチルアミン347mgを加え、さらに3時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル)で精製し、4M塩酸酢酸エチル溶液を用いて塩酸塩とした後、エタノール−ジエチルエーテルにて析出した結晶をろ取し、N−[2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチル]−2−メチルニコチンアミド塩酸塩371mgを白色固体として得た。

実施例43乃至50 実施例42と同様にして、後記(表7)に示す実施例43乃至50の化合物を合成した。
【0026】
実施例51 N−[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル]−2−メトキシニコチンアミド
2−メトキシニコチン酸1.0gのTHF20ml溶液に、室温下TEA2.73ml、クロロギ酸エチル1.87mlおよび2−(2、4−ジクロロフェニル)エチルアミン0.98mlを順次加え5時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物より酢酸エチル−ヘキサンにて析出した結晶をろ取し、N−[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル]−2−メトキシニコチンアミド1.25gを白色固体として得た。

実施例52乃至55 実施例51と同様にして、後記(表8)に示す実施例52乃至55の化合物を合成した。
【0027】
実施例56 N-[2-(2,4-ジクロロフェニル)エチル]ニコチンアミド 1−オキシド
NMR (DMSO) : 2.96 (2H, t, J=6.8Hz), 3.51 (2H, dt, J=6.8, 6.8Hz), 7.35-7.39 (2H), 7.51 (1H, dd, J=8.4, 6.4Hz), 7.59 (1H, s), 7.66 (1H, d, J=8.4Hz), 8.34 (1H, d, J=6.4Hz), 8.51 (1H), 8.84 (1H).
ES-MS:311, 313, 315(M+1)

実施例57 実施例51と同様にして、後記(表8)に示す実施例57の化合物を合成した。

実施例58 [[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル](ピリジン−3−イルカルボニル)アミノ]酢酸
N−[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル]ニコチンアミド2.9gのTHF50ml溶液に、氷冷撹拌下60%油性水素化ナトリウム520mgを徐々に加えた。30分後、室温まで昇温しブロモ酢酸エチル1.6mlを加えさらに2時間撹拌した。反応液に塩化アンモニウム、1M塩酸水溶液を順次加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:ヘキサン)に付し、淡黄色油状物873mgを得た。得られた淡黄色油状物はこれ以上の精製を行うことなくそのまま次反応に用いた。
淡黄色油状物673mgのメタノール15ml溶液に、室温下1M水酸化ナトリウム水溶液3.4mlを加え1時間撹拌した。反応液に1M塩酸水溶液3.4mlを加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物より酢酸エチル−ヘキサンにて析出した結晶をろ取し、[[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル](ピリジン−3−イルカルボニル)アミノ]酢酸562mgを白色固体として得た。
【0028】
実施例59 N−(2−アミノ−2−オキソエチル)−N−[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル]ニコチンアミド
[[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル](ピリジン−3−イルカルボニル)アミノ]酢酸331mgのDMF6ml溶液に、室温下HOBt153mgおよびWSC塩酸塩360mgを順次加えた。30分後、炭酸アンモニウム約500mgを加え、さらに3時間撹拌した。反応液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物より酢酸エチル−ヘキサンにて析出した結晶をろ取し、N−(2−アミノ−2−オキソエチル)−N−[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル]ニコチンアミド310mgを白色固体として得た。

実施例60及び61 実施例59と同様にして、後記(表8)に示す実施例60及び61の化合物を合成した。
【0029】
実施例62 N−[2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチル]−N−メチルニコチンアミド臭化水素酸塩
N−[2−(2、4−ジクロロフェニル)エチル]ニコチンアミド1.0gのTHF15ml溶液に、氷冷撹拌下60%油性水素化ナトリウム203mgを徐々に加えた。1時間後、ヨウ化メチル0.57mlを加え、直ちに室温まで昇温しさらに1時間撹拌した。反応液に塩化アンモニウム、1M塩酸水溶液を順次加え酢酸エチルで抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去した。残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出液;酢酸エチル:ヘキサン=2:1)で精製し、臭化水素酸エターノール溶液を用いて臭化水素酸塩とした後、エタノール−ジエチルエーテルにて析出した結晶をろ取し、N−[2−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)エチル]−N−メチルニコチンアミド臭化水素酸塩1.23gを白色固体として得た。

実施例63 N−[2−(3−ブロモ−4−メトキシフェニル)エチル]ニコチンアミド
ニコチン酸クロリド塩酸塩 5.3 mgのTHF1 mL溶液に2−(3−ブロモ−4−メトキシフェニル)エチルアミン6.9 mgのN−メチル−2−ピロリジノン溶液 0.06 mLを加え、さらにPS−ジイソプロピルエチルアミン (Argonaut Technologies社製、3.57 mmol/g) 21 mgを加えた後、室温下1日攪拌した。反応液にPS−トリスアミン (Argonaut Technologies社製、3.38mmol/g) 27 mgとPS−イソシアネート (Argonaut Technologies社製、1.47mmol/g) 34 mg を加えた後、室温下2時間攪拌した。反応液を濾過して得られた溶液を、HPLC(カラム:CAPCELLPAK C18 AQ 5μM 30 x 50mm (資生堂製); 溶媒:MeOH / 0.1% HCOOH-H2O = 10/90 (0 min)- 10/90 (1 min)- 100/0 (9 min)-100/0 (12 min); 流速30 mL/min)にて分取精製を行い、N−[2−(3−ブロモ−4−メトキシフェニル)エチル]ニコチンアミドを定量的に得た。

実施例64 実施例2(2)と同様にして後記(表8)に示す実施例64の化合物を製造した。
【0030】
上記製造例及び実施例により得られた化合物及び物性値を下記表2乃至8に示す。
【0031】
【表2】

【0032】
【表3】

【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
また、上記実施例に準じ、下記表9の化合物を合成することができる。
【表9】

【0039】
本発明化合物のNO産生促進活性、eNOS活性化活性及び血流増加作用は以下の試験法により確認した。
実験例1:培養上清NOx量測定
ヒト大動脈由来血管内皮細胞(HAEC、Clonetics社製)をコラーゲンタイプIV処理24wellプレート(イワキ(株)社製)にコンフルエントまで培養した後、培地を無血清培地に変え、16時間培養を続けた。培地の除去後、供試化合物を含む無血清培地にて細胞を30分間処理した。細胞から放出されたNO量は培養上清中のNOx(NO2-、NO3-)量を測定することで算出した。NO2-、NO3-量は酸化窒素分析システム(Eicom社)を用い、添付の方法に従って測定した。
結果:培養上清中NOx増加率を溶媒添加(0.1% DMSO)群に対する相対比で下記表に示す。
【表10】


この結果、本発明に用いられる化合物はNO産生促進活性を有することが確認された。
【0040】
実験例2:3H-アルギニンによる細胞内eNOS活性測定
3H-アルギニンによる細胞内eNOS活性測定はRajesh K.D.らの報告に従った(Rajesh K.D. et al., Hypertension,1993,21,939-94)。ヒト大動脈由来血管内皮細胞(HAEC、Clonetics社製)をコラーゲンタイプIV処理24wellプレート(イワキ(株)社製)にコンフルエントまで培養後、培地をL-Arg無添加、無血清培地に変え、16時間培養を続けた。培地の除去後、3H-Arg(最終濃度1.5μCi/mL)、供試化合物を含むmodified HEPES溶液(25mM Hepes(pH7.4), 140mM NaCl, 5.4mM KCl, 1.8mM CaCl2, 1.0mM MgCl2, 5.0mM glucose)にて細胞を処理した。ice-cold 1.3N TCAを400ul/well加え、反応を停止させた後、凍結融解で細胞を破砕した。細胞破砕液をエーテル処理後、Stop buffer(200mM Hepes (pH5.5), 20mM EDTA)、Dowex樹脂(Bio-Rad)を加え混合した後に、ろ過によりDowex樹脂を除き、3H-Citrullin量を液体シンチレーションカウンターにより測定した。
【0041】
実験例3 麻酔ラット後肢血流増加作用
本発明の製造例及び実施例について、Pentobarbital麻酔ラットにおける後肢血流増加作用を以下の試験方法により確認した。
Wistar系雄性ラット(日本SLC)を用いた。供試化合物は経口投与し、その2時間後、Pentobarbital Na 60 mg/kgを腹腔内投与し麻酔を施した。後肢血流はレーザー血流画像化装置(PIM II; インテグラル)を用いて測定した。
上記試験の結果、本発明化合物の血流改善効果が確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示されるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する血管内皮性一酸化窒素産生促進及び/又は内皮性一酸化窒素合成酵素活性化剤。
【化1】

(式中の記号は、以下の意味を示す。
Hal:ハロゲン、
R:NO2、CN、低級アルキル、OH、ハロゲノ低級アルキル、COOH、-O-低級アルキル、-COO-低級アルキル、-CONH2、-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、又は-低級アルキレン-O-低級アルキル、
R1:H、ハロゲン、低級アルキル、-O-低級アルキル、-S-低級アルキル、又はハロゲノ低級アルキル、
R2:H、低級アルキル、-低級アルキレン-COOH、-低級アルキレン-CONH2、又は-低級アルキレン-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、
m:1乃至5の整数、
n:0、又は1 但し、m+n≦5、
X:N、又はN-オキシド。)
【請求項2】
下記一般式(I)で示されるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその製薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬。
【化2】

(式中の記号は、以下の記載の意味を示す。
Hal:ハロゲン、
R:NO2、CN、低級アルキル、OH、ハロゲノ低級アルキル、COOH、-O-低級アルキル、-COO-低級アルキル、-CONH2、-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、又は-低級アルキレン-O-低級アルキル、
R1:H、ハロゲン、低級アルキル、-O-低級アルキル、-S-低級アルキル、又はハロゲノ低級アルキル、
R2:H、低級アルキル、-低級アルキレン-COOH、-低級アルキレン-CONH2、又は-低級アルキレン-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、
m:1乃至5の整数、
n:0、又は1 但し、m+n≦5、
X:N、又はN-オキシド。
但し、2−クロロフェネチル−3−ニコチンアミドを除く。)
【請求項3】
下記一般式(Ia)で示されるフェネチルニコチンアミド誘導体又はその塩。
【化3】

(式中の記号は、以下の意味を示す。
Hal:ハロゲン、
R:NO2、CN、低級アルキル、OH、ハロゲノ低級アルキル、COOH、-O-低級アルキル、-COO-低級アルキル、-CONH2、-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、又は-低級アルキレン-O-低級アルキル、
R1a:H、低級アルキル、-O-低級アルキル、-S-低級アルキル、又はハロゲノ低級アルキル、
R2:H、低級アルキル、-低級アルキレン-COOH、-低級アルキレン-CONH2、又は-低級アルキレン-CO-(モノ又はジ低級アルキルアミノ)、
m:1乃至5の整数、
n:0、又は1 但し、m+n≦5、
X:N、又はN-オキシド。
但し、HalがCl又はFでありかつmが1のときは、nは1を示す。)

【公開番号】特開2007−277096(P2007−277096A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−208547(P2004−208547)
【出願日】平成16年7月15日(2004.7.15)
【出願人】(000006677)アステラス製薬株式会社 (274)
【Fターム(参考)】