説明

フェノールスルホン酸エステル、顕色剤及び感熱記録材料

【課題】発色感度が十分に高く、しかも、長期間、フィルムや合成皮革などに接した状態においても褪色が極めて生じにくい、優れた耐可塑剤性を有する感熱記録材料を実現し得る新規な顕色剤及び該顕色剤を使用した感熱記録材料を提供する。
【解決手段】 一般式(I):


[式中、Rは、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基またはアラルキル基を示し、m個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、Zは2〜4価の連結基を示し、mは0〜4の整数であり、nは2〜4の整数である。]で表されるフェノールスルホン酸エステル。該一般式(I)のフェノールスルホン酸エステル(顕色剤)を無色又は淡色の塩基性ロイコ染料とともに含有させた感熱発色層を設けてなる感熱記録材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規なフェノールスルホン酸エステルおよびその顕色剤としての用途、並びに感熱記録材料に関する。
【背景技術】
【0002】
無色又は淡色の塩基性(電子供与性)ロイコ染料(以下、単に「染料」ともいう。)と、加熱により該染料と反応して該染料を発色させる電子受容性顕色剤(以下、単に「顕色剤」ともいう。)とを主成分とする感熱発色層を有する感熱記録材料は、広く実用化されている。そして、当該感熱記録材料に記録を行うには、通常、サーマルヘッドを内蔵したサーマルプリンター等が使用される。このような感熱記録方式は、実用化されている他の記録方式に比べて、1)記録時に騒音がない、2)現像定着プロセスを必要としない、3)メンテナンスフリーである、4)機器が比較的安価である、5)機器がコンパクトである、6)得られた発色が非常に鮮明である、といった特徴があり、ファクシミリ、コンピューターの端末プリンタ、自動券売機、計測用レコーダー、屋外で使用されるハンディターミナル等に広範囲に使用されている。
【0003】
近年、この種の感熱記録材料の用途としては、前述した各種機器の出力用紙の他、種々の分野における金券用紙等にも使用されるようになってきた。しかし、各種チケット用、レシート用、ラベル用、銀行のATM用、ガスや電気の検針用、車馬券等の種々の分野での金券用等として使用されるにあたって、感熱記録材料には、フィルムや合成皮革に接した状態や、高温高湿下に置かれた状態、また、日光や蛍光灯等の光が照射されている状態で、長期間保管された場合であっても、印字部の読み取り適性に問題を生じない優れた保存性(耐可塑剤性、耐熱性、耐湿性、耐光性等)が要求される。
【0004】
従来、印字部の保存性向上に関して、ジフェニルスルホン誘導体を顕色剤又は画像安定剤として用いる感熱記録材料(特許文献1、2)、染料及び顕色剤に加え、ジフェニルスルホン誘導体を安定剤として配合した感熱記録材料(特許文献3)などが提案されている。
【0005】
しかし、感熱記録材料が金券用途等の上述の用途に使用されることが多くなるにつれて、印字部の保存性、特に、耐可塑剤性の更なる向上が要求され、さらに、近時の機器(プリンター)の小型化等により、感熱記録材料にはより低エネルギーで発色する高感度化の要求が強くなってきている。しかし、印字部の耐可塑剤性に有利とされる顕色剤を使用した従来の感熱記録材料は概して発色感度が低く、逆に感度に有利とされる顕色剤を使用した従来の感熱記録材料は概して耐可塑剤性に劣り、両方の性能を十分に兼ね備えたものはなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−333329号公報
【特許文献2】特開平10−29969号公報
【特許文献3】特開2003−212841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑み成されたもので、その解決しようとする課題は、発色感度が十分に高く、しかも、長期間、フィルムや合成皮革などに接した状態においても褪色が極めて生じにくい、優れた耐可塑剤性を有する感熱記録材料を実現し得る新規な顕色剤及び該顕色剤を使用した感熱記録材料を提供することである。
また、十分に高い発色感度と優れた耐可塑剤性を有し、しかも、耐湿性、耐水性等の耐可塑剤性以外の保存性も良好な感熱記録材料を実現し得る新規な顕色剤及び該顕色剤を使用した感熱記録材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定構造のフェノールスルホン酸エステル誘導体、すなわち、下記の一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステルが感熱記録材料の顕色剤として優れており、また、当該フェノールスルホン酸エステルを感熱発色層に含有させた感熱記録材料が良好な発色感度を有するとともに、印字部の耐可塑剤性が極めて良好となり、さらに耐湿性、耐水性等の耐可塑剤性以外の保持性も改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、
[1] 一般式(I):
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、Rは、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基またはアラルキル基を示し、m個のRは互いに同一でも、異なってもよく、Zは2〜4価の連結基を示し、mは0〜4の整数であり、nは2〜4の整数である。]で表されるフェノールスルホン酸エステル、
[2]式中のZが、置換基を有していてもよいベンゼン環を1個または2個有するアリーレン基、置換基を有していてもよい2個以上のベンゼン環が縮合したアリーレン基又は2価の基を介して置換基を有していてもよい2個以上のベンゼン環が連結されたビスアリーレン基であることを特徴とする上記[1]に記載のフェノールスルホン酸エステル、
[3]上記[1]又は[2]記載のフェノールスルホン酸エステルを含む感熱記録材料用顕色剤、
[4]支持体上に、無色又は淡色の塩基性ロイコ染料と、顕色剤とを含有する感熱発色層を設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤として上記[1]又は[2]に記載のフェノールスルホン酸エステルを1種または2種以上含有することを特徴とする感熱記録材料、及び
[5]感熱発色層上にカルボキシ変性ポリビニルアルコール、エピクロロヒドリン系樹脂及びポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂を含む保護層がさらに設けられている、上記[4]記載の感熱記録材料、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の感熱記録材料が印字部の耐可塑剤性に優れる理由は明確に解明されていないが、一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステルが、感熱発色層に染料とともに存在することで、染料を発色させる電子受容性顕色剤として作用し、顕色剤と染料との反応生成物である電子移動錯体の安定性が高くなるためと推察される。
【0013】
また、本発明の感熱記録材料が高い発色感度を有する理由は明確に解明されていないが、一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステルの酸性度が高いため塩基性染料との反応性が高いことが推察される。
【0014】
さらに、一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステルと染料の反応生成物の色相が緑色系であることから、本発明の感熱記録材料の印字部は緑色系の色相を呈し、優れたバーコード読み取り適性を示す。すなわち、不所望な褪色が仮に生じて印字濃度が低下した場合でも、一般的に赤外線を利用しているバーコード読取装置に対して、優れたバーコード読み取り適性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳しく説明する。
本発明の一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステル (以下、単に「本発明のフェノールスルホン酸エステル」ともいう。)は新規化合物である。
【0016】
本発明の一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステルにおいて、式中のRは、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基またはアラルキル基を示し、m個のRは互いに同一でも、異なってもよい。工業的な入手のし易さから、Rは水酸基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシル基が好ましく、水酸基が特に好ましい。
【0017】
ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素、ヨウ素等が挙げられるが、工業的な取扱いに優れるという点から塩素、臭素が好ましい。
【0018】
アルキル基としては、炭素数が1〜12の直鎖又は分岐のアルキル基が挙げられ、好ましくは炭素数が1〜5、より好ましくは炭素数が1〜4である。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基等が挙げられるが、炭素数が多くなると融点が低下する可能性があるため、中でも、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0019】
アルケニル基としては、直鎖又は分岐の炭素数が2〜12、好ましくは炭素数が2〜4の不飽和炭化水素が挙げられる。例えば、ビニル基、アリル基、イソプロペニル基、1−プロペニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1,3−ブタンジエニル基、2−メチル−2−プロペニル基等が挙げられ、中でも合成の容易さの点から工業的にはビニル基、アリル基が好ましい。
【0020】
アルコキシル基としては、炭素数が1〜6、好ましくは炭素数が1〜4のアルコキシル基が挙げられる。例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、アリルオキシ基などが挙げられ、中でも合成の容易さの点から工業的にはメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基が好ましい。
【0021】
アリール基としては、炭素数が6〜14の単環〜3環式芳香族炭化水素基、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等が挙げられ、中でも原料の入手のし易さや合成の容易さの点からフェニル基が好ましい。
【0022】
また、アリール基は、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよく、置換基であるアルキル基、アリール基としては、上述したものと同様のものが挙げられる。置換基の位置及び数は、本発明の誘導体の特性を損なわない範囲で、適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。アリール基が2個以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。このような置換アリール基の具体例としては、ビフェニル基や、炭素数1〜4のアルキル置換アリール基等が挙げられる。
【0023】
アラルキル基としては、フェニルメチル基(ベンジル基)、フェニルエチル基(フェネチル基)、ジフェニルメチル基、3−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、ビフェニルメチル基、ナフチルメチル基等が挙げられる。
【0024】
また、アラルキル基は、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。置換基であるアルキル基、アリール基としては、上述したものと同様のものが挙げられる。置換基の位置及び数は、本発明の誘導体の特性を損なわない範囲で、適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。アラルキル基が2個以上の置換基で置換されている場合、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。置換基を有するアラルキル基としては、炭素数6〜8のアルキル置換アラルキル基が好適である。
【0025】
また、式中のmは0〜4の整数を表すが、合成の容易さの点から、好ましくは0〜2であり、より好ましくは0である。但し、mが2〜4である場合、m個のRはそれぞれ同一でも異なっていてもよく、合成の容易さの点から、同一が好ましい。
【0026】
Zは、2〜4価の連結基、好ましくは2〜3価の連結基、より好ましくは2価の連結基を示す。該連結基としては、脂肪族炭化水素基若しくは置換されていてもよいアリーレン基が挙げられ、中でも、安定性の点からアリーレン基が好ましく、2価のアリーレン基が更に好ましい。
【0027】
ここで、脂肪族炭化水素基としては、エーテル結合を有してもよい炭素数が1〜12の直鎖、分枝若しくは環状の飽和若しくは不飽和の炭化水素基が挙げられるが、直鎖のエーテル結合を有していてもよい飽和炭化水素基が好ましく、直鎖のエーテル結合を有しない飽和炭化水素基が更に好ましい。
【0028】
炭素数が1〜12の直鎖、分枝若しくは環状の飽和炭化水素基は、炭素数が2〜6が好ましく、炭素数3〜4が更に好ましく、炭素数が1〜12の直鎖又は分岐若しくは環状の不飽和炭化水素基は、炭素数2〜6が好ましく、炭素数2〜4が更に好ましい。
【0029】
エーテル結合を有しない飽和炭化水基の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、ウンデカメチレン基、ドデカメチレン基、メチルメチレン基、ジメチルメチレン基、メチルエチレン基、メチレンエチレン基、エチルエチレン基、1,2−ジメチルエチレン基、1−メチルトリメチレン基、1−メチルテトラメチレン基、1,3−ジメチルトリメチレン基、1−エチル−4−メチル−テトラメチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられ、中でも直鎖のエーテル結合を有しない飽和炭化水素基であるエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が好ましい。
【0030】
エーテル結合を有しない不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、ビニレン基、エチニレン基、プロペニレン基、2−ブテニレン基、2−ブチニレン基、1−ビニルエチレン基等が挙げられ、中でもプロペニレン基、2−ブテニレン基が好ましい。
【0031】
エーテル結合を有する炭化水素基の具体例としては、例えば、エチレンオキシエチレン基、テトラメチレンオキシテトラメチレン基、エチレンオキシエチレンオキシエチレン基、エチレンオキシメチレンオキシエチレン基、1,3−ジオキサン−5,5−ビスメチレン基等が挙げられ、中でも直鎖のエーテル結合を有する飽和炭化水素であるエチレンオキシエチレン基、エチレンオキシエチレンオキシエチレン基が好ましい。
【0032】
置換されていてもよいアリーレン基は、置換基を有していてもよいベンゼン環を1個または2個有するアリーレン基、置換基を有していてもよい2個以上のベンゼン環が縮合したアリーレン基又は2価の基を介して置換基を有していてもよい2個以上のベンゼン環が連結されたビスアリーレン基が好ましく、具体的には、
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、Aはハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基またはアラルキル基を示し、o個のAは互いに同一でも、異なってもよい。oは0〜4の整数を示す。Xは2価の基を示す。Yは−NH−、−O−、又は−S−を示す。)等が挙げられ、中でも
【0035】
【化3】

【0036】
が好ましい。
【0037】
ここで、Aとしては、合成の容易さや原料の入手のし易さの点から水酸基、アルキル基、アルケニル基、アリール基、又はフェノールスルホン酸基が好まししい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、tert-ブチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2−ブチニル基等が挙げられ、アリール基としては、フェニル基、キシリル基、メシチル基、クメニル基等が挙げられる。また、oとしては、合成の容易さと原料の入手のし易さの点から、1〜0が好ましく、0がとりわけ好ましい。また、2価の基であるXとしては、−CH−、−C(CH−、−CHCH−、−CH(C)−、−CH(C)−、−C(cyclo-C10)−、−CH(C64)−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−SO−、−CO
−、−NH−、−CONH−、−NHCONH−等が挙げられる。
【0038】
nは2〜4の整数を表すが、好ましくは2〜3であり、より好ましくは2である。
【0039】
本発明の一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステルは、一般式(I)において特定のnを有する化合物単独であってもよいし、一般式(I)においてnの異なる化合物の任意の割合の混合物であってもよい。
【0040】
本発明の一般式(I)で表されるフェノールスルホン酸エステルの具体例としては、例えば、下記の化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
【化4】

【0042】
【化5】

【0043】
【化6】

【0044】
【化7】

【0045】
【化8】

【0046】
【化9】

【0047】
【化10】

【0048】
【化11】

【0049】
【化12】

【0050】
【化13】

【0051】
【化14】

【0052】
【化15】

【0053】
【化16】

【0054】
【化17】

【0055】
【化18】

【0056】
【化19】

【0057】
【化20】

【0058】
【化21】

【0059】
【化22】

【0060】
【化23】

【0061】
【化24】

【0062】
【化25】

【0063】
【化26】

【0064】
【化27】

【0065】
【化28】

【0066】
【化29】

【0067】
【化30】

【0068】
【化31】

【0069】
【化32】

【0070】
【化33】

【0071】
【化34】

【0072】
【化35】

【0073】
【化36】

【0074】
これらの中では、目的とする本発明の感熱記録材料における発色感度と保存性(特に耐可塑剤性)のバランスの点から化合物(7)〜(30)が好ましい。
【0075】
本発明のフェノールスルホン酸エステルは、公知のスルホン酸エステルの製造方法に準じて合成される。すなわち、例えば、
式(II)
【0076】
【化34】

【0077】
(式中、R、mは前記と同義である。)
で表される化合物(II)と、式(III)
【0078】
【化35】

【0079】
(式中、Z、nは前記と同義である。)
で表される化合物(III)とを反応させることによって製造することができる。
【0080】
当該反応は、例えば、トリエチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基あるいは水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの無機塩基を脱酸剤として非プロトン性有機溶媒中で行われる。反応温度は、通常、5℃〜沸点であり、反応時間は適宜選択できる。非プロトン性有機溶媒としては、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒等が挙げられる。トリエチルアミン、ピリジン等の有機塩基を溶媒として用いても良い。
【0081】
本反応により製造されるフェノールスルホン酸エステル誘導体は、反応終了後、反応液から目的物の抽出操作を行い、さらに公知の精製法(逆抽出、カラムクロマトグラフィー、再結晶等)により精製して得ることが出来る。
【0082】
また、化合物(II)の代わりに、下記の式(IV)で表される化合物(IV)を用いることも出来る。
【0083】
【化36】

【0084】
(式中、R、mは前記と同義であり、Pは一般的な保護基を示す。)
式中のPで表される一般的な保護基の具体例としては、例えば、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、メチル基、t−ブチル基、ベンジル基などが挙げられる。
【0085】
かかる化合物(IV)を用いる場合、化合物(IV)と化合物(III)を、前記と同様の条件で反応させ、得られた化合物を公知の方法で脱保護することにより、目的の化合物が得られる。例えば、化合物(IV)の式中のPがアセチル基の場合は、化合物(IV)と化合物(III)との反応物を、アルカリを加えた溶媒中で加水分解によって脱保護することにより、目的物を得ることができる。
【0086】
本発明の感熱記録材料は、支持体上に、無色ないし淡色の塩基性ロイコ染料と、顕色剤とを含有する感熱発色層を設けた感熱記録材料であり、顕色剤として前記一般式(1)で表されるフェノールスルホン酸エステル(本発明のフェノールスルホン酸エステル)を1種以上含有することを特徴とする。
【0087】
感熱発色層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、さらに他の顕色剤を併用することができる。また、本発明の効果を阻害しない範囲で増感剤、画像安定剤、バインダー、架橋剤、顔料、滑剤などを含有させることができる。バインダー、架橋剤、顔料などは感熱発色層のみならず保護層等をはじめとする必要に応じて設けられる各塗工層にも使用することができる。
【0088】
以下に、本発明の感熱記録材料の感熱発色層に使用される各種材料を例示する。
本発明で使用する無色ないし淡色の塩基性ロイコ染料としては、従来の感圧あるいは感熱記録分野における公知のものは全て使用可能であり、特に制限されるものではないが、トリフェニルメタン系化合物、フルオラン系化合物、フルオレン系、ジビニル系化合物等が好ましい。以下に代表的な無色ないし淡色の塩基性ロイコ染料(染料前駆体)の具体例を示す。また、これらの染料(染料前駆体)は単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0089】
<トリフェニルメタン系ロイコ染料>
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド〔別名クリスタルバイオレットラクトン〕;
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)フタリド〔別名マラカイトグリーンラクトン〕
【0090】
<フルオラン系ロイコ染料>
3−ジエチルアミノ−6−メチルフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−(m−メチルアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアニリノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−n−オクチルアミノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ベンジルアミノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−ジベンジルアミノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−メチルフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−p−メチルアニリノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン;
3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン;
3−ジエチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン;
3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔a〕フルオラン;
3−ジエチルアミノ−ベンゾ〔c〕フルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−フルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o,p−ジメチルアニリノ)フルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−クロロフルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−エトキシエチル−7−アニリノフルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン;
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−p−メチルアニリノフルオラン;
3−ジブチルアミノ−7−(o−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジブチルアミノ−7−(o−フルオロアニリノ)フルオラン;
3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(m−トリフルオロメチルアニリノ)フルオラン;
3−ジ−n−ペンチルアミノ−6−クロロ−7−アニリノフルオラン;
3−ジ−n−ペンチルアミノ−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン;
3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−メチル−N−プロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−メチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−エチル−N−シクロヘキシルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−エチル−N−キシルアミノ)−6−メチル−7−(p−クロロアニリノ)フルオラン;
3−(N−エチル−p−トルイディノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−エチル−N−イソアミルアミノ)−6−クロロ−7−アニリノフルオラン;
3−(N−エチル−N−テトラヒドロフルフリルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−エチル−N−イソブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−(N−エチル−N−エトキシプロピルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
3−シクロヘキシルアミノ−6−クロロフルオラン;
2−(4−オキサヘキシル)−3−ジメチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
2−(4−オキサヘキシル)−3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
2−(4−オキサヘキシル)−3−ジプロピルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン;
2−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−メトキシ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−クロロ−3−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−クロロ−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−ニトロ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−アミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−フェニル−6−メチル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−ベンジル−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2−ヒドロキシ−6−p−(p−フェニルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
3−メチル−6−p−(p−ジメチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジエチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
3−ジエチルアミノ−6−p−(p−ジブチルアミノフェニル)アミノアニリノフルオラン;
2,4−ジメチル−6−〔(4−ジメチルアミノ)アニリノ〕−フルオラン
【0091】
<フルオレン系ロイコ染料>
3,6,6’−トリス(ジメチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3’−フタリド〕;
3,6,6’−トリス(ジエチルアミノ)スピロ〔フルオレン−9,3’−フタリド〕
【0092】
<ジビニル系ロイコ染料>
3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド;
3,3−ビス−〔2−(p−ジメチルアミノフェニル)−2−(p−メトキシフェニル)エテニル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド;
3,3−ビス−〔1,1−ビス(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラブロモフタリド;
3,3−ビス−〔1−(4−メトキシフェニル)−1−(4−ピロリジノフェニル)エチレン−2−イル〕−4,5,6,7−テトラクロロフタリド
【0093】
<その他>
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド;
3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−オクチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド;
3−(4−シクロヘキシルエチルアミノ−2−メトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−アザフタリド;
3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド;
3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(3’−ニトロ)アニリノラクタム;
3,6−ビス(ジエチルアミノ)フルオラン−γ−(4’−ニトロ)アニリノラクタム;
1,1−ビス−〔2’,2’,2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジニトリルエタン;
1,1−ビス−〔2’,2’,2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2−β−ナフトイルエタン;
1,1−ビス−〔2’,2’,2'',2''−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−2,2−ジアセチルエタン;
ビス−〔2,2,2’,2’−テトラキス−(p−ジメチルアミノフェニル)−エテニル〕−メチルマロン酸ジメチルエステル
【0094】
<併用可能な顕色剤>
本発明のフェノールスルホン酸エステルと併用することのできる顕色剤としては、電子受容性の種々の化合物又は酸化剤等、従来の感圧あるいは感熱記録の分野で公知のものはすべて使用可能であり、特に制限されるものではない。
【0095】
例えば、活性白土、アタパルジャイト、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム等の無機酸性物質、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、ヒドロキノンモノベンジルエーテル、4−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、2,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、4−ヒドロキシフェニル−4’−ベンジルオキシフェニルスルホン、3,4−ジヒドロキシフェニル−4’−メチルフェニルスルホン、特開平8−59603号公報記載のアミノベンゼンスルホンアミド誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニルチオエトキシ)メタン、1,5−ジ(4−ヒドロキシフェニルチオ)−3−オキサペンタン、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,4−ビス[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、1,3−ビス[α−メチル−α−(4’−ヒドロキシフェニル)エチル]ベンゼン、ジ(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルフィド、2,2’−チオビス(3−tert−オクチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノール)、国際公開WO02/081229号パンフレットあるいは特開2002−301873号公報記載の化合物等が挙げられる。また、N,N’−ジ−m−クロロフェニルチオウレア等のチオ尿素化合物、p−クロロ安息香酸、没食子酸ステアリル、ビス[4−(n−オクチルオキシカルボニルアミノ)サリチル酸亜鉛]2水和物、4−[2−(p−メトキシフェノキシ)エチルオキシ]サリチル酸、4−[3−(p−トリルスルホニル)プロピルオキシ]サリチル酸、5−[p−(2−p−メトキシフェノキシエトキシ)クミル]サリチル酸の芳香族カルボン酸及びこれらの芳香族カルボン酸の亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、マンガン、スズ、ニッケル等の多価金属塩との塩、さらにはチオシアン酸亜鉛のアンチピリン錯体、テレフタルアルデヒド酸と他の芳香族カルボン酸との複合亜鉛塩等が挙げられる。これらの顕色剤は、単独又は2種以上を混合して使用することもできる。また、特開平10−258577号公報記載の高級脂肪酸金属複塩や多価ヒドロキシ芳香族化合物などの金属キレート型発色成分を含有することもできる。
【0096】
<増感剤>
増感剤としては、従来公知の増感剤を使用することができる。かかる増感剤としては、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド等の脂肪酸アマイド、エチレンビスアミド、モンタン酸ワックス、ポリエチレンワックス、1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン、p−ベンジルビフェニル、β−ベンジルオキシナフタレン、4−ビフェニル−p−トリルエーテル、m−ターフェニル、1,2−ジフェノキシエタン、シュウ酸ジベンジル、シュウ酸ジ(p−クロロベンジル)、シュウ酸ジ(p−メチルベンジル)、テレフタル酸ジベンジル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−α−ナフチルカーボネート、1,4−ジエトキシナフタレン、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸フェニルエステル、o−キシレン−ビス−(フェニルエーテル)、4−(m−メチルフェノキシメチル)ビフェニル、4,4′−エチレンジオキシ−ビス−安息香酸ジベンジルエステル、ジベンゾイルオキシメタン、1,2−ジ(3−メチルフェノキシ)エチレン、ビス[2−(4−メトキシ−フェノキシ)エチル]エーテル、p−ニトロ安息香酸メチル、p−トルエンスルホン酸フェニルを例示することができるが、特にこれらに制限されるものではない。これらの増感剤は、単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0097】
<画像安定剤>
本発明においては、記録画像の耐油性効果等のため画像安定剤を用いることができる。画像安定剤としては、例えば、4,4′−ブチリデン(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、2,2′−ジ−t−ブチル−5,5′−ジメチル−4,4′−スルホニルジフェノール、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)ブタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン等を例示することができるが、特にこれらに制限されるものではない。これらの画像安定剤は、単独又は2種以上を混合して使用してもよい。
【0098】
<バインダー>
バインダーとしては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができる。例えば、完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコール、アセトアセチル化ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、アマイド変性ポリビニルアルコール、スルホン酸変性ポリビニルアルコール、ブチラール変性ポリビニルアルコール、オレフィン変性ポリビニルアルコール、ニトリル変性ポリビニルアルコール、ピロリドン変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコール、その他の変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系高分子物質;ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アセチルセルロース等のセルロース誘導体;スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体等のスチレン系コポリマー等が挙げられる。また、カゼイン、アラビヤゴム、酸化澱粉、エーテル化澱粉、ジアルデヒド澱粉、エステル化澱粉、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、ポリビニルブチラール、ポリスチロース及びそれらの共重合体、ポリアミド樹脂、シリコーン樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ケトン樹脂、クマロ樹脂等を例示することができる。これらの高分子物質は水、アルコール、ケトン類、エステル類、炭化水素などの溶剤に溶かして使用するほか、水又は他の媒体中に乳化又はペースト状に分散した状態で使用することができ、また、目的とする品質に応じて併用することもできる。
【0099】
<架橋剤>
架橋剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、グリオキザール、メチロールメラミン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン尿素樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ソーダ、塩化第二鉄、塩化マグネシウム、ホウ砂、ホウ酸、ミョウバン、塩化アンモニウムなどを使用することができ、目的とする品質に応じて併用することもできる。
【0100】
<顔料>
顔料としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、焼成カオリン、ケイソウ土、タルク、酸化チタン、水酸化アルミニウムなどの無機又は有機充填剤などが挙げられる。これらの顔料は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0101】
<滑剤>
滑剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩、ワックス類、シリコーン樹脂類などが挙げられる。これらの滑剤は、単独又は2種以上混合して使用してもよい。
【0102】
これらの他に目的に応じてベンゾフェノン系やトリアゾール系の紫外線吸収剤、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、蛍光染料等を使用することができる。
【0103】
顕色剤として使用する本発明のフェノールスルホン酸エステルの量は、要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、染料1重量部に対して0.1重量部〜10重量部、好ましくは0.5重量部〜5重量部である。その使用量が多すぎると保存性が低下する可能性があり、少なすぎると印字濃度が低くなったり、保存性が低下したりする可能性がある。
【0104】
本発明のフェノールスルホン酸エステル以外の顕色剤を併用する場合、併用する顕色剤の量は要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、本発明のフェノールスルホン酸エステル1重量部に対して0.0001〜10000重量部、好ましくは0.005〜20重量部、より好ましくは0.01〜10重量部程度使用することができる。
【0105】
また、感熱発色層に使用する増感剤、画像安定剤、顔料、滑剤等、その他の各種成分の種類及び量は要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、通常、染料1重量部に対して、増感剤0.5〜10重量部程度、画像安定剤0.01〜10重量部程度、その他の成分はそれぞれ0.01〜10重量部程度が使用される。
【0106】
<支持体>
支持体としては、その形状、構造、大きさ、材料等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。形状としては、例えば、シート状、ロール状、平板状などが挙げられる。構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、大きさとしては、目的とする感熱記録材料の用途等に応じて適宜選択することができる。材料としては、例えば、プラスチックフィルム、合成紙、上質紙、古紙パルプ、再生紙、片艶紙、耐油紙、コート紙、アート紙、キャストコート紙、微塗工紙、樹脂ラミネート紙、剥離紙などが挙げられる。またこれらを組み合わせた複合シートを支持体として使用してもよい。
【0107】
支持体の厚みとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、30〜2,000μmが好ましく、50〜1,000μmがより好ましい。
【0108】
本発明の感熱記録材料において、感熱発色層の形成方法は、特に制限はなく、一般に知られている方法により形成することができる。例えば、染料、顕色剤並びに必要に応じて添加する材料を、別々に、ボールミル、アトライター、サンドグライダーなどの粉砕機あるいは適当な乳化装置によって数ミクロン以下の粒子径になるまで微粒化し、バインダーや架橋剤及び目的に応じて各種の添加材料を加えて塗液を調製する。この塗液に用いる溶媒としては、水あるいはアルコール等を用いることができ、塗液の固形分は通常20〜40重量%程度とすることが好ましい。
【0109】
本発明の感熱記録材料は、上記塗液を支持体上に塗布して感熱発色層を形成することによって得ることができる。塗布する手段は特に限定されるものではなく、周知慣用技術に従って塗布することができ、例えば、エアーナイフコーター、ロッドブレードコーター、ベントブレードコーター、ベベルブレードコーター、ロールコーター、カーテンコーターなど各種コーターを備えたオフマシン塗工機やオンマシン塗工機が適宜選択され使用される。
【0110】
感熱発色層の塗布量は、その組成や感熱記録材料の用途等により適宜選択することができるが、通常、乾燥重量で1〜20g/m、好ましくは2〜12g/mの範囲である。
【0111】
<保護層>
本発明の感熱記録材料においては、感熱発色層上に保護層を設けることが好ましく、耐熱性、耐水性、耐湿熱性、耐溶剤性等の点から、保護層にa)カルボキシ変性ポリビニルアルコール、b)エピクロロヒドリン系樹脂及びc)ポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂を含有させることが特に好ましい。
【0112】
なお、b)エピクロロヒドリン系樹脂とc)ポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂はこれらを併用することが重要であり、保護層において、各々を単独で使用した場合、十分な耐水性などを得ることはできない。また、一般的な架橋剤(例えばグリオキザール)をエピクロロヒドリン系樹脂又はポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂と併用しても、十分な耐水性を得ることはできない。
【0113】
本発明で使用される「カルボキシ変性ポリビニルアルコール」は、ポリビニルアルコールに反応性を高める目的でカルボキシル基を導入したものであり、ポリビニルアルコールとフマル酸、無水フタル酸、無水メリト酸、無水イタコン酸などの多価カルボン酸との反応物、あるいはこれらの反応物のエステル化物、さらに酢酸ビニルとマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、アクリル酸、メタアクリル酸などのエチレン性不飽和ジカルボン酸との共重合物の鹸化物として得られる。具体的には例えば特開昭53−91995号公報などに例示されている製造方法が挙げられる。
【0114】
また、本発明で使用される「エピクロロヒドリン系樹脂」の具体例として、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂、ポリアミンエピクロロヒドリン樹脂等を挙げることができ、これらはいずれかを単独で用いるか又は併用することができる。また、エピクロロヒドリン系樹脂の主鎖に存在するアミンとしては第1級から第4級までのものを使用することができ、特に制限はない。さらに、カチオン化度及び分子量は、耐水性が良好なことから、カチオン化度5meq/g・Solid以下(pH7での測定値)、分子量50万以上が好ましい。具体例としては、スミレーズレジン650(30)、スミレーズレジン675A、スミレーズレジン6615(以上、住友化学社製)、WS4002、WS4020、WS4024、WS4030、WS4046、WS4010、CP8970(以上、星光PMC社製)などが挙げられる。
【0115】
また、本発明において「ポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂」とは、ポリアミン系樹脂及び/又はポリアミド系樹脂の意味であり、当該「ポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂」には、ポリアミド樹脂、ポリアミン樹脂、ポリアミド尿素系樹脂、ポリエチレンイミン樹脂、ポリアルキレンポリアミン樹脂、ポリアルキレンポリアミド樹脂、ポリアミンポリ尿素系樹脂、変性ポリアミン樹脂、変性ポリアミド樹脂、ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂、ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂等が包含され、これらは1種または2種以上を使用できる。具体例としては、スミレーズレジン302(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素系樹脂)、スミレーズレジン712(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素系樹脂)、スミレーズレジン703(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素系樹脂)、スミレーズレジン636(住友化学社製:ポリアミンポリ尿素系樹脂)、スミレーズレジンSPI−100(住友化学社製:変性ポリアミン樹脂)、スミレーズレジンSPI−102A(住友化学社製:変性ポリアミン樹脂)、スミレーズレジンSPI−106N(住友化学社製:変性ポリアミド樹脂)、スミレーズレジンSPI−203(50)(住友化学社製:ポリアミド樹脂)、スミレーズレジンSPI−198(住友化学社製:ポリアミド樹脂)、プリンティブA−700(旭化成社製)、プリンティブA−600(旭化成社製)、PA6500(星光PMC社製:ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂)、PA6504(星光PMC社製:ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂)、PA6634、PA6638、PA6640、PA6644、PA6646、PA6654、PA6702、PA6704(以上、星光PMC社製:ポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂)、CP8994(星光PMC社製:ポリエチレンイミン樹脂)などが挙げられる。特に制限されるものではないが、発色感度の点から、少なくともポリアミン系樹脂(ポリアルキレンポリアミン樹脂、ポリアミンポリ尿素系樹脂、変性ポリアミン樹脂、ポリアルキレンポリアミン尿素ホルマリン樹脂及びポリアルキレンポリアミンポリアミドポリ尿素樹脂等から選ばれる少なくとも1種)を使用することが望ましい。
【0116】
保護層におけるb)エピクロロヒドリン系樹脂とc)ポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂の含有量は、a)カルボキシ変性ポリビニルアルコール100重量部に対してそれぞれ1〜100重量部であることが好ましく、より好ましくは5〜50重量部である。含有量が少なすぎると架橋反応が不十分となり良好な耐水性が得られず、多すぎると塗液の粘度増加やゲル化により操業性悪化の問題が生じる。なお、エピクロロヒドリン系樹脂はpH6.0以上で架橋反応するため、保護層用の塗液のpHは6.0以上に調整することが望ましい。
【0117】
本発明において、保護層には上述の高分子物質(バインダー成分)に顔料を配合するのが好ましく、当該顔料としては、例えば、カオリン、(焼成)カオリン、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、水酸化アルミニウム、ケイソウ土、タルク等が挙げられ、これらの顔料は、単独又は2種以上を混合して使用することができる。保護層中の顔料及びバインダーの含有量は、顔料100重量部に対しバインダー(固形分)30〜300重量部程度が好ましい。
【0118】
保護層に使用する各種成分の種類及び量は要求される性能及び記録適性に従って決定され、特に限定されるものではないが、一般的には保護層の塗布量は1〜5g/mの範囲である。
【0119】
本発明の感熱記録材料においては、発色感度をさらに高める目的で、填料を含有した高分子物質などの下塗層を感熱発色層の下に設けることもできる。また、支持体の感熱発色層とは反対側の面にバックコート層を設け、カールの矯正を図ることも可能である。支持体と感熱発色層の間、感熱発色層と保護層間、更に支持体とバック層間に中間層(断熱層)を形成してもよい。また、各層の塗工後にスーパーカレンダー等による平滑化処理を施すなど、感熱記録材料分野における各種公知の技術を必要適宜付加することができる。
【0120】
本発明の感熱記録材料の印字部は緑色系の色相を呈する。よって、印字後に極めて過酷な条件に長期に亘って放置されることによって、軽微な褪色が生じて、印字濃度が低下することがあっても、一般的に赤外線を利用しているバーコード読取装置に対して、優れたバーコード読み取り適性を示す。
【実施例】
【0121】
以下、本発明を例証するが、本発明はその要旨を超えない限り、実施例により限定されるものではない。
【0122】
[実施例1]
例示化合物(4)の合成(合成例1)
4−アセトキシベンゼンスルホニルクロライド30.0gと1,4−ブタンジオール4.6g及びトルエン100mlを300ml四つ口フラスコに入れ撹拌下、トリエチルアミン26gを滴下し、25℃の雰囲気下で3時間反応を行った。反応終了後、反応液に10%酢酸水溶液を加え、抽出操作を行った。pHが中性付近になるまで有機層を数回水洗した後、有機層からトルエンを減圧留去した。残渣にメタノール100ml及び炭酸カリウム3gを加えたあと、25℃の雰囲気下で1時間撹拌し、脱アセチル化反応を行った。反応終了後、反応液に10%酢酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出操作を行った。水洗、無水硫酸ナトリウムを使用して乾燥した後に、酢酸エチルを留去し、残渣を再結晶法により精製して目的とする例示化合物(4)の純度99.5%の白色結晶を得た。
以下の条件で高速液体クロマトグラフィーによる分析(HPLC分析)を行った。
カラム:Cadenza CD−C18
粒径:3μm
カラム:内径4.6mm×長さ100mm
溶離液:アセトニトリル:0.05vol%リン酸水溶液=60:40(容積比)
流速 :0.8ml/分
波長 :254nm
注入量:1μL
カラム温度:40℃
分析時間:20分
サンプル濃度:約10ppm
【0123】
得られた白色結晶の物性は以下の通りであった。
<融点>
113℃−115℃
<IRスペクトル(KBr)>
3413、1603、1588、1502、1445、1351、1285、1187、1164、937、836 cm-1
H−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ1.46-1.60 (4H, m)、3.86-3.96 (4H, m)、6.99 (4H, d, J= 8.9 Hz)、7.70 (4H, d, J = 8.9 Hz)、10.77 (2H, br-s)
13C−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ24.5、69.6、116.1、124.7、130.1、162.5
<分子量>
401.0 (M-H)+
【0124】
[実施例2]
例示化合物(8)の合成(合成例2)
1,4−ブタンジオール4.6gをt−ブチルヒドロキノン8.5gに変えたこと以外は合成例1と同様の操作を行い、目的とする例示化合物(8)の純度99.5%の白色結晶を得た。
【0125】
得られた白色結晶の物性は以下の通りであった。
<融点>
178℃−181℃
<IRスペクトル(KBr)>
3424、2970、1601、1587、1499、1481、1362、1289、1191、1166、861、838、554 cm-1H−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ1.09(3H, s)、6.62 (1H, d, J = 3.0 Hz)、6..93 (2H, d, J = 8.9 Hz)、7.01 (2H, d, J = 8.9 Hz)、7.05 (1H, dd, J = 3.0, 8.9 Hz)、7.27 (1H, d, J = 8.9 Hz)、7.58
(2H, d, J = 8.9 Hz)、7.82 (2H, d, J = 8.9 Hz)、11.00 (2H, br-s)
13C−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ29.6、34.4、116.1、116.4、121.3、121.5、122.0、123.0、125.0、130.7、131.1、142.3、146.2、147.2、163.3
<分子量>
477.5 (M-H)+
【0126】
[実施例3]
例示化合物(9)の合成(合成例3)
1,4−ブタンジオール4.6gをメチルヒドロキノン6.4gに変えた以外は合成例1と同様の操作を行い、目的とする例示化合物(9)の純度98.2%の白色結晶を得た。
【0127】
得られた白色結晶の物性は以下の通りであった。
<融点>
205℃−208℃
<IRスペクトル(KBr)>
3450、1602、1588、1499、1362、1193、1169、1155、852、835、555 cm-1
H−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ1.90 (3H, s)、6.82 (1H, dd, J = 3.0, 8.9 Hz)、6.92-7.04 (6H, m)、7.61 (2H, d, J= 3.0 Hz)、7.64 (2H, d, J = 3.0 Hz)、10.98 (2H, br-s)
13C−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ15.8、116.1、116.3、120.9、123.2、123.5、123.7、125.1、130.8、130.9、133.2、146.1、147.1、163.2、163.4
<分子量>
435.4 (M-H)+
【0128】
[実施例4]
例示化合物(12)の合成(合成例4)
1,4−ブタンジオール4.6gを4−t−ブチルカテコール8.5gに変えた以外は合成例1と同様の操作を行い、目的とする例示化合物(12)の純度98.6%の白色結晶を得た。
【0129】
得られた白色結晶の物性は以下の通りであった。
<融点>
176℃−183℃
<IRスペクトル(KBr)>
3412、2965、1599、1585、1502、1361、1196、1185、1164、1074、846、554 cm-1
H−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ8.95 (9H, s)、6.85 (1H, d, J = 2.4 Hz)、6.93 (2H, d, J = 8.9 Hz)、6.94 (2H, d, J = 8.9 Hz)、7.08 (1H, d, J = 8.6 Hz)、7.36 (1H, dd, J = 2.4, 8.6 Hz)、7.56 (2H,, d, J = 8.9 Hz)、7.62 (2H, d, J = 8.9 Hz)
13C−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ30.7、34.4、116.2、120.9、123.5、123.9、125.1、130.8、131.0、138.7、140.5、151.1、163.3、163.4
<分子量>
477.3 (M-H)+
【0130】
[実施例5]
例示化合物(18)の合成(合成例5)
1,4−ブタンジオール4.6gを2,7−ジヒドロキシナフタレン8.2gに変えた以外は合成例1と同様の操作を行い、目的とする例示化合物(18)の純度98.0%の白色結晶を得た。
【0131】
得られた白色結晶の物性は以下の通りであった。
<融点>
193℃−198℃
<IRスペクトル(KBr)>
3440、1602、1588、1504、1437、1354、1190、1168、1092、860、839、557 cm-1
H−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ6.95 (4H, d, J = 8.9 Hz)、7.12 (2H, dd, J = 2.4, 8.9 Hz)、7.65-7.74 (6H, m)
、7.95 (2H, d, J = 9.2 Hz)、10.9 (2H, br-s)
13C−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ116.2、119.8、121.6、123.5、129.9、130.0、130.9、133.5、1475、163.2
<分子量>
471.5 (M-H)+
【0132】
[実施例6]
例示化合物(21)の合成(合成例6)
1,4−ブタンジオール4.6gを4,4’−ジヒドロキシビフェニル9.5gに変えた以外は合成例1と同様の操作を行い、目的とする例示化合物(21)の純度98.4%の白色結晶を得た。
【0133】
得られた白色結晶の物性は以下の通りであった。
<融点>
205℃−209℃
<IRスペクトル(KBr)>
3398、1588、1489、1344、1189、1163、1092、858、842、740、721、556 cm-1
H−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ6.96 (4H, d, J = 8.9 Hz)、7.07 (4H, d, J = 8.6 Hz)、7.60-7.72 (8H, m)、10.93(2H, br-s)
13C−NMRスペクトル(270 MHz、DMSO−d)>
δ116.2、122.7、123.6、128.2、130.9、137.6、148.8、163.2
<分子量>
497.6 (M-H)+
【0134】
以下の実施例及び比較例においては、支持体の片面に下塗層、感熱発色層(記録層)及び保護層を形成した。尚、以下の説明中、部及び%はそれぞれ重量部及び重量%を示す。
【0135】
[実施例7]
下塗層塗液
焼成カオリン(BASF社製アンシレックス90) 90.0部
スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(固形分50%) 10.0部
水 50.0部
上記組成よりなる混合物を混合攪拌して下塗層塗液を調製した。
【0136】
感熱発色層塗液
下記のA液〜D液を、それぞれ別々にサンドグラインダーで平均粒子径が約0.5μmになるまで湿式磨砕を行った。なお、ここでの平均粒子径は個数基準分布での体積平均径であり、レーザ回折/散乱式粒度分布測定装置で測定した。
【0137】
A液(顕色剤分散液)
ナフタレン−2,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルスルホナート)(例示化合物(18)) 6.0部
ポリビニルアルコール 10%水溶液 5.0部
水 1.5部
【0138】
B液(塩基性無色染料分散液)
3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成社製、商品名:ODB−2) 6.0部
ポリビニルアルコール 10%水溶液 5.0部
水 1.5部
【0139】
C液(増感剤分散液)
1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタン(三光社製、商品名:KS232)
6.0部
ポリビニルアルコール 10%水溶液 5.0部
水 1.5部
【0140】
下記の割合で各分散液を混合して感熱発色層塗液とした。
A液(顕色剤分散液) 36.0部
B液(塩基性無色染料分散液) 18.0部
C液(増感剤分散液) 36.0部
シリカ(水澤化学社製、商品名:P537 25%分散液) 17.5部
ポリビニルアルコール(10%溶液) 25.0部
【0141】
保護層塗液
下記材料を下記の割合で混合して保護層塗液とした。
水酸化アルミニウム50%分散液(商品名:マーティフィンOL、マーティンスベルグ社製) 9.0部
カルボキシ変性ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名:KL318、重合度:約1700、鹸化度:95〜99モル%)10%水溶液 30.0部
ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂(星光PMC社製商品名:WS4030、固形分25%、カチオン化度:2.7、分子量:220万、4級アミン) 4.0部
変性ポリアミン樹脂(住友化学社製商品名:スミレーズレジンSPI−102A、固形分45%) 2.2部
ステアリン酸亜鉛(中京油脂社製商品名:ハイドリンZ−7−30、固形分30%)
2.0部
【0142】
支持体である上質紙(47g/mの基紙)の片面に下塗層塗液をマイヤーバーで塗工量が乾燥重量で10.0g/mになるように塗工・乾燥(送風乾燥機、60℃、2分間)し、下塗塗工紙を得た。この下塗塗工紙の下塗層上に感熱発色層塗液を塗工量が乾燥重量で6.0g/mとなるように塗工・乾燥(送風乾燥機、60℃、2分間)した。このシートをスーパーカレンダーで平滑度が500〜1000秒になるように処理して感熱記録材料を得た。
【0143】
[実施例8]
実施例7のC液(増感剤分散液)中の1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタンをベンジルオキシナフタレンに変更した以外は実施例7と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0144】
[実施例9]
実施例7のA液(顕色剤分散液)中の例示化合物(18)を例示化合物(12)に変更した以外は実施例7と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0145】
[実施例10]
実施例9のC液(増感剤分散液)中の1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタンをジフェニルスルホンに変更した以外は実施例9と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0146】
[実施例11]
実施例7のA液(顕色剤分散液)中の例示化合物(18)を例示化合物(8)に変更した以外は実施例7と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0147】
[実施例12]
実施例7のA液(顕色剤分散液)中の例示化合物(18)を例示化合物(9)に変更した以外は実施例7と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0148】
[実施例13]
実施例7のA液(顕色剤分散液)中の例示化合物(18)を例示化合物(21)に変更した以外は実施例7と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0149】
[実施例14]
実施例7のA液(顕色剤分散液)中の例示化合物(18)を例示化合物(4)に変更した以外は実施例7と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0150】
[比較例1]
実施例7のA液(顕色剤分散液)中の例示化合物(18)をジフェニルスルホン架橋型化合物(日本曹達社製、商品名:D−90)に変更した以外は、実施例7と同様にして、感熱記録材料を作製した。
なお、上記「D−90」は下式で表される。
【0151】
【化37】

【0152】
[比較例2]
比較例1のC液(増感剤分散液)中の1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタンをベンジルオキシナフタレンに変更した以外は比較例1と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0153】
[比較例3]
実施例7のA液(顕色剤分散液)中の例示化合物(18)を4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン(日本曹達社製、商品名:D−8)に変えた以外は実施例7と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0154】
[比較例4]
比較例3のC液(増感剤分散液)中の1,2−ジ−(3−メチルフェノキシ)エタンをベンジルオキシナフタレンに変更した以外は比較例3と同様にして、感熱記録材料を作製した。
【0155】
[比較例5]
比較例2のA液(顕色剤分散液)中のジフェニルスルホン架橋型化合物(日本曹達社製、商品名:D−90)を1−[4−(4−ヒドロキシフェニルスルホニル)フェノキシ]−4−[4−(4−イソプロポキシフェニルスルホニル)フェノキシ]ブタンに変更した以外は比較例2と同様にして感熱記録材料を作製した。
【0156】
上記の実施例及び比較例で得られた感熱記録材料について以下の評価を行った。その結果を表1に示す。
【0157】
<発色部濃度>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH−PMD)にて印加エネルギー0.35mJ/dotで市松模様(べた印字部の一辺が0.8cm)を印字し、発色部の濃度をマクベス濃度計(Gretag Macbeth社製、RD-914(アンバーフィルター使用))で測定した。
【0158】
<耐可塑剤性>
上記のように印字した感熱記録材料の表裏にハイラップKMA(三井化学社製)を接触させて20℃で24時間放置する試験を行った後、発色部の濃度をマクベス濃度計で測定し、試験前後の値から画像残存率を算出した。
画像残存率(%)=(試験後の濃度/試験前の濃度)×100
結果を下表(表1)に示す。
【0159】
【表1】

【0160】
<耐湿性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH−PMD)にて印加エネルギー0.35mJ/dotで市松模様(べた印字部の一辺が0.8cm)を印字し、発色部の濃度をマクベス濃度計で測定後、感熱記録材料を40℃、90%Rhの環境下で24時間放置する試験を行い、該試験後の発色部の濃度をマクベス濃度計で測定し、下記の式にて画像残存率を算出した。
画像残存率(%)=(試験後の濃度/試験前の濃度)×100
【0161】
<耐水性>
大倉電機社製の感熱プリンター(TH−PMD)にて印加エネルギー0.35mJ/dotで市松模様(べた印字部の一辺が0.8cm)を印字し、発色部の濃度をマクベス濃度計で測定後、感熱記録材料を20℃の水中に24時間放置する試験を行い、該試験後の発色部の濃度をマクベス濃度計で測定し、下記の式にて画像残存率を算出した。
画像残存率(%)=(試験後の濃度/試験前の濃度)×100
【0162】
これらの結果を下表(表2)に示す。
【0163】
【表2】

【0164】
表1の結果から明らかなように、本発明のフェノールスルホン酸エステルを顕色剤として用いた実施例7〜14の感熱記録材料は、耐可塑剤性に有効とされていた従来の顕色剤を用いた比較例1〜2、5の感熱記録材料に比べると、格段に発色感度が高く、且つ、耐可塑剤性は同等レベル以上であることが分かる。また、発色感度に有効とされていた従来の顕色剤を用いた比較例3、4の感熱記録材料と比較すると、発色感度は同等レベルの高い感度を有し、且つ、耐可塑剤性が格段に優れている。よって、本発明のフェノールスルホン酸エステルは、発色感度及び耐可塑剤性が高いレベルで両立する感熱記録材料を実現し得る非常に優れた顕色剤であり、また、表2の結果から明らかなように、本発明のフェノールスルホン酸エステルを顕色剤として使用することで、発色感度と耐可塑剤性だけでなく、耐水性及び耐湿性にも優れる、感熱記録材料を実現できることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I):
【化1】

[式中、Rは、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シアノ基、ニトロ基、アリール基またはアラルキル基を示し、m個のRは互いに同一でも異なっていてもよく、Zは2〜4価の連結基を示し、mは0〜4の整数であり、nは2〜4の整数である。]で表されるフェノールスルホン酸エステル。
【請求項2】
式中のZが、置換基を有していてもよいベンゼン環を1個または2個有するアリーレン基、置換基を有していてもよい2個以上のベンゼン環が縮合したアリーレン基又は2価の基を介して置換基を有していてもよい2個以上のベンゼン環が連結されたビスアリーレン基であることを特徴とする請求項1に記載のフェノールスルホン酸エステル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフェノールスルホン酸エステルを含む感熱記録材料用顕色剤。
【請求項4】
支持体上に、無色又は淡色の塩基性ロイコ染料と、顕色剤とを含有する感熱発色層を設けた感熱記録材料であって、前記顕色剤として請求項1又は2に記載のフェノールスルホン酸エステルを1種または2種以上含有することを特徴とする感熱記録材料。
【請求項5】
感熱発色層上にカルボキシ変性ポリビニルアルコール、エピクロロヒドリン系樹脂及びポリアミン系樹脂/ポリアミド系樹脂を含む保護層がさらに設けられている、請求項4記載の感熱記録材料。

【公開番号】特開2010−53128(P2010−53128A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177753(P2009−177753)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【出願人】(396020464)株式会社エーピーアイ コーポレーション (39)
【Fターム(参考)】