説明

フェライト粉末の製造方法、フェライト粉末及び磁気記録媒体

【課題】液相反応法で得られた微細粒子からなる前駆体の粒成長を抑えつつ、異相を生成しないフェライト粉末の製造方法を提供する。
【解決手段】液相反応法により得られた前駆体を目開きが2mm以下の篩23を通過させるステップ(a)と、篩23を通過した前駆体を、750〜1250℃の範囲にヒータ32で加熱された炉心管31内部を落下させるステップ(b)と、を備え、ヒータ32で加熱された炉心管31内部を落下させる過程において、前駆体を所定温度まで昇温し、かつ所定温度に保持することにより、六方晶フェライトが単相のフェライト粉末を得ることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フェライトコア、フェライト磁石、電波吸収体、磁気記録媒体等に用いられるフェライト粉末の製造方法に関し、特に微細な粒子のフェライト粉末の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
微細な粒子のフェライト粉末が得られるフェライト粉末の製造方法として、液相反応法及び気相法が知られている。
一般的な固相反応法においては、酸化物、水酸化物、炭酸塩等種々の原料となる化合物を所定の組成となるように混合したものを、セラミック製あるいは金属製のトレーに載せ、大気中あるいは大気圧の雰囲気ガス中にて、例えば5℃/分以下のゆるやかな速度で所定の温度まで昇温し、1000〜1300℃で2〜8時間保持する熱処理を行うことで、原料同士を反応(フェライト化反応)させることにより目的のフェライト粉末を得る。必要に応じて得られたフェライト粉末を粉砕し、さらに熱処理を施すことによって粉砕により生じた歪を除去することができる(例えば、特許文献1)。
固相反応法は、熱処理を2〜8時間程度行うため、フェライト化反応とともに粒成長が同時に起こる。そのために、固相反応法によって得られるフェライト粉末は、原料の粒径が比較的大きいこともあり、通常ミクロンオーダである。
【0003】
気相法によるフェライト粉末は、有機金属錯体などの原料を加熱し、気体もしくはそれに近い状態にしてキャリアガスなどを用いて反応容器に運び、熱やレーザー、紫外線、プラズマなどのエネルギにより原料を分解して合成する方法である。この方法は非常に細かい粉末を得ることができるが、粒度分布が広く合成量が少ないため、高価な生成物に適用されことが多く、フェライトなどの比較的安価な微粉末生成法としては適用されていない。
【0004】
液相反応法によるフェライト粉末は、固相反応法によるフェライト粉末に比べて粒径が小さい。液相反応法としては、共沈法及び有機酸塩法がよく知られている。
共沈法は、フェライトを構成する金属を含む金属塩の溶液と、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の水酸化アルカリ金属とを化学反応させることによって酸化物又は水酸化物からなる沈殿物(前駆体)を調製し、この沈殿物を熱処理(フェライト化反応)することで微細な粒子のフェライト粉末を合成することができる(例えば、特許文献2)。ところが、共沈法により前駆体として微細な粒子を得ることはできても、フェライト化反応にともなって粒成長が生じる。そのために、一次粒子が例えば200nm以下のフェライト粉末を得ることは難しかった。
有機酸塩法は、フェライトを構成する金属を含む金属塩の水溶液に、クエン酸やシュウ酸等の有機酸を添加して加熱し、液相で反応して得られた有機酸の錯塩(前駆体)を調製し、この錯塩を熱処理(フェライト化反応)することで微細な粒子のフェライト粉末を合成することができる。しかし、共沈法と同様に、フェライト化反応のための熱処理の際に不必要な粒成長が生じてしまう。
【0005】
液相反応法により得られた微細な前駆体を粒成長させずにフェライト化反応させる熱処理を行うためには、前駆体を急速加熱する必要がある。
この急速加熱を実現する方法として、加熱コイルを用いた高周波誘導加熱や赤外線加熱炉(特許文献3)が知られている。ところが、これらの方法は、原料組成物(処理物)を保持するための容器が必要となり、容器と処理物との反応による異相の発生や、容器の熱容量による冷却速度の低下及びその際の粒成長などの不具合が懸念される。また、これらの方法は、処理物を静置して熱処理するために、1回当たりの処理量が限られることから量産性に欠けることも指摘される。
【0006】
急速加熱を実現する他の方法を、特許文献4が開示している。特許文献4は、処理物を所定の温度まで加熱し、所要の時間だけその温度に処理物の温度を保持した後、処理物を冷却する熱処理方法において、処理物を所定の温度まで加熱するプロセスが、処理物を真空中で自然落下させながら、その落下途中で処理物を周囲から加熱する。
しかし、特許文献4の方法は、所定温度までの昇温を真空中で自然落下させながら行うものの、所定温度で所定時間保持する処理を回転ドラム上で行う(特許文献4 図1参照)。前駆体からフェライト粉末を得る場合、フェライト化反応が生ずる温度まで加熱された前駆体は、回転ドラム上に落下、衝突する。したがって、前駆体を構成する粒子同士が圧密される。また、回転ドラム上での保持は比較的長時間行われるため、粒成長や強い凝集が起こる虞がある。さらに、高温での保持に耐えるため、回転ドラムは、処理物との反応が起こり難く、かつ付着が少ない材質から構成する必要がある。また、このような材質から回転ドラムを構成したとしても、長時間の処理を行う場合や、何度も繰り返して処理する場合を考えると、回転ドラムには少量の処理物が残存することを否定できない。残存した処理物が核となり処理物の粒成長や焼結を促進することが容易に推定される。
【0007】
【特許文献1】特公昭62−17841号公報
【特許文献2】特公昭61−29888号公報
【特許文献3】特開2001−284112公報
【特許文献4】特開2003−139469公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上のような技術的課題に基づいてなされたもので、液相反応法で得られた微細粒子からなる前駆体の粒成長を抑えつつ、異相を生成しないフェライト粉末の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもと、本発明のフェライト粉末の製造方法は、液相反応法により得られた前駆体を目開きが2mm以下の篩を通過させるステップ(a)と、篩を通過した前駆体を、750〜1250℃に周囲から加熱された常圧の空間を落下させるステップ(b)と、を備え、ステップ(b)において、前駆体を所定温度まで昇温し、かつ所定温度に保持することにより、六方晶フェライトが単相のフェライト粉末を得ることを特徴としている。
【0010】
本発明により得られるフェライト粉末は、一次粒子の平均粒径が200nm以下であることが好ましく、そのためには前駆体を構成する一次粒子の平均粒径が100nm以下であることが好ましい。
また本発明の方法において、前駆体が落下する方向に気流を生じさせることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、篩を通過した前駆体を、750〜1250℃に周囲から加熱された常圧の空間を落下させるステップを備え、このステップにおいて、前駆体を所定温度まで昇温し、かつ所定温度に保持することによりフェライト粉末を得る。このステップにおいて、前駆体は急速に加熱されるため、フェライト化反応を迅速に完了することができる。フェライト化反応が完了した時点で加熱を止めることにより、粒成長を抑えつつ、六方晶フェライトが単相のフェライト粉末を得ることができる。
本発明は、以上により製造されたフェライト粉末を提供し、また、このフェライト粉末を用いた磁気記録媒体を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
<前駆体>
本発明は、液相反応法により得られたフェライト前駆体(以下、単に前駆体と称す)を用いる。
液相反応法としては、上述したように、有機酸塩法と共沈法とがある。
液相反応法の出発原料として、フェライトを構成する金属を含む金属化合物と、この金属化合物とともに加えられる他の化合物とが含まれる。この金属化合物は、有機酸塩法及び共沈法に共通して用いることができる。
フェライトを構成する金属を含む金属化合物には、鉄化合物と他の金属化合物とが含まれる。鉄化合物としては、硝酸第二鉄((Fe(NO)、硫酸第二鉄(Fe(SO)、塩化第二鉄(FeCl)などの3価の鉄を有する水溶性の第二鉄塩などを用いることができる。
また、他の金属化合物は、目的とするフェライト組成によって適宜選択される。例えば、M型(マグネトプランバイト型)フェライト粉末を合成する場合、他の金属化合物としては、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)、硝酸バリウム(Ba(NO)などの水溶性の金属塩を用いることができる。また、他の金属化合物としては、必要に応じて、さらに希土類金属元素を含む金属塩やCo、Znを含む金属塩を用いることができる。
【0013】
有機酸塩法は、他の化合物として、クエン酸やシュウ酸等の、金属イオンと錯形成能力を有する有機酸を用いることができる。この中では、クエン酸が好適である。
また、共沈法は、他の化合物として、沈殿剤としてのアルカリ性化合物を用いることができる。アルカリ性化合物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)などの水酸化アルカリ、アンモニア(NH)を用いることができる。この中では、水酸化ナトリウム、アンモニアが好適である。なお、沈殿の過程で、水酸化アンモニウム(NHOH)などのアンモニウム塩が生成される。
【0014】
液相反応法においては、フェライトを構成する金属を含む複数の金属化合物を水に溶解して混合した水溶液を調製し、さらに他の化合物を添加して混合して、前駆体を調製する。
液相反応法で得られた前駆体を構成する一次粒子の平均粒径は、100nm以下であることが好ましい。熱処理により得られるフェライト粉末の平均粒径を200nm以下とするためである。好ましくは50nm以下、さらに好ましくは40nm以下である。なお、下限値は特に限定されるものでないが、5nm以上が現実的な値である。本発明は、この微細な前駆体の粒成長を抑えつつフェライト化反応を実行ならしめる。前駆体を造粒して熱処理に供することもできる。
【0015】
<熱処理>
液相反応法で得られる前駆体にフェライト化反応を生じさせるための熱処理が施される。この熱処理は、フェライト化反応を瞬時に行うことで、生成されたフェライト粒子の粒成長を抑制することができる。
本発明による熱処理は、常圧の空間を前駆体が落下する過程でフェライト化反応までを完了させる。そのために、本発明による熱処理は、前駆体が常圧の空間を落下する過程で施されるものとする。加熱温度は750〜1250℃とすることが好ましい。750℃未満では、フェライト化反応が不十分となり、異相が生成される。また、1250℃を超えると、粒成長を無視できなくなる。ここで、フェライト化反応が完了するまでには、所用の熱処理時間が必要である。この熱処理時間は、前駆体の落下距離に比例するということができる。ところが、真空中で熱処理を施す方法では、フェライト化反応が完了するのに必要な落下距離を確保することが容易ではない。真空を維持するための機構を備えた熱処理装置は、真空度維持の観点、さらにコストの点をも考慮すると、サイズの大型化に限界があるためである。特許文献4が、処理物を真空中で自然落下させながら加熱する処理を、所定の温度まで加熱するプロセスに限定し、所定温度を保持する処理を回転ドラム上で行っているのは、そのためと解される。前駆体の落下を常圧下で行う本発明によれば、フェライト化反応が完了するまでに必要な距離を確保することは、真空機構を伴う熱処理装置に比べて格段に容易である。
【0016】
液相反応法で得られる前駆体は、前述したように、一次粒子が100nm以下と微細である。しかし、これら一次粒子は、生成された段階、さらにその後のハンドリングの過程で不可避的に凝集してしまう。本発明者等の検討によれば、前駆体からなる凝集体のサイズが大きくなると、前記凝集体内で部分的にフェライト化反応が進行せず、目的とする六方晶フェライト相以外の異相(例えば、スピネル型フェライト相)を含む現象が観察された。凝集体の周辺部に比べて中心部には必要な熱が供給されないためと解される。中心部に供給される熱量を上げようとすると、当該周辺部に存在する前駆体に粒成長が生じてしまう。そこで本発明では、熱処理される前駆体に粗大な凝集体が含まれないように、前駆体(凝集体)の最大径を2mm以下に規制する。そのために篩を用い、篩を通過させた前駆体に本発明の熱処理を施す。このとき用いる篩は、2mm以下の目開きとする。この篩の目開きは、1mm以下、さらには0.5mm以下とすることが異相発生の防止に好ましい。また、造粒により2次粒径を2mm以下にしてもかまわない。
【0017】
図1は、本発明による熱処理を実行する熱処理装置1の一例を示す概略構成図である。
熱処理装置1は、供給部2と、供給部2から供給される前駆体を加熱してフェライト化反応を生じさせる加熱処理部3と、加熱処理部3で生成されたフェライト粉末を回収する回収部4とを備えている。
供給部2は、所定量の前駆体を保持するホッパ21を備えている。ホッパ21に投入された前駆体は、原料供給路22を搬送されて篩23に到達する。原料供給路22における前駆体の搬送は、振動フィーダー等の公知の搬送手段を採用すればよい。篩23は、粗大な凝集を取り除いて次工程である加熱処理部3に前駆体を供給するために設けてある。篩23の目開きは、2mm以下とされ、好ましくは1mm以下、さらに好ましくは0.5mm以下とされる。篩23には、固定タイプのものを用いることができるが、振動篩を用いることもできる。振動篩を用いることにより、前駆体が篩23を容易に通過できる他、目開きを超えるサイズの凝集体を解砕して篩23の通過を可能にすることができる。更には、解砕を更に容易にするため3mmφ以上のボールを篩23の上に載せることもできる。また、篩23を強制的に通過させるため、自動でブラシを動かす装置を組み込んでも良い。篩23を通過した前駆体は、漏斗24を介して加熱処理部3に供給される。篩23を通過した前駆体は、漏斗24に接触することはあるが、加熱処理部3に供給される過程で互いに接触することがない。したがって、篩23を通過した前駆体は、凝集が再度生じることなく加熱処理部3に供給される。
【0018】
加熱処理部3は、炉心管31と、炉心管31を取り囲む複数のヒータ32とを備えている。炉心管31は、耐熱材料、例えば黒鉛からなる円筒状の部材であり、その長手方向が鉛直方向に沿って配置されている。漏斗24を通過した前駆体は、炉心管31の中空部を落下する。炉心管31がヒータ32により所定温度に加熱されているため、落下する前駆体は炉心管31の内壁からの輻射熱によって、急速かつ均一に加熱される。また、前駆体は輻射熱により直接加熱されるため、容器に収容して加熱するのに比べて、エネルギ効率が高い。加熱処理部3は、複数のヒータ32を備えており、各ヒータ32の温度を制御することにより、鉛直方向の位置によって温度勾配を設けることができる。もちろん、全てのヒータ32を同じ温度に設定することもできる。
ここで、ヒータ32が配置されている鉛直方向の長さを有効炉長とすると、有効炉長は3m以上であることが好ましい。フェライト化反応を生じさせるのに必要な時間、前駆体を加熱するためである。
【0019】
ヒータ32による加熱は、前述したように、750〜1250℃の温度範囲とされる。炉心管31内は、常圧とされ、その雰囲気は大気とすることができるし、不活性ガスを供給して不活性雰囲気とすることもできる。熱処理装置1は、炉心管31内を真空に維持する必要がないので、炉心管31の長さを比較的容易に長くすることができる。例えば、有効炉長を20m程度とすることもできる。ただし、炉心管31内が常圧で、かつ上記温度範囲に加熱されている場合、炉心管31内に上昇気流が生じるおそれがある。この上昇気流を抑えるために、炉心管31内には前駆体の落下方向に気流を生じさせることが好ましい。この気流の程度を調整することにより、前駆体の落下速度を制御することもできる。熱処理装置1は、後述するように、排気装置43を設けることにより、炉心管31内に前駆体の落下方向に気流を生じさせることができる。
【0020】
加熱処理部3は、ヒータ32が配置されている昇温・保持領域311と、炉心管31の下端部にあって、ヒータ32が配置されていない冷却領域312を備えている。ヒータ32によって加熱された昇温・保持領域311を前駆体が通過する過程で、フェライト化反応が完了する。加熱温度、及び昇温・保持領域311を通過する時間を調整することにより、フェライト化反応を完了させ、かつ粒成長を抑制することができる。得られたフェライト粉末は、冷却領域312に移行することにより、落下する過程で冷却され、粒成長が阻止される。冷却領域312においてフェライト粉末は、他の部材と接触していないため、冷却が比較的容易に行われる。
【0021】
次に、回収部4は、粉末回収部41と、冷却器42と、排気装置43とを備えている。
炉心管31に接続された粉末回収部41は、炉心管31を通過したフェライト粉末を回収する容器を備える。この容器は、耐熱性金属で構成することができる。
粉末回収部41には、吸気管44を介して排気装置43が接続されている。排気装置43を作動させることにより、炉心管31前駆体の落下方向に気流を生じさせる。また、粉末回収部41と排気装置43との間であって吸気管44の外周に冷却器42が配設されており、粉末回収部41を通過したガスは、この冷却器42内で冷却されてから排気装置43の外部に排出される。冷却器42は例えば水冷ジャケットを備えた装置とすることができる。
【0022】
以上の熱処理装置1を用いて前駆体を熱処理する場合、炉心管31内を前駆体が落下する過程で、フェライト化反応を終了させる。そのために、炉心管31内の加熱温度、当該加熱温度に前駆体が加熱される時間を調整する必要がある。炉心管31内の加熱温度は、主にヒータ32の加熱温度を設定することにより調整することができる。また、加熱時間は、炉心管31における有効炉長の長さ、あるいは排気装置43による排気量(速度)を調整することにより制御することができる。また、複数のヒータ32を備える場合、作動させるヒータ32を選択することにより、加熱温度に勾配を付けることもできる。図1の例の場合、鉛直方向上方のいくつかのヒータ32を作動させるが、鉛直方向下方のいくつかのヒータ32は作動させないという手法を採用することができる。また、実際の生産にあたっては、最適な加熱温度、加熱時間を実験的に確認し、その条件を採用すればよい。
【0023】
熱処理装置1を用いることにより、前駆体はフェライト化反応が終了し、かつ粉末回収部41に到達するまでの間に冷却されるため、フェライト粒子同士が高温で接触することがない。そのために、フェライト化反応時はもちろん、反応後に、フェライト粒子が凝集するおそれが少ない。
【0024】
本発明により得られるフェライト粉末の一次粒子は平均で200nm以下の粒径であることが好ましい。高密度磁気記録媒体用として用いる場合、200nm以上の粒径では高記録密度化に伴う短波長化に対応できないとともに、磁気記録媒体の表面粗度も粗くなりスペーシングロスが大きくなる。フェライト粉末の一次粒子の平均粒径は、好ましくは100nm以下、更に好ましくは50nm以下である。
本発明により得られるフェライト粉末は、六方晶フェライト相が単相である。六方晶フェライトとしては、マグネトプランバイト(M)型フェライト、W型フェライトが本発明に適用される。本発明において、六方晶フェライト単相か、または異相が生成しているかは、XRDで判断するものとする。
また、本発明により得られるフェライト粉末は、保磁力(Hc)が6000Oe以下であり、さらに飽和磁化(σs)が45emu/g以上である。六方晶フェライトは、約6000Oe程度の保磁力(Hc)が容易に得られる。磁気記録媒体用として考えると、現状の磁気ヘッドで消去・書き込みが可能な上限は4000Oeである。したがって、保磁力(Hc)が4000Oe超える場合には、フェライトの構成元素を他の元素で置換して保磁力(Hc)を低減することが必要となる。また、保存安定性を考慮すると、保磁力(Hc)は1200Oe以上、好ましくは1500Oe以上である。また、飽和磁化(σs)はテープの出力に相当し高いほど好ましいが、酸化物である微粒子(粒径:20〜40nm)の六方晶フェライトでは60〜70emu/g程度が上限と解される。再生出力を考慮すると、飽和磁化(σs)は45emu/g以上であることが好ましい。後述する実施例から明らかなように、本発明により得られるフェライト粉末は、以上の磁気特性を備えることができる。
【0025】
磁気記録媒体としては、磁気テープ、磁気カード、磁気ディスク等の公知の形態に対して本発明によるフェライト粉末を適用できる。
例えば、磁気テープは、下層非磁性層および磁性層がベースフィルムの一方の面上にこの順で形成されて、記録再生装置による各種記録データの記録再生が可能に構成されている。
また、ベースフィルムの他方の面上には、テープ走行性を向上させると共にベースフィルムの傷付き(摩耗)や磁気テープの帯電を防止するためのバックコート層が形成されている。なお、構造はこれに限定されず、公知の構造を用いることができる。
【0026】
<磁性層>
磁性層は、磁性塗料を塗布することにより得られる。磁性塗料は、磁性粉末、結合剤を溶剤中に分散させたものであり、必要に応じて、公知の分散剤、潤滑剤、研磨剤、硬化剤、帯電防止剤等が添加される。この磁性粉末として、本発明により得られたフェライト粉末を用いる。
結合剤としては、塩化ビニル系共重合体、ポリウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル系樹脂、等の熱硬化性樹脂、放射線硬化性樹脂等、公知のものを用いることができる。
<下層非磁性層>
下地層の材料としては、非磁性粉末及び結合剤を含む材料を用いることができる。なお、必要に応じて分散剤、研磨剤、潤滑剤等を添加してもよい。
非磁性粉末としては、カーボンブラック、α酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、αアルミナ、等の無機質粉末やこれらの混合物を用いることができる。
下地層の結合剤や分散剤、研磨剤、潤滑剤についても、磁性塗料と同様の分散剤、研磨剤、潤滑剤を用いることができる。
<バックコート層>
バックコート層は、公知の構造や組成を用いることができるが、例えば、カーボンブラック、カーボンブラック以外の非磁性無機粉末、および結合剤を含んでバックコート層を形成することができる。
【0027】
<製造方法>
本発明において、磁気記録媒体の製造方法は特に限定されず、公知の磁気記録媒体の製造方法を用いることができる。例えば、材料を混合、混練、分散、希釈することにより塗料を作製し、公知の塗布方法により支持体上に、下層非磁性層、磁性層、バックコート層用の塗料を塗布することで各層を形成できる。必要に応じて、配向、乾燥、カレンダー処理を行なうことができる。塗布後に硬化処理を行ない、所望の形状に切断することにより、または、カートリッジに組み込むことで、磁気記録媒体を製造できる。
【実施例1】
【0028】
硝酸第二鉄(Fe(NO)・9HO)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO)、硝酸ランタン(La(NO)・6HO)及び、硝酸コバルト(Co(NO)・6HO)をFe:Sr:La:Co=11.7:0.7:0.3:0.3(La0.3Sr0.7Co0.3Fe11.7,表1ではLaCoと表記)の化学組成になるように秤量し、Fe濃度で0.2mol/Lとなるようにイオン交換水に溶解させた。次いでこの溶液に、金属イオンの総molに対してクエン酸が5倍等量となるように、10mol%の濃度のクエン酸水溶液を混合した。この混合溶液を80℃で3時間加熱した後、120℃でゲル化するまで加熱した。得られたゲルを、窒素気流中120℃で脱水を行った後、酸素分圧が制御できる炉を用いて300〜600℃で有機物の分解を行った後粉砕し、前駆体を作製した。
得られた前駆体を図1に示す構造の熱処理装置1を用いて以下の要領で熱処理を施した。
篩23の目開きを2mmとし、篩23を通過させた前駆体を他の容器で受けることなく直接、あらかじめ各ヒータ32の設定温度を1000℃にした有効炉長約7mの炉心管31内を落下させ、粉末回収部41で粉末を回収した。なお、有効炉長とは、前述したように、ヒータ32が配設されている鉛直方向の長さをいう。また、排気装置43を作動させて1〜5L/min程度(以下の実施例、比較例を含む)の流量で炉心管31内を排気して、下方に向けた気流を生じさせた。
得られた粉末は、VSM(Vibrating Sample Magnetometer)を用いて飽和磁化(σs)及び保磁力(Hc)を、XRD(X-Ray Diffraction spectroscopy)を用いて生成相を、TEM(Transmission Electron Microscope)によって粒子の大きさを確認した。結果を表1に示す。
【実施例2】
【0029】
有効炉長を約3mとした以外は実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0030】
有効炉長を約15mとした以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例4】
【0031】
篩23の目開きを0.2mmとした以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例5】
【0032】
各ヒータ32の設定温度を800℃とした以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例6】
【0033】
各ヒータ32の設定温度を1200℃とした以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例7】
【0034】
原料として硝酸コバルト(Co(NO)・6HO)を硝酸亜鉛(Zn(NO)・6HO)に換え、Fe:Sr:La:Zn=11.7:0.7:0.3:0.3(La0.3Sr0.7Zn0.3Fe11.7,表1ではLaZnと表記)の化学組成になるように調整した以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例8】
【0035】
硝酸第二鉄(Fe(NO)・9HO)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO))、硝酸亜鉛(Zn(NO)・6HO)及び、硝酸ニッケル(Ni(NO)・6HO)をFe:Sr:Zn:Ni=15.0:1.0:0.75:0.75(Sr1.0Zn0.75Ni0.75Fe15.0,表1ではZnNi−SrWと表記)の化学組成になるように調整した以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例9】
【0036】
硝酸第二鉄(Fe(NO)・9HO)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO))をFe:Sr=12.0:1.0(Sr1.0Fe12.0,表1ではSrMと表記)の化学組成になるように調整した以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例10】
【0037】
硝酸第二鉄(Fe(NO)・9HO)、硝酸バリウム(Ba(NO))をFe:Ba=12.0:1.0(Ba1.0Fe12.0,表1ではBaMと表記)の化学組成になるように調整した以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【実施例11】
【0038】
硝酸第二鉄(Fe(NO)・9HO)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO))、硝酸ランタン(La(NO)・6HO)及び、硝酸コバルト(Co(NO)・6HO)をFe:Sr:La:Co=7.8:0.7:0.3:0.2(La0.3Sr0.7Co0.2Fe7.8,表1ではLaCoと表記)の化学組成になるように秤量し、Fe濃度で0.2mol/Lとなるように水に溶解させた。次いでこの溶液に、pH=13となるように、3mol%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液を混合して、沈殿を作製した。この沈殿を含む溶液を100℃で2時間加熱した後、濾過・水洗し、沈殿を分離した。この沈殿を、大気中120℃で乾燥後、粉砕して共沈粉を作製した。
以降は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0039】
[比較例1]
実施例1と同様に有機酸塩法にて前駆体を作製した。得られた前駆体を目開き3mmの篩23を通過させた以外は実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例1と同様の前駆体を作製し、篩23を通さなかった以外は実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例3]
有効炉長を約1.5mとした以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例4]
各ヒータ32の設定温度を1300℃にした以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例5]
各ヒータ32の設定温度を700℃にした以外は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例6]
実施例1と同様の前駆体を作製し、通常の抵抗加熱方式の横型電気炉を用いて、アルミナボートに前駆体を載せ、静置した状態にて毎分5℃で昇温し、1000℃に達したところから2時間保持した後、毎分5℃で冷却した。以降は実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例7]
硝酸第二鉄(Fe(NO)・9HO)、硝酸ストロンチウム(Sr(NO))をFe:Sr=8.0:1.0の化学組成になるように秤量し、Fe濃度で0.2mol/Lとなるように水に溶解させた。次いでこの溶液に、pH=13となるように、3mol%の濃度の水酸化ナトリウム水溶液を混合して、沈殿を作製した。この沈殿を含む溶液を100℃で2時間加熱した後、濾過・水洗し、沈殿を分離した。この沈殿を、大気中120℃で乾燥後、粉砕して共沈粉を作製した。
以降は、実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例8]
酸化鉄(Fe)、炭酸ストロンチウム(SrCO)をFe:Sr=12:1の化学組成になるように秤量し、2倍量の水とともにボールミルで12時間混合した。この混合溶液を濾過・水洗し、固形分を分離した。これを、大気中120℃で乾燥後、粉砕して混合粉を作製した。
以降は実施例1と同様にして粉末を作製した。
得られた粉末について実施例1と同様の評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より以下のことが確認された。
(1)篩23の目開きが2mm以下の場合(実施例1,4参照)には異相(スピネル相)が生成されないのに対して、篩23の目開きが3mm(比較例1参照)の場合及び篩23を用いない場合(比較例2,7)には異相が生成される。なお、表1において、M単相とはXRDにおいてマグネトプランバイト型フェライト相(M相)のみが観察されたことを意味し、W単相とはXRDにおいてW型フェライト相のみが観察されたことを意味する。同様に、M相+S相とは、XRDにおいて主たる相としてM相が観察され、かつM相以外にスピネル型フェライト相(S相)が観察されたことを意味する。S相はM相に対する異相である。
(2)有効炉長が3m、7m及び15mの場合(実施例1〜3,8参照)にはM相又はW相が単相であるのに対して、有効炉長が1.5mの場合(比較例3)には異相(スピネル相)が生成される。有効炉長が1.5mでは、加熱領域の通過時間が短いために、前駆体に十分な熱が加わらないために、異相が生成されたものと解される。
【0043】
(3)加熱温度(ヒータ32の設定温度)が800℃、1000℃及び1200℃の場合(実施例1,5,6参照)には異相が生成されず、かつ生成された粒子の粒径(一次粒子径)が50nm以下と微細である。これに対して、加熱温度が700℃の場合(比較例5)には異相が生成され、また、加熱温度が1300℃の場合(比較例4)には生成された粒子の粒径が200nmを超える。
(4)有機酸塩法による前駆体を用いても、従来の焼成法である管状炉にて静置して異相が発生しないように昇温速度を5℃/分とし1000℃の保持時間が2時間の熱処理をすると、粒成長が著しくなる(比較例6)。また、固相法による一次粒子の粗大な前駆体を用いると、本発明による熱処理を施しても、微細なフェライト粒子を得ることは困難である(比較例8)。
(5)本発明は、種々の組成のフェライト粒子生成に有効であり(実施例7〜10)、また、有機酸塩法及び共沈法のいずれにおいても異相の存在しない微細なフェライト粒子を得ることができる(実施例1,11)。
【実施例12】
【0044】
<磁性層用塗料の調製>
実施例5のフェライト粉末(平均粒径:29nm)100重量部、塩化ビニル(日本ゼオン(株)製、MR104):10重量部、ポリエステルウレタン(東洋紡(株)製、UR8700):10重量部、α−Al:6重量部、フタル酸:2重量部、混合溶媒(メチルエチルケトン(MEK)/トルエン/シクロヘキサノン=2/2/6重量比)を加えて固形分濃度80wt%とし2時間混練を行った。混練後のスラリーに、混合溶媒(MEK/トルエン/シクロヘキサノン=2/2/6重量比)を加えて固形分濃度30wt%のスラリーとした後、このスラリーを、ジルコニアビーズを充填した横型ピンミルにて分散処理を行った。その後、混合溶媒(MEK/トルエン/シクロヘキサノン=2/2/6重量比)、ステアリン酸:1重量部、とステアリン酸ブチル:1重量部を加えて固形分濃度10wt%のスラリーとした。このスラリー100重量部にイソシアネート化合物(日本ポリウレタン製、コロネートL)0.4重量部を加え、磁性層用の最終塗料とした。
【0045】
<下層非磁性層用塗料の調製>
針状α−Fe:85重量部、カーボンブラック:15重量部、電子線硬化型塩化ビニル系樹脂:15重量部、電子線硬化型ポリエステルポリウレタン樹脂:10重量部、α−Al:5重量部、o−フタル酸:2重量部、メチルエチルケトン(MEK):10重量部、トルエン:10重量部、シクロヘキサン:10重量部を加圧ニーダーに投入し、2時間混練を行った。混練後のスラリーに、混合溶媒(MEK/トルエン/シクロヘキサン=2/2/6重量比)を加えて固形分濃度30wt%のスラリーとした後、このスラリーを、ジルコニアビーズを充填した横型ピンミルにて8時間分散処理を行った。その後、混合溶媒(MEK/トルエン/シクロヘキサン=2/2/6重量比)、ステアリン酸:1重量部、とステアリン酸ブチル:1重量部を加えて固形分濃度10wt%のスラリーとして下層非磁性層用の塗料とした。
【0046】
<バックコート層用塗料の調製>
ニトロセルロース:50重量部、ポリエステルポリウレタン樹脂:40重量部、カーボンブラック:85重量部、BaSO:15重量部、オレイン酸銅:5重量部、銅フタロシアニン:5重量部をボールミルに投入し、24時間分散を行った。その後、混合溶媒(MEK/トルエン/シクロヘキサン=1/1/1重量比)、を加えて固形分濃度10wt%のスラリーとした。続いて、スラリー100重量部にイソシアネート化合物1.1重量部を加え、バックコート塗料とした。
【0047】
<磁気テープの製造>
厚さ6.1μmのポリエチレンテレフタレートフィルムの表面上に、上記下層非磁性層用塗料を乾燥厚みが1.0μmとなるよう塗布し、乾燥し、カレンダー処理し、最後に電子線照射を行い塗膜の硬化を行って下層非磁性層を形成した。次に、下層非磁性層上に磁性層用塗料を乾燥厚み0.05μmとなるように塗布し、磁場配向処理を行い、乾燥し、カレンダー処理し磁性層を形成した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムの裏面上に上記バックコート層用塗料を乾燥厚みが0.6μmとなるように塗布し、乾燥し、カレンダー処理しバックコート層を形成した。このようにして、両面に各層が形成された磁気テープ原反を得た。その後、磁気テープ原反を60℃のオーブンに24時間入れ、熱硬化を行った。その後、1/2インチ(12.65mm)幅に裁断し、磁気テープを得た。
【0048】
<比較例a>
実施例5の加熱温度を1300℃とした以外は同様にして作製したフェライト粉末(比較例4,平均粒径:224nm)を使用した以外は、上記と同様に、磁気記録媒体を製造した。
【0049】
<電磁変換特性の評価>
ドラムテスタを用いて、MIGヘッドを用いて0.2μmの記録波長で記録し、GMRヘッドを用いて再生して、単周波信号の出力電圧と、1MHz離れたノイズ電圧の比をC/Nとして評価した。比較例aの磁気テープをC/Nを0dBとして比較し、実施例12の磁気テープは、C/Nは3dBと高い電磁変換特性が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明に用いることのできる熱処理装置の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
1…熱処理装置、
2…供給部、21…ホッパ、22…原料供給路、23…篩、24…漏斗、
3…加熱処理部、31…炉心管、32…ヒータ、311…昇温・保持領域、312…冷却領域、
4…回収部、41…粉末回収部、42…冷却器、43…排気装置、44…吸気管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相反応法により得られた前駆体を目開きが2mm以下の篩を通過させるステップ(a)と、
前記篩を通過した前記前駆体を、750〜1250℃に周囲から加熱された常圧の空間を落下させるステップ(b)と、を備え、
前記ステップ(b)において、前記前駆体を所定温度まで昇温し、かつ前記所定温度に保持することにより、六方晶フェライトが単相のフェライト粉末を得ることを特徴とするフェライト粉末の製造方法。
【請求項2】
前記フェライト粉末は、一次粒子の平均粒径が200nm以下であることを特徴とする請求項1に記載のフェライト粉末の製造方法。
【請求項3】
前記前駆体を構成する一次粒子が100nm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト粉末の製造方法。
【請求項4】
前記前駆体が落下する方向に気流を生じさせることを特徴とする請求項1〜3に記載のフェライト粉末の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のフェライト粉末の製造方法により製造されたことを特徴とするフェライト粉末。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法により製造されたフェライト粉末を用いたことを特徴とする磁気記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開2009−84125(P2009−84125A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258368(P2007−258368)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】