説明

フェンス

【課題】フェンス体を支柱に取付ける際、その取付作業が容易になされるフェンスを提供する。
【解決手段】格子状のフェンス体1の横線材12が支柱に取付けられた引掛部材2に引掛けられてなるフェンスFであって、引掛部材2は、横線材13を引掛ける引掛部22と、支柱3に設けられた縦長孔32に取付けられる取付部4とを備え、取付部4は首部41の先端より羽根部42が左右に突出され、羽根部42の左右の幅寸法が縦長孔32の縦寸法より短く、首部41の左右の幅寸法が縦長孔32の横寸法より短く、且つ羽根部42の左右の幅寸法は縦長孔32の横寸法より長くなされ、羽根部42が縦長孔32に挿入されると共に、羽根部42の左右両端が縦長孔32の左右側縁に係止されれば、引掛部材の取付作業が容易になされるため、フェンス体1の取付作業も容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅や工場等の敷地境界部や隣地境界部等に設置されるフェンスに関するものであり、特に格子状のフェンス体を有するフェンスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、住宅や工場等の敷地境界部や隣地境界部等に設置される格子状のフェンス体を有するフェンスには様々なものが提案されている。例えば、フェンスの裏面側に支柱を配置した所謂自由柱型フェンスが提案されており、その場合、角パイプ状の支柱の一側面に固定金具を取付けて格子状のフェンスの横線材を引掛けて固定し、もってフェンス体を支柱に取付けるものが多く、このフェンス体の固定方法も様々なものが提案されている。
【0003】
例えば、格子状のフェンス体の上端部を折り返して胴縁状の係止部を設け、この係止部の先端を支柱の上端部に設けた凹溝内に載置してフェンス体を支柱に取付けると共に、支柱の側面に倒J字状の固定金具を取付けてフェンス体の横線材を固定金具の内側に配置して固定したフェンスが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
又、格子状のフェンス本体を支柱に沿わせ、支柱の上部にその一側部を装着した略U字状の取付金具にフェンス体の横線材を挿入して引掛けると共に、相対向する他側部の上端から斜め上方に広がる傾斜ガイド片を連出して、フェンス体の横線材が取付金具に容易に挿入されるようになされたフェンスが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−128240号公報
【特許文献2】特開2001−207693号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記の特許文献1に記載のようなフェンスでは、フェンス体の上端を折り返して係止部を設ける必要があり、係止部に相当する箇所がないフェンス体を取付ける場合は、フェンスを適宜高さに支持しながら、固定金具によりフェンス体の横線材を支柱に固定する必要があり、フェンス体の高さ合わせや水平合わせが容易ではなく、特に作業者がひとりの場合は取付作業が非常に困難であった。
【0007】
又、前記の特許文献2に記載のようなフェンスでは、略U字状の取付金具を支柱に予め取付けおくと、支柱を運搬する際に、取付金具が他の部材と接触し、傷等が生じる虞れがあり、更に、取付金具の大きさに応じて隙間を開けて支柱を運搬する必要があり、輸送効率が悪く、その点が問題であった。
【0008】
本発明は、前記の如き問題点を解消し、フェンスの上端部の形状に関わらず、フェンス体を支柱に取付ける際、その取付作業が容易になされるフェンスを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。
すなわちこの発明に係るフェンスは、複数の縦線材と複数の横線材とからなる格子状のフェンス体の横線材が支柱に取付けられた引掛部材に引掛けられてなるフェンスであって、前記引掛部材は、横線材を引掛ける引掛部と、支柱に設けられた縦長孔に取付けられる取付部とを備え、前記取付部は首部の先端より羽根部が左右に突出され、該羽根部の左右の幅寸法が縦長孔の縦寸法より短く、首部の左右の幅寸法が縦長孔の横寸法より短く、且つ羽根部の左右の幅寸法は前記縦長孔の横寸法より長くなされ、前記羽根部が縦長孔に挿入されると共に、該羽根部の左右両端が縦長孔の左右側縁に係止されたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、引掛部材は、横線材を引掛ける引掛部と、支柱に設けられた縦長孔に取付けられる取付部とを備え、前記取付部は首部の先端より羽根部が左右に突出され、該羽根部の左右の幅寸法が縦長孔の縦寸法より短く、首部の左右の幅寸法が縦長孔の横寸法より短く、且つ羽根部の左右の幅寸法は前記縦長孔の横寸法より長くなされ、前記羽根部が縦長孔に挿入されると共に、該羽根部の左右両端が縦長孔の左右側縁に係止されるので、引掛部材の取付作業が容易になされると共に、この引掛部材は不用意には外れないためフェンス体の取付作業も容易となる。
【0011】
又、本発明に係るフェンスにおいて、引掛部材の引掛部は、その横寸法が支柱の縦長穴の横寸法より長くなされれば、引掛部材を支柱の縦長孔に取付ける際、誤って引掛部材がそのまま縦長孔から支柱内に入ってしまう虞れが低くなりより好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照し、具体的に説明する。
【0013】
すなわち、図1は本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す正面図、図2はフェンスの実施の一形態を示す側面図、図3は引掛部材の実施の一形態を示す説明図、図4は引掛部材の実施の一形態を示す説明図、図5は引掛部材の取付方法を示す説明図、図6はフェンス体の引掛方法の一形態を示す説明図、図7はフェンス体の固定方法の一形態を示す説明図、図8は引掛部材の実施の一形態を示す説明図、図9は引掛部材の他の実施形態を示す説明図である。本発明に係るフェンスFは、格子状のフェンス体1と、フェンス体1の横線材12を引掛ける引掛部材2と、引掛部材2が取付けられる支柱3とから主に構成されている。
【0014】
先ずフェンス体1は、図1、図2に示すように、複数の縦線材11と複数の横線材12とにより格子状に形成されたものである。一般には、縦線材11、及び横線材12は鋼材をそれぞれ縦横に配置し、交差箇所を溶接して格子状に形成されるものであるが、各線材の材質は、鋼材以外のステンレス鋼やアルミニウム合金等の他の金属でもよく、又、表面に亜鉛や亜鉛合金によるめっきを施し耐食性を高めたものでもよく、更に表面に合成樹脂による塗装や被覆を施し、意匠性や耐食性を高めたものでもよい。
【0015】
又、フェンス体1は、その上端部が折り返されて胴縁が形成されている。胴縁の形態は特に限定されるものではなく、横方向に形成された円筒状のものでもよく、本形態のように、前記円筒状胴縁において支柱3側が切除されてなる半円状の胴縁でもよく、上方に向けて尖った三角形状のものでもよい。
【0016】
次に支柱3は、一般には、パイプ状の鋼材により形成されたものであり、上端部にキャップ31が取付けられたものである。尚、支柱3の横断面は、本形態のように長方形状になされたものでもよく、正方形状でもよく、円形、楕円形等の形状でもよく、必要な強度やフェンス体1の取付方法に応じて適宜使用できる。又支柱3は、その表面に亜鉛や亜鉛合金等によるめっきを施し耐食性を高めたものでもよく、更に表面に合成樹脂による塗装や被覆を施し、意匠性や耐食性を高めたものでもよい。
【0017】
次に図3は、本形態に係る引掛部材2の説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は背面図である。引掛部材2は、平板状に形成された本体21と、本体21からフェンス体1側に設けられた引掛部22と、本体21から支柱3側に向けて形成され支柱3に取付けられるための取付部4とを備えたものである。
【0018】
引掛部材2の引掛部22は、本体21と、本体21の下部両側部からフェンス体1側に向けて突出された相対向する引掛片23とを備え、引掛片23の端部から上方に向けて止め部24が突出されている。そして、フェンス体1の横線材12が本体21と止め部24のとの間に配置され、フェンス体1が引掛部材2に引掛けられる。
【0019】
引掛部22は、本体21の下部からフェンス体1側に突出され、その先端が上方に折り曲げられた縦断面略J字状に形成されたものでもよいが、本形態のように、2個の縦長の引掛片23で支える方が強度を比較的高くできるので、より好ましい。又、引掛片23は本体21の下部の適宜位置から突出されたものでもよく、引掛片23の個数は3個以上の複数個でもよく、要は引掛部22にフェンス体1の横線材12を引掛けた際に、不用意に変形して横線材12が脱落しない程度の強度を有していればよい。
【0020】
引掛部材2の取付部4は、本体21の上端から支柱3側の斜め下方に向けて折り返され、そして折り返された取付部4は、その首部41の先端より羽根部42が左右に突出された逆T字状に形成されたものである。
【0021】
続いて、支柱3に対する引掛部材2の取付方法について詳しく説明する。図1に示すように、支柱3の一側面には引掛部材2が取付けられる小判型の縦長孔32が設けられている。図4は、引掛部材2の寸法と縦長孔32の寸法との関係を示したものであり、引掛部材2の取付部4において、首部41の左右の幅寸法K1は縦長孔32の横寸法H1より短く、羽根部42の左右の幅寸法K2は、縦長孔32の縦寸法H2より短く、且つ縦長孔32の横寸法H2より長くなされている。これにより、図5に示すように、取付部4の首部41において、縦長孔32の縦方向に沿って羽根部42を挿入すると共に、挿入方向を軸として首部41を回動させ、羽根部42の左右両端が支柱3の内部で横方向に配置され、取付部4の曲折箇所が縦長孔32の下縁部に係止されるようになされれば、引掛部材2を支柱3に取付けることが可能となり、従って、支柱3に対する引掛部材2の取付作業が容易になされる。又、本体21の支柱3側を平坦に形成し、支柱3の一側面に当接するようになされれば、支柱3に取付けられた引掛部材2のがたつきを抑えることができるのでより好ましい。
【0022】
又、引掛部22の相対向する引掛片23の間隔K3は、特に限定されるものではないが、図8に示すように、本形態では支柱3の縦長孔32の横寸法H1より長くなされている。これにより、引掛部材2を縦長孔32に取付ける際、誤って引掛部材2がそのまま縦長孔32から支柱3内に入ってしまう虞れが低くなりより好ましい。
【0023】
更に、施工現場において、支柱3に引掛部材2を取付けることができるため、予め支柱3に引掛部材2を取付ける必要はなく、従って、予め引掛金具等を取付けた支柱と比べ、輸送効率を高めることができる。
【0024】
続いて、引掛部材2に対するフェンス体1の横線材12の引掛構造について詳しく説明する。図6の(a)、(b)に示すように、引掛部材2の引掛部22に横部材12を引掛けることにより、フェンス体1が引掛部材2に引掛けられるが、この際、フェンス体1の荷重によって、引掛部材2の取付部4が支柱3の縦長孔32から外に出る方向に力が働いても、図6の(c)に示すように、取付部4の羽根部42の左右両端が縦長孔32の左右側縁に係止されるので、引掛部材2は縦長孔32からは容易には脱落せず、フェンス体1の引掛状態をより安定的に保持することができる。
【0025】
又、図2に示すようなフェンス体1を用いる場合、すなわち、フェンス体1の上端部の形状が、支柱3の上端部に引掛けられないような場合、隣接する支柱3にそれぞれ引掛部材2を取付けておけば、この引掛部材2に横線材12を引掛けて、フェンス体1を支柱3間に仮置き可能となる。この後に、図2に示すように、一端は円弧状に折り返された折返部51となされ、他端は固定ナットNが螺合される倒J字状の取付金具5によってフェンス体1の横線材12を支柱3に固定し、支柱2にフェンス体1をより強固に固定することができる。
【0026】
又、図7に示すように、引掛部材2が取付けられた支柱3の縦長孔32において、その上部に前記取付金具5を挿入して、折返部51が引掛部材2の引掛片23の間に下向きになるように配置し、そしてフェンス体1の横線材12を、折返部51の内部に抱え込むように取付けてもよい。この際、前記折返部51の円弧状部の外形を引掛部21の引掛片23より大きくしておけば、引掛片23には触られにくくなるため、不用意に引掛片23の端部に触れて怪我をするようなことが起こりにくくなる。
【0027】
尚、図示はしていないが、フェンス体1を傾斜面に取付ける場合、つまり隣接する支柱3の縦長孔32の水平高さが異なる場合、前記と同様にそれぞれ支柱3に引掛部材2を取付けておけば、傾斜面に沿って傾斜したフェンス体1の横線材12を引掛部材2に引掛けると、引掛部材2はその傾斜に応じて縦長孔32の端縁に沿って回動する。これにより、フェンス体1の傾斜面での取付作業が容易となる。
【0028】
引掛部材2は、一般には、鋼板、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属板を該形状に切断し、適宜折り曲げて一体的に形成されたものであり、コストの面では有利であるが、この形態に限定されるものではなく、2個以上の部材を接合して形成されたものでもよく、或いは、AAS樹脂、ABS樹脂、ポリアセタール、ナイロン樹脂、ポーリカーボネート等の合成樹脂を射出成型してなるものでもよい。
【0029】
図9は、引掛部材2の他の実施形態を示す説明図であり、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図である。すなわち、図3の引掛部材2と比べて、主に取付部4の形態が異なるものであり、その他の部分は図3の引掛部材2と同様な形態である。
【0030】
すなわち、引掛部材2の本体21の両側端を折り起こしてリブを形成し、前記両リブの下部を適宜切断して引掛部22を形成させると共に、本体21の上部を取付部4とし、その首部41の先端を左右の斜め後方に開設して羽根部42とし、羽根部42の左右下端にそれぞれ切欠部43を設けたものである。首部41の幅寸法、及び羽根部42の左右の幅寸法と縦長孔との関係は図4に示した引掛部材2と同様である。又、本形態に係る引掛部材2は、支柱3の縦長孔32に取付ける際、図5に示された引掛部材2と同様な作業によって取付けることが可能であるが、羽根部42の切欠部43が縦長孔32の下縁部に配置されるようになされれば、より安定的に取付けられることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明は、支柱に対して引掛部材を容易に取付けられ、且つ不用意には外れなくなるので、例えば、支柱間に平板状のパネル体を取付ける際に、支柱の下部に引掛部材を取付けパネル体の下端部を引掛けると共に、支柱の上部に引掛片の止め部を下方に向けて突出させた引掛部材を取付けて、パネル体の上端部を引掛けることにより、パネル体を支柱間に仮止めするような場合にも用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す正面図である。
【図2】本発明に係るフェンスの実施の一形態を示す側面図である。
【図3】引掛部材の実施の一形態を示す説明図である。
【図4】引掛部材の実施の一形態を示す説明図である。
【図5】引掛部材の取付方法を示す説明図である。
【図6】フェンス体の引掛方法の一形態を示す説明図である。
【図7】フェンス体の固定方法の一形態を示す説明図である。
【図8】引掛部材の実施の一形態を示す説明図である。
【図9】引掛部材の他の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1 フェンス体
11 縦線材
12 横線材
2 引掛部材
21 本体
22 引掛部
23 引掛片
24 止め部
3 支柱
31 キャップ
32 縦長孔
4 取付部
41 首部
42 羽根部
43 切欠部
5 取付金具
F フェンス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の縦線材と複数の横線材とからなる格子状のフェンス体の横線材が支柱に取付けられた引掛部材に引掛けられてなるフェンスであって、前記引掛部材は、横線材を引掛ける引掛部と、支柱に設けられた縦長孔に取付けられる取付部とを備え、前記取付部は首部の先端より羽根部が左右に突出され、該羽根部の左右の幅寸法が縦長孔の縦寸法より短く、首部の左右の幅寸法が縦長孔の横寸法より短く、且つ羽根部の左右の幅寸法は前記縦長孔の横寸法より長くなされ、前記羽根部が縦長孔に挿入されると共に、該羽根部の左右両端が縦長孔の左右側縁に係止されたことを特徴とするフェンス。
【請求項2】
前記引掛部材の引掛部は、その横寸法が支柱の縦長穴の横寸法より長くなされたことを特徴とするフェンス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−208523(P2008−208523A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−43314(P2007−43314)
【出願日】平成19年2月23日(2007.2.23)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】