フェージングシミュレータ及びマルチパスフェージングシミュレータ
【課題】 受信信号におけるドップラーシフトの影響を高精度に模擬するフェージングシミュレータを得ること。
【解決手段】 フェージングシミュレータ206は、ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段322と、前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段324と、複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段340と、前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段212とを備える。
【解決手段】 フェージングシミュレータ206は、ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段322と、前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段324と、複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段340と、前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段212とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に無線通信の技術分野に関し、特に号受信信号におけるフェージングの影響を模擬するフェージングシミュレータ及びマルチパスフェージングシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムで使用される周波数帯域は、今後更に広帯域化しつつある。これに伴い、ドップラー効果に起因するフェージングにより、その周波数帯域内で、ある周波数特性が観測されるようになり、それは受信信号品質にも大きな影響を及ぼす。従って、移動通信システムの設計では、マルチパスフェージングだけでなく、ドップラーシフトによるフェージングに対処することも重要である。
【0003】
図1は、受信信号の電力スペクトルとドップラーシフトの関係を示す。ある進行方向に移動体が進み、等方的に様々な方向から電波が到来しているものとする。図1左側に示されるように、搬送波の周波数fCを中心として、±fDの範疇にスペクトルが分布している。fDは最大ドップラー周波数であり、移動体の進行方向と電波の到来方向のなす角度αが0である場合に観測される周波数シフト又はドップラーシフトを表す。k(α)は、角度αに依存するパラメータであり、例えば、垂直ホイップアンテナを使用し、一様な到来各を想定する場合には、k(α)=3/2πとなる。任意の角度αに対する周波数シフトは、fD×cos(α)で表される。従って、角度αが、所与の値域(例えば、0≦α≦2π)の中で、一定の確率分布に従って変化したとすると、±fD程度の大きなドップラーシフトを有する到来波が多く発生し、小さなドップラーシフトを有する到来波は少なく発生する。このため、±fD程度のドップラーシフトを有する受信信号の電力密度が大きくなっている。図中、余弦波のグラフに隣接して描かれている複数の線は、角度αを一定間隔で変化させたときに、ドップラー周波数の周波数間隔に広狭が生じる様子を示す。
【0004】
このようなフェージングに対する評価は、実際に空間に送信された電波を受信して行なうことに加えて、又はその代りに、フェージングシミュレータを用いて行なわれることが多い。フェージングシミュレータは、フェージングの影響を表すフェージング信号を生成し、そのフェージング信号をフェージングシミュレータに入力された信号に乗算して出力する。この場合において、図1左側に示されるように、無線周波数帯域におけるドップラーシフトの影響を模擬するもの(帯域表現)と、図1右側に示されるように、ベースバンドにて等価的に模擬するもの(等価低域表現)とがある。後者は、無線周波数帯域に対する処理回路を構築せずに、フェージングの影響を模擬できる。このことは、ベースバンド帯域と無線周波数帯域に分けてシステムの性能評価を行なう等の観点から好都合である。また、シミュレーションに高周波回路を要しないので、アナログ高周波素子を含む回路の動作特性の不完全性や特性劣化に起因して、フェージングの評価精度が劣化してしまう懸念も排除される。更に、後者のフェージングシミュレータは、受信信号に与えられる複数の特性劣化原因をその原因毎にモデル化して調査する等の観点からも好都合である。後述の実施例でも、等価低域表現法が使用されるが、本発明は何れの表現法にも適用できる。
【0005】
図1(特に左側)に示されるようなフェージングの影響を模擬する第1の方法は、多数の正弦波(素波)を重ね合わせることである。この方法では、フェージング信号T(t)は、
【0006】
【数1】
で表現され、ここで、ωD=2πfDは最大ドップラー角周波数を表し、fDは最大ドップラー周波数を表し、φnはn番目の素波の位相を表し、αnはn番目の素波の到来角(移動体の進行方向及び電波の到来方向のなす角)を表し、cn又はE0cnはn番目の素波の振幅を表し、E0は所与の定数を表し、Nは素波の総数を表す。素波の振幅データは、テーブルに格納される。素波の振幅データは、1周期の期間にわたる振幅値、即ち1周期中の全てのサンプリング時点に対する振幅値として、ルックアップテーブル(LUT)に格納される。それらの振幅値は、所定のサンプリング周波数に応じて抽出され、(1)式に基づいて合成され、フェージング信号T(t)として出力される。この種の技術は、例えば特許文献1及び非特許文献1に記載されている。
【0007】
フェージングの影響を模擬する第2の方法は、白色ガウス雑音(WGN:White Gaussian Noise)信号を、特殊な伝達関数を有する低域通過フィルタ(LPF)で整形する。その伝達関数は、図1に示されるような、中心周波数近辺では平坦であるが、そこから偏移するにつれて急峻に大きくなり、最大ドップラー周波数を超えると0になる特性を有する。このようなフェージングシミュレータは、JTCフェーダーと呼ばれる。JTCフェーダーについては、例えば特許文献2及び非特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平6−140950号公報
【特許文献2】特開2003−298536号公報
【非特許文献1】W.C.Jakes,Jr.,“Microwave Mobile Communications”,John Wiley & Sons,pp.67−76(1974)
【非特許文献2】“The JTC Fader”,3GPP2 FYI,Nov.8,2002,Sandip Sarker,Qualcomm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1の方法によれば、テーブルに格納される振幅データは、素波の1周期の間に、所定のサンプリング周波数fSで全ての振幅値が抽出されるように用意される。このような振幅データは素波毎に用意する必要がある。例えば、サンプリング周波数fSが3.8MHzであり、最大ドップラー周波数fDが100Hzであるとする。ドップラー周波数fDcosαは、−100乃至100Hzの範疇で変化する。この場合に、最大ドップラー周波数100Hzの素波については、3.8MHz/100Hz=38000個の振幅値がテーブルに格納される必要がある。10Hzの素波については、3.8MHz/10Hz=380000個の振幅値がテーブルに格納される必要がある。更に、1Hz、0.1Hz、0.01Hzの素波については、3.8M個、38M個、380M個の振幅値がテーブルに格納される必要がある。このように、素波の振幅データの量は、周波数が低くなるほど多くなる。フェージング精度を向上させたり、模擬されるフェージングの周期性を長期化するには、多くの素波を用意して模擬することが望ましい。しかし、そのようにすると、極めて大量のデータを事前に用意しなければならなくなり、これは、簡易にフェージングを模擬する等の観点から不都合である。
【0009】
第2の手法によれば、データ量が著しく増えてしまうような問題はないが、特殊な低域通過フィルタを構築する点で不都合が生じるおそれがある。例えば、そのような伝達特性を有するフィルタが、有限インパルス応答(FIR)フィルタで構築される場合には、非常に多くのタップ数が必要とされ、回路規模が大きくなってしまう。無限インパルス応答(IIR)フィルタでフィルタが構築される場合には、FIRフィルタほど大きな回路規模は要しないかもしれないが、タップ係数に対する最適解が発見されにくくなるという別の問題が生じてしまう。更に、±fDを超える周波数のスペクトルは完全に阻止されることが望ましいが、実際に構築される低域通過フィルタでは、その伝達特性の不完全性により、±fDを超える周波数を、僅かではあるが許容してしまう、或いは、±fD付近の急峻さが劣化してしまう。そのため、フェージングの様子を正確に模擬できなくなり、フェージングの評価精度を劣化させてしまうことが懸念される。
【0010】
本発明は、上記の問題点の少なくとも1つに対処するようになされたものであり、その課題は、受信信号におけるドップラーシフトの影響を高精度に模擬するフェージングシミュレータ及びマルチパスフェージングシミュレータを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、
ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段と、
前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段と、
複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、
前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段と
を備えることを特徴とする、ドップラーシフトの影響を模擬するフェージングシミュレータが使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信信号におけるドップラーシフトの影響を高精度に模擬することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一態様では、ガウス雑音信号を帯域制限する低域通過フィルタ手段と、複数の所定のドップラー周波数の各々について、1/4周期以上の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、前記低域通過フィルタ手段からの第1信号及び前記メモリ手段からの第2信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段とが備えられ、ドップラーシフトの影響が模擬される。
【0014】
フェージング信号が、第1及び第2信号を合成することで生成されるので、フェージング信号が第1又は第2信号の一方のみによって生成される場合よりも、フェージングの様子を正確に模擬することができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの遷移域に属する周波数である。遷移域より低周波数側の通過域の素波に関する振幅データを用意する必要がないので、記憶すべきデータ量が少なくて済む。また、第1信号は、平坦な通過域付近の信号を表現すればよいので、遷移域の特性をドップラーフェージングに合わせなくてもよい。即ち、低域通過フィルタの特性は、通常の帯域制限フィルタのように台形状に形成すればよいので、低域通過フィルタは、比較的小さな回路規模のディジタルフィルタで簡易に作成できる。
【0016】
第2信号は、最大ドップラ周波数程度の偏移を有する信号を表現する。本発明の一態様によれば、前記振幅データは、前記低域通過フィルタの特性に応じて信号電力が変化するように設定される。本発明の一態様によれば、前記振幅データは、最大ドップラー周波数に近づくほど最大振幅値が大きくなるように設定される。本発明の一態様によれば、前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの特性に従って周波数間隔が変化するように設定される。本発明の一態様によれば、前記複数の周波数は、最大ドップラー周波数に近づくほど周波数間隔が密になるように設定される。振幅の大きさや周波数間隔等を調整することは、記憶データ量及び回路規模の顕著な増加を必要とせずに、簡易に行なうことができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記低域通過フィルタ、前記メモリ手段及び前記合成手段の少なくとも1つに接続されたアップサンプラ手段が備えられる。前記アップサンプラ手段は、所定値を有するデータ点が所定の頻度で入力信号に挿入された信号を出力する。これにより、第1信号及び第2信号を、主信号のサンプリング周波数fSよりも低い周波数で生成することができる。このため、フェージング周期の長期化、記憶データ量の削減等を図ることができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、複数のフェージングシミュレータからの複数の信号の振幅及び位相を調整して合成し、マルチパス伝搬環境におけるドップラーシフトの影響を模擬するマルチパスフェージングシミュレータが使用される。前記複数のフェージングシミュレータの内の1以上は、上記のフェージングシミュレータである。これにより、マルチパスフェージング及びドップラーフェージングの双方の影響を受けた信号を高精度に模擬することができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記のマルチパスフェージングシミュレータにおいて、1つの雑音生成手段が、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される。本発明の一態様によれば、1つの雑音生成手段及び1つの低域通過フィルタが、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される。
【実施例1】
【0020】
図2は、本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。マルチパスフェージングシミュレータ装置200は、N個の遅延器202−1〜Nと、N個の遅延器にそれぞれ接続された減衰器204−1〜Nと、N個の減衰器にそれぞれ接続されたフェージングシミュレータ装置206−1〜Nと、複素信号の実数成分及び虚数成分をそれぞれ合成する合成部208−R,Iとを有する。フェージングシミュレータ装置206−1〜Nの各々は、フェージング信号生成器210及び合成部212−R,Iを有する。
【0021】
遅延器202−1〜Nの各々は、入力信号を所定の時間τ1,τ2,...,τNだけそれぞれ遅延させる。入力信号は、主信号とも呼ばれ、複素数形式で表現され、実数成分と虚数成分を有する。入力信号の実数成分及び虚数成分は、別々に遅延させられる。以後も同様に、実数成分及び虚数成分は別々に処理される。
【0022】
減衰器204−1〜Nの各々は、それらに入力された信号の振幅を、所定の調整量L1,L2,...,LNに合わせて調整する。上記の遅延量τ1,τ2,...,τN及び所定の調整量L1,L2,...,LNは、受信信号のマルチパス伝搬特性を再現するように設定される。想定されるパス数は、Nである。
【0023】
フェージングシミュレータ装置206−1〜Nは、入出力信号は互いに相違するが、それらは同様な構成及び機能を有するので、フェージングシミュレータ装置206−1がそれらを代表して説明される。フェージングシミュレータ装置206−1は、遅延器202−1及び減衰器204−1で適切に振幅及び位相が調整された信号を受ける。また、フェージングシミュレータ装置206−1内のフェージング信号生成器210は、フェージングの影響を表すフェージング信号を生成する。振幅及び位相の調整された信号と、フェージング信号は、合成部212により、実数成分及び虚数成分毎に合成される。
【0024】
合成部208−R,Iは、各フェージングシミュレータ装置206−1〜Nから出力された信号を、実数成分及び虚数成分毎に合成し、合成後の信号を出力する。この出力信号は、ドップラーシフトによるフェージングの影響を受けた受信信号を表す。以後、この出力信号を用いてシステム設計等が行なわれる。
【0025】
図3は、フェージングシミュレータ装置206−1の詳細図を示す。上述したように、フェージングシミュレータ装置206−1には、位相及び振幅の調整された主信号が入力され、それらとフェージング信号を合成することで、主信号にフェージングの影響が反映される。
【0026】
フェージング信号生成器210は、概して、第1信号生成部302と、第2信号生成部304と、合成部306−R,Iとを有する。第1信号生成部302は、ガウス雑音生成部322−R,Iと、低域通過フィルタ(LPF)324−R,Iとを有する。第2信号生成部304は、M個の素波の各々に関する振幅データを有するM個のルックアップテーブル(LUT)340−1〜Mと、2M個の振幅調整部A1R,I〜AMR,Iとを有する。
【0027】
第1信号生成部302は、複素信号である第1信号を生成し、出力する。第1信号の実数成分は、ガウス雑音生成器322−Rからの白色ガウス雑音(WGN)信号を、低域通過フィルタ324−Rで波形整形又は帯域制限することで作成される。同様に、第1信号の虚数成分は、ガウス雑音生成器322−Iからの出力を、低域通過フィルタ324−Iで波形整形することで作成される。ガウス雑音生成器322−R,Iは同様な構成及び機能を有するので、両者で共通化することも可能である。但し、フェージング周期を長期化し、フェージングの評価精度を向上させる観点からは、実数成分及び虚数成分毎に別々にそれらを用意することが望ましい。
【0028】
低域通過フィルタ324−R,Iは、図4(A)に示されるような、通常の台形状の伝達特性を有する。図4(A)に示されるような伝達特性を有する低域通過フィルタは、比較的少数のタップ数を有する小型のFIRフィルタやIIRフィルタで簡易に構成することができる。従って、本実施例で使用される低域通過フィルタ322−R,Iは、図10に示されるような特殊な伝達特性を有する低域通過フィルタと大きく異なる。
【0029】
第2信号生成部304は、M個の素波の実数成分及び虚数成分を出力する。本実施例では、サンプリング周波数fS=3.8MHzに従って信号が出力される。各テーブル304−1〜Mには、それぞれの周波数に対応する正弦波(素波)の振幅値が格納されている。これらの振幅値は、素波の1周期の間に、1周期分の振幅値がサンプリング周波数fSに従って順に出力されるように用意されている。例えば、周波数fiの素波に対しては、ki=fS/fi個の振幅値が、テーブル304−iに格納される。但し、i=1,...,Mである。個々の素波の周波数fiは、次式で決定される:
fi=fD×cos(αi)
ここで、fDは最大ドップラー周波数であり、αiは移動体の進行方向と電波の到来する方向のなす角度である。便宜上、α1,...,αMの順に角度の値が小さくなってゆくものとする(ドップラー周波数はf1,...,fMの順に大きくなる。)。格納される振幅値の個数ki=fS/fiは、素波の周波数fiに反比例するので、周波数fiが小さいほど多くの振幅値がテーブル304−iに格納される必要がある。本実施例では、上位から高々M個のドップラー周波数fM,fM−1,...,f1についての振幅値が用意されるに過ぎない。従って、非常に小さなドップラー周波数に対する振幅値をテーブルに用意しなくて済む。後述のように、M個の素波の周波数は、低域通過フィルタ324−R,Iの遷移域に属し、通過域(遷移域より低い周波数帯域)に属する素波のテーブルは不要である。このため、素波毎に用意されるテーブルの規模又は記憶容量は、従来の第1の方法で必要としていたものより少なくて済む。最低周波数f1をどこに設定するかについては、用途に応じて適宜設定可能である。但し、過剰に低周波側に設定すると、テーブルに格納するデータ量が過剰に増えてしまうことに留意を要する。
【0030】
本実施例では、テーブルに記憶するデータ量を減らす観点から、正弦波と余弦波が互いにπ/2ラジアンだけ位相がずれている性質を利用して、実数成分と虚数成分に共通のテーブルが参照されている。更に、正弦波の対称性を考慮すれば、1/4周期以上の正弦波のデータがテーブルに記憶されていればよい。
【0031】
振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iは、テーブルに格納された振幅値を適切に調整して出力する。なお、実数成分及び虚数成分に対する調整内容が同じである場合には、各テーブル340−1〜Mに振幅調整済みの値が記憶されてもよい。そのようにすると、振幅調整部を省略できる。
【0032】
図4及び図3を参照しながら、本実施例における動作を説明する。一般に、フェージングシミュレータは、主信号のサンプリング周波数fS以上で動作する必要がある。本実施例では、主信号のサンプリング周波数fS以上で動作するものとする。第1信号生成部302内のガウス雑音生成部322−R,Iは、サンプリング周波数fSに合わせて雑音信号をそれぞれ出力する。雑音信号は、±fDを含む周波数範囲の全域にわたって分布する。この雑音信号を、低域通過フィルタ324−R,Iで波形整形することで、第1信号が出力され、合成部306−R,Iに入力される。第1信号は、図4(A)に示されるような電力スペクトルを有する。
【0033】
第2信号生成部304は、最大ドップラー周波数fD近辺のM個の素波の各々についてのテーブル340−1〜Mから、サンプリング周波数fSに従って、振幅値を抽出する。抽出された振幅値は、振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iにて適切な値に調整された後に出力され、合成部306−R,Iに入力される。振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iにおける調整は、低域通過フィルタ324−R,Iの遷移域のフィルタ特性(図4(A))の形状を考慮して調整される。簡略化された図示の例では、遷移域にて直線的に徐々に減少するフィルタ特性(図4(A))に合わせて、M個の素波の電力が徐々に大きくなるように振幅が調整されている。
【0034】
第1及び第2信号生成部302,304からの第1及び第2信号は、合成部306−R,Iで合成される。図4(C)は、合成後の信号の電力スペクトルを示す。これにより、図1に示されるような、中心周波数近辺では平坦であるが、そこから偏移するにつれて急峻に増加し、最大ドップラー周波数を超えると0になる電力スペクトルを有する信号が生成される。このような信号は、ドップラーシフトの影響を正確に模擬するものであり、この信号が、合成部212により主信号に影響を及ぼし、ドップラーシフトの影響を受けた信号が出力される。
【0035】
なお、上記の動作では、第1信号が作成され、第2信号が作成され、第1及び第2信号が合成され、それが主信号に導入されるように説明された。しかしながら、このような動作の順序は必須ではなく、第1及び第2信号を生成する順序は逆であってもよいし、信号生成手順の全部又は一部が同時に行なわれてもよい。また、第1信号、第2信号及び主信号の全部又は一部が同時に合成されてもよい。
【0036】
図5は、本実施例における別の動作例を説明する。本実施例では、振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iは必須ではないので、それらは省略されているものとする。図4で説明したのと同様に、第1信号生成部302は第1信号を生成する。第2信号生成部304は、最大ドップラー周波数fD近辺の素波の各々について、テーブル340−1〜Mから振幅値を抽出する。この場合において、低域通過フィルタ324−R,Iの遷移域の特性形状(図5(A))に合わせて、合成部306にて合成される素波の個数が調整される。即ち、遷移域に属するM個の素波f1,...,fMの内、Mより小さいP個の素波の周波数が選択される。或いは、当初からP個のテーブルしか準備されていないようにしてもよい。簡略化された図示の例では、遷移域にて直線的に徐々に減少するフィルタ特性に合わせて、素波の個数密度が疎から密へ変わるように、素波が選択されている(図5(B))。このように、素波の個数を調整しても、第1信号と第2信号を合成した電力密度スペクトラムは、図1右側のように近似することができる。
【実施例2】
【0037】
図6は、本発明の一実施例によるフェージング信号生成器を示す図である。このフェージング信号生成器610は、図3のフェージング信号生成器210の代わりに使用されてもよい。フェージング信号生成器610は、概して、第1信号生成部602と、第2信号生成部604と、加算部606−R,Iとを有する。第1信号生成部602は、ガウス雑音生成部622−R,Iと、低域通過フィルタ(LPF_L0)624−R,Iとを有する。第2信号生成部604は、M個の素波の各々に関する振幅データを有するM個のテーブル640−1〜Mと、2M個の振幅調整部A1R,I〜AMR,Iとを有する。これらの要素については、実施例1にて説明済みであるので、更には説明されない。
【0038】
本実施例における第1信号生成部602には、実数成分及び虚数成分の各々について、L個の補間器が設けられ、その補間器の各々は、アップサンプラURLi及び補間処理用の低域通過フィルタLPF_Liより成る。但し、i=1,...,Lである。同様に、第2信号生成部604にも、実数成分及び虚数成分の各々について、H個の補間器が設けられ、その補間器の各々は、アップサンプラURLj及び補間処理用の低域通過フィルタLPF_Ljより成る。但し、j=1,...,Hである。更に、加算器606−R,Iの後段にも、実数成分及び虚数成分の各々について、T個の補間器が設けられ、その補間器の各々は、アップサンプラURLk及び補間処理用の低域通過フィルタLPF_Lkより成る。但し、k=1,...,Tである。これらの補間器は、何れも同様な構成及び機能を有するので、第1信号生成手段602内の補間器のうち、アップサンプラURL1及び低域通過フィルタLPF_L1を有する補間器が、それらを代表して説明される。
【0039】
補間器は、概して、そこに入力された信号のサンプリングデータ数を増やし、適切に帯域制限しながら、より高い周波数RL1×fSLでサンプリングされた信号に等価な信号を出力する。低域通過フィルタ624−I(LPF_0)に接続されるアップサンプラURL1は、入力された信号を表す一連のサンプリングデータ1つにつき、(RL1−1)個の“0”を付加することで、サンプリングデータ数を増やす。入力された信号のサンプリング周波数をfSLとすると、アップサンプリング後の周波数は、RL1×fSLである。低域通過フィルタLPF_L1は、fSL/2より大きく且つ(RL1−1/2)fSLより小さい周波数成分を除去するように機能する。
【0040】
図7は、補間器の動作を説明するための説明図である(負の領域は省略されている。)。仮に、最大ドップラー周波数fDが100Hzであり、サンプリング周波数fSLが400Hzであり、分周比RL1が2であるとする。ガウス雑音生成器622−Iから生成され、LPR_LOで濾波された信号は、高々100Hzまでの周波数成分を有する。この信号を、400Hzのサンプリング周波数fSLでサンプリングして再現すると、サンプリング周波数fSL毎に同様な電力スペクトルが生じる。アップサンプラURL1を用いて、2つのサンプリングデータの間に1つの“0”を付加することで、サンプリングデータ数は2倍に引き上げられる。そして、補間処理用の低域通過フィルタLPF_L1により、サンプリング周波数fSL=400Hzの奇数倍で生じる側波帯又はイメージが除去される。低域通過フィルタが、fSL/2=200より大きく且つ(RL1−1/2)fSL=600Hzより小さい周波数成分を除去すると、図7下側に示されるような電力スペクトルが得られる。この電力スペクトルは、ドップラーシフトに関する信号を、RL1×fSL=2×400=800Hzの周波数でサンプリングしたときに得られるものと等価である。このように動作する補間器の段数を更に増やすことで、より高い周波数でサンプリングしたときに得られる信号と等価な信号を生成することができる。
【0041】
図6の第1信号生成部602では、低域通過フィルタ624−R,Iの出力は、上述したような補間器L個によって、サンプリング周波数が、fSLからfSTに引き上げられ、最終段の補間器の出力は、合成部606−I,Rにそれぞれ入力される。個々の補間器での分周比をRL1,RL2,...,RLLとすると、
fST=RL1×RL2×・・・×RLL×fSL
である。第2信号生成部604では、周波数fSHで各テーブル640−1〜Mから振幅値がサンプリングされる。合成部607−R,Iの出力も、上述したような補間器H個によって、サンプリング周波数が、fSHからfSTに引き上げられ、最終段の補間器の出力は、合成部606−I,Rにそれぞれ入力される。個々の補間器での分周比をRH1,RH2,...,RHHとすると、
fST=RH1×RH2×・・・×RHH×fHL
である。従って、合成部606−R,Iでは、周波数fSTでサンプリングされた信号同士が合成されることになる。更に、合成部606−R,Iの出力にも、上述したような補間器T個によって、サンプリング周波数が、fSTからfSに引き上げられ、最終段の補間器の出力は、フェージング信号として出力される。個々の補間器での分周比をRT1,RT2,...,RTHとすると、
fS=RT1×RT2×・・・×RTT×fST
である。当初のサンプリング周波数fSL,fSH、分周比の値、補間器の段数は任意に設定できる。あるサンプリング周波数の整数倍近辺の帯域を阻止するような低域通過フィルタを構成することは、困難ではない。従って、第1信号に関しては、補間器の段数を適切に設定することで、ガウス雑音生成器622−R,Iを低い周波数で動作せることができる。これは、フェージング周期の長期化に寄与できることを意味する。第2信号に関しては、サンプリング周波数fSHが低くなることで、テーブル640−1〜Mに格納すべきデータ量を節約することができる。なぜなら、ある周波数fiの正弦波を構築するのに必要なデータ量は、(サンプリング周波数fSH)/(その周波数fi)個になるからである。分周比の値は、任意の値にしてもよいが、構成を簡易化する観点からは、分周比の全てが2に設定されてもよい。
【実施例3】
【0042】
図8は、本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータを示す。マルチパスフェージングシミュレータ800は、N個の遅延器802−1〜Nと、N個の遅延器にそれぞれ接続された減衰器804−1〜Nと、N個の減衰器にそれぞれ接続されたフェージングシミュレータ装置806−1〜Nと、合成部808−R,Iとを有する。フェージングシミュレータ806−1〜Nの各々は、フェージング信号生成器810及び合成部812−R,Iを有する。本実施例では、N個のフェージングシミュレータ装置に使用される1つのガウス雑音生成器814と、直並列変換器(S/P)816とが設けられている。第1信号生成部には、低域通過フィルタ824−R,Iと、補間器826−R,Iとが設けられている。第1及び第2信号生成部からの第1及び第2信号は、合成部828−R,Iで合成された後に、合成部818−R,Iにて主信号に反映される。
【0043】
遅延器802−1〜Nの各々は、入力信号を所定の時間τ1,τ2,...,τNだけそれぞれ遅延させる。減衰器804−1〜Nの各々は、それら入力された信号の振幅を、所定の調整量L1,L2,...,LNに合わせて調整する。上記の遅延量τ1,τ2,...,τN及び所定の調整量L1,L2,...,LNは、受信信号のマルチパス伝搬特性を再現するように設定される。想定されるパス数は、Nである。
【0044】
フェージングシミュレータ装置806−1〜Nは、入出力信号は互いに相違するが、それらは同様な構成及び機能を有するので、フェージングシミュレータ装置806−1がそれらを代表して説明される。フェージングシミュレータ装置806−1は、遅延器802−1及び減衰器804−1で適切に振幅及び位相が調整された信号を受ける。また、フェージングシミュレータ装置806−1内のフェージング信号生成器810は、フェージングの影響を表すフェージング信号を生成する。振幅及び位相の調整された信号と、フェージング信号は、合成部812−R,Iにより、実数成分及び虚数成分毎に合成される。
【0045】
合成部808−R,Iは、各フェージングシミュレータ装置806−1〜Nから出力された信号を、実数成分及び虚数成分毎に合成し、合成後の信号を出力する。
【0046】
ガウス雑音生成器814は、所定の周波数fSLの2N倍のサンプリング周波数を用いて、白色ガウス雑音信号を生成する。
【0047】
直並列変換器816は、ガウス雑音生成器814及びN個のフェージングシミュレータ装置806−1〜Nの間に設けられる。直並列変換器816は、そこに入力された直列的な信号を、2N個の並列的な信号に変換し、その並列的な信号を2つずつ、フェージングシミュレータ装置806−1〜Nにそれぞれ与える。
【0048】
本実施例でも、図3のマルチパスフェージングシミュレータと同様に、第1信号及び第2信号が生成され、それらが主信号に導入されることで、フェージングの影響を受けた信号を模擬することができる。第1信号を生成する場合に使用されるガウス雑音生成器814は、N個のフェージング信号生成器810に共通に使用されている。但し、異なるフェージングシミュレータ装置(更には、第1信号生成部の実数及び虚数成分側)に与えるガウス雑音信号の独立性又は非相関性を確保するために、ガウス雑音信号を高いサンプリング周波数で生成し、それらを各フェージングシミュレータ装置に分配している。ガウス雑音信号生成器は、2N×fSLのサンプリング周波数で信号を生成するので、第1信号生成部の低域通過フィルタ824−R,Iに与えられる信号のサンプリング周波数は、それぞれfSLになる。低域通過フィルタ824−R,Iは、帯域制限を行ない、出力を補間器826−R,Iに与える。補間器826−R,Iは、図6に関して説明された補間器の1以上として機能する。従って、低域通過フィルタ824−R,Iの出力信号のサンプリング周波数fSLが、補間器826−R,Iにより適切に引き上げられる。なお、サンプリング周波数fSLが、主信号のサンプリング周波数fSに等しい場合は、補間器826−R,Iは省略される。補間器826−R,Iの出力は、合成部828−R,Iにより、第2信号生成部からの出力信号と合成され、更に合成部812によって主信号と合成される。
【0049】
図9は、本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータを示す。図示の例では、第1信号生成部に相当する要素が、N個のフェージング信号生成器に共通に使用される。このマルチパスフェージングシミュレータ900は、N個の遅延器802−1〜Nと、N個の遅延器にそれぞれ接続された減衰器804−1〜Nと、N個の減衰器にそれぞれ接続されたフェージングシミュレータ装置806−1〜Nと、複素信号の実数成分及び虚数成分をそれぞれ合成する合成部808−R,Iとを有する。フェージングシミュレータ806−1〜Nの各々は、フェージング信号生成器810及び合成部812を有する。本実施例では、ガウス雑音生成器814と、低域通過フィルタ(LPF)825と、補間器827と、直並列変換器(S/P)816とが、N個のフェージングシミュレータ装置に共通に使用される。
【0050】
ガウス雑音生成器814は、2N×fSLのサンプリング周波数で信号を出力する。低域通過フィルタ825は、入力された信号を帯域制限し、その出力を補間器827に与える。低域通過フィルタ825は、例えば図10に示されるような、FIRフィルタで構成することができる。図10にて、DCHはクロックCH個の遅延を実現する遅延素子を表し、k0,...,kQ−1は、タップ係数を表す。補間器827には、2N×fSLの周波数でサンプリングされた信号が入力され、R×2N×fSでサンプリングされた信号に等価な信号がそこから出力される。Rは補間器で行なわれるアップサンプリングの分周比を示す(R=fS/fSL)。
【0051】
一例として、図11に示されるようなAi,Bi(i=1,2,...)2系列又は2チャネルの信号が補間器827に入力され、R=3倍にアップサンプリングされるものとする。チャネル数及び分周比は任意に設定可能である。補間器827では、図12に示されるように、(チャネル数)×(R−1)=2×(3−1)=4個の“0”点が、信号Ai,Biの後にそれぞれ配置される。信号Ai及び信号Biの間の時間間隔も狭められていることに留意を要する。この信号は、適切に帯域制限された後に、直並列変換器816を経て各フェージング信号生成器810に与えられる。以上により、R×2N×fSL=6N×fSLの周波数でサンプリングされた信号と等価な信号が形成される。フェージング信号生成器810では、周波数fSでサンプリングされた信号に等価な信号が、合成部828−R,Iにて第2信号と合成され、合成後の信号は、フェージングシミュレータ装置の合成部812にて主信号と合成される。フェージングシミュレータ装置の各出力は、パス毎のフェージングの影響を表し、それらは合成部808−R,Iにて合成され、最終的に、フェージングの影響を受けた受信信号が出力される。
【0052】
以下、本発明により教示される手段を例示的に列挙する。
【0053】
(付記1)
ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段と、
前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段と、
複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、
前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段と
を備えることを特徴とする、ドップラーシフトの影響を模擬するフェージングシミュレータ。
【0054】
(付記2)
前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの遷移域に属する周波数である
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0055】
(付記3)
前記振幅データは、前記低域通過フィルタの特性に応じて信号電力が変化するように設定される
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0056】
(付記4)
前記振幅データは、最大ドップラー周波数に近づくほど最大振幅値が大きくなるように設定される
ことを特徴とする付記3記載のフェージングシミュレータ。
【0057】
(付記5)
前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの特性に従って周波数間隔が変化するように設定される
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0058】
(付記6)
前記複数の周波数は、最大ドップラー周波数に近づくほど周波数間隔が密になるように設定される
ことを特徴とする付記5記載のフェージングシミュレータ。
【0059】
(付記7)
前記低域通過フィルタ、前記メモリ手段及び前記合成手段の少なくとも1つに接続されたアップサンプラ手段が備えられ、前記アップサンプラ手段は、
所定値を有するデータ点が所定の頻度で入力信号に挿入された信号を出力する
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0060】
(付記8)
複数のフェージングシミュレータからの複数の信号の振幅及び位相を調整して合成し、マルチパス伝搬環境におけるドップラーシフトの影響を模擬するマルチパスフェージングシミュレータであって、
前記複数のフェージングシミュレータの内の1以上が、付記1記載のフェージングシミュレータである
ことを特徴とするマルチパスフェージングシミュレータ。
【0061】
(付記9)
1つの雑音生成手段が、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される
ことを特徴とする付記8記載のマルチパスフェージングシミュレータ。
【0062】
(付記10)
1つの雑音生成手段及び1つの低域通過フィルタが、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される
ことを特徴とする付記8記載のマルチパスフェージングシミュレータ。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ドップラーシフトによるフェージングの影響を示す図である。
【図2】本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。
【図3】本発明の一実施例によるフェージングシミュレータ装置を示す図である。
【図4】本実施例における動作を説明するための説明図である。
【図5】本実施例における別の動作を説明するための説明図である。
【図6】本発明の一実施例によるフェージング信号生成器を示す図である。
【図7】補間器の動作を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。
【図9】本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。
【図10】低域通過フィルタを構成するFIRフィルタを示す図である。
【図11】アップサンプリングされる前の信号系列を示す図である。
【図12】アップサンプリングされた後の信号系列を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
200 マルチパスフェージングシミュレータ; 202−1〜N 遅延器; 204−1〜N 減衰器; 206−1〜N フェージングシミュレータ装置; 208−R,I 合成部; 210 フェージング信号生成器; 212−R,I 合成部;
302 第1信号生成部; 304 第2信号生成部; 306−R,I 合成部; 3322−R,I ガウス雑音生成器; 324−R,I 低域通過フィルタ; 340−1〜M ルックアップテーブル; A1I,1R〜AMI,MR 振幅調整部;
610 フェージング信号生成器; 602 第1信号生成部; 604 第2信号生成部; 606−R,I 合成部; 607−R,I 合成部; 624−R,I 低域通過フィルタ; 640−1〜M ルックアップテーブル;
800 マルチパスフェージングシミュレータ; 802−1〜N 遅延器; 804−1〜N 減衰器; 806−1〜N フェージングシミュレータ装置; 808−R,I 合成部; 810 フェージング信号生成器; 812−R,I 合成部; 814 ガウス信号生成器; 816 直並列変換部; 824−R,I 低域通過フィルタ; 826−R,I 補間器; 825 低域通過フィルタ; 827 補間器; 828−R,I 合成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に無線通信の技術分野に関し、特に号受信信号におけるフェージングの影響を模擬するフェージングシミュレータ及びマルチパスフェージングシミュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信システムで使用される周波数帯域は、今後更に広帯域化しつつある。これに伴い、ドップラー効果に起因するフェージングにより、その周波数帯域内で、ある周波数特性が観測されるようになり、それは受信信号品質にも大きな影響を及ぼす。従って、移動通信システムの設計では、マルチパスフェージングだけでなく、ドップラーシフトによるフェージングに対処することも重要である。
【0003】
図1は、受信信号の電力スペクトルとドップラーシフトの関係を示す。ある進行方向に移動体が進み、等方的に様々な方向から電波が到来しているものとする。図1左側に示されるように、搬送波の周波数fCを中心として、±fDの範疇にスペクトルが分布している。fDは最大ドップラー周波数であり、移動体の進行方向と電波の到来方向のなす角度αが0である場合に観測される周波数シフト又はドップラーシフトを表す。k(α)は、角度αに依存するパラメータであり、例えば、垂直ホイップアンテナを使用し、一様な到来各を想定する場合には、k(α)=3/2πとなる。任意の角度αに対する周波数シフトは、fD×cos(α)で表される。従って、角度αが、所与の値域(例えば、0≦α≦2π)の中で、一定の確率分布に従って変化したとすると、±fD程度の大きなドップラーシフトを有する到来波が多く発生し、小さなドップラーシフトを有する到来波は少なく発生する。このため、±fD程度のドップラーシフトを有する受信信号の電力密度が大きくなっている。図中、余弦波のグラフに隣接して描かれている複数の線は、角度αを一定間隔で変化させたときに、ドップラー周波数の周波数間隔に広狭が生じる様子を示す。
【0004】
このようなフェージングに対する評価は、実際に空間に送信された電波を受信して行なうことに加えて、又はその代りに、フェージングシミュレータを用いて行なわれることが多い。フェージングシミュレータは、フェージングの影響を表すフェージング信号を生成し、そのフェージング信号をフェージングシミュレータに入力された信号に乗算して出力する。この場合において、図1左側に示されるように、無線周波数帯域におけるドップラーシフトの影響を模擬するもの(帯域表現)と、図1右側に示されるように、ベースバンドにて等価的に模擬するもの(等価低域表現)とがある。後者は、無線周波数帯域に対する処理回路を構築せずに、フェージングの影響を模擬できる。このことは、ベースバンド帯域と無線周波数帯域に分けてシステムの性能評価を行なう等の観点から好都合である。また、シミュレーションに高周波回路を要しないので、アナログ高周波素子を含む回路の動作特性の不完全性や特性劣化に起因して、フェージングの評価精度が劣化してしまう懸念も排除される。更に、後者のフェージングシミュレータは、受信信号に与えられる複数の特性劣化原因をその原因毎にモデル化して調査する等の観点からも好都合である。後述の実施例でも、等価低域表現法が使用されるが、本発明は何れの表現法にも適用できる。
【0005】
図1(特に左側)に示されるようなフェージングの影響を模擬する第1の方法は、多数の正弦波(素波)を重ね合わせることである。この方法では、フェージング信号T(t)は、
【0006】
【数1】
で表現され、ここで、ωD=2πfDは最大ドップラー角周波数を表し、fDは最大ドップラー周波数を表し、φnはn番目の素波の位相を表し、αnはn番目の素波の到来角(移動体の進行方向及び電波の到来方向のなす角)を表し、cn又はE0cnはn番目の素波の振幅を表し、E0は所与の定数を表し、Nは素波の総数を表す。素波の振幅データは、テーブルに格納される。素波の振幅データは、1周期の期間にわたる振幅値、即ち1周期中の全てのサンプリング時点に対する振幅値として、ルックアップテーブル(LUT)に格納される。それらの振幅値は、所定のサンプリング周波数に応じて抽出され、(1)式に基づいて合成され、フェージング信号T(t)として出力される。この種の技術は、例えば特許文献1及び非特許文献1に記載されている。
【0007】
フェージングの影響を模擬する第2の方法は、白色ガウス雑音(WGN:White Gaussian Noise)信号を、特殊な伝達関数を有する低域通過フィルタ(LPF)で整形する。その伝達関数は、図1に示されるような、中心周波数近辺では平坦であるが、そこから偏移するにつれて急峻に大きくなり、最大ドップラー周波数を超えると0になる特性を有する。このようなフェージングシミュレータは、JTCフェーダーと呼ばれる。JTCフェーダーについては、例えば特許文献2及び非特許文献2に記載されている。
【特許文献1】特開平6−140950号公報
【特許文献2】特開2003−298536号公報
【非特許文献1】W.C.Jakes,Jr.,“Microwave Mobile Communications”,John Wiley & Sons,pp.67−76(1974)
【非特許文献2】“The JTC Fader”,3GPP2 FYI,Nov.8,2002,Sandip Sarker,Qualcomm
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1の方法によれば、テーブルに格納される振幅データは、素波の1周期の間に、所定のサンプリング周波数fSで全ての振幅値が抽出されるように用意される。このような振幅データは素波毎に用意する必要がある。例えば、サンプリング周波数fSが3.8MHzであり、最大ドップラー周波数fDが100Hzであるとする。ドップラー周波数fDcosαは、−100乃至100Hzの範疇で変化する。この場合に、最大ドップラー周波数100Hzの素波については、3.8MHz/100Hz=38000個の振幅値がテーブルに格納される必要がある。10Hzの素波については、3.8MHz/10Hz=380000個の振幅値がテーブルに格納される必要がある。更に、1Hz、0.1Hz、0.01Hzの素波については、3.8M個、38M個、380M個の振幅値がテーブルに格納される必要がある。このように、素波の振幅データの量は、周波数が低くなるほど多くなる。フェージング精度を向上させたり、模擬されるフェージングの周期性を長期化するには、多くの素波を用意して模擬することが望ましい。しかし、そのようにすると、極めて大量のデータを事前に用意しなければならなくなり、これは、簡易にフェージングを模擬する等の観点から不都合である。
【0009】
第2の手法によれば、データ量が著しく増えてしまうような問題はないが、特殊な低域通過フィルタを構築する点で不都合が生じるおそれがある。例えば、そのような伝達特性を有するフィルタが、有限インパルス応答(FIR)フィルタで構築される場合には、非常に多くのタップ数が必要とされ、回路規模が大きくなってしまう。無限インパルス応答(IIR)フィルタでフィルタが構築される場合には、FIRフィルタほど大きな回路規模は要しないかもしれないが、タップ係数に対する最適解が発見されにくくなるという別の問題が生じてしまう。更に、±fDを超える周波数のスペクトルは完全に阻止されることが望ましいが、実際に構築される低域通過フィルタでは、その伝達特性の不完全性により、±fDを超える周波数を、僅かではあるが許容してしまう、或いは、±fD付近の急峻さが劣化してしまう。そのため、フェージングの様子を正確に模擬できなくなり、フェージングの評価精度を劣化させてしまうことが懸念される。
【0010】
本発明は、上記の問題点の少なくとも1つに対処するようになされたものであり、その課題は、受信信号におけるドップラーシフトの影響を高精度に模擬するフェージングシミュレータ及びマルチパスフェージングシミュレータを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、
ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段と、
前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段と、
複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、
前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段と
を備えることを特徴とする、ドップラーシフトの影響を模擬するフェージングシミュレータが使用される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、受信信号におけるドップラーシフトの影響を高精度に模擬することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の一態様では、ガウス雑音信号を帯域制限する低域通過フィルタ手段と、複数の所定のドップラー周波数の各々について、1/4周期以上の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、前記低域通過フィルタ手段からの第1信号及び前記メモリ手段からの第2信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段とが備えられ、ドップラーシフトの影響が模擬される。
【0014】
フェージング信号が、第1及び第2信号を合成することで生成されるので、フェージング信号が第1又は第2信号の一方のみによって生成される場合よりも、フェージングの様子を正確に模擬することができる。
【0015】
本発明の一態様によれば、前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの遷移域に属する周波数である。遷移域より低周波数側の通過域の素波に関する振幅データを用意する必要がないので、記憶すべきデータ量が少なくて済む。また、第1信号は、平坦な通過域付近の信号を表現すればよいので、遷移域の特性をドップラーフェージングに合わせなくてもよい。即ち、低域通過フィルタの特性は、通常の帯域制限フィルタのように台形状に形成すればよいので、低域通過フィルタは、比較的小さな回路規模のディジタルフィルタで簡易に作成できる。
【0016】
第2信号は、最大ドップラ周波数程度の偏移を有する信号を表現する。本発明の一態様によれば、前記振幅データは、前記低域通過フィルタの特性に応じて信号電力が変化するように設定される。本発明の一態様によれば、前記振幅データは、最大ドップラー周波数に近づくほど最大振幅値が大きくなるように設定される。本発明の一態様によれば、前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの特性に従って周波数間隔が変化するように設定される。本発明の一態様によれば、前記複数の周波数は、最大ドップラー周波数に近づくほど周波数間隔が密になるように設定される。振幅の大きさや周波数間隔等を調整することは、記憶データ量及び回路規模の顕著な増加を必要とせずに、簡易に行なうことができる。
【0017】
本発明の一態様によれば、前記低域通過フィルタ、前記メモリ手段及び前記合成手段の少なくとも1つに接続されたアップサンプラ手段が備えられる。前記アップサンプラ手段は、所定値を有するデータ点が所定の頻度で入力信号に挿入された信号を出力する。これにより、第1信号及び第2信号を、主信号のサンプリング周波数fSよりも低い周波数で生成することができる。このため、フェージング周期の長期化、記憶データ量の削減等を図ることができる。
【0018】
本発明の一態様によれば、複数のフェージングシミュレータからの複数の信号の振幅及び位相を調整して合成し、マルチパス伝搬環境におけるドップラーシフトの影響を模擬するマルチパスフェージングシミュレータが使用される。前記複数のフェージングシミュレータの内の1以上は、上記のフェージングシミュレータである。これにより、マルチパスフェージング及びドップラーフェージングの双方の影響を受けた信号を高精度に模擬することができる。
【0019】
本発明の一態様によれば、前記のマルチパスフェージングシミュレータにおいて、1つの雑音生成手段が、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される。本発明の一態様によれば、1つの雑音生成手段及び1つの低域通過フィルタが、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される。
【実施例1】
【0020】
図2は、本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。マルチパスフェージングシミュレータ装置200は、N個の遅延器202−1〜Nと、N個の遅延器にそれぞれ接続された減衰器204−1〜Nと、N個の減衰器にそれぞれ接続されたフェージングシミュレータ装置206−1〜Nと、複素信号の実数成分及び虚数成分をそれぞれ合成する合成部208−R,Iとを有する。フェージングシミュレータ装置206−1〜Nの各々は、フェージング信号生成器210及び合成部212−R,Iを有する。
【0021】
遅延器202−1〜Nの各々は、入力信号を所定の時間τ1,τ2,...,τNだけそれぞれ遅延させる。入力信号は、主信号とも呼ばれ、複素数形式で表現され、実数成分と虚数成分を有する。入力信号の実数成分及び虚数成分は、別々に遅延させられる。以後も同様に、実数成分及び虚数成分は別々に処理される。
【0022】
減衰器204−1〜Nの各々は、それらに入力された信号の振幅を、所定の調整量L1,L2,...,LNに合わせて調整する。上記の遅延量τ1,τ2,...,τN及び所定の調整量L1,L2,...,LNは、受信信号のマルチパス伝搬特性を再現するように設定される。想定されるパス数は、Nである。
【0023】
フェージングシミュレータ装置206−1〜Nは、入出力信号は互いに相違するが、それらは同様な構成及び機能を有するので、フェージングシミュレータ装置206−1がそれらを代表して説明される。フェージングシミュレータ装置206−1は、遅延器202−1及び減衰器204−1で適切に振幅及び位相が調整された信号を受ける。また、フェージングシミュレータ装置206−1内のフェージング信号生成器210は、フェージングの影響を表すフェージング信号を生成する。振幅及び位相の調整された信号と、フェージング信号は、合成部212により、実数成分及び虚数成分毎に合成される。
【0024】
合成部208−R,Iは、各フェージングシミュレータ装置206−1〜Nから出力された信号を、実数成分及び虚数成分毎に合成し、合成後の信号を出力する。この出力信号は、ドップラーシフトによるフェージングの影響を受けた受信信号を表す。以後、この出力信号を用いてシステム設計等が行なわれる。
【0025】
図3は、フェージングシミュレータ装置206−1の詳細図を示す。上述したように、フェージングシミュレータ装置206−1には、位相及び振幅の調整された主信号が入力され、それらとフェージング信号を合成することで、主信号にフェージングの影響が反映される。
【0026】
フェージング信号生成器210は、概して、第1信号生成部302と、第2信号生成部304と、合成部306−R,Iとを有する。第1信号生成部302は、ガウス雑音生成部322−R,Iと、低域通過フィルタ(LPF)324−R,Iとを有する。第2信号生成部304は、M個の素波の各々に関する振幅データを有するM個のルックアップテーブル(LUT)340−1〜Mと、2M個の振幅調整部A1R,I〜AMR,Iとを有する。
【0027】
第1信号生成部302は、複素信号である第1信号を生成し、出力する。第1信号の実数成分は、ガウス雑音生成器322−Rからの白色ガウス雑音(WGN)信号を、低域通過フィルタ324−Rで波形整形又は帯域制限することで作成される。同様に、第1信号の虚数成分は、ガウス雑音生成器322−Iからの出力を、低域通過フィルタ324−Iで波形整形することで作成される。ガウス雑音生成器322−R,Iは同様な構成及び機能を有するので、両者で共通化することも可能である。但し、フェージング周期を長期化し、フェージングの評価精度を向上させる観点からは、実数成分及び虚数成分毎に別々にそれらを用意することが望ましい。
【0028】
低域通過フィルタ324−R,Iは、図4(A)に示されるような、通常の台形状の伝達特性を有する。図4(A)に示されるような伝達特性を有する低域通過フィルタは、比較的少数のタップ数を有する小型のFIRフィルタやIIRフィルタで簡易に構成することができる。従って、本実施例で使用される低域通過フィルタ322−R,Iは、図10に示されるような特殊な伝達特性を有する低域通過フィルタと大きく異なる。
【0029】
第2信号生成部304は、M個の素波の実数成分及び虚数成分を出力する。本実施例では、サンプリング周波数fS=3.8MHzに従って信号が出力される。各テーブル304−1〜Mには、それぞれの周波数に対応する正弦波(素波)の振幅値が格納されている。これらの振幅値は、素波の1周期の間に、1周期分の振幅値がサンプリング周波数fSに従って順に出力されるように用意されている。例えば、周波数fiの素波に対しては、ki=fS/fi個の振幅値が、テーブル304−iに格納される。但し、i=1,...,Mである。個々の素波の周波数fiは、次式で決定される:
fi=fD×cos(αi)
ここで、fDは最大ドップラー周波数であり、αiは移動体の進行方向と電波の到来する方向のなす角度である。便宜上、α1,...,αMの順に角度の値が小さくなってゆくものとする(ドップラー周波数はf1,...,fMの順に大きくなる。)。格納される振幅値の個数ki=fS/fiは、素波の周波数fiに反比例するので、周波数fiが小さいほど多くの振幅値がテーブル304−iに格納される必要がある。本実施例では、上位から高々M個のドップラー周波数fM,fM−1,...,f1についての振幅値が用意されるに過ぎない。従って、非常に小さなドップラー周波数に対する振幅値をテーブルに用意しなくて済む。後述のように、M個の素波の周波数は、低域通過フィルタ324−R,Iの遷移域に属し、通過域(遷移域より低い周波数帯域)に属する素波のテーブルは不要である。このため、素波毎に用意されるテーブルの規模又は記憶容量は、従来の第1の方法で必要としていたものより少なくて済む。最低周波数f1をどこに設定するかについては、用途に応じて適宜設定可能である。但し、過剰に低周波側に設定すると、テーブルに格納するデータ量が過剰に増えてしまうことに留意を要する。
【0030】
本実施例では、テーブルに記憶するデータ量を減らす観点から、正弦波と余弦波が互いにπ/2ラジアンだけ位相がずれている性質を利用して、実数成分と虚数成分に共通のテーブルが参照されている。更に、正弦波の対称性を考慮すれば、1/4周期以上の正弦波のデータがテーブルに記憶されていればよい。
【0031】
振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iは、テーブルに格納された振幅値を適切に調整して出力する。なお、実数成分及び虚数成分に対する調整内容が同じである場合には、各テーブル340−1〜Mに振幅調整済みの値が記憶されてもよい。そのようにすると、振幅調整部を省略できる。
【0032】
図4及び図3を参照しながら、本実施例における動作を説明する。一般に、フェージングシミュレータは、主信号のサンプリング周波数fS以上で動作する必要がある。本実施例では、主信号のサンプリング周波数fS以上で動作するものとする。第1信号生成部302内のガウス雑音生成部322−R,Iは、サンプリング周波数fSに合わせて雑音信号をそれぞれ出力する。雑音信号は、±fDを含む周波数範囲の全域にわたって分布する。この雑音信号を、低域通過フィルタ324−R,Iで波形整形することで、第1信号が出力され、合成部306−R,Iに入力される。第1信号は、図4(A)に示されるような電力スペクトルを有する。
【0033】
第2信号生成部304は、最大ドップラー周波数fD近辺のM個の素波の各々についてのテーブル340−1〜Mから、サンプリング周波数fSに従って、振幅値を抽出する。抽出された振幅値は、振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iにて適切な値に調整された後に出力され、合成部306−R,Iに入力される。振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iにおける調整は、低域通過フィルタ324−R,Iの遷移域のフィルタ特性(図4(A))の形状を考慮して調整される。簡略化された図示の例では、遷移域にて直線的に徐々に減少するフィルタ特性(図4(A))に合わせて、M個の素波の電力が徐々に大きくなるように振幅が調整されている。
【0034】
第1及び第2信号生成部302,304からの第1及び第2信号は、合成部306−R,Iで合成される。図4(C)は、合成後の信号の電力スペクトルを示す。これにより、図1に示されるような、中心周波数近辺では平坦であるが、そこから偏移するにつれて急峻に増加し、最大ドップラー周波数を超えると0になる電力スペクトルを有する信号が生成される。このような信号は、ドップラーシフトの影響を正確に模擬するものであり、この信号が、合成部212により主信号に影響を及ぼし、ドップラーシフトの影響を受けた信号が出力される。
【0035】
なお、上記の動作では、第1信号が作成され、第2信号が作成され、第1及び第2信号が合成され、それが主信号に導入されるように説明された。しかしながら、このような動作の順序は必須ではなく、第1及び第2信号を生成する順序は逆であってもよいし、信号生成手順の全部又は一部が同時に行なわれてもよい。また、第1信号、第2信号及び主信号の全部又は一部が同時に合成されてもよい。
【0036】
図5は、本実施例における別の動作例を説明する。本実施例では、振幅調整部A1R,I,...,AMR,Iは必須ではないので、それらは省略されているものとする。図4で説明したのと同様に、第1信号生成部302は第1信号を生成する。第2信号生成部304は、最大ドップラー周波数fD近辺の素波の各々について、テーブル340−1〜Mから振幅値を抽出する。この場合において、低域通過フィルタ324−R,Iの遷移域の特性形状(図5(A))に合わせて、合成部306にて合成される素波の個数が調整される。即ち、遷移域に属するM個の素波f1,...,fMの内、Mより小さいP個の素波の周波数が選択される。或いは、当初からP個のテーブルしか準備されていないようにしてもよい。簡略化された図示の例では、遷移域にて直線的に徐々に減少するフィルタ特性に合わせて、素波の個数密度が疎から密へ変わるように、素波が選択されている(図5(B))。このように、素波の個数を調整しても、第1信号と第2信号を合成した電力密度スペクトラムは、図1右側のように近似することができる。
【実施例2】
【0037】
図6は、本発明の一実施例によるフェージング信号生成器を示す図である。このフェージング信号生成器610は、図3のフェージング信号生成器210の代わりに使用されてもよい。フェージング信号生成器610は、概して、第1信号生成部602と、第2信号生成部604と、加算部606−R,Iとを有する。第1信号生成部602は、ガウス雑音生成部622−R,Iと、低域通過フィルタ(LPF_L0)624−R,Iとを有する。第2信号生成部604は、M個の素波の各々に関する振幅データを有するM個のテーブル640−1〜Mと、2M個の振幅調整部A1R,I〜AMR,Iとを有する。これらの要素については、実施例1にて説明済みであるので、更には説明されない。
【0038】
本実施例における第1信号生成部602には、実数成分及び虚数成分の各々について、L個の補間器が設けられ、その補間器の各々は、アップサンプラURLi及び補間処理用の低域通過フィルタLPF_Liより成る。但し、i=1,...,Lである。同様に、第2信号生成部604にも、実数成分及び虚数成分の各々について、H個の補間器が設けられ、その補間器の各々は、アップサンプラURLj及び補間処理用の低域通過フィルタLPF_Ljより成る。但し、j=1,...,Hである。更に、加算器606−R,Iの後段にも、実数成分及び虚数成分の各々について、T個の補間器が設けられ、その補間器の各々は、アップサンプラURLk及び補間処理用の低域通過フィルタLPF_Lkより成る。但し、k=1,...,Tである。これらの補間器は、何れも同様な構成及び機能を有するので、第1信号生成手段602内の補間器のうち、アップサンプラURL1及び低域通過フィルタLPF_L1を有する補間器が、それらを代表して説明される。
【0039】
補間器は、概して、そこに入力された信号のサンプリングデータ数を増やし、適切に帯域制限しながら、より高い周波数RL1×fSLでサンプリングされた信号に等価な信号を出力する。低域通過フィルタ624−I(LPF_0)に接続されるアップサンプラURL1は、入力された信号を表す一連のサンプリングデータ1つにつき、(RL1−1)個の“0”を付加することで、サンプリングデータ数を増やす。入力された信号のサンプリング周波数をfSLとすると、アップサンプリング後の周波数は、RL1×fSLである。低域通過フィルタLPF_L1は、fSL/2より大きく且つ(RL1−1/2)fSLより小さい周波数成分を除去するように機能する。
【0040】
図7は、補間器の動作を説明するための説明図である(負の領域は省略されている。)。仮に、最大ドップラー周波数fDが100Hzであり、サンプリング周波数fSLが400Hzであり、分周比RL1が2であるとする。ガウス雑音生成器622−Iから生成され、LPR_LOで濾波された信号は、高々100Hzまでの周波数成分を有する。この信号を、400Hzのサンプリング周波数fSLでサンプリングして再現すると、サンプリング周波数fSL毎に同様な電力スペクトルが生じる。アップサンプラURL1を用いて、2つのサンプリングデータの間に1つの“0”を付加することで、サンプリングデータ数は2倍に引き上げられる。そして、補間処理用の低域通過フィルタLPF_L1により、サンプリング周波数fSL=400Hzの奇数倍で生じる側波帯又はイメージが除去される。低域通過フィルタが、fSL/2=200より大きく且つ(RL1−1/2)fSL=600Hzより小さい周波数成分を除去すると、図7下側に示されるような電力スペクトルが得られる。この電力スペクトルは、ドップラーシフトに関する信号を、RL1×fSL=2×400=800Hzの周波数でサンプリングしたときに得られるものと等価である。このように動作する補間器の段数を更に増やすことで、より高い周波数でサンプリングしたときに得られる信号と等価な信号を生成することができる。
【0041】
図6の第1信号生成部602では、低域通過フィルタ624−R,Iの出力は、上述したような補間器L個によって、サンプリング周波数が、fSLからfSTに引き上げられ、最終段の補間器の出力は、合成部606−I,Rにそれぞれ入力される。個々の補間器での分周比をRL1,RL2,...,RLLとすると、
fST=RL1×RL2×・・・×RLL×fSL
である。第2信号生成部604では、周波数fSHで各テーブル640−1〜Mから振幅値がサンプリングされる。合成部607−R,Iの出力も、上述したような補間器H個によって、サンプリング周波数が、fSHからfSTに引き上げられ、最終段の補間器の出力は、合成部606−I,Rにそれぞれ入力される。個々の補間器での分周比をRH1,RH2,...,RHHとすると、
fST=RH1×RH2×・・・×RHH×fHL
である。従って、合成部606−R,Iでは、周波数fSTでサンプリングされた信号同士が合成されることになる。更に、合成部606−R,Iの出力にも、上述したような補間器T個によって、サンプリング周波数が、fSTからfSに引き上げられ、最終段の補間器の出力は、フェージング信号として出力される。個々の補間器での分周比をRT1,RT2,...,RTHとすると、
fS=RT1×RT2×・・・×RTT×fST
である。当初のサンプリング周波数fSL,fSH、分周比の値、補間器の段数は任意に設定できる。あるサンプリング周波数の整数倍近辺の帯域を阻止するような低域通過フィルタを構成することは、困難ではない。従って、第1信号に関しては、補間器の段数を適切に設定することで、ガウス雑音生成器622−R,Iを低い周波数で動作せることができる。これは、フェージング周期の長期化に寄与できることを意味する。第2信号に関しては、サンプリング周波数fSHが低くなることで、テーブル640−1〜Mに格納すべきデータ量を節約することができる。なぜなら、ある周波数fiの正弦波を構築するのに必要なデータ量は、(サンプリング周波数fSH)/(その周波数fi)個になるからである。分周比の値は、任意の値にしてもよいが、構成を簡易化する観点からは、分周比の全てが2に設定されてもよい。
【実施例3】
【0042】
図8は、本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータを示す。マルチパスフェージングシミュレータ800は、N個の遅延器802−1〜Nと、N個の遅延器にそれぞれ接続された減衰器804−1〜Nと、N個の減衰器にそれぞれ接続されたフェージングシミュレータ装置806−1〜Nと、合成部808−R,Iとを有する。フェージングシミュレータ806−1〜Nの各々は、フェージング信号生成器810及び合成部812−R,Iを有する。本実施例では、N個のフェージングシミュレータ装置に使用される1つのガウス雑音生成器814と、直並列変換器(S/P)816とが設けられている。第1信号生成部には、低域通過フィルタ824−R,Iと、補間器826−R,Iとが設けられている。第1及び第2信号生成部からの第1及び第2信号は、合成部828−R,Iで合成された後に、合成部818−R,Iにて主信号に反映される。
【0043】
遅延器802−1〜Nの各々は、入力信号を所定の時間τ1,τ2,...,τNだけそれぞれ遅延させる。減衰器804−1〜Nの各々は、それら入力された信号の振幅を、所定の調整量L1,L2,...,LNに合わせて調整する。上記の遅延量τ1,τ2,...,τN及び所定の調整量L1,L2,...,LNは、受信信号のマルチパス伝搬特性を再現するように設定される。想定されるパス数は、Nである。
【0044】
フェージングシミュレータ装置806−1〜Nは、入出力信号は互いに相違するが、それらは同様な構成及び機能を有するので、フェージングシミュレータ装置806−1がそれらを代表して説明される。フェージングシミュレータ装置806−1は、遅延器802−1及び減衰器804−1で適切に振幅及び位相が調整された信号を受ける。また、フェージングシミュレータ装置806−1内のフェージング信号生成器810は、フェージングの影響を表すフェージング信号を生成する。振幅及び位相の調整された信号と、フェージング信号は、合成部812−R,Iにより、実数成分及び虚数成分毎に合成される。
【0045】
合成部808−R,Iは、各フェージングシミュレータ装置806−1〜Nから出力された信号を、実数成分及び虚数成分毎に合成し、合成後の信号を出力する。
【0046】
ガウス雑音生成器814は、所定の周波数fSLの2N倍のサンプリング周波数を用いて、白色ガウス雑音信号を生成する。
【0047】
直並列変換器816は、ガウス雑音生成器814及びN個のフェージングシミュレータ装置806−1〜Nの間に設けられる。直並列変換器816は、そこに入力された直列的な信号を、2N個の並列的な信号に変換し、その並列的な信号を2つずつ、フェージングシミュレータ装置806−1〜Nにそれぞれ与える。
【0048】
本実施例でも、図3のマルチパスフェージングシミュレータと同様に、第1信号及び第2信号が生成され、それらが主信号に導入されることで、フェージングの影響を受けた信号を模擬することができる。第1信号を生成する場合に使用されるガウス雑音生成器814は、N個のフェージング信号生成器810に共通に使用されている。但し、異なるフェージングシミュレータ装置(更には、第1信号生成部の実数及び虚数成分側)に与えるガウス雑音信号の独立性又は非相関性を確保するために、ガウス雑音信号を高いサンプリング周波数で生成し、それらを各フェージングシミュレータ装置に分配している。ガウス雑音信号生成器は、2N×fSLのサンプリング周波数で信号を生成するので、第1信号生成部の低域通過フィルタ824−R,Iに与えられる信号のサンプリング周波数は、それぞれfSLになる。低域通過フィルタ824−R,Iは、帯域制限を行ない、出力を補間器826−R,Iに与える。補間器826−R,Iは、図6に関して説明された補間器の1以上として機能する。従って、低域通過フィルタ824−R,Iの出力信号のサンプリング周波数fSLが、補間器826−R,Iにより適切に引き上げられる。なお、サンプリング周波数fSLが、主信号のサンプリング周波数fSに等しい場合は、補間器826−R,Iは省略される。補間器826−R,Iの出力は、合成部828−R,Iにより、第2信号生成部からの出力信号と合成され、更に合成部812によって主信号と合成される。
【0049】
図9は、本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータを示す。図示の例では、第1信号生成部に相当する要素が、N個のフェージング信号生成器に共通に使用される。このマルチパスフェージングシミュレータ900は、N個の遅延器802−1〜Nと、N個の遅延器にそれぞれ接続された減衰器804−1〜Nと、N個の減衰器にそれぞれ接続されたフェージングシミュレータ装置806−1〜Nと、複素信号の実数成分及び虚数成分をそれぞれ合成する合成部808−R,Iとを有する。フェージングシミュレータ806−1〜Nの各々は、フェージング信号生成器810及び合成部812を有する。本実施例では、ガウス雑音生成器814と、低域通過フィルタ(LPF)825と、補間器827と、直並列変換器(S/P)816とが、N個のフェージングシミュレータ装置に共通に使用される。
【0050】
ガウス雑音生成器814は、2N×fSLのサンプリング周波数で信号を出力する。低域通過フィルタ825は、入力された信号を帯域制限し、その出力を補間器827に与える。低域通過フィルタ825は、例えば図10に示されるような、FIRフィルタで構成することができる。図10にて、DCHはクロックCH個の遅延を実現する遅延素子を表し、k0,...,kQ−1は、タップ係数を表す。補間器827には、2N×fSLの周波数でサンプリングされた信号が入力され、R×2N×fSでサンプリングされた信号に等価な信号がそこから出力される。Rは補間器で行なわれるアップサンプリングの分周比を示す(R=fS/fSL)。
【0051】
一例として、図11に示されるようなAi,Bi(i=1,2,...)2系列又は2チャネルの信号が補間器827に入力され、R=3倍にアップサンプリングされるものとする。チャネル数及び分周比は任意に設定可能である。補間器827では、図12に示されるように、(チャネル数)×(R−1)=2×(3−1)=4個の“0”点が、信号Ai,Biの後にそれぞれ配置される。信号Ai及び信号Biの間の時間間隔も狭められていることに留意を要する。この信号は、適切に帯域制限された後に、直並列変換器816を経て各フェージング信号生成器810に与えられる。以上により、R×2N×fSL=6N×fSLの周波数でサンプリングされた信号と等価な信号が形成される。フェージング信号生成器810では、周波数fSでサンプリングされた信号に等価な信号が、合成部828−R,Iにて第2信号と合成され、合成後の信号は、フェージングシミュレータ装置の合成部812にて主信号と合成される。フェージングシミュレータ装置の各出力は、パス毎のフェージングの影響を表し、それらは合成部808−R,Iにて合成され、最終的に、フェージングの影響を受けた受信信号が出力される。
【0052】
以下、本発明により教示される手段を例示的に列挙する。
【0053】
(付記1)
ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段と、
前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段と、
複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、
前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段と
を備えることを特徴とする、ドップラーシフトの影響を模擬するフェージングシミュレータ。
【0054】
(付記2)
前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの遷移域に属する周波数である
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0055】
(付記3)
前記振幅データは、前記低域通過フィルタの特性に応じて信号電力が変化するように設定される
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0056】
(付記4)
前記振幅データは、最大ドップラー周波数に近づくほど最大振幅値が大きくなるように設定される
ことを特徴とする付記3記載のフェージングシミュレータ。
【0057】
(付記5)
前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの特性に従って周波数間隔が変化するように設定される
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0058】
(付記6)
前記複数の周波数は、最大ドップラー周波数に近づくほど周波数間隔が密になるように設定される
ことを特徴とする付記5記載のフェージングシミュレータ。
【0059】
(付記7)
前記低域通過フィルタ、前記メモリ手段及び前記合成手段の少なくとも1つに接続されたアップサンプラ手段が備えられ、前記アップサンプラ手段は、
所定値を有するデータ点が所定の頻度で入力信号に挿入された信号を出力する
ことを特徴とする付記1記載のフェージングシミュレータ。
【0060】
(付記8)
複数のフェージングシミュレータからの複数の信号の振幅及び位相を調整して合成し、マルチパス伝搬環境におけるドップラーシフトの影響を模擬するマルチパスフェージングシミュレータであって、
前記複数のフェージングシミュレータの内の1以上が、付記1記載のフェージングシミュレータである
ことを特徴とするマルチパスフェージングシミュレータ。
【0061】
(付記9)
1つの雑音生成手段が、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される
ことを特徴とする付記8記載のマルチパスフェージングシミュレータ。
【0062】
(付記10)
1つの雑音生成手段及び1つの低域通過フィルタが、2以上のフェージングシミュレータに共通に使用される
ことを特徴とする付記8記載のマルチパスフェージングシミュレータ。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】ドップラーシフトによるフェージングの影響を示す図である。
【図2】本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。
【図3】本発明の一実施例によるフェージングシミュレータ装置を示す図である。
【図4】本実施例における動作を説明するための説明図である。
【図5】本実施例における別の動作を説明するための説明図である。
【図6】本発明の一実施例によるフェージング信号生成器を示す図である。
【図7】補間器の動作を説明するための説明図である。
【図8】本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。
【図9】本発明の一実施例によるマルチパスフェージングシミュレータの全体図を示す。
【図10】低域通過フィルタを構成するFIRフィルタを示す図である。
【図11】アップサンプリングされる前の信号系列を示す図である。
【図12】アップサンプリングされた後の信号系列を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
200 マルチパスフェージングシミュレータ; 202−1〜N 遅延器; 204−1〜N 減衰器; 206−1〜N フェージングシミュレータ装置; 208−R,I 合成部; 210 フェージング信号生成器; 212−R,I 合成部;
302 第1信号生成部; 304 第2信号生成部; 306−R,I 合成部; 3322−R,I ガウス雑音生成器; 324−R,I 低域通過フィルタ; 340−1〜M ルックアップテーブル; A1I,1R〜AMI,MR 振幅調整部;
610 フェージング信号生成器; 602 第1信号生成部; 604 第2信号生成部; 606−R,I 合成部; 607−R,I 合成部; 624−R,I 低域通過フィルタ; 640−1〜M ルックアップテーブル;
800 マルチパスフェージングシミュレータ; 802−1〜N 遅延器; 804−1〜N 減衰器; 806−1〜N フェージングシミュレータ装置; 808−R,I 合成部; 810 フェージング信号生成器; 812−R,I 合成部; 814 ガウス信号生成器; 816 直並列変換部; 824−R,I 低域通過フィルタ; 826−R,I 補間器; 825 低域通過フィルタ; 827 補間器; 828−R,I 合成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段と、
前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段と、
複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、
前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段と
を備えることを特徴とする、ドップラーシフトの影響を模擬するフェージングシミュレータ。
【請求項2】
前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの遷移域に属する周波数である
ことを特徴とする請求項1記載のフェージングシミュレータ。
【請求項3】
前記振幅データは、前記低域通過フィルタの特性に応じて信号電力が変化するように設定される
ことを特徴とする請求項1記載のフェージングシミュレータ。
【請求項4】
前記低域通過フィルタ、前記メモリ手段及び前記合成手段の少なくとも1つに接続されたアップサンプラ手段が備えられ、前記アップサンプラ手段は、
所定値を有するデータ点が所定の頻度で入力信号に挿入された信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載のフェージングシミュレータ。
【請求項5】
複数のフェージングシミュレータからの複数の信号の振幅及び位相を調整して合成し、マルチパス伝搬環境におけるドップラーシフトの影響を模擬するマルチパスフェージングシミュレータであって、
前記複数のフェージングシミュレータの内の1以上が、請求項1記載のフェージングシミュレータである
ことを特徴とするマルチパスフェージングシミュレータ。
【請求項1】
ガウス雑音信号を出力する雑音生成手段と、
前記雑音生成手段に接続された低域通過フィルタ手段と、
複数の所定の周波数の各々について、所定の期間にわたる振幅データを格納するメモリ手段と、
前記低域通過フィルタ手段からの信号及び前記メモリ手段から抽出された信号を合成し、フェージング信号を出力する合成手段と
を備えることを特徴とする、ドップラーシフトの影響を模擬するフェージングシミュレータ。
【請求項2】
前記複数の周波数は、前記低域通過フィルタの遷移域に属する周波数である
ことを特徴とする請求項1記載のフェージングシミュレータ。
【請求項3】
前記振幅データは、前記低域通過フィルタの特性に応じて信号電力が変化するように設定される
ことを特徴とする請求項1記載のフェージングシミュレータ。
【請求項4】
前記低域通過フィルタ、前記メモリ手段及び前記合成手段の少なくとも1つに接続されたアップサンプラ手段が備えられ、前記アップサンプラ手段は、
所定値を有するデータ点が所定の頻度で入力信号に挿入された信号を出力する
ことを特徴とする請求項1記載のフェージングシミュレータ。
【請求項5】
複数のフェージングシミュレータからの複数の信号の振幅及び位相を調整して合成し、マルチパス伝搬環境におけるドップラーシフトの影響を模擬するマルチパスフェージングシミュレータであって、
前記複数のフェージングシミュレータの内の1以上が、請求項1記載のフェージングシミュレータである
ことを特徴とするマルチパスフェージングシミュレータ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−86992(P2006−86992A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−271909(P2004−271909)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】
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