フォトダイオードアレイ
【課題】シリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオードアレイを提供すること。
【解決手段】フォトダイオードアレイPDA1は、複数の光検出チャンネルCHがn型半導体層32を有する基板Sを備える。フォトダイオードアレイPDA1は、n型半導体層32上に形成されたp−型半導体層33と、光検出チャンネルCH毎に設けられると共に信号導線23に一端部が接続される抵抗24と、複数の光検出チャンネルCHの間に形成されるn型の分離部40とを備える。p−型半導体層33は、n型半導体層32との界面でpn接合を構成し、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる増倍領域AMを光検出チャンネルに対応して複数有する。n型半導体層32の表面には不規則な凹凸10が形成されており、当該表面は光学的に露出している。
【解決手段】フォトダイオードアレイPDA1は、複数の光検出チャンネルCHがn型半導体層32を有する基板Sを備える。フォトダイオードアレイPDA1は、n型半導体層32上に形成されたp−型半導体層33と、光検出チャンネルCH毎に設けられると共に信号導線23に一端部が接続される抵抗24と、複数の光検出チャンネルCHの間に形成されるn型の分離部40とを備える。p−型半導体層33は、n型半導体層32との界面でpn接合を構成し、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる増倍領域AMを光検出チャンネルに対応して複数有する。n型半導体層32の表面には不規則な凹凸10が形成されており、当該表面は光学的に露出している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオード及びフォトダイオードアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外の波長帯域に高い分光感度特性を有するフォトダイオードとして、化合物半導体を用いたフォトダイオードが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたフォトダイオードでは、InGaAsN、InGaAsNSb、及びInGaAsNPのいずれかからなる第1受光層と、第1受光層の吸収端より長波長の吸収端を有し、量子井戸構造からなる第2受光層と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−153311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような化合物半導体を用いたフォトダイオードは、未だ高価であり、製造工程も複雑なものとなってしまう。このため、安価で且つ製造が容易なシリコンフォトダイオードであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度を有しているものの実用化が求められている。シリコンフォトダイオードは、一般に、分光感度特性の長波長側での限界は1100nm程度ではあるものの、1000nm以上の波長帯域における分光感度特性は十分なものではなかった。
【0005】
本発明は、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフォトダイオードアレイは、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、第1導電型の半導体層上に形成され、当該半導体層との界面でpn接合を構成するとともに、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第2導電型のエピタキシャル半導体層と、2つの端部を有し、光検出チャンネルごとに設けられ、一方の端部を介してエピタキシャル半導体層と電気的に接続されると共に他方の端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、pn接合は、第1導電型の半導体層と当該半導体層上に形成されたエピタキシャル半導体層とによって構成されている。また、増倍領域はpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域はこのエピタキシャル半導体層にある。したがって、上記フォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さず、ガードリングを設ける必要がない。そのため、上記フォトダイオードアレイはその開口率を高くすることが可能となる。
【0008】
そして、本発明によれば、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されているために、フォトダイオードアレイに入射した光は不規則な凹凸が形成された表面にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。これにより、フォトダイオードアレイに入射した光は、その大部分がフォトダイオードアレイ(シリコン基板)を透過することなく、光検出チャンネルで吸収されることとなる。したがって、上記フォトダイオードアレイでは、フォトダイオードアレイに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0009】
また、本発明では、第1導電型の半導体層の上記表面に不規則な凹凸が形成されている。このため、不規則な凹凸が形成された上記表面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、第1導電型の上記半導体層は、アキュムレーション層として機能し、第1導電型の半導体層の上記表面付近で光により発生したキャリアが該表面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、上記増倍領域へ効率的に移動し、フォトダイオードアレイの光検出感度を向上することができる。
【0010】
本発明に係るフォトダイオードアレイは、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、第1導電型の半導体層上に形成され、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のエピタキシャル半導体層と、第1導電型のエピタキシャル半導体層中に形成され、当該エピタキシャル半導体層との界面でpn接合を構成する第2導電型の半導体領域と、2つの端部を有し、光検出チャンネルごとに設けられ、一方の端部を介してエピタキシャル半導体層中の第2導電型の半導体領域と電気的に接続されると共に他方の端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、pn接合は、第1導電型のエピタキシャル半導体層と当該半導体層中に形成された第2導電型の半導体領域とによって構成されている。また、増倍領域はpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域はこのエピタキシャル半導体層にある。したがって、上記フォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さず、ガードリングを設ける必要がない。そのため、上記フォトダイオードアレイはその開口率を高くすることが可能となる。
【0012】
そして、本発明によれば、上述したように、フォトダイオードアレイに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、第1導電型の上記半導体層がアキュムレーション層として機能して、本発明では、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0013】
好ましくは、第1導電型の半導体層における複数の光検出チャンネルの間に対応する表面は、不規則な凹凸が更に形成されていると共に、光学的に露出している。この場合、複数の光検出チャンネルの間に入射した光も不規則な凹凸が形成された表面にて反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光検出チャンネルで吸収される。したがって、光検出チャンネルの間において検出感度が低下することはなく、光検出感度がより一層向上する。
【0014】
本発明に係るフォトダイオードアレイにおいて、シリコン基板は、複数の光検出チャンネルが形成されている部分が該部分の周辺部分を残して薄化されていてもよい。この場合、表面入射型及び裏面入射型のフォトダイオードアレイを得ることができる。
【0015】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、第1導電型の半導体層の厚みが、不規則な凹凸の高低差よりも大きいことが好ましい。この場合、上述したように、第1導電型の半導体層によるアキュムレーション層としての作用効果を確保することができる。
【0016】
本発明に係るフォトダイオードは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有すると共に第1主面側に第2導電型の半導体領域が形成されたシリコン基板を備え、シリコン基板には、第2主面側にシリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、第2主面における少なくとも第2導電型の半導体領域に対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面における第2導電型の半導体領域に対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るフォトダイオードでは、上述したように、フォトダイオードに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、シリコン基板の第2主面側に形成される第1導電型のアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0018】
好ましくは、シリコン基板は、第2導電型の半導体領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して第2主面側より薄化されている。この場合、シリコン基板の第1主面及び第2主面側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。
【0019】
好ましくは、第1導電型のアキュムレーション層の厚みが、不規則な上記凹凸の高低差よりも大きい。この場合、上述したように、アキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図2】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図7】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図8】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図9】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図10】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図11】第1実施形態に係るフォトダイオードの構成を示す図である。
【図12】実施例1及び比較例1における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図13】実施例1及び比較例1における、波長に対する温度係数の変化を示す線図である。
【図14】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図15】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図16】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図17】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図18】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図19】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図20】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図21】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図22】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図23】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図24】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図25】第5実施形態に係るフォトダイオードアレイを概略的に示す平面図である。
【図26】図25におけるXXVI−XXVI線に沿った断面構成を概略的に示す図である。
【図27】各光検出チャンネルと信号導線及び抵抗との接続関係を概略的に説明するための図である。
【図28】第5実施形態に係るフォトダイオードアレイの第1変形例の断面構成を概略的に示す図である。
【図29】第5実施形態に係るフォトダイオードアレイの第2変形例の断面構成を概略的に示す図である。
【図30】第6実施形態に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図31】第7実施形態に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図32】第8実施形態に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図33】図26に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図34】図28に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図35】図29に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図36】図30に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図37】図31に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図38】図32に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図39】フォトダイオードアレイの実装構造の一例を概略的に示す図である。
【図40】フォトダイオードアレイの実装構造の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1〜図10を参照して、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図1〜図10は、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0024】
まず、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bを有するn−型半導体基板1を準備する(図1参照)。n−型半導体基板1の厚みは300μm程度であり、比抵抗は1kΩ・cm程度である。本実施形態では、「高不純物濃度」とは例えば不純物濃度が1×1017cm−3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示し、「低不純物濃度」とは不純物濃度が1×1015cm−3程度以下であって「−」を導電型に付けて示すものとする。n型不純物としてはアンチモン(Sb)や砒素(As)などがあり、p型不純物としては硼素(B)などがある。
【0025】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5を形成する(図2参照)。p+型半導体領域3は、中央部が開口したマスクなどを用い、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。n+型半導体領域5は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、p+型半導体領域3を囲むように、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高濃度に拡散させることにより形成する。p+型半導体領域3の厚みは、例えば0.55μm程度であり、シート抵抗は、例えば44Ω/sq.である。n+型半導体領域5の厚みは、例えば1.5μm程度であり、シート抵抗は、例えば12Ω/sq.である。
【0026】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に絶縁層7を形成する(図3参照)。絶縁層7は、SiO2からなり、n−型半導体基板1を熱酸化することによって形成される。絶縁層7の厚みは、例えば0.1μm程度である。そして、p+型半導体領域3上の絶縁層7にコンタクトホールH1を形成し、n+型半導体領域5上の絶縁層7にコンタクトホールH2を形成する。絶縁層7の代わりに、SiNからなるアンチリフレクティブ(AR)層を形成してもよい。
【0027】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b上及び絶縁層7上に、パッシベーション層9を形成する(図4参照)。パッシベーション層9は、SiNからなり、例えばプラズマCVD法により形成される。パッシベーション層9の厚みは、例えば0.1μmである。そして、n−型半導体基板1の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図5参照)。これにより、n−型半導体基板1の第2主面1b上に形成されたパッシベーション層9は除去され、n−型半導体基板1が露出することとなる。ここでは、研摩により露出した面も、第2主面1bとする。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0028】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図6参照)。ここでは、図7に示されるように、n−型半導体基板1をチャンバC内に配置し、チャンバCの外側に配置されたパルスレーザ発生装置PLDからパルスレーザ光PLをn−型半導体基板1に照射する。チャンバCはガス導入部GIN及びガス排出部GOUTを有しており、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガスなど)をガス導入部GINから導入してガス排出部GOUTから排出することにより、チャンバC内に不活性ガス流Gfが形成されている。パルスレーザ光PLを照射した際に生じる塵などが不活性ガス流GfによりチャンバC外に排出され、n−型半導体基板1への加工屑や塵などの付着を防いでいる。
【0029】
本実施形態では、パルスレーザ発生装置PLDとしてピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用い、第2主面1bの全面にわたってピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射している。第2主面1bはピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光に荒らされ、図8に示されるように、不規則な凹凸10が第2主面1bの全面に形成される。不規則な凹凸10は、第1主面1aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。図8は、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10を観察したSEM画像である。
【0030】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図9参照)。ここでは、n−型半導体基板1内において第2主面1b側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入又は拡散させることにより、アキュムレーション層11を形成する。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0031】
次に、n−型半導体基板1を熱処理(アニール)する。ここでは、n−型半導体基板1を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1時間程度にわたって加熱する。
【0032】
次に、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図10参照)。電極13は、コンタクトホールH1内に形成され、電極15は、コンタクトホールH2内に形成される。電極13,15は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、厚みは例えば1μm程度である。これにより、フォトダイオードPD1が完成する。
【0033】
フォトダイオードPD1は、図10に示されるように、n−型半導体基板1を備えている。n−型半導体基板1の第1主面1a側には、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5が形成されており、n−型半導体基板1とp+型半導体領域3との間にはpn接合が形成されている。電極13は、コンタクトホールH1を通して、p+型半導体領域3に電気的に接触且つ接続されている。電極15は、コンタクトホールH2を通して、n+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続されている。
【0034】
n−型半導体基板1の第2主面1bには、不規則な凹凸10が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層11が形成されており、第2主面1bは光学的に露出している。第2主面1bが光学的に露出しているとは、第2主面1bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面1b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。
【0035】
フォトダイオードPD1では、第2主面1bに不規則な凹凸10が形成されているために、図11に示されるように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1内を長い距離進む。
【0036】
通常、Siの屈折率n=3.5に対して、空気の屈折率n=1.0である。フォトダイオードでは、光入射面に垂直な方向から光が入射した場合、フォトダイオード(シリコン基板)内で吸収されなかった光は、光入射面の裏面にて反射する光成分とフォトダイオードを透過する光成分に分かれる。フォトダイオードを透過した光は、フォトダイオードの感度には寄与しない。光入射面の裏面にて反射した光成分は、フォトダイオード内で吸収されれば、光電流となり、吸収されなかった光成分は、光入射面において、光入射面の裏面に到達した光成分と同様に、反射又は透過する。
【0037】
フォトダイオードPD1では、光入射面(第1主面1a)に垂直な方向から光Lが入射した場合、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、n−型半導体基板1内部で吸収される光成分もあれば、第1主面1aや側面に到達する光成分もある。
【0038】
第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面1aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、n−型半導体基板1の内部を長い距離進むうちに、n−型半導体基板1で吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0039】
このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD1を透過することなく、走行距離が長くされて、n−型半導体基板1で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD1では、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0040】
第2主面1bに規則的な凹凸を形成した場合、第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸にて拡散されているものの、一様な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は低くなる。このため、第1主面1aや側面、更には第2主面1bにて透過する光成分が増加し、フォトダイオードに入射した光の走行距離は短くなってしまう。このため、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することは困難となる。
【0041】
ここで、第1実施形態による近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0042】
上述した構成を備えたフォトダイオード(実施例1と称する)と、n−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオード(比較例1と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例1と比較例1とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。n−型半導体基板1のサイズは、6.5mm×6.5mmに設定した。p+型半導体領域3、すなわち光感応領域のサイズは、5.8mm×5.8mmに設定した。フォトダイオードに印加するバイアス電圧VRは、0Vに設定した。
【0043】
結果を図12に示す。図12において、実施例1の分光感度特性はT1で示され、比較例1の分光感度特性は特性T2で示されている。また、図12において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。一点鎖線にて示されている特性は、量子効率(QE)が100%となる分光感度特性を示し、破線にて示されている特性は、量子効率が50%となる分光感度特性を示している。
【0044】
図12から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では分光感度が0.2A/W(QE=25%)であるのに対して、実施例1では分光感度が0.6A/W(QE=72%)となっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0045】
また、実施例1及び比較例1における、分光感度の温度特性についても確認した。ここでは、雰囲気温度を25℃から60℃に上昇させて分光感度特性を調べ、25℃での分光感度に対する60℃での分光感度の割合(温度係数)を求めた。結果を図13に示す。図13において、実施例1の温度係数の特性はT3で示され、比較例1の温度係数の特性は特性T4で示されている。また、図13において、縦軸は温度係数(%/℃)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。
【0046】
図13から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では温度係数が0.7%/℃であるのに対して、実施例1では温度係数が0.2%/℃となっており、温度依存性が低い。一般に、温度が上昇すると吸収係数の増大とバンドギャップエネルギーの減少により、分光感度が高くなる。実施例1では、室温の状態でも分光感度が十分に高いことから、温度上昇による分光感度の変化が比較例1に比して小さくなっている。
【0047】
フォトダイオードPD1では、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層11が形成されている。これにより、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層11は、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合部へ効率的に移動し、フォトダイオードPD1の光検出感度を更に向上することができる。
【0048】
第1実施形態では、アキュムレーション層11を形成した後に、n−型半導体基板1を熱処理している。これにより、n−型半導体基板1の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0049】
第1実施形態では、n−型半導体基板1を熱処理した後に、電極13,15を形成している。これにより、電極13,15に比較的融点の低い金属を用いる場合でも、熱処理により電極13,15が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極13,15を適切に形成することができる。
【0050】
第1実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図14〜図16を参照して、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図14〜図16は、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0052】
第2実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図14参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0053】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図15参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0054】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図16参照)。これにより、フォトダイオードPD2が完成する。
【0055】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、フォトダイオードPD2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0056】
第2実施形態では、アキュムレーション層11の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きくしている。このため、アキュムレーション層11を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層11が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層11による作用効果を確保することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図17〜図21を参照して、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図17〜図21は、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0058】
第3実施形態の製造方法は、パッシベーション層9を形成するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。パッシベーション層9を形成した後、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する(図17参照)。n−型半導体基板1の薄化は、例えば水酸化カリウム溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)などを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。n−型半導体基板1の薄化された部分の厚みは、例えば100μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば300μm程度である。
【0059】
次に、n−型半導体基板1の周辺部分の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図18参照)。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0060】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図19参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0061】
次に、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図20参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0062】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理した後、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去して、電極13,15を形成する(図21参照)。これにより、フォトダイオードPD3が完成する。
【0063】
第3実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、フォトダイオードPD3に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0064】
第3実施形態では、不規則な凹凸10を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD3を得ることができる。
【0065】
(第4実施形態)
図22〜図24を参照して、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図22〜図24は、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0066】
第4実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を薄化するまでは、第3実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図22参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0067】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図23参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0068】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図24参照)。これにより、フォトダイオードPD4が完成する。
【0069】
第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様に、フォトダイオードPD4に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0070】
第4実施形態では、アキュムレーション層11を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD4を得ることができる。
【0071】
(第5実施形態)
図25及び図26を参照して、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1の構成について説明する。図25は、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1を概略的に示す平面図である。図26は、図25に示したフォトダイオードアレイPDA1のXXVI−XXVI線に沿った断面構成を示す図である。
【0072】
フォトダイオードアレイPDA1は、基板22上に複数の半導体層及び絶縁層が積層されてなる。図25に示すようにフォトダイオードアレイPDA1は、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルCHがマトリクス状(本実施形態では4×4)に形成されてなるフォトンカウンティング用マルチチャンネルアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオードアレイPDA1の上面側には、信号導線23、抵抗24、及び電極パッド25が設けられている。基板22は、例えば一辺が1mm程度の正方形状である。各光検出チャンネルCHは、例えば、正方形状である。
【0073】
信号導線23は、各光検出チャンネルCHから出力された信号を運ぶ読み出し部23aと、各抵抗24と読み出し部23aとを接続する接続部23bと、各光検出チャンネルCHの外周を囲むように配線されるチャンネル外周部23cとからなる。読み出し部23aは、当該読み出し部23aを挟んで隣接する2つの列に配置された光検出チャンネルCHそれぞれと接続されており、その一端において電極パッド25と接続されている。また、本実施形態ではフォトダイオードが4×4のマトリクス状に配置されているため、フォトダイオードアレイPDA1上には2本の読み出し部23aが配線されており、これらは電極パッド25に対して双方とも接続される。信号導線23は、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0074】
抵抗24は、一方の端部24a及びチャンネル外周部23cを介して光検出チャンネルCHごとに設けられており、他方の端部24b及び接続部23bを介して読み出し部23aに接続される。同一の読み出し部23aに接続される複数(本実施形態では8つ)の抵抗24は、当該読み出し部23aに対して接続される。抵抗24は、例えばポリシリコン(Poly−Si)からなる。
【0075】
次に、図26を参照してフォトダイオードアレイPDA1の断面構成について説明する。図26に示すように、フォトダイオードアレイPDA1は、導電型がn型(第1導電型)の半導体層を有する基板22と、基板22上に形成された導電型がp型(第2導電型)のp−型半導体層33、とp−型半導体層33上に形成された導電型がp型のp+型半導体領域34と、保護膜36と、p−型半導体層33に形成された導電型がn型(第1導電型)の分離部40と、保護膜36上に形成された上記の信号導線23及び抵抗24とを備える。被検出光は、図26の上面側から又は下面側から入射される。
【0076】
基板22は、基板部材Sと、基板部材S上に形成された絶縁膜31と、絶縁膜31上に形成されたn+型半導体層32とを有する。基板部材Sは、Si(シリコン)からなる。絶縁膜31は、例えばSiO2(酸化シリコン)からなる。n+型半導体層32は、Siからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。n+型半導体層32の厚さは、例えば1μm〜12μmである。
【0077】
p−型半導体層33は、不純物濃度が低い導電型がp型のエピタキシャル半導体層である。p−型半導体層33は、基板22との界面でpn接合を構成する。p−型半導体層33は、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍する増倍領域AMを各光検出チャンネルCHに対応して複数有する。p−型半導体層33の厚さは、例えば3μm〜5μmである。p−型半導体層33は、Siからなる。したがって、n+型半導体層32とp−型半導体層33とは、シリコン基板を構成している。
【0078】
p+型半導体領域34は、各光検出チャンネルCHの増倍領域AMに対応して、p−型半導体層33上に形成されている。すなわち、半導体層の積層方向(以下、単に積層方向という)でp+型半導体領域34の下方に位置するp−型半導体層33の基板22との界面近傍の領域が増倍領域AMである。p+型半導体領域34は、Siからなる。
【0079】
分離部40は、複数の光検出チャンネルCHの間に形成され、各光検出チャンネルCHを分離する。すなわち、分離部40は、各光検出チャンネルCHと1対1に対応してp−型半導体層33に増倍領域AMが形成されるように形成される。分離部40は、各増倍領域AMの周囲を完全に囲うように基板22上において2次元格子状に形成される。分離部40は、積層方向でp−型半導体層33の上面側から下面側まで貫通して形成されている。分離部40の不純物は例えばPからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。分離部40を拡散により形成すると、長い熱処理時間が必要となるため、n+型半導体層32の不純物がエピタキシャル半導体層へ拡散して、pn接合の界面がせり上がることが考えられる。このせり上がり防止のため、分離部40にあたる領域の中央付近をトレンチエッチングした後、不純物の拡散を行って分離部40を形成してもよい。詳細は他の実施形態で説明するが、このトレンチ溝には、光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を吸収、又は反射する物質で埋めることによる遮光部を形成して、なだれ増倍による発光が隣接する光検出チャンネルに影響を及ぼして生じるクロストークを防止することもできる。
【0080】
p−型半導体層33、p+型半導体領域34、及び分離部40は、フォトダイオードアレイPDA1の上面側において平面を形成し、これらの上には保護膜36が形成されている。保護膜36は、例えばSiO2からなる絶縁層によって形成される。
【0081】
保護膜36上には、信号導線23及び抵抗24が形成されている。信号導線23の読み出し部23a及び抵抗24は、分離部40の上方に形成されている。
【0082】
なお、信号導線23がアノードとして機能し、カソードとして、図示は省略するが基板22の下面側(絶縁膜31を有していない側)の全面に透明電極層(例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる層)を備えていてもよい。あるいは、カソードとして、電極部を表面側に引き出されるように形成してもよい。
【0083】
ここで、図27を参照して、各光検出チャンネルCHと信号導線23及び抵抗24との接続関係を説明する。図27は、各光検出チャンネルCHと信号導線23及び抵抗24との接続関係を概略的に説明するための図である。図27に示されるように、各光検出チャンネルCHのp+型半導体領域34と信号導線23(チャンネル外周部23c)とは直接接続されている。これにより、信号導線23(チャンネル外周部23c)とp−型半導体層33とは電気的に接続される。また、p−型半導体層33と抵抗24の一端部24aとは、信号導線23(チャンネル外周部23c)を介して接続され、抵抗24は他の一端部24bがそれぞれ接続部23bを介して読み出し部23aに対して接続される。
【0084】
基板22は、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域が基板部材S側から薄化されて、基板部材Sにおける複数の光検出チャンネルCHが形成された領域に対応する部分が除去されている。薄化された領域の周囲には、基板部材Sが枠部として存在している。なお、上記枠部も除去され、基板22は、全領域が薄化された、すなわち基板部材S全体が除去された構成を有していてもよい。基板部材Sの除去は、エッチング(例えば、ドライエッチングなど)や、研磨などにより行うことができる。ドライエッチングにより基板部材Sを除去する場合、絶縁膜31はエッチングストップ層としても機能する。基板部材Sが除去されることにより露出する絶縁膜31は、後述するようにして除去される。
【0085】
n+型半導体層32の表面には、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域全体にわたって、不規則な凹凸10が形成されている。n+型半導体層32の表面における不規則な凹凸10が形成された領域は、光学的に露出している。n+型半導体層32の表面が光学的に露出しているとは、n+型半導体層32の表面が空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、n+型半導体層32の表面上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。不規則な凹凸10は、各光検出チャンネルCHに対向している領域のみに形成されていてもよい。
【0086】
不規則な凹凸10は、基板部材Sが除去されることにより露出している絶縁膜31に、上述した実施形態と同様に、パルスレーザ光を照射することにより形成される。すなわち、露出している絶縁膜31にパルスレーザ光が照射されると、絶縁膜31が除去されると共に、n+型半導体層32の表面がパルスレーザ光に荒らされ、不規則な凹凸10が形成される。パルスレーザ光を照射するパルスレーザ発生装置は、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用いることができる。不規則な凹凸10は、n+型半導体層32の表面に直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。
【0087】
パルスレーザ光を照射して不規則な凹凸10を形成した後に、基板22を熱処理(アニール)することが好ましい。例えば、基板22を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1.0時間程度にわたって加熱する。上記熱処理により、n+型半導体層32の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0088】
このように構成されたフォトダイオードアレイPDA1をフォトンカウンティングに用いる場合、ガイガーモードと呼ばれる動作条件下で動作させる。このガイガーモード動作時には、各光検出チャンネルCHにブレークダウン電圧よりも高い逆電圧(例えば50V以上)が印加される。この状態で上面側から各光検出チャンネルCHに被検出光が入射すると、被検出光が各光検出チャンネルCHにおいて吸収されてキャリアが発生する。発生したキャリアは各光検出チャンネルCH内の電界に従って加速しながら移動し、各増倍領域AMで増倍される。そして、増倍されたキャリアは抵抗24を介して信号導線23により外部へと取り出され、その出力信号の波高値に基づいて検出される。フォトンを検出したチャンネルからは何れも同量の出力が得られるので、全チャンネルからの総出力を検出することでフォトダイオードアレイPDA1のうちのいくつの光検出チャンネルCHから出力があったかがカウントされる。したがって、フォトダイオードアレイPDA1では、被検出光の一回の照射によって、フォトンカウンティングがなされる。
【0089】
ところで、フォトダイオードアレイPDA1では、n+型半導体層32の表面に不規則な凹凸10が形成されているために、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、フォトダイオードアレイPDA1内を長い距離進む。
【0090】
例えば、フォトダイオードアレイPDA1を表面入射型フォトダイオードアレイとして用い、保護膜36側からフォトダイオードアレイPDA1に光が入射した場合、n+型半導体層32の表面に形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、各光検出チャンネルCHで吸収される光成分もあれば、保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達する光成分もある。
【0091】
保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達した光成分が保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面にて全反射する可能性は極めて高い。保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光は、フォトダイオードアレイPDA1の内部を長い距離進むうちに、各光検出チャンネルCHで吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0092】
フォトダイオードアレイPDA1を裏面入射型フォトダイオードアレイとして用い、n+型半導体層32の表面側からフォトダイオードアレイPDA1に光が入射した場合、入射した光は、凹凸10により散乱され、フォトダイオードアレイPDA1内を様々な方向に進む。保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達した光成分が各面にて全反射する可能性は極めて高い。保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射や凹凸10での反射、散乱、又は拡散を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、フォトダイオードアレイPDA1内を長い距離進み、各光検出チャンネルCHで吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0093】
このように、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードアレイPDA1を透過することなく、走行距離が長くされて、各光検出チャンネルCHで吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードアレイPDA1では、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0094】
第5実施形態では、n+型半導体層32の表面に不規則な凹凸10が形成されている。このため、不規則な凹凸10が形成された上記表面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、n+型半導体層32は、アキュムレーション層として機能し、n+型半導体層32の上記表面付近で光により発生したキャリアが該表面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、増倍領域AMへ効率的に移動し、フォトダイオードアレイPDA1の光検出感度を向上することができる。
【0095】
第5実施形態では、n+型半導体層32における複数の光検出チャンネルCHの間に対応する表面も、不規則な凹凸10が形成されていると共に、光学的に露出している。このため、複数の光検出チャンネルCHの間に入射した光も、不規則な凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光検出チャンネルCHで吸収される。したがって、光検出チャンネルCHの間において検出感度が低下することはなく、フォトダイオードアレイPDA1の光検出感度がより一層向上する。ところで、第5実施形態では、複数の光検出チャンネルCHが形成されているが、各光検出チャンネルCHは光の入射位置を検出するものでは無く、出力として各光検出チャンネルCHの出力の和をとる。このため、各光検出チャンネルCH間のクロストークは問題にならず、入射した光はいずれかの光検出チャンネルCHで検出されればよい。
【0096】
第5実施形態では、n+型半導体層32の厚みが、不規則な凹凸10の高低差よりも大きい。このため、n+型半導体層32によるアキュムレーション層としての作用効果を確実に確保することができる。
【0097】
また、第5実施形態では、フォトダイオードアレイPDA1では、pn接合は、基板22のn+型半導体層32と当該基板22のn+型半導体層32上に形成されたエピタキシャル半導体層であるp−型半導体層33とによって構成されている。また、増倍領域AMはpn接合が実現されているp−型半導体層33に形成され、各増倍領域AMの各光検出チャンネルCHへの対応は光検出チャンネルCH間に形成された分離部40によって実現されている。pn接合面は、n+型半導体層32とp−型半導体層33との界面と、分離部40とp−型半導体層33との界面とから構成されており、高濃度不純物領域が凸となり電界が高くなる領域が存在しなくなっている。したがって、フォトダイオードアレイPDA1は、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA1では各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA1はその開口率を格段に高くすることが可能となる。
【0098】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA1では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0099】
また、各光検出チャンネルCH間は分離部40によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
【0100】
また、ガイガーモードで動作させ、フォトンが入射された光検出チャンネルと入射しないチャンネルとの間で電圧差が大きくなった場合にも、光検出チャンネルCH間には分離部40が形成されているため、十分にチャンネル間を分離することができる。
【0101】
フォトダイオードアレイPDA1では、信号導線23の読み出し部23aが分離部40の上方に形成されている。そのため、信号導線23が増倍領域AM上方、すなわち光検出面上を横切ることが抑制されるため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。また、フォトダイオードアレイPDA1では、抵抗24も分離部40の上方に形成されているため、開口率はさらにより一層向上される。
【0102】
また、n型の半導体基板を用い、その上にp型のエピタキシャル半導体層を形成した場合、n型の半導体基板で発生したホールの一部が遅れて増倍領域に入りアフターパルスとなってしまうという問題が発生することを本願発明者はアフターパルスの波長依存性から見出した。こうした問題に対し、フォトダイオードアレイPDA1では、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域において、基板部材Sが除去されているので、アフターパルスを抑制することが可能となる。
【0103】
なお、第5実施形態における分離部40には種々の変形を適用することができる。図28は、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1の第1変形例の断面構成を概略的に示す図である。第1変形例に係るフォトダイオードアレイでは、複数(本変形例では2つ)の分離部40が光検出チャンネルCHの間に形成されている。
【0104】
図29は、本実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1の第2変形例の断面構成を概略的に示す図である。第2変形例に係るフォトダイオードアレイでは、分離部40が、積層方向でp−型半導体層33の上面側から下面側まで貫通することなく上面(被検出光入射面)近傍にのみ形成されている。
【0105】
また、上記実施形態では、エピタキシャル半導体層を第2導電型としたが、エピタキシャル半導体層を第1導電型として、当該半導体層中に第2導電型の半導体領域を設けて、第1導電型のエピタキシャル半導体層と第2導電型の半導体領域とでpn接合を構成してもよい。
【0106】
フォトダイオードアレイPDA1は、図39及び図40に示されるように、基板WBに実装される。図39では、フォトダイオードアレイPDA1は、接着等により基板WBに固定されており、基板WBに形成された配線とワイヤーボンデングにより電気的に接続されている。図40では、フォトダイオードアレイPDA1は、パンプにより基板WBに固定されていると共に、基板WBに形成された配線に電気的に接続されている。フォトダイオードアレイPDA1と基板WBとをバンプにより接続する場合、フォトダイオードアレイPDA1と基板WBとの間にアンダーフィル樹脂を充填することが好ましい。この場合には、フォトダイオードアレイPDA1と基板WBとの接続強度を確保することができる。
【0107】
図39において、フォトダイオードアレイPDA1を裏面入射型フォトダイオードアレイとして用いる場合、基板WBは光学的に透明であることが好ましい。同じく、図40において、フォトダイオードアレイPDA1を表面入射型フォトダイオードアレイとして用いる場合も、基板WBは光学的に透明であることが好ましい。このとき、充填されるアンダーフィル樹脂も光学的に透明であることが好ましい。
【0108】
(第6実施形態)
図30を参照して、第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2の構成について説明する。図30は、第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2の断面構成を概略的に示す図である。第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2は、分離部40が遮光部を有している点で第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1と異なる。
【0109】
図30に示すように、分離部40は、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域(可視から近赤外)の光を吸収する物質からなる遮光部42を含む。遮光部42は、p−型半導体層33の上面側から下面側に向かって伸びる芯のように分離部40内に埋め込まれて形成されている。遮光部42は、例えばホトレジスト内に黒色の染料や絶縁処理したカーボンブラック等の顔料を混入させた黒色ホトレジストやタングステン等の金属からなる。ただし、遮光部42を構成する物質が絶縁物質でない場合(例えば、タングステン等の金属)には、SiO2等の絶縁膜で当該遮光部42を被膜する必要がある。なお、第5実施形態でも述べているが、分離部40を拡散により形成すると、長い熱処理時間が必要となるため、n+型半導体層32の不純物がエピタキシャル半導体層へ拡散して、pn接合の界面がせり上がることが考えられる。このせり上がり防止のため、分離部40にあたる領域の中央付近をトレンチエッチングした後、不純物の拡散を行って分離部40を形成してもよい。図30において示すように、不純物拡散を行った後は、n+型半導体層32と分離部40がつながった形となる。残るトレンチ溝には、上述のように光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を吸収する物質(後述するように、光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を反射する物質でもよい)で埋めることによる遮光部を形成して、なだれ増倍による発光が隣接する光検出チャンネルに影響を及ぼして生じるクロストークを防止することもできる。
【0110】
第6実施形態においても、第5実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。また、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイPDA2の光検出感度を向上することができる。
【0111】
また、フォトダイオードアレイPDA2でも、フォトダイオードアレイPDA1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA2でも各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA2はその開口率を高くすることが可能となる。
【0112】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA2では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0113】
また、各光検出チャンネルCH間は分離部40によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
【0114】
フォトダイオードアレイPDA2でも、信号導線23の読み出し部23aが分離部40の上方に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
【0115】
また、各分離部40は、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域の光を吸収する物質からなる遮光部42を含む。したがって、被検出光は遮光部で吸収されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。さらに、遮光部42は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネルCHに影響を与えないように、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を吸収する物質からなるので、クロストークの発生を良好に抑制することが可能になる。
【0116】
なお、遮光部42は、可視から近赤外の光を吸収する物質に限らず、可視から近赤外の光を反射する物質であってもよい。この場合であっても、被検出光は遮光部で反射されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。さらに、遮光部42は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネルCHに影響を与えないように、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を反射する物質からなるので、クロストークの発生を良好に抑制することが可能になる。
【0117】
また、遮光部42は、可視から近赤外の光を吸収又は反射する物質に限らず、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域の光を吸収又は反射する物質であればよい。ただし、遮光部42は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネルCHに影響を与えないように、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を吸収又は反射する物質からなることが好ましい。
【0118】
なお、遮光部42は、分離部40よりも低い屈折率の物質からなっていてもよい。これらの場合であっても、光は遮光部で反射されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。
【0119】
(第7実施形態)
図31を参照して、第7実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3の構成について説明する。図31は、第7実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3の断面構成を概略的に説明するための図である。第7実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3は、信号導線23が窒化シリコン膜上に形成されている点で第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1と異なる。
【0120】
図31に示すように、フォトダイオードアレイPDA3は、導電型がn型(第1導電型)の半導体層を有する基板22と、基板22上に形成された導電型がp型(第2導電型)のp型半導体層35、とp型半導体層35上に形成された導電型がp型のp+型半導体領域34と、保護膜36a,36bと、p型半導体層35に形成された導電型がn型(第1導電型)の分離部40と、アルミニウムからなる信号導線23と、例えばPoly−Siからなる抵抗24とを備える。
【0121】
基板22は、n+型の基板部材(不図示)と、当該基板部材上に形成されたn型半導体層32とを有する。
【0122】
p型半導体層35は、不純物濃度がp+型半導体領域34より低い導電型がp型のエピタキシャル半導体層である。p型半導体層35は、基板22のn型半導体層32との界面でpn接合を構成する。p型半導体層35は、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍する増倍領域AMを各光検出チャンネルCHに対応して複数有する。p型半導体層35は、Siからなる。
【0123】
p型半導体層35、p+型半導体領域34、及び分離部40は、フォトダイオードアレイPDA3の上面側において平面を形成し、これらの上には保護膜36a、36bが形成されている。保護膜36aは酸化シリコン膜(SiO2膜)からなる絶縁膜によって、保護膜36bは窒化シリコン(SiN膜あるいはSi3N4膜)からなる絶縁膜によってそれぞれ形成される。
【0124】
図31に示されるように、分離部40上に、保護膜36a、抵抗24、保護膜36b、及び信号導線23がこの順で積層されている。具体的には、分離部40上に保護膜36aが積層されている。保護膜36a上には、抵抗24が積層されている。保護膜36a及び抵抗24上には、保護膜36bが各抵抗24の一部を除いて積層されている。保護膜36b及び保護膜36bがその上に積層されていない抵抗24の一部の上には、信号導線23が電気的接続のため、積層されている。具体的には、抵抗24間には信号導線23の読み出し部23aが、抵抗24上には電気的接続のため、接続部23b又はチャンネル外周部23cへの電気的接続としての信号導線23がそれぞれ積層される。
【0125】
さらに、図31に示されるように、p+型半導体領域34上には一部を除いて保護膜36bが積層されている。保護膜36bが積層されていないp+型半導体領域34の当該一部の上及びp+型半導体領域34上に積層された保護膜36bの一部の上には、電気的接続のために信号導線23のチャンネル外周部23cが積層されている。
【0126】
第7実施形態においても、第5及び第6実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA3に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。また、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイPDA3の光検出感度を向上することができる。
【0127】
フォトダイオードアレイPDA3でも、フォトダイオードアレイPDA1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA3でも各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA3はその開口率を高くすることが可能となる。
【0128】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA3では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0129】
また、光検出チャンネルCH間は分離部40によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
【0130】
フォトダイオードアレイPDA3でも、信号導線23の読み出し部23aが分離部40の上方に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
【0131】
信号導線23は、アルミニウムからなるため、例えば酸化膜上に形成された場合、高電圧の印加によってアルミニウムがその下の膜に染みこんでしまうという問題が発生する。こうした問題に対し、フォトダイオードアレイPDA3では、信号導線23は窒化シリコン膜からなる保護膜36b上に形成されている。そのため、フォトダイオードアレイPDA3に高電圧を印加したとしても、アルミニウムがその下の膜(保護膜36b)に染みこむことが抑制される。
【0132】
加えて、信号導線23の読み出し部23aの下には、保護膜36bと保護膜36aもしくは抵抗24が積層されている。そのため、高電圧の印加によってアルミニウムが分離部40及びp型半導体層35に染みこむことが良好に抑制されている。
【0133】
このように、フォトダイオードアレイPDA3では、高電圧を印加した場合であっても、アルミニウムが光検出チャンネルCH及び分離部40に侵入することが好適に抑制される。
【0134】
例えばポリシリコン(Poly−Si)からなる抵抗24は保護膜36a上に形成されるとともに、当該抵抗24上には保護膜36b及び信号導線23が形成されている。
【0135】
なお、n型半導体層32の代わりにp型の半導体層を用いてもよい。この場合、当該p型の半導体層とn+型の基板部材S(基板22)との間でpn接合が構成され、このp型の半導体層において増倍部AMが形成されることとなる。
【0136】
(第8実施形態)
図32を参照して、第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA4の構成について説明する。図32は、第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA4の断面構成を概略的に示す図である。第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA4は、分離部40を備えていない点で第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1と異なる。
【0137】
図32に示すように、p−型半導体層33は複数の増倍領域AMを、各増倍領域AMと各光検出チャンネルCHとが互いに対応するように有する。各光検出チャンネルCH間には、信号導線23及び抵抗24が形成されている。
【0138】
第8実施形態においても、第5〜第7実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA4に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。また、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイPDA4の光検出感度を向上することができる。
【0139】
フォトダイオードアレイPDA4でも、フォトダイオードアレイPDA1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA4でも各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA4はその開口率を高くすることが可能となる。さらに、フォトダイオードアレイPDA4は、分離部を有さないことにより、より一層高い開口率を示すことができる。
【0140】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA4では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0141】
フォトダイオードアレイPDA4では、信号導線23の読み出し部23aが各光検出チャンネルCH間に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
【0142】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0143】
第1〜第4実施形態では、第2主面1bの全面にわたって、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しているが、これに限られない。例えば、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域のみに、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成してもよい。
【0144】
第1〜第4実施形態では、電極15をn−型半導体基板1の第1主面1a側に形成されたn+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続しているが、これに限られない。例えば、電極15をn−型半導体基板1の第2主面1b側に形成されたアキュムレーション層11に電気的に接触且つ接続してもよい。この場合、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域外に、電極15を形成することが好ましい。n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域に電極15を形成すると、第2主面1bに形成されている不規則な凹凸10が電極15により塞がれ、近赤外の波長帯域における分光感度が低下するという事象が生じるためである。
【0145】
第1〜第4実施形態に係るフォトダイオードPD1〜PD4におけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
【0146】
第5〜第8実施形態において、フォトダイオードアレイに形成される光検出チャンネルの数は、上記実施形態における数(4×4)に限定されない。光検出チャンネルCH間に形成される分離部40の数も、上記実施形態及び変形例で示した数に限られず、例えば3つ以上であってもよい。また、信号導線23は、分離部40の上方に形成されていなくてもよい。抵抗24も分離部40の上方に形成されていなくてもよい。また、各層等は、上記実施形態及び変形例で例示したものに限られない。上述したフォトダイオードアレイPDA1〜PDA4におけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
【0147】
図33は図26に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図34は図28に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図35は図29に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図36は図30に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図37は図31に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図38は図32に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。これらの基本的な平面構成と接続関係は、図25に示したものと同一である。
【0148】
上述のように、図33から図38に示した構造では、図26、図28、図29、図30、図31、図32のp型半導体層33又はp型半導体層35に代えて、n型半導体層R33又はR35を用いている。この場合、pn接合は、低濃度のn型半導体層R33(又はR35)とp型半導体領域34との界面に形成され、pn接合から空乏層がn型半導体層R33(又はR35)に向けて広がり、空乏層に対応して増倍領域AMがpn接合界面からn型半導体層R33(又はR35)に向かって形成されている。他の構造と作用は、上述のものと同一である。
【0149】
これらのフォトダイオードアレイPDA1〜PDA4は、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルCHがn型半導体層32を有するn型の基板22に形成されてなる。被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルCHが、第1導電型のn+型である半導体層32(S)を有する基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、基板22と、基板22の第1導電型の半導体層32上に形成され、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域AMを当該各増倍領域AMと各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のn−型であるエピタキシャル半導体層R33(又はR35)と、第1導電型のエピタキシャル半導体層R33(又はR35)中に形成され、当該エピタキシャル半導体層R33(又はR35)との界面でpn接合を構成する第2導電型のp+型である半導体領域34と、2つの端部を有し、光検出チャンネルCHごとに設けられ、一方の端部24aを介してエピタキシャル半導体層R33(又はR35)中の第2導電型の半導体領域34と電気的に接続されると共に他方の端部24bを介して信号導線23に接続される複数の抵抗24とを備えている。
【0150】
抵抗24は、図25に示したように、一方の端部24a及びチャンネル外周部23cを介して光検出チャンネルCHごとに設けられており、他方の端部24b及び接続部23bを介して読み出し部23aに接続される。同一の読み出し部23aに接続される複数の抵抗24は、当該読み出し部23aに対して接続される。
【0151】
これらのフォトダイオードアレイでは、pn接合は、基板上の第1導電型のエピタキシャル半導体層R33(又はR35)と当該エピタキシャル半導体層R33(又はR35)中に形成された第2導電型の半導体領域34とによって構成されている。また、増倍領域AMはpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層R33(又はR35)に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域AMはこのエピタキシャル半導体層R33(又はR35)にある。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、半導体光検出素子及び光検出装置に利用できる。
【符号の説明】
【0153】
1…n−型半導体基板、1a…第1主面、1b…第2主面、3…p+型半導体領域、5…n+型半導体領域、10…不規則な凹凸、11…アキュムレーション層、13,15…電極、22…基板、23…信号導線、24…抵抗、25…電極パッド、31…絶縁膜、32…n+型半導体層、33…p−型半導体層、34…p+型半導体領域、35…p型半導体層、36…保護膜、40…分離部、42…遮光部、AM…増倍領域、CH…光検出チャンネル、S…基板部材、PL…パルスレーザ光、PD1〜PD4…フォトダイオード、PDA1〜PDA4…フォトダイオードアレイ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトダイオード及びフォトダイオードアレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近赤外の波長帯域に高い分光感度特性を有するフォトダイオードとして、化合物半導体を用いたフォトダイオードが知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたフォトダイオードでは、InGaAsN、InGaAsNSb、及びInGaAsNPのいずれかからなる第1受光層と、第1受光層の吸収端より長波長の吸収端を有し、量子井戸構造からなる第2受光層と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−153311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような化合物半導体を用いたフォトダイオードは、未だ高価であり、製造工程も複雑なものとなってしまう。このため、安価で且つ製造が容易なシリコンフォトダイオードであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度を有しているものの実用化が求められている。シリコンフォトダイオードは、一般に、分光感度特性の長波長側での限界は1100nm程度ではあるものの、1000nm以上の波長帯域における分光感度特性は十分なものではなかった。
【0005】
本発明は、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフォトダイオードアレイは、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、第1導電型の半導体層上に形成され、当該半導体層との界面でpn接合を構成するとともに、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第2導電型のエピタキシャル半導体層と、2つの端部を有し、光検出チャンネルごとに設けられ、一方の端部を介してエピタキシャル半導体層と電気的に接続されると共に他方の端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0007】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、pn接合は、第1導電型の半導体層と当該半導体層上に形成されたエピタキシャル半導体層とによって構成されている。また、増倍領域はpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域はこのエピタキシャル半導体層にある。したがって、上記フォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さず、ガードリングを設ける必要がない。そのため、上記フォトダイオードアレイはその開口率を高くすることが可能となる。
【0008】
そして、本発明によれば、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されているために、フォトダイオードアレイに入射した光は不規則な凹凸が形成された表面にて反射、散乱、又は拡散されて、シリコン基板内を長い距離進む。これにより、フォトダイオードアレイに入射した光は、その大部分がフォトダイオードアレイ(シリコン基板)を透過することなく、光検出チャンネルで吸収されることとなる。したがって、上記フォトダイオードアレイでは、フォトダイオードアレイに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0009】
また、本発明では、第1導電型の半導体層の上記表面に不規則な凹凸が形成されている。このため、不規則な凹凸が形成された上記表面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、第1導電型の上記半導体層は、アキュムレーション層として機能し、第1導電型の半導体層の上記表面付近で光により発生したキャリアが該表面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、上記増倍領域へ効率的に移動し、フォトダイオードアレイの光検出感度を向上することができる。
【0010】
本発明に係るフォトダイオードアレイは、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、第1導電型の半導体層上に形成され、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のエピタキシャル半導体層と、第1導電型のエピタキシャル半導体層中に形成され、当該エピタキシャル半導体層との界面でpn接合を構成する第2導電型の半導体領域と、2つの端部を有し、光検出チャンネルごとに設けられ、一方の端部を介してエピタキシャル半導体層中の第2導電型の半導体領域と電気的に接続されると共に他方の端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、第1導電型の半導体層における少なくとも各光検出チャンネルに対応する表面は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0011】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、pn接合は、第1導電型のエピタキシャル半導体層と当該半導体層中に形成された第2導電型の半導体領域とによって構成されている。また、増倍領域はpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域はこのエピタキシャル半導体層にある。したがって、上記フォトダイオードアレイは、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さず、ガードリングを設ける必要がない。そのため、上記フォトダイオードアレイはその開口率を高くすることが可能となる。
【0012】
そして、本発明によれば、上述したように、フォトダイオードアレイに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、第1導電型の上記半導体層がアキュムレーション層として機能して、本発明では、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0013】
好ましくは、第1導電型の半導体層における複数の光検出チャンネルの間に対応する表面は、不規則な凹凸が更に形成されていると共に、光学的に露出している。この場合、複数の光検出チャンネルの間に入射した光も不規則な凹凸が形成された表面にて反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光検出チャンネルで吸収される。したがって、光検出チャンネルの間において検出感度が低下することはなく、光検出感度がより一層向上する。
【0014】
本発明に係るフォトダイオードアレイにおいて、シリコン基板は、複数の光検出チャンネルが形成されている部分が該部分の周辺部分を残して薄化されていてもよい。この場合、表面入射型及び裏面入射型のフォトダイオードアレイを得ることができる。
【0015】
本発明に係るフォトダイオードアレイでは、第1導電型の半導体層の厚みが、不規則な凹凸の高低差よりも大きいことが好ましい。この場合、上述したように、第1導電型の半導体層によるアキュムレーション層としての作用効果を確保することができる。
【0016】
本発明に係るフォトダイオードは、第1導電型の半導体からなり、互いに対向する第1主面及び第2主面を有すると共に第1主面側に第2導電型の半導体領域が形成されたシリコン基板を備え、シリコン基板には、第2主面側にシリコン基板よりも高い不純物濃度を有する第1導電型のアキュムレーション層が形成されていると共に、第2主面における少なくとも第2導電型の半導体領域に対向する領域に不規則な凹凸が形成されており、シリコン基板の第2主面における第2導電型の半導体領域に対向する領域は、光学的に露出していることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るフォトダイオードでは、上述したように、フォトダイオードに入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるため、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。また、シリコン基板の第2主面側に形成される第1導電型のアキュムレーション層により、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードの光検出感度を向上することができる。
【0018】
好ましくは、シリコン基板は、第2導電型の半導体領域に対応する部分が該部分の周辺部分を残して第2主面側より薄化されている。この場合、シリコン基板の第1主面及び第2主面側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードを得ることができる。
【0019】
好ましくは、第1導電型のアキュムレーション層の厚みが、不規則な上記凹凸の高低差よりも大きい。この場合、上述したように、アキュムレーション層による作用効果を確保することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、シリコンフォトダイオード及びシリコンフォトダイオードアレイであって、近赤外の波長帯域に十分な分光感度特性を有しているフォトダイオード及びフォトダイオードアレイを提供することを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図2】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図3】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図4】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図5】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図6】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図7】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図8】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図9】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図10】第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図11】第1実施形態に係るフォトダイオードの構成を示す図である。
【図12】実施例1及び比較例1における、波長に対する分光感度の変化を示す線図である。
【図13】実施例1及び比較例1における、波長に対する温度係数の変化を示す線図である。
【図14】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図15】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図16】第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図17】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図18】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図19】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図20】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図21】第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図22】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図23】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図24】第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【図25】第5実施形態に係るフォトダイオードアレイを概略的に示す平面図である。
【図26】図25におけるXXVI−XXVI線に沿った断面構成を概略的に示す図である。
【図27】各光検出チャンネルと信号導線及び抵抗との接続関係を概略的に説明するための図である。
【図28】第5実施形態に係るフォトダイオードアレイの第1変形例の断面構成を概略的に示す図である。
【図29】第5実施形態に係るフォトダイオードアレイの第2変形例の断面構成を概略的に示す図である。
【図30】第6実施形態に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図31】第7実施形態に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図32】第8実施形態に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図33】図26に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図34】図28に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図35】図29に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図36】図30に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図37】図31に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図38】図32に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。
【図39】フォトダイオードアレイの実装構造の一例を概略的に示す図である。
【図40】フォトダイオードアレイの実装構造の一例を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0023】
(第1実施形態)
図1〜図10を参照して、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図1〜図10は、第1実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0024】
まず、シリコン(Si)結晶からなり、互いに対向する第1主面1a及び第2主面1bを有するn−型半導体基板1を準備する(図1参照)。n−型半導体基板1の厚みは300μm程度であり、比抵抗は1kΩ・cm程度である。本実施形態では、「高不純物濃度」とは例えば不純物濃度が1×1017cm−3程度以上のことであって、「+」を導電型に付けて示し、「低不純物濃度」とは不純物濃度が1×1015cm−3程度以下であって「−」を導電型に付けて示すものとする。n型不純物としてはアンチモン(Sb)や砒素(As)などがあり、p型不純物としては硼素(B)などがある。
【0025】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5を形成する(図2参照)。p+型半導体領域3は、中央部が開口したマスクなどを用い、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からp型不純物を高濃度に拡散させることにより形成する。n+型半導体領域5は、周辺部領域が開口した別のマスクなどを用い、p+型半導体領域3を囲むように、n−型半導体基板1内において第1主面1a側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高濃度に拡散させることにより形成する。p+型半導体領域3の厚みは、例えば0.55μm程度であり、シート抵抗は、例えば44Ω/sq.である。n+型半導体領域5の厚みは、例えば1.5μm程度であり、シート抵抗は、例えば12Ω/sq.である。
【0026】
次に、n−型半導体基板1の第1主面1a側に絶縁層7を形成する(図3参照)。絶縁層7は、SiO2からなり、n−型半導体基板1を熱酸化することによって形成される。絶縁層7の厚みは、例えば0.1μm程度である。そして、p+型半導体領域3上の絶縁層7にコンタクトホールH1を形成し、n+型半導体領域5上の絶縁層7にコンタクトホールH2を形成する。絶縁層7の代わりに、SiNからなるアンチリフレクティブ(AR)層を形成してもよい。
【0027】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b上及び絶縁層7上に、パッシベーション層9を形成する(図4参照)。パッシベーション層9は、SiNからなり、例えばプラズマCVD法により形成される。パッシベーション層9の厚みは、例えば0.1μmである。そして、n−型半導体基板1の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図5参照)。これにより、n−型半導体基板1の第2主面1b上に形成されたパッシベーション層9は除去され、n−型半導体基板1が露出することとなる。ここでは、研摩により露出した面も、第2主面1bとする。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0028】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図6参照)。ここでは、図7に示されるように、n−型半導体基板1をチャンバC内に配置し、チャンバCの外側に配置されたパルスレーザ発生装置PLDからパルスレーザ光PLをn−型半導体基板1に照射する。チャンバCはガス導入部GIN及びガス排出部GOUTを有しており、不活性ガス(例えば、窒素ガスやアルゴンガスなど)をガス導入部GINから導入してガス排出部GOUTから排出することにより、チャンバC内に不活性ガス流Gfが形成されている。パルスレーザ光PLを照射した際に生じる塵などが不活性ガス流GfによりチャンバC外に排出され、n−型半導体基板1への加工屑や塵などの付着を防いでいる。
【0029】
本実施形態では、パルスレーザ発生装置PLDとしてピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用い、第2主面1bの全面にわたってピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射している。第2主面1bはピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光に荒らされ、図8に示されるように、不規則な凹凸10が第2主面1bの全面に形成される。不規則な凹凸10は、第1主面1aに直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。図8は、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10を観察したSEM画像である。
【0030】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図9参照)。ここでは、n−型半導体基板1内において第2主面1b側からn型不純物をn−型半導体基板1よりも高い不純物濃度となるようにイオン注入又は拡散させることにより、アキュムレーション層11を形成する。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0031】
次に、n−型半導体基板1を熱処理(アニール)する。ここでは、n−型半導体基板1を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1時間程度にわたって加熱する。
【0032】
次に、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図10参照)。電極13は、コンタクトホールH1内に形成され、電極15は、コンタクトホールH2内に形成される。電極13,15は、それぞれアルミニウム(Al)などからなり、厚みは例えば1μm程度である。これにより、フォトダイオードPD1が完成する。
【0033】
フォトダイオードPD1は、図10に示されるように、n−型半導体基板1を備えている。n−型半導体基板1の第1主面1a側には、p+型半導体領域3及びn+型半導体領域5が形成されており、n−型半導体基板1とp+型半導体領域3との間にはpn接合が形成されている。電極13は、コンタクトホールH1を通して、p+型半導体領域3に電気的に接触且つ接続されている。電極15は、コンタクトホールH2を通して、n+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続されている。
【0034】
n−型半導体基板1の第2主面1bには、不規則な凹凸10が形成されている。n−型半導体基板1の第2主面1b側には、アキュムレーション層11が形成されており、第2主面1bは光学的に露出している。第2主面1bが光学的に露出しているとは、第2主面1bが空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、第2主面1b上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。
【0035】
フォトダイオードPD1では、第2主面1bに不規則な凹凸10が形成されているために、図11に示されるように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、n−型半導体基板1内を長い距離進む。
【0036】
通常、Siの屈折率n=3.5に対して、空気の屈折率n=1.0である。フォトダイオードでは、光入射面に垂直な方向から光が入射した場合、フォトダイオード(シリコン基板)内で吸収されなかった光は、光入射面の裏面にて反射する光成分とフォトダイオードを透過する光成分に分かれる。フォトダイオードを透過した光は、フォトダイオードの感度には寄与しない。光入射面の裏面にて反射した光成分は、フォトダイオード内で吸収されれば、光電流となり、吸収されなかった光成分は、光入射面において、光入射面の裏面に到達した光成分と同様に、反射又は透過する。
【0037】
フォトダイオードPD1では、光入射面(第1主面1a)に垂直な方向から光Lが入射した場合、第2主面1bに形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、n−型半導体基板1内部で吸収される光成分もあれば、第1主面1aや側面に到達する光成分もある。
【0038】
第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は極めて高い。第1主面1aや側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、n−型半導体基板1の内部を長い距離進むうちに、n−型半導体基板1で吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0039】
このように、フォトダイオードPD1に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードPD1を透過することなく、走行距離が長くされて、n−型半導体基板1で吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードPD1では、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0040】
第2主面1bに規則的な凹凸を形成した場合、第1主面1aや側面に到達する光成分は、凹凸にて拡散されているものの、一様な方向に進むため、第1主面1aや側面に到達した光成分が第1主面1aや側面にて全反射する可能性は低くなる。このため、第1主面1aや側面、更には第2主面1bにて透過する光成分が増加し、フォトダイオードに入射した光の走行距離は短くなってしまう。このため、近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することは困難となる。
【0041】
ここで、第1実施形態による近赤外の波長帯域での分光感度特性の向上効果を確認するための実験を行なった。
【0042】
上述した構成を備えたフォトダイオード(実施例1と称する)と、n−型半導体基板の第2主面に不規則な凹凸を形成していないフォトダイオード(比較例1と称する)と、を作製し、それぞれの分光感度特性を調べた。実施例1と比較例1とは、パルスレーザ光の照射による不規則な凹凸の形成の点を除いて、同じ構成とされている。n−型半導体基板1のサイズは、6.5mm×6.5mmに設定した。p+型半導体領域3、すなわち光感応領域のサイズは、5.8mm×5.8mmに設定した。フォトダイオードに印加するバイアス電圧VRは、0Vに設定した。
【0043】
結果を図12に示す。図12において、実施例1の分光感度特性はT1で示され、比較例1の分光感度特性は特性T2で示されている。また、図12において、縦軸は分光感度(mA/W)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。一点鎖線にて示されている特性は、量子効率(QE)が100%となる分光感度特性を示し、破線にて示されている特性は、量子効率が50%となる分光感度特性を示している。
【0044】
図12から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では分光感度が0.2A/W(QE=25%)であるのに対して、実施例1では分光感度が0.6A/W(QE=72%)となっており、近赤外の波長帯域での分光感度が大幅に向上している。
【0045】
また、実施例1及び比較例1における、分光感度の温度特性についても確認した。ここでは、雰囲気温度を25℃から60℃に上昇させて分光感度特性を調べ、25℃での分光感度に対する60℃での分光感度の割合(温度係数)を求めた。結果を図13に示す。図13において、実施例1の温度係数の特性はT3で示され、比較例1の温度係数の特性は特性T4で示されている。また、図13において、縦軸は温度係数(%/℃)を示し、横軸は光の波長(nm)を示している。
【0046】
図13から分かるように、例えば1064nmにおいて、比較例1では温度係数が0.7%/℃であるのに対して、実施例1では温度係数が0.2%/℃となっており、温度依存性が低い。一般に、温度が上昇すると吸収係数の増大とバンドギャップエネルギーの減少により、分光感度が高くなる。実施例1では、室温の状態でも分光感度が十分に高いことから、温度上昇による分光感度の変化が比較例1に比して小さくなっている。
【0047】
フォトダイオードPD1では、n−型半導体基板1の第2主面1b側にアキュムレーション層11が形成されている。これにより、第2主面1b側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、アキュムレーション層11は、第2主面1b付近で光により発生したキャリアが当該第2主面1bでトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、pn接合部へ効率的に移動し、フォトダイオードPD1の光検出感度を更に向上することができる。
【0048】
第1実施形態では、アキュムレーション層11を形成した後に、n−型半導体基板1を熱処理している。これにより、n−型半導体基板1の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0049】
第1実施形態では、n−型半導体基板1を熱処理した後に、電極13,15を形成している。これにより、電極13,15に比較的融点の低い金属を用いる場合でも、熱処理により電極13,15が溶融するようなことはなく、熱処理の影響を受けることなく電極13,15を適切に形成することができる。
【0050】
第1実施形態では、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成している。これにより、不規則な凹凸10を適切で且つ容易に形成することができる。
【0051】
(第2実施形態)
図14〜図16を参照して、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図14〜図16は、第2実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0052】
第2実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図14参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば1μm程度である。
【0053】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図15参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0054】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図16参照)。これにより、フォトダイオードPD2が完成する。
【0055】
第2実施形態においても、第1実施形態と同様に、フォトダイオードPD2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0056】
第2実施形態では、アキュムレーション層11の厚みを、不規則な凹凸10の高低差よりも大きくしている。このため、アキュムレーション層11を形成した後に、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しても、アキュムレーション層11が確実に残ることとなる。したがって、アキュムレーション層11による作用効果を確保することができる。
【0057】
(第3実施形態)
図17〜図21を参照して、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図17〜図21は、第3実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0058】
第3実施形態の製造方法は、パッシベーション層9を形成するまでは、第1実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。パッシベーション層9を形成した後、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化する(図17参照)。n−型半導体基板1の薄化は、例えば水酸化カリウム溶液やTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム溶液)などを用いたアルカリエッチングによる異方性エッチングにより行なわれる。n−型半導体基板1の薄化された部分の厚みは、例えば100μm程度であり、周辺部分の厚みは、例えば300μm程度である。
【0059】
次に、n−型半導体基板1の周辺部分の厚みが所望の厚みとなるように、n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩する(図18参照)。所望の厚みは、例えば270μmである。
【0060】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図19参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0061】
次に、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図20参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0062】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理した後、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去して、電極13,15を形成する(図21参照)。これにより、フォトダイオードPD3が完成する。
【0063】
第3実施形態においても、第1及び第2実施形態と同様に、フォトダイオードPD3に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0064】
第3実施形態では、不規則な凹凸10を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD3を得ることができる。
【0065】
(第4実施形態)
図22〜図24を参照して、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法について説明する。図22〜図24は、第4実施形態に係るフォトダイオードの製造方法を説明するための図である。
【0066】
第4実施形態の製造方法は、n−型半導体基板1を薄化するまでは、第3実施形態の製造方法と同じであり、それまでの工程の説明を省略する。n−型半導体基板1を第2主面1b側から研摩して、n−型半導体基板1を所望の厚みにした後、n−型半導体基板1の薄化されている部分の第2主面1b側に、アキュムレーション層11を形成する(図22参照)。アキュムレーション層11の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。アキュムレーション層11の厚みは、例えば3μm程度である。
【0067】
次に、n−型半導体基板1の第2主面1bにパルスレーザ光PLを照射して、不規則な凹凸10を形成する(図23参照)。不規則な凹凸10の形成は、第1実施形態と同様にして行なう。
【0068】
次に、第1実施形態と同様に、n−型半導体基板1を熱処理する。そして、絶縁層7上に形成されたパッシベーション層9を除去した後、電極13,15を形成する(図24参照)。これにより、フォトダイオードPD4が完成する。
【0069】
第4実施形態においても、第1〜第3実施形態と同様に、フォトダイオードPD4に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。
【0070】
第4実施形態では、アキュムレーション層11を形成する前に、n−型半導体基板1におけるp+型半導体領域3に対応する部分を当該部分の周辺部分を残して第2主面1b側より薄化している。これにより、n−型半導体基板1の第1主面1a及び第2主面1b側をそれぞれ光入射面としたフォトダイオードPD4を得ることができる。
【0071】
(第5実施形態)
図25及び図26を参照して、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1の構成について説明する。図25は、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1を概略的に示す平面図である。図26は、図25に示したフォトダイオードアレイPDA1のXXVI−XXVI線に沿った断面構成を示す図である。
【0072】
フォトダイオードアレイPDA1は、基板22上に複数の半導体層及び絶縁層が積層されてなる。図25に示すようにフォトダイオードアレイPDA1は、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルCHがマトリクス状(本実施形態では4×4)に形成されてなるフォトンカウンティング用マルチチャンネルアバランシェフォトダイオードである。フォトダイオードアレイPDA1の上面側には、信号導線23、抵抗24、及び電極パッド25が設けられている。基板22は、例えば一辺が1mm程度の正方形状である。各光検出チャンネルCHは、例えば、正方形状である。
【0073】
信号導線23は、各光検出チャンネルCHから出力された信号を運ぶ読み出し部23aと、各抵抗24と読み出し部23aとを接続する接続部23bと、各光検出チャンネルCHの外周を囲むように配線されるチャンネル外周部23cとからなる。読み出し部23aは、当該読み出し部23aを挟んで隣接する2つの列に配置された光検出チャンネルCHそれぞれと接続されており、その一端において電極パッド25と接続されている。また、本実施形態ではフォトダイオードが4×4のマトリクス状に配置されているため、フォトダイオードアレイPDA1上には2本の読み出し部23aが配線されており、これらは電極パッド25に対して双方とも接続される。信号導線23は、例えばアルミニウム(Al)からなる。
【0074】
抵抗24は、一方の端部24a及びチャンネル外周部23cを介して光検出チャンネルCHごとに設けられており、他方の端部24b及び接続部23bを介して読み出し部23aに接続される。同一の読み出し部23aに接続される複数(本実施形態では8つ)の抵抗24は、当該読み出し部23aに対して接続される。抵抗24は、例えばポリシリコン(Poly−Si)からなる。
【0075】
次に、図26を参照してフォトダイオードアレイPDA1の断面構成について説明する。図26に示すように、フォトダイオードアレイPDA1は、導電型がn型(第1導電型)の半導体層を有する基板22と、基板22上に形成された導電型がp型(第2導電型)のp−型半導体層33、とp−型半導体層33上に形成された導電型がp型のp+型半導体領域34と、保護膜36と、p−型半導体層33に形成された導電型がn型(第1導電型)の分離部40と、保護膜36上に形成された上記の信号導線23及び抵抗24とを備える。被検出光は、図26の上面側から又は下面側から入射される。
【0076】
基板22は、基板部材Sと、基板部材S上に形成された絶縁膜31と、絶縁膜31上に形成されたn+型半導体層32とを有する。基板部材Sは、Si(シリコン)からなる。絶縁膜31は、例えばSiO2(酸化シリコン)からなる。n+型半導体層32は、Siからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。n+型半導体層32の厚さは、例えば1μm〜12μmである。
【0077】
p−型半導体層33は、不純物濃度が低い導電型がp型のエピタキシャル半導体層である。p−型半導体層33は、基板22との界面でpn接合を構成する。p−型半導体層33は、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍する増倍領域AMを各光検出チャンネルCHに対応して複数有する。p−型半導体層33の厚さは、例えば3μm〜5μmである。p−型半導体層33は、Siからなる。したがって、n+型半導体層32とp−型半導体層33とは、シリコン基板を構成している。
【0078】
p+型半導体領域34は、各光検出チャンネルCHの増倍領域AMに対応して、p−型半導体層33上に形成されている。すなわち、半導体層の積層方向(以下、単に積層方向という)でp+型半導体領域34の下方に位置するp−型半導体層33の基板22との界面近傍の領域が増倍領域AMである。p+型半導体領域34は、Siからなる。
【0079】
分離部40は、複数の光検出チャンネルCHの間に形成され、各光検出チャンネルCHを分離する。すなわち、分離部40は、各光検出チャンネルCHと1対1に対応してp−型半導体層33に増倍領域AMが形成されるように形成される。分離部40は、各増倍領域AMの周囲を完全に囲うように基板22上において2次元格子状に形成される。分離部40は、積層方向でp−型半導体層33の上面側から下面側まで貫通して形成されている。分離部40の不純物は例えばPからなり、不純物濃度が高い導電型がn型の半導体層である。分離部40を拡散により形成すると、長い熱処理時間が必要となるため、n+型半導体層32の不純物がエピタキシャル半導体層へ拡散して、pn接合の界面がせり上がることが考えられる。このせり上がり防止のため、分離部40にあたる領域の中央付近をトレンチエッチングした後、不純物の拡散を行って分離部40を形成してもよい。詳細は他の実施形態で説明するが、このトレンチ溝には、光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を吸収、又は反射する物質で埋めることによる遮光部を形成して、なだれ増倍による発光が隣接する光検出チャンネルに影響を及ぼして生じるクロストークを防止することもできる。
【0080】
p−型半導体層33、p+型半導体領域34、及び分離部40は、フォトダイオードアレイPDA1の上面側において平面を形成し、これらの上には保護膜36が形成されている。保護膜36は、例えばSiO2からなる絶縁層によって形成される。
【0081】
保護膜36上には、信号導線23及び抵抗24が形成されている。信号導線23の読み出し部23a及び抵抗24は、分離部40の上方に形成されている。
【0082】
なお、信号導線23がアノードとして機能し、カソードとして、図示は省略するが基板22の下面側(絶縁膜31を有していない側)の全面に透明電極層(例えばITO(Indium Tin Oxide)からなる層)を備えていてもよい。あるいは、カソードとして、電極部を表面側に引き出されるように形成してもよい。
【0083】
ここで、図27を参照して、各光検出チャンネルCHと信号導線23及び抵抗24との接続関係を説明する。図27は、各光検出チャンネルCHと信号導線23及び抵抗24との接続関係を概略的に説明するための図である。図27に示されるように、各光検出チャンネルCHのp+型半導体領域34と信号導線23(チャンネル外周部23c)とは直接接続されている。これにより、信号導線23(チャンネル外周部23c)とp−型半導体層33とは電気的に接続される。また、p−型半導体層33と抵抗24の一端部24aとは、信号導線23(チャンネル外周部23c)を介して接続され、抵抗24は他の一端部24bがそれぞれ接続部23bを介して読み出し部23aに対して接続される。
【0084】
基板22は、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域が基板部材S側から薄化されて、基板部材Sにおける複数の光検出チャンネルCHが形成された領域に対応する部分が除去されている。薄化された領域の周囲には、基板部材Sが枠部として存在している。なお、上記枠部も除去され、基板22は、全領域が薄化された、すなわち基板部材S全体が除去された構成を有していてもよい。基板部材Sの除去は、エッチング(例えば、ドライエッチングなど)や、研磨などにより行うことができる。ドライエッチングにより基板部材Sを除去する場合、絶縁膜31はエッチングストップ層としても機能する。基板部材Sが除去されることにより露出する絶縁膜31は、後述するようにして除去される。
【0085】
n+型半導体層32の表面には、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域全体にわたって、不規則な凹凸10が形成されている。n+型半導体層32の表面における不規則な凹凸10が形成された領域は、光学的に露出している。n+型半導体層32の表面が光学的に露出しているとは、n+型半導体層32の表面が空気などの雰囲気ガスと接しているのみならず、n+型半導体層32の表面上に光学的に透明な膜が形成されている場合も含む。不規則な凹凸10は、各光検出チャンネルCHに対向している領域のみに形成されていてもよい。
【0086】
不規則な凹凸10は、基板部材Sが除去されることにより露出している絶縁膜31に、上述した実施形態と同様に、パルスレーザ光を照射することにより形成される。すなわち、露出している絶縁膜31にパルスレーザ光が照射されると、絶縁膜31が除去されると共に、n+型半導体層32の表面がパルスレーザ光に荒らされ、不規則な凹凸10が形成される。パルスレーザ光を照射するパルスレーザ発生装置は、ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ発生装置を用いることができる。不規則な凹凸10は、n+型半導体層32の表面に直交する方向に対して交差する面を有している。凹凸10の高低差は、例えば0.5〜10μm程度であり、凹凸10における凸部の間隔は0.5〜10μm程度である。ピコ秒〜フェムト秒パルスレーザ光のパルス時間幅は例えば50fs〜2ps程度であり、強度は例えば4〜16GW程度であり、パルスエネルギーは例えば200〜800μJ/pulse程度である。より一般的には、ピーク強度は、3×1011〜2.5×1013(W/cm2)、フルエンスは、0.1〜1.3(J/cm2)程度である。
【0087】
パルスレーザ光を照射して不規則な凹凸10を形成した後に、基板22を熱処理(アニール)することが好ましい。例えば、基板22を、N2ガスといった雰囲気下で、800〜1000℃程度の範囲で、0.5〜1.0時間程度にわたって加熱する。上記熱処理により、n+型半導体層32の結晶性が回復し、暗電流の増加等の不具合を防ぐことができる。
【0088】
このように構成されたフォトダイオードアレイPDA1をフォトンカウンティングに用いる場合、ガイガーモードと呼ばれる動作条件下で動作させる。このガイガーモード動作時には、各光検出チャンネルCHにブレークダウン電圧よりも高い逆電圧(例えば50V以上)が印加される。この状態で上面側から各光検出チャンネルCHに被検出光が入射すると、被検出光が各光検出チャンネルCHにおいて吸収されてキャリアが発生する。発生したキャリアは各光検出チャンネルCH内の電界に従って加速しながら移動し、各増倍領域AMで増倍される。そして、増倍されたキャリアは抵抗24を介して信号導線23により外部へと取り出され、その出力信号の波高値に基づいて検出される。フォトンを検出したチャンネルからは何れも同量の出力が得られるので、全チャンネルからの総出力を検出することでフォトダイオードアレイPDA1のうちのいくつの光検出チャンネルCHから出力があったかがカウントされる。したがって、フォトダイオードアレイPDA1では、被検出光の一回の照射によって、フォトンカウンティングがなされる。
【0089】
ところで、フォトダイオードアレイPDA1では、n+型半導体層32の表面に不規則な凹凸10が形成されているために、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、フォトダイオードアレイPDA1内を長い距離進む。
【0090】
例えば、フォトダイオードアレイPDA1を表面入射型フォトダイオードアレイとして用い、保護膜36側からフォトダイオードアレイPDA1に光が入射した場合、n+型半導体層32の表面に形成された不規則な凹凸10に到達すると、凹凸10からの出射方向に対して16.6°以上の角度にて到達した光成分は、凹凸10にて全反射される。凹凸10は、不規則に形成されていることから、出射方向に対して様々な角度を有しており、全反射した光成分は様々な方向に拡散する。このため、全反射した光成分は、各光検出チャンネルCHで吸収される光成分もあれば、保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達する光成分もある。
【0091】
保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達した光成分が保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面にて全反射する可能性は極めて高い。保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光は、フォトダイオードアレイPDA1の内部を長い距離進むうちに、各光検出チャンネルCHで吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0092】
フォトダイオードアレイPDA1を裏面入射型フォトダイオードアレイとして用い、n+型半導体層32の表面側からフォトダイオードアレイPDA1に光が入射した場合、入射した光は、凹凸10により散乱され、フォトダイオードアレイPDA1内を様々な方向に進む。保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達する光成分は、凹凸10での拡散により様々な方向に進むため、保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面に到達した光成分が各面にて全反射する可能性は極めて高い。保護膜36側の表面やn+型半導体層32の側面にて全反射した光成分は、異なる面での全反射や凹凸10での反射、散乱、又は拡散を繰り返し、その走行距離が更に長くなる。このように、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光は凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、フォトダイオードアレイPDA1内を長い距離進み、各光検出チャンネルCHで吸収され、光電流として検出されることとなる。
【0093】
このように、フォトダイオードアレイPDA1に入射した光Lは、その大部分がフォトダイオードアレイPDA1を透過することなく、走行距離が長くされて、各光検出チャンネルCHで吸収されることとなる。したがって、フォトダイオードアレイPDA1では、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性が向上する。
【0094】
第5実施形態では、n+型半導体層32の表面に不規則な凹凸10が形成されている。このため、不規則な凹凸10が形成された上記表面側で光によらずに発生する不要キャリアが再結合され、暗電流を低減できる。また、n+型半導体層32は、アキュムレーション層として機能し、n+型半導体層32の上記表面付近で光により発生したキャリアが該表面でトラップされるのを抑制する。このため、光により発生したキャリアは、増倍領域AMへ効率的に移動し、フォトダイオードアレイPDA1の光検出感度を向上することができる。
【0095】
第5実施形態では、n+型半導体層32における複数の光検出チャンネルCHの間に対応する表面も、不規則な凹凸10が形成されていると共に、光学的に露出している。このため、複数の光検出チャンネルCHの間に入射した光も、不規則な凹凸10にて反射、散乱、又は拡散されて、いずれかの光検出チャンネルCHで吸収される。したがって、光検出チャンネルCHの間において検出感度が低下することはなく、フォトダイオードアレイPDA1の光検出感度がより一層向上する。ところで、第5実施形態では、複数の光検出チャンネルCHが形成されているが、各光検出チャンネルCHは光の入射位置を検出するものでは無く、出力として各光検出チャンネルCHの出力の和をとる。このため、各光検出チャンネルCH間のクロストークは問題にならず、入射した光はいずれかの光検出チャンネルCHで検出されればよい。
【0096】
第5実施形態では、n+型半導体層32の厚みが、不規則な凹凸10の高低差よりも大きい。このため、n+型半導体層32によるアキュムレーション層としての作用効果を確実に確保することができる。
【0097】
また、第5実施形態では、フォトダイオードアレイPDA1では、pn接合は、基板22のn+型半導体層32と当該基板22のn+型半導体層32上に形成されたエピタキシャル半導体層であるp−型半導体層33とによって構成されている。また、増倍領域AMはpn接合が実現されているp−型半導体層33に形成され、各増倍領域AMの各光検出チャンネルCHへの対応は光検出チャンネルCH間に形成された分離部40によって実現されている。pn接合面は、n+型半導体層32とp−型半導体層33との界面と、分離部40とp−型半導体層33との界面とから構成されており、高濃度不純物領域が凸となり電界が高くなる領域が存在しなくなっている。したがって、フォトダイオードアレイPDA1は、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA1では各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA1はその開口率を格段に高くすることが可能となる。
【0098】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA1では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0099】
また、各光検出チャンネルCH間は分離部40によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
【0100】
また、ガイガーモードで動作させ、フォトンが入射された光検出チャンネルと入射しないチャンネルとの間で電圧差が大きくなった場合にも、光検出チャンネルCH間には分離部40が形成されているため、十分にチャンネル間を分離することができる。
【0101】
フォトダイオードアレイPDA1では、信号導線23の読み出し部23aが分離部40の上方に形成されている。そのため、信号導線23が増倍領域AM上方、すなわち光検出面上を横切ることが抑制されるため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。また、フォトダイオードアレイPDA1では、抵抗24も分離部40の上方に形成されているため、開口率はさらにより一層向上される。
【0102】
また、n型の半導体基板を用い、その上にp型のエピタキシャル半導体層を形成した場合、n型の半導体基板で発生したホールの一部が遅れて増倍領域に入りアフターパルスとなってしまうという問題が発生することを本願発明者はアフターパルスの波長依存性から見出した。こうした問題に対し、フォトダイオードアレイPDA1では、複数の光検出チャンネルCHが形成された領域において、基板部材Sが除去されているので、アフターパルスを抑制することが可能となる。
【0103】
なお、第5実施形態における分離部40には種々の変形を適用することができる。図28は、第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1の第1変形例の断面構成を概略的に示す図である。第1変形例に係るフォトダイオードアレイでは、複数(本変形例では2つ)の分離部40が光検出チャンネルCHの間に形成されている。
【0104】
図29は、本実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1の第2変形例の断面構成を概略的に示す図である。第2変形例に係るフォトダイオードアレイでは、分離部40が、積層方向でp−型半導体層33の上面側から下面側まで貫通することなく上面(被検出光入射面)近傍にのみ形成されている。
【0105】
また、上記実施形態では、エピタキシャル半導体層を第2導電型としたが、エピタキシャル半導体層を第1導電型として、当該半導体層中に第2導電型の半導体領域を設けて、第1導電型のエピタキシャル半導体層と第2導電型の半導体領域とでpn接合を構成してもよい。
【0106】
フォトダイオードアレイPDA1は、図39及び図40に示されるように、基板WBに実装される。図39では、フォトダイオードアレイPDA1は、接着等により基板WBに固定されており、基板WBに形成された配線とワイヤーボンデングにより電気的に接続されている。図40では、フォトダイオードアレイPDA1は、パンプにより基板WBに固定されていると共に、基板WBに形成された配線に電気的に接続されている。フォトダイオードアレイPDA1と基板WBとをバンプにより接続する場合、フォトダイオードアレイPDA1と基板WBとの間にアンダーフィル樹脂を充填することが好ましい。この場合には、フォトダイオードアレイPDA1と基板WBとの接続強度を確保することができる。
【0107】
図39において、フォトダイオードアレイPDA1を裏面入射型フォトダイオードアレイとして用いる場合、基板WBは光学的に透明であることが好ましい。同じく、図40において、フォトダイオードアレイPDA1を表面入射型フォトダイオードアレイとして用いる場合も、基板WBは光学的に透明であることが好ましい。このとき、充填されるアンダーフィル樹脂も光学的に透明であることが好ましい。
【0108】
(第6実施形態)
図30を参照して、第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2の構成について説明する。図30は、第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2の断面構成を概略的に示す図である。第6実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA2は、分離部40が遮光部を有している点で第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1と異なる。
【0109】
図30に示すように、分離部40は、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域(可視から近赤外)の光を吸収する物質からなる遮光部42を含む。遮光部42は、p−型半導体層33の上面側から下面側に向かって伸びる芯のように分離部40内に埋め込まれて形成されている。遮光部42は、例えばホトレジスト内に黒色の染料や絶縁処理したカーボンブラック等の顔料を混入させた黒色ホトレジストやタングステン等の金属からなる。ただし、遮光部42を構成する物質が絶縁物質でない場合(例えば、タングステン等の金属)には、SiO2等の絶縁膜で当該遮光部42を被膜する必要がある。なお、第5実施形態でも述べているが、分離部40を拡散により形成すると、長い熱処理時間が必要となるため、n+型半導体層32の不純物がエピタキシャル半導体層へ拡散して、pn接合の界面がせり上がることが考えられる。このせり上がり防止のため、分離部40にあたる領域の中央付近をトレンチエッチングした後、不純物の拡散を行って分離部40を形成してもよい。図30において示すように、不純物拡散を行った後は、n+型半導体層32と分離部40がつながった形となる。残るトレンチ溝には、上述のように光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を吸収する物質(後述するように、光検出チャンネルが吸収する波長帯域の光を反射する物質でもよい)で埋めることによる遮光部を形成して、なだれ増倍による発光が隣接する光検出チャンネルに影響を及ぼして生じるクロストークを防止することもできる。
【0110】
第6実施形態においても、第5実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA2に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。また、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイPDA2の光検出感度を向上することができる。
【0111】
また、フォトダイオードアレイPDA2でも、フォトダイオードアレイPDA1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA2でも各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA2はその開口率を高くすることが可能となる。
【0112】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA2では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0113】
また、各光検出チャンネルCH間は分離部40によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
【0114】
フォトダイオードアレイPDA2でも、信号導線23の読み出し部23aが分離部40の上方に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
【0115】
また、各分離部40は、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域の光を吸収する物質からなる遮光部42を含む。したがって、被検出光は遮光部で吸収されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。さらに、遮光部42は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネルCHに影響を与えないように、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を吸収する物質からなるので、クロストークの発生を良好に抑制することが可能になる。
【0116】
なお、遮光部42は、可視から近赤外の光を吸収する物質に限らず、可視から近赤外の光を反射する物質であってもよい。この場合であっても、被検出光は遮光部で反射されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。さらに、遮光部42は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネルCHに影響を与えないように、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を反射する物質からなるので、クロストークの発生を良好に抑制することが可能になる。
【0117】
また、遮光部42は、可視から近赤外の光を吸収又は反射する物質に限らず、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域の光を吸収又は反射する物質であればよい。ただし、遮光部42は、なだれ増倍によって発生する光が隣接する光検出チャンネルCHに影響を与えないように、光検出チャンネルCHによって検出される被検出光の波長帯域、特になだれ増倍によって発生する可視〜近赤外の波長帯域の光を吸収又は反射する物質からなることが好ましい。
【0118】
なお、遮光部42は、分離部40よりも低い屈折率の物質からなっていてもよい。これらの場合であっても、光は遮光部で反射されるため、クロストークの発生を良好に抑制することが可能となる。
【0119】
(第7実施形態)
図31を参照して、第7実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3の構成について説明する。図31は、第7実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3の断面構成を概略的に説明するための図である。第7実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA3は、信号導線23が窒化シリコン膜上に形成されている点で第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1と異なる。
【0120】
図31に示すように、フォトダイオードアレイPDA3は、導電型がn型(第1導電型)の半導体層を有する基板22と、基板22上に形成された導電型がp型(第2導電型)のp型半導体層35、とp型半導体層35上に形成された導電型がp型のp+型半導体領域34と、保護膜36a,36bと、p型半導体層35に形成された導電型がn型(第1導電型)の分離部40と、アルミニウムからなる信号導線23と、例えばPoly−Siからなる抵抗24とを備える。
【0121】
基板22は、n+型の基板部材(不図示)と、当該基板部材上に形成されたn型半導体層32とを有する。
【0122】
p型半導体層35は、不純物濃度がp+型半導体領域34より低い導電型がp型のエピタキシャル半導体層である。p型半導体層35は、基板22のn型半導体層32との界面でpn接合を構成する。p型半導体層35は、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍する増倍領域AMを各光検出チャンネルCHに対応して複数有する。p型半導体層35は、Siからなる。
【0123】
p型半導体層35、p+型半導体領域34、及び分離部40は、フォトダイオードアレイPDA3の上面側において平面を形成し、これらの上には保護膜36a、36bが形成されている。保護膜36aは酸化シリコン膜(SiO2膜)からなる絶縁膜によって、保護膜36bは窒化シリコン(SiN膜あるいはSi3N4膜)からなる絶縁膜によってそれぞれ形成される。
【0124】
図31に示されるように、分離部40上に、保護膜36a、抵抗24、保護膜36b、及び信号導線23がこの順で積層されている。具体的には、分離部40上に保護膜36aが積層されている。保護膜36a上には、抵抗24が積層されている。保護膜36a及び抵抗24上には、保護膜36bが各抵抗24の一部を除いて積層されている。保護膜36b及び保護膜36bがその上に積層されていない抵抗24の一部の上には、信号導線23が電気的接続のため、積層されている。具体的には、抵抗24間には信号導線23の読み出し部23aが、抵抗24上には電気的接続のため、接続部23b又はチャンネル外周部23cへの電気的接続としての信号導線23がそれぞれ積層される。
【0125】
さらに、図31に示されるように、p+型半導体領域34上には一部を除いて保護膜36bが積層されている。保護膜36bが積層されていないp+型半導体領域34の当該一部の上及びp+型半導体領域34上に積層された保護膜36bの一部の上には、電気的接続のために信号導線23のチャンネル外周部23cが積層されている。
【0126】
第7実施形態においても、第5及び第6実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA3に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。また、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイPDA3の光検出感度を向上することができる。
【0127】
フォトダイオードアレイPDA3でも、フォトダイオードアレイPDA1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA3でも各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA3はその開口率を高くすることが可能となる。
【0128】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA3では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0129】
また、光検出チャンネルCH間は分離部40によって分離されているため、クロストークを良好に抑制することが可能となる。
【0130】
フォトダイオードアレイPDA3でも、信号導線23の読み出し部23aが分離部40の上方に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
【0131】
信号導線23は、アルミニウムからなるため、例えば酸化膜上に形成された場合、高電圧の印加によってアルミニウムがその下の膜に染みこんでしまうという問題が発生する。こうした問題に対し、フォトダイオードアレイPDA3では、信号導線23は窒化シリコン膜からなる保護膜36b上に形成されている。そのため、フォトダイオードアレイPDA3に高電圧を印加したとしても、アルミニウムがその下の膜(保護膜36b)に染みこむことが抑制される。
【0132】
加えて、信号導線23の読み出し部23aの下には、保護膜36bと保護膜36aもしくは抵抗24が積層されている。そのため、高電圧の印加によってアルミニウムが分離部40及びp型半導体層35に染みこむことが良好に抑制されている。
【0133】
このように、フォトダイオードアレイPDA3では、高電圧を印加した場合であっても、アルミニウムが光検出チャンネルCH及び分離部40に侵入することが好適に抑制される。
【0134】
例えばポリシリコン(Poly−Si)からなる抵抗24は保護膜36a上に形成されるとともに、当該抵抗24上には保護膜36b及び信号導線23が形成されている。
【0135】
なお、n型半導体層32の代わりにp型の半導体層を用いてもよい。この場合、当該p型の半導体層とn+型の基板部材S(基板22)との間でpn接合が構成され、このp型の半導体層において増倍部AMが形成されることとなる。
【0136】
(第8実施形態)
図32を参照して、第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA4の構成について説明する。図32は、第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA4の断面構成を概略的に示す図である。第8実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA4は、分離部40を備えていない点で第5実施形態に係るフォトダイオードアレイPDA1と異なる。
【0137】
図32に示すように、p−型半導体層33は複数の増倍領域AMを、各増倍領域AMと各光検出チャンネルCHとが互いに対応するように有する。各光検出チャンネルCH間には、信号導線23及び抵抗24が形成されている。
【0138】
第8実施形態においても、第5〜第7実施形態と同様に、フォトダイオードアレイPDA4に入射した光の走行距離が長くなり、光が吸収される距離も長くなるので、赤色〜近赤外の波長帯域での分光感度特性を向上することができる。また、暗電流を低減できると共に、フォトダイオードアレイPDA4の光検出感度を向上することができる。
【0139】
フォトダイオードアレイPDA4でも、フォトダイオードアレイPDA1同様、ガイガーモードで動作させたときにエッジブレークダウンが発生するpn接合の端部(エッジ)を有さない。そのため、フォトダイオードアレイPDA4でも各光検出チャンネルCHのpn接合に対してガードリングを設ける必要がない。これにより、フォトダイオードアレイPDA4はその開口率を高くすることが可能となる。さらに、フォトダイオードアレイPDA4は、分離部を有さないことにより、より一層高い開口率を示すことができる。
【0140】
また、開口率を高くすることで、フォトダイオードアレイPDA4では検出効率を大きくすることも可能となる。
【0141】
フォトダイオードアレイPDA4では、信号導線23の読み出し部23aが各光検出チャンネルCH間に形成されているため、開口率はより一層向上される。さらに、暗電流の抑制にも効果的であると考えられる。
【0142】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0143】
第1〜第4実施形態では、第2主面1bの全面にわたって、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成しているが、これに限られない。例えば、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域のみに、パルスレーザ光を照射して、不規則な凹凸10を形成してもよい。
【0144】
第1〜第4実施形態では、電極15をn−型半導体基板1の第1主面1a側に形成されたn+型半導体領域5に電気的に接触且つ接続しているが、これに限られない。例えば、電極15をn−型半導体基板1の第2主面1b側に形成されたアキュムレーション層11に電気的に接触且つ接続してもよい。この場合、n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域外に、電極15を形成することが好ましい。n−型半導体基板1の第2主面1bにおけるp+型半導体領域3に対向する領域に電極15を形成すると、第2主面1bに形成されている不規則な凹凸10が電極15により塞がれ、近赤外の波長帯域における分光感度が低下するという事象が生じるためである。
【0145】
第1〜第4実施形態に係るフォトダイオードPD1〜PD4におけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
【0146】
第5〜第8実施形態において、フォトダイオードアレイに形成される光検出チャンネルの数は、上記実施形態における数(4×4)に限定されない。光検出チャンネルCH間に形成される分離部40の数も、上記実施形態及び変形例で示した数に限られず、例えば3つ以上であってもよい。また、信号導線23は、分離部40の上方に形成されていなくてもよい。抵抗24も分離部40の上方に形成されていなくてもよい。また、各層等は、上記実施形態及び変形例で例示したものに限られない。上述したフォトダイオードアレイPDA1〜PDA4におけるp型及びn型の各導電型を上述したものとは逆になるよう入れ替えてもよい。
【0147】
図33は図26に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図34は図28に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図35は図29に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図36は図30に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図37は図31に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図であり、図38は図32に示した実施形態の層構造の変形例に係るフォトダイオードアレイの断面構成を概略的に示す図である。これらの基本的な平面構成と接続関係は、図25に示したものと同一である。
【0148】
上述のように、図33から図38に示した構造では、図26、図28、図29、図30、図31、図32のp型半導体層33又はp型半導体層35に代えて、n型半導体層R33又はR35を用いている。この場合、pn接合は、低濃度のn型半導体層R33(又はR35)とp型半導体領域34との界面に形成され、pn接合から空乏層がn型半導体層R33(又はR35)に向けて広がり、空乏層に対応して増倍領域AMがpn接合界面からn型半導体層R33(又はR35)に向かって形成されている。他の構造と作用は、上述のものと同一である。
【0149】
これらのフォトダイオードアレイPDA1〜PDA4は、被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルCHがn型半導体層32を有するn型の基板22に形成されてなる。被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルCHが、第1導電型のn+型である半導体層32(S)を有する基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、基板22と、基板22の第1導電型の半導体層32上に形成され、被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域AMを当該各増倍領域AMと各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のn−型であるエピタキシャル半導体層R33(又はR35)と、第1導電型のエピタキシャル半導体層R33(又はR35)中に形成され、当該エピタキシャル半導体層R33(又はR35)との界面でpn接合を構成する第2導電型のp+型である半導体領域34と、2つの端部を有し、光検出チャンネルCHごとに設けられ、一方の端部24aを介してエピタキシャル半導体層R33(又はR35)中の第2導電型の半導体領域34と電気的に接続されると共に他方の端部24bを介して信号導線23に接続される複数の抵抗24とを備えている。
【0150】
抵抗24は、図25に示したように、一方の端部24a及びチャンネル外周部23cを介して光検出チャンネルCHごとに設けられており、他方の端部24b及び接続部23bを介して読み出し部23aに接続される。同一の読み出し部23aに接続される複数の抵抗24は、当該読み出し部23aに対して接続される。
【0151】
これらのフォトダイオードアレイでは、pn接合は、基板上の第1導電型のエピタキシャル半導体層R33(又はR35)と当該エピタキシャル半導体層R33(又はR35)中に形成された第2導電型の半導体領域34とによって構成されている。また、増倍領域AMはpn接合が実現されているエピタキシャル半導体層R33(又はR35)に形成され、各光検出チャンネルに対応する増倍領域AMはこのエピタキシャル半導体層R33(又はR35)にある。
【産業上の利用可能性】
【0152】
本発明は、半導体光検出素子及び光検出装置に利用できる。
【符号の説明】
【0153】
1…n−型半導体基板、1a…第1主面、1b…第2主面、3…p+型半導体領域、5…n+型半導体領域、10…不規則な凹凸、11…アキュムレーション層、13,15…電極、22…基板、23…信号導線、24…抵抗、25…電極パッド、31…絶縁膜、32…n+型半導体層、33…p−型半導体層、34…p+型半導体領域、35…p型半導体層、36…保護膜、40…分離部、42…遮光部、AM…増倍領域、CH…光検出チャンネル、S…基板部材、PL…パルスレーザ光、PD1〜PD4…フォトダイオード、PDA1〜PDA4…フォトダイオードアレイ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、
第1導電型の前記半導体層上に形成され、当該半導体層との界面でpn接合を構成するとともに、前記被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と前記各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第2導電型のエピタキシャル半導体層と、
2つの端部を有し、前記光検出チャンネルごとに設けられ、一方の前記端部を介して前記エピタキシャル半導体層と電気的に接続されると共に他方の前記端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する前記表面は、光学的に露出し、
不規則な前記凹凸が形成された前記表面が光入射面とされて、不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項2】
被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、
第1導電型の前記半導体層上に形成され、前記被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と前記各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のエピタキシャル半導体層と、
前記第1導電型のエピタキシャル半導体層中に形成され、当該エピタキシャル半導体層との界面でpn接合を構成する第2導電型の半導体領域と、
2つの端部を有し、前記光検出チャンネルごとに設けられ、一方の前記端部を介して前記エピタキシャル半導体層中の前記第2導電型の半導体領域と電気的に接続されると共に他方の前記端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する前記表面は、光学的に露出し、
不規則な前記凹凸が形成された前記表面が光入射面とされて、不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項3】
第1導電型の前記半導体層における前記複数の光検出チャンネルの間に対応する表面は、不規則な凹凸が更に形成されていると共に、光学的に露出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項4】
前記シリコン基板は、複数の光検出チャンネルが形成されている部分が該部分の周辺部分を残して薄化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項5】
第1導電型の前記半導体層の厚みが、不規則な前記凹凸の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項6】
不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射する光が、不規則な前記凹凸により散乱されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項7】
不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射し、前記シリコン基板内を進む光が、不規則な前記凹凸により反射、散乱、又は拡散されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項1】
被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、
第1導電型の前記半導体層上に形成され、当該半導体層との界面でpn接合を構成するとともに、前記被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と前記各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第2導電型のエピタキシャル半導体層と、
2つの端部を有し、前記光検出チャンネルごとに設けられ、一方の前記端部を介して前記エピタキシャル半導体層と電気的に接続されると共に他方の前記端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する前記表面は、光学的に露出し、
不規則な前記凹凸が形成された前記表面が光入射面とされて、不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項2】
被検出光を入射させる複数の光検出チャンネルが第1導電型の半導体層を有するシリコン基板に形成されてなるフォトダイオードアレイであって、
第1導電型の前記半導体層上に形成され、前記被検出光の入射によって生じたキャリアをアバランシェ増倍させる複数の増倍領域を当該各増倍領域と前記各光検出チャンネルとが互いに対応するように有する第1導電型のエピタキシャル半導体層と、
前記第1導電型のエピタキシャル半導体層中に形成され、当該エピタキシャル半導体層との界面でpn接合を構成する第2導電型の半導体領域と、
2つの端部を有し、前記光検出チャンネルごとに設けられ、一方の前記端部を介して前記エピタキシャル半導体層中の前記第2導電型の半導体領域と電気的に接続されると共に他方の前記端部を介して信号導線に接続される複数の抵抗と、を備え、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する表面に不規則な凹凸が形成されており、
第1導電型の前記半導体層における少なくとも前記各光検出チャンネルに対応する前記表面は、光学的に露出し、
不規則な前記凹凸が形成された前記表面が光入射面とされて、不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射した光が前記シリコン基板内を進む、裏面入射型であることを特徴とするフォトダイオードアレイ。
【請求項3】
第1導電型の前記半導体層における前記複数の光検出チャンネルの間に対応する表面は、不規則な凹凸が更に形成されていると共に、光学的に露出していることを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項4】
前記シリコン基板は、複数の光検出チャンネルが形成されている部分が該部分の周辺部分を残して薄化されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項5】
第1導電型の前記半導体層の厚みが、不規則な前記凹凸の高低差よりも大きいことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項6】
不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射する光が、不規則な前記凹凸により散乱されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【請求項7】
不規則な前記凹凸が形成された前記表面から入射し、前記シリコン基板内を進む光が、不規則な前記凹凸により反射、散乱、又は拡散されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のフォトダイオードアレイ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図8】
【公開番号】特開2013−65911(P2013−65911A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−6068(P2013−6068)
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2009−136419(P2009−136419)の分割
【原出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【分割の表示】特願2009−136419(P2009−136419)の分割
【原出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]