説明

フォトマスクの製造方法及び半導体装置の製造方法

【課題】 的確に遮光枠を形成することが可能なフォトマスクの製造方法を提供する。
【解決手段】 実施形態に係るフォトマスクの製造方法は、マスクパターンが形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを用意する工程S12と、マスクパターンが形成された領域の周囲の領域に選択的に遮光材を塗布して遮光枠を形成する工程S15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、フォトマスクの製造方法及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EUV光を用いたリソグラフィに用いる反射型のハーフトーン型位相シフトマスクが提案されている。この反射型のハーフトーン型位相シフトマスクでは、基板上に形成された反射膜と、反射膜上に形成された吸収層とを有するマスクブランクが用いられる。反射膜は露光光を反射する多層膜で形成され、吸収層は露光光を吸収する材料で形成される。このようなマスクブランクに対し、吸収層を部分的に除去することで、反射型のハーフトーン型位相シフトマスクが形成される。
【0003】
上述したような反射型マスクを用いたフォトリソグラフィでは、マスク表面に垂直な方向に対して数度程度傾いた方向から露光光が入射する。そのため、パターンの寸法精度の悪化を防止するために、吸収層の厚さをできるだけ薄くすることが望ましい。しかしながら、吸収層を薄くすると、数パーセント程度の露光光が吸収層を透過してしまう。その結果、多層反射膜で露光光が反射し、以下のような問題が生じる。
【0004】
フォトリソグラフィでは、半導体ウェハ表面の複数箇所にマスクパターンが転写される。そのため、隣接する転写領域の境界部には複数回の露光が行われることになる。例えば、隣接する4つの転写領域がオーバーラップした部分では、4回の露光が行われる。そのため、境界部(オーバーラップ部分)に過剰な露光光が照射されてしまい、高精度のパターンが得られないという問題が生じる。
【0005】
上記のような問題に対し、マスクパターン(転写パターン)が形成された領域の周囲の領域に遮光枠を形成することが提案さている。具体的には、レジストをマスクとして用い、プラズマエッチングによって遮光枠領域の多層膜を除去して基板表面を露出させる。遮光枠領域では多層膜が除去されて基板表面が露出するため、遮光枠領域での反射を抑制することができる。その結果、上述したような境界部での過剰露光の問題を防止することが可能である。
【0006】
しかしながら、上述したような方法では、以下のような問題が生じる。すなわち、マスクパターンが形成された領域にレジストを塗布するため、レジストを除去する際にマスクパターン領域にレジストが残って欠陥の原因になる。また、異なった材料で形成された多層膜を除去するため、加工精度を確保することが難しいという問題もある。また、多層膜を除去する際に基板に応力変化が生じるという問題もある。さらに、遮光枠領域と非遮光枠領域との境界で多層反射膜の側面が露出するため、洗浄の際に薬液によって多層反射膜の側面が浸食され、パーティクルが発生するといった問題もある。
【0007】
なお、境界部に過剰な露光光が照射されて、高精度のパターンが得られないという問題は、反射型マスクのみならず、透過型マスクでも生じ得る。
【0008】
以上のように、フォトマスクの製造に際しては、マスクパターン領域(転写パターン領域)の周囲の領域に遮光枠を形成することが望ましいが、従来は的確に遮光枠を形成することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−212220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
的確に遮光枠を形成することが可能なフォトマスクの製造方法等を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
実施形態に係るフォトマスクの製造方法は、マスクパターンが形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを用意する工程と、前記マスクパターンが形成された領域の周囲の領域に選択的に遮光材を塗布して遮光枠を形成する工程と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の概略を示したフローチャートである。
【図2】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した断面図である。
【図3】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した断面図である。
【図4】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した断面図である。
【図5】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した断面図である。
【図6】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した平面図である。
【図7】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した断面図である。
【図8】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した断面図である。
【図9】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した斜視図である。
【図10】実施形態に係るフォトマスクの製造方法の一部を示した断面図である。
【図11】実施形態に係る半導体装置の製造方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施形態を図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、実施形態に係るフォトマスクの製造方法の概略を示したフローチャートである。
【0015】
まず、反射型のハーフトーン型位相シフトマスクを製造するためのマスクブランクを用意する(S11)。
【0016】
図2は、上記マスクブランクの構成を示した断面図である。図2に示すように、ガラス基板11上に多層反射膜12が形成されている。この多層反射膜12は、モリブデン(Mo)とシリコン(Si)が交互に積層されたものであり、露光光(EUV光)を反射するものである。多層反射膜12上には、中間層13が形成されている。中間層13上には、吸収層14が形成されている。この吸収層14は、露光光(EUV光)を吸収するものである。また、ガラス基板11の裏面には導電膜15が形成されている。
【0017】
次に、上述したマスクブランクを用いて、マスクパターン(転写パターン)が形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを作製する(S12)。以下、図3〜図5に示した断面図を参照して、マスクパターンの形成方法について説明する。
【0018】
まず、図3に示すように、図2に示したマスクブランク上にEBレジスト21を塗布する。さらに、EBレジストに対して、EB露光、ベーク及び現像を行い、図4に示すように、レジストパターン21を形成する。次に、レジストパターン21をマスクとして用いて、吸収層14をエッチングする。さらに、レジストパターン21を除去することで、図5に示すように、回路パターンを形成するためのマスクパターン(転写パターン)22が得られる。
【0019】
次に、以下のようにして、マスクパターン22が形成された領域の周囲の領域に遮光枠を形成する。
【0020】
まず、遮光枠のレイアウトデータを取得する(S13)。次に、レイアウトデータに基づいて、遮光材を塗布すべき領域の位置制御情報を生成する(S14)。図6は、遮光材を塗布すべき領域、すなわち遮光枠形成領域31を示した平面図であり、図7は、遮光枠形成領域31を示した断面図である。
【0021】
次に、生成された位置制御情報に基づいて、マスクパターンが形成された領域の周囲の領域に選択的に遮光材を塗布して、遮光枠を形成する(S15)。以下、図8〜図10を参照して、遮光材の塗布方法について説明する。遮光材の塗布は、インクジェット法によって行われる。
【0022】
まず、図8に示すように、S14のステップで生成された位置制御情報に基づき、インクジェット用のノズル32をスタート位置に移動させる。続いて、図9に示すように、位置制御情報に基づいてノズル32を移動させながら、ノズル32から遮光枠形成領域31上に遮光材33を吐出する。
【0023】
遮光材は、所定の液体中に金属粒子を分散させたものである。金属粒子には、露光光(EUV光)の波長に対する反射率が0.5%以下の金属材料が用いられる。具体的には、金属材料として、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ガリウム(Ga)、ゲルマニウム(Ge)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、錫(Sn)、アンチモン(Sb)、テルル(Te)、ヨウ素(I)、ハフニウム(Hf)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、チタン(Ti)及び金(Au)を用いることが可能である。また、これらの金属を含む合金を用いることも可能である。
【0024】
遮光枠形成領域31の全体に遮光材を塗布した後、金属粒子を分散させた液体を蒸発させ、遮光材33を硬化させる。遮光材の硬化方法としては、加熱法、光照射法等があげられる。これにより、図10に示すように、遮光枠33が形成される。
【0025】
以上のように、本実施形態では、インクジェット法を用いて遮光材を選択的に塗布することで、遮光枠が形成される。そのため、従来のように、遮光枠を形成する際にマスクパターン形成領域をレジストでマスクする必要がない。したがって、レジスト残りに起因するマスクパターン領域(回路パターン領域)での欠陥の発生を防止することができる。また、遮光枠を形成する際に多層反射膜をエッチングする必要がないため、多層反射膜の加工精度を確保することが難しいといった問題もない。また、多層膜を除去する際に基板に応力変化が生じるといった問題も防止できる。さらに、遮光枠領域と非遮光枠領域との境界で多層反射膜の側面が露出することがないため、多層反射膜の側面が浸食されてパーティクルが発生するといった問題もない。したがって、本実施形態の方法を用いることにより、的確に遮光枠を形成することが可能となる。
【0026】
また、本実施形態によれば、遮光枠のレイアウトデータに基づいて遮光材を塗布するので、レイアウトデータを変更するだけで所望の領域に遮光枠を形成することが可能である。
【0027】
また、本実施形態によれば、金属粒子の吐出量を調整することにより、所望の厚さを有する遮光枠を形成することが可能である。
【0028】
なお、上述した実施形態では、反射型のハーフトーン型位相シフトマスクについて説明したが、上述した実施形態の方法は、透過型のハーフトーン型位相シフトマスクについても適用可能である。この場合、金属粒子には、露光光の波長に対する透過率が0.5%以下の金属材料が用いることが好ましい。具体的な金属材料としては、上述した反射型の実施形態で述べた各種の金属を用いることが可能である。
【0029】
また、上述した実施形態の方法は、半導体装置の製造方法に適用することが可能である。図11は、半導体装置の製造方法を示したフローチャートである。
【0030】
まず、上述した方法によって製造されたフォトマスクを用意する(S21)。次に、フォトマスク上に形成されたマスクパターンを半導体ウェハ(半導体基板)上のフォトレジストに転写する(S22)。マスクパターンの転写は複数の領域に対して行われるが、隣接する領域の境界には遮光枠が形成されているため、境界部(転写領域がオーバーラップした部分)に過剰な露光光が照射されることはない。フォトレジストを現像してフォトレジストパターンを形成した後、フォトレジストパターンをマスクとして用いてエッチングを行うことで、半導体ウェハ上にパターンが形成される(S23)。
【0031】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0032】
11…ガラス基板 12…多層反射膜 13…中間層
14…吸収層 15…導電膜 21…EBレジスト
22…マスクパターン 31…遮光枠形成領域
32…ノズル 33…遮光材(遮光枠)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクパターンが形成されたハーフトーン型位相シフトマスクを用意する工程と、
前記マスクパターンが形成された領域の周囲の領域に選択的に遮光材を塗布して遮光枠を形成する工程と、
を備えたことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記遮光材を塗布する工程の前に、
前記遮光枠のレイアウトデータを取得する工程と、
前記レイアウトデータに基づいて、前記遮光材を塗布すべき領域の位置制御情報を生成する工程と、
をさらに備え、
前記遮光材は、前記位置制御情報に基づいて塗布される
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
前記遮光材は、インクジェット法によって塗布される
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記遮光材は、金属粒子を含有している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記金属粒子は、露光光の波長に対する反射率が0.5%以下である
ことを特徴とする請求項4に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記金属粒子は、露光光の波長に対する透過率が0.5%以下である
ことを特徴とする請求項4に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載された方法によって製造されたフォトマスクを用意する工程と、
前記フォトマスクに形成されたマスクパターンを半導体基板上に転写する工程と、
を備えたことを特徴とする半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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