説明

フコイダンを含有する海藻類の処理方法

【課題】 フコイダンを含有する抽出物の抽出効率を高めること。
【解決手段】 前処理として、にがりを添加した水溶液中にフコイダンを含有する海藻類を浸漬処理して、浸漬処理した海藻類を微細化してフコイダンを含有する抽出物を抽出するようにした。このようにして、にがりを添加した水溶液中に、フコイダンを含有する海藻類を浸漬して前処理をするため、にがりに含まれるMgイオン等のミネラルにより、海藻類に含まれるアルギン酸が抽出されるのを抑制することができる。その結果、後続の処理である海藻類を微細化してフコイダンを含有する抽出物を抽出する前に、抽出物が流出するのを防止することができて、抽出物の抽出効率を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用の渇海藻であるモズク、メカブ、ワカメ、コンブ、根コンブ、ヒジキ、アサオ、フノリ、赤モク等に含有されるフコイダン等の抽出物を抽出するフコイダンを含有する海藻類の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モズク等の海藻類、特に、オキナワモズクに含まれるフコイダンは、優れた抗コレステロール作用、血液清塗作用、抗血液凝固作用、抗ガン作用、抗エイズウイルス作用、及び、抗胃潰瘍作用等の薬理効果を有することが知られており、そのためかかるフコイダンを効率良く抽出するための開発が行われている。
【0003】
例えば、養殖オキナワモズクから、塩酸や硫酸等の無機酸(濃度0.2N)を抽出剤として使用し、室温にて、24時間程度の時間をかけてフコイダンを抽出する方法が開示されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−165114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記したフコイダンの抽出方法では、腐蝕性の高い強酸を抽出剤として使用しているために、製造設備を腐蝕しやすいという不具合がある。
【0005】
そこで、耐腐蝕性の高い無機材料等を使用することにより、製造設備の腐蝕をある程度は防止することができるが、耐腐蝕性の高い無機材料等は極めて高価であるために経済的に不利である。
【0006】
しかも、上記した抽出方法では、得られるフコイダンの平均分子量を所望の分子量、例えば、10,000〜5000,000の範囲内に設定するのが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明では、前処理として、にがりを添加した水溶液中にフコイダンを含有する海藻類を浸漬処理して、浸漬処理した海藻類を微細化してフコイダンを含有する抽出物を抽出することを特徴とするフコイダンを含有する海藻類の処理方法を提供するものである。
【0008】
ここで、にがりには、自然海塩(成分無調整の塩)から生じるにがり(天然純にがり)と、イオン交換膜によって得られるにがりとがあり、天然純にがりとは、海水100%を原料とする天日塩、又は、平釜法により製塩される唯一自然海塩と呼ばれる自然塩より取り出されるものであり、マグネシウム、カルシウム、カリウム、銅、ケイ素、亜鉛、リチウム、ストロンチウム等の80元素近くが含まれているものである。
【0009】
また、本発明は、以下の構成にも特徴を有する。
【0010】
(1)フコイダンを含有する抽出物の抽出処理は、多数の分流室内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室内にて繰り返し合流される流動を流下方向に順次繰り返すことにより、海藻類を微細化して抽出物の抽出を行うこと。
【0011】
(2)抽出処理された抽出物は、濾過処理した後に、多数の分流室内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室内にて繰り返し合流される流動を流下方向に順次繰り返すことにより、抽出物を低分子化処理すること。
【0012】
(3)低分子化処理された抽出物には、にがりを添加すること。
【発明の効果】
【0013】
(1)請求項1記載の本発明に係るフコイダンを含有する海藻類の処理方法では、前処理として、にがりを添加した水溶液中にフコイダンを含有する海藻類を浸漬処理して、浸漬処理した海藻類を微細化してフコイダンを含有する抽出物を抽出するようにしている。
【0014】
このようにして、にがりを添加した水溶液中に、フコイダンを含有する海藻類を浸漬して前処理をするため、にがりに含まれるMgイオン等のミネラルにより、海藻類に含まれるアルギン酸の粘性を抑制することができる。
【0015】
その結果、後続の処理である海藻類を微細化してフコイダンを含有する抽出物を抽出し易くすることができて、抽出物の抽出効率を高めることができる。
【0016】
そして、海藻類を微細化することにより、低分子化したフコイダンを効率良く抽出することができる。
【0017】
この際、腐蝕性の高い強酸を抽出剤として使用していないため、製造設備が腐蝕するという不具合を防止することができる。
【0018】
(2)請求項2記載の本発明に係るフコイダンを含有する海藻類の処理方法では、フコイダンを含有する抽出物の抽出処理は、多数の分流室内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室内にて繰り返し合流される流動を流下方向に順次繰り返すことにより、海藻類を微細化して抽出物の抽出を行うようにしている。
【0019】
このようにして、海藻類を分流→合流→分流→合流というように、連続して分流と合流とを繰り返し行うことにより、分流時に海藻類を微細化処理することができると共に、合流時にフコイダンを含有する抽出物を抽出処理することができるといる連続処理作業を、低温環境下にて効率良く行うことができる。
【0020】
この際、海藻類を微細化して抽出物を抽出することができるため、抽出の障害となる高分子のアルギン酸を物理的にせん断して、同アルギン酸の粘性を低下させることができる。その結果、フコイダンを含有する抽出物を短時間に効率良く抽出することができる。
【0021】
そして、繊維質をサブミクロンレベルに粉砕することができるため、繊維質を含んだ食品の開発が可能となって、均一に分流された繊維質を飲食することが容易となる。
【0022】
しかも、無機薬品や有機酸等の薬剤を使用することなく抽出物の抽出が行えるため、薬剤による抽出成分の損失を回避することができると共に、同薬剤による抽出処理器の腐蝕等を回避することができる。
【0023】
さらには、赤モク等の組織が固く、処理が困難な海藻類でも、速やかに粉砕処理することができて、あらゆる海藻類において、抽出物の抽出効率を良好に確保することができる。
【0024】
また、低温(例えば、10℃〜30℃)条件下においても、高抽出効率を確保することができるため、高温(例えば、60℃〜110℃)条件下に環境を整える手間をなくすことができて、抽出処理のための作業効率を高めることができる。
【0025】
(3)請求項3記載の本発明に係るフコイダンを含有する海藻類の処理方法では、抽出処理された抽出物は、濾過処理した後に、多数の分流室内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室内にて繰り返し合流される流動を流下方向に順次繰り返すことにより、抽出物を低分子化処理するようにしている。
【0026】
このようにして、得られる抽出物中のフコイダンの平均分子量を所望の低分子量、例えば、10,000〜60,000の範囲内に容易に設定することができると共に、繊維質の微細化を図ることができる。
【0027】
その結果、低分子化されて体内吸収が飛躍的に向上されたフコイダンを、効率良く抽出することができる。
【0028】
しかも、かかるフコイダンは、優れた抗コレステロール作用、血液清塗作用、抗血液凝固作用、抗ガン作用、抗エイズウイルス作用、及び、抗胃潰瘍作用等の薬理効果を有する。
【0029】
さらには、抽出物に分流されている食物繊維は、ナノレベルまで極微細化されているため、均一に分流させることができる。
【0030】
また、pH(ペーハー)の安定性(品質保持)や飲みやすさのため、有機質や有機酸を含むもろみ酢や梅酢等にも容易に合流させることができる。
【0031】
(4)請求項4記載の本発明に係るフコイダンを含有する海藻類の処理方法では、低分子化処理された抽出物には、にがりを添加するようにしている。
【0032】
このようにして、低分子化処理された抽出物ににがりを添加したものを水で適度に希釈して摂取した場合には、抽出物に含まれるフコイダンとにがりとの相乗効果により、血液の流動性を良好となすことができると共に、リラックス効果を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0034】
すなわち、本発明に係るフコイダンを含有する海藻類の処理方法は、図1に示すように、脱塩・洗浄処理工程(a)と浸漬処理工程(b)と脱水処理工程(c)と細断処理工程(d)と軟化処理工程(e)(f)と抽出処理工程(g)と濃縮行程(h)と濾過処理工程(i)と低分子化処理工程(j)とにがり添加行程(k)又は限外濾過行程(l)とにがり添加行程(m)とからなる。
【0035】
以下に、上記各工程を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0036】
(1)脱塩・洗浄処理工程(a)
脱塩・洗浄処理工程(a)は、脱塩・洗浄処理槽41内に海藻類42を収容し、同脱塩・洗浄処理槽41内に給水部43から水を連続的に供給して、同脱塩・洗浄処理槽41から水だけをオーバーフローさせることにより、海藻類42に付着している海水由来の塩分を脱塩処理すると共に、海藻類42に付着している異物や小動物を除去して洗浄処理する行程である。
【0037】
この際、脱塩・洗浄処理漕1内を低速撹拌させながら、一定時間、例えば、20分間脱塩・洗浄処理を行う。
【0038】
(2)浸漬処理工程(b)
浸漬処理工程(b)は、フコイダンを含有する海藻類の前処理行程であり、浸漬処理容器44内ににがりNを添加した水溶液45を収容し、同水溶液45中に海藻類42を浸漬処理する行程である。
【0039】
ここで、水溶液45におけるにがりの濃度は0.2%〜1.5%であり、好ましくは、0.5%である。
【0040】
そして、浸漬する時間は、10分間〜60分間、好ましくは、30分間である。
【0041】
また、温度は、室温が好ましい。
【0042】
かかる浸漬処理工程(b)は、にがりNを添加した水溶液45中に海藻類42を浸漬することにより、にがりNに含まれるMgイオン等のミネラルにより、海藻類42に含まれるアルギン酸の粘性を抑制することを目的としている。
【0043】
(3)脱水処理工程(c)
脱水処理工程(c)は、遠心分離器の回転槽46内に脱塩処理した海藻類42を移し、同回転槽46を一定時間、例えば、10分間回転させることにより、海藻類42を脱水処理する行程である。
【0044】
また、海藻類42の脱水処理は、ざる等に移して、自然放置することにより行うこともできる。
【0045】
(4)細断処理工程(d)
細断処理工程(d)は、脱水処理した海藻類42をミキサー47等の細断装置を使用して細断処理する行程である。
【0046】
ここで、海藻類42は、1mm〜5mm程度に均一に細断する。8は細断した海藻類42であり、以下、細断海藻類という。
【0047】
(5)軟化処理工程(e)(f)
軟化処理工程(e)は、細断海藻類48を加圧すると共に加熱することにより、同細断海藻類48を膨潤させて軟化処理する行程である。
【0048】
ここで、加圧する圧力は、例えば、1.2気圧〜2.0気圧、好ましくは、1.6気圧とし、また、加熱する温度は、例えば、102℃〜120℃、好ましくは、115℃に設定することができる。
【0049】
かかる軟化処理工程(e)は、後続の抽出処理工程(g)における細断海藻類48から抽出物を効率良く抽出するための行程である。
【0050】
また、軟化処理工程(f)は、細断海藻類48を80℃〜100℃の熱水中に浸けることにより、同細断海藻類48を膨潤させて軟化処理する工程である。
【0051】
これらの軟化処理工程(e)(f)は、作業者が好みに応じて選択できるものであり、いずれかの行程(e)(f)を経て軟化処理がなされた細断海藻類48は、その後、例えば、常温まで冷却される。
【0052】
(6)抽出処理工程(g)
抽出処理工程(g)は、軟化処理した細断海藻類48を抽出物抽出処理装置Aに設けた抽出処理器1内に繰り返し流通させることにより、同細断海藻類48を連続的に粉砕して微細化すると共に、フコイダンを含有する抽出物6を抽出処理する行程である。
【0053】
ここで、抽出処理器1は、処理器本体20の流入流路連結口部27と流出流路連結口部28との間に戻し流路10を介設すると共に、処理器本体20の上流側と下流側とに位置する戻し流路10の部分に上流側三方弁11と下流側三方弁12とを設けている。なお、抽出処理器1の詳細な構成は後述する。

そして、処理器本体20は、上流(本実施の形態では上方)から下流(本実施の形態では下方)へ向けて流路を形成すると共に、同流路内に、多数の分流室8と合流室9とを流下方向に交互に配置して、同流路内を流下する細断海藻類48が、多数の分流室8内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室9内にて繰り返し合流される流動を、流下方向に順次繰り返すうちに、微細化されるように構成している。
【0054】
すなわち、上流側三方弁11を介して処理器本体20内に一定量の細断海藻類48を供給し、同処理器本体20内にて細断海藻類48を微細化することができるようにしており、細断海藻類48を分流→合流→分流→合流というように、連続して分流と合流とを繰り返し行うことにより、分流時に海藻類を微細化処理することができると共に、合流時にフコイダンを含有する抽出物を抽出処理することができるといる連続処理作業を、低温環境下にて効率良く行うことができるようにしている。
【0055】
この際、細断海藻類48を微細化して抽出物を抽出することができるため、抽出の障害となる高分子のアルギン酸を物理的にせん断して、同アルギン酸の粘性を低下させることができる。その結果、フコイダンを含有する抽出物を短時間に効率良く抽出することができる。
【0056】
しかも、処理器本体20内にて細断した細断海藻類48は、流出流路連結口部28→下流側三方弁12→戻し流路10→上流側三方弁11→処理器本体20の流入流路連結口部27→処理器本体20に戻して、再度、微細化する循環処理操作を行うことができるようにしている。
【0057】
このようにして、得られる抽出物中のフコイダンの平均分子量を所望の低分子量の範囲内に容易に設定することができると共に、繊維質の微細化を図ることができる。
【0058】
ここで、かかる循環処理操作は、繊維質を微細化する程度に応じて、例えば、2回〜10回繰り返し行うことができる。
【0059】
(7)濃縮行程(h)
濃縮行程(h)は、前記した抽出処理工程(g)において得られた抽出物6の水分を、濃縮装置49により減圧条件下で50℃〜80℃に加熱することにより蒸発させる行程である。
【0060】
このようにして、濃縮行程(h)では、微細化した抽出物6に含まれる極微細な不溶性繊維質性多糖類を均一に分流させることができる。
【0061】
(8)濾過処理工程(i)
濾過処理工程(i)は、前記した抽出処理工程(g)において抽出処理された抽出物6を、粗目フィルター50を通して濾過処理する行程である。
【0062】
ここで、粗目フィルター50としては、120メッシュ〜400メッシュの粗目のものを使用することができる。
【0063】
このようにして、抽出処理工程(h)において微細化されなかった一部の不溶性繊維質性多糖類を除去する。
【0064】
この際、10重量部の抽出物6に対して、0.2%〜1.0%の不溶性繊維質性多糖類が除去されるが、抽出処理器1により抽出処理された抽出物6は均一化されているため、粗目フィルター50の通過性はよい。
【0065】
(9)低分子化処理工程(j)
低分子化処理工程(j)は、前記した粗目フィルター50を通して濾過処理した抽出物6を、前記した抽出処理工程(g)に設けた抽出物抽出処理装置Aの抽出処理器1と同一構成の低分子化処理器51を通して低分子化処理する行程である。
【0066】
このようにして、多数の分流室8内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室9内にて繰り返し合流される流動を流下方向に順次繰り返すことにより、抽出物6を低分子化処理するようにしているため、得られる抽出物6中のフコイダンの平均分子量を所望の低分子量、例えば、10,000〜60,000の範囲内に容易に設定することができると共に、繊維質の微細化を図ることができる。
【0067】
その結果、低分子化されて体内吸収が飛躍的に向上されたフコイダンを、効率良く抽出することができる。
【0068】
しかも、かかるフコイダンは、優れた抗コレステロール作用、血液清塗作用、抗血液凝固作用、抗ガン作用、抗エイズウイルス作用、及び、抗胃潰瘍作用等の薬理効果を有する。
【0069】
さらには、抽出物6に分流されている食物繊維は、ナノレベルまで極微細化されているため、均一に分流させることができる。
【0070】
また、pH(ペーハー)の安定性(品質保持)や飲みやすさのため、有機質や有機酸を含むもろみ酢や梅酢等にも容易に合流させることができる。
【0071】
なお、かかる低分子化処理工程における循環処理操作は、抽出物6を低分子化する程度に応じて、例えば、2回〜5回繰り返し行うことができる。
【0072】
また、海藻類の種類によっては、低分子化処理工程(j)に入る前に加水して、抽出物6と水の比を50%V/V〜100%V/Vに調整することができる。或いは、海藻類の種類によっては、濃縮行程(h)を省くこともできる。
【0073】
(10)にがり添加行程(k)
にがり添加行程(k)は、前記した低分子化処理工程(j)において低分子化処理されたナノレベルの極微細な不溶性繊維質性多糖類に、にがりNを添加して、最終調整を行う行程である。
【0074】
かかるにがり添加行程(k)では、ナノレベルの極微細な不溶性繊維質性多糖類とにがりNとが均一に分流された最終抽出物52を得ることができる。
【0075】
ここで、不溶性繊維質性多糖類に添加するにがりNの濃度は、0.5%〜5%、好ましくは、2%に設定するこことができる。
【0076】
そして、かかる最終抽出物52は、低分子のフコイダンを含有しており、清涼飲料の原料となすことができると共に、人体への吸収性に優れているため、抗コレステロール作用、血液清塗作用、抗血液凝固作用、抗ガン作用、抗エイズウイルス作用、及び、抗胃潰瘍作用等の薬理効果も優れたものである。
【0077】
この際、ミネラル成分を含むにがりとフコイダンとの相乗効果により、血液の流動性を良好となすことができると共に、リラックス効果を高めることができる。
【0078】
(11)限外濾過行程(l)
限外濾過行程(l)は、前記した低分子化処理工程(j)において抽出処理された抽出物6を、限外濾過装置53により限外濾過処理する行程である。
【0079】
ここで、限外濾過装置53としては、例えば、ポリアクリロニトリル膜やポリアミド膜やセラミック膜やポリスルフォン膜を筒状に形成して、いずれかの膜の一側開口端から抽出物6を、一定の圧力(例えば、1〜7kg/cm2)で加圧状態にて流入させて、膜を通して限外濾過処理するように構成することができる。
【0080】
そして、かかる限外濾過装置53により、限外濾過処理することにより、フコイダン成分を多く含む溶液を、限外濾過濃縮液として得ることができる。この際、多くの繊維質は除去することができて、透明な限外濾過濃縮液を得ることができる。
【0081】
(12)にがり添加行程(m)
にがり添加行程(m)は、前記した限外濾過行程(l)において限外処理された限外濾過濃縮液に、にがりNを添加して、最終調整を行う行程である。
【0082】
かかるにがり添加行程(m)では、限外濾過濃縮液とにがりNとが均一に分流された透明な最終抽出物54を得ることができる。
【0083】
ここで、不溶性繊維質性多糖類に添加するにがりNの濃度は、0.5%〜5%、好ましくは、2%に設定するこことができる。
【0084】
そして、かかる最終抽出物52は、低分子のフコイダンを含有しており、清涼飲料の原料となすことができると共に、人体への吸収性に優れているため、抗コレステロール作用、血液清塗作用、抗血液凝固作用、抗ガン作用、抗エイズウイルス作用、及び、抗胃潰瘍作用等の薬理効果も優れたものである。
【0085】
この際、ミネラル成分を含むにがりとフコイダンとの相乗効果により、血液の流動性を良好となすことができると共に、リラックス効果を高めることができる。
【0086】
以下に、実施例について、図1及び図2を参照しながら説明する。
【実施例】
【0087】
(1)脱塩処理工程(a)
脱塩処理工程(a)では、脱塩・洗浄処理槽41内に浸漬処理した海藻類としてのモズク2を移し、同脱塩・洗浄処理槽41内に給水部43から水を連続的に20分間供給して、同脱塩・洗浄処理槽41から水だけをオーバーフローさせることにより、モズク42に付着している海水由来の塩分を脱塩処理すると共に、モズク42に付着している異物や小動物を除去した。
【0088】
(2)浸漬処理工程(b)
浸漬処理工程(b)では、にがり濃度を0.5%となした水溶液45を、浸漬処理容器44内に100リットル収容し、同水溶液45中にフコイダンを含有する海藻類としてモズク42を100kgほど常温下にて30分間浸漬処理した。
【0089】
(3)脱水処理工程(c)
脱水処理工程(c)では、遠心分離器の回転槽46内に脱塩処理したモズク42を移し、同回転槽46を10分間回転させることにより、モズク42を脱水処理した。
【0090】
(4)細断処理工程(d)
細断処理工程(d)では、脱水処理したモズク3をミキサー47を使用して3mm以下の大きさに細断処理した。その結果、細断海藻類としての細断モズク48が得られた。
【0091】
(5)軟化処理工程(e)
軟化処理工程(e)では、細断モズク8を1.6気圧で加圧すると共に115℃で加熱することにより、同細断モズク48を膨潤させて軟化処理した。
【0092】
そして、その後、常温まで自然冷却させた。
【0093】
(6)抽出処理工程(g)
抽出処理工程(g)では、軟化処理した細断モズク48を抽出処理器1内を繰り返し3回ほど流通させることにより、同細断モズク48を連続的に粉砕して微細化すると共に、フコイダンを含有する抽出物6を抽出処理した。
【0094】
(7)濃縮行程(h)
濃縮行程(h)では、前記した抽出処理工程(g)において得られた抽出物6の水分を、濃縮装置49により減圧条件下で65℃に加熱することにより蒸発させる行程である。
【0095】
このようにして、濃縮行程(h)では、微細化した抽出物6に含まれる極微細な不溶性繊維質性多糖類を均一に分流させることができた。
【0096】
(8)濾過処理工程(i)
濾過処理工程(i)では、前記した抽出処理工程(g)において抽出処理した抽出物6を、200メッシュの粗目フィルター50を通して濾過処理した。
【0097】
(9)低分子化処理工程(j)
低分子化処理工程(j)では、前記した粗目フィルター50を通して濾過処理した抽出物6を、低分子化処理器51を通して低分子化処理した。この際、循環処理操作は、3回繰り返し行った。
【0098】
(10)にがり添加行程(k)
にがり添加行程(k)では、前記した低分子化処理工程(j)において低分子化処理されたナノレベルの極微細な不溶性繊維質性多糖類に、にがりNを2%濃度となるように添加して、最終調整を行い最終抽出物52を得た。
【0099】
(11)限外濾過処理工程(l)
濾過処理工程(l)では、前記した低分子化処理工程(j)において抽出処理された抽出物6を、限外濾過装置53により限外濾過処理した。
【0100】
(12)にがり添加行程(m)
にがり添加行程(m)では、前記した限外濾過行程(l)において限外処理された限外濾過濃縮液に、にがりNを2%濃度となるように添加して、最終調整を行い、限外濾過濃縮液とにがりNとが均一に分流された透明な最終抽出物54を得た。
【0101】
かかる最終抽出物54は、低分子のフコイダンは含有しているが、多くの繊維質が除去されたものであった。
【0102】
〔評価〕
(1)最終抽出物52について
高速液体クロマトグラフ法により、得られた最終抽出物52中のフコース量を測定したところ、48重量%であった。また、硫酸バリウム重量法により、得られた最終抽出物52中の多糖類の硫酸含有量を測定したところ、1.19重量%であった。モズクの使用量を基準にして、得られたフコイダンの収率を算出したところ、12%という高い値が得られた。また、ゲル濾過法により、得られた最終抽出物52が含有するフコイダンの平均分子量(平均重量分子量)を測定したところ、好ましい平均分子量の範囲内である30,000〜150,000であることが確認できた。
【0103】
(2)最終抽出物54について
高速液体クロマトグラフ法により、得られた最終抽出物54中のフコース量を測定したところ、48重量%であった。また、硫酸バリウム重量法により、得られた最終抽出物54中の多糖類の硫酸含有量を測定したところ、1.19重量%であった。モズクの使用量を基準にして、得られたフコイダンの収率を算出したところ、12%という高い値が得られた。また、ゲル濾過法により、得られた最終抽出物54が含有するフコイダンの平均分子量(平均重量分子量)を測定したところ、好ましい平均分子量の範囲内である30,000〜80,000であることが確認できた。
【0104】
また、最終抽出物54としての「純にがりフコイダンドリンク」を、にがりの配合割合が1%、2%、3%、5%の場合について、被験者に摂取して(飲んで)もらい、被験者の左中指先の抹消血流量を摂取の前と後でそれぞれ測定した。
【0105】
ここで、「純にがりフコイダンドリンク」は、30mlを120mlの水で希釈したものを摂取してもらい、所定の時間毎に被験者の左中指先の抹消血流量を測定した。その結果は、図3の棒グラフ、及び、図4の折れ線グラフに示すとおりである。
【0106】
かかる図3及び図4から明らかなように、にがりを1%配合したものは、5分後には血流量が増大したものの、10分後以降は、にがり3%ないしは5%配合のものと同様の挙動を示した。
【0107】
一方、にがり2%配合のものは、継時的に抹消血流量の増加が認められた。
【0108】
また、図5は、にがり2%配合のものを摂取した被験者の一人(27歳、女性)の血液を、摂取前、摂取15分後、摂取30分後、及び摂取60分後のそれぞれにおいて、顕微鏡写真により撮影したものである。
【0109】
かかる図5から明らかなように、「純にがりフコイダンドリンク」を摂取することによって、血液の流動性が継時的に向上していることから、かかる「純にがりフコイダンドリンク」は、血液をサラサラにする効果があると言える。
【0110】
また、図6は、フコイダン25%配合でにがり2%配合の「純にがりフコイダンドリンク」を、20代の被験者(27歳、女性)と30代の被験者(36歳、男性)と40代の被験者(49歳、男性)に摂取してもらった測定結果である。なお、測定時間は、午前10時〜11時30分の間に測定した。
【0111】
かかる図6から明らかなように、被験者の年齢に関わりなく継時的に抹消血流量の増加が認められた。
【0112】
また、図7は、にがり2%配合のものを摂取した被験者の一人の脳波を、摂取前、摂取15分後、摂取30分後、及び摂取60分後のそれぞれにおいて、脳波測定器により測定したものである。
【0113】
かかる図5から明らかなように、「純にがりフコイダンドリンク」を摂取することによって、α波の顕著な発現が認められることから、リラックス効果が得られると言える。
【0114】
次に、前記した抽出物抽出処理装置Aの構成を、図8〜図19を参照しながら詳説する。
【0115】
〔抽出物抽出処理装置Aの構成〕
抽出物抽出処理装置Aは、図8に示すように、上流から下流へ向けて流路を形成する抽出処理器としての流路形成ケーシング1の上流側に流入流路2を介して流動性処理物3(本実施の形態では、軟化処理した細断海藻類48)を供給する処理物供給部4を接続する一方、同流路形成ケーシング1の下流側に流出流路5を介して抽出物6を回収する処理物回収部7を接続している。P1は流入流路2の中途部に設けた処理物圧送ポンプである。
【0116】
そして、流路形成ケーシング1内には、図8に示すように、多数の分流室8と合流室9とを流下方向に交互に配置して、流路形成ケーシング1内を流下する流動性処理物3が、多数の分流室8内を蛇行しながら流下方向と略直交する離隔方向に流動して、各分流室8内において繰り返し分流されると共に、多数の合流室9内を蛇行しながら流下方向と略直交する接近方向に流動して、各合流室9内において繰り返し合流される流動を、流下方向に順次繰り返すうちに、上記流動性処理物3から微細化された抽出物が抽出される抽出物抽出処理工程を設けている。
【0117】
また、図18に示すように、流路形成ケーシング1の上流側に接続した流入流路2と、下流側に接続した流出流路5との間に戻し流路10を介設して、上記流路形成ケーシング1内にて行われる抽出物抽出処理行程を、繰り返し所要回数行うことができるようにしている。
【0118】
ここで、戻し流路10は、流入流路2に上流側三方弁11を介して連通連結する一方、流出流路5に下流側三方弁12を介して連通連結し、中途部には戻しポンプP2を設けており、戻し流路10を上・下流側三方弁11,12を介して流入・出流路2,5に連通させると共に、同戻し流路10の中途部に設けた戻しポンプP2を駆動させることにより、抽出物6を流路形成ケーシング1内に循環させて、抽出物抽出処理工程を繰り返し行うことができるようにしている。
【0119】
分流室8と合流室9の周壁には、図8に示すように、流動性処理物が流動する方向に伸延する複数の細幅流路形成溝部13を周方向に間隔を開けて形成している。
【0120】
以下に、上記した抽出物抽出処理装置Aの構成を、図9〜図16を参照しながらより具体的に説明する。
【0121】
すなわち、抽出物抽出処理装置Aは、図9に示すように、前記したように流路形成ケーシング1内に多数の分流室8と合流室9とを配設しており、同流路形成ケーシング1は、上下方向に伸延する円筒状の処理器本体としてのケーシング本体20の上端縁部と下端縁部とにそれぞれ鍔状の連結フランジ片21,22を形成し、各連結フランジ片21,22に円板状の上部蓋体23と下部蓋体24の各週縁部を面接触させると共に連結ボルト25,26により着脱自在に連結している。
【0122】
そして、上部蓋体23の中央部に流入流路2と連通連結するための流入流路連結口部27を形成する一方、下部蓋体24の中央部に流出流路5と連通連結するための流出流路連結口部28を形成している。
【0123】
また、多数の分流室8と合流室9は、図9〜図12に示すように、それぞれ第1室形成体30と第2室形成体31とを一組として、対向状態に突き合わせて配置することにより形成している。
【0124】
そして、第1室形成体30は、図10(a)及び図11(a)に示すように、円板状の第1支持片32の一側面に、平面視多角形筒状(本実施の形態では六角形)の第1室形成片33を多数個整列状態(ハニカム状態)に配置すると共に、各第1室形成片33の一側端面を一体的に連設して形成している。
【0125】
ここで、第1支持片32の周縁部32aは、図9に示すように、前記流路形成ケーシング1のケーシング本体20の内周面に密接する大きさの外径に形成し、中央部には中央部に位置する第1室形成片33と連通する連通孔34を形成している。
【0126】
また、第2室形成体31は、図10(b)及び図11(b)に示すように、円板状の第2支持片35の一側面に、平面視多角形筒状(本実施の形態では六角形)の第2室形成片36を多数個整列状態(ハニカム状態)に配置すると共に、各第2室形成片36の一側端面を一体的に連設して形成している。
【0127】
ここで、第2支持片35の周縁部35aは、前記流路形成ケーシング1のケーシング本体20の内周面から一定幅tだけ間隔が開く大きさの外径に形成している。
【0128】
しかも、第1室形成片33と第2室形成片36は、同じ大きさでかつ同じ形状に形成して、第1支持片32と第2支持片35の中心部を符合させると共に、対向状態に突き合わせた状態では、図10に示すように、隣接する三個の第1室形成片33,33,33に均等に跨るように第2室形成片36が対向配置されて、三個の第1室形成片33,33,33と一個の第2室形成片36とが連通するようにしている。
【0129】
このようにして、流路形成ケーシング1内の最上部に第1室形成体30を第1支持片32から第1室形成片33が垂下された状態に配置すると共に、同第1室形成片33に第2室形成片36を下方から対向させた状態にて第2室形成体31を配置する。
【0130】
そして、上記第2室形成体31の第2支持片35に二組目の第2室形成体31の第2支持片35を下方から面接触させて配置し、同第2支持片35から第2室形成片36が垂下された状態に配置すると共に、同第2室形成片36に第1室形成片33を下方から対向させた状態にて第1室形成体30を配置する。
【0131】
その後、三組目の第1室形成体30と第2室形成体31とを一組目と同様に配置し、四組目の第1室形成体30と第2室形成体31とを二組目と同様に配置するという積層作業を繰り返し行う(本実施の形態では六組目まで行う)。
【0132】
この際、最上段に配置した第1室形成体30の連通孔34を、上部蓋体23の流入流路連結口部27に連通させる一方、最下段に配置した第1室形成体30の連通孔34を、下部蓋体24の流出流路連結口部28に連通させると共に、第1・第2室形成体30,31の各中心部と流路形成ケーシング1の軸芯とを符合させる。
【0133】
そして、上下に面接状態に積層される第2支持片35,35の周縁部35a,35aとケーシング本体20の内周面との間にリング状の移動流路37が形成されるようにしている。
【0134】
このようにして、流動性処理物3を処理物供給部4→流入流路8→流入流路連結口部27→最上部の連通孔34に流入させると、図9に示すように、中心部側の第1室形成片33→第2室形成片36→第1室形成片33→第2室形成片36というように蛇行しながら流下方向(本実施の形態では鉛直下方向)と略直交する離隔方向(本実施の形態では略水平外側方向)に流動して、流動性処理物3が繰り返し分流されることになる。
【0135】
その結果、最上部の一組目の第1室形成体30の第1室形成片33と第2室形成体31の第2室形成片36とにより、多数の分流室8が形成されることになる。
【0136】
そして、外周縁部に至った流動性処理物3は、移動流路37を通して二組目の第1室形成体30と第2室形成体31に設けた周縁部側の第1室形成片33→第2室形成片36→第1室形成片33→第2室形成片36というように蛇行しながら流下方向(本実施の形態では鉛直下方向)と略直交する接近方向(本実施の形態では略水平内側方向)に流動して、流動性処理物3が繰り返し合流されることになる。
【0137】
その結果、二組目の第1室形成体30の第1室形成片33と第2室形成体31の第2室形成片36とにより、多数の合流室9が形成されることになる。
【0138】
このような分流と合流とを流下方向に順次繰り返すうちに、流動性処理物3から物理的に微細化した抽出物を抽出することができる。
【0139】
すなわち、流動性処理物3は、上記のように、各第1室形成体30と第2室形成体31の底面および側壁への直角衝突、各第1室形成片33と各第2室形成片36との間の分流、合流、蛇行、さらに複数の第1室形成片33と第2室形成片36との間の流入による渦流混合による流体力学的な剪断、各第1室形成片33と各第2室形成片36との間の連通路であるオリフィスを通過する際の流体力学的な剪断、衝撃的破壊による粉砕、各第1・第2室形成片33,36の上端縁部を通過する際の剪断、機械的なキャビテーション等による混合が行われるのである。
【0140】
ここで、分流総数については、中心より順次放射状に配列した第1・第2室形成片33,36の室数によって決定されるのであり、例えば、図10に示す平面視六角状のものであれば、室数が6室、12室、18室(計36室)の3列状の第1室形成体30と、室数が3室、9室、15室(計27室)の3列状の第2室形成体31とを重合させた場合では、合計した分流総数は数千回にも達することになる。
【0141】
なお、上記分流総数とは、第1室形成体30と第2室形成体31とにおいて、互いに連通する第1室形成片33と各第2室形成片36とによって形成される分流室8を通過する間に生じるべき流体が分流される数のことがあり、複数層の分流室8から成る場合は、層数との各分流室8の数の積となり、第1室形成片33と各第2室形成片36の列数を増減させることにより適宜増減可能である。
【0142】
上記のような構成において、本実施の形態では、図13に示すように、第1室形成片33の内周壁には、流動性処理物3が流動する方向に伸延する複数の細幅流路形成溝部13を周方向に間隔を開けて形成している。
【0143】
すなわち、本実施の形態では、細幅流路形成溝部13は、図14にも示すように、第1室形成片33の内周壁に、各第1・第2室形成片33,36の軸線方向に伸延する断面V字状の凹溝を周方向に連続させて形成して、流動性処理物3が蛇行しながら各第1・第2室形成片33,36内を移動する際に、断面V字状の細幅流路形成溝部13内では特に流動性処理物3に接触する面積が大きくなるようにしている。
【0144】
また、第2室形成片36の内周壁にも第1室形成片33と同様に細幅流路形成溝部13を形成している。
【0145】
このようにして、分流室8と合流室9の周壁には、流動性処理物3が流動する方向に伸延する複数の細幅流路形成溝部13を周方向に間隔を開けて形成しているため、流動性処理物3は、分流室8にて細幅流路形成溝部13を通して分流される際に、物理的にかつ強制的に細断されると共に、合流室9にて細幅流路形成溝部13を通して合流される際に、物理的にかつ強制的に細断されて、より一層微細化された抽出物が抽出される。
【0146】
すなわち、断面V字状の細幅流路形成溝部13の先端周縁部をオリフィスとなして、流動性処理物3が通過する際の流体力学的な剪断、衝撃的破壊による粉砕、さらには、機械的なキャビテーション等による混合が効率良く行われる。
【0147】
従って、本発明に係る抽出物抽出処理装置Aに、流動性処理物3として、例えば、フコイダンを含有する海藻類等を流動させた場合には、同海藻類等が含有するフコイダン分子が物理的に切断されて、低分子化されたフコイダンが抽出物として簡単かつ確実に抽出されるため、フコイダンの抽出効率を高めることができる。
【0148】
また、図15は、変容例1としての細幅流路形成溝部13の拡大断面図であり、同細幅流路形成溝部13は、断面四角形状に形成して、流動性処理物3に接触する面積がより大きくなるようにして、流動性処理物3が通過する際の流体力学的な剪断、衝撃的破壊による粉砕、さらには、機械的なキャビテーション等による混合がより効率良く行われるようにしている。
【0149】
また、図16は、変容例2としての細幅流路形成溝部13の拡大断面図であり、同細幅流路形成溝部13は、断面逆台形状に形成して、流動性処理物3に接触する面積がより一層大きくなるようにして、流動性処理物3が通過する際の流体力学的な剪断、衝撃的破壊による粉砕、さらには、機械的なキャビテーション等による混合がより一層効率良く行われるようにしている。
【0150】
また、本実施の形態では、流路形成ケーシング1の上流側に接続した流入流路2と、下流側に接続した流出流路5との間に戻し流路10を介設して、上記流路形成ケーシング1内にて行われる抽出物抽出処理行程を、繰り返し所要回数行うことができるようにしている。
【0151】
すなわち、前記したように流入流路2と戻し流路10とを連通連結する上流側三方弁11を操作して、流入流路2と戻し流路10とを非連通状態となすと共に、流出流路5と戻し流路10とを連通連結する下流側三方弁12を操作して、流出流路5と戻し流路10とを非連通状態となすことにより、かかる状態にて、処理物供給部4から流動性処理物3を流入流路2を通して流路形成ケーシング1内に流入させて、同流路形成ケーシング1内にて抽出物抽出処理を行い、その後、流出流路5を通して流出させて処理物回収部7に回収することができる。
【0152】
また、上記した流路形成ケーシング1内における抽出物抽出処理工程を複数回行う場合には、流路形成ケーシング1内にて1回目の抽出物抽出処理を行っている間に、流入流路2と戻し流路10とを連通連結する上流側三方弁11を操作して、流入流路2と戻し流路10とを連通状態となすと共に、流出流路5と戻し流路10とを連通連結する下流側三方弁12を操作して、流出流路5と戻し流路10とを連通状態となすことにより、流路形成ケーシング1内にて抽出物抽出処理を行った抽出物6を、戻し流路10を通して再度流路形成ケーシング1内に戻すことができる。
【0153】
そして、所要回数の抽出物抽出処理工程を繰り返した後には、下流側三方弁12を操作して、流出流路5と戻し流路10とを非連通状態となすことにより、流路形成ケーシング1内にて所要回数にわたって抽出物抽出処理を行った抽出物6を、流出流路5を通して流出させて処理物回収部7に回収することができる。
【0154】
このようにして、抽出物抽出処理行程を繰り返し所要回数行うことができるようにしているため、例えば、流動性処理物3がフコイダンを含有する海藻類である場合には、抽出物としてのフコイダンの平均分子量を所望の分子量(例えば、10,000〜5,000,000、好ましくは、60,000以下)に容易に設定することができると共に、設定した分子量の抽出物を精度良く得ることができる。
【0155】
また、本実施の形態では、第1室形成片33と第2室形成片36の平面視形状を六角と成してハニカム状に多数配列したものを示したが、かかる形状に何ら限定されず、第1室形成片33と第2室形成片36の平面視形状を、図17に変容例1として示す三角、図18に変容例2として示す四角、図19に変容例3として示す八角…等に形成することもできる。
【0156】
なお、本実施の形態では大径な第1支持片32の外径をケーシング本体20の内周面に密接させてシール機能を保持させているが、かかる構造に代えて、ケーシング本体20の内周面と第1支持片32の外周縁部との間に耐熱性を持つOリング等のシール部材(図示せず)を介設してシール機能を保持させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】本発明に係るフコイダンを含有する海藻類の前段の処理方法の行程説明図。
【図2】本発明に係るフコイダンを含有する海藻類の後段の処理方法の行程説明図。
【図3】血流測定結果を示す棒グラフ。
【図4】血流測定結果を示す折れ線グラフ。
【図5】被験者の血流の継時的変化を示す顕微鏡写真。
【図6】血流測定結果を示す折れ線グラフ。
【図7】被験者の脳波の継時的変化を示すグラフ。
【図8】本発明に係る抽出物抽出処理装置の断面説明図。
【図9】同抽出物抽出処理装置の流路形成ケーシングの断面説明図。
【図10】第1室形成体の正面図(a)と第2室形成体の正面図(b)。
【図11】第1室形成体の斜視図(a)と第2室形成体の斜視図(b)。
【図12】図9のI-I線断面図。
【図13】第1室形成片の拡大断面図。
【図14】同第1室形成片の一部拡大断面図。
【図15】変容例1としての第1室形成片の一部拡大断面図。
【図16】変容例2としての第1室形成片の一部拡大断面図。
【図17】変容例1としての第1室形成体と第2室形成体を重合配置して分流室ないしは合流室を形成した状態の正面説明図。
【図18】変容例2としての第1室形成体と第2室形成体を重合配置して分流室ないしは合流室を形成した状態の断面正面説明図。
【図19】変容例3としての第1室形成体と第2室形成体を重合配置して分流室ないしは合流室を形成した状態の正面説明図。
【符号の説明】
【0158】
A 抽出物抽出処理装置
1 流路形成ケーシング
2 流入流路
3 流動性処理物
4 処理物供給部
5 流出流路
6 抽出物
7 処理物回収部
8 分流室
9 合流室
10 戻し流路
41 脱塩・洗浄処理槽
42 海藻類
43 給水部
44 浸漬処理容器
45 水溶液
46 回転槽
47 ミキサー
48 細断海藻類
49 抽出処理器
49 濃縮装置
50 粗目フィルター
51 低分子化処理器
52 最終抽出物
53 限外濾過装置
54 最終抽出物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理として、にがりを添加した水溶液中にフコイダンを含有する海藻類を浸漬処理して、浸漬処理した海藻類を微細化してフコイダンを含有する抽出物を抽出処理することを特徴とするフコイダンを含有する海藻類の処理方法。
【請求項2】
フコイダンを含有する抽出物の抽出処理は、多数の分流室内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室内にて繰り返し合流される流動を流下方向に順次繰り返すことにより、海藻類を微細化して抽出物の抽出を行うことを特徴とする請求項1記載のフコイダンを含有する海藻類の処理方法。
【請求項3】
抽出処理された抽出物は、濾過処理した後に、多数の分流室内にて繰り返し分流されると共に、多数の合流室内にて繰り返し合流される流動を流下方向に順次繰り返すことにより、抽出物を低分子化処理することを特徴とする請求項1又は2記載のフコイダンを含有する海藻類の処理方法。
【請求項4】
低分子化処理された抽出物には、にがりを添加することを特徴とする請求項3記載のフコイダンを含有する海藻類の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−340696(P2006−340696A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−171617(P2005−171617)
【出願日】平成17年6月10日(2005.6.10)
【出願人】(504244173)株式会社MGグローアップ (15)
【出願人】(505219543)
【Fターム(参考)】