説明

フタリド誘導体の使用

本発明は、フタリド誘導体及び抗腫瘍薬剤の感受性増強薬或いは耐性逆転剤を製造する際のその使用を公開する。本発明にかかるフタリド誘導体は、薬剤耐性腫瘍細胞の化学治療薬に対する感受性を増強することができ、腫瘍細胞の薬剤耐性を5〜30倍低くすることが可能であり、且つ複数の化学治療薬によって誘導される腫瘍細胞のアポトーシスの効果を著しく増強することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノマーとダイマーが薬剤耐性の腫瘍細胞の化学療法薬に対する薬剤感受性を増強させることができるフタリド誘導体(PA)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多薬剤耐性(multi-drug resistance,MDR)とは、腫瘍細胞が化学構造、効能や作用機構の異なる複数の抗がん薬に交差耐性(cross-resistance)を生じることである。臨床研究によると、通常、結腸がん、腎がん、肝がん、非小細胞性肺がん、神経膠質腫、カポジ肉腫、前立腺がんなどの固形がんは薬剤耐性を持つ腫瘍と考えられ、さらに診断の時から既に薬剤耐性を持っている可能性もあり、これは原発性薬剤耐性(intrinsic MDR)であることを示している。これらの腫瘍細胞には、通常、複数の薬剤耐性機構が同時に働き、化学療法薬に対する広範の薬剤耐性をもたらす。一方、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、リンパ腫、乳がん、卵巣がんなどの腫瘍は通常、治療をはじめる段階では化学療法薬に感受性が高いが、治療が進むにつれて薬剤耐性が生じ、特に再発を治療する際に薬剤耐性が著しく高くなり、獲得性薬剤耐性(acquired MDR)といわれ、薬剤耐性を獲得した後で化学療法の効果が著しく低くなる。MDRの存在と獲得のため、通常の化学療法の効果が低くなったり、予後不良となったり、再発・転移が起きやすくなったりする。ある意味では、腫瘍が死因となる病例で、90%は原発性或いは獲得性薬剤耐性に関わる。
【0003】
薬剤耐性の発生機構は既に広く研究され、総体的に見れば、主としてABCトランスポータータンパク質ファミリーによる化学療法薬の排出、抗アポトーシスタンパク質の発現の強化、代謝経路と制御機構の変化、解毒システムの強化などが含まれる複数の因子と複数の機構によって共に制御される。
【0004】
そのため、既存の技術では、効果の高い化学治療薬の感受性増強薬の開発が切望されている。
【発明の開示】
【0005】
本発明は、効果の高い化学治療薬の感受性増強薬及びその抗腫瘍化学治療薬の感受性増強薬或いは耐性逆転剤の製造での応用を提供することを目的とする。上述の感受性増強薬は化学式(I)に示すフタリド及びその誘導体(モノマー及びダイマーも含まれる)である。
【0006】
本発明は、第一に、抗腫瘍薬の感受性増強薬或いは耐性逆転剤の製造に用いられる化学式(I)に示すフタリド或いはその誘導体の使用を提供する。
【化19】

【0007】
ここで、式中のR1は、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、C1〜C4カルボキシル基、ハロゲン原子を表す;
R2は、存在しないか、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、C1〜C4カルボキシル基、ハロゲン原子を表す;
R3とR4はそれぞれ、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、ハロゲン原子を表す;
R5とR8は、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、C1〜C4カルボキシル基、フェニル基、アリール基、アラルキル基、一個或いは二個の窒素原子を含む5員環或いは6員環の複素環、ハロゲン原子を表す;
R6とR7はそれぞれ、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C1〜C4カルボキシル基、ハロゲン原子を表すか、或いは、R6とR7が結合して共に5〜7員環を形成する。
【0008】
ここで、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、フェニル基、アリール基、アラルキル基及び複素環は、0〜3個のC1〜C3アルキル基、水酸基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい。
【0009】
他の好ましい例において、前述の誘導体は、式(I)に示すフタリドのジヒドロ誘導体、テトラヒドロ誘導体、或いは式(I)に示すフタリド又はそのジヒドロ誘導体又はテトラヒドロ誘導体のダイマーである。
【0010】
好ましくは、前記のフタリド或いはその誘導体は、以下の群から選ばれる構造を持つ。
【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【0011】
式中、R1〜R8は上述のように定義する。
【0012】
他の好ましい例において、前述のフタリド或いはその誘導体は、以下の群から選ばれる構造を持つ。
【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【0013】
好ましくは、上述の抗腫瘍薬は、アドリアマイシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノマイシン、エピルビシン、エトポシド、ベプシド、ラステット、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ハーセプチン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、CCNU、メルファラン、フェニルアラニン ナイトロジェンマスタード、メルカプトプリン、アメトプテリン、マイトマイシン、ミトキサントロン、DHAD、オキサリプラチン、プロカルバジン、PCB、マブセラ、ステロイド、ストレプトゾシン、STZ、タキソール、タキソテール、チオグアニン、チオテパ、テスパミン、チオホスホルアミド、ラルチトレキセド、トポテカン、トレオサルファン、ウラシル、ビンブラスチン、ビンカレウコブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、グリベック、ヒドロキシカンプトテシン、及びその誘導物或いは混合物からなる群から選ばれるものである。
【0014】
他の好ましい例において、前述の抗腫瘍薬は、非小細胞性肺がん、前立腺がん、腸がん、肝がん、白血病、骨髄腫、リンパ腫、乳がん、卵巣がん、胃がん、食道がん、結腸がん及び肉腫からなる群から選ばれる腫瘍の治療に用いられる。
【0015】
本発明は、第二に、(a)有効量の化学式(I)に示すフタリド或いはその誘導体、(b)安全有効量の抗腫瘍薬及び(c)薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0016】
好ましくは、上述の抗腫瘍薬は、アドリアマイシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノマイシン、エピルビシン、エトポシド、ベプシド、ラステット、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ハーセプチン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、CCNU、メルファラン、フェニルアラニン ナイトロジェンマスタード、メルカプトプリン、アメトプテリン、マイトマイシン、ミトキサントロン、DHAD、オキサリプラチン、プロカルバジン、PCB、マブセラ、ステロイド、ストレプトゾシン、STZ、タキソール、タキソテール、チオグアニン、チオテパ、テスパミン、チオホスホルアミド、ラルチトレキセド、トポテカン、トレオサルファン、ウラシル、ビンブラスチン、ビンカレウコブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、グリベック、ヒドロキシカンプトテシン、及びその誘導物或いは混合物からなる群から選ばれる。
【0017】
本発明は、第三に、P-gpの発現を抑制する組成物、或いはグリオキサラーゼIの発現を抑制する組成物、或いはBcl-2の発現を抑制する組成物の製造に用いられる化学式(I)のフタリド誘導体の使用を提供する。
【0018】
本発明は、第四に、化学式(I)に示すフタリド或いはフタリド誘導体を、治療を必要とする哺乳動物に安全有効量で投与する工程を含む腫瘍の治療方法を提供する。
【0019】
好ましくは、上記の方法は、さらに少なくとも一種類の上述したような抗腫瘍薬を使用する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明者は鋭意検討をしたところ、式(I)のフタリド及びその誘導体は有効な抗腫瘍化学治療薬の感受性増強薬であることを見出した。この感受性増強効果に基づき、フタリド及びその誘導体は腫瘍の抗腫瘍薬に対する多薬剤耐性を有効に逆転することができる。これに基づき、本発明が完成された。
【0021】
本発明において、「アルキル基」という用語は、直鎖或いは分枝の飽和の、1〜8個の炭素原子(好ましくは1〜6個の炭素原子)を有する脂肪族炭化水素基を表す。上述のアルキル基は分枝でもよい、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基などがある。「アルケニル基」は、少なくとも一個の炭素―炭素二重結合と2〜8個の炭素原子(好ましくは2〜6個の炭素原子)を有する直鎖或いは分枝の炭化水素基を含む。「アルキニル基」は、少なくとも一個の炭素―炭素三重結合と2〜8個の炭素原子(好ましくは2〜6個の炭素原子)を有する直鎖或いは分枝の炭化水素基を含む。
【0022】
本発明において、「アリール基」という用語は、芳香族系を表し、単環、もしくはもともと縮合した或いは一体に結合した複数の芳香環で少なくとも一部が縮合した或いは結合した環が形成する芳香族共役系でもよい。アリール基は以下のものが含まれる(しかし、限定するものではない):フェニル基、ナフチル基、テトラヒドロナフチル基。
【0023】
本発明において、「シクロアルキル基」は、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル基を表し、例えばシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基などがある。
【0024】
本発明において、「アルコキシル基」は、1〜8個の炭素原子を有するアルコキシル基を表し、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基などがある。
【0025】
本発明において、「複素環」という用語は、安定な4〜7員環(好ましくは5〜6員環)の単環或いは安定な多環性複素環を表し、この複素環は飽和、部分的に不飽和或いは不飽和のものでもよく、かつ炭素原子とN、O及びS原子からなる群から選ばれる1〜4個のヘテロ原子で構成する。NとS原子は酸化されてもよい。複素環は任意の多環も含む。ここで、前記複素環は、それぞれ芳香環に縮合してもよい。
【0026】
「置換されたアリール基」或いは「置換された複素環」は、ハロゲン、CN、OH、NO、アミノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、アリーロキシ基、置換されたアルコキシル基、アルキルカルボニル基、アルキルカルボキシル基、アルキルアミノ基又はアリールチオ基からなる群から選ばれる1-3個の基で置換されたアリール基或いは複素環を表す。好ましくは、置換基は、ハロゲン、C1〜C4アルキル基、アルキル基、水酸基である。
【0027】
本発明において、「ハロゲン原子」は、ハロゲン元素、すなわちF、Cl、Br、或いはIを表す。
【0028】
〔活性成分〕
本発明の活性成分は、式(I)のフタリド誘導体である。
【化37】

【0029】
本発明において、「フタリド誘導体」という用語は、式(I)のフタリド、或いはベンゼン環に水素原子が付加されたフタリド誘導体のモノマーを表す。この用語はさらに、式(I)のフタリド、或いはその水素化産物のダイマー或いはポリマー(好ましくはダイマー)を表す。
【0030】
本発明において、「ジヒドロ誘導体」は、フタリドのベンゼン環において、炭素−炭素二重結合に対応する隣接した炭素原子に2個の水素原子が付加されたことを表す。上述のフタリドの「テトラヒドロ誘導体」は、フタリドのベンゼン環において、炭素−炭素二重結合に対応する炭素原子に4個の水素原子が付加されたことを表す。例えば、式(k)’の化合物は式(k)の化合物の一種のジヒドロ誘導体である。式(k)''の化合物は式(k)の化合物の一種のテトラヒドロ誘導体である。
【化38】

【化39】

【化40】

【0031】
本発明のフタリド誘導体は、人工合成したもの或いは自然界から分離したものである。例えば、セリ科のトウキもしくはセンキュウから式(I)のフタリドのモノマーおよび/またはダイマーを分離抽出することができる。
【0032】
〔医薬組成物〕
本発明は、式(I)のフタリド誘導体(モノマーとダイマーが含まれる)を活性成分として、それに一種類或いは多種類の薬学的に許容される担体或いは賦形剤(例えば溶剤、希釈剤)を含有する医薬組成物も含む。本発明に使用できる薬学的に許容される担体は、各種の通常の固体担体と液体担体を含む。例えば、固体担体は、淀粉、ラクトース、りん酸水素カルシウム、微結晶セルロースなど、液体担体は、無菌水、ポリエチレングリコールなどを含み、活性成分の特性と要求される特定の薬剤の投与の様態に適合すればよい。
【0033】
本発明の医薬組成物は、例えば、錠剤、カプセル、分散できる粉末、顆粒、もしくは懸濁液、シロップ(例えば約10〜50%の砂糖を含む)、エリキシル(例えば約20〜50%のエタノールを含む)などの各種の通常の製剤に製造してもよく、或いは無菌の注射できる溶液又は懸濁液の様態で(等張媒体に約0.05〜5%の懸濁液を含有する)非経口投与してもよい。例えば、これらの医薬製剤は、担体と混合したときに約0.001〜99.9重量%、好ましくは2.5〜90重量%、より好ましくは5〜60重量%の活性成分を含有することができる。
【0034】
他の好ましい医薬組成物は、同時に抗腫瘍薬剤を含有する。例えば、(a)0.01〜99重量%(好ましくは0.1〜90重量%)のフタリド誘導体のモノマー或いはダイマー、(b)0.01〜99重量%(好ましくは0.1〜90重量%)の抗腫瘍薬剤、(c)薬学的に許容される担体を含有する。通常、成分(a)と成分(b)の重量比は1:100〜100:1、好ましくは10:1〜1:10である。
【0035】
医薬組成物は、さらに他の添加剤、例えば抗生物質、防腐剤、酸化防止剤などを含有してもよい。
【0036】
用いられる活性成分の有効使用量は薬剤の投与の様態と治療される疾病の重篤度によって変更できるが、通常はフタリド誘導体のモノマー或いはダイマーを毎日約0.05〜500mg/kg体重(好ましくは0.1〜100mg/kg体重)の使用量で投与する場合、理想的な効果を得られ、好ましくは毎日2〜4回にわけた使用量で、或いは徐放性製剤の形態で薬剤を投与する。
【0037】
〔治療方法〕
本発明は、治療を必要とする哺乳動物に安全有効量でフタリド誘導体のモノマー或いはダイマーを使用する工程を含む治療方法を提供する。好ましくは、この方法は、さらに、他の抗腫瘍薬剤(例えばP-gpの基質としての抗腫瘍薬剤)或いは他の治療方法(例えば化学療法)と併用する工程を含む。
【0038】
フタリド誘導体のモノマー或いはダイマーだけで、或いは併用すると、各種の腫瘍を治療することができる。代表的な例(しかし、限定するものではない)には、非小細胞性肺がん、前立腺がん、腸がん、肝がん、白血病、骨髄腫、リンパ腫、乳がん、卵巣がん、胃がん、食道がん、結腸がん、肉腫などがある。
【0039】
フタリド誘導体のモノマー或いはダイマーの給与の様態は特に限定されていない。経口及び静脈内、筋肉内、局所、腫瘍内又は皮下などの様態で投薬することができる。好ましい様態は経口、静脈内、又は腫瘍内の投薬である。
【0040】
本発明の主な利点は下述の通りである。
【0041】
本発明のフタリド誘導体のモノマー或いはダイマーは多薬剤耐性(multidrug resistance,MDR)の腫瘍細胞の抗がん薬に対する感受性を広域的に増強する効果を持ち、抗がん薬の腫瘍細胞を殺傷する効果を有効に増強する。これらはAdr(adriamycin、アドリアマイシン)などの抗がん薬の耐性腫瘍細胞に対する作用にはP-gp抑制剤のベラパミル(Verapamil,VER)以上の逆転の効果を持ち、ビンクリスチン(Vincristine,VCR)、タキソール(Taxol)及びシスプラチン(Cisplantin, DDP)に対する効果がVERより2〜5倍以上高い。当該種類の誘導体は腫瘍細胞の薬剤耐性を5〜30倍低くし、かつ多種の化学治療薬によって誘導される腫瘍細胞のアポトーシスの効果を著しく増強することができる。
【0042】
以下具体的な実施例によって、さらに本発明を説明する。これらの実施例は本発明を説明するために用いるもので、発明の範囲の制限にはならないと理解されるものである。以下の実施例に特に具体的な条件を説明しない実験方法は通常の条件、或いはメーカーの推薦する条件で行われる。
【0043】
実施例1、センキュウまたはトウキからフタリド誘導体を抽出する
3kgの薬材(センキュウ或いはトウキ)を乾燥し、粉砕し、20メッシュ篩を通した。粉末を2倍体積(v/w)のクロロホルムで3回抽出し、その抽出液からクロロホルムを回収し、エキスを作成し、n-ヘキサンとメタノールで分配した。メタノール層をG254シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を繰り返し、溶出液はヘキサン/アセトニトリル、容積比は9:1〜5:5で、S1〜S5がそれぞれ得られた。すなわち、図1で示す8、12、7、14、3号のピークである。ヘキサン層をG254シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製を繰り返し、溶出液は石油エーテル/酢酸エチルで、容積比9:1から酢酸エチルのみまで勾配溶出し、S6〜S8がそれぞれ得られた。すなわち、図1で示す16、18、17号のピークである。各単体を相応の極性溶媒に溶解し、過飽和にし、室温で2〜3回再結晶し、得られた結晶をNMRで構造を解析した。
【0044】
得られた化合物S1〜S5はPA誘導物のモノマーで、S6〜S8はそのダイマーである。
【0045】
S1:
【化41】

【0046】
1H-NMR(CDCl3)δ4.96(1H,dd,J=6.5,4.0,H-3) 2.45(4H,m,H-4,H-5) 5.88(1H,dt,J=10.0,3.5,H-6) 6.16(1H,dt,J=10.0,1.0,H-7) 1.51(1H,m, H-8a),1.85(1H,m,H-8b) 1.36(4H,m,H-9 H-10) 0.87(3H,t,J=7.5,H-11)。
【0047】
S2:
【化42】

【0048】
1H-NMR(CDCl3)δ5.52(1H,dd,J=8.0,3.2,H-3), 7.33(1H,dd,J=7.5,1.4, H-5),7.31(1H,t,J=7.5,H-6),7.10(1H,dd,J=7.5,1.4,H-7),2.31 1.73(各1H, m,H-8), 1.37(4H,m,H-9,H-10), 0.89(3H,t,J=7.1,H-11), 9.59(1H,s,4-OH)
13C-NMR(CDCl3) δ171.2(s,C-1) 80.9(d,C-3) 136.1(s,C-3a) 152.4(s,C-4) 120.2(d,C-5) 130.3(d,C-6) 115.9(d,C-7) 127.8(s,C-7a) 32.3(t,C-8) 26.9(t,C-9) 22.4(t,C-10) 13.9(q,C-11)。
【0049】
S3:
【化43】

【0050】
1H-NMRδ2.59(2H,m,H-4) 2.06,2.14(各1H,m,H-5) 4.33(1 H,ddd,J=5.5,3.5,2.5,H-6) 4.61(1H,brd,J=2.5,H-7) 5.36(1H, t,J=8.0,H-8) 2.38(2H,m,J=8.0,7.5,H-9) 1.58(2H,m,J=7.5,7.5,H-10) 0.96(3H,t,J=7.5, H-11)。
【0051】
S4:
【化44】

【0052】
1H-NMR(CDCl3)δ2.47(2H,m,H-4) 2.57(2H,t,J=13.5,H-5) 5.96(1H,dt,J=9.5 4.0,H-6) 6.24(1H,dt,J=9.5,1.5,H-7) 5.19(1H,t,J=8.0,H-8) 2.33(2H,q,J=7.5 H-9) 1.47(2H,m,H-10) 0.92(3H,t,J=7.5,H-11)。
【0053】
S5:
【化45】

【0054】
1H-NMR(CDCl3) δ2.01, 1.91(2H,m,H-4);1.92,1.67(2H,m,H-5); 3.46(1H,q,H-5); 3.77(1H,d,H-7); 5.13(1H,t,H-8); 1.96(2H,m,H-9); 1.37(2H,m,H-10); 0.96(3H,t,H-11); 2.0(1H,m,6-OH,7-OH)。
【0055】
S6:
【化46】

【0056】
1H-NMR(CDCl3) δ2.02, 2.08 (各1H, m, H-4) 1.54, 1.91 (各1H, m, H-5) 2.55 (1H,t, J=7.8, H-6) 3.25 (1H,d,J=8.9, H-7) 5.7(1H,t,J=7.8,H-8) 2.29 (2H,q,J=7.3,H-9) 1.46 (2H, m, H-10) 0.93 (3H,t,J=7.3,H-11) 1.4, 2.03 (1H,m,H-4’) 1.30,1.88(1H,m,H-5’) 2.99 (2H,m,H-6’) 7.36 (1H,d,J=6.6, H-7’) 5.0 (1H,t,J=7.6,H-8’) 2.18 (2H,m,H-9’) 1.45 (2H,m,H-9’) 0.92 (3H,t,J=7.3)
13C-NMR(CDCl3) δ168.4 (C-1), 148.1 (C-3), 155.0 (C-3a), 19.8 (C-4), 29.0 (C-5), 38.4 (C-6), 41.6 (a,C-7), 126.6 (C-7a), 112.1 (C-8), 28.0 (C-9), 22.3 (C-10), 13.9 (b,C-11), 164.9 (C-1’), 150.5 (C-3’), 47.6 (C-3’a), 31.1 (C-4’), 25.8 (C-5’), 41.5 (a,C-6’), 142.0 (C-7’), 134.3 (C-7’a), 108.8 (C-8’), 27.5 (C-9’), 22.3 (C-10’), 13.8 (b,C-11’)。
【0057】
S7:
【化47】

【0058】
1H-NMR(CDCl3) δ2.02,2.57 (各1H,m,H-4) 2.02,2.17 (各1H,m,H-5) 2.55 (1H,m,H-6) 3.47 (1H,d,J=7.3,H-7) 5.21 (1H,t,J=7.8,H-8) 2.33 (2H,m,H-9) 1.50 (2H,m,H-10) 0.95 (3H,t,J=7.6,H-11) 2.58,2.74 (各1H,m,H-4’) 2.47,2.75 (各1H,m,H-5’)5.93 (1H,dt,J=9.6,4.1, H-6’) 6.17 (1H,dt,J=9.6, 1.8, H-7’) 2.94 (1H,q,J=7.8,H-8’) 1.45 (2H,m,H-9’) 1.14 (2H,m,H-10’) 0.87 (3H,t,J=7.6,H-11’)
13C-NMR(CDCl3) δ168.5 (C-1), 149.2 (C-3), 154.6 (C-3a), 19.6 (C-4), 26.2 (C-5), 35.0 (c,C-6), 44.0 (C-7), 122.3 (c,C-7a), 112.2 (C-8), 28.0 (C-9), 22.4 (C-10), 13.9 (C-11), 170.3 (C-1’), 92.0 (C-3’), 160.1 (C-3’a), 21.0 (c,C-4’), 20.7 (c,C-5’), 138.7 (C-6’), 117.0 (C-7’), 122.5 (d,C-7’a), 32.3 (c,C-8’), 20.0 (c,C-9’), 22.6 (C-10’), 14.1 (C-11’)。
【0059】
S8:
【化48】

【0060】
1H-NMR(CDCl3) δ4.56 (1H,m,H-3) 1.98, 2.08 (各1H,m,H-4) 1.53,1.90 (各1H,m,H-5) 2.54 (1H,m,H-6) 3.18 (1H,d,J=8.9,H-7) 1.38,1.70 (各1H,m,H-8) 1.26 (2H,m,H-9) 1.45 (2H,m,H-10) 0.93 (3H,t,J=7.34,H-11) 1.40,2.03 (各1H,m,H-4’) 2.30,1.87 (各1H,m,H-5’) 2.97 (1H,m,H-6’) 7.33 (1H,d,J=6.6,H-7’) 4.98 (1H,t,J=7.3) 2.18 (2H,q,J=7.8,H-9’) 1.44 (2H,m,H-10’) 0.93 (3H,t,J=7.3,H-11’)
13C-NMR(CDCl3) δ165.0 (C-1), 82.4 (C-3), 47.3 (C-3a), 30.9 (C-4), 25.7 (C-5), 41.6 (C-6), 141.9 (C-7), 134.5 (C-7a), 32.2 (C-8), 26.5 (C-9), 22.3 (C-10), 13.7 (C-11), 171.9 (C-1’), 150.5 (C-2’), 168.1 (C-3a), 22.4 (C-4’), 28.8 (C-5’), 38.3 (C-6’), 41.7 (C-7’), 127.1 (C-7a’), 108.6 (C-8’), 27.4 (C-9’), 22.2 (C-10’), 13.9 (C-11’)。
【0061】
得られたS1〜S8のPA誘導体のモノマー或いはダイマーは以後の実験に用いられた。得られた化合物S1〜S5はPA誘導物のモノマーで、得られた化合物S6〜S8はPA誘導物のダイマーである。
【0062】
実施例2、各細胞株の薬剤耐性測定
用いられた細胞系はK562(ヒト慢性骨髄性白血病細胞系)及びK562/Adr(K562を低用量のアドリアマイシンで長期誘導して得られたアドリアマイシンなどの化学治療薬に耐性を持つ細胞系)、KB(ヒト口腔上皮細胞系)及びKBv200(KBを低用量のビンクリスチンで長期誘導して得られたビンクリスチンなどの化学治療薬に耐性を持つ細胞系)、MCF-7(ヒト乳がん細胞系)及びMCF-7/Adr(MCF-7を低用量のアドリアマイシンで長期誘導して得られたアドリアマイシンなどの化学治療薬に耐性を持つ細胞系)で、以上の細胞系は全部中国医学科学院血液学研究所から購入したものである。
【0063】
K562/Adr多薬剤耐性細胞系はP-gp、Bcl-2ファミリーの高発現、グリオキサラーゼI(glyoxalase I)の活性の増強などの複数の薬剤耐性機構の共存を主要な特徴とする。アドリアマイシンには20倍の薬剤耐性を持ち、ビンクリスチン、ダウノマイシン、ミトキサントロン、タキソールなどには交差耐性を持つ。
【0064】
KBv200多薬剤耐性細胞系も、P-gp、Bcl-2ファミリーの高発現、グリオキサラーゼI(glyoxalase I)の活性の増強などの複数の薬剤耐性機構の共存を主要な特徴とする。ビンクリスチンには20倍の薬剤耐性を持ち、アドリアマイシン、ダウノマイシン、タキソールなどには交差耐性を持つ。
【0065】
MCF-7/Adr多薬剤耐性細胞系は、同様に、P-gp、Bcl-2ファミリーの高発現、グリオキサラーゼI(glyoxalase I)の活性の増強などの複数の薬剤耐性機構の共存を主要な特徴とする。
【0066】
細胞の増殖抑制の中央値抑制濃度(IC50)はグラフパッドプリズムソフトウェア(GraphPad Prism software(San Diego,CA))というソフトウエアで、sigmoldal薬剤反応非線形衰退モデルを使用して分析する。
【0067】
用いられた試薬と装置は以下の通りである。
【0068】
PAのモノマーとダイマーの溶液:その単結晶をDMSOで溶解し、5mg/mlの使用溶液を調製し、さらにRPMI 1640の培地で使用溶液を調製する。アドリアマイシン(Adr)、ビンクリスチン(VIN)、タキソール(Taxol)、シスプラチン(Cisplantin, DDP)、RPMI 1640、MTT、牛胎児血清、培養プレート、二酸化炭素インキュベーター、マイクロプレートリーダー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、フローサイトメーター(FACS)、P-gp蛍光抗体キットUIU2(Immunotech A Coulter Company,Franceから購入した)。
【0069】
1、FACSでP-gpの発現を検出する
対数増殖期にある細胞を集め、PBSで二回洗浄を行い、P-gp蛍光抗体キット(UIU2)の取扱説明書に従い、FACSでP-gpの発現を検出し、各サンプルにつき10000個の細胞がカウントされた。
【0070】
検出の結果:
K562:P-gpの発現陽性率は0.22%で、K562/Adr:P-gpの発現陽性率は83.6%である。
KB:P-gpの発現陽性率は0.37%で、KBv200:P-gpの発現陽性率は76.3%である。
MCF-7:P-gpの発現陽性率は0.36%で、MCF-7/Adr:P-gpの発現陽性率は83.4%である。
【0071】
以上の実験の結果は、選ばれた細胞株の主な薬剤耐性機構が高発現のP-gpに関わる可能性があることを示している。
【0072】
2、グリオキサラーゼI(GLO1)の酵素活性測定
1mM PMSFを含有するPBSで細胞の凍結融解を繰り返し、超音波で細胞を破砕し、12,000で20分遠心し、上清を集めた。GLO1は、7.9mMのMG、1mMのグルタチオン、14.6mMの硫酸マグネシウム、182mMのイミダゾール-HCl(pH 7.0)の混合液と反応させ、240nmの吸収ピークでOD値を測定することで検出できる。結果は表1に示す。
【表1】

【0073】
その結果は、用いられた細胞株の薬剤耐性機構の一つがGLO1の活性の増強に関わることを示している。
【0074】
3、Bcl-2の発現検出
NP-40細胞溶解剤で細胞を溶解し、BCAで定量する。1.2% SDS-PAGEゲルでタンパク質を分離し、セミドライ式でニトロセルロース膜に転写し、抗Bcl-2の一次抗体(Sigma社)を加え、発色反応を行った。
【0075】
結果は図2に示す。その結果は、用いられた細胞株の薬剤耐性機構の一つがBcl-2の高発現に関わることを示している。
【0076】
2、薬剤耐性細胞株の通常の化学治療薬対する薬剤耐性を測定
対数増殖期にある細胞を集め、10%の牛胎児血清を含有するRPMI 1640培地で細胞懸濁液を調製し、各ウェルにつき100μlずつ96ウェル培養プレートに入れ、各ウェルにつき細胞数が1×104個になった。半懸濁細胞(K562とK562/Adr)には異なる濃度勾配のアドリアマイシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチンを直接入れ、接着細胞は接種してから24時間培養し壁に接着させ、それから異なる濃度の上述の薬剤を入れた。各濃度勾配につき6個のウェルで平行に測定を行い、各ウェルの最終体積は200μlで、不足部分は培地で補足し、37℃、飽和湿度、5% CO2の条件で68時間培養した。各ウェルにつきMTTを50 μl(2 mg/ml)ずつ加え、遠心し上清を除き、各ウェルにつきDMSOを120 μl加え、振動機で振動し、結晶を十分に溶解させ、マイクロプレートリーダーで590 nmの波長でOD値を測定した。
【0077】
計算方法:IC50=抑制率は50%であるときの薬剤の濃度
薬剤耐性倍数(RF)=薬剤耐性細胞IC50 /高感受性細胞IC50。
【0078】
各薬剤耐性細胞株の通常の化学治療薬に対する薬剤耐性の測定結果は表2に示す(IC50:μg/ml)。
【表2】

【0079】
その結果は、選ばれた薬剤耐性細胞株が通常の化学治療薬に交叉耐性、即ち多薬剤耐性を持つことを示している。
【0080】
実施例3、PA系誘導物の細胞学的効果の評価−薬剤耐性細胞株に対する増殖抑制の作用
方法と手順:細胞を96ウェルプレートに接種し、各ウェルにつき1×103個の細胞で、K562/Adrは直接にPAを入れ、KBv200とMCF-7/Adrは接着後にPAを入れ、薬剤の濃度は0、0.1、0.5、1、5、10、20、40、80、160 μg/mlの五種であった。実施例2の方法に従いMTTを測定し、IC50を算出した。この実験は三回繰り返された。
【0081】
PAの薬剤耐性細胞株に対する増殖抑制の作用の測定結果は、表3に示す(IC50 (μg/ml))。
【表3】

【0082】
その結果は、PA系誘導物が10 μg/mlぐらいの濃度で著しい細胞毒作用を持っていないことを示している。
【0083】
実施例4、PA系誘導物の細胞学的効果の評価−通常の化学治療薬に対する感受性増強効果
対数増殖期にある細胞を集め、10%の牛胎児血清を含有するRPMI 1640培地で細胞懸濁液を調製し、各ウェルにつき100μlずつ96ウェル培養プレートに入れ、各ウェルにつき細胞数は2×103個(懸濁細胞)或いは1×103個(接着細胞)であった。懸濁細胞は接種後に培養プレートで30分適応させ、接着細胞は培養し接着させ、それから薬剤を加えた。対照群(Ctrl)にはPAを加えず、抗がん薬だけを加え、各PA群の薬剤濃度は全部10 μg/mlで、化学治療薬の濃度は0.001 μg/mlから勾配で20 μg/mlまで増加し、各濃度につき6個のウェルで平行に測定を行い、各ウェルの最終体積は200μlで、不足部分はRPMI 1640で補足し、37℃、飽和湿度、5% CO2の条件で68時間培養した。実施例4と同様な方法でMTTを測定し、IC50を算出した。
【0084】
感受性増強倍数の計算公式:感受性増強倍数(RF)=感受性増強薬がない場合のIC50/感受性増強薬がある場合のIC50
PA(10 μg/ml)のK562/Adr細胞に対する感受性増強作用の結果は、表4に示す。
PA(10 μg/ml)のKBv200細胞に対する感受性増強作用の結果は、表5に示す。
PA(10 μg/ml)のMCF-7/Adr細胞に対する感受性増強作用の結果は、表6に示す。
【表4】

【表5】

【表6】

【0085】
実施例5、PA系誘導物の細胞学的効果の評価−通常の化学治療薬によって誘導される細胞アポトーシスの感受性増強効果
実施例2の方法に従い細胞を接種し薬剤で誘導し、48時間後に各ウェルにつき5μlのTrypan Blue(4 mg/ml)を加え、5分後に顕微鏡を用いて観察し、各ウェルにつき500個の細胞をカウントし、青に染めたものは死細胞として、生存率を算出した。
【0086】
細胞生存率=[1-死細胞(青)/500]*100
PA系誘導物のアドリアマイシンによって誘導されるアポトーシスに対する感受性増強効果は図3に示す。S1〜S8の濃度は全部10 μg/mlであり、Adrの濃度は全部2.5 μg/mlである。S1+-S8+はS(10 μg/ml)及びAdr(2.5 μg/ml)の併用を示す。その結果は、PA系誘導物がAdrによって誘導されるアポトーシスの感受性を著しく高くすることを示している。
【0087】
実施例6、PA系誘導物の化学治療薬によって誘導されるアポトーシスに対する感受性増強効果をFACSで検出する
MCF-7/Adr細胞を6ウェルプレートに接種し、各ウェルにつき1×106個の細胞であった。24時間の培養後に上述の方法を用いてPA及び化学治療薬を加え、さらに72時間培養した。細胞を0.25%のトリプシンで消化し集め、細胞を沈殿させ、予め冷却した70%エタノールで固着し、4℃で保存した。検出を行う前に標本をPBSで3回洗浄し、リボヌクレアーゼ(1 g/ml)で15分間消化し、Propidium Iodide (PI、50mg/L)で30分間染色し、そしてフローサイトメーターを用いて検出を行い、アポトーシス細胞の割合を算出した。
【0088】
結果を図4に示す。Adrの濃度は2.5 μg/mlであり、PAは10 μg/mlであり、S1+-S8+はS(10 μg/ml)及びAdr(2.5 μg/ml)の併用を示す。その結果は、PA系誘導物がAdrによって誘導されるMCF-7/Adr細胞のアポトーシスの感受性を著しく高くすることを示している。
【0089】
各文献がそれぞれ単独に引用されるように、本発明に係るすべての文献は本出願で参考として引用する。また、本発明の上記の内容を読み終わった後、この分野の技術者が本発明を各種の変動や修正をすることができるが、それらの等価の様態のものは本発明の請求の範囲に含まれることが理解されるのである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、フタリド誘導体のクロマトグラムを示す。
【図2】図2は、Bcl-2のウェスタンブロットの検出結果を示す。
【図3】図3は、PA系誘導体のAdrによって誘導されるMCF-7/Adrアポトーシスに対する感受性増強を示す。
【図4】図4は、FACSで検出するPA系誘導体がAdrと組み合わせる時にMCF-7/Adrのアポトーシスに対する感受性増強作用を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍薬の感受性増強薬或いは耐性逆転剤の製造に用いられることを特徴とする、化学式(I)に示すフタリド或いはその誘導体の使用:
【化1】

ここで、式中のR1は、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、C1〜C8カルボキシル基、ハロゲン原子を表す;
R2は、存在しないか、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、C1〜C4カルボキシル基、ハロゲン原子を表す;
R3とR4はそれぞれ、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、ハロゲン原子を表す;
R5とR8は、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C3〜C8シクロアルキル基、C1〜C8アルコキシル基、C1〜C4カルボキシル基、フェニル基、アリール基、アラルキル基、一個或いは二個の窒素原子を含む5員環或いは6員環の複素環、ハロゲン原子を表す;
R6とR7はそれぞれ、水素、水酸基、C1〜C8アルキル基、C2〜C8アルケニル基、C2〜C8アルキニル基、C1〜C4カルボキシル基、ハロゲン原子を表すか、またはR6とR7が結合して共に5〜7員環を形成する;
ここで、前述のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシル基、フェニル基、アリール基、アラルキル基及び複素環は、0〜3個のC1〜C3アルキル基、水酸基、ハロゲン原子からなる群から選ばれる置換基を有していてもよい。
【請求項2】
前記誘導体が、式(I)に示すフタリドのジヒドロ誘導体、テトラヒドロ誘導体、或いは式(I)に示すフタリド又はそのジヒドロ誘導体又はテトラヒドロ誘導体のダイマーであることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記フタリド或いはその誘導体が以下の群から選ばれる構造を持つことを特徴とする、請求項1に記載の使用:
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

式中のR1〜R8は、請求項1に記載のように定義する。
【請求項4】
前記フタリド或いはその誘導体が以下の群から選ばれる構造を持つことを特徴とする請求項1に記載の使用。
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【請求項5】
前記抗腫瘍薬剤は、アドリアマイシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノマイシン、エピルビシン、エトポシド、ベプシド、ラステット、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ハーセプチン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、CCNU、メルファラン、フェニルアラニン ナイトロジェンマスタード、メルカプトプリン、アメトプテリン、マイトマイシン、ミトキサントロン、DHAD、オキサリプラチン、プロカルバジン、PCB、マブセラ、ステロイド、ストレプトゾシン、STZ、タキソール、タキソテール、チオグアニン、チオテパ、テスパミン、チオホスホルアミド、ラルチトレキセド、トポテカン、トレオサルファン、ウラシル、ビンブラスチン、ビンカレウコブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、グリベック、ヒドロキシカンプトテシン、及びその誘導物或いは混合物からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
前記抗腫瘍薬剤は、非小細胞性肺がん、前立腺がん、腸がん、肝がん、白血病、骨髄腫、リンパ腫、乳がん、卵巣がん、胃がん、食道がん、結腸がん又は肉腫からなる群から選ばれる腫瘍の治療に用いられることを特徴とする、請求項1に記載の使用。
【請求項7】
(a)有効量の化学式(I)に示すフタリド或いはその誘導体、(b)安全有効量の抗腫瘍薬及び(c)薬学的に許容される担体を含有し、前記抗腫瘍薬は、アドリアマイシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノマイシン、エピルビシン、エトポシド、ベプシド、ラステット、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ハーセプチン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、CCNU、メルファラン、フェニルアラニン ナイトロジェンマスタード、メルカプトプリン、アメトプテリン、マイトマイシン、ミトキサントロン、DHAD、オキサリプラチン、プロカルバジン、PCB、マブセラ、ステロイド、ストレプトゾシン、STZ、タキソール、タキソテール、チオグアニン、チオテパ、テスパミン、チオホスホルアミド、ラルチトレキセド、トポテカン、トレオサルファン、ウラシル、ビンブラスチン、ビンカレウコブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、グリベック、ヒドロキシカンプトテシン、及びその誘導物或いは混合物からなる群から選ばれることを特徴とする医薬組成物。
【請求項8】
P-gpの発現を抑制する組成物、或いはグリオキサラーゼIの発現を抑制する組成物、或いはBcl-2の発現を抑制する組成物の調製に用いられることを特徴とする、化学式(I)に示すフタリド誘導体の使用。
【請求項9】
化学式(I)に示すフタリド或いはフタリド誘導体を、治療を必要とする哺乳動物に安全有効量で投与する工程を含む腫瘍の治療方法。
【請求項10】
アドリアマイシン、ビンクリスチン、タキソール、シスプラチン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シタラビン、ダウノマイシン、エピルビシン、エトポシド、ベプシド、ラステット、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ハーセプチン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、ロムスチン、CCNU、メルファラン、フェニルアラニン ナイトロジェンマスタード、メルカプトプリン、アメトプテリン、マイトマイシン、ミトキサントロン、DHAD、オキサリプラチン、プロカルバジン、PCB、マブセラ、ステロイド、ストレプトゾシン、STZ、タキソール、タキソテール、チオグアニン、チオテパ、テスパミン、チオホスホルアミド、ラルチトレキセド、トポテカン、トレオサルファン、ウラシル、ビンブラスチン、ビンカレウコブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン、グリベック、ヒドロキシカンプトテシン、及びその誘導物或いは混合物からなる群から選ばれる少なくとも一種類の抗腫瘍薬を使用する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項9に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2009−511436(P2009−511436A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−532560(P2008−532560)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【国際出願番号】PCT/CN2005/001627
【国際公開番号】WO2007/036074
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(508098017)
【出願人】(508098028)
【Fターム(参考)】