説明

フタロシアニン類およびインクジェット印刷でのそれらの使用

フタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩の混合物の調製方法であって、式(1)の化合物を式(2)および/または式(3)の化合物と環化することを含む方法:式中、Rは、ヒドロカルビル基であり;Rは、Hまたはヒドロカルビル基であり;10Rは、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり;RおよびRは、シアノ、カルボキシまたはカルボキサミドであるか、一緒になって式(a)の基を形成し;Xは電子求引基であり;そして、nは1〜4である:ここにおいて、該環化法は、適した窒素源(必要な場合)および金属塩(必要な場合)の存在下で実施する。同様に、新規化合物、インク、印刷方法、印刷された材料(カラーフィルターを含む)、およびインクジェットカートリッジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、染料および染料混合物、組成物ならびにインクと、印刷された基材(カラーフィルターなどのパターニングされた基材を含む)と、印刷方法およびパターニングされた基材の作製方法と、これらパターニングされた基材を含む表示装置と、インクジェット印刷機用カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
基材上に明るい色のパターンまたは像を生じさせる能力は、その色が光、オゾン、熱、水および/または溶媒に対し高い耐性(堅牢度)を有する場合、例えば電子機器および印刷産業の多くの分野で重要である。この例は、カラーフィルターの生産およびインクジェット印刷にある。したがって、そのような用途で容易に用いることができる着色剤を発見することは重要である。
【0003】
インクジェット印刷は、ノズルを基材と接触させることなくインクの液滴を微細ノズルに通して基材上に噴出させる、ノンインパクト印刷技術である。この技術に用いられるインクのセットは、典型的には黄色、マゼンタ、シアンおよび黒色インクを含む。
【0004】
インクジェット印刷機は他の形の印刷および現像に対し多くの利点を有するが、取り組むべき技術的課題がなお存在する。例えば、インク媒体に溶解するが優れた耐湿潤堅牢度を示す(すなわち、印刷したときにプリントが滲んだり不鮮明になったりしない)インク着色剤を提供するという、相反する要件がある。また、インクは、印刷したシートがくっつくのを回避するために迅速に乾燥することが必要であるが、印刷機に用いられている微小ノズルの上を覆ってクラスト(crust)を形成すべきではない。印刷機のノズルを詰まらせうる粒子の形成を回避するために、貯蔵安定性も重要である。これは特に、消費者はインクジェットインクカートリッジを数ヶ月にわたり保持する可能性があるためである。さらに、特に写真用品質の再生に重要なことであるが、得られる像は、光または一般的な酸化ガス、例えばオゾンへの暴露により、急激に日焼けまたは退色を起すべきでない。あらゆる像を最適に再生することができるように、着色剤の色調および彩度が厳密に的確であることも重要である。
【0005】
カラーフィルターは、光学フィルターとしても知られ、平坦な画面表示装置として例えば小さなテレビ受像機またはポータブル・コンピューターに用いられているカラー液晶表示装置(LCD)の構成部分である。典型的には、白色バックライトを液晶層、続いてカラーフィルターに通して照らして、透過光により望ましい色の像を生じさせる。LCD層は、アドレス可能な画素配列を含む。液晶フィルムに電圧を加え、これにより偏光液晶の配向を変化させてバックライトを遮断することにより、任意の画素において光のスイッチを入れたり切ったりすることができる。画素をカラーフィルター要素の三色配列と位置合わせして、像を表示することができるフルカラー画面をもたらす。いくつかのLCD表示装置は反射光により見られるように構築されているが、フルカラーの像をもたらすためにはやはりカラーフィルターが必要である。カラーフィルターは、プラズマ表示装置パネル、ブラウン管および電界発光表示装置など他の表示装置技術に、そして固体撮像装置の構成部分として、同様に有用である。カラーフィルターに有用な性質を有する新規着色剤が望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、フタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩の調製方法であって、式(1)の化合物を式(2)および/または式(3)の化合物と環化することを含む方法を提供する:
【0007】
【化1】

【0008】
[式中、
は、ヒドロカルビル基であり;
は、Hまたはヒドロカルビル基であり;
は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり;
およびRは、シアノ、カルボキシまたはカルボキサミドであるか、一緒になって以下の式の基を形成し
【0009】
【化2】

【0010】
Xは電子求引基であり;そして
nは1〜4である]:
ここにおいて、該環化法は、適した窒素源(必要な場合)および金属塩(必要な場合)の存在下で実施する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
フタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩は、金属フタロシアニン染料およびその塩であることが好ましく、より好ましくは、銅またはニッケルフタロシアニン染料およびその塩、とりわけ銅フタロシアニン染料およびその塩である。
【0012】
は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール(特に、置換されていてもよいフェニルまたは置換されていてもよいナフチル)、または置換されていてもよいヘテロシクリル(特に、窒素を含有する置換されていてもよいヘテロシクリル)である。
【0013】
より好ましくは、Rは、置換されていてもよいアルキル、特に、1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい置換されていてもよいC1−8アルキルである。
が式(4)の基であることが、とりわけ好ましい
−L−SONR
式(4)
[式中:
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;そして
Lは、置換されていてもよいC1−4アルキレンである]。
【0014】
は、Hまたはメチルであることが好ましい。より好ましくは、RはHである。
は、−OH、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つC1−4アルキルであることが好ましい。
【0015】
Lは、置換されていないアルキレンであることが好ましく、より好ましくは、Lは式−CHCH−の基である。
は、Hまたは置換されていてもよいC1−8アルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)、特に、水可溶化基、置換されていてもよいヘテロアリールまたは置換されていてもよいフェニルから選択される1以上の置換基で置換されているC1−8アルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)であることが好ましい。
【0016】
は、H;−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される1または2、とりわけ2つの水可溶化基を持つ置換されていてもよいC1−4アルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);置換されていてもよいヘテロアリール基(ここにおいて、該ヘテロアリール基またはその上の置換基は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの水可溶化基を持つことが好ましい)を持つ置換されていてもよいC1−4アルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい);または、置換されていてもよいアリール基(ここにおいて、該アリール基またはその上の置換基は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの水可溶化基を持つことが好ましい)を持つ置換されていてもよいC1−4アルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)であることが、とりわけ好ましい。
【0017】
は、置換されていてもよいトリアジニル基(ここにおいて、該トリアジニル基またはその上の置換基は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの水可溶化基を持つことが好ましい)を持つ置換されていてもよいC1−4アルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)であることが特に好ましい。
【0018】
が置換されていてもよいC1−4アルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)である場合、R上の置換されていてもよいトリアジニル置換基は、式(5)の基を含むことが好ましい
【0019】
【化3】

【0020】
[式中:
は、−OR、−SR、−NRからなる群より選択され;
は、−OR10、−SR11、−NR1011からなる群より選択され;
、R、R10およびR11は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル(1以上のヘテロ原子により遮断されていてもよい)、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり、ただし、R、R、R10およびR11により表される基の少なくとも1つは、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つという条件が付く]。
【0021】
およびYにより表される好ましい基は、独立して、−OH、−NHCH、−N(CH、−NHCSOH、−N(CH)CSOH、−NCSOH、−NHジスルホフェニル、−NHスルホフェニル、−NHカルボキシフェニルまたは−NHジカルボキシフェニル、−NHスルホナフチル、−NHジスルホナフチル、−NHトリスルホナフチル、−NHカルボキシナフチル、NHジカルボキシナフチル、NHトリカルボキシナフチル、−NHスルホヘテロシクリル、−NHジスルホヘテロシクリルまたは−NHトリスルホヘテロシクリルからなる群より選択することができる。
【0022】
より好ましくは、Rが置換されていてもよいC1−4アルキルである場合、R上の置換されていてもよいトリアジニル置換基は、式(6)の基を含む
【0023】
【化4】

【0024】
[式中:
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
10は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
11は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである]。
【0025】
は、Hまたは置換されていないC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、RはHまたはメチル、特にHである。
は、Hまたは置換されていないC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、RはHまたはメチル、特にHである。
【0026】
10は、Hまたは置換されていないC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R10はHまたはメチル、特にHである。
好ましい態様において、R、RおよびR10は、すべて独立してHまたはメチルのいずれかであり、より好ましくは、R、RおよびR10は、すべてHである。
【0027】
11は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つ置換されていてもよいアリールであることが好ましい。より好ましくは、R11は、1〜3、特に2つの−SOHまたは−COH基を持つアリール基(とりわけフェニル基)である。
【0028】
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであることが好ましい。より好ましくは、RはHまたはメチル、特にHである。
およびRは、シアノまたはカルボキシ、特にシアノであることが好ましい。より好ましくは、RとRは同一である。
【0029】
Xは、NO、FまたはClであることが好ましい。
nは2〜4であることが好ましく、より好ましくは、nは4である。
L、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11のいずれか1つの上に存在することができる好ましい所望による置換基は、独立して以下から選択される:置換されていてもよいアルコキシ(好ましくはC1−4−アルコキシ)、置換されていてもよいアリール(好ましくはフェニル)、置換されていてもよいアリールオキシ(好ましくはフェノキシ)、置換されていてもよいヘテロシクリル、ポリアルキレンオキシド(好ましくはポリエチレンオキシドまたはポリプロピレンオキシド)、ホスファト、ニトロ、シアノ、ハロ、ウレイド、ヒドロキシ、エステル、−NR、−COR、−CONR、−NHCOR、カルボキシエステル、スルホン、および−SONR[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、H、置換されていてもよいアルキル(特にC1−4−アルキル)、置換されていてもよいアリールまたは置換されていてもよいヘテロアリールである]。L、R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11が環式基を含む場合、それらは、置換されていてもよいアルキル(特にC1−4−アルキル)置換基を持つこともできる。R、R、R、R、R、R、R、R10およびR11について記載した置換基のいずれかに関する所望による置換基は、同じ置換基のリストから選択することができる。
【0030】
本発明の方法では、反応体および反応条件によっては、環化反応に塩基を組み込むことが好都合である可能性がある。あらゆる適した塩基を用いることができる。塩基は、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)であることが好ましい。
【0031】
本方法の生成物が金属フタロシアニンである場合、金属塩が必要である。あらゆる適した塩を用いることができる。例えば、反応の生成物が銅フタロシアニンである場合、CuClである。
【0032】
およびRが窒素を含有しない場合、フタロシアニン環を形成させたい場合は窒素源が必要である。適した窒素源としてはアンモニアおよび尿素が挙げられる。
本発明の方法は、任意の相溶性溶媒中で実施することが好ましい。好ましい溶媒としては、エチレングリコールおよびジエチレングリコールが挙げられる。
【0033】
環化を式(1)の化合物および式(2)の化合物または式(3)の化合物の一方と一緒に実施する場合、式(1)の化合物と式(2)または(3)の化合物との好ましいモル比は、10/1〜1/10の範囲にある。より好ましくは、モル比は1/3である。
【0034】
環化を式(1)の化合物ならびに式(2)の化合物および式(3)の化合物の両方と一緒に実施する場合、式(1)、(2)および(3)の化合物の互いに対する好ましいモル比は、10/1/1〜1/10/1〜1/1/10の範囲にある。より好ましくは、式(1)、(2)および(3)の化合物の互いに対する比は、2/1/1〜1/2/1〜1/1/2の範囲、特に1/2/1〜1/1/2の範囲にある。
【0035】
環化反応は、好ましくは80〜180℃、より好ましくは100〜150℃、特に110〜130℃の範囲の温度で実施する。
環化は、好ましくは1〜12時間、より好ましくは2〜8時間、特に3〜6時間の範囲にわたり実施する。
【0036】
環化を実施する時間の長さは、用いる温度に依存する。例えば、より高い温度ではより短い時間が必要であり、より低い温度ではより長い時間が必要である。好ましい態様では、環化を、110〜130℃の範囲の温度で3〜6時間の範囲の時間にわたり実施する。
【0037】
式(1)の化合物は、当分野で周知の方法により調製することができる。それらは、一般に市販されてもいる。
式(2)および(3)の化合物は、当分野で周知の方法、例えば、本明細書中で参考として援用する米国特許公報第7097701号に記載されている方法により、調製することができる。
【0038】
当業者なら、これらの反応の生成物であるフタロシアニン染料が、成分環の性質および相対的位置ならびにこれら成分環上の任意の置換基の性質および位置によってさまざまである異性体を含有する分散性の高い混合物になることを、理解するであろう。
【0039】
本発明の第2の観点は、本発明の第1の観点に従った方法により得ることができるフタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩を提供する。
優先傾向は、本発明の第1の観点で記載し選んだとおりである。
【0040】
本発明の第2の観点に従ったフタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩は、式(7)の成分を含むことが好ましい:
【0041】
【化5】

【0042】
[式中:
Mは、H、NiまたはCuであり;
は、ヒドロカルビル基であり;
は、Hまたはヒドロカルビル基であり;
は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり;
Xは、電子求引基であり;
nは1〜4であり;
yは、0〜4未満であり;
zは、0〜4未満であり;そして
y+zは、0より大きく4未満である]。
【0043】
これらの染料は本発明の第1の観点に記載したように調製するので、それらは分散混合物になり、したがって、yおよびzの値は整数ではなく平均値になる。
yは、1〜3の範囲にあることが好ましい。
【0044】
zは、1〜3の範囲にあることが好ましい。
y+zは、1〜3の範囲にあることが好ましい。
M、R、R、R、Xおよびnの優先傾向は、本発明の第1の観点に記載したとおりである。
【0045】
本発明の第2の観点の染料は、魅力的な強い色調を有し、インクジェット印刷用のシアンインクの調製で使用するのに有益な着色剤である。それらは、溶解性、貯蔵安定性、ならびに水、オゾンおよび光に対する堅牢度の良好なバランスにより益を得る。とりわけ、それらは優れた耐湿潤堅牢度、耐光堅牢度および耐オゾン堅牢度を示す。
【0046】
本発明で開示する化合物上の酸性または塩基性基、とりわけ酸性基は、塩の形にあることが好ましい。したがって、本明細書中に示す化学式はすべて、塩の形にある化合物を包含する。
【0047】
好ましい塩は、アルカリ金属塩、特に、リチウム、ナトリウムおよびカリウム、アンモニウムおよび置換アンモニウム塩((CHのような第四アミンを含む)、ならびにそれらの混合物である。特に好ましいものは、ナトリウム、リチウム、アンモニアおよび揮発性アミンを伴う塩、さらに特にナトリウム塩である。フタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料の混合物を、公知の技術を用いて塩に転化してもよい。
【0048】
本明細書で開示する化合物は、示したもの以外の互変異性体の形で存在していてもよい。これらの互変異性体は、本発明の範囲内に包含される。
本発明の第3の観点に従って、本発明の第2の観点に従ったフタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料またはその塩と、黄色染料またはその塩とを含む染料の混合物を提供する。
【0049】
黄色染料は、式(8)およびその塩のものであることが好ましい:
【0050】
【化6】

【0051】
[式中:
12は、置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
13は、置換されていてもよいC1−12アルキルであり;そして
14は、置換されていてもよいC1−8アルキルである]。
【0052】
12、R13およびR14は、線状、分枝状または環状アルキルであることができる。
12は、置換されていないC1−4アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R12はメチルである。
【0053】
13は、置換されていないC2−12アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R13は置換されていないC6−10アルキルである。
14は、置換されていないC2−8アルキルであることが好ましく、より好ましくは、R14は置換されていないC2−6アルキルである。
【0054】
12、R13およびR14の上に存在していてもよい置換基は、本発明の第1の観点で記載し選んだとおりである。
式(8)のとりわけ好ましい染料は、式(9)またはその塩のものである:
【0055】
【化7】

【0056】
式(8)および式(9)の染料のような黄色アゾ染料は、従来技術で公知の方法と類似の方法により調製することができる。
本発明の第3の観点において、本発明の第2の観点に従ったフタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料と黄色染料の比率は、5:95〜95:5の範囲にあることが好ましい。
【0057】
本発明の第3の観点において、混合物は、追加的な成分および染料を含むことができる。
本発明の第4の観点に従って、本発明の第2の観点に記載したようなフタロシアニンもしくは金属フタロシアニン染料およびその塩、または本発明の第3の観点に記載したような染料およびその塩の混合物と、液体媒体とを含む組成物を提供する。
【0058】
本発明の第4の観点に従った好ましい組成物は、以下:
(a)本発明の第2の観点に記載したようなフタロシアニンもしくは金属フタロシアニン染料およびその塩、または本発明の第3の観点に記載したような染料もしくはその塩の混合物を0.01〜30部;ならびに
(b)70〜99.99部の液体媒体;
ここにおいて、部はすべて重量に基づく
を含む。
【0059】
部数(a)+(b)=100であることが好ましい。
成分(a)の部数は、好ましくは0.1〜20、より好ましくは0.5〜15、特に1〜5部である。成分(b)の部数は、好ましくは80〜99.9、より好ましくは85〜99.5、特に95〜99部である。
【0060】
成分(a)は、成分(b)に完全に溶解することが好ましい。成分(a)は、20℃において少なくとも10%の成分(b)への溶解度を有することが好ましい。これにより、より希薄なインクを調製するために用いることができる液体染料濃縮物の調製が可能になり、貯蔵中に液体媒体の蒸発が起こった場合に染料が沈殿する可能性が低下する。
【0061】
好ましい液体媒体としては、水、水と有機溶媒の混合物、および水を含まない有機溶媒が挙げられる。液体媒体は、水と有機溶媒の混合物または水を含まない有機溶媒を含むことが好ましい。
【0062】
液体媒体(b)が水と有機溶媒の混合物を含む場合、水と有機溶媒の重量比は、好ましくは99:1〜1:99、より好ましくは99:1〜50:50、特に95:5〜80:20である。
【0063】
水と有機溶媒の混合物中に存在する有機溶媒は、水混和性有機溶媒またはそのような溶媒の混合物であることが好ましい。好ましい水混和性有機溶媒としては、C1−6−アルカノール、好ましくは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、n−ペンタノール、シクロペンタノールおよびシクロヘキサノール;線状アミド、好ましくは、ジメチルホルムアミドまたはジメチルアセトアミド;ケトンおよびケトン−アルコール、好ましくは、アセトン、メチルエーテルケトン、シクロヘキサノンおよびジアセトンアルコール;水混和性エーテル、好ましくは、テトラヒドロフランおよびジオキサン;ジオール、好ましくは、2〜12の炭素原子を有するジオール、例えば、ペンタン−1,5−ジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールおよびチオジグリコール、ならびに、オリゴ−およびポリ−アルキレングリコール、好ましくは、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール;トリオール、好ましくは、グリセロールおよび1,2,6−ヘキサントリオール;ジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、好ましくは、2〜12の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシエタノール、2−(2−メトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)−エタノール、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]エタノール、2−[2−(2−エトキシエトキシ)−エトキシ]−エタノールおよびエチレングリコールモノアリルエーテル;環状アミド、好ましくは、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチル−2−ピロリドン、カプロラクタムおよび1,3−ジメチルイミダゾリドン;環状エステル、好ましくはカプロラクトン;スルホキシド、好ましくはジメチルスルホキシド;ならびに、スルホンが挙げられる。液体媒体は、水と2以上、特に2〜8種の水混和性有機溶媒を含むことが好ましい。
【0064】
特に好ましい水混和性有機溶媒は、環状アミド、特に、2−ピロリドン、N−メチル−ピロリドンおよびN−エチル−ピロリドン;ジオール、特に、1,5−ペンタンジオール、エチレングリコール、チオジグリコール、ジエチレングリコールおよびトリエチレングリコール;ならびに、ジオールのモノ−C1−4−アルキルおよびC1−4−アルキルエーテル、より好ましくは、2〜12の炭素原子を有するジオールのモノ−C1−4−アルキルエーテル、特に、2−メトキシ−2−エトキシ−2−エトキシエタノールである。
【0065】
液体媒体が、水を含まない有機溶媒(すなわち1重量%未満の水)を含む場合、該溶媒は、好ましくは30〜200℃、より好ましくは40〜150℃、特に50〜125℃の沸点を有する。有機溶媒は、水不混和性、水混和性、またはそのような溶媒の混合物であることができる。好ましい水混和性有機溶媒は、上記水混和性有機溶媒のいずれかおよびその混合物である。好ましい水不混和性溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素;エステル、好ましくは酢酸エチル;塩素化炭化水素、好ましくはCHCl;およびエーテル、好ましくはジエチルエーテル;およびそれらの混合物が挙げられる。
【0066】
液体媒体が水不混和性有機溶媒を含む場合、極性溶媒が包含されることが好ましい。これは、極性溶媒が液体媒体への染料の溶解性を向上させるためである。極性溶媒の例としてはC1−4−アルコールが挙げられる。
【0067】
前述の優先傾向を考慮すると、液体媒体が、水を含まない有機溶媒である場合、それは、ケトン(特にメチルエチルケトン)および/またはアルコール(特にC1−4−アルカノール、さらに特にエタノールまたはプロパノール)を含むことが特に好ましい。
【0068】
水を含まない有機溶媒は、単一の有機溶媒であるか、2種以上の有機溶媒の混合物であることができる。液体媒体が、水を含まない有機溶媒である場合、それは2〜5種の異なる有機溶媒の混合物であることが好ましい。これにより、インクの乾燥特性および貯蔵安定性に対し良好な制御をもたらす液体媒体を選択することが可能になる。
【0069】
水を含まない有機溶媒を含む液体媒体は、迅速な乾燥時間が必要とされる場合、とりわけ、疎水性および非吸収性基材、例えば、プラスチック、金属およびガラス上に印刷するときに、とりわけ有用である。
【0070】
言うまでもなく、液体媒体は、インクジェット印刷用インクに従来用いられている追加的成分、例えば、粘度および表面張力の改質剤、腐敗抑制剤、殺生物剤、コゲーション低減剤(kogation reducing additives)、ならびに、イオン性または非イオン性であることができる界面活性剤を、含有することができる。
【0071】
通常は必要ないが、色調および性能特性を改変するために、さらなる着色剤をインクに加えてもよい。
本発明に従った組成物は、インクジェット印刷機での使用に適したインクであることが好ましい。インクジェット印刷機での使用に適したインクは、微細ノズルを詰まらせることなく、インクジェット印刷ヘッドに通して繰り返し発射させることができるインクである。これを行うために、インクは、粒子を含んでいてはならず、安定でなければならず(すなわち、貯蔵中に沈殿しない)、腐食性元素(例えば塩化物)を含んでいてはならず、そして、印刷ヘッドでの良好な液滴形成を可能にする粘度を有していなければならない。
【0072】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、25℃において好ましくは20cP未満、より好ましくは10cP未満、特に5cP未満の粘度を有する。
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、合計で好ましくは500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、さらに特に10ppm未満の二価および三価の金属イオン(式(1)の着色剤またはインクに組み込まれている他の着色剤もしくは添加剤に結合している二価および三価の金属イオンを除く)を含有する。
【0073】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、好ましくは10μm未満、より好ましくは3μm未満、特に2μm未満、さらに特に1μm未満の平均細孔径を有するフィルターに通して濾過されている。この濾過により、多くのインクジェット印刷機に見いだされる微細ノズルを通常なら詰まらせうる粒状物質が除去される。
【0074】
インクジェット印刷機での使用に適したインクは、合計で好ましくは500ppm未満、より好ましくは250ppm未満、特に100ppm未満、さらに特に10ppm未満のハロゲン化物イオンを含有する。
【0075】
本発明の第4の観点に従った組成物を、とりわけカラーフィルターの製造においてフィルムコーティングの形成に使用したい場合、それは、フィルム形成材料をさらに含むことが好ましい。フィルム形成材料は、1以上の架橋性ポリマー前駆体および所望により1以上の追加的架橋剤を含むことが好ましい。適した架橋剤の例としては、PrimidTM XL−552およびPrimidTM QM−1260(両方ともEMS Chemie AGから市販されている)、トリメチロールプロパン、およびトリエタノールアミンが挙げられる。適切な化学的または光化学的開始剤、例えば、ラジカル源、光重合開始剤または溶解抑制剤が包含されていることもできる。
【0076】
フィルムコーティングを形成するためのインクは、以下:
(a)本発明の第2の観点に記載したような染料およびその塩、または本発明の第3の観点に記載したような染料およびその塩の混合物を、合計0.5〜15部、より好ましくは0.8〜10部、特に1〜8部;
(b)0〜90部、より好ましくは50〜80部の水;
(c)0〜90部、より好ましくは0〜60部の1以上の有機溶媒(1以上);および
(d)0.1〜50部、より好ましくは0.2〜30部のフィルム形成材料;
を含むことが好ましい。
【0077】
フィルム形成インクは、インクおよび得られるカラーフィルターの耐光堅牢度および耐熱堅牢度の改善を促進するために、ラジカルスカベンジャーおよび/またはUV吸収剤を含むこともできる。そのようなスカベンジャーおよび吸収剤の例としては、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン;ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール;4−ヒドロキシ−TEMPO;および遷移金属錯体(チオカルバミン酸のニッケル錯体など)が挙げられる。これらのスカベンジャーおよび吸収剤は、典型的には、着色剤の重量に対し30重量%〜60重量%の量で用いられる。
【0078】
本発明の第5の観点は、基材上に像を形成するための方法であって、本発明の第4の観点に従った組成物、好ましくはインクジェット印刷機での使用に適したインクを、インクジェット印刷機により基材に施用することを含む方法を提供する。
【0079】
インクジェット印刷機は、インクを基材に、小さなオリフィスに通して基材上に噴出させる液滴の形で施用することが好ましい。好ましいインクジェット印刷機は、圧電インクジェット印刷機およびサーマルインクジェット印刷機である。サーマルインクジェット印刷機では、プログラム化した熱パルスをオリフィスに隣接する抵抗器によりリザーバー中のインクに施用し、それにより、基材とオリフィスとの相対運動中に、インクを小さな液滴の形でオリフィスから基材に向けて噴出させる。圧電インクジェット印刷機では、小さな結晶の振動により、オリフィスからインクを噴出させる。
【0080】
基材は、好ましくは、紙、プラスチック、生地、金属またはガラス、より好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクター用スライドまたは生地材料、特に紙である。
好ましい紙は、酸性、アルカリ性もしくは中性の性質を有することができる普通紙または処理紙である。写真用品質の紙が特に好ましい。
【0081】
本発明の第6の観点は、本発明の第2の観点に記載したようなフタロシアニンもしくは金属フタロシアニン染料およびその塩または本発明の第3の観点に記載したような染料およびその塩の混合物、本発明の第4の観点に従った組成物、あるいは本発明の第5の観点に従った方法を用いて、印刷された材料、好ましくは、紙、プラスチック、生地、金属またはガラス、より好ましくは、紙、オーバーヘッドプロジェクター用スライドまたは生地材料、特に紙、さらに特に普通紙、塗被紙または処理紙を提供する。
【0082】
本発明の第6の観点の印刷された材料が、本発明の第5の観点に従った方法を用いて印刷された写真用品質の紙上のプリントであることが、特に好ましい。
本発明の第7の観点は、基材上にフィルムコーティングを形成するための方法であって、本発明の第4の観点に従っていてフィルム形成材料を含む組成物またはインクを基材に施用することを含む方法を提供する。
【0083】
これらの方法では、スピンコーティング、バーコーティング、浸漬コーティング、カーテンコーティング、ロールコーティングおよびエレクトロスプレーを含む任意の公知の方法により、インクを基材に施用することができる。
【0084】
印刷方法はインクジェット印刷であることが好ましい。インクジェット印刷機は、インクを基材に、小さなノズルに通して基材上に噴出させる液滴の形で施用することが好ましい。
【0085】
本発明の第7の観点の一態様において、本発明の第4の観点の組成物またはインク中のフィルム形成材料は熱架橋性であり、架橋は加熱によりもたらされる。
他の態様において、本発明の第5の観点の組成物またはインク中のフィルム形成材料は光架橋性であり、架橋は好ましくは紫外線への暴露によりもたらされる。紫外線への暴露は、紫外線に暴露される部分がフィルムを形成し、暴露されない部分は、フィルムを形成せず、基材から容易に除去することができるように、マスクに通して実施することが好ましく、これにより、画素配列を形成することができる。
【0086】
本発明の方法を用いると、透明でない基材を含む一般的な基材上で、パターニングされていてもよく透明であってもよいフィルムおよびコーティングを得ることができる。好ましくは(例えば、本発明の方法を用いてカラーフィルターを製造する場合)、基材は透明である。適した透明な基材としては、ガラス;ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミドまたはポリイミドなどのプラスチック、フィルムおよびプレートが挙げられる。基材は軟質または硬質であることができ、例えば、LCD表示装置に用いられるフラットパネルであることができる。好ましい基材はガラスである。
【0087】
基材は、組成物の結合、付着、吸収、溶融または広がりを改善するために、予備処理することができる。適した予備処理としては、例えば基材を酸素雰囲気中に置き放電に付すプラズマエッチング、またはシランのような定着剤の施用が挙げられる。
【0088】
本発明の第8の観点の方法には、パターニング段階があることが好ましい。透明基剤は、別個の画素領域を含んでいてもよい。
本発明の第8の観点は、赤、緑および青色のフィルター要素または黄色、マゼンタおよびシアンのフィルター要素を含み、本発明の第2および第3の観点に記載されているような染料およびその塩または本発明の第4の観点に記載されているような染料およびその塩の混合物を含有するフィルムを含む、カラーフィルターを提供する。フィルムは、第5の観点に記載したような組成物から得ることが好ましい。より好ましくは、カラーフィルターは、本発明の第8の観点に従った方法により形成したフィルムコーティングを含む。
【0089】
本発明の最後の観点は、チャンバーと、組成物、好ましくは、インクジェット印刷機での使用に適したインクとを含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該組成物が該チャンバー内にあり、該組成物が本発明の第4の観点で定義し選んだとおりである、前記インクジェット印刷機用カートリッジを提供する。該カートリッジは、本発明の第4の観点に記載したような高濃度インクおよび低濃度インクを異なるチャンバー内に含有することができる。
【0090】
本発明を以下の実施例によりさらに例示する。ここにおいて、すべての部および百分率は、特記しない限り重量に基づく。
【実施例】
【0091】
フタロニトリル類の調製
フタロニトリルAの調製
【0092】
【化8】

【0093】
フタロニトリルAは、本明細書中で参考として援用する米国特許公報第7211134号の化合物8に相当し、該特許公報中に記載されている通りに調製した。
フタロニトリルBの調製
【0094】
【化9】

【0095】
フタロニトリルBは、1−アミノ−2−プロパノールの代わりに2−アミノ−1−プロパノールを用いた点を除き、フタロニトリルAと同様に調製した。
フタロニトリルCの調製
【0096】
【化10】

【0097】
フタロニトリルCは、1−アミノ−2−プロパノールの代わりにアミノエトキシエタノールを用いた点を除き、フタロニトリルAと同様に調製した。
フタロニトリルDの調製
【0098】
【化11】

【0099】
フタロニトリルDは、1−アミノ−2−プロパノールの代わりにテトラヒドロフルフリルアミンを用いた点を除き、フタロニトリルAと同様に調製した。
フタロニトリルEの調製
【0100】
【化12】

【0101】
中間体1の調製
【0102】
【化13】

【0103】
中間体1は、本明細書中で参考として援用するPhosphorus,Sulfur and Silicon,1995,101,161−167に記載されている通りに調製した。
中間体2の調製
【0104】
【化14】

【0105】
塩化シアヌル(9.23g)を、0〜5℃において数滴のカルソレン油(calsolene oil)を含有する氷/水(2000g)中で攪拌した。その後、pH5〜6の水(50mL)中の2,5−ジスルホアニリン(13.8g)の溶液を、攪拌しつつ滴下して加えた。反応混合物を≦5℃およびpH5〜6で2時間攪拌した。その後、2M水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7に上昇させ、温度を20〜25℃に上昇させ、反応混合物を1時間放置した。その後、ジメチルアミン(40%、6.3mL)を加え、pHを8.5〜9に調整した。反応混合物を室温およびpH8.5〜9で2時間、その後pH8.5〜9、60℃で1時間、そして80℃でさらに1時間攪拌した後、一晩放置して冷却した。翌日、エチレンジアミン(33mL)を混合物に加え、反応物を80℃でさらに2時間攪拌した。ロータリーエバポレーターを用いて反応混合物の体積を200mLに減少させ、NaCl(20g)を加え、濃HClを用いてpHを1に低下させた。形成した沈殿物を濾過により収集し、20%NaClで洗浄し、60℃のメタノール(170mL)および水(9mL)中で1時間スラリー化した。その後、固体を濾過により収集し、メタノール(25mL)で洗浄し、乾燥して、生成物(18.5g)を得た。
表題フタロニトリルの調製
中間体2(20g)を、pH8まで2M炭酸ナトリウム溶液を加えることにより水(200mL)に溶解した。中間体1(9.97g)を加え、2M炭酸ナトリウムを用いてpHを8.5に調整した。反応混合物を室温で一晩攪拌し、沈殿固体を濾過により取り出し、プロパン−2−オールで洗浄し、乾燥して、25.51gのフタロニトリルEを得た。
フタロニトリルF
【0106】
【化15】

【0107】
この化合物は市販されている。
フタロニトリルG
【0108】
【化16】

【0109】
この化合物は市販されている。
フタロニトリルH
【0110】
【化17】

【0111】
この化合物は市販されている。
フタロニトリルI
【0112】
【化18】

【0113】
この化合物は市販されている。
フタロニトリルJ
【0114】
【化19】

【0115】
この化合物は市販されている。
フタロニトリルK
【0116】
【化20】

【0117】
3,6−ジクロロフタルイミド(4.32g)を濃アンモニア(41.5mL)およびピリジン(60mL)に加え、20℃で0.5時間、続いて45〜50℃で5時間攪拌した後、一晩放置して冷却した。その後、混合物を蒸発乾固して、3,6ジクロロフタルアミド(10.6g)を得た。オキシ塩化リン(7.5mL)をピリジン(8mL)中の3,6ジクロロフタルアミド(5g)に加え、75〜80℃で1.5時間攪拌した。反応物を40℃に冷却し、冷水(120mL)中に浸した。沈殿物を1.5時間攪拌し、濾過により収集し、水(30mL)で洗浄した。その後、固体を5%水酸化カリウム溶液(50mL)中で20分間撹拌し、濾過し、アルカリがなくなるまで洗浄し(washed alkali free)、乾燥した。固体をジクロロメタン(230mL)中でスラリー化し、不溶性材料を濾過により取り出し、濾液を蒸発させて、生成物(2.8g)を得た。
フタロニトリルL
【0118】
【化21】

【0119】
中間体3の調製
【0120】
【化22】

【0121】
以下に記載するようにして調製したフタロニトリルQ(47g)をアセトニトリル(137mL)およびジメチルアセトアミド(14mL)に加え、45℃に加熱した。その後、オキシ塩化リン(41mL)を滴下して加え、反応物を60℃で2時間攪拌した。その後、反応物を30℃に冷却し、水(400mL)中に浸し、一晩攪拌した。懸濁液を10℃に冷却し、沈殿物を濾過により収集し、冷水(560mL)、その後プロパン−2−オール(155mL)で洗浄し、乾燥して、中間体(45.7g)を得た。
中間体4の調製
【0122】
【化23】

【0123】
中間体3(66.8g)を、<5℃において20分かけてアセトニトリル(96mL)中のメチルアミン(67.95g)の40%水溶液に加え、反応物を2.5時間攪拌した。沈殿固体を濾過により取り出し、アセトニトリル(3×30mL)で洗浄し、乾燥して、生成物(28g)を得た。
中間体5の調製
【0124】
【化24】

【0125】
アセトン(500mL)中の中間体4(32.7g)の溶液を、0℃においてアセトン(150mL)中の塩化シアヌル(18.5g)に加え、0.5M水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを6に維持しつつ、この温度で2時間攪拌した。沈殿固体を濾過により取り出し、氷冷水(2×250mL)で洗浄し、乾燥して、湿った生成物(65.2g)を得た。
フタロニトリルLの調製
水(250mL)中のアニリン2,5ジスルホン酸(27.5g)の溶液をアセトニトリル(800mL)中の中間体5(63.2g)に加え、40℃およびpH5〜7で一晩加熱した。反応溶媒を減圧下で除去し、水(50mL)、その後ブライン(60mL)を加え、沈殿した固体を濾過により取り出し、10%ブラインで洗浄し、乾燥して、フタロシアニン(強度91.1%、22g)を得た。
フタロニトリルM
【0126】
【化25】

【0127】
pH7に調整した水(50mL)中の5−アミノイソフタル酸(4.53g)の溶液を、アセトニトリル(180mL)中の中間体5(15.5g)に加え、pH6.7〜7で2時間攪拌した。反応混合物を低容量まで蒸発させ、沈殿した固体を濾過により取り出した。濾液(120mL)をpH2に調整し、沈殿固体を濾過により収集し、冷水(25mL)で洗浄し、乾燥して、生成物(5.1g)を得た。
フタロニトリルN
【0128】
【化26】

【0129】
pH5〜6に調整した水(20mL)中のメタニル酸(1.5g)の溶液を、アセトニトリル(80mL)中の中間体5(4.04g)に加え、35〜40℃、pH6〜8で1.5時間攪拌した。さらに水(20mL)中のメタニル酸(1.5g)を加え、反応混合物を70〜75℃に加熱し、pH7〜8.5で12時間攪拌した。反応混合物を蒸発させてアセトニトリルを除去し、残渣を水(40mL)で希釈した。沈殿した固体を濾過により取り出し、メタノール(100mL)中で攪拌した後、濾過により収集し、メタノール(2×50mL)で洗浄し、乾燥した(2.8g)。低容量まで減少させることによりメタノール濾液からさらなる収穫物(crop)を回収し、濾過により沈殿固体を収集し、乾燥した(2.8g)。
フタロニトリルO
【0130】
【化27】

【0131】
水(20mL)およびアセトニトリル(10mL)中のメタニル酸(1.05g)の溶液をpH6に調整し、水(30mL)中のフタロニトリルL(3.9g)に加え、70〜75℃、pH7〜8で6時間攪拌した。反応物を蒸発乾固し、アセトン(100mL)中で攪拌し、濾過および乾燥して、強度86.8%の生成物(4.3g)を得た。
フタロニトリルP
【0132】
【化28】

【0133】
この化合物は市販されている。
フタロニトリルQ
【0134】
【化29】

【0135】
ジメチルスルホキシド(290mL)を4−ニトロフタロニトリル(60.15g)に加えた後、3−メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム塩(72.2g)を加えた。炭酸リチウム(28.24g)を少しずつ加え、反応物を35℃で1時間加熱した。その後、反応物を58℃に加熱し、濾過し、濾液を水(335mL)中の塩化リチウム(295g)の溶液に加えた。これを週末にわたり放置し、沈殿固体を濾過により収集し、プロパン−2−オール(370mL)で洗浄し、乾燥して、以下に示す硫化物(88.9g)を得た。
【0136】
【化30】

【0137】
該硫化物(88g)を、50℃に加熱した水(155mL)に加えた後、30℃に冷却した。水(17mL)、氷酢酸(10mL)およびタングステン酸ナトリウム二水和物(1.5g)を加え、混合物を46℃に加熱した。その後、35%過酸化水素(57mL)を55〜60℃で滴下して加え、反応物を1時間かけて58℃に加熱した。その後、混合物を45℃に冷却し、余剰の過酸化水素を亜硫酸ナトリウムで消失させた。反応物を濾過し、塩化リチウム(50g)を加え、混合物を9℃に冷却した。沈殿した固体を濾過により収集し、プロパン−2−オール(150mL)で洗浄し、乾燥して、生成物(53.1g)を得た。
フタロニトリルR
【0138】
【化31】

【0139】
フタロニトリルRは、中間体Bの調製においてジメチルアミンの代わりにアンモニアを用いた点を除き、フタロニトリルEと同様に調製した。
フタロニトリルS
【0140】
【化32】

【0141】
ジメチルスルホキシド(30mL)を4−ニトロフタロニトリル(10g)に加えた後、メルカプトエタノール(4.5g)を加えた。その後、炭酸カリウム(7.9g)を少しずつ加え、反応物を室温で一晩攪拌した。水(200mL)を加え、沈殿固体を濾過により取り出し、水で洗浄し、乾燥して、以下に示す硫化物(10g)を得た。
【0142】
【化33】

【0143】
該硫化物(5g)を酢酸(30mL)中で攪拌し、タングステン酸ナトリウム二水和物(50mg)を加えた後、冷却しながら30%過酸化水素(5mL)を滴下して加えた。その後、反応物を室温で4時間攪拌し、酢酸を蒸発により除去し、エーテルで粉砕すると、白色固体が得られた。これを濾過し、水で洗浄し、乾燥して、生成物(5g)を得た。
フタロニトリルT
【0144】
【化34】

【0145】
フタロニトリルTは、メルカプトエタノールの代わりにチオグリセロールを用いた点を除き、フタロニトリルSと同様に調製した。
実施例1
プロセス例:成分染料として以下の式のものを含むフタロシアニン染料の混合物の調製:
【0146】
【化35】

【0147】
フタロニトリルB(5.4g)、フタロニトリルI(5.27g)およびフタロニトリルE(1.98g)を、ジエチレングリコール(18g)および酢酸(0.22g)に、120℃に加熱することにより溶解した。その後、混合物を70℃に冷却した。オルト酢酸トリエチル(2.92g)、塩化銅(II)(0.99g)および酢酸リチウム(0.5g)を加え、反応混合物を4時間かけて120℃に加熱した。この時間の終了時に、反応混合物を70℃に冷却し、エチレンジアミン四酢酸(0.4g)および濃塩酸(3mL)を加え、反応混合物を80℃でさらに1時間加熱した。その後、プロパン−2−オール(60mL)を加え、沈殿した固体を濾過により取り出し、プロパン−2−オール(60mL)で洗浄した。その後、この固体をプロパン−2−オール(70mL)と水(10mL)の混合物中で0.5時間還流攪拌し、濾過し、プロパン−2−オール(60mL)で洗浄し、乾燥した。該固体を水(200mL)に溶解し、2M水酸化リチウムを用いてpH9に上昇させ、透析し、濾過し、乾燥して、生成物(9.25g)を得た。
実施例2
プロセス例:成分染料として以下の式のものを含むフタロシアニン染料の混合物の調製:
【0148】
【化36】

【0149】
フタロニトリルA(5.58g)、フタロニトリルI(5.27g)およびフタロニトリルE(1.98g)を反応させて9.2gの生成物を得た点を除き、実施例1と同様に調製した。
実施例3〜41
実施例3〜39の染料は、フタロシアニン成分を以下に示すように変動させた点を除き、実施例1に記載したとおりに調製した。
【0150】
【表1】

【0151】
実施例42
インクの調製
インクを、実施例1および比較例の染料3.5gを、以下:
ジエチレングリコール 7%
エチレングリコール 7%
2−ピロリドン 7%
SurfynolRTM 465 1%
トリス緩衝液 0.2%
水 77.8%(%はすべて重量に基づく)
を含む液体媒体96.5gに溶解し、水酸化ナトリウムを用いてインクのpHを8〜8.5に調整することにより調製した。
【0152】
SurfynolRTM465はAir Productsからの界面活性剤である。
実施例43
インクジェット印刷
上記のように調製したインクおよび比較インクを、0.45ミクロンのナイロン製フィルターに通して濾過した後、シリンジを用いて空の印刷用カートリッジ中に組み込んだ。
【0153】
その後、これらのインクを以下のインクジェット媒体上に50%の深さでインクジェット印刷した:
Epson(登録商標) Ultra Premium Glossy Photo Paper(SEC PM);
Canon(登録商標) Photo Paper Pro Platinum PT101 Photo Paper(PT101);および
HP Advanced Photo Paper(HPP)。
【0154】
プリントを、Hampden 903 Ozoneキャビネットにおいて40℃、相対湿度50%で1ppmのオゾンに24時間暴露することにより、耐オゾン堅牢度について試験した。印刷されたインクのオゾンに対する堅牢度は、オゾンへの暴露前後の光学濃度の差により判定することができる。
【0155】
光学濃度の測定は、以下のパラメーターに設定したGretag(登録商標) spectrolino分光光度計を用いて実施した:
測定配置:0°/45°
スペクトル域:380〜730nm
スペクトル間隔:10nm
光源:D65
観測視野:2°(CIE1931)
密度:Ansi A
外部充填物(External Filler):なし
耐オゾン堅牢度を、プリントの光学濃度の百分率での変化により評価した。ここにおいて、数字が小さいほど堅牢度および退色度が高いことを示す。退色度はΔEとして表され、ここにおいて、数字が小さいほど耐光堅牢度が高いことを示す。ΔEは、プリントのCIE色座標L、a、bにおける全体的変化として定義され、式ΔE=(ΔL+Δa+Δb0.5により表される。
【0156】
結果を以下の表に示す:
耐オゾン堅牢度
【0157】
【表2】

【0158】
明らかに、本発明の染料を用いて調製したインクは、耐オゾン堅牢度において明白な利点を示す。
さらなるインク
表AおよびBに記載したインクは、実施例1の化合物を用いて調製することができる。第1列に示した染料を、第2列以降に明記したインク100部に溶解する。第2列以降に挙げた数字は当該インク構成成分の部数をさし、すべての部は重量に基づく。インクのpHは、適した酸または塩基を用いて調整することができる。インクは、インクジェット印刷により基材に施用することができる。
【0159】
以下の略語を表AおよびBに用いる:
PG=プロピレングリコール
DEG=ジエチレングリコール
NMP=N−メチルピロリドン
DMK=ジメチルケトン
IPA=イソプロパノール
2P=2−ピロリドン
MIBK=メチルイソブチルケトン
P12=プロパン−1,2−ジオール
BDL=ブタン−2,3−ジオール
TBT=第三ブタノール
【0160】
【表3】

【0161】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩の調製方法であって、式(1)の化合物を式(2)および/または式(3)の化合物と環化することを含む方法:
【化1】

[式中、
は、ヒドロカルビル基であり;
は、Hまたはヒドロカルビル基であり;
は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり;
およびRは、シアノ、カルボキシまたはカルボキサミドであるか、一緒になって以下の式の基を形成し
【化2】

Xは電子求引基であり;そして
nは1〜4である]:
ここにおいて、該環化法は、適した窒素源(必要な場合)および金属塩(必要な場合)の存在下で実施する。
【請求項2】
染料が銅フタロシアニン染料である、請求項1に記載のフタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩の調製方法。
【請求項3】
が式(4)の基である、請求項1または請求項2のいずれかに記載の方法
−L−SONR
式(4)
[式中:
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;そして
Lは、置換されていてもよいC1−4アルキレンである]。
【請求項4】
が、置換されていてもよいトリアジニル基を持つ置換されていてもよいC1−4アルキルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
が置換されていてもよいC1−4アルキルである場合、R上の置換されていてもよいトリアジニル置換基が式(5)の基である、請求項4に記載の方法
【化3】

[式中:
Xは、−OR、−SR、−NRからなる群より選択され;
Yは、−OR10、−SR11、−NR1011からなる群より選択され;
、R、R10およびR11は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり、ただし、R、R、R10およびR11により表される基の少なくとも1つは、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つという条件が付く]。
【請求項6】
が置換されていてもよいC1−4アルキルである場合、R上の置換されていてもよいトリアジニル置換基が式(6)の基を含む、請求項4または請求項5のいずれかに記載の方法
【化4】

[式中:
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
10は、Hまたは置換されていてもよいC1−4アルキルであり;
11は、−SOH、−COHおよび−POからなる群より選択される少なくとも1つの置換基を持つ、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルである]。
【請求項7】
およびRがシアノまたはカルボキシである、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
XがNO、FまたはClである、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
nが4である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法により得ることができるフタロシアニンまたは金属フタロシアニン染料およびその塩。
【請求項11】
式(7)の成分を含む、請求項10に記載のフタロシアニン染料およびその塩:
【化5】

[式中:
Mは、H、NiまたはCuであり;
は、ヒドロカルビル基であり;
は、Hまたはヒドロカルビル基であり;
は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、または置換されていてもよいヘテロシクリルであり;
Xは、電子求引基であり;
nは1〜4であり;
yは、0〜4未満であり;
zは、0〜4未満であり;そして
y+zは、0より大きく4未満である]。
【請求項12】
請求項10または11に記載のフタロシアニン染料またはその塩と黄色染料またはその塩との混合物。
【請求項13】
黄色染料が式(9)およびその塩のものである、請求項12に記載の混合物:
【化6】

【請求項14】
請求項10もしくは請求項11のいずれかに記載したフタロシアニンもしくは金属フタロシアニン染料およびその塩、または請求項12もしくは請求項13のいずれかに記載した染料およびその塩の混合物と、液体媒体とを含む、組成物。
【請求項15】
基材上に像を形成するための方法であって、請求項13に記載の組成物をインクジェット印刷機により基材に施用することを含む方法。
【請求項16】
基材に、さらにフィルム形成材料を含む請求項14に記載の組成物を施用することを含む、基材上にフィルムコーティングを形成するための方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法により印刷した材料。
【請求項18】
請求項16に記載の方法により形成したフィルムコーティングを含むカラーフィルター。
【請求項19】
チャンバーと組成物を含むインクジェット印刷機用カートリッジであって、該組成物が該チャンバー内にあり、該組成物が請求項14で定義したとおりである、前記インクジェット印刷機用カートリッジ。

【公表番号】特表2012−530179(P2012−530179A)
【公表日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515558(P2012−515558)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050858
【国際公開番号】WO2010/146381
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(506139635)フジフィルム・イメイジング・カラランツ・リミテッド (75)
【Fターム(参考)】