説明

フックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステムおよび方法

【課題】製造および組み込みプロセスの効率を向上させることができるフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】システムは、その表面に少なくとも一つのトレンチを画定する成形型と、トレンチの表面に配置される二つ以上のフックファスナーエレメントと、を備える。各フックファスナーエレメントは、(1)長尺な基材と、(2)長尺な基材の上面から上向きに延出する複数のフックと、(3)長尺な基材の中に配置される磁性材料と、を備える。トレンチの磁性部分は、フックファスナーエレメントを吸引し、二つ以上のフックファスナーエレメントを互いに隣接するように整列させてトレンチに保持し、二つ以上のフックファスナーエレメントは互いに結合されておらず、隣接するフックファスナーエレメントの端部同士を突き合わせた関係でトレンチに配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フック・ループファスナー構造は、物品を相互に隣接して固定する様々な用途で使用される。例えば、自動車シートのフォームバンの表面にフックファスナーストリップが成形され、フックファスナーストリップと嵌合してシートカバーをフォームバンに固定するループ材料が自動車シートカバーの内面に設けられる。可撓性のフックファスナーストリップは、フォームバンの曲線形状部分に利用され、直線状のフックファスナーストリップは、例えば、フォームバンの幅方向中心などでフォームバンの長手方向に沿って設けられる直線形状部分に利用される。
【0003】
図1は、特定の自動車シートのフォームバンを成形するための成形型10の実施形態を示す。成形型10は、フォームバンを形成するためのフォームの射出に先行して、フックファスナーストリップ21,22をそれぞれ収容するためのトレンチ12,13を備える。作業者は、直線状のフックファスナーストリップ22を直線状のトレンチ13に、可撓性フックファスナーストリップ21を各曲線状のトレンチ12に配置する。フックファスナーストリップ21,22をトレンチ12,13に保持して各トレンチ12,13内で各ストリップ21,22を適切に整列させるために、トレンチ12,13は磁性面を有し、フックファスナーストリップ21,22は、ファスナーストリップ21,22に形成された磁性を備える単繊維(例えば、炭素鋼または鉄)を有する。
【0004】
図1および2A〜2Dに示されているファスナーストリップ21など、先行技術の可撓性フックファスナーストリップは、トレンチ12の形状および長さに型抜きされたものである。このようなファスナーストリップは、特定の形状および長さを持つトレンチにしか使用できない。また、フォームがフックの間に侵入するのを防ぐため、フックの上にはカバー23が配置される。しかし、成形されたフォームバンを成形型10から取り外した後に、作業者は、フックが配置された基材24からこのカバー23を取り外さなければならず、作業者にとっては余分な製造工程、製造者にとっては材料の浪費となる。さらに、周知のファスナーストリップ21は非常に薄く、トレンチ12に配置する作業を困難にする。
【0005】
特許文献1に開示された、図3に見られるような直線状のファスナーストリップ22は、ファスナーストリップ22の上面に垂直な面では充分なレベルの剛性を提供するが、ファスナーストリップ22の上面を含む面において、このようなファスナーストリップ22は可撓性に欠けている。したがって、これらのストリップ22は概ね直線状のトレンチのみに使用できる。また、これらのストリップ22の長さは、ストリップ22が配置されるトレンチの長さに概ね切断(または形成)される。したがって、ストリップ22を使用する製造者は、異なる長さを持つトレンチに使用するため長さの異なるストリップ22を在庫として持たなければならない。
【0006】
長尺の接続部材29により、端部同士を突き合わせた関係で、相互に結合された複数の直線状のファスナーストリップ28を備え、図4に示されたような別のタイプのファスナーストリップアセンブリ25も開発されている。上述した周知のファスナーストリップと同様に、様々な実施形態によるファスナーストリップアセンブリ25は、概ねファスナーストリップアセンブリ25が配置されるトレンチの長さである全長を有する。様々な長さを持つトレンチに適応するために、様々な長さを持つ複数のファスナーストリップアセンブリ25が組み立てられる。さらに、ファスナーストリップアセンブリ25に使用されるファスナーストリップ28は、様々な半径の曲線形状を持つトレンチに使用されるファスナーストリップアセンブリ25に適応するため、様々な長さに切断される。例えば、小さな半径の曲線形状を持つトレンチについては、ファスナーストリップアセンブリ25に使用されるファスナーストリップ28は、ファスナーストリップアセンブリ25が曲線形状をたどるように短い長さを持つ。同様に、大きな半径の曲線形状を持つトレンチまたは直線状のトレンチについては、ファスナーストリップアセンブリ25に使用されるファスナーストリップ28はもっと長い。この構成の結果、長さの異なるファスナーストリップ28を用いてファスナーストリップアセンブリ25を組み立てるとともに、様々なトレンチ長さおよび湾曲に適応するため全長の異なるファスナーストリップアセンブリ25を組み立てることが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/0240289号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、成形型アセンブリの直線状および曲線状のトレンチにフックファスナーストリップを組み込み、製造および組み込みプロセスの効率を向上させることができるシステムおよび方法が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
成形型アセンブリシステムの様々な実施形態は、金型の表面に少なくとも一つのトレンチを画定する成形型と、端部同士を突き合わせた関係で、トレンチの表面に配置される二つ以上のフックファスナーエレメントと、を備える。各フックファスナーエレメントは、(1)長尺な基材と、(2)基材の上面から上向きに延出する複数のフックと、(3)基材の中に配置される磁性材料と、を備える。フックファスナーエレメントは互いに結合されておらず、トレンチの中に個別に配置され、トレンチの磁性部分は、フックファスナーエレメントを吸引し、フックファスナーエレメントを、前記トレンチの長さに概ね沿って整列させ、端部同士を突き合わせた関係で、隣接して保持するように構成される。一実施形態では、二つ以上のフックファスナーエレメントは略同一の長さであって、直線状のトレンチ、曲線状のトレンチ、様々な長さを持つトレンチに使用可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステムおよび方法によれば、成形型アセンブリの直線状および曲線状のトレンチにフックファスナーストリップを組み込む際、製造および組み込みプロセスの効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】フォームバンを形成するための周知の成形型アセンブリの図を示す。
【図2A】周知の可撓性フックファスナーストリップを示す。
【図2B】周知の可撓性フックファスナーストリップを示す。
【図2C】図2Aおよび図2Bに見られる可撓性フックファスナーストリップの剛性および可撓性を示す。
【図2D】図2Aおよび図2Bに見られる可撓性フックファスナーストリップの剛性および可撓性を示す。
【図3】周知の直線状のファスナーストリップを示す。
【図4】周知のファスナーストリップアセンブリの底面斜視図を示す。
【図5】本発明の様々な実施形態によるフックファスナーエレメントの上面斜視図を示す。
【図6】本発明の一実施形態による、トレンチの磁性面に配置された、図5に示された二つのフックファスナーエレメントの下面の斜視図を示す。
【図7】本発明の代替実施形態によるフックファスナーエレメントの上面斜視図を示す。
【図8】本発明の代替実施形態による、トレンチの磁性面に配置された、図7に示された二つのフックファスナーエレメントの下面の斜視図を示す。
【図9】本発明の一実施形態による成形型アセンブリの部分的平面図を示す。
【図10】本発明の一実施形態による、フックファスナーエレメントを成形型アセンブリに供出するための配給装置を示す。
【図11】本発明の一実施形態によるフックファスナーエレメントの製造方法を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態によるフックファスナーエレメントの組み込み方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明のフックファスナーストリップの別の実施形態を示す拡大平面図である。
【図14A】図13におけるA−A線断面図である。
【図14B】図13におけるB−B線断面図である。
【図14C】図13におけるC−C線断面図である。
【図15】図13のフックファスナーストリップから得られたフックファスナーエレメントをトレンチに設置したときの拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
添付図面を参照して、発明の様々な実施形態をさらに詳しく説明する。これらの発明は多くの異なる形で具体化されてもよく、提示される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用される法的な要件を満たすように、提供されるものである。
【0013】
簡単な要約
発明の様々な実施形態では、成形型と二つ以上のフックファスナーエレメントとを備える成形型アセンブリシステムが提供される。成形型は、その表面上に少なくとも一つのトレンチを画定し、トレンチの少なくとも一部分は、磁性を帯びている。二つ以上のフックファスナーエレメントは、互いに結合されておらず、端部同士を突き合わせた関係で、相互に分離して、トレンチに配置される。二つ以上のフックファスナーエレメントの各々は、上面と、上面と反対の下面と、第1端部と、第1端部と反対でこれから離間した第2端部とを有する基材を備える。第1端部から第2端部まで長手方向軸が延在し、基材には磁性材料が配置されている。トレンチの磁性部分は、二つ以上のフックファスナーエレメントを吸引し、フックファスナーエレメントの長手方向軸をトレンチの長手方向軸とほぼ整合させ、フックファスナーエレメントを互いに隣接させてトレンチに保持するように構成されている。
なお、ここで言うトレンチとはフォームバンにフックファスナーエレメントを磁力によって吸引される部分を言い、本発明の実施形態上では金型表面から隆起した隆起部の少なくとも一部分が磁気を帯びている部分をさしている。
【0014】
様々な実施形態では、フックファスナーエレメントは略同一の長さを持つ。また、その長さすなわち後述する基材の長手は約10mmと約50mmの間である。例えば、一実施形態では、長さは約25.4mmであり、これは先行技術のフックファスナーよりもかなり短い。しかし様々な代替実施形態では、フックファスナーエレメントは長さが異なっていてもよい。例えば、様々な代替実施形態では、異なる外形(直線状または曲線状など)と長さを持つトレンチにフックファスナーエレメントが使用され得るように、これらの長さは先行技術で周知の直線状のフックファスナーよりも相対的に短い。
【0015】
上述した先行技術のフックファスナーと異なり、発明の様々な実施形態によるフックファスナーエレメントは実質的に、いかなる成形型への組み込みにも単一の製品で対応する。例えば、様々な実施形態によるフックファスナーエレメントは、直線状のトレンチ、様々な半径を持つ曲線状のトレンチ、長さの異なるトレンチを含む実質的にいかなる形状のトレンチにも使用できる。また、様々な実施形態によるフックファスナーエレメントは先行技術のフックファスナーよりも相対的に短く、長さが略同一であるため、発明の一実施形態によるフックファスナーエレメントの製造および在庫管理のプロセスが簡素化される。すなわち、フックファスナーエレメントの製造プロセスについての一実施形態によれば、巻き取り、保管、カール矯正、フックファスナーが使用されるトレンチの長さに基づくフックファスナーの適切な切断長の設定、長さの確認、在庫を目的としてこの長さを持つ部品の数の計算が省略され、結果的に、一層効率的で費用効果のある製造プロセスとなる。また、様々な実施形態により、様々な組み込みに使用できる略単一サイズのフックファスナーエレメントを用意することにより、成形型アセンブリにフックファスナーエレメントを使用する製造者にとって在庫管理が単純化および短縮される。さらに、様々な実施形態によりフックファスナーエレメントを保管してこれをトレンチに送出する配給装置を使用することで、各成形型アセンブリから目を離して適切なフックファスナーを探し、また成形型アセンブリに向き直ってフックファスナーを組み込むという工程を作業者は回避できる。一実施形態によれば、配給装置を使用することによって、ステーション一箇所につき二人以上から一人まで作業者の数を減らすことができる。
【0016】
フックファスナーエレメントの様々な実施形態についてのさらに詳細な説明を、以下に挙げる。
【0017】
フックファスナーエレメントの構造および製造方法
図5および図6は、発明の一実施形態によるフックファスナーエレメント31を示す。詳しく述べると、フックファスナーエレメント31は、上面33と、上面33と反対の下面34とを有する長尺な基材32を備える。また、フックファスナーエレメント31は、第1端部35と第2端部36とを備え、第1端部35と第2端部36との間には長手方向軸37が延在する。複数の長手側壁39がフックファスナーエレメント31の上面33から上向きに延出し、上面33の各長手縁部40a,40bに隣接して配置される。ループ材料と係合するのに適した複数のフック38がフックファスナーエレメント31の上面33から上向きに延出し、左右の長手側壁39の間に配置される。成形プロセス中にフォームがフック38の間に侵入するのを防止あるいは抑制するため、長手側壁39の高さは複数のフック38の高さと概ね等しい。
なお、図5や図7で示されているフック38は簡略化されて図示されており、例えば図14Cに示されているようなアロータイプのフックや、その他周知なJ字、L字、T字状のフックである。
【0018】
様々な実施形態によれば、フックファスナーエレメント31は、プラスチック材料(ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリブチレンテレフタレート(PBT))で形成され、基材32、フック38、長手側壁39は成形プロセス中に一体的に形成される。さらに、特定の実施形態では、フックファスナーエレメント31は、図13に見られるような基材32の長手方向に延在する磁性を持つ単繊維または線材(鉄の単繊維、炭素鋼線材、あるいは鉄などの磁性金属粉を合成樹脂で固めた線材など)を備える。この磁性単繊維または線材は、図1に関連して上述した磁性を有するトレンチ12などに二つ以上のフックファスナーエレメント31を吸引し、二つ以上のフックファスナーエレメント31を互いに隣接した状態に整列させ、金型表面から隆起したトレンチ12などに保持する。
【0019】
下面34は、フックファスナーエレメント31の各長手縁部40a,40bに隣接して、少なくとも一つのフィン44,45をそれぞれ画定する。フィン44,45は、成形型アセンブリにブロー成形されるフォーム材料にフックファスナーエレメント31を係止するのに役立つ。フィン44,45は、長手方向軸37に対してほぼ横方向に各長手縁部40a,40bからそれぞれ外向きに延出する。図5および図6に示された実施形態では、第1長手縁部40aに隣接する複数のフィン44は相互に離間し、第2長手縁部40bに隣接する複数のフィン45は相互に離間している。第1長手縁部40aに隣接する各フィン44を通る横方向軸47は、第2長手縁部40bに隣接するフィン45を通る横方向軸48とオフセットしている(同軸でない)。しかし、図7および図8に示された代替実施形態では、フックファスナーエレメント51の各長手縁部50a,50bにそれぞれ隣接するフィン64,65を通る横方向軸57,58は、概ね同軸である。なお、図7に示された符号67は、フックファスナーエレメント51の長手方向軸である。
【0020】
特定の実施形態によれば、フックファスナーエレメント31は、参考として全体が取り入れられている米国特許出願公開第2007/0240289号に記載された直線状のフックファスナーエレメントと同じように製造される。詳しくは、図11に見られるようなフックファスナーエレメント31の製造方法1100を例として挙げる。ステップ1102から始まり、鋼線材とPBTとを用いて直線状のフックファスナー(押出成形材料)が押出成形される。上記フックファスナーは周知の技術、例えばダイホイールによって連続的に形成される。それから、ステップ1104に見られるように、フックファスナーがヒートセットされる。次に、ステップ1106に見られるように、フックファスナーがロータリーカットされてフックファスナーエレメント31となり、ステップ1108に見られるように、複数のフックファスナーエレメント31が保管容器に落下する。例えば、様々な実施形態では、フックファスナーエレメント31は約10mmと約50mmの間となるように切断され、一実施形態ではフックファスナーエレメント31は約25.4mmの長さに切断される。しかし、フックファスナーエレメント31は他の様々な長さでもよい。他の代替実施形態では、レーザ切断装置を用いて切断が行われる。上述した方法1100により、周知のフックファスナーを製造するのに行われていた一つ以上の工程が省略できる。この省略できる工程を例示すると、巻き取り、ヒートセット前の保管、カール矯正、適切な切断長の設定、成形型アセンブリへの組み込み前の相互に隣接する二つ以上のフックファスナーエレメントの組立、部品の長さの確認、様々な長さを持つ部品の在庫確保などが挙げられる。
【0021】
フックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込む方法
図12は、発明の一実施形態により成形型アセンブリに複数のフックファスナーエレメント31を組み込む方法1200を例示している。また、図9は、複数のフックファスナーエレメント31が組み込まれた成形型アセンブリの部分的平面図を示す。
【0022】
詳しく述べると、様々な実施形態によれば、フックファスナーエレメント31を成形型アセンブリに組み込む方法1200は、少なくとも一つのトレンチを画定してトレンチの少なくとも一部分が磁性を備える成形型アセンブリを用意するステップ1202から始まる。例えば、図9に示された実施形態では、金型表面から隆起した二つの曲線状のトレンチ112と三つの直線状のトレンチ113とを有する成形型アセンブリ100が用意され、トレンチ112,113は、各トレンチ112,113の長さに沿って長手方向に延在する磁性面を有する。様々な実施形態では、磁性面は、例えば、磁化鉄または他の強磁性材料で形成される。
【0023】
ステップ1204では、図5〜図8および図11に関連して上述したような二つ以上のフックファスナーエレメント31,51が用意される。図12ではステップ1204はステップ1202の後に行われるように記されているが、これらのステップは同時に、または逆の順序(ステップ1204の後でステップ1202など)で行われてもよい。
【0024】
次に、ステップ1206では、ステップ1204で用意された二つ以上のフックファスナーエレメント31,51が、各フックファスナーエレメント31の上面33が各トレンチ112,113の下面に隣接してこれと対向するように、トレンチ112,113の長さに概ね沿って端部同士を突き合わせた関係で、トレンチ112,113に個別に配置される。すなわち、図5および図6に関連して説明した二つ以上のフックファスナーエレメント31が用意される一実施形態では、トレンチ112,113への組み込み前には二つ以上のフックファスナーエレメント31は互いに接合されていない。こうして、各フックファスナーエレメント31が一度に、または個別に特定のトレンチ112,113に配置される。例えば、図9に見られるように、第1フックファスナーエレメント31aの第1端部35がトレンチ112aの端部に概ね隣接して配置されるように、第1フックファスナーエレメント31aが曲線状のトレンチ112aの一端部に配置される。第1フックファスナーエレメント31aの第2端部36が第2フックファスナーエレメント31bの第1端部35と軸方向に隣接するように、第1フックファスナーエレメント31aの後で第2フックファスナーエレメント31bがトレンチ112aに配置される。同様に、第2フックファスナーエレメント31bの第2端部36が第3フックファスナーエレメント31cの第1端部35と軸方向に隣接するように、第2フックファスナーエレメント31bの後で第3フックファスナーエレメント31cがトレンチ112aに配置される。端部同士を突き合わせた関係に配列されたフックファスナーエレメント31がトレンチ112aの長さを概ね覆うまで、追加のフックファスナーエレメント31(第4、第5、第6、第7、第8・・・)がトレンチ112a内に順に配置される。同様に、多数のフックファスナーエレメント31が直線状のトレンチ113に同じまたは類似の方法で配置される。
【0025】
一実施形態によれば、自動(半自動)配給装置を利用する作業者により、フックファスナーエレメント31がトレンチ112,113内に個別に配置される。例えば、図10は、出口端部206と入口端部202とこれらの間に延在する本体204とを備える配給装置200の一実施形態を示す。入口端部202はフックファスナーエレメント31を受け取り、出口端部206はフックファスナーエレメント31を送出または吐出する。作業者は、フックファスナーエレメント31が充填される各トレンチ112,113に隣接するように配給装置200の出口端部206を位置決めし、トレンチ112,113に沿って配給装置200を移動させる。トレンチ112,113の磁性面は、出口端部206から磁性面へフックファスナーエレメント31を引き出し、トレンチ112,113の長手方向軸に沿ってフックファスナーエレメント31の長手方向軸を概ね整列させ、フックファスナーエレメント31を隣接した状態に保持する。なお、配給装置200の入口端部202と出口端部206の間には複数のフックファスナーエレメント31を同じ向きに整列させ収納する収納部207を備える。また、本実施形態では、フックファスナーエレメント31は表裏方向に重ねあわされている。
【0026】
様々な実施形態によれば、配給装置200は、(トリガーボタンなどによる)作業者からの入力を受けて出口端部206からフックファスナーエレメント31を送出するように構成されている。代替実施形態では、供出装置200は、出口端部206がトレンチ112,113に近接したこと(近接センサなどにより)を検知するように構成され、近接の検知を受けて、供出装置200がフックファスナーエレメント31を送出するように構成されている。さらなる代替実施形態では、配給装置200は、トレンチ112,113に隣接した状態で出口端部206を整列させるように構成されている。そしてまた別の代替実施形態では、フックファスナーエレメント31は作業者によりトレンチ112,113に手作業で挿入されてもよい。
【0027】
次に、図13〜図15を参照して、本発明に係るフックファスナーエレメントの別の実施形態について説明する。なお、上記実施形態と同一又は同等部分については、図面に同一符号を付してその説明を省略或いは簡略化する。
【0028】
本実施形態のフックファスナーエレメント71は、図13に示すフックファスナーストリップ70を適宜長さに切断することによりが形成される。
【0029】
フックファスナーストリップ70は、図13及び図14A〜図14Cに示すように、上面33及び下面34を有する長尺な基材32と、基材32の長手方向及び幅方向に沿って複数配置され、上面33から上向きに延出する断面略錨形状のフック72と、基材32の各長手縁部40a,40bに隣接して配置され、上面33から上向きに延出する長手側壁73と、基材32内に長手方向に沿って配置され、鉄線又は磁性モノフィラからなる2本の磁性材料74と、各長手縁部40a,40bから基材32の幅方向外側にそれぞれ延出するフィン44,45と、を備える。
【0030】
また、本実施形態では、基材32の幅方向に沿って配置される複数のフック72間、及びフック72と長手側壁73間にリブ(隆起部)75がそれぞれ形成されており、これら基材32の幅方向に沿って配置される複数のフック72と複数のリブ75によって、長手側壁73,73間を横断して基材32の幅方向に沿って延びるとともに、基材32の長手方向に多数配置される幅側壁76が構成される。
【0031】
長手側壁73は、図13に示すように、基材32の幅方向内側から第1〜第3側壁73a〜73cに分割されており、第1〜第3側壁73a〜73cの各々は、基材32の長手方向に更に複数に分割されている。第1側壁73aは、基材32の最も幅方向外側に配置される各リブ75間をそれぞれ連結するように形成され、第2側壁73bは、基材32の幅方向に沿って配置される複数のフック72と同一線上に形成され、第3側壁73cは、第1側壁73aと幅方向の同一線上に形成されており、第1〜第3側壁73a〜73cは、その略半分が幅方向に重なり合うように、互い違いに配置されている。
【0032】
また、本実施形態では、図14A及び図14Bに示すように、長手側壁73及び幅側壁76はフック72と略同一の高さに形成される。これにより、フックファスナーストリップ70をどの位置で切断したとしても、長手側壁73及び幅側壁76により成形プロセスの際にフォームがフック72間に侵入するのを防止することができる。
【0033】
また、図15に示すように、フックファスナーエレメント71は、成形型アセンブリ100内では、その上面33を下側にしてトレンチ112,113の磁石114上に設置されている。なお、本実施形態では、トレンチ112,113の上面は平坦であるが、これに限定されず、図示はしないが、トレンチ112,113の上面にフックファスナーエレメント71を設置する凹部を形成してもよい。
その他の構成については、上記実施形態と同様である。
【0034】
開示された実施形態を参照して本発明を特に詳細に説明したが、添付の請求項に記載された発明の趣旨および範囲において多くの変形および改良が実施できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
31,31a,31b,31c,51;71 フックファスナーエレメント
33 上面
34 下面
35 第1端部
36 第2端部
37;67 長手方向軸
38;72 フック
39;73 長手側壁
40a,40b;50a,50b 長手縁部
44,45;64,65 フィン
47,48;57,58 横方向軸
74 磁性材料
75 リブ(隆起部)
76 幅側壁
112,112a,113 トレンチ
200 配給装置
202 入口端部
204 本体
206 出口端部
207 収納部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形型アセンブリシステムであって、
当該金型アセンブリシステムは、
金型の表面に沿って少なくとも一つのトレンチを画定する成形型と、
二つ以上のフックファスナーエレメントと、を備えるフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステムであって、
前記トレンチの少なくとも一部分が磁性を帯びており、
前記二つ以上のフックファスナーエレメントの各々は、
上面と、当該上面と反対の下面と、第1端部と、当該第1端部と反対の第2端部とを有する、長手方向軸が前記第1端部と前記第2端部との間に延在する長尺な基材と、
前記上面から上向きに延出する複数のフックと、
前記基材の中に配置される磁性材料と、を備え、
前記トレンチの前記磁性部分は、前記二つ以上のフックファスナーエレメントを前記磁気部分の方向に吸引し、前記二つ以上のフックファスナーエレメントを整列させ、前記二つ以上のフックファスナーエレメントを互いに隣接させて前記トレンチに保持するように構成され、
前記二つ以上のフックファスナーエレメントは、互いに結合されておらず、磁気トレンチ上で端部と端部とを向ける関係で互いから分離して配されること、を特徴とするフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステム。
【請求項2】
前記二つ以上のフックファスナーエレメントの各々が、略同一の長さを有することを特徴とする請求項1に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステム。
【請求項3】
前記トレンチが、曲線状であることを特徴とする請求項1に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステム。
【請求項4】
前記成形型は、直線状である第1トレンチおよび曲線状である第2トレンチを備え、
前記二つ以上のフックファスナーエレメントは、第1フックファスナーエレメント、第2フックファスナーエレメント、第3フックファスナーエレメント、第4フックファスナーエレメント、第5フックファスナーエレメント、第6フックファスナーエレメント、第7フックファスナーエレメント、および第8フックファスナーエレメントを備え、
前記第1フックファスナーエレメントの前記第2端部が前記第2フックファスナーエレメントの前記第1端部に隣接して配置され、前記第2フックファスナーエレメントの前記第2端部が前記第3フックファスナーエレメントの前記第1端部に隣接して配置され、前記第3フックファスナーエレメントの前記第2端部が前記第4フックファスナーエレメントの前記第1端部に隣接して配置されるように、前記第1、第2、第3および第4フックファスナーエレメントが前記第1トレンチに配置され、
(1)前記第5フックファスナーエレメントの前記第2端部が前記第6フックファスナーエレメントの前記第1端部に隣接して配置され、前記第6フックファスナーエレメントの前記第2端部が前記第7フックファスナーエレメントの前記第1端部に隣接して配置され、前記第7フックファスナーエレメントの前記第2端部が前記第8フックファスナーエレメントの前記第1端部に隣接して配置されるとともに、(2)前記第5、第6、第7および第8フックファスナーエレメントが前記第2トレンチの湾曲を概ねたどるように、前記第5、第6、第7および第8フックファスナーエレメントが前記第2トレンチに配置されることを特徴とする請求項1に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステム。
【請求項5】
前記二つ以上のフックファスナーエレメントの各々は、少なくとも二つの長手側壁を更に備え、
前記少なくとも二つの長手側壁は、前記上面から上向きに延出するとともに、前記上面の各々の長手縁部に隣接して配置され、前記複数のフックと略同一の高さを有することを特徴とする請求項1に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込むシステム。
【請求項6】
上面と、当該上面と反対の下面と、第1端部と、当該第1端部と反対の第2端部と、を有し、長手方向軸が前記第1端部と前記第2端部との間に延在する長尺な基材と、
前記上面から上向きに延出する複数のフックと、
前記基材の中に配置される磁性材料と、を備える二つ以上のフックファスナーエレメントを用意する工程と、
少なくとも一つのトレンチを画定する成形型を用意する工程と、
前記二つ以上のフックファスナーエレメントを、隣接する前記フックファスナーエレメントの前記第1端部と前記第2端部を突き合わせ、互いに分離した関係で、前記少なくとも一つのトレンチに個別に配置する工程と、を備え、
前記二つ以上のフックファスナーエレメントは、前記トレンチの中に配置される前に、互いに結合されていないことを特徴とするフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込む方法。
【請求項7】
前記二つ以上のフックファスナーエレメントを用意する工程は、直線状のフックファスナーエレメントを二つ以上の個別フックファスナーエレメントにカットする工程を含むことを特徴とする請求項6に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込む方法。
【請求項8】
前記二つ以上のフックファスナーエレメントを用意する工程は、
磁性材料とプラスチック材料とを押出成形する工程と、
前記押出成形材料の上下面を形成し、前記押出成形材料の前記上下面がそれぞれ、前記二つ以上のフックファスナーエレメントの各々の上下面の形状に実質的に対応する工程と、
前記押出成形材料をヒートセットする工程と、
前記押出成形材料を個別の結合されていない複数のフックファスナーエレメントに切断する工程と、を含み、
前記二つ以上のフックファスナーエレメントの各々が、略同一の長さを有することを特徴とする請求項6に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込む方法。
【請求項9】
前記二つ以上のフックファスナーエレメントを前記トレンチに、個別に配置する工程は、配給装置の出口端部を前記トレンチに隣接して配置する工程を含み、
前記配給装置が本体を有し、前記本体は、前記フックファスナーエレメントを受ける入口端部と、前記フックファスナーエレメントを前記トレンチに隣接して送出するための前記出口端部と、を備えることを特徴とする請求項11に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込む方法。
【請求項10】
前記配給装置は、出口端部と入口端部との間で前記二つ以上のフックファスナーエレメントを整列させた状態で収納可能な収納部を備えることを特徴とする請求項6に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込む方法。
【請求項11】
作業者が前記出口端部を前記トレンチに隣接して移動させ、前記供出装置を操作することを特徴とする請求項9に記載のフックファスナーエレメントを成形型アセンブリに組み込む方法。
【請求項12】
フォーム材の表面にフックファスナーストリップが取り付けられるフックファスナーストリップ付きフォーム材であって、
前記フックファスナーストリップは、互いに結合されておらず、線状に整列された二つ以上のフックファスナーエレメントから構成され、
前記二つ以上のフックファスナーエレメントの各々は、
上面と、当該上面と反対で前記フォーム材の表面と接触する下面と、第1端部と、当該第1端部と反対の第2端部と、を有し、長手方向軸が前記第1端部と前記第2端部との間に延在する長尺な基材と、
前記基材の前記上面の前記基材の長手方向と直交する幅方向中央に、前記基材の長手方向に沿って植設される複数のフックと、
前記基材内に配置される磁性材料と、を備えることを特徴とするフックファスナーストリップ付きフォーム材。
【請求項13】
前記二つ以上のフックファスナーエレメントの各々は、前記複数のフックの前記基材の幅方向両側に隣接して、前記基材の長手方向に沿って立設される少なくとも一つの長手側壁を更に備え、
前記長手側壁は、前記フックと略同一の高さに形成されることを特徴とする請求項12に記載のフックファスナーストリップ付きフォーム材。
【請求項14】
前記両側に形成された長手側壁間の前記基材の上面を横断して前記基材の幅方向に沿って延びるとともに、前記基材の長手方向に多数配置された幅側壁を備え、
前記幅側壁は、前記フックと略同一高さに形成されることを特徴とする請求項13に記載のフックファスナーストリップ付きフォーム材。
【請求項15】
前記幅側壁は、フックと、前記フックの幅方向に沿って配置されたフックとの間に形成された隆起部(リブ)からなることを特徴とする請求項14に記載のフックファスナーストリップ付きフォーム材。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−162886(P2010−162886A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280909(P2009−280909)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000006828)YKK株式会社 (263)
【Fターム(参考)】