説明

フック

【課題】 あらゆる種類の壁又は柱等に対しても設置可能で、かつ、複数の引掛部を備え、十分な吊り下げ強度を有するフックを提供する。
【解決手段】 本発明のフック10は、壁又は柱等20に複数のビス類16により固定され、壁又は柱等20側に密着する側に幅狭部14aを有し、前記幅狭部14aより壁又は柱等20側から離れた位置に幅広部14bを備えた基板14と、該基板14が嵌合する溝11aを備えたフック基部11と、該フック基部11の表面に設けられた複数の引掛部を有する突起部12と引掛部13とを有し、前記溝11aが、前記フック基部11の裏面側に設けられ、フック基部11の一端面から他端側に向かって延び、溝11aの幅の最大部となる幅広部11a2が溝11aの開口部より溝の底側にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁又は柱等に取付けて衣服等を吊り下げるフックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、衣服等を吊り下げるためのフックを、壁等へ取り付ける方法としては、両面テープを用いて接着するもの(例えば、特許文献1)、ビスをフック基部(フックと壁等とが密着する部分)に貫通させて留めるもの(例えば、特許文献2)、又は、吸盤を用いて吸着させるもの(例えば、特許文献3)がある。ここで、両面テープの場合は、ビスで留めるのに比べると、比較的重い衣服等を吊す場合には、強度上の問題がある。また、ビスをフック基部に貫通させて留めるものは、強度の問題は解決できるが、フックが損傷したり破損した場合や、他のタイプのフックに変更したい場合には、フック全体を交換する必要がある。その場合、背後の壁等に新らたにビスをねじ込むことになり、壁に多数のビス穴ができてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−268248号公報
【特許文献2】特開2002−78597号公報
【特許文献3】特開2000−126014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、斯かる実情に鑑み、フックが破損したり、他のタイプに変更したりする場合でも、壁又は柱等に新たにネジ穴を穿ける必要がなく、フック部分のみの交換が可能で、かつ、十分な吊り下げ強度を有し、複数の引掛部を取付可能なフックを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のフックは、壁又は柱等にビス類により固定され、壁又は柱等側に密着する側に幅狭部を有し、前記幅狭部より壁又は柱等側から離れた位置に幅広部分を備えた基板と、該基板が嵌合する溝を備えたフック基部と、該フック基部の表面に設けられた引掛部と、を有し、前記溝が、前記フック基部の裏面側に設けられ、フック基部の一端面から他端側に向かって延び、溝の幅の最大部が溝の開口部より溝の底側にあることを特徴とするものである。
【0006】
ここで、壁又は柱等とは、壁、柱を含み、それ以外、たとえば、鴨居、ドアの枠、家具の内壁などフックを取り付けることができるもの全般を指す。
【0007】
また、前記基板が、断面形状が台形のアリキー形状で、前記フック基部の溝がアリ溝である構成にしたり、前記基板が、断面形状が凸形状で、前記フック基部の溝が、前記基板が嵌合できる凸型の空間を有する構成にしたりすることもできる。
【0008】
なお、壁又は柱等が石膏ボードの場合は、石膏ボードに石膏ボード用アンカーをねじ込み、これに基板固定用のビスをねじ込むことで基板を石膏ボードに固定することができる。壁又は柱等がコンクリート、タイル又はブロック等の固い素材の場合は、壁又は柱等に穴を穿孔してプラグを打ち込み、このプラグにビスをねじ込むことで、基板を固定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明のフックによれば、基板をビス類で壁又は柱等に固定し、この基板にフック基部が取付けられているため、フックの吊り下げ強度を高くすることができる。その結果、複数の引掛部を設け、複数の衣類を掛けることができる。
【0010】
また、基板がフック基部の溝に嵌合することで、着脱自在なので、フックが破損したり、他の形状のフックに交換する場合でも、基板は壁又は柱等に固定したままで、フックだけを簡単に交換することができ、壁又は柱等に余計なビス穴を穿ける必要がない。
【0011】
また、壁又は柱等が石膏ボードのように柔らかい場合や、逆にコンクリートのようにビスをねじ込むには硬すぎる場合には、石膏ボード用アンカーねじやプラグを用いれば良いので、あらゆる壁等に使用できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のフックの図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図2】本発明のフックの図で、(a)は背面図、(b)は下面図である。
【図3】図2(a)のA−A線切断拡大端面図である。
【図4】基板の図で、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は(b)のB−B線断面図である。
【図5】壁に基板を固定した状態を示す図である。
【図6】基板に本発明のフック基部を取り付けた状態を示す要部図である。
【図7】石膏ボードの壁に基板を固定する状態を示す図である。
【図8】コンクリートの壁に基板を固定する状態を示す図である。
【図9】アリ溝とアリキー以外の例を示す図で、(a)は基板の断面図、(b)はフック基部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は、本発明のフックの図で、(a)は側面図、(b)は正面図である。また、図2は、(a)は背面図、(b)は下面図である。
【0015】
本発明のフック10は、フック基部11と突起部12及び引掛部13とを備えている。これらフック基部11、突起部12及び引掛部13は、合成樹脂の射出成形などにより、一体成形することができる。
【0016】
突起部12には、3つの貫通孔12a、12b、12cと、これら貫通孔の間に形成された凹部12d、12e、12fからなる6箇所の引掛部がある。本発明のフック10は、さらに下部にも引掛部13があり、合わせて7つの引掛部があることになる。
【0017】
フック基部11は、矩形の板状であり、表面に衣類などの吊り下げ用の突起部12、と引掛部13を有し、裏面側には溝11aが穿設されている。そして、溝11aには、基板14が嵌合されている。
【0018】
図3は、フック基部11の拡大図で、図2(a)のA−A線切断拡大端面図である。フック基部11には、その下端から上端に向かって溝11aが穿設されている。この溝11aは、アリ溝で、溝11aの開口部が幅狭部11a1で、溝11aの底部が幅広部11a2となっており、開口部の幅狭部11a1と底部の幅広部11a2は傾斜面でつながっている。
【0019】
また、溝11aは、フック基部11の下端で開口しており、ここが後述する基板14が進入する入口となる。溝11aの長さは、フック基部11の中心を越える程度の長さが望ましいが、溝11aをフック基部11の上下方向に形成する場合は、フック基部11の上端にストッパとして溝11aの無い部分を設ける必要がある。溝11aがフック基部11の下端から上端まで貫通している場合、基板14と嵌合させたときフック10を支持できなくなるからである。
【0020】
図4は、基板14の図で、(a)は上面図、(b)は背面図、(c)は(b)のB−B線断面図である。基板14は、溝11aの空間と同じ形状で、断面が台形のアリキーとなっている。台形の平行な2面のうち狭い方が幅狭部14aで、広い方が幅広部14bで基板14の幅の最大部である。基板14には、2つのビス孔14cと14dとが穿設されている。ビス孔14cと14dは、共に幅広側にビスの皿状の頭部が収容されるようにすり鉢状に拡大されている。貫通孔の径は、ビス孔14cよりビス孔14dの方が大きくなっているが、これは、基板14を2本のビスで壁又は柱等に固定する場合、2本のビス16,16のピッチが基板14のビス孔14c、14dのピッチと若干ずれてもよいようにするためである。基板14は、2本のビスで、壁又は柱等に幅狭部14aを密着させた状態で固定される。
【0021】
図5は、基板14を2本のビス16、16で壁又は柱等20に固定された状態を示す図である。壁又は柱等20が木質材であれば、図示のようなビス16(木ねじ又はタッピンネジ)で基板14を固定することができる。基板14を固定したとき、ビス16の頭部は基板14の表面と面一になるか凹むようにし、基板14の表面から突出しないようにすることが望ましい。
【0022】
図6は、図5で固定された基板14に、フック10を嵌合した状態を示す。基板14の台形形状が、溝11aのアリ溝と同じ形状になっているので、フック10を図6の上方から基板14に近づけ、溝11aの下端の入口と基板14の上端とを重ね、図6の矢印方向にフック10を降下することで、基板14を溝11a内に進行させ、フック10を基板14に嵌合させることができる。基板14の上端が溝11aの最上部に当接して嵌合が完了する。嵌合した後のフック10は、アリ溝構造のため、基板14から外れることができず、壁又は柱等20に強力に固定されることになる。
【0023】
このとき、基板14の断面形状と、溝11aの断面形状とが同じで、基板14の方が僅かに小さい程度にすることが望ましい。基板14と溝11aの嵌合が容易になり、しかも、基板14が溝11a内に収容されたとき、両者の間にガタツキが生じないようにすることができるからである。
【0024】
ビス16は、1本でもよいが、ビス16を2本以上使用して基板14を固定すると、フック10を把持する力はより大きくなり、フック10に複数の衣類を引掛けた場合の重量にも十分耐えることができる。また、引掛部は、突起部12の引掛部のように、フック基部11の上方にあってもよく、引掛部13のようにフック基部の下方にあってもよい。
【0025】
本発明の実施例におけるフック10は、溝11aと基板14との嵌合を基本としている。溝11aの断面形状と基板14の断面形状とを適切に形成すれば、ビス16のねじ込みは、頭部が基板14から突出しないようにするだけでよく、ねじ込み量と関係なく、安定した嵌合状態を確保することができる。
【0026】
本発明のフック10は、基板14に着脱自在である。したがって、フックが破損したり、別の形状のフックに交換したい場合には、フック基部11を基板14から抜き取り、新しいフックのフック基部と交換することができる。勿論、新しいフック基部にも前のフック基部11に形成された溝11aと同じ形状の溝が形成されていることが条件となる。
【0027】
図7は、背後の壁又は柱等20が石膏ボードの場合に、本発明のフック10を取付けた状況を示す断面図である。基板14は、図5の上から見た状態で描いている。背後の壁又は柱等20が石膏ボードの場合には、図1と同様にしてビス16をねじ込んだとしてもビス16が抜けやすく、吊り下げ強度は不足する。そこで、石膏ボード用のアンカーねじ30を石膏ボードにねじ込んでおき、アンカーねじ30にビス16をねじ込むことで、強度不足を解消することができる。このとき、アンカーねじ30の頭部は、石膏ボードの表面と面一になるようにすることが望ましい。
【0028】
また、図8は、背後の壁等20がコンクリートのように硬い場合に、本発明のフック10を取付けた状況を示す図である。背後の壁又は柱等20がコンクリート、タイル又はブロックのように硬い場合は、ビス16を直接ねじ込むことは難しいので、ドリル等で穿孔した穴に図8のように、プラグ40を打ち込む。そして、このプラグ40にビス16をねじ込むことで、基板14を固定することができる。
【0029】
以上の実施例では、基板14は断面が台形のアリキーで、溝11aはアリ溝であったが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0030】
図9は、アリ溝とアリキー以外の例を示す図で、(a)は基板24の断面図、(b)はフック基部11の断面図である。これらの図に示すように、基板24は凸形状であり、溝11bは基板24が進入可能な凸形状の空間を有する。基板24の図の上面が幅狭部24aで、下面が幅広部24bである。一方、溝11bの入口が幅狭部11b1で、溝11bの底面が幅広部11b2で、溝の幅の最大部である。
【0031】
また、上記実施例ではフック基部11と基板14、24とは、上下方向に嵌合しているが、水平方向に嵌合してもよく、斜めの方向でもよい。水平方向に嵌合させる場合は、溝11aは、フック基部11の一方から他方まで貫通していてもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 フック
11 フック基部
11a、11b 溝
11a1、11b1 幅狭部
11a2、11b2 幅広部
14、24 基板
14b、24b 溝幅の最大部
16 ビス
20 壁又は柱等
30 石膏ボード用のアンカーねじ
40 コンクリート用プラグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁又は柱等にビス類により固定され、壁又は柱等側に密着する側に幅狭部を有し、前記幅狭部より壁又は柱等側から離れた位置に幅広部を備えた基板と、該基板が嵌合する溝を備えたフック基部と、該フック基部の表面に設けられた引掛部と、を有し、前記溝が、前記フック基部の裏面側に設けられ、フック基部の一端面から他端側に向かって延び、溝の幅の最大部が溝の開口部より溝の底側にあることを特徴とするフック。
【請求項2】
前記基板が、断面形状が台形のアリキー形状で、前記フック基部の溝がアリ溝であることを特徴とする請求項1に記載のフック。
【請求項3】
前記基板が、断面形状が凸形状で、前記フック基部の溝が、前記基板が嵌合できる凸型の空間を有することを特徴とする請求項1に記載のフック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−65692(P2012−65692A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210507(P2010−210507)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(591178964)ダンドリビス株式会社 (12)
【Fターム(参考)】