説明

フッ素およびアンモニアの回収装置ならびに回収方法

【課題】フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素とアンモニアを共に回収する回収装置を提供する。
【解決手段】フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素およびアンモニアを回収する回収装置であって、原水からアンモニアを蒸発濃縮し、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別するアンモニア回収手段と、アンモニア含有水を濃縮するアンモニア濃縮手段と、フッ素含有水からフッ素を回収するフッ素回収手段と、を備えるフッ素およびアンモニアの回収装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素およびアンモニアを回収する回収装置ならびに回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、液晶表示装置などの電子製品やその部品などの製造工程、その他の産業などから、フッ素およびアンモニアを含む排水が排出されることがある。このような排水については、一般に、フッ素およびアンモニアを含む排水に水酸化ナトリウムなどのアルカリ剤を添加後、蒸発濃縮し、アンモニア水とフッ化ナトリウム水とに分別した後、アンモニア水は蒸留塔で濃縮して回収する。一方、フッ化ナトリウム水は凝集沈殿処理などで処理している。
【0003】
この排水処理に際して発生するフッ化ナトリウムを含有する汚泥は、脱水機などにより脱水後、脱水ケーキとなり、廃棄物として処理しているのが現状である。その量は多く、環境負荷を増大させている。また、アンモニア蒸留塔から排出される排水はそのまま微生物を用いた排水処理装置などで処理している。
【0004】
また、フッ素含有水の処理については、各種提案がされている(例えば、特許文献1〜3)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−174416号公報
【特許文献2】特開2007−117874号公報
【特許文献3】特許第3284260号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素とアンモニアを共に回収する回収装置ならびに回収方法は知られていなかった。
【0007】
本発明は、フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素とアンモニアを共に回収する回収装置ならびに回収方法である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素およびアンモニアを回収する回収装置であって、前記原水からアンモニアを蒸発濃縮し、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別するアンモニア回収手段と、前記アンモニア含有水を濃縮するアンモニア濃縮手段と、前記フッ素含有水からフッ素を回収するフッ素回収手段と、を備えるフッ素およびアンモニアの回収装置である。
【0009】
また、前記フッ素およびアンモニアの回収装置において、前記アンモニア濃縮手段において生成した排水を、前記フッ素含有水の希釈水として添加する希釈水添加手段を備えることが好ましい。
【0010】
また、前記フッ素およびアンモニアの回収装置において、前記フッ素回収手段として、前記フッ素含有水にカルシウム剤を添加してフッ化カルシウムの結晶を生成させるための晶析反応槽と、前記カルシウム剤を前記フッ素含有水に添加するカルシウム剤添加手段と、を備えることが好ましい。
【0011】
また、前記フッ素およびアンモニアの回収装置において、前記フッ素回収手段として、カルシウム剤を充填した反応塔と、前記フッ素含有水を前記反応塔へ通水する通水手段と、を備えることが好ましい。
【0012】
また、本発明は、フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素およびアンモニアを回収する回収方法であって、前記原水からアンモニアを蒸発濃縮し、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別するアンモニア回収工程と、前記アンモニア含有水を濃縮するアンモニア濃縮工程と、前記フッ素含有水からフッ素を回収するフッ素回収工程と、を含むフッ素およびアンモニアの回収方法である。
【0013】
また、前記フッ素およびアンモニアの回収方法において、前記アンモニア濃縮工程において生成した排水を、前記フッ素含有水の希釈水として利用することが好ましい。
【0014】
また、前記フッ素およびアンモニアの回収方法において、前記フッ素回収工程において、前記フッ素含有水にカルシウム剤を添加してフッ化カルシウムの結晶を生成させる晶析反応法によりフッ素を回収することが好ましい。
【0015】
また、前記フッ素およびアンモニアの回収方法において、前記フッ素回収工程において、カルシウム剤を充填した反応塔に前記フッ素含有水を通水してフッ化カルシウムの結晶を生成させるカルサイト法によりフッ素を回収することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、フッ素およびアンモニアを含む原水からアンモニアを蒸発濃縮し、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別し、フッ素含有水からフッ素を回収することにより、フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素とアンモニアを共に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0018】
本実施形態に係る回収方法では、フッ素およびアンモニアを含む原水からアンモニアを蒸発濃縮して、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別し(アンモニア回収工程)、アンモニア含有水を濃縮して回収アンモニア含有水を得る(アンモニア濃縮工程)。一方、フッ素含有水については、フッ素含有水にカルシウム剤を添加してフッ化カルシウムの結晶を生成させる晶析反応法、あるいは、粒状のカルシウム剤を充填した反応塔にフッ素含有水を通水してフッ化カルシウムの結晶を生成させるカルサイト法によりフッ素を回収する(フッ素回収工程)。
【0019】
本発明の実施形態に係る回収装置の一例の概略構成を図1,2に示す。図1は、晶析反応法によりフッ素の回収を行う回収装置であり、図2は、カルサイト法によりフッ素の回収を行う回収装置である。まず、晶析反応法によりフッ素の回収を行う、図1の回収装置について説明する。
【0020】
図1の回収装置1は、原水槽10と、pH調整槽12と、アンモニア回収手段である蒸発濃縮装置14と、アンモニア濃縮手段であるアンモニア蒸留装置16と、フッ素含有水槽18と、希釈槽20と、フッ素回収手段である晶析反応槽22と、処理水槽24と、スラリ貯槽26と、脱水装置28とを備える。
【0021】
図1の回収装置1において、pH調整槽12には、原水槽10からの原水配管がポンプ30を介して接続されている。蒸発濃縮装置14には、pH調整槽12からのpH調整液配管がポンプ32を介して接続されている。アンモニア蒸留装置16には、蒸発濃縮装置14からのアンモニア水配管がポンプ34を介して接続され、アンモニア蒸留装置16の出口には、アンモニア水配管がポンプ38を介して接続されている。フッ素含有水槽18には、蒸発濃縮装置14からのフッ素含有水配管がポンプ36を介して接続されている。希釈槽20には、フッ素含有水槽18からのフッ素含有水配管がポンプ42を介して、アンモニア蒸留装置16からの排水配管が希釈水添加手段であるポンプ40を介して、接続されている。晶析反応槽22には、希釈槽20からのフッ素含有水配管がポンプ44を介して接続されている。処理水槽24には、晶析反応槽22からの処理水配管が接続され、処理水槽24の出口には、処理水配管がポンプ46を介して接続されている。スラリ貯槽26には、晶析反応槽22の下部からのスラリ配管がポンプ48を介して接続されている。脱水装置28には、スラリ貯槽26からのスラリ配管がポンプ50を介して接続され、脱水装置28の出口には、ペレット配管がポンプ52を介して接続されている。pH調整槽12には、モータおよびpH調整槽12内の流体を撹拌する撹拌翼を備える撹拌手段である撹拌装置58、pH測定手段であるpHメータ54が設置されている。希釈槽20には、モータおよび希釈槽20内の流体を撹拌する撹拌翼を備える撹拌手段である撹拌装置60、pH測定手段であるpHメータ56が設置されている。晶析反応槽22には、モータおよび晶析反応槽22内の流体を撹拌する撹拌翼64を備える撹拌手段である撹拌装置62が設置されており、ドラフトチューブ66を備える。原水槽10、フッ素含有水槽18には撹拌装置が設けられていてもよい。
【0022】
本実施形態に係るフッ素およびアンモニアの回収方法、回収装置1の動作について説明する。
【0023】
フッ素およびアンモニアを含有するフッ素・アンモニア含有原水(以下、単に「原水」と呼ぶ場合がある。)が原水槽10からポンプ30により原水配管を通してpH調整槽12に送液される。pH調整槽12において、撹拌装置58によって撹拌されながら、pH調整剤がポンプなどのpH調整剤添加手段により添加され、所定の範囲のpHに調整される(pH調整工程)。pHメータ54により計測されるpH調整槽12内の液のpHに基づいてポンプなどを制御して、pH調整剤の添加量を調整してもよい。
【0024】
pH調整槽12においてpH調整されたpH調整液は、pH調整液配管を通してポンプ32により蒸発濃縮装置14へ送液される。蒸発濃縮装置14において、pH調整液からアンモニアが蒸発濃縮され、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別される(アンモニア回収工程)。
【0025】
蒸発濃縮装置14において分別されたアンモニア含有水は、アンモニア水配管を通して、ポンプ34によりアンモニア蒸留装置16へ送液される。アンモニア蒸留装置16の前段において、水酸化ナトリウムなどのアルカリ性のpH調整剤により、アンモニアのイオン化を促進するために、アンモニア含有水のpHをより高めてもよい。アンモニア蒸留装置16において、アンモニア含有水からアンモニアが濃縮され、所定の濃度(例えば、20〜25重量%)の回収アンモニア含有水が得られ(アンモニア濃縮工程)、アンモニア水配管を通してポンプ38により系外へ排出され、再利用される。
【0026】
一方、蒸発濃縮装置14において分別されたフッ素含有水は、フッ素含有水配管を通して、ポンプ36によりフッ素含有水槽18へ送液され、さらにフッ素含有水配管を通して、ポンプ42により希釈槽20へ送液される。希釈槽20において、撹拌装置60によって撹拌されながら、pH調整剤がポンプなどのpH調整剤添加手段により添加され、所定の範囲のpHに調整される(pH調整工程)。pHメータ56により計測される希釈槽20内の液のpHに基づいてポンプなどを制御して、pH調整剤の添加量を調整してもよい。
【0027】
また、希釈槽20において、撹拌装置60によって撹拌されながら、希釈水がポンプなどにより添加され、所定の範囲のフッ素濃度に調整される(フッ素濃度調整工程)。フッ素濃度計などのフッ素濃度計測手段によりフッ素濃度を計測して、計測される希釈槽20内の液のフッ素濃度に基づいてポンプなどを制御して、希釈水の添加量を調整してもよい。
【0028】
希釈槽20においてpHおよびフッ素濃度が調整されたフッ素含有水は、フッ素含有水配管を通して、ポンプ44により晶析反応槽22へ送液される。次に、カルシウム剤がポンプなどのカルシウム剤添加手段によりカルシウム剤配管を通して、晶析反応槽22に添加される(カルシウム剤添加工程)。晶析反応槽22において、フッ素含有水に含まれるフッ素と、カルシウム剤とが反応してフッ化カルシウムの結晶が生成される(晶析反応工程)。晶析反応液は撹拌装置62によって撹拌される。
【0029】
晶析反応槽22において晶析反応により生じる、フッ素が低減された処理水は、処理水配管を通して処理水槽24へ送液され、ポンプ46により処理水配管を通して、フッ素含有排水として系外へ排出される。フッ素含有排水については、必要に応じて、凝集沈殿処理などの処理が行われてもよい。
【0030】
晶析反応槽22内の晶析反応により生じるフッ化カルシウムの結晶がある程度大きく成長すると、晶析反応槽22内からスラリ配管を通してフッ化カルシウムを含むスラリの少なくとも一部がポンプ48により引抜かれる(引抜工程)。引抜かれた結晶はスラリ状であり、スラリ槽26へ送液されて貯留された後、ポンプ50によりスラリ配管を通して、脱水装置28へ送液され、脱水処理が行われる(脱水工程)。脱水処理が行われたフッ化カルシウムのペレットはポンプ52により、系外に排出され、フッ酸の原料などとして再利用される。スラリ槽26において、引抜スラリは撹拌装置によって撹拌されてもよい。
【0031】
脱水したフッ化カルシウムは洗浄水などで洗浄してもよい。洗浄および脱水は必要に応じて繰り返してもよい。また、脱水工程の前段において、引抜スラリを中和してもよい。
【0032】
本実施形態におけるフッ素・アンモニア含有原水は、フッ素およびアンモニアを含むものであれば、如何なる由来の原水であってもよく、例えば、半導体、液晶表示装置などの電子製品やその部品などの製造工程、その他の産業などから排出される原水が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
pH調整槽12において、アンモニアのイオン化を促進するため、pHをアルカリ性の範囲に調整することが好ましい。pHが7未満であると、後段のアンモニア回収工程において回収率が低下する場合がある。
【0034】
pH調整剤としては、塩酸、硫酸などの酸または水酸化ナトリウムなどのアルカリなどを用いることができる。
【0035】
蒸発濃縮装置14としては、pH調整液からアンモニアを蒸発濃縮し、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別するものであればよく特に制限はないが、例えば、蒸気を装置内へ導入し、減圧下でアンモニアを蒸発濃縮する蒸発濃縮装置などが挙げられる。
【0036】
蒸発濃縮装置14における温度および圧力は、アンモニアが蒸発する条件であればよく特に制限はない。
【0037】
アンモニア蒸留装置16としては、アンモニア含有水からアンモニアを濃縮するものであればよく特に制限はない。
【0038】
アンモニア蒸留装置16における温度は、例えば、90℃〜100℃の範囲である。
【0039】
アンモニア蒸留装置16の前段において、アンモニアのイオン化を促進するために、アンモニア含有水のpHを11〜13の範囲内に調整してもよい。
【0040】
アンモニア蒸留装置16において、アンモニア含有量が低減された排水が生成する。この排水のpHは通常11〜13の範囲であり、水温は通常、常温〜70℃の範囲であり、アンモニア含有量は通常100mg/L以下である。この排水は、例えば、微生物を用いた排水処理法により処理してもよい。
【0041】
本実施形態において、アンモニア蒸留装置16において生成した排水が、希釈水として排水配管を通してポンプ40により、希釈槽20に添加されて所定の範囲のフッ素濃度に調整されることが好ましい。アンモニア蒸留装置16において生成した排水を希釈槽20における希釈水として利用すれば、新たな希釈水を用意する必要がなく、排水を増やさずに、環境負荷を低減することができる。また、アンモニア蒸留装置16から排出される排水を、微生物を用いた排水処理などで処理する必要もなくなる。したがって、効率的にフッ素を回収できる。
【0042】
また、アンモニア蒸留装置16において生成した排水の温度は上記の通り通常、常温〜70℃程度であるので、希釈槽20における希釈水として利用すれば、フッ素含有水の温度を高めることができる。これにより、後段の晶析反応法によるフッ素回収工程において、純度が高く、粒度の大きいフッ化ナトリウム結晶を得ることができる。また、排水が100mg/L程度のアンモニアを含有していても、後段の晶析反応にはほとんど影響しないと考えられる。
【0043】
フッ素濃度調整工程において、フッ素含有水のフッ素濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、1,000mg/L〜100,000mg/Lの範囲に調整することが好ましく、5,000mg/L〜20,000mg/Lの範囲に調整することがより好ましい。フッ素含有水のフッ素濃度が5,000mg/L未満であると、後段の晶析反応法によるフッ素回収工程において回収率が低下する場合がある。また、20,000mg/Lを超えると、後段の晶析反応法によるフッ素回収工程において、微細なフッ化カルシウムの結晶が生成し、フッ素回収率が低下して、処理水の水質が悪化する場合がある。
【0044】
希釈槽20のpH調整工程において、液のpHを、2〜3の範囲に調整することが好ましい。液のpHが、2未満であると、後段の晶析反応法によるフッ素回収工程において、フッ素含有水中のフッ素のうち、フッ化カルシウムとならない割合が多くなり、処理水中に溶解性フッ素が多く残存することになってフッ素の回収率が低下する場合があり、3を超えると、カルシウム剤が溶解しにくくなり、未溶分のカルシウム剤とフッ素との急激な反応により微細なフッ化カルシウムが生成する場合がある。
【0045】
フッ素回収工程において、晶析対象物質となるフッ素は、晶析反応により晶析するのであれば、任意の状態でフッ素含有水中に存在することが可能である。フッ素含有水中に溶解しているという観点から、晶析対象物質はイオン化した状態であるのが好ましい。晶析対象物質がイオン化した状態としては、例えば、Fなどがイオン化したもの、フッ素を含む化合物がイオン化したものなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0046】
本実施形態においては、晶析剤として塩化カルシウム、消石灰などのカルシウム剤が用いられるが、カルシウム剤を添加する形態としては、粉末状態でもよいし、スラリ状態であってもよい。カルシウム剤の添加の好ましい態様は、カルシウム剤スラリとして添加する態様である。
【0047】
本実施形態においては、晶析用薬液として消石灰と酸とを混合したカルシウム溶液などが使用されてもよい。本明細書における「カルシウム溶液」とは、消石灰(水酸化カルシウム)に酸を添加して得られた液体であって、一定範囲のpHを有する液体である。「カルシウム溶液」は、消石灰が完全に溶解された溶液状態であってもよく、消石灰の固体粒子が含有されていてもよい。消石灰への酸の添加は、消石灰に酸が添加されるのであれば任意の、公知の方法による添加が可能であり、例えば、消石灰スラリに酸を添加する態様、消石灰の乾燥固体に酸を添加する態様またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されるものではない。消石灰への酸の添加の好ましい態様は、消石灰スラリに酸を添加する態様である。
【0048】
本明細書において、「消石灰スラリ」とは、消石灰の乾燥固体に水または水溶液を添加して形成されるスラリをいい、使用される水としては、蒸留水、精製水、水道水など任意のソースの水が可能であり、また、水溶液としては、前記水に、酸、アルカリ、これらの塩など任意の化合物が添加された水溶液が可能である。また、本明細書における「消石灰の乾燥固体」とは、前記消石灰スラリに対する概念を示すものであり、スラリを形成していない、粉体、顆粒、塊状物などの固体であればよく、化合物としての無水物を意味するものではない。
【0049】
カルシウム溶液の調製に使用される消石灰としては、任意のグレードの消石灰を使用することができ、特に限定されるものではない。カルシウム溶液の調製に使用される酸としては、特に限定されるものではなく、任意の酸を使用可能である。好ましくは、カルシウムと難溶性の塩を形成させる成分を含まない任意の酸であり、例えば、塩酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。より好ましくは、酸は塩酸である。使用される酸は1種類であってもよいし、複数種類の酸が使用されてもよい。使用される酸の濃度、添加量などは、カルシウム溶液が所望のpHとなるように適宜設定される。例えば、工場内の処々の設備で中和用などに使用される目的で、水と混合して工場内を循環している消石灰スラリを用いると利便性がよい。
【0050】
本実施形態における、カルシウム溶液のpH範囲は好ましくはpH9以下であり、より好ましくは、pH8以下であり、さらに好ましくは、pH8〜4の範囲であり、特に好ましくは、pH7〜5の範囲である。カルシウム溶液のpHを、上記範囲に調節することにより、消石灰をある程度溶解させることが可能となる。ここで、消石灰スラリが完全な溶解が達成されるような条件、すなわちpHが低い方が晶析処理において良好であると考えられる。しかし、本発明者らは、晶析処理によって得られる処理水中の晶析対象成分の濃度をより低減させるためには、カルシウム溶液のpHを所定の範囲に設定するのが有効であることを見出した。すなわち、カルシウム溶液のpHをpH4未満に低下させるよりも、上述のようにpH8〜4の範囲、さらには、pH7〜5の範囲にすることにより、処理水中のフッ素の濃度を顕著に低減できる。上記至適pHの存在は、pHを一定範囲にすることにより消石灰の微粒子を完全に溶解させるのではなく、一定量の消石灰微粒子をカルシウム溶液中に残存させることにより、晶析反応槽内において、該微粒子によって晶析反応の反応面積を増大させて晶析反応効率を向上させ、処理水中のフッ素の濃度を低減させるためであると考えられる。
【0051】
カルシウム溶液などのカルシウム剤溶液中のカルシウム剤の濃度は、フッ素含有水のフッ素濃度、晶析反応槽22の処理能力などに応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。フッ化カルシウムを生成させる場合、カルシウム注入量としては、化学当量としてフッ素の1倍〜2倍までがよいが、1倍〜1.2倍がよりよい。カルシウムの化学当量がフッ素含有水のフッ素の化学当量の2倍より多いとフッ化カルシウムが微粒子として生成しやすく、処理水にフッ化カルシウムが混入する場合があり、1倍より少ないとフッ素含有水中のフッ素の全量がフッ化カルシウムとならず、処理水にフッ素が混入する場合がある。
【0052】
本実施形態においては、フッ素含有水とカルシウム剤とを晶析反応槽22に添加する前に、あらかじめ、晶析反応槽22に種晶が存在していてもよいし、あらかじめ晶析反応槽22内に種晶が存在していなくてもよい。安定した処理を行うためには、晶析反応槽22にあらかじめ種晶が存在していることが好ましい。晶析反応槽22に充填される種晶の充填量は、フッ素を晶析反応により除去できるのであれば特に限定されるものではなく、フッ素含有中のフッ素濃度、カルシウムの濃度、また、晶析反応槽22の運転条件などに応じて適宜設定される。
【0053】
種晶は、その表面に生成した難溶性塩(フッ化カルシウム)の結晶を析出させることができるものであればよく、任意の材質が選択可能であり、例えば、ろ過砂、活性炭、およびジルコンサンド、ガーネットサンド、サクランダム(商品名、日本カートリット株式会社製)などをはじめとする金属元素の酸化物を含んで構成される粒子、ならびに、晶析反応による析出物であるフッ化カルシウムを含んで構成される粒子などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。より純粋な難溶性塩をペレットなどとして入手できるという観点から、晶析反応による析出物である難溶性塩を含んで構成される粒子(フッ化カルシウムの場合は例えば蛍石)が好ましい。種晶の形状、粒径は、晶析反応槽22内の流速、フッ素およびカルシウム剤の濃度などに応じて適宜設定され、特に限定されるものではない。
【0054】
晶析反応槽22にあらかじめ種晶が充填されている場合は、例えば、フッ素含有水へカルシウム剤を晶析反応槽22において添加し、晶析反応槽22内で、種晶上にフッ化カルシウムを析出させてペレットを形成させ、フッ素が低減された処理水を生じさせる。これに対して、晶析反応槽22にあらかじめ種晶が存在していない場合には、フッ素含有水へカルシウム剤を添加することにより晶析反応槽22内で析出するフッ化カルシウムがペレットを形成し、成長することとなる。いずれの場合も、晶析反応槽22内の結晶がある程度大きく成長すると、晶析反応槽22内から一部の結晶を引抜く引抜操作と、引抜いた結晶よりも小粒径の種晶を新たに補充する補充操作を繰り返し行うことで、連続的に結晶を得るような方法が採用される。
【0055】
晶析反応槽22は、フッ素含有水中のフッ素とカルシウム剤とが反応して難溶性塩のフッ化カルシウムの結晶を析出させて、フッ素が低減された処理水を生じさせうる反応槽であればよく、長さ、内径、形状などについては任意の態様が可能であり、特に限定されるものではない。
【0056】
晶析反応槽としては、図1のように晶析反応槽22に、撹拌翼64などを備える撹拌装置62を設置し、該撹拌装置62により晶析反応槽22内を撹拌してペレットを流動させる撹拌式の晶析反応槽が挙げられる。撹拌翼64は晶析反応槽22内で内容物を撹拌できるものであればよく、撹拌翼の設置態様、撹拌翼の大きさなどは特に限定されるものではない。
【0057】
また、撹拌式の晶析反応槽22としては、晶析反応槽22の周壁に対向させて内周壁を配置して、この内外周壁間を処理水排出路とし、フッ化カルシウム粒子と処理水との分離能を向上させ、処理水中にフッ化カルシウム粒子が流出するのを防止する分離ゾーンを有するものであってもよい。この態様においては、処理水排出路の上部に処理水配管が接続されるような態様が好ましい。また、この処理水排出路には、ペレットの分離能を向上させるために、処理水排出路の入口部分に複数枚のじゃま板で構成したバッファ板や、複数枚の整流板で構成したバッファ板を位置させていてもよい。この態様の詳細は特開2005−230735号公報および特開2005−296888号公報に記載されており、これらの特許文献に記載される晶析反応槽も本実施形態において使用可能である。
【0058】
また、晶析反応槽としては、晶析反応槽内で上向流を形成し、該上向流によってペレットが流動する流動床式の晶析反応槽も挙げられる。
【0059】
本実施形態において、カルシウム剤の晶析反応槽22への添加は、撹拌翼64の近傍に行われることが好ましい。一方、フッ素含有水の晶析反応槽22への添加は、フッ素含有水を晶析反応槽22に添加できるものであれば任意の態様が可能であり、フッ素含有水配管は晶析反応槽22の任意の部分に接続することができる。図1のような撹拌式の晶析反応槽の場合は、フッ素含有水配管は、析出物と処理水との分離という観点から、晶析反応槽22の上部に接続されるのが好ましい。また、図1においては、フッ素含有水配管およびカルシウム剤添加配管はそれぞれ1つであるが、これに限定されるものではなく、これらが複数設けられていてもよい。流動床式の晶析反応槽の場合は、晶析反応槽内に上向流を形成すると効率的に晶析反応を行うことができるという観点から、フッ素含有水配管およびカルシウム剤添加配管などは、晶析反応槽の下部、特に底部に接続されるのが好ましい。
【0060】
この方法では、カルシウム剤を撹拌翼64の近傍に添加することにより、処理水のフッ素濃度を低減させることができる。この理由としては、カルシウム剤スラリを撹拌翼64の近傍に添加することでカルシウム剤スラリが瞬時に拡散するため、カルシウム剤とフッ素との急激な反応を抑制し、微細なフッ化カルシウムの生成を低減できる効果があると考えられる。
【0061】
本明細書において、撹拌翼64の「近傍」とは、撹拌翼64の撹拌流によって晶析反応槽22内の晶析反応液が素早く拡散しうる領域を意味する。例えば、カルシウム剤の注入点が、撹拌翼64による撹拌流速が大きい領域に設けられることが好ましい。特に、カルシウム剤の注入点の、撹拌翼64の回転軸方向の高さは、撹拌翼64の回転中心から、撹拌翼64の回転半径の2倍以内の距離であることが好ましい。また、撹拌翼64の回転径方向の位置は、撹拌翼64の回転中心から、撹拌翼64の回転半径の2倍以内の距離であることが好ましい。さらに、中心が撹拌翼64の回転中心であって、半径が撹拌翼64の回転半径の2倍である球状の領域内に設けられることが好ましい。これにより、カルシウム剤は、晶析反応槽22内へ注入されると直ちに拡散せしめられ、その濃度が素早く低下する。このため、カルシウム剤が溶けやすくなり、未溶分のカルシウム剤とフッ素との急激な反応を抑制し、微細なフッ化カルシウムの生成を低減できる。さらに、形成されたフッ化カルシウムが液中に直接析出することが少なくなり、粒状種晶上の難溶性塩(フッ化カルシウム)の結晶として液中のフッ素をじっくりと取り込むことができる。したがって、処理水に混入する微細なフッ化カルシウムの量を極めて少なくすることができ、粒径の大きなフッ化カルシウムを安定的に得て、フッ素の回収率を大きく向上させることができる。
【0062】
本実施形態においては、図1,3に示すように、晶析反応槽22の水面下に、筒内に撹拌装置20の撹拌翼64が位置するようにドラフトチューブ66を設置することが好ましい。このとき、撹拌翼64は下降流を形成するものであることが好ましい。このようにドラフトチューブ66を設置すると、チューブ下部に向けて下降流が生じ、拡散流速が比較的大きいゾーンが形成される。このため、フッ素含有水やカルシウム剤などをより素早く拡散させることができ、フッ素含有水やカルシウム剤の濃度が局所的に濃い領域同士が接触して、フッ化カルシウムの直接生成が生じることを極力抑制することが可能となる。
【0063】
また、上記のようにドラフトチューブ66および撹拌翼64を設置すると、チューブ外周部には流れのゆるやかな上向流ゾーンが形成される。このゾーンでは、粒子が分級されて小粒径の粒子はチューブ外側面に沿って上昇すると共に、チューブ上端からチューブ内部に再侵入して下降し、フッ素含有水やカルシウム剤などの注入点付近やその下部の撹拌ゾーンへと再循環する。これら小粒径の結晶が核となって晶析反応を促進せしめる。このため、粒径の大きなフッ化カルシウムの結晶を安定的に形成させることが可能となり、フッ素の回収率を向上させることができる。
【0064】
さらに、晶析反応が進んで粒径が大きくなった結晶は、チューブ外周部の上向流によっては上昇せず、下に沈んで再びドラフトチューブ66内には入り込まないため、成長した結晶が撹拌翼64との衝突により破壊されてしまうことを防止することができる。このような利点も、粒径の大きなフッ化カルシウムの結晶を安定的に得ることに寄与し、ひいてはフッ素の回収率の向上に寄与することができる。
【0065】
チューブ下部に撹拌流速の比較的大きいゾーンを形成し、チューブ外周部に上向流を安定的に形成するためには、撹拌翼64が、チューブ内でチューブ下半分の何処かに位置することが好ましい。より好ましくは、チューブ下端より少し上方の位置がよい。このような配置とすれば、撹拌流速の大きなゾーンがチューブ下端付近に渦のように形成され、さらにそこから上向流がチューブ外周部に沿って安定的に形成される。したがって、フッ素含有水やカルシウム剤などの拡散や、粒子の分級を効果的に進めることできる。
【0066】
ドラフトチューブ66を設ける場合、フッ素含有水やカルシウム剤の注入点は、これらをドラフトチューブ66内の下降流に乗せて素早く効果的に拡散させるために、ドラフトチューブ66の筒内に配することが好ましい。より好ましい位置は、ドラフトチューブ66の筒内かつ撹拌翼64の上方である。
【0067】
本実施形態においては、カルシウム剤を用いて晶析反応槽22内でpH2〜11の条件下でフッ化カルシウムを析出させることが好ましい。微粒子生成抑制などの点から好ましくはpH2〜3の条件下でフッ化カルシウムを析出させることが好ましい。フッ化カルシウムの生成反応に伴ってpHが変化する場合は、晶析反応槽22にpH調整剤を適宜添加しうるように構成することが好ましい。フッ化カルシウム析出の際のpHは、pHメータなどのpH測定手段を用いて、晶析反応槽22内の反応場のpHを測定し、測定されたpHに応じて、酸またはアルカリなどのpH調整剤を槽内に添加することにより、pHを制御することができる。pHメータは、フッ化カルシウム析出反応の反応場のpHをモニタできるのであれば、晶析反応槽22のいずれの部分に設置されてもよく、フッ素含有水の導入部付近、晶析反応槽22からの処理水の出口付近など、特に限定されるものではない。
【0068】
また、晶析反応槽22内で10℃〜30℃程度の室温で反応させてもよいが、高純度かつ粒度の大きい結晶を得られる点で、40℃〜70℃の範囲の温度で反応させることが好ましい。
【0069】
晶析反応槽22内または処理水中の溶解性のフッ素濃度を測定するために、フッ素濃度計などのフッ素濃度測定手段を晶析反応槽22または処理水配管に設置してもよい。また、晶析反応槽22内または処理水中の溶解性カルシウムなどのカルシウム濃度を測定するために、カルシウム濃度計などのカルシウム濃度測定手段を晶析反応槽22または処理水配管に設置してもよい。晶析反応槽22内でのフッ素濃度計、カルシウム濃度計などの設置位置は特に限定されるものではないが、例えば、処理水中の濃度を測定する場合には、晶析反応槽22の出口付近に設置することができる。
【0070】
得られる処理水において、例えばフッ素濃度は、フッ化カルシウムなどの非溶解性フッ素を含む全フッ素として通常500mg−F/L以下、溶解性のフッ素イオンとして通常50mg−F/L以下程度である。カルシウム濃度は、pH2〜3で、溶解性のカルシウムイオンとして通常50mg−Ca/L程度であるが、これらに限定されるものではない。
【0071】
フッ素含有水を処理して得られた処理水をさらに沈殿槽において処理してもよい。沈殿槽においては、例えば、pHを3〜12、好ましくは4〜11とすることでフッ化カルシウムを生成させて、フッ素を沈殿除去することにより、さらにフッ素濃度が低減された処理水を得ることができる。
【0072】
脱水装置28としては、フィルタプレス型、遠心脱水型などが採用されるが、生成する結晶粒子の粒径は数十μmと大きく脱水性がよいので、遠心力、圧力などのほか重力を利用したろ過式脱水装置(不織布など)なども採用される。
【0073】
このように、晶析反応槽22内で難溶性塩のフッ化カルシウムの結晶を析出させることにより、原水中のフッ素が難溶性塩の結晶として回収され、フッ素が低減された処理水が生じる。本実施形態においては、フッ素の回収率(1−(処理水中のフッ素量/原水中のフッ素量))として、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上を達成できる。また、純度が90%〜98%のフッ化カルシウムを得ることができる。
【0074】
次に、カルサイト法によりフッ素の回収を行う、図2の回収装置について説明する。
【0075】
図2の回収装置3は、原水槽10と、pH調整槽12と、アンモニア回収手段である蒸発濃縮装置14と、アンモニア濃縮手段であるアンモニア蒸留装置16と、フッ素含有水槽18と、希釈槽20と、フッ素回収手段である反応塔68と、処理水槽24とを備える。
【0076】
図2の回収装置3において、反応塔68には、希釈槽20からのフッ素含有水配管がポンプ44を介して接続されている。処理水槽24には、反応塔68からの処理水配管が接続されている。その他の構成は、図1の回収装置1と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
フッ素およびアンモニアを含有するフッ素・アンモニア含有原水について、図1の回収装置と同様に、pH調整工程、アンモニア回収工程、アンモニア濃縮工程による処理が行われ、回収アンモニア含有水が得られる。
【0078】
一方、蒸発濃縮装置14において分別されたフッ素含有水は、図1の回収装置と同様に、フッ素含有水槽18、希釈槽20へ送液される。希釈槽20において、撹拌装置60によって撹拌されながら、pH調整剤がポンプなどのpH調整剤添加手段により添加され、所定の範囲のpHに調整される(pH調整工程)。pHメータ56により計測される希釈槽20内の液のpHに基づいてポンプなどを制御して、pH調整剤の添加量を調整してもよい。
【0079】
また、希釈槽20において、撹拌装置60によって撹拌されながら、希釈水がポンプなどにより添加され、所定の範囲のフッ素濃度に調整される(フッ素濃度調整工程)。フッ素濃度計などのフッ素濃度計測手段によりフッ素濃度を計測して、計測される希釈槽20内の液のフッ素濃度に基づいてポンプなどを制御して、希釈水の添加量を調整してもよい。
【0080】
希釈槽20においてpHおよびフッ素濃度が調整されたフッ素含有水は、フッ素含有水配管を通して、通水手段であるポンプ44により、粒状の炭酸カルシウムなどのカルシウム剤が充填された反応塔68へ送液され、通水される。反応塔68において、フッ素含有水に含まれるフッ素と、充填されたカルシウム剤とが置換反応を起こし、フッ化カルシウムの結晶が生成される(反応工程)。炭酸カルシウムの場合、フッ素は炭酸イオンと置換反応し、フッ素含有水中のフッ素が除去される。この反応は、炭酸カルシウム粒子表面から層状に内部へと進行し、反応前の大きさ、形をほとんど変えずに、粒子がほとんど全てフッ化カルシウムとなると考えられる。
【0081】
反応塔68において反応により生じる、フッ素が低減された処理水は、処理水配管を通して処理水槽24へ送液され、ポンプ46により処理水配管を通して、フッ素含有排水として系外へ排出される。フッ素含有排水については、必要に応じて、凝集沈殿処理などの処理が行われてもよい。
【0082】
生成したフッ化カルシウムは、必要に応じて洗浄水などで洗浄された後に、引抜かれ(引抜工程)、系外に排出され、フッ酸の原料などとして再利用される。
【0083】
本実施形態において、アンモニア蒸留装置16において生成した排水が、希釈水として排水配管を通してポンプ40により、希釈槽20に添加されて所定の範囲のフッ素濃度に調整されることが好ましい。アンモニア蒸留装置16において生成した排水を希釈槽20における希釈水として利用すれば、新たな希釈水を用意する必要がなく、排水を増やさずに、環境負荷を低減することができる。また、アンモニア蒸留装置16から排出される排水を、微生物を用いた排水処理などで処理する必要もなくなる。したがって、効率的にフッ素を回収できる。
【0084】
また、アンモニア蒸留装置16において生成した排水の温度は上記の通り通常、常温〜70℃程度であるので、希釈槽20における希釈水として利用してフッ素含有水の温度が高くなっても(例えば、50℃程度)、後段の反応にはほとんど影響しないと考えられる。また、排水がアンモニアを含有していても100mg/L程度以下であれば、後段の反応にはほとんど影響しないと考えられる。
【0085】
フッ素濃度調整工程において、フッ素含有水のフッ素濃度は、特に限定されるものではないが、例えば、100mg/L〜10,000mg/Lの範囲に調整することが好ましく、100mg/L〜5,000mg/Lの範囲に調整することがより好ましい。
【0086】
希釈槽20のpH調整工程において、液のpHを、6.5〜8.5の範囲に調整することが好ましい。液のpHが、6.5未満であると、後段のカルサイト法によるフッ素回収工程において、固定化された炭酸カルシウムが溶出してしまう場合がある。
【0087】
反応塔68は、フッ素含有水中のフッ素と充填した粒状のカルシウム剤とが反応してフッ化カルシウムを生成させて、フッ素が低減された処理水を生じさせうる反応塔であればよく、長さ、内径、形状などについては任意の態様が可能であり、特に限定されるものではない。
【0088】
反応塔68は、例えば直列に接続した3塔などの複数の塔により構成されてもよい。この場合、フッ素含有水を1塔目から3塔目の反応塔へ順次通水した後、フッ化カルシウムにほぼ完全に置換した1塔目の充填物を抜き出し、新たに炭酸カルシウムなどのカルシウム剤を充填し、次に、この塔を3塔目として、フッ素含有水を1塔目から3塔目の反応塔へ通水することができる。このように、新しい炭酸カルシウムを充填した反応塔が最後段になるようにして通水することにより、得られる処理水の水質が向上し、かつ最前段の反応塔から回収されるフッ化カルシウムの純度が向上する。
【0089】
反応塔68における温度は、例えば、常温〜50℃の範囲である。
【0090】
得られる処理水において、例えばフッ素濃度は、溶解性のフッ素イオンとして通常50mg−F/L以下程度である。
【0091】
このように、反応塔68内でフッ素含有水に含まれるフッ素と、充填された炭酸カルシウムの炭酸イオンとが置換反応し、フッ素含有水中のフッ素が除去されることにより、フッ素が低減された処理水が生じる。本実施形態においては、フッ素の回収率(1−(処理水中のフッ素量/原水中のフッ素量))として、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上を達成できる。また、純度が90%〜98%のフッ化カルシウムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0092】
【図1】本発明の実施形態に係る回収装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る回収装置の他の例を示す概略構成図である。
【図3】本発明の実施形態に係る晶析反応装置における晶析反応槽の一例を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0093】
1,3 回収装置、10 原水槽、12 pH調整槽、14 蒸発濃縮装置、16 アンモニア蒸留装置、18 フッ素含有水槽、20 希釈槽、22 晶析反応槽、24 処理水槽、26 スラリ貯槽、28 脱水装置、30,32,34,36,38,40,42,44,46,48,50,52 ポンプ、54,56 pHメータ、58,60,62 撹拌装置、64 撹拌翼、66 ドラフトチューブ、68 反応塔。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素およびアンモニアを回収する回収装置であって、
前記原水からアンモニアを蒸発濃縮し、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別するアンモニア回収手段と、
前記アンモニア含有水を濃縮するアンモニア濃縮手段と、
前記フッ素含有水からフッ素を回収するフッ素回収手段と、
を備えることを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載のフッ素およびアンモニアの回収装置であって、
前記アンモニア濃縮手段において生成した排水を、前記フッ素含有水の希釈水として添加する希釈水添加手段を備えることを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のフッ素およびアンモニアの回収装置であって、
前記フッ素回収手段として、
前記フッ素含有水にカルシウム剤を添加してフッ化カルシウムの結晶を生成させるための晶析反応槽と、
前記カルシウム剤を前記フッ素含有水に添加するカルシウム剤添加手段と、
を備えることを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のフッ素およびアンモニアの回収装置であって、
前記フッ素回収手段として、
カルシウム剤を充填した反応塔と、
前記フッ素含有水を前記反応塔へ通水する通水手段と、
を備えることを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収装置。
【請求項5】
フッ素およびアンモニアを含む原水からフッ素およびアンモニアを回収する回収方法であって、
前記原水からアンモニアを蒸発濃縮し、アンモニア含有水と、フッ素含有水とに分別するアンモニア回収工程と、
前記アンモニア含有水を濃縮するアンモニア濃縮工程と、
前記フッ素含有水からフッ素を回収するフッ素回収工程と、
を含むことを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収方法。
【請求項6】
請求項5に記載のフッ素およびアンモニアの回収方法であって、
前記アンモニア濃縮工程において生成した排水を、前記フッ素含有水の希釈水として利用することを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のフッ素およびアンモニアの回収方法であって、
前記フッ素回収工程において、前記フッ素含有水にカルシウム剤を添加してフッ化カルシウムの結晶を生成させる晶析反応法によりフッ素を回収することを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収方法。
【請求項8】
請求項5または6に記載のフッ素およびアンモニアの回収方法であって、
前記フッ素回収工程において、カルシウム剤を充填した反応塔に前記フッ素含有水を通水してフッ化カルシウムの結晶を生成させるカルサイト法によりフッ素を回収することを特徴とするフッ素およびアンモニアの回収方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−285531(P2009−285531A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137968(P2008−137968)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】