説明

フッ素化合物の製造方法

【課題】 流通式反応に適した、効率的な1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造法を提供する。
【解決手段】 ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンを触媒で異性化し、引き続き触媒水素還元を行うことによりシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを得るとともに、全工程を流通式の触媒反応で行うことによって、効率よくシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法に関し、特に、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンを経由してシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、フッ素化合物は、高分子材料、冷媒、洗浄剤、医薬、農薬等、工業的に幅広く用いられている。本発明では、不飽和フッ素化合物、特にシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを対象とするが、これらも上記の用途に有望なものである。
【0003】
不飽和フッ素化合物の燃焼性、毒性、安定性等の特性は、その構造により大きく異なる。シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(沸点約32℃)は、幾何異性体であるトランス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン(沸点約9℃)と沸点においても大きく異なり、その特性を利用するうえでは、選択性の高い効率的な製造法が必要である。
【0004】
これまでに、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法としては、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ヨードブタンと塩基との反応などが知られている(非特許文献1など)が、この方法ではほとんどトランス体のみしか得られない。したがって、シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造するには、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブチンを触媒水素還元する方法が取られている。
【0005】
一方、Henneらは、ヘキサフルオロ-2-ブチンを、ラネーニッケル触媒を用い室温100気圧の水素で還元することにより、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを得ているが、その収率は仕込み原料の34%に過ぎず、過剰に還元された副生物である1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタンが生じる(仕込み原料の21%)と報告している(非特許文献2)。
また、R.N.Hazeldineはヘキサフルオロ-2-ブチンをラネーニッケルを用い60℃15気圧の水素で還元することによりシス-ヘキサフルオロ-2-ブテンを91%の収率で得られると報告している(非特許文献1)。
しかしながら、ラネーニッケルは空気中で発火するという性質を持つため、この触媒を使うことは安全に大量に生産するという点では問題がある。
【0006】
これに対し、ヘキサフルオロ-2-ブチンをリンドラー触媒を用いて水素で還元することによりシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを得るという方法が開示されている(特許文献1)。ここで用いられているリンドラー触媒は、炭酸カルシウム担体にパラジウムを担持させた触媒を鉛化合物で被毒したものであり、有毒な鉛を使わなければならないという問題点がある。
【0007】
また、非芳香族アミン触媒修飾剤の存在下でパラジウム触媒を用いて、ヘキサフルオロ-2-ブチンを水素還元してシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造するという方法も開示されている(特許文献2)。この報告では、実施例に、非芳香族アミン触媒修飾剤として、やはり有毒な鉛を使用した例が示されている。また、この報告では、炭素担持パラジウム触媒にキノリンを処理した触媒、あるいは硫酸バリウム担持パラジウム触媒を用いてバッチ式でヘキサフルオロ-2-ブチンを水素還元した場合、過剰に還元された1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタンが主に生じてしまうことが示されている。
【0008】
一方、シス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの原料として用いられる1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブチンを製造する方法の一つとして、ヘキサフルオロブタジエンの異性化反応がある。
V.A.Petrovらは、塩化フッ化アルミニウム(ACF)を触媒に用い、バッチ式でヘキサフルオロブタジエンを25℃2時間反応させ、ヘキサフルオロ-2-ブチンを得ている(非特許文献3)。ここで、塩化フッ化アルミニウムはトリクロロフルオロメタン(CFC-11)と塩化アルミニウムとの反応により得ているが、これは粉末状であり、流通式の反応には適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2009/142642号
【特許文献2】国際公開第2010/014548号
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】R.N.Hazeldine, J.Chem.Soc.1952,pp.2504
【非特許文献2】A.L.Heene et.al, J.Am.Chem.Soc.,71,298(1949)
【非特許文献3】V.A.Petro, C.G.Krespan, B.E.smart, Journal Fluorine Chemistry,77(1996)139-142
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記のような従来技術の問題点を克服するためになされたものであって、流通式反応に適した、効率的な1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンを触媒で異性化し、引き続き触媒水素還元を行うことによりシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造し、かつ、全工程を流通式の触媒反応で行うことによって、効率よくシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンが得られることが判明した。また、各触媒反応における触媒について検討し、流通式に適した触媒を見いだした。
【0013】
本発明は、これらの知見に基づいて完成したものであり、以下の発明を提供するものである。
[1]ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法であって、ヘキサフルオロ-2-ブチンを経由し、且つ、流通式の触媒反応により行うことを特徴とするシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造方法。
[2]触媒反応によりヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの異性化を行いヘキサフルオロ-2-ブチンを得る第1の工程を有することを特徴とする上記[1]の製造方法。
[3]前記第1の工程の触媒が、ハロゲン化アルミナであることを特徴とする上記[2]の製造方法
[4]前記触媒が、クロロフルオロカーボン(CFCs)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)、又はヒドロフルオロカーボン(HFCs)とアルミナとを20〜600℃で反応させることにより得られたものであることを特徴とする上記[3]の製造方法。
[5]前記第1の工程の反応温度が、20〜400℃であることを特徴とする上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法
[6]触媒水素化反応によりヘキサフルオロ-2-ブチンからシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを得る第2の工程を有することを特徴とする上記[1]の製造方法。
[7]前記第2の工程の触媒が、パラジウム、銅、銀、ビスマス、から選ばれる少なくとも一つの金属を担体に担持させたものであることを特徴とする上記[6]の製造方法。
[8]前記担体がフッ化アルミニウム、アルミナ、あるいは活性炭であることを特徴とする上記[7]の製造方法。
[9]前記触媒が、パラジウムとビスマスとの混合物をフッ化アルミニウムに担持したものであることを特徴とする上記[6]の製造方法。
[10]前記触媒が、芳香族アミンで前処理されることを特徴とする上記[6]の製造方法。
[11]芳香族アミンがキノリンであることを特徴とする上記[10]の製造方法。
[12]前記第1の工程と第2の工程が、連続した1工程で行われることを特徴とする上記[1]〜[11]のいずれかの製造方法。
[13]ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンへの異性化を行い、得られる組成物を精製することなく引き続き触媒水素化を行うことを特徴とする上記[12]の製造方法。
[14]ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンを製造する方法において、流通式の触媒反応によりヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの異性化を行うことを特徴とするヘキサフルオロ-2-ブチンの製造方法。
[15]前記触媒がハロゲン化アルミナであることを特徴とする上記[14]の製造方法。
[16]前記触媒が、クロロフルオロカーボン(CFCs)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)、又はヒドロフルオロカーボン(HFCs)とアルミナとを20〜600℃で反応させることにより得られたものであることを特徴とする上記[15]の製造方法。
[17]ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンへの異性化反応の温度が20〜400℃であることを特徴とする上記[16]の製造方法。
[18]ヘキサフルオロ-2-ブチンを触媒水素化反応によりシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法において、反応を流通式反応で行い、かつ、水素化触媒がパラジウム、銅、銀、ビスマス、から選ばれる少なくとも一つの金属を担体に担持させたものであることを特徴とするシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法。
[19]触媒担体が、多孔性フッ化アルミニウム、アルミナ、あるいは活性炭であることを特徴とする上記[18]の製造方法。
[20]触媒がパラジウムとビスマスとの混合物をフッ化アルミニウムに担持したものであることを特徴とする上記[19]の製造方法。
[21]触媒が芳香族アミンで前処理されることを特徴とする上記[18]の製造方法。
[22]芳香族アミンがキノリンであることを特徴とする上記[21]の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、従来技術の問題点を改善し、工業的規模での製造に向いた流通式の反応方法により、効率的にシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンを触媒で異性化してヘキサフルオロ-2-ブチンとし、引き続き触媒水素還元を行うことによって、シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法であって、全工程を流通式の触媒反応により得ることを特徴としている。
【0016】
本発明において、シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造は、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンを異性化してヘキサフルオロ-2-ブチンとする工程(第1の工程)と、ヘキサフルオロ-2-ブチンを触媒水素還元してシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを得る工程(第2の工程)とを2工程で行ってもよく、或いは、ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの異性化から中間生成物のヘキサフルオロ-2-ブチンを精製することなく引き続き触媒水素還元を行う連続的な1工程で行ってもよい。好ましくは、中間生成物のヘキサフルオロ-2-ブチンを精製することなく1工程で行われる。
【0017】
前記のヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(HFBD)を異性化してヘキサフルオロ-2-ブチンを製造する工程は、流通式反応で行われる。
この異性化反応は触媒の存在下で行われ、触媒としてはハロゲン化アルミナが好ましく、例えば、フッ素化アルミナ、塩素化アルミナ、臭素化アルミナ、ヨウ素化アルミナ、塩素化フッ素化アルミナ、臭素化フッ素化アルミナ、塩素化臭素化アルミナなどが挙げられ、好ましくは塩素化フッ素化アルミナが好ましい。
該ハロゲン化アルミナの製法に特に制限はないが、アルミナと、クロロフルオロカーボン(CFCs)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)、あるいはヒドロフルオロカーボン(HFCs)との反応で製造することが好ましい。その製造の温度は通常20〜600℃、好ましくは300〜400℃である。
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンへの反応の温度は通常20〜400℃、好ましくは50〜200℃である。
【0018】
触媒水素化反応によるヘキサフルオロ-2-ブチンからシス-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する工程も、流通式反応で行われる。
触媒水素化反応における触媒は、パラジウム、銅、銀、ビスマス、から選ばれる少なくとも一つの金属を、担体、好ましくは、アルミナ、多孔性フッ化アルミニウム、あるいは活性炭に担持させたものである。より好ましくは、この触媒は、パラジウムとビスマスとの混合物を多孔性フッ化アルミニウムに担持したものである。また、この触媒は、芳香族アミンで前処理されていてもよく、好ましくはキノリンで前処理される。
触媒水素化反応の温度は通常20〜350℃、好ましくは150〜250℃である。
【0019】
上記の触媒異性化反応と触媒水素化反応を組み合わせ、連続的な1工程によりヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(HFBD)からヘキサフルオロ-2-ブチン(HFB)を経由してヘキサフルオロ-2-ブテンを得ることもできる。
【実施例】
【0020】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。
[実施例1]
(触媒Aの製造)
18mlのアルミナを、直径14mm、長さ300mmの反応管に入れた。100ml/minの窒素気流下、反応管を400℃に加熱した。次に400℃、100ml/minで3時間ジクロロジフルオロメタン(CFC-12)を通過させ触媒Aを得た。触媒Aの表面積は72.56m2/gであった。
【0021】
(ヘキサフルオロ-2-ブチンの製造)
触媒Aを上記の反応管に入れた。ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンをマスフローメーターで計量して反応管に通した。反応は20℃から150℃で行われ、生成物は乾燥器とオンラインGCを通し、最終生成物を-100℃下でトラップに集めた。
実験結果を次の表1に示す。
【0022】
【表1】

【0023】
[実施例2]
(触媒Bの製造)
十分な量の塩化パラジウム溶液を多孔性フッ化アルミニウム(PAF)に終夜含浸させた。溶液中の金属塩化物の量は最終的な金属担持量が約3重量%になるように調整した。含浸後、パラジウム担持した担体を200℃で6時間、さらに300℃で6時間加熱し、次に流量20ml/minの水素気流下で、200℃で6時間、300℃で6時間、さらに350℃で5時間還元し、触媒Bを得た。
【0024】
(シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造)
触媒Bを上記の反応管に入れた。ヘキサフルオロ-2-ブチンをマスフローメーターで計量して反応管に通した。反応は20℃から250℃で行われ、生成物は乾燥器とオンラインGCを通し、最終生成物を-100℃下でトラップに集めた。
実験結果を次の表2に示す。
なお、以下の表2〜6において、GC面積%の下の欄の「1〜4」は、それぞれ、以下の式で表される化合物1〜4を表す。
【0025】
【化1】

【0026】
【表2】

注:反応時間 10.5S; ヘキサフルオロ-2-ブチン 流速:10ml/min
水素 流速 10ml/min; 窒素 流速 10ml/min.
【0027】
[実施例3]
(触媒Cの製造)
十分な量の塩化パラジウムと塩化ビスマスの溶液を多孔性フッ化アルミニウム(PAF)に終夜含浸させた。溶液中の金属塩化物の量はパラジウム担持量が約2重量%に、ビスマスの担持量が約0.1%になるように調整した。パラジウム担持した担体を200℃で6時間、さらに300℃で6時間加熱し、次に流量20ml/minの水素気流下で、200℃で6時間、300℃で6時間、さらに350℃で5時間還元し、触媒Cを得た。
【0028】
(シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造)
触媒Cを上記の反応管に入れた。ヘキサフルオロ-2-ブチンをマスフローメーターで計量して反応管に通した。反応は20℃から250℃で行われ、生成物は乾燥器とオンラインGCを通し、最終生成物を-100℃下でトラップに集めた。
実験結果を次の表3に示す。
【0029】
【表3】

注:反応時間 6.7S; ヘキサフルオロ-2-ブチン 流速 6ml/min;
水素 流速 6ml/min;、窒素 流速rate 6ml/min.
【0030】
[実施例4]
(触媒Dの製造)
十分な量の塩化パラジウムと硝酸銀の溶液を活性炭に終夜含浸させた。溶液中の金属の量はパラジウム担持量が約4.5重量%に、銀の担持量が約0.5%なるように調整した。パラジウム担持した担体を200℃で6時間、さらに300℃で6時間加熱し、次に流量20ml/minの水素気流下で、200℃で6時間、300℃で6時間、さらに350℃で5時間還元し、触媒Dを得た。
【0031】
(シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造)
触媒Dを上記の反応管に入れた。ヘキサフルオロ-2-ブチンをマスフローメーターで計量して反応管に通した。反応は20℃から250℃で行われ、生成物は乾燥器とオンラインGCを通し、最終生成物を-100℃下でトラップに集めた。
実験結果を次の表4に示す。
【0032】
【表4】

注:反応時間 5.7S; ヘキサフルオロ-2-ブチン 流速 6ml/min;
水素 流速 6ml/min;、窒素 流速rate 6ml/min.
【0033】
[実施例5]
(触媒Eの製造)
十分な量の塩化パラジウムをアルミナに終夜含浸させた。溶液中の金属の量はパラジウム担持量が約1重量%になるように調整した。パラジウム担持した担体を200℃で6時間、さらに300℃で6時間加熱し、次に流量20ml/minの水素気流下で、200℃で6時間、300℃で6時間、さらに350℃で5時間還元し、触媒Eを得た。
【0034】
(シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造)
触媒Eを上記の反応管に入れた。ヘキサフルオロ-2-ブチンをマスフローメーターで計量して反応管に通した。反応は20℃から250℃で行われ、生成物は乾燥器とオンラインGCを通し、最終生成物を-100℃下でトラップに集めた。
実験結果を次の表5に示す。
【0035】
【表5】

注:反応時間 6.7S; ヘキサフルオロ-2-ブチン 流速 6ml/min;
水素 流速 6ml/min;、窒素 流速rate 6ml/min.
【0036】
[実施例6]
(触媒Fの製造)
十分な量の塩化パラジウムをアルミナに終夜含浸させた。溶液中の金属の量はパラジウム担持量が約1重量%になるように調整した。パラジウム担持した担体を200℃で6時間、さらに300℃で6時間加熱し、次に流量20ml/minの水素気流下で、200℃で6時間、300℃で6時間、さらに350℃で5時間還元した。最後に、触媒を250℃で2時間キノリンを流して処理し、触媒Fを得た。
【0037】
(シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造)
触媒Fを上記の反応管に入れた。ヘキサフルオロ-2-ブチンをマスフローメーターで計量して反応管に通した。反応は20℃から250℃で行われ、生成物は乾燥器とオンラインGCを通し、最終生成物を-100℃下でトラップに集めた。
実験結果を次の表6に示す。
【0038】
【表6】

注:反応時間 6.7S; ヘキサフルオロ-2-ブチン 流速 6ml/min;
水素 流速 6ml/min;、窒素 流速rate 6ml/min.
【0039】
[実施例7]
(ヘキサフルオロブタジエンからシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造)
18mlの触媒Aを直径14mm、長さ300mmの第一の反応管に入れ、触媒Cを第二の反応管に入れたヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン(15ml/min)をマスフローメーターで計量して第一反応管に通し、100℃で反応を行った。生成物流を引き続き第二反応管に通し、200℃で反応を行った。生成物は乾燥器とオンラインGCを通し、最終生成物を-100℃下でトラップに集めた。
この結果、以下の組成(いずれもGC面積%)の混合物が得られた。
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエン 2.5%
トランス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン 4.2%
1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロブタン 4.1%
シス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン 89.2%。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法であって、ヘキサフルオロ-2-ブチンを経由し、且つ、流通式の触媒反応により行うことを特徴とするシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンの製造方法。
【請求項2】
触媒反応によりヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの異性化を行いヘキサフルオロ-2-ブチンを得る第1の工程を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記第1の工程の触媒が、ハロゲン化アルミナであることを特徴とする請求項2に記載の製造方法
【請求項4】
前記触媒が、クロロフルオロカーボン(CFCs)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)、又はヒドロフルオロカーボン(HFCs)とアルミナとを20〜600℃で反応させることにより得られたものであることを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第1の工程の反応温度が、20〜400℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法
【請求項6】
触媒水素化反応によりヘキサフルオロ-2-ブチンからシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを得る第2の工程を有することを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第2の工程の触媒が、パラジウム、銅、銀、ビスマス、から選ばれる少なくとも一つの金属を担体に担持させたものであることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記担体がフッ化アルミニウム、アルミナ、あるいは活性炭であることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記触媒が、パラジウムとビスマスとの混合物をフッ化アルミニウムに担持したものであることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項10】
前記触媒が、芳香族アミンで前処理されることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項11】
芳香族アミンがキノリンであることを特徴とする請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記第1の工程と第2の工程が、連続した1工程で行われることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項13】
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンへの異性化を行い、得られる組成物を精製することなく引き続き触媒水素化を行うことを特徴とする請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンを製造する方法において、流通式の触媒反応によりヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンの異性化を行うことを特徴とするヘキサフルオロ-2-ブチンの製造方法。
【請求項15】
前記触媒がハロゲン化アルミナであることを特徴とする請求項14の製造方法。
【請求項16】
前記触媒が、クロロフルオロカーボン(CFCs)、ヒドロクロロフルオロカーボン(HCFCs)、又はヒドロフルオロカーボン(HFCs)とアルミナとを20〜600℃で反応させることにより得られたものであることを特徴とする請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
ヘキサフルオロ-1,3-ブタジエンからヘキサフルオロ-2-ブチンへの異性化反応の温度が20〜400℃であることを特徴とする請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
ヘキサフルオロ-2-ブチンを触媒水素化反応によりシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法において、反応を流通式反応で行い、かつ、水素化触媒がパラジウム、銅、銀、ビスマス、から選ばれる少なくとも一つの金属を担体に担持させたものであることを特徴とするシス1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテンを製造する方法。
【請求項19】
前記担体が、多孔性フッ化アルミニウム、アルミナ、あるいは活性炭であることを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項20】
前記触媒がパラジウムとビスマスとの混合物をフッ化アルミニウムに担持したものであることを特徴とする請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記触媒が芳香族アミンで前処理されることを特徴とする請求項18に記載の製造方法。
【請求項22】
前記芳香族アミンがキノリンであることを特徴とする請求項21に記載の製造方法。

【公開番号】特開2012−1448(P2012−1448A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−134969(P2010−134969)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「革新的ノンフロン系断熱材技術開発プロジェクト/革新的断熱技術開発/次世代断熱発泡剤の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】