説明

フッ素化合物含有ガスの処理方法

【課題】
26などのフッ素化合物含有ガスを効率良く分解する分解処理方法及び触媒を提供する。
【解決手段】
26のように炭素を2つ以上含み、かつフッ素原子を含む化合物、もしくは窒素原子とフッ素原子を含む化合物の少なくとも一方を含むガス流を、アルミナ,チタニア,シリカ,ジルコニアの少なくとも一種を含む触媒と、約400〜約800℃の温度で、有効量の水蒸気の存在下で接触させて、前記ガス流中のFをHFに転化する。
【効果】
フッ素化合物含有ガスを効率良く分解処理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C26などのフッ素化合物含有ガスを低温で効率良く分解する分解処理方法
及び触媒材料に関する。
【背景技術】
【0002】
26などのフッ素化合物ガスは、半導体エッチング材料,半導体洗浄用などに大量に
使用されている。しかし、これらの物質は大気中に放出されると、地球の温暖化を引き起
こす温暖化物質であることがわかってきた。今後、これらの化合物の使用後の処理に対し
て、厳しい規制が行われると予想される。
【0003】
ところで、C26などのガスは、分子構成成分としてフッ素(F)を多く含有している
。フッ素はすべての元素の中で最も電気陰性度が大きく、化学的に非常に安定な物質を形
成する。特にC26などは分子内力が強く、反応性に乏しい物質である。この性質から、
分解するには高温が必要であり、大量のエネルギーを消費する。また、高温での分解反応は生成するフッ化水素などのガスによる装置材料の腐食速度が大きく、適切な分解処理方法がないのが現状である。
【0004】
分解処理方法として、現在、提案されつつあるのは、高温での燃焼技術である。しかし
ながらこの方法では、大量の燃料を使用するためエネルギー効率が低く、また、燃焼に伴
って生成する1000℃以上のハロゲン化合物による炉壁の損傷の問題もある。従って、
より低温で分解できる技術が必要である。
【0005】
触媒については、これまでに、TiO2−WO3触媒が有機ハロゲン化合物の分解用触媒として、特公平6−59388号公報に報告されている。この触媒はTiO2の0.1〜20wt%のWを含む触媒(原子比にすると、Tiが92%以上99.96%以下、Wが8%以下0.04%以上)であり、ppmオーダーのCCl4を処理するのに375℃で分解率99%を1500時間保持していた。有機ハロゲン化合物中で触媒毒としての影響はClだけでなく、むしろFの方が大きい。該公報では、炭素数1の有機ハロゲン化合物、すなわちCF4,Cl22等が分解できるとしているが、フッ素化合物に関する分解結果の実施例はない。また、炭素数1の有機ハロゲン化合物の分解に比べ、一般に炭素数2の有機ハロゲン化合物は分解しにくい。別の例としては、Al23−ZrO2−WO3触媒がフッ素化合物ガスの分解触媒として、特開平7−80303号公報に報告されている。この触媒は、フロン類を燃焼分解する触媒であり、フロン−115(C2ClF5)を処理するのに600℃で燃焼分解反応を行い、分解率98%を10時間保持していた。この方法は燃焼助剤として、n−ブタン等の炭化水素を添加するため、処理コストが大きくなる。また、C26等の炭素とフッ素のみの化合物の分解は、フロン−115に比べ、さらに難しいが、これらの物質に関する分解結果の実施例はない。
【0006】
【特許文献1】特公平6−59388号公報
【特許文献2】特開平7−80303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、炭素を2つ以上含み、フッ素原子を含む化合物、もしくは窒素原子と
フッ素原子を含む化合物の少なくとも一方を含むガスを低温で効率よく分解処理する方法
及び触媒を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、フッ素化合物含有ガスを低温でかつ高効率で分解が可能で、しかも分解
生成物として遊離されるフッ化水素による装置の腐食が生じにくい分解処理方法の検討を
詳細に進めた結果、本発明に至った。
【0009】
即ち、炭素を2つ以上含み、かつフッ素原子を含む化合物、もしくは窒素原子とフッ素
原子を含む化合物の少なくとも一方を含むガス流を、特定のフッ素化合物分解触媒と、約
400〜約800℃の温度で、有効量の水蒸気の存在下で接触させることにより、ガス流
中のフッ素をHFに転化できることを見い出した。分解触媒としては、アルミナ,チタニ
ア,シリカ,ジルコニアの少なくとも一種を含む触媒を用いることができる。
【0010】
フッ素化合物としては、C26などのように炭素数が2以上のCとFとの化合物、NF3などのNとFとの化合物などがある。
【0011】
さらに、触媒にSi,Mg,Zr,W,Sn,Ce,Mn,Bi,Niのうちの少なく
とも一成分を添加すると、フッ素化合物含有ガスをより高い活性で分解できることを見い
出した。これらの触媒はアルミナ,チタニア,シリカ,ジルコニア、そしてSi,Mg,
Zr,W,Sn,Ce,Mn,Bi,Ni,P,Bのうちの少なくとも一成分の酸化物を
混合物、あるいは複合酸化物の形態で含有している。特にアルミナとチタニアを含む触媒
では、アルミナが75wt%以上98wt%以下、チタニアが25%以下2wt%以上で
ある場合に効果が大きい。また、Si,Mg,Zr,W,Sn,Ce,Mn,Bi,Ni
,P,Bの酸化物を触媒主量に対して0.1〜10wt% で含む場合に効果が大きい。
【0012】
フッ素化合物含有ガスの分解触媒の開発のため種々検討した結果、触媒の性質として、
フッ素と適度な強さの結合を形成する金属成分を含有する必要があることを見い出した。
特に、炭素とフッ素とからなる化合物の場合、分子自体が安定であるため、フッ化物生成
エンタルピーが大きい金属成分を含有する触媒が高分解活性を示すことを見い出した。あ
まり安定な結合を形成してしまうと触媒上からフッ素化合物が離れないため、活性が徐々
に低下する。一方で結合力が弱すぎると十分な分解率が得られない。本発明の対象ガスで
あるC26などは、分子内力が強く、反応性の乏しい物質である。これらのガスを燃焼さ
せる場合、1500〜2000℃の温度が必要と言われている。我枚は、本対象ガスは、アルミナ,チタニア,シリカ,ジルコニアを単独で触媒として用いても分解できることを
見い出したが、より高い分解率を得る触媒としては、アルミナとチタニアを含んでなる触
媒が好ましいことを見い出した。アルミナはフッ素化合物を触媒上に引き付ける働きをし
、チタニアは触媒上のフッ素化合物を引き離す働きをすると思われる。
【0013】
Si,Mg,Zr,W,Sn,Ce,Mn,Bi,Niの酸化物は、アルミナ,チタニ
ア,シリカ,ジルコニアとの協奏効果を発現させると思われる。また、触媒中のチタニア
の安定化に寄与していると考えられる。
【0014】
本発明のフッ素化合物含有ガスの分解処理方法では、C26などのフッ素化合物を、不
活性ガスで希釈してもよいことを見い出した。フッ素化合物の濃度を希釈することで、触
媒に対する負荷が小さくなり、分解活性を長時間維持することができる。希釈ガスとして
は、Ar,N2 ,Heなどの不活性ガスを用いることができる。
【0015】
本発明の対象とするフッ素含有化合物はC26,NF3 などのPFC(perfluorocompound)あるいはFFC(fully fluorocompound)と呼ばれるもので、代表的な反応としては次のようなものがある。
【0016】
26+3H2O→CO+CO2+6HF
26+2H2O+1/2O2→2CO2+6HF
NF3+3H2O→NO2+1/2O2+6HF
これらのフッ素化合物は、処理するガス中に水素原子をフッ素化合物中のF数と少なく
とも同等になるよう添加することが望ましい。このことにより、化合物中のFはHFにな
り、分解生成物中のFは後処理しやすいハロゲン化水素の形態となる。このときの水素源
としては、水蒸気のほかに、水素,炭化水素などを用いることができるが、炭化水素を用
いた場合、炭化水素が触媒上で燃焼し、供給する熱エネルギを小さくすることができる。
【0017】
また、反応ガス中に酸素などの酸化ガスを含有させることで、COの酸化反応も同時に
起こらせることができる。COの酸化反応が不完全な場合は、分解生成ガス中のHFを除
去した後、CO酸化触媒に接触させてCOをCO2に転換させることもできる。
【0018】
本発明の触媒を用いれば、C2Cl33,C2Cl24,C2ClF5などのフロン類,HFC134aなどの代替フロン類、また、SF6 等の化合物も分解できる。また、CCl3F ,CCl22などの物質も十分分解できる。なお、塩素化合物を処理した場合の化合物中のClは、HClに転化される。
【0019】
本発明で用いられる反応温度は、約400〜約800℃が好ましい。これ以上の高温で
使用すると、高分解率は得られるが、触媒の劣化が速い。また、装置材料の腐食速度が急
激に大きくなる。逆に、これ以下の温度では、分解率が低い。
【0020】
また、生成したHFを中和除去する工程としては、アルカリ溶液をスプレーして洗浄す
るものが効率が高く、結晶析出などによる配管の閉塞が起こりにくいので好ましい。アル
カリ溶液中に分解生成ガスをバブリングする方法あるいは充填塔を用いて洗浄する方法で
もよい。
【0021】
本発明の触媒を調製するためのAl原料としては、γ−アルミナ,γ−アルミナとδ−
アルミナの混合物などを使用することができる。特にベーマイトなどをAl原料として用
い、最終的な焼成により酸化物を形成するのも好ましい方法である。
【0022】
本発明の触媒を調製するためのTi原料としては、硫酸チタン,チタニアゾル,チタン
スラリ、などを使用することができる。
【0023】
さらに、Si,Mg,Zrなどの第三金属成分の原料としては、各種、硝酸塩,アンモ
ニウム塩,塩化物などを用いることができる。
【0024】
本発明の触媒の製造法は通常触媒の製造に用いられる沈殿法,含浸法,混練法などいず
れも使用できる。
【0025】
また、本発明における触媒は、そのまま粒状,ハニカム状などに成形して使用すること
ができる。成形法としては、押し出し成形法,打錠成形法,転動造粒法などを目的に応じ
任意の方法を採用できる。また、セラミックスや金属製のハニカムや板にコーティングし
て使用することもできる。
【0026】
本発明のフッ素化合物含有ガス処理方法は、他の処理方法に比べて低温でフッ素化合物
を分解することができる。
【0027】
フッ素化合物含有ガスを処理する場合、分解して生成するHFなどの酸成分による装置
材料の腐食が問題となるが、本発明によれば、使用する温度が比較的低温であるため、腐
食速度が遅く、装置のメンテナンスなどが不要となる。
【0028】
本発明のフッ素化合物含有ガス処理方法を実施する装置は、フッ素化合物を分解する触
媒反応槽と分解生成ガス中の酸成分を中和除去する設備を備えるだけでよく、装置を小型
化できる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、C26,NF3などのフッ素含有ガスを効率良く分解処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、実施例にて本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、これら実施例にのみ限定されるものではない。
【0031】
図1は、本発明の分解処理方法を半導体生産プロセスのプラズマCVD装置のクリーニング工程で用いる場合の実施例を示す。
【0032】
プラズマCVD装置は、半導体ウェハー表面にSiO2膜を蒸着法で形成させる装置である。しかし、SiO2膜は装置内全体に付着してしまうので、不必要な箇所に付いたSiO2を除去する必要がある。このSiO2をクリーニングするためにC26が用いられる。C26を含むクリーニングガスは、CVDチャンバへ送られ、プラズマで励起してSiO2を除去する。その後、チャンバ内をN2 で置換し、C26濃度を約3〜5%に希釈して約15l/minでチャンバから排出している。
【0033】
この排出ガスに空気3を添加しC26を希釈した。この希釈ガスに、さらに水蒸気4を添加した反応ガス5を分解工程に送る。反応ガス中のC26濃度は約0.5% である。分解工程では、反応ガス5を、空間速度3000毎時(空間速度(h-1)=反応ガス流量(ml/h)/触媒量(ml))の条件でAl23系触媒と700℃で接触させる。この場合、反応ガスを加熱してもよく、電気炉などにより触媒を加熱してもよい。分解ガス6は、排ガス洗浄工程に送られる。排ガス洗浄工程では、分解ガス6にアルカリ水溶液がスプレーされ、分解ガス中の酸成分が除去された排ガス7が系外に放出される。C26の分解率は、反応ガス5と排ガス7をFID(Flame Ionization Detector の略称)ガスクロマトグラフ,TCD(Thermal Conductivity Detectorの略称)ガスクロマトグラフを用いて分析し、入り口及び出口の物質収支により求める。
【0034】
以下、各種フッ素化合物分解触媒の活性を調べた結果について説明する。
【0035】
[実施例1]
純度99%以上のC26ガスに空気を添加して希釈した。この希釈ガスに、さらに水蒸
気を添加した。水蒸気は純水を0.11ml/minで反応管上部へマイクロチューブポンプ
を用いて供給しガス化させた。反応ガス中のC26濃度は約0.5% であった。この反応
ガスを、電気炉により反応管外部から700℃に加温した触媒と空間速度3000毎時で
接触させた。
【0036】
反応管は内径19mmのインコネル製の反応管で、触媒層を反応管中央に有しており、内部に外径3mmのインコネル製の熱電対保護管を有している。触媒層を通過した分解生成ガスは水酸化ナトリウム溶液中にバブリングさせ、系外に放出した。C26の分解率は、FIDガスクロマトグラフ,TCDガスクロマトグラフにより、次式で求めた。
【0037】
【数1】

【0038】
以下に上記条件における試験に供した各触媒の調製法を示す。
【0039】
触媒1;Al23
住友化学製粒状アルミナ(NKHD−24)を粉砕し、0.5−1mm粒径に篩い分けし、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成したものを試験に供した。
【0040】
触媒2;TiO2
堺化学製粒状チタニア(CS−200−24)を粉砕し、0.5−1mm粒径に篩い分けし、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成したものを試験に供した。
【0041】
触媒3;ZrO2
硝酸ジルコニル200gを120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2 の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径のジルコニアに造粒し、試験に供した。
【0042】
触媒4;SiO2
Fuji Silysia製粒状シリカ(CARIACT−10)を粉砕し、0.5−1mm粒径に篩い分けし、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成したものを試験に供した。
【0043】
触媒5;TiO2−ZrO2
堺化学製粒状チタニア(CS−200−24)を0.5mm以下に粉砕した。この粉末100gに対し硝酸ジルコニル78.3gを加え、純水を添加しながら混練した。混練後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径に造粒し、試験に供した。
【0044】
触媒6;Al23−MgO
住友化学製粒状アルミナ(NKHD−24)を0.5mm以下の粒径に粉砕した。この粉末100gに対し、硝酸マグネシウム56.4gを加え、純水を添加しながら混練した。混練後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0045】
触媒7;Al23−TiO2
住友化学製粒状アルミナ(NKHD−24)を0.5mm以下の粒径に粉砕した。この粉末100gに対し、メタチタン酸スラリの乾燥粉末56.4gを加え、純水を添加しながら混練した。混練後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0046】
触媒8;Al23−SiO2
住友化学製粒状アルミナ(NKHD−24)を0.5mm以下の粒径に粉砕した。この粉末100gに対し、SiO2ゾルの乾燥粉末13.2gを加え、純水を添加しながら混練した。混練後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0047】
上記触媒1〜8の試験結果を図2に示す。
【0048】
[実施例2]
本実施例は、実施例1と同様の条件で、第三成分添加の効果を調べたものである。各触
媒は以下のように調製した。
【0049】
触媒9;Al23−TiO2
住友化学製粒状アルミナ(NKHD−24)を粉砕し、0.5−1mm粒径に篩い分けし、120℃で2時間乾燥した。これに、30%硫酸チタン溶液176gを含浸した。含浸後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0050】
触媒10;Al23−TiO2−ZrO2
住友化学製粒状アルミナ(NKHD−24)を粉砕し、0.5−1mm粒径に篩い分けし、120℃で2時間乾燥した。これに、30%硫酸チタン溶液176gを含浸した。含浸後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成し、触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、硝酸ジルコニル2水和物6.7gを90gのH2Oに溶かした水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0051】
触媒11;Al23−TiO2−WO3
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、パラタングステン酸アンモニウム6.5gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0052】
触媒12;Al23−TiO2−SiO2
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、20wt%シリカゾル7.5gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0053】
触媒13;Al23−TiO2−SnO2
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、塩化すず2水和物5.6gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0054】
触媒14;Al23−TiO2−CeO2
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、硝酸セリウム6水和物10.9gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0055】
触媒15;Al23−TiO2−MnO2
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、硝酸マンガン6水和物7.2gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0056】
触媒16;Al23−TiO2−Bi23
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、硝酸ビスマス6水和物7.4gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0057】
触媒17;Al23−TiO2−NiO
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、硝酸ニッケル6水和物7.3gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0058】
触媒18;Al23−TiO2−BO4
触媒10と同様の方法で触媒Aを作製した。続いて、触媒A50gに、ほう酸アンモニウム8水和物12.0gをH2Oに溶かした90gの水溶液を含浸した。含浸後、120℃で2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。これを試験に供した。
【0059】
上記触媒9〜18と、実施例1中の触媒1の活性を図3に示す。
【0060】
[実施例3]
本実施例は、アルミナ原料及びチタニア原料を変化させて各種触媒を調製し、実施例1
と同様の方法で活性を調べた例である。
【0061】
触媒19;Al23
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で2時間乾燥した。こ
の乾燥粉末200gを300℃で0.5 時間焼成し、さらに焼成温度を700℃にあげ2
時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2 の圧力で圧縮成型した。成
型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0062】
触媒20;Al23−TiO2
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末200gと30%硫酸チタン溶液248.4gを純水約200gを添加しながら混練した。混練後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0063】
触媒21;Al23−TiO2
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末200gと、30%チタニアゾル78.6gに純水を加えた約100gの水溶液を混練した。混練後、120℃で約2時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0064】
上記の触媒19〜21の活性を実施例1と同様の方法で調べた結果を図4に示す。
【0065】
[実施例4]
本実施例は、実施例3の触媒20中のAlとTiの組成を変化させた触媒を調製し、活
性を調べた結果である。
【0066】
触媒22;Al23−TiO2
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末100gと30%硫酸チタン溶液48.8gを純水約150gを添加しながら混練した。混練後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0067】
触媒23;Al23−TiO2
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末100gと30%硫酸チタン溶液82.4gを純水約120gを添加しながら混練した。混練後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0068】
触媒24;Al23−TiO2
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末100gと30%硫酸チタン溶液174.4gを純水約70gを添加しながら混練した。混練後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0069】
触媒25;Al23−TiO2
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末100gと30%硫酸チタン溶液392gを添加しながら混練した。混練後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。
【0070】
上記の触媒22〜25の活性を実施例1と同様の方法で調べた結果を図5に示す。
【0071】
[実施例5]
本実施例は、触媒調製時に硫酸を添加した場合の例である。
【0072】
触媒26;Al23−TiO2
CONDEA製ベーマイト粉末(PURAL SB)を120℃で1時間乾燥した。この乾燥粉末150gに、石原産業製CS−N30%チタニアゾル溶液58.8gと、97%硫酸溶液44.8gを純水250mlで希釈した水溶液を添加し混練した。混練後、250〜300℃で約5時間乾燥し、700℃で2時間焼成した。得られた粉末を金型に入れ、500kgf/cm2の圧力で圧縮成型した。成型品を粉砕,篩い分けして0.5−1mm粒径として試験に供した。試験条件は、空間速度を1000毎時とした以外は実施例1と同様である。試験の結果、反応温度650℃でC26の分解率80%が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の一実施例による処理プロセスを示す工程図である。
【図2】各種フッ素化合物分解触媒の性能を示すグラフである。
【図3】各種フッ素化合物分解触媒の性能を示すグラフである。
【図4】各種フッ素化合物分解触媒の性能を示すグラフである。
【図5】各種フッ素化合物分解触媒の性能を示すグラフである。
【符号の説明】
【0074】
1…C26、2…N2 、3…空気、4…水蒸気、5…反応ガス、6…分解ガス、7…排
ガス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を2つ以上含み、かつフッ素原子を含む化合物、もしくは窒素原子とフッ素原子を
含む化合物の少なくとも一方を含むガス流を、アルミナ,チタニア,シリカ,ジルコニア
の少なくとも一種を含む触媒と約400〜800℃の温度で、有効量の水蒸気の存在下で
接触させて、前記ガス流中のFをHFに転化する工程を含んでなることを特徴とするフッ
素化合物含有ガスの処理方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記フッ素化合物含有ガスが、炭素を2つ以上含むCと
Fとの化合物、もしくはNとFとの化合物であることを特徴とするフッ素化合物含有ガス
の処理方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記触媒が、さらにSi,Mg,Zr,W,Sn,Ce
,Mn,Bi,Niのうちの少なくとも一成分を含むことを特徴とするフッ素化合物含有
ガスの処理方法。
【請求項4】
炭素を2つ以上含むCとFとの化合物、もしくはNとFとの化合物を少なくとも一方を
含むガス流を処理する触媒であって、アルミナとチタニアを含み、アルミナが75wt%
以上98wt%以下、チタニアが25wt%以下2wt%以上であることを特徴とするフ
ッ素化合物分解触媒。
【請求項5】
請求項4記載の触媒において、さらにSi,Mg,Zr,W,Sn,Ce,Mn,Bi
,Ni,P,Bのうちの少なくとも一成分を含むことを特徴とするフッ素化合物分解触媒

【請求項6】
請求項5記載の触媒において、Si,Mg,Zr,W,Sn,Ce,Mn,Bi,Ni,P,Bの酸化物を、アルミナ−チタニア触媒主量に対し、0.1wt%〜10wt%で含むことを特徴とするフッ素化合物分解触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−100229(P2008−100229A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298776(P2007−298776)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【分割の表示】特願2004−116314(P2004−116314)の分割
【原出願日】平成9年1月14日(1997.1.14)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】