説明

フッ素含有排水の処理方法及び処理装置

【課題】フッ素含有排水を効率的に処理して残留フッ素濃度が低い処理水が得られるとともに、発生する汚泥の含水率が低く、容積を減少することができるフッ素含有排水の処理方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】フッ素含有排水に、返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を供給して、汚泥濃度0.1重量%以上の条件、かつpH5〜9で反応させる反応工程、高分子凝集剤を添加する凝集工程、固液分離工程、及び、固液分離汚泥の一部を返送する汚泥返送工程を有するフッ素含有排水の処理方法において、汚泥返送工程の返送汚泥にアルミニウム系凝集剤を添加して返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を反応工程に供給するフッ素含有排水の処理方法、並びに、フッ素含有排水とアルミニウム系凝集剤との反応槽7、凝集槽8、固液分離装置9、汚泥返送路、返送汚泥にアルミニウム系凝集剤を混合する混合槽10を有するフッ素含有排水の処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有排水の処理方法及び処理装置に関する。さらに詳しくは、本発明は、フッ素含有排水を効率的に処理して残留フッ素濃度が低い水質の良好な処理水が得られるとともに、処理にともなって発生する汚泥の含水率が低く、発生する汚泥の容積を減少することができるフッ素含有排水の処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フッ素は、フッ酸含有洗浄液やバッファードフッ酸含有エッチング剤を使用する半導体製造工程からの排水、金属精錬、ガラス、窯業、化学工場などからの排水、排煙脱硫排水、地下水などに含まれる。フッ酸は、腐食性が強く、管渠を損傷し、フッ素は、終末処理場では生物処理機能を阻害するので、排水中のフッ素を低濃度まで除去することが求められる。
水中のフッ素を除去する方法として、水に水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加して、フッ化カルシウムを生成させて沈殿分離する方法、水にポリ塩化アルミニウム、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物を添加し、生成するゲル状の水酸化アルミニウムにフッ素を吸着共沈させる方法、フッ素吸着樹脂にフッ素を吸着させる方法などが知られている。
しかし、カルシウム化合物を用いる一段処理法のフッ素除去では、フッ素を十分に除去することは困難であり、処理水中に10〜30mg/L程度のフッ素が残留する。アルミニウム化合物を用いる方法は、アルミニウム化合物の添加量を増すと処理水のフッ素濃度は低下し、フッ素濃度8mg/L以下の処理水を得ることも可能であるが、薬剤の使用量と汚泥の発生量が増加するという問題がある。フッ素を吸着した水酸化アルミニウムは、水を多く取り込んでゲル状の汚泥となり、脱水性が非常に悪い。このために、処理水中のフッ素濃度を効率的に低減するための処理方法の開発が試みられている。例えば、処理水のフッ素濃度が低く、汚泥の生成量が少なく、設備の設置面積が小さいフッ素含有水の処理方法として、フッ素含有水に硫酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物存在下、pHを5〜8.5に調整する第1工程と、第1工程からの流出懸濁液を分離し、処理水と沈殿物とに分離する第2工程と、第2工程からの沈殿物に水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物を添加する第3工程と、第3工程反応物を前記第1工程に返送する第4工程とを含むフッ素含有水の処理方法が提案されている(特許文献1)。
図3は、特許文献1記載のフッ素含有水の処理方法の一態様の工程系統図である。原水槽1に貯留されたフッ素含有水が反応槽2に送られ、硫酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物が添加され、pH5〜8.5に調整される。pH5〜8.5になると、アルミニウム化合物は水酸化アルミニウムとなって沈殿し、同時に水中のフッ素が沈殿中に巻き込まれたり、フロックに吸着されたりして、水中のフッ素濃度が低下する。フッ素濃度が低下した水は、凝集槽3に送られ、高分子凝集剤が添加されて、水中のフロックが凝集する。フロックが凝集した水は沈殿池4で固液分離され、上澄水としての処理水と、沈降した汚泥に分離される。沈殿池から抜き取られた汚泥の一部は、返送汚泥として混合槽5へ返送され、水酸化カルシウムなどのカルシウム化合物が添加され、混合されて反応槽2へ供給される。汚泥を返送することにより、返送汚泥中のアルミニウムイオンやカルシウムイオンがフッ素を固定するために利用されるとともに、反応物中のフッ化カルシウムが反応の核となり、極めて沈降性のよい沈殿物を得ることができる。
この処理方法では、返送汚泥を反応槽で原水と混合する前に、あらかじめpH調整剤としてのアルカリと混合する。この方法では、返送汚泥とアルカリとの混合において適正にpHを制御すれば、有効なフッ素の除去と、汚泥含水率の低減が期待できるが、混合汚泥のpHが上昇しすぎると、汚泥を構成する水酸化アルミニウムの一部が溶解し、吸着していたフッ素を放出する。また、アルカリを混合した汚泥を反応槽に返送してpHを中性付近に調整すると、アルミニウムが不溶化する際に水を取り込み、脱水性の悪いフロックを生成し、汚泥含水率が低減しにくくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−97091号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、フッ素含有排水を効率的に処理して残留フッ素濃度が低い水質の良好な処理水が得られるとともに、処理にともなって発生する汚泥の含水率が低く、発生する汚泥の容積を減少することができるフッ素含有排水の処理方法及び処理装置を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、フッ素含有排水をアルミニウム系凝集剤とpH5〜9で反応させる処理において、固液分離により発生した汚泥の一部にアルミニウム系凝集剤を添加して反応工程に返送することにより、発生する汚泥の含水率が低くなり、処理水のフッ素濃度を低減し得ることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)フッ素含有排水に、返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を供給して、汚泥濃度0.1重量%以上の条件で、かつpH5〜9で反応させる反応工程、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加する凝集工程、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する工程、及び、固液分離された汚泥の一部を返送する汚泥返送工程を有するフッ素含有排水の処理方法において、汚泥返送工程の返送汚泥にアルミニウム系凝集剤を添加して返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を反応工程に供給することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法、
(2)フッ素含有排水をカルシウム化合物で処理してフッ素をフッ化カルシウムとして除去する工程、該工程の一次処理水に、返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を供給して、汚泥濃度0.1重量%以上の条件で、かつpH5〜9で反応させる反応工程、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加する凝集工程、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する工程、及び、固液分離された汚泥の一部を返送する汚泥返送工程を有するフッ素含有排水の処理方法において、汚泥返送工程の返送汚泥にアルミニウム系凝集剤を添加して返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を反応工程に供給することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法、及び、
(3)フッ素含有排水を導入し、該フッ素含有排水を、返送汚泥とともに供給されたアルミニウム系凝集剤と汚泥濃度0.1重量%以上の条件で、かつpH5〜9で反応させる反応槽、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加してフロックを凝集させる凝集槽、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する固液分離装置、及び、固液分離された汚泥の一部を返送する汚泥返送路を有するフッ素含有排水の処理装置において、汚泥返送路の途中に返送汚泥に前記アルミニウム系凝集剤を混合する混合槽を有し、アルミニウム系凝集剤が混合された返送汚泥を反応槽に供給することを特徴とするフッ素含有排水の処理装置、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明のフッ素含有排水の処理方法及び処理装置によれば、フッ素含有排水を効率的に処理して、フッ素濃度の低い処理水を得るとともに、発生する汚泥の含水率を低下させ、発生する汚泥量を減少することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明のフッ素含有排水の処理方法の一態様の工程系統図である。
【図2】本発明のフッ素含有排水の処理方法の他の態様の工程系統図である。
【図3】従来のフッ素含有水の処理方法の一態様の工程系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のフッ素含有排水の処理方法においては、フッ素含有排水をアルミニウム系凝集剤とpH5〜9で反応させる反応工程、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加する凝集工程、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する工程、及び、固液分離された汚泥の一部を反応工程に返送する汚泥返送工程を有するフッ素含有排水の処理方法において、汚泥返送工程の返送汚泥に前記アルミニウム系凝集剤を添加して反応工程に返送する。
図1は、本発明のフッ素含有排水の処理方法の一態様の工程系統図である。原水槽6に貯留されたフッ素含有排水が反応槽7に送られ、アルカリの添加によりpHが5〜9に調整されると、返送汚泥とともに反応槽に供給されたアルミニウム系凝集剤がゲル状の水酸化アルミニウムとなって沈殿し、その際にフッ素が水酸化アルミニウムに吸着されて水中のフッ素濃度が低下する。フッ素濃度が低下した水は、凝集槽8に送られ、高分子凝集剤が添加されて、水中のフロックが凝集する。フロックが凝集した水は沈殿池9で固液分離され、上澄水としての処理水と、沈降した汚泥に分離される。沈殿池から抜き取られた汚泥の一部は、返送汚泥として混合槽10へ返送され、アルミニウム系凝集剤が添加される。
返送汚泥に添加されたアルミニウム系凝集剤は、汚泥中の懸濁物質粒子の表面に吸着されて、反応槽7に送られ、pH5〜9に調整されて、ゲル状の水酸化アルミニウムとなり、その際に水中のフッ素を吸着する。アルミニウム系凝集剤が懸濁物質粒子の表面に吸着され、局在化した状態でこの反応が起こるので、アルミニウム系凝集剤が反応槽全体に均一に分布する場合に比べて、アルミニウム系凝集剤の局所的な濃度が高く、そのためにフッ素が効果的にゲル状の水酸化アルミニウムに吸着され、フッ素濃度が低い処理水が得られる。また、局所的に水に対するアルミニウム系凝集剤の濃度が高い状態となるので、ゲル状の水酸化アルミニウムの生成のときに、ゲル中への水分子の巻き込みが少なく、沈降性と脱水性の良好なフロックが形成され、汚泥の含水率が低下し、汚泥を減容することができる。
【0009】
本発明方法においては、反応工程の汚泥濃度が0.1以上である必要がある。反応工程の汚泥濃度は、汚泥返送比を選択することにより、制御することができる。通常は、汚泥返送比を15〜900とすることにより、反応工程の汚泥濃度を0.1〜5重量%とすることができる。汚泥返送比は、次式により求めることができる。
汚泥返送比 = (返送汚泥の量)/(沈殿池から抜き出した汚泥の量−返送汚泥の量)
反応工程の汚泥濃度が0.1重量%未満であると、アルミニウム系凝集剤が表面に吸着される懸濁物質粒子の量が少なく、ゲル状の水酸化アルミニウムの生成反応が十分に局在化して起こらず、生成するゲルによるフッ素の吸着が不十分になり、ゲル中への水の巻き込みが多くなるおそれがある。
本発明に用いるアルミニウム系凝集剤に特に制限はなく、例えば、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、アルミニウムシリカ無機高分子凝集剤、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウムなどを挙げることができる。これらの中で、硫酸アルミニウムとポリ塩化アルミニウムは、取り扱いが容易であり、凝集剤として優れた性能を有するので、好適に用いることができる。
【0010】
本発明のフッ素含有排水の処理方法においては、フッ素含有排水をカルシウム化合物で処理してフッ素をフッ化カルシウムとして除去する工程、該工程の一次処理水をアルミニウム系凝集剤とpH5〜9で反応させる反応工程、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加する凝集工程、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する工程、及び、固液分離された汚泥の一部を反応工程に返送する汚泥返送工程を有するフッ素含有排水の処理方法において、汚泥返送工程の返送汚泥に前記アルミニウム系凝集剤を添加して反応工程に返送する。
本発明方法において、フッ素含有排水をカルシウム化合物で処理してフッ素をフッ化カルシウムとして除去する工程に特に制限はなく、例えば、凝集沈殿法、晶析法、返送汚泥にカルシウム化合物を添加したのちフッ素含有排水に供給する方法などを挙げることができる。本発明方法に用いるカルシウム化合物に特に制限はなく、例えば、水酸化カルシウム、塩化カルシウムなどを挙げることができる。
【0011】
図2は、本発明のフッ素含有排水の処理方法の他の態様の工程系統図である。本態様においては、前段において、フッ素含有排水をカルシウム化合物で処理してフッ素の一部をフッ化カルシウムとして除去し、後段において、図1に示される態様と同様にして、前段で得られた一次処理水をアルミニウム系凝集剤で処理して残存するフッ素を除去する。原水槽11に貯留されたフッ素含有排水が反応槽12に送られ、pH調整剤の添加によりpHが5〜9に調整され、返送汚泥とともに反応槽に供給されたカルシウム化合物がフッ素と反応してフッ化カルシウムとなって沈殿し、水中のフッ素濃度が低下する。フッ素濃度が低下した水は、凝集槽13に送られ、高分子凝集剤が添加されて、水中のフロックが凝集する。フロックが凝集した水は沈殿池14で固液分離され、上澄水としての一次処理水と、沈降した汚泥に分離される。沈殿池から抜き取られた汚泥の一部は、返送汚泥として混合槽15へ返送され、カルシウム化合物が添加される。汚泥を返送することにより、返送汚泥中のカルシウムイオンがフッ素を固定するために利用されるとともに、返送汚泥中のフッ化カルシウムが結晶化の核となり、沈降性と脱水性の良好な懸濁物質粒子を形成することができる。
前段の処理により得られた一次処理水は、一次処理水槽16にいったん貯留されたのち反応槽17に送られ、アルカリの添加によりpHが5〜9に調整されると、返送汚泥とともに反応槽に供給されたアルミニウム系凝集剤がゲル状の水酸化アルミニウムとなって沈殿し、その際にフッ素が吸着されて水中のフッ素濃度が低下する。フッ素濃度が低下した水は、凝集槽18に送られ、高分子凝集剤が添加されて、水中のフロックが凝集する。フロックが凝集した水は沈殿池19で固液分離され、上澄水としての処理水と、沈降した汚泥に分離される。沈殿池から抜き取られた汚泥の一部は、返送汚泥として混合槽20へ返送され、アルミニウム系凝集剤が添加される。返送汚泥に添加されたアルミニウム系凝集剤は、汚泥中の懸濁物質粒子の表面に吸着されて、反応槽17に送られ、pH5〜9に調整されて、ゲル状の水酸化アルミニウムとなり、その際に水中のフッ素を吸着する。
【0012】
本発明方法において、図2に示す態様の装置は、フッ素濃度の高いフッ素含有排水、例えば、フッ素濃度30mg/L以上のようなフッ素含有排水に好適に適用することができる。フッ素含有排水の処理を二段に分け、フッ素濃度の高いフッ素含有排水をカルシウム化合物で処理してフッ素をフッ化カルシウムとして除去した一次処理水をアルミニウム系凝集剤で処理することにより、アルミニウム系凝集剤の使用量を低減し、発生する汚泥の合計量を減少し、汚泥の含水率を低下させることができる。
本発明のフッ素含有排水の処理装置は、フッ素含有排水を導入し、pH5〜9でアルミニウム系凝集剤と反応させる反応槽、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加してフロックを凝集させる凝集槽、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する固液分離装置、及び、固液分離された汚泥の一部を反応槽に返送する汚泥返送路を有するフッ素含有排水の処理装置において、汚泥返送路の途中に返送汚泥に前記アルミニウム系凝集剤を混合する混合槽を有し、アルミニウム系凝集剤が混合された返送汚泥を反応槽に返送する処理装置である。本発明に用いる固液分離装置に特に制限はなく、例えば、沈降分離装置、遠心分離装置、ろ過分離装置、膜分離装置などを挙げることができる。
【実施例】
【0013】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例において、フッ素濃度はイオンメーター[(株)堀場製作所、F−23]を用いて測定した。汚泥含水率は、汚泥約10gを秤取し、遠心分離機[(株)コクサン、H−103N]を用いて、3,000rpmで60秒脱水して上澄水を取り除き、得られたケーキを汚泥乾燥機[栗田工業(株)、クリケット]を用いて110℃で1時間乾燥し、乾燥重量を測定して算出した。
また、汚泥返送比Rは、(返送汚泥のSS量)/(原SS量)により算出した。返送汚泥のSS量は、返送汚泥量×返送汚泥のSS濃度である。原SS量は、返送汚泥なしで、原水にアルミニウム系凝集剤を添加したときに発生するSS量であり、返送汚泥なしで、原水にアルミニウム系凝集剤を添加したときの反応槽出口のSS濃度×原水流量である。
実施例1
図1に示す装置を用いて、半導体製造工場から排出されるフッ素濃度10.6mg/L、pH6.4、電気伝導率30mS/mのフッ素含有排水の処理を行った。フッ素含有排水の通水量3L/hで装置に供給し、各槽の液量は、反応槽1L、凝集槽1L、混合槽0.3Lとし、沈殿池の水面積負荷は1mとした。
供給するフッ素含有排水1Lに対し、凝集槽において、高分子凝集剤[栗田工業(株)、アニオンポリマーPA311]3mgを添加し、混合槽において、アルミニウムとして20mgに相当する量の硫酸アルミニウムを添加し、反応槽に水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.5に保ち、汚泥返送比8で処理を行った。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は0.05重量%であり、処理水のフッ素濃度は4.5mg/L、汚泥の含水率は65重量%であった。
実施例2
汚泥返送比を20とした以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有排水を処理した。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は0.12重量%であり、処理水のフッ素濃度は3.4mg/L、汚泥の含水率は60重量%であった。
実施例3
汚泥返送比を190とした以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有排水を処理した。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は1.10重量%であり、処理水のフッ素濃度は3.2mg/L、汚泥の含水率は57重量%であった。
実施例4
汚泥返送比を850とした以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有排水を処理した。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は4.95重量%であり、処理水のフッ素濃度は3.5mg/L、汚泥の含水率は58重量%であった。
実施例5
汚泥返送比を1,250とした以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有排水を処理した。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は7.23重量%であり、処理水のフッ素濃度は4.6mg/L、汚泥の含水率は58重量%であった。
比較例1
汚泥の返送を行わず、硫酸アルミニウムを混合槽でなく、反応槽に添加した以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有排水を処理した。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は0.01重量%であり、処理水のフッ素濃度は5.5mg/L、汚泥の含水率は75重量%であった。
比較例2
供給するフッ素含有排水1Lに対し、反応槽において、アルミニウムとして20mgに相当する量の硫酸アルミニウムを添加し、凝集槽において、高分子凝集剤[栗田工業(株)、アニオンポリマーPA311]3mgを添加し、混合槽において、反応槽のpHが6.5に保たれるように水酸化ナトリウム水溶液を添加し、汚泥返送比を175とした以外は、実施例1と同様にしてフッ素含有排水を処理した。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は1.02重量%であり、処理水のフッ素濃度は4.0mg/L、汚泥の含水率は70重量%であった。
実施例1〜5及び比較例1〜2の結果を、第1表に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
第1表に見られるように、沈殿池において固液分離された汚泥を反応工程に返送することなく、反応槽に硫酸アルミニウムを添加した比較例1に比べて、汚泥の一部を返送し、混合槽において返送汚泥に硫酸アルミニウムを添加して反応槽へ送り込んだ実施例1〜5では、処理水のフッ素濃度が低く、汚泥の含水率が低い。また、反応工程の汚泥濃度0.05重量%の実施例1と、反応工程の汚泥濃度7.23重量%の実施例5に比べて、反応工程の汚泥濃度0.12〜4.95重量%の実施例2〜4において、より良好な結果が得られている。汚泥の一部を返送しても、返送汚泥にアルカリを添加し、硫酸アルミニウムを反応槽に直接添加した比較例2では、処理水のフッ素濃度は低いが、汚泥の含水率が高い。
実施例6
実施例1と同じ図1に示す装置を用いて、半導体製造工場から排出されるフッ素濃度50.0mg/L、pH2.8、電気伝導率380mS/mのフッ素含有排水の処理を行った。フッ素含有排水の通水量3L/hで装置に供給し、各槽の液量は、反応槽1L、凝集槽1L、混合槽0.3Lとし、沈殿池の水面積負荷は1mとした。
供給するフッ素含有排水1Lに対し、凝集槽において、高分子凝集剤[栗田工業(株)、アニオンポリマーPA311]3mgを添加し、混合槽において、アルミニウムとして140mgに相当する量の硫酸アルミニウムを添加し、反応槽に水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.5に保ち、汚泥返送比25で処理を行った。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は1.00重量%であり、処理水のフッ素濃度は3.9mg/Lであった。フッ素含有排水1Lあたりの汚泥の発生量は1,000mgであり、汚泥の含水率は60重量%であった。
実施例7
図2に示す装置を用いて、実施例6と同じフッ素含有排水の処理を行った。フッ素含有排水の通水量3L/hで装置に供給し、各槽の液量は、前段の反応槽1L、凝集槽1L、混合槽0.3Lとし、後段の反応槽1L、凝集槽1L、混合槽0.3Lとし、2つの沈殿池の水面積負荷はいずれも1mとした。
前段の処理においては、供給するフッ素含有排水1Lに対し、凝集槽において、高分子凝集剤[栗田工業(株)、アニオンポリマーPA311]3mgを添加し、混合槽において、消石灰400mgを添加し、反応槽に塩酸を添加してpH6.5に保ち、汚泥返送比300で処理を行った。定常状態に達したとき、沈殿池から上澄水として流出する一次処理水のフッ素濃度は12.1mg/Lであった。
後段の処理においては、前段に供給するフッ素含有排水1Lに対し、凝集槽において、高分子凝集剤[栗田工業(株)、アニオンポリマーPA311]3mgを添加し、混合槽において、アルミニウムとして20mgに相当する量の硫酸アルミニウムを添加し、反応槽に水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH6.5に保ち、汚泥返送比200で処理を行った。定常状態に達したとき、反応槽の汚泥濃度は1.00重量%であり、処理水のフッ素濃度は3.2mg/Lであった。前段の沈殿池で発生した汚泥と、後段の沈殿池で発生した汚泥を混合して、汚泥の発生量と含水率を測定した。フッ素含有排水1Lあたりの汚泥の発生量は270mgであり、汚泥の含水率は50重量%であった。
実施例6〜7の結果を、第2表に示す。
【0016】
【表2】

【0017】
第2表に見られるように、フッ素濃度50.0mg/Lのフッ素含有排水を一段で処理した実施例6に比べて、前段で消石灰を添加してフッ素をフッ化カルシウムとして除去してフッ素濃度12.1mg/Lの一次処理水としたのち、後段で硫酸アルミニウムを添加して二段処理した実施例7は、汚泥の発生量が約4分の1に減少し、汚泥の含水率も低い。フッ素含有排水のフッ素濃度が高い場合は、あらかじめフッ化カルシウムとしてフッ素の一部を除去しておくことにより、全体としての汚泥の発生量を減少し得ることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明のフッ素含有排水の処理方法及び処理装置によれば、フッ素含有排水をアルミニウム系凝集剤で処理してフッ素を除去するに際して、発生する汚泥の一部にアルミニウム系凝集剤を添加して反応工程に返送することにより、処理水のフッ素濃度を低下させ、発生する汚泥の含水率を低減することができる。フッ素含有排水のフッ素濃度が高いときは、前段においてカルシウム化合物で処理してフッ素の一部をフッ化カルシウムとして除去
したのち、一次処理水を同様にしてアルミニウム系凝集剤を用いて処理することにより、全体としての汚泥発生量を減少し、汚泥の含水率を低減することができる。
【符号の説明】
【0019】
1 原水槽
2 反応槽
3 凝集槽
4 沈殿池
5 混合槽
6 原水槽
7 反応槽
8 凝集槽
9 沈殿池
10 混合槽
11 原水槽
12 反応槽
13 凝集槽
14 沈殿池
15 混合槽
16 一次処理水槽
17 反応槽
18 凝集槽
19 沈殿池
20 混合槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有排水に、返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を供給して、汚泥濃度0.1重量%以上の条件で、かつpH5〜9で反応させる反応工程、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加する凝集工程、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する工程、及び、固液分離された汚泥の一部を返送する汚泥返送工程を有するフッ素含有排水の処理方法において、汚泥返送工程の返送汚泥にアルミニウム系凝集剤を添加して返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を反応工程に供給することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
【請求項2】
フッ素含有排水をカルシウム化合物で処理してフッ素をフッ化カルシウムとして除去する工程、該工程の一次処理水に、返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を供給して、汚泥濃度0.1重量%以上の条件で、かつpH5〜9で反応させる反応工程、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加する凝集工程、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する工程、及び、固液分離された汚泥の一部を返送する汚泥返送工程を有するフッ素含有排水の処理方法において、汚泥返送工程の返送汚泥にアルミニウム系凝集剤を添加して返送汚泥とともにアルミニウム系凝集剤を反応工程に供給することを特徴とするフッ素含有排水の処理方法。
【請求項3】
フッ素含有排水を導入し、該フッ素含有排水を、返送汚泥とともに供給されたアルミニウム系凝集剤と汚泥濃度0.1重量%以上の条件で、かつpH5〜9で反応させる反応槽、反応工程後の水に高分子凝集剤を添加してフロックを凝集させる凝集槽、凝集工程後の凝集フロックを含有する水を固液分離する固液分離装置、及び、固液分離された汚泥の一部を返送する汚泥返送路を有するフッ素含有排水の処理装置において、汚泥返送路の途中に返送汚泥に前記アルミニウム系凝集剤を混合する混合槽を有し、アルミニウム系凝集剤が混合された返送汚泥を反応槽に供給することを特徴とするフッ素含有排水の処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−75928(P2010−75928A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270602(P2009−270602)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【分割の表示】特願2003−360856(P2003−360856)の分割
【原出願日】平成15年10月21日(2003.10.21)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】