説明

フューエルデリバリパイプ

【課題】インジェクタ噴射時におけるパイプ本体の倒れ込みを防ぐとともに、連通孔を廃止して加工性を向上させる。
【解決手段】本発明は、シリンダヘッドに固定されるフューエルデリバリパイプ20であって、燃料を通す主管孔21Aが内部に形成されたパイプ本体21と、主管孔21Aに連通したインジェクタ孔24Aが内部に形成され、インジェクタ23が取り付け固定されるインジェクタ取付部24と、シリンダヘッドに設置される設置面25を有し、この設置面25を貫通するようにボルト孔22Aが形成されており、このボルト孔22Aにボルトを通してシリンダヘッドにボルト締結することにより、パイプ本体21をシリンダヘッドに取り付け固定するボルト取付部22とを備え、ボルト取付部22の設置面25は、インジェクタ孔24Aの軸線L2上に配設されている構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フューエルデリバリパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関に用いられるフューエルデリバリパイプとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このフューエルデリバリパイプは、燃料を通す主管孔が内部に形成されたパイプ本体と、このパイプ本体をシリンダヘッドにボルトで取り付け固定するためのボルト取付部と、インジェクタ孔が内部に形成されたインジェクタ取付部とを備えて構成されている。主管孔とインジェクタ孔は互いに連通しており、インジェクタ取付部の端部にはインジェクタが取り付け固定されることで、主管孔からインジェクタ孔を通ってインジェクタに燃料が供給されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−329930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ボルト取付部の先端、すなわちシリンダヘッドに対する設置面がインジェクタ取付部の軸線から外れた位置に配設されているため、インジェクタ噴射時の反力を受けると、ボルト取付部の設置面を中心とする回り方向への力が作用し、パイプ本体の倒れ込みが発生しやすくなる。
【0005】
また、インジェクタ孔と主管孔を連通させる連通孔を形成するためには、インジェクタ孔の孔径よりも細径のドリルで斜め方向に切削加工をする必要がある。しかしながら、連通孔の加工は、細径ドリルによる深孔加工となるため、切削性が悪化するにもかかわらず、高精度な加工が要求される。さらに、主管孔と連通孔の交差部にバリが発生しやすくなり、このバリ取り作業が極めて困難になる。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、インジェクタ噴射時におけるパイプ本体の倒れ込みを防ぐとともに、連通孔を廃止して加工性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、シリンダヘッドに固定されるフューエルデリバリパイプであって、燃料を通す主管孔が内部に形成されたパイプ本体と、主管孔に連通したインジェクタ孔が内部に形成され、主管孔からインジェクタ孔を通って燃料が送り込まれるインジェクタが取り付け固定されるインジェクタ取付部と、シリンダヘッドに設置される設置面を有し、この設置面を貫通するようにボルト孔が形成されており、このボルト孔にボルトを通してシリンダヘッドにボルト締結することにより、パイプ本体をシリンダヘッドに取り付け固定するボルト取付部とを備え、ボルト取付部の設置面は、インジェクタ孔の軸線上に配設されている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によると、インジェクタから燃料を噴射した時にインジェクタ取付部を介してパイプ本体がインジェクタ孔の軸線方向に力を受けることになるものの、ボルト取付部の設置面をインジェクタ孔の軸線上に配設しているから、ボルト取付部の設置面を中心とする回り方向への力が作用することはない。したがって、パイプ本体の倒れ込みを防ぐことができる。
【0009】
また、ボルト取付部の設置面をインジェクタ孔の軸線上に配設したことにより、主管孔とインジェクタ孔を直結することができ、これらを連通させる連通孔を廃止することができる。この結果、極めて困難なバリ取り作業などが不要になり、加工性を向上させることができる。
【0010】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
インジェクタ取付部は、インジェクタ孔の軸線が主管孔の軸線に対して直交するように配設されている構成としてもよい。
このような構成によると、インジェクタ孔をドリルで加工する際に加工方向に力をかけやすく、主管孔とインジェクタ孔の交差部にバリが発生しにくくなる。
【0011】
ボルト取付部は、ボルト孔の軸線がインジェクタ孔の軸線に対して斜め方向となるようにパイプ本体に配設されている構成としてもよい。
このような構成によると、主管孔とボルト孔が重なり合うことを回避しつつ、ボルト孔をドリルで切削加工することができる。
【0012】
ボルト取付部は、主管孔の軸線方向においてインジェクタ取付部の近傍に配設されている構成としてもよい。
このような構成によると、パイプ本体がインジェクタ孔の軸線方向に力を受けた場合に、その力をボルト取付部でしっかりと受け止めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、インジェクタ噴射時におけるパイプ本体の倒れ込みを防ぐとともに、連通孔を廃止して加工性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】フューエルデリバリパイプが自動車の車体に取り付けられた状態を示す斜視図
【図2】フューエルデリバリパイプの正面図
【図3】フューエルデリバリパイプの内部構造を正面から見た断面図
【図4】図2におけるA−A線断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図4の図面を参照しながら説明する。図1は、本発明のフューエルデリバリパイプ20などの燃料系部品が自動車10の車体11に取り付けられた状態を示している。燃料系部品は、燃料タンク12からエンジン13に向けて燃料を供給する部品であり、燃料供給ポンプ14、燃料移送管P1、燃料移送管P2、燃料帰還管P3、フィルタ15、圧力調整装置16などを備えて構成されている。
【0016】
燃料供給ポンプ14は、車体11の後部に配置された燃料タンク12の内部に配置され、車体11の前部に配置されたエンジン13に燃料を送り込むために加圧する装置である。燃料供給ポンプ14により加圧された燃料は、燃料移送管P1によって燃料タンク12からエンジン13に移送される。燃料移送管P1によって移送された燃料は、フィルタ15によって濾過され、圧力調整装置16と燃料移送管P2とを介してフューエルデリバリパイプ20に供給される。フューエルデリバリパイプ20に供給される際の圧力は、圧力調整装置16によって一定の圧力に調整されている。
【0017】
フューエルデリバリパイプ20は、図2に示すように、筒状をなすパイプ本体21を有し、パイプ本体21には、複数のボルト取付部22が設けられている。ボルト取付部22の内部には、ボルト(図示せず)を通すボルト孔22Aが貫通して形成されている。このボルト孔22Aにボルトを通してシリンダヘッドにボルト締結することで、パイプ本体21がシリンダヘッドに固定される。また、パイプ本体21の内部には、その軸心に沿って主管孔21Aが形成されている。なお、以下の説明において前後方向とは、主管孔21Aの軸線方向をいうものとする。主管孔21Aの前後方向における一端は閉じられているものの、同他端には燃料移送管P2に接続される接続口が形成されている。
【0018】
また、パイプ本体21におけるボルト取付部22の前後両側には、一対のインジェクタ取付部24,24が設けられている。各インジェクタ取付部24,24は、前後方向においてボルト取付部22の近傍に配設されている。インジェクタ取付部24は筒状をなし、その下端は下方に開口している。一方、インジェクタ取付部24の上端は、パイプ本体21の下端部に連なって一体に形成されている。インジェクタ取付部24の内部には、その軸心に沿ってインジェクタ孔24Aが貫通して形成されている。このインジェクタ孔24Aは、主管孔21Aに直結しかつ連通している。
【0019】
インジェクタ取付部24の下端部には、インジェクタ23が取り付け固定されている。インジェクタ23は、エンジン13内に燃料を噴射する燃料噴射装置である。したがって、主管孔21A内に送られた燃料は、各インジェクタ孔24A内に分配して供給され、各インジェクタ孔24Aを通って各インジェクタ23に送られ、各インジェクタ23からエンジン13内に噴射される。
【0020】
主管孔21Aは、図3に示すように、パイプ本体21の母材となる金属製の芯材をその軸心に沿ってドリルで切削加工することで形成したものであり、インジェクタ孔24Aは、芯材から径方向に突出した突出部をその軸心に沿ってドリルで切削加工することで形成したものである。主管孔21Aの軸線とインジェクタ孔24Aの軸線は直交する配置とされているため、インジェクタ孔24Aを形成すると、このインジェクタ孔24Aが主管孔21Aと連通することになる。このように、主管孔21Aとインジェクタ孔24Aは直結されており、主管孔21Aとインジェクタ孔24Aを連通させる連通孔を別途形成する必要はない。
【0021】
ボルト孔22Aの軸線L1は、図4に示すように、インジェクタ孔24Aの軸線L2に対して斜め方向に(約45°の交差角度で)配置されている。ボルト取付部22の下端部には、シリンダヘッドに設置される設置面25が形成されている。この設置面25は、ボルト孔22Aの軸線L1上に配設されている。図4においてボルト孔22Aの軸線L1とインジェクタ孔24Aの軸線L2との交点は、設置面25の中心点と一致している。
【0022】
このような構成によると、インジェクタ23からエンジン13内に燃料が噴射されたときにパイプ本体21が上方へ向かう力を受けることになるものの、この力は、設置面25に直接作用することになる。ここで、設置面25の中心点は、インジェクタ孔24Aの軸線L2上に配設されているため、設置面25を中心とする回り方向の力が作用することはない。したがって、パイプ本体21が設置面25を中心として倒れ込むことを規制できる。
【0023】
また、主管孔21Aとインジェクタ孔24Aを連通させる連通孔を設ける必要がないため、加工性を向上させることができる。また、主管孔21Aの軸線とインジェクタ孔24Aの軸線L2とが直交する配置としているから、インジェクタ孔24Aをドリルで切削加工する際に、インジェクタ孔24Aの軸線方向に力をかけやすくなり、主管孔21Aとインジェクタ孔24Aの交差部にバリが発生しにくくなる。
【0024】
また、ボルト孔22Aの軸線L1がインジェクタ孔24Aの軸線L2に対して斜め方向となっているため、ボルト取付部22とインジェクタ取付部24が重ならないように配設しつつボルト孔22Aをドリルで切削加工することができる。また、インジェクタ取付部24をボルト取付部22の近傍に配設したから、パイプ本体21がインジェクタ23から受ける力をボルト取付部22でしっかりと受け止めることができる。
【0025】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではインジェクタ取付部24がパイプ本体21に対して直交する配置とされているものの、本発明によると、インジェクタ取付部をパイプ本体21に対してやや傾いた姿勢で配設してもよい。
【0026】
(2)上記実施形態ではボルト取付部22がインジェクタ孔24Aの軸線L2に対して斜め方向に真っ直ぐに延びる形態とされているものの、本発明によると、ボルト取付部をL字状に形成してもよい。
【符号の説明】
【0027】
13…エンジン(シリンダヘッド)
20…フューエルデリバリパイプ
21…パイプ本体
21A…主管孔
22…ボルト取付部
22A…ボルト孔
23…インジェクタ
24…インジェクタ取付部
24A…インジェクタ孔
25…設置面
L1…ボルト孔の軸線
L2…インジェクタ孔の軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドに固定されるフューエルデリバリパイプであって、
燃料を通す主管孔が内部に形成されたパイプ本体と、
前記主管孔に連通したインジェクタ孔が内部に形成され、前記主管孔から前記インジェクタ孔を通って燃料が送り込まれるインジェクタが取り付け固定されるインジェクタ取付部と、
前記シリンダヘッドに設置される設置面を有し、この設置面を貫通するようにボルト孔が形成されており、このボルト孔にボルトを通して前記シリンダヘッドにボルト締結することにより、前記パイプ本体を前記シリンダヘッドに取り付け固定するボルト取付部とを備え、
前記ボルト取付部の設置面は、前記インジェクタ孔の軸線上に配設されていることを特徴とするフューエルデリバリパイプ。
【請求項2】
前記インジェクタ取付部は、前記インジェクタ孔の軸線が前記主管孔の軸線に対して直交するように配設されていることを特徴とする請求項1に記載のフューエルデリバリパイプ。
【請求項3】
前記ボルト取付部は、前記ボルト孔の軸線が前記インジェクタ孔の軸線に対して斜め方向となるように前記パイプ本体に配設されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のフューエルデリバリパイプ。
【請求項4】
前記ボルト取付部は、前記主管孔の軸線方向において前記インジェクタ取付部の近傍に配設されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のフューエルデリバリパイプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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