説明

フライヤー用油容器

【課題】 余熱による比較的高温状態の揚げ物油であっても、迅速かつ安全に移し換えることができ、しかも、移し換え時における縁部の油垂れを防止することができるフライヤー用油容器を提供すること。
【解決手段】 容器本体1の開口部11aの周縁からは注ぎ出し片2を突設し、かつ、この注ぎ出し片2には、所定幅の水平かつ直線状の注ぎ縁部21を形成し、前記容器本体1の注ぎ出し側に近い前方上部には当該容器本体1を吊支可能な把手部3を配設する一方、前方底面には掛止凸部4を形成し、油Aが収容された容器本体1を前記油槽Tの肩縁部に載置して、前記掛止凸部4を掛止したときに、接地面に平行する前記注ぎ縁部21が水平に保持される一方、当該掛止凸部4を支点にして容器本体1の後方を持ち上げて前方に傾倒させることによって、収容された油Aを前記注ぎ出し片2から層流状態で排出可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライヤーに用いる油容器の改良、更に詳しくは、余熱による比較的高温状態の揚げ物油であっても、迅速かつ安全に移し換えることができ、しかも、移し換え時における縁部の油垂れを防止することができるフライヤー用油容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、飲食店や食品加工工場などの厨房においては、揚げ物料理を調理するための業務用器具としてフライヤーが使用されており、このフライヤーの油槽内の油は調理を重ねるうちに次第に汚れてくるため、一旦油槽から所定の油入れ容器(所謂「油缶」)に抜き出して、油槽を清掃した後、再び油槽に戻す作業を行っている。
【0003】
このような従来の油の移し換え作業の際は、油の入った容器を手で持ち上げ、ひっくり返すことによって油槽内に油を戻していたが、かかる容器は円筒や角形の有底容器であったため、油を移し換え終える際に、油の粘性によって油のしずくが容器の縁に垂れてしまうという問題があり、このように垂れた油はベタ付いていて、綺麗に拭き取る作業は甚だ煩わしかった。
【0004】
また、油の温度が下がると粘度が大きくなって流動性が悪くなり余計に垂れやすくもなるので、良好な作業性を得るためには、余熱により油が比較的高温であるうちに移し換える必要があるため、作業者の安全性も要求されている。
【0005】
そこで、従来、作業者が油の容器を直接持ち上げることなく、ポンプにより油の濾過および循環をさせて、油を移し換えることができる機械的な装置が開発された(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、かかる装置を導入するには、購入コストがかかると共に、油がホースなどに目詰まりして機械を故障させるおそれもあり、メンテナンスにもコストがかかってしまうという問題がある。
【0007】
また、比較的小ロットで生産している場合には、フライヤー内の油量も些程多くはないため、手作業でも移し換えることができ、簡素で安価な器具で十分である。
【特許文献1】特開2001−205020号公報(第2−5頁、図1−2)
【特許文献2】特開2001−327414号公報(第2−6頁、図1−4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、従来のフライヤーに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、余熱による比較的高温状態の揚げ物油であっても、迅速かつ安全に移し換えることができ、しかも、移し換え時における縁部の油垂れを防止することができるフライヤー用油容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段を添付図面を参照して説明すれば次のとおりである。
【0010】
即ち、本発明は、油槽Tを有するフライヤーFにおいて、当該油槽T内から排出される油Aを収容可能な容器であって、
容器本体1の前方側壁面11には開口部11aを形成して、この開口部11aの周縁からは注ぎ出し片2を突設し、かつ、この注ぎ出し片2には、所定幅の水平かつ直線状の注ぎ縁部21を形成し、
前記容器本体1の注ぎ出し側に近い前方上部には当該容器本体1を吊支可能な把手部3を配設する一方、同容器本体1の前方底面には掛止凸部4を形成し、
油Aが収容された容器本体1を前記油槽Tの肩縁部に載置して、前記掛止凸部4を掛止したときに、接地面に平行する前記注ぎ縁部21が水平に保持される一方、
当該掛止凸部4を支点にして容器本体1の後方を持ち上げて前方に傾倒させることによって、収容された油Aを前記注ぎ出し片2から層流状態で排出可能に構成するという技術的手段を採用したことによって、フライヤー用油容器を完成させた。
【0011】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の上面開口部10の前方側に蓋部材13を配設するという技術的手段を採用した。
【0012】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、把手部3の両端部を、容器本体1の前方の上面開口部10縁部にそれぞれヒンジ連結して架設するという技術的手段を採用した。
【0013】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、注ぎ出し片2の側壁板22・22の形状をそれぞれ略台形形状に形成して、かつ、開口断面を上面視長方形にするという技術的手段を採用した。
【0014】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の前方底面にキャスター部材5を配設して、かつ、このキャスター部材5の配設箇所に掛止凸部4を形成する一方、後方底面にはアンカー突起6を形成するという技術的手段を採用した。
【0015】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、容器本体1の後方側壁面12に第二把手部7を形成するという技術的手段を採用した。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、容器本体の前方側壁面には開口部を形成し、この開口部の周縁からは注ぎ出し片を突設して、かつ、この注ぎ出し片には、所定幅の水平かつ直線状の注ぎ縁部を形成し、前記容器本体の注ぎ出し側に近い前方上部には当該容器本体を吊支可能な把手部を配設する一方、同容器本体の前方底面には掛止凸部を形成したことによって、
油を収容した容器本体を前記油槽の肩縁部に載置して、前記掛止凸部を掛止したときに、接地面に平行する前記注ぎ縁部が水平に保持される一方、当該掛止凸部を支点にして容器本体の後方を持ち上げて前方に傾倒させることによって、収容された油を前記注ぎ出し片から層流状態で排出することができる。
【0017】
したがって、本発明の油容器を使用することにより、余熱による比較的高温状態の揚げ物油であっても、迅速かつ安全に移し換えることができ、しかも、移し換え時における縁部の油垂れを防止することができることから、実用的利用価値は頗る高いものがある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態を具体的に図示した図面に基づいて更に詳細に説明すると、次のとおりである。
【0019】
本発明の実施形態を図1から図8に基づいて説明する。本発明は、油槽Tを有するフライヤーFにおいて、当該油槽T内から排出される油Aを収容可能な容器であって、まず、容器の構成について説明する。
【0020】
図中、符号1で指示するものは容器本体であり、この容器本体1はステンレス製の容器であって、容器本体1の前方側壁面11には、略長方形の開口部11aが形成されている。また、油槽Tから排出された油Aを収容できるように、上面開口部10が設けられている(図1参照)。
【0021】
また、符号2で指示するものは前記容器本体1の開口部11aの周縁から突設される注ぎ出し片であり、この注ぎ出し片2には、所定幅の水平かつ直線状の注ぎ縁部21が形成されており、本実施形態では、注ぎ出し片2の側壁板22・22の形状をそれぞれ略台形形状に形成して(図2参照)、かつ、開口断面が上面視長方形になるように、金属折曲板を溶接一体化して作製する(図3および図4参照)。
【0022】
更にまた、符号3で指示するものは把手部であり、この把手部3は前記容器本体1の重心よりも注ぎ出し側に近い前方の上部に配設されており、当該容器本体1を手で持って吊支可能である。本実施形態では、把手部3の両端部を、容器本体1の前方の上面開口部10縁部にそれぞれヒンジ連結して架設する。
【0023】
更にまた、符号4で指示するものは掛止凸部であり、この掛止凸部4は容器本体1の前方底面に形成されている。機能的には、容器本体1の底面から突成して、この凸部が掛止することにより前方への摺動を規制するものである。本実施形態では、容器本体1の前方底面にキャスター部材5を配設して、かつ、このキャスター部材5の配設箇所に掛止凸部4を形成する。
【0024】
そして、更に、容器本体1の後方底面にはアンカー突起6を形成する。このアンカー突起6は、通常時における容器本体1の横滑りを防止するために底面に設けられる部材であり、本実施形態では、金属板をV字型に折曲して溶接一体化したものである。更にまた、本実施形態では、容器本体1の後方側壁面12に第二把手部7を形成する。
【0025】
次に、本発明の油容器を使用する手順について、以下に説明する。まず、本発明の油容器をフライヤーFの油槽Tの下部に設置しておき、この油槽T内から油Aを排出する。通常は、油槽Tの底面にドレンが設けられ、このドレンコックを解除することにより排出される。
【0026】
この際、油Aはあまり低温になり過ぎると、粘度が上がって流動性が悪くなり、硬化してしまう場合もあるので、比較的高温(90°C程度以上)に保つことが良好な作業性を得るために必要である。また、油Aを排出する際には、適宜、濾過作業をすることが好ましい。
【0027】
そして、容器本体1が油Aで一杯になったところで(本実施形態では、25〜28リットル)、容器本体1の後方側壁面12に設けられた第二把手部7を持ち上げてアンカー部材6を地上から浮かし上げるとともに、手前方向に引き出す(図5参照)。この際、キャスター部材5を配設することにより、引き出し作業を円滑に行うことができる。
【0028】
そして、把手部3と第二把手部7とを持って、油Aが収容された容器本体1を持ち上げる。本実施形態では、総重量として約20〜30kgであり、人力でも簡単に持ち上げることができる。
【0029】
そして、図6に示すように、容器本体1を前記油槽Tの肩縁部に載置して、この肩縁部に容器本体1の前方底面に形成した掛止凸部4を掛止させる。この際、前記注ぎ出し片2の注ぎ縁部21は、所定幅(本実施形態では、約10cm)で水平かつ直線状に形成されている一方、油槽Tの肩縁部は水平であるゆえ、其処に載置された容器本体1の接地面と平行になっている注ぎ出し片2の注ぎ縁部21は、水平に保持されることになる。
【0030】
然る後、図7に示すように、油槽Tの肩縁部に掛止した掛止凸部4を支点にして容器本体1の後方(第二把手部7)を持ち上げて前方に傾倒させる。この傾倒運動をする場合でも、注ぎ出し片2の注ぎ縁部21は常に水平な状態に保持されている。また、この際、把手部3をヒンジ連結することによって、傾倒運動をスムースにすることができる。
【0031】
すると、収容された油Aを前記注ぎ出し片2から層流状態で排出することができる(図8参照)。即ち、排出される油Aの油面と、注ぎ縁部21とが略平行になるため、どの地点においても略一様な流速で排出されることになり、層流状態を巧みに作り出すことができるのである。
【0032】
そして、油Aをすべて排出し終える間際においては、注ぎ縁部21が直線状であって、かつ、これを垂直に横切るようにして油Aが流れるため、最後の油滴頭部の表面張力の作用は、注ぎ縁部21を越壁して表面に回り込む方向(垂れる方向)よりも、容器内に戻る方向に対して大きく働くために、切れが良く、油垂れを効果的に防止することができるのである。
【0033】
なお、本実施形態では、移し換え作業の際に勢い良く傾け過ぎて油が溢れないように、容器本体1の前方側における上面開口部に蓋部材13を配設することができる。
【0034】
このように、本実施形態の油容器は、容器本体1をフライヤーFの油槽Tの肩縁部に載置して、かつ、掛止凸部4を支点として傾倒させるだけでいいので、少ない力で操作することができるとともに、安全性も非常に高い。
【0035】
本発明は概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、把手部3や第二把手部7における金属部分が熱伝導により加熱されて、火傷するのを防止するために、クリアランスを設けて溶接したり、耐熱性ゴムなどをコーティングすることもできる。
【0036】
また、キャスター部材5を設ける方が作業性が良いが、キャスター部材5を設けない場合であっても、掛止凸部4は容器本体1の底面に突設されていれば、油槽Tの肩縁部に掛止させることができ、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施形態の油容器を表わす全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態の油容器を表わす全体側面図である。
【図3】本発明の実施形態の油容器を表わす全体上面図である。
【図4】本発明の実施形態の油容器を表わす全体正面図である。
【図5】本発明の実施形態の油容器の使用状態を表わす斜視図である。
【図6】本発明の実施形態の油容器の使用状態を表わす側面図である。
【図7】本発明の実施形態の油容器の使用状態を表わす側面図である。
【図8】本発明の実施形態の油容器の使用状態を表わす斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 容器本体
10 上面開口部
11 前方側壁面
11a 開口部
12 後方側壁面
13 蓋部材
2 注ぎ出し片
21 注ぎ縁部
22 側壁板
3 把手部
4 掛止凸部
5 キャスター部材
6 アンカー突起
7 第二把手部
F フライヤー
T 油槽
A 油

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油槽Tを有するフライヤーFにおいて、当該油槽T内から排出される油Aを収容可能な容器であって、
容器本体1の前方側壁面11には開口部11aが形成されており、この開口部11aの周縁からは注ぎ出し片2が突設されており、かつ、この注ぎ出し片2には、所定幅の水平かつ直線状の注ぎ縁部21が形成されており、
前記容器本体1の注ぎ出し側に近い前方上部には当該容器本体1を吊支可能な把手部3が配設されている一方、同容器本体1の前方底面には掛止凸部4が形成されており、
油Aが収容された容器本体1を前記油槽Tの肩縁部に載置して、前記掛止凸部4を掛止したときに、接地面に平行する前記注ぎ縁部21が水平に保持される一方、
当該掛止凸部4を支点にして容器本体1の後方を持ち上げて前方に傾倒させることによって、収容された油Aを前記注ぎ出し片2から層流状態で排出可能に構成したことを特徴とするフライヤー用油容器。
【請求項2】
容器本体1の上面開口部10の前方側に蓋部材13が配設されていることを特徴とする請求項1記載のフライヤー用油容器。
【請求項3】
把手部3の両端部が、容器本体1の前方の上面開口部10縁部にそれぞれヒンジ連結されて架設されていることを特徴とする請求項1または2記載のフライヤー用油容器。
【請求項4】
注ぎ出し片2の側壁板22・22の形状がそれぞれ略台形形状に形成されており、かつ、開口断面が上面視長方形であることを特徴とする請求項1〜3の何れか一つに記載のフライヤー用油容器。
【請求項5】
容器本体1の前方底面にキャスター部材5が配設され、かつ、このキャスター部材5の配設箇所に掛止凸部4が形成されている一方、後方底面にはアンカー突起6が形成されていることを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のフライヤー用油容器。
【請求項6】
容器本体1の後方側壁面12に第二把手部7が形成されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一つに記載のフライヤー用油容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−195593(P2009−195593A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42739(P2008−42739)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(591206083)株式会社タニコーテック (3)
【Fターム(参考)】