説明

フラッシュランプ

【課題】 形状が円盤状である被照射物に光照射するに適し、寿命末期において電極スパッタにより発光管内面黒化が生じ電極周辺部の発光領域の照度低下が起きたとしても有効発光領域には影響が無く、高い均斉度が保持されるフラッシュランプを提供する。
【解決手段】 電極先端位置を有効発光領域から、少なくとも内面黒化が想定される領域の長さの分だけ離す。すなわち、有効発光部の両端に連設される当該ランプ発光管の端部を有効発光部に対して同じ方向に垂直に屈曲させ、かつ該端部を前記長さの分だけ延長し、その分だけ内部の電極先端位置を発光管外端側へ引っ込めることによって、電極先端周辺の放電空間が有効発光部に掛からない構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラッシュランプの性能改善に関するものであり、特に情報記録媒体の円盤ディスクピースの貼り合せ工程に用いられる円環形フラッシュランプの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、円盤状情報記録媒体、例えば、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)の製造における円盤ディスクピースの貼り合せ工程(以下、単に「ディスク貼り合せ工程」という)においては、少なくとも一方が情報記録層を有する2枚のディスクピースの間に接着剤である光硬化性樹脂を介在させて両ディスクピースを重ね合わせ、これに光を照射することにより光硬化性樹脂を硬化させて両ディスクピースを貼り合わせ一体化させてDVDディスクが製造されている。
また、ディスクピースの材料としては、光学的に十分透明で複屈折を制御し易いポリカーボネイト樹脂やアクリル樹脂等が用いられている。
【0003】
このディスク貼り合せ工程に用いられる光源には、光硬化性樹脂を硬化させるのに十分な強度のエネルギーの光をある程度短時間で照射できるだけでなく、熱変形し易い材料から構成されるディスクピースの温度を過度に上昇させないという相反する特性を備えることが要求される。そこで、こうした条件を備える光源として、例えば、フラッシュランプ(閃光放電ランプ)は最適である。このランプは樹脂硬化に必要な紫外線を瞬時にしかも非常に高い強度で照射することができ、一方、被照射物であるディスクピースは瞬時に光照射を受けるので、高温にならず、熱変形を起こさない。
【0004】
このようなランプの一例としては、例えば、放電容器(発光管)内に放電物質としてのキセノンガスを封入して構成した特許文献1に記載のキセノンフラッシュランプが知られており、ディスク貼り合せ工程等に使用されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−117156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ディスク貼り合せ工程では光硬化性樹脂の硬化により2枚のディスクピースの接着を行なうが、被処理物の照射面における照度分布は通常より高度な均斉度が要求される。これは、均斉度が低いと、被処理物に反りが生じ、次工程で不良となり、また同じショット数でも接着剤が硬化せず剥れる部分ができてしまうからである。被処理物の照射面における照度の均斉度を低下させる原因としては、ランプ寿命末期における電極スパッタによって電極周辺部の発光管内面が黒化し、その部分が著しい照度低下をもたらすためである。
【0007】
ところで、ディスク貼り合せ工程に使用される従来のキセノンフラッシュランプは、典型的な例が特許文献1に示されているが、発光管が独特の形状を有しており、有効発光部は一つの平面上で螺旋形(渦巻き形)、円環またはそれらの組合せから成る形状に形成され、その両端にはそれぞれ、内部に電極を保持する端部がその平面に対して同じ方向に垂直に屈曲して連設されていた。そして、その電極の先端部(先端面)は、有効発光部を構成する発光管内部の放電空間の端に接する位置まで突き出した状態にあった。このため、有効発光部を構成する発光管内部の放電空間の端は、事実上発光管の端にも相当し、寿命末期において電極スパッタが生じると発光管端部の内面が黒化し、その部分が照度低下をもたらすため、被照射面に照度分布の均斉度を低下させるという問題があった。
【0008】
電極スパッタを抑制するには、(a)封入ガス圧を上げる方法や(b)電極動作温度を下げる方法がある。しかし、(a)の方法では電源電圧の制約(充電電圧は最大3600V、最小3000V;トリガー電圧16kV)により封入ガス圧の上限が決められてしまうため、ガス圧増加によるスパッタ抑制には限界があり、大きな効果は期待できない。また(b)の方法は、ランプ製造時に電極近傍の発光管をシュリンクし、発光管内表面と電極外表面を近付け電極を冷却することで電極スパッタを抑制することが考えられるが、このランプはロッドシールタイプであるため、シュリンクの際にバーナーで火を均等に当てることが難しいため不可能である。
【0009】
そこで本発明では、上記課題を解決するために、形状が円盤状である被照射物に光照射するに適したフラッシュランプにおいて、寿命末期において電極スパッタにより発光管内面黒化が生じ電極周辺部の発光領域の照度低下が起きたとしても有効発光領域には影響が無く高い均斉度が保持されるフラッシュランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、電極先端位置を有効発光領域から、少なくとも内面黒化が想定される領域の長さの分だけ離す構成とする。具体的には、有効発光部の両端に連設される当該ランプ発光管の端部を有効発光部に対して同じ方向に垂直に屈曲させた上で、該端部を前記長さの分だけ延長し、その分だけ内部の電極先端位置を発光管外端側へ引っ込めることによって、電極先端周辺の放電空間が有効発光部に掛からない構成とする。
【0011】
すなわち、本発明のフラッシュランプは、
石英ガラス製管材料から連続形成される部位であって、前記管の中心軸が実質的に同一平面P上にあり連続して形成されると共に少なくとも一部が螺旋形(渦巻き形)、円環またはそれらの組合せから成る形状に形成された有効発光部と、該有効発光部の両端にそれぞれ連設し、いずれも前記平面Pに対して同じ方向に垂直に屈曲して形成され、それぞれに先端がランプ点灯時に形成される放電空間を臨むように突設配置された陽極または陰極を備える端部と、から構成される発光管を備え、該発光管内部にキセノンガスを封入して成るフラッシュランプにおいて、
前記陽極および陰極はいずれも、先端部とこれを支持する電極芯棒とから構成され、先端部が円柱形状を有し、先端部と電極芯棒とは同軸でありかつ前記端部の中心軸とも同軸であり、その先端面は、前記平面Pと実質的に平行であり、かつ、前記端部を構成する前記管の中心軸を含み前記平面Pに垂直な断面において、前記有効発光部を構成する発光管の内壁のうち屈曲した前記端部に近い方の内壁を含む平面P1との距離Tを有して、前記各端部の外端側に引っ込んだ位置に配置され、
さらに、前記発光管の外面に、ランプ点灯時に該発光管内部に形成される放電路に沿うように巻回された金属線と、前記金属線の両端のそれぞれを支持し該金属線と電気的に接続されると共に、前記陽極及び陰極の先端部外周をそれぞれ前記端部の外面で囲繞するような位置に配置される一対の帯状金属板と、から成る外部始動補助電極を備え、前記陰極に近い側の帯状金属板の端縁に結合されたリード線並びに、該リード線に延設された端子を具備する、ことを特徴とする。
【0012】
また本発明のフラッシュランプは、
陰極の先端部はタングステンを主成分とする焼結体で構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、有効発光部に対して同じ方向に垂直に屈曲して連設されるランプ発光管の端部が所定の長さ(距離T)だけ延長され、その分だけ電極先端位置を発光管外端側へ引っ込めてあるので、電極先端周辺の放電空間が有効発光部として機能しないため、寿命末期において電極スパッタにより電極周辺部の発光領域の照度低下が起きたとしても有効発光領域には影響が無く高い均斉度が保持されるフラッシュランプを提供することができる。
【0014】
また電極先端位置を有効発光部から離したことにより、外部始動補助電極の端部を、発光管の屈曲部を避け、発光管外面上で陰極先端部に最接近して配置させることができるようになるので、絶縁破壊しやすくなり寿命末期においても安定した始動性が得られる。
【0015】
陰極先端がタングステンを主成分とする焼結体で構成されている場合には、陰極先端に電子放射物質を多量に保持できるので、ランプの寿命特性を向上させることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態のフラッシュランプ全体外形を示す斜視図である。
【図2】図1に示すランプの模式的外観側面図である。
【図3】図2の側面図の要部の模式的断面図である。
【図4】本発明の実施形態のフラッシュランプの初期の照度分布を示す図である。
【図5】フラッシュランプからの光の照射領域の均斉度評価における照度測定点を示す模式図である。
【図6】フラッシュランプの点灯回数による均斉度の変化を示すグラフである。
【図7】フラッシュランプの点灯回数による照度維持率の変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
<実施例>
図1は本発明の実施形態のフラッシュランプで、ディスク貼り合せ工程に使用されるキセノンフラッシュランプの一例を示すランプ全体外形の概略斜視図である。図2は、便宜上、図1に示すランプの上下を逆転させ、これを側面から見た状態を示す模式的外観側面図である。図3は、図2の側面図の陰極近傍(発光管屈曲部周辺)を拡大して示す模式的断面図である。
【0019】
発光管1は、全体が概略二重円環形状を有し、外径Io=10mm、内径I=8mmのオゾンレス石英管から形成され、内管部11と外管部12と、それらの一端を相互に繋ぐ連絡部13と、それらの他端近傍にそれぞれ垂直上方に立設された端部16、17とから構成されている。内管部11と外管部12は、若干の寸法的歪みはあるものの、管の中心が実質的に同一平面P上に位置し(図2、図3参照)、ほぼ精確な二重円環を形成している(図1参照)。端部16側には陽極3とこれを同軸上で支持する電極芯棒36が、端部17側には陰極4とこれを同軸上で支持する電極芯棒46が設けられている。
【0020】
また端部16、17の外端には、電極芯棒36、46と端部16、17の発光管外端とを封止する、図には表われていない封止部75、76が存在し、この封止部75、76の外周にこれを囲繞するようにベース71、72がそれぞれ配置されている。電極芯棒36、46の外端はそれぞれ端子37、47に電気的に接続している。なお、図1では、発光管1外面上に巻回されている金属線9とその両端を支持する帯状金属板51、52とから構成される外部始動補助電極(後述)は省略され、また端部16、17の外端側はベース71、72より先の構造を示していない。
【0021】
陽極3は、例えば外径φ7.5mmの純タングステン製棒状部材から構成される。陰極4は、陽極3と同径の純タングステン製棒状部材から構成される基部42と、円柱状焼結体から構成される先端部41とを結合させて、全体としては陽極3と同じ長さに構成される。このうち先端部41は、その長さを例えば陰極4の全長の1/5程度とし、その外径を基部42と同径または幾分小さくしてもよい。先端部41の焼結体は、ランプの始動性改善のために設けたものであって、純タングステンを主成分としこれに金属複合酸化物BaO・Alを少量含有させた混合物から構成される。
【0022】
発光管1内部にはキセノンガスが数10kPa封入され、陽極3と陰極4との間に電力が投入されると、陽極3と陰極4との間の放電路全体が発光し発光領域2が形成される。光照射時に被照射物であるディスク円盤は、発光管の二重円環が形成する平面Pと実質的に平行に配置されるので、発光領域2のうち、陽極3と陰極4近傍を含む端部16、17の放電領域から発せられる光は、端部16、17が平面Pに対して共に垂直上方に屈曲しているために、被照射物表面に直接届かず、有効に寄与しない。そこで、この領域を除いた発光領域を区別して有効発光部21と呼ぶことにする。
【0023】
有効発光部21は、発光管1の、二重円環を形成する内管部11と外管部12、及び連絡部13とから構成される連続した部分を指し、その直下に搬送されたディスク円盤面に直射光が照射される。有効発光部21を構成する発光管1の内壁のうち垂直上方に屈曲した端部16、17に近い方の内壁、すなわち図3(上下を逆にして描かれている)の断面図において発光管上面側の内壁を含む平面P1を想定すると、端部16、17の、平面P1からの突出し長はいずれも例えば60mmである。陽極3及び陰極4(先端部41)の先端面はいずれも、平面P1に対して幾分引っ込んだ位置にあり(図2参照)、この実施例では平面P1との距離T=5.0mmとしてある。
【0024】
陰極4側の芯棒46の外面には、発光管1内部の不純ガスの吸着のために、ZrAl(ジルコニウムアルミニウム)から成る複合金属を保持したゲッター8が設置されている。
【0025】
発光管1の外面には、ランプ点灯時に発光管1内部に形成される放電路に沿うように金属線9が巻回され、その金属線9の両端はそれぞれ帯状金属板51、52によって支持され帯状金属板51、52と電気的に接続されている。この一対の帯状金属板51,52は、陽極3及び陰極4の先端部外周を端部16、17の外面で囲繞するような位置に配置されている。金属線9は鉄などの3種の金属の合金から構成され、帯状金属板51、52はステンレス製である。金属線9と一対の帯状金属板51、52とが外部始動補助電極を構成する。陰極4側の帯状金属板52にはリード線6並びに端子66が結合されている。なお、図3では、金属線9は、それが発光管1外面上で巻回されている様子を、発光管1に対して手前側かあるいは奥側かの位置関係を分かり易く示すために、断面上では実際に現われない箇所にも誇張して描いてある。
【0026】
陽極側、陰極側共に、端部16、17の発光管内径Iは8mmであり、電極中心軸を発光管端部の中心軸とほぼ一致させるように配置してあり、陽極及び陰極の電極先端面の最大径Dは7.5mmであるから、電極を構成する棒状体(陰極の場合は基部41)の外面と発光管内面との距離(隙間)はいずれも、(8.0−7.5)/2=0.25mmとなっている。
【0027】
キセノンフラッシュランプ10の端子37と47との間に直流電圧を印加し、同時に端子47と66との間にトリガー電圧(直流電圧)を印加すると、キセノンフラッシュランプ10がフラッシュ放電を起こし、キセノンの発光による、遠紫外光を含む紫外光、可視光及び近赤外光を放射する。フラッシュ放電は瞬時に発生し、ランプの始動性は良好であった。
【0028】
フラッシュランプは通常、反射板等が装備された照射器に組み込まれて使用される。図4は、本発明のフラッシュランプを用いた照射器から照射される光の被照射面における初期の照度分布を示したもので、ランプの有効発光部の直下の被照射面における照度の最大値を100%とする相対照度分布を表わしている。グラフ中の数字はパーセンテージである。照射領域の中央部は、相対照度の差が10%以内に収まっており、高い均斉度を示している。被照射物の円盤ディスク材料(DVD用の場合、直径120mm程度)は、照射領域の中央部に配置され、その表面にほぼ均一に光が照射される。電極物質のスパッタ現象が起きていない初期のうちは、本発明のフラッシュランプも、従来のフラッシュランプも、被照射面における照度分布に差はない。
【0029】
ディスク貼り合せ工程におけるキセノンフラッシュランプの使われ方の一例を、2枚のDVD用円盤ディスクを接着剤で貼り合せる場合について説明する。この工程では周知のディスク貼り合せ装置を用いることができる。前工程から搬送された2枚のディスクは、少なくとも一方のディスクの情報記録層が形成された面に、既存の適切な手法で、紫外線硬化性組成物から成る接着剤を均一に塗布しその面を内側にして、円盤の中心軸が互いに一致するようにして他方のディスクと重ね合わせて、貼り合せ装置のフラッシュランプ直下の所定位置に固定する。次いでこの2枚のディスクに両者が十分密着するように上方から均一に荷重を掛ける。そして、キセノンフラッシュランプに接続したランプ点灯装置を適宜操作して同ランプをフラッシュ点灯させ、重ね合わせた2枚のディスクの上方から、紫外線を主体とする光を照射する。ランプの光照射する側の後方には紫外線を反射する紫外線ミラーを設けてもよく、また光照射する側の前方には、ディスクへの熱的影響を避けるため余分な赤外線成分を遮断する赤外線カットフィルターや光照射波長域を制限する紫外線カットフィルターを設けてもよい。
【0030】
陽極および陰極の電極先端面を有効発光部から遠ざけることによってもたらされる効果を調べるため、距離Tを、発光管端部16、17の外端側に向かう方向をプラスに取り、距離Tおよび距離Tが関係する発光管端部16、17の長さ以外の仕様は前記実施例と同じで、T=5.0mm(本発明の実施例)、T=0mm(比較例)、T=−5.0mm(比較例)の3種類のフラッシュランプを作製し、それぞれのランプについて、点灯エネルギー450J、点灯回数が1秒間に3.0回となる条件で1000万回まで連続してフラッシュ点灯させた。
【0031】
その際、図5に示すような照射器を用いて、被照射面全域ができるだけ均等に評価できるように選定した任意の点、計13箇所で波長365nmにおける照度を各点灯回数で測定し、均斉度(=被照射面における最小照度値/被照射面における最大照度値×100)を算出した。図5では、被照射面の照射領域全体とランプ直下に対応する領域とを模式的に示してある。また、被照射面における照度の測定点を破線の丸で囲まれた数字で示してある。
【0032】
この測定の結果、照度の均斉度は点灯回数に対して図6に示すような変化を示した。図中、ランプ1はT=5.0mm、ランプ2はT=0、ランプ3はT=−5.0mmのフラッシュランプである。図6から明らかなように、1日当たり10万回程度点灯という通常の使用頻度における寿命末期に相当する1000万回点灯時点において、均斉度は、T=5.0mmのとき81.5%、T=0のとき77%、T=−5.0mmのとき76.5%であり、電極先端面を有効発光部から遠ざけると、均斉度を向上させることができることが分かった。この結果は、本発明のフラッシュランプでは、有効発光部の発光管内面への電極材料のスパッタの影響が抑制されるためと考えられる。従来のフラッシュランプでは、ランプ発光管端部の電極近傍の被照射面上の照度が点灯回数とともに徐々に低下して行き、このことが均斉度を悪化させる。
【0033】
なお、本発明のフラッシュランプでは、電極材料のスパッタの影響抑制の効果が照度維持率の面でも現われている。図7は、ランプ1〜3について、点灯回数に対する照度維持率の変化を示したものであるが、同図から分かるように、本発明のランプの場合、寿命末期において、15%程度の照度維持率の改善が図られていた。
【0034】
距離Tの大きさを変化させて更に検討を重ねたところ、電極先端面を有効発光部から遠ざければ遠ざけるほど均斉度が向上することが確認できた。発光管内面黒化領域の長さは、10mmないしそれ以上に及ぶこともある。しかし、距離Tを極端に大きくすることは、発光管端部の長さを長くすることに繋がり、ランプが必要以上に大型化するので、距離Tの大きさはランプ寸法の要求仕様に合わせて適宜選定することが好ましい。
【0035】
一方、距離Tを小さくすることに関しては、電極と外部始動補助電極との位置関係の側面からも制約がある。外部始動補助電極の端部の帯状金属板は、電極先端面が有効発光部からある程度離れている場合は、発光管の屈曲部を避けて発光管外面上で電極先端部に最接近して配置させることが可能であるが、電極先端面を有効発光部に近づけ過ぎると、帯状金属板が発光管屈曲部にかかる形になり、電極先端部外周に近接配置することが困難になるので、最小でもおよそ3mm程度離す必要がある。
【0036】
上記説明では、有効発光部の発光管形状が二重円環を基調とした形状であるフラッシュランプの実施例について説明したが、本発明のフラッシュランプはこれに限定されることはなく、有効発光部の発光管形状が多くの円環が組み合わされた多重円環であってもよく、また渦巻き型形状であってもよい。要するに、有効発光部が、円盤状の被照射物に光照射するのに適するように、螺旋形(渦巻き形)、円環またはそれらの組合せから成る形状に形成されていればよい。但し、有効発光部が実質的に同一平面上にあり管状材料から連続して形成されていることが条件である。また、陽極または陰極を有する両発光管端部はいずれも、有効発光部が成す平面に対して同じ方向に垂直に屈曲して形成される。
【0037】
また上記説明の実施例では、陰極が先端部と基部の2つの部材から構成されていたが、本発明では、陰極は、その先端部を焼結体で構成せず、全体を陽極と同じ寸法・形状・材質で一体的に形成してもよい。
【0038】
さらに、上記実施例の説明に記載されたランプの各構成要素は、本発明の趣旨の範囲内で任意に変形することが可能である。上記実施例のフラッシュランプでは、例えば、ランプ発光管の外径と内径の大きさは、図3に示されているように、有効発光部と鉛直上方に屈曲している端部とでそれぞれ互いに同じであったが、本発明では、端部の外径と内径は、有効発光部のそれらと同じである必要はなく、ランプの性能に支障が無い範囲で、例えば有効発光部よりも幾分小さく構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、ディスク貼り合せ工程等の高精度な基材接着工程で紫外線光源として用いられるキセノンフラッシュランプに利用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1…発光管
11…内管部
12…外管部
13…連絡部
16、17…端部
2…発光領域
21…有効発光部
3…陽極
36…電極芯棒
37…端子
4…陰極
41…先端部
42…基部
46…電極芯棒
51、52…帯状金属板
6…リード線
66…端子
71、72…ベース
75、76…封止部
8…ゲッター
9…金属線
10… キセノンフラッシュランプ
P、P1…仮想平面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
石英ガラス製管材料から連続形成される部位であって、前記管の中心軸が実質的に同一平面P上にあり連続して形成されると共に少なくとも一部が螺旋形(渦巻き形)、円環またはそれらの組合せから成る形状に形成された有効発光部と、該有効発光部の両端にそれぞれ連設し、いずれも前記平面Pに対して同じ方向に垂直に屈曲して形成され、それぞれに先端がランプ点灯時に形成される放電空間を臨むように突設配置された陽極または陰極を備える端部と、から構成される発光管を備え、該発光管内部にキセノンガスを封入して成るフラッシュランプにおいて、
前記陽極および陰極はいずれも、先端部とこれを支持する電極芯棒とから構成され、先端部が円柱形状を有し、先端部と電極芯棒とは同軸でありかつ前記端部の中心軸とも同軸であり、その先端面は、前記平面Pと実質的に平行であり、かつ、前記端部を構成する前記管の中心軸を含み前記平面Pに垂直な断面において、前記有効発光部を構成する発光管の内壁のうち屈曲した前記端部に近い方の内壁を含む平面P1との距離Tを有して、前記各端部の外端側に引っ込んだ位置に配置され、
さらに、前記発光管の外面に、ランプ点灯時に該発光管内部に形成される放電路に沿うように巻回された金属線と、前記金属線の両端のそれぞれを支持し該金属線と電気的に接続されると共に、前記陽極及び陰極の先端部外周をそれぞれ前記端部の外面で囲繞するような位置に配置される一対の帯状金属板と、から成る外部始動補助電極を備え、前記陰極に近い側の帯状金属板の端縁に結合されたリード線並びに、該リード線に延設された端子を具備する、ことを特徴とするフラッシュランプ。
【請求項2】
前記陰極の先端部はタングステンを主成分とする焼結体で構成されていることを特徴とする請求項1記載のフラッシュランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−69472(P2012−69472A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215237(P2010−215237)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000000192)岩崎電気株式会社 (533)
【Fターム(参考)】