説明

フラットケーブル

【課題】高周波信号の伝送特性の向上を図ることが可能なフラットケーブルを提供する。
【解決手段】フラットケーブル10は、第1の絶縁体30と、第1の絶縁体30に積層された導電体20と、導電体20の少なくとも一方の端部を露出させた状態で、導電体20に積層された第2の絶縁体40と、第1の絶縁体30、又は、第1の絶縁体30と第2の絶縁体40の両方、を介して導電体20に積層され、導電体20を電気的に遮へいするシールド50,60と、を備えたフラットケーブルであって、導電体20が露出した端末部12における第1の絶縁体30の厚さHと、第2の絶縁体40が積層された本体部11における第1の絶縁体30の厚さHと、が相違している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号の伝送に用いられるフラットケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
高周波回路に接続され、高周波信号を伝送するフレキシブルフラットケーブルとして、導体を両側から絶縁体を介して金属層で挟み込んだものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このフレキシブルフラットケーブルでは、絶縁層の誘電率を調整することで、フレキシブルフラットケーブルのインピーダンスを、高周波回路のインピーダンスに整合させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−31033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のフレキシブルフラットケーブルでは、高周波回路とのインピーダンス整合についてのみ検討され、フレキシブルフラットケーブル内におけるインピーダンス整合については検討されていない。このため、このフレキシブルフラットケーブルは、高周波信号の伝送特性に劣る場合があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、フラットケーブルにおける高周波信号の伝送特性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るフラットケーブルは、第1の絶縁体と、前記第1の絶縁体に積層された導電体と、前記導電体の少なくとも一方の端部を露出させた状態で、前記導電体に積層された第2の絶縁体と、前記第1の絶縁体、又は、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体の両方、を介して前記導電体に積層され、前記導電体を電気的に遮へいするシールドと、を備えたフラットケーブルであって、前記導電体が露出した端末部における前記第1の絶縁体の厚さと、前記第2の絶縁体が積層された本体部における前記第1の絶縁体の厚さと、が相違していることを特徴とする。
【0008】
上記発明において、前記端末部における前記第1の絶縁体の厚さは、前記本体部における前記第1の絶縁体の厚さよりも相対的に薄くてもよい。
【0009】
上記発明において、前記第1の絶縁体は、一以上の絶縁層を有し、前記端末部における前記絶縁層の数は、前記本体部における前記絶縁層の数と相違していてもよい。
【0010】
上記発明において、前記端末部のインピーダンスは、前記本体部のインピーダンスと実質的に同一であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、端末部における第1の絶縁体の厚さが、本体部における第1の絶縁体の厚さと相違しているので、フラットケーブル内におけるインピーダンスが整合し、フラットケーブルにおける高周波信号の伝送特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態におけるフラットケーブルの斜視図である。
【図2】図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】図3は、図2のIII部の拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態の作用を説明するフラットケーブルの概略断面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態におけるフラットケーブルの変形例を示す断面図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施形態におけるフラットケーブルの断面図である。
【図7】図7は、図6のVII部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
<<第1実施形態>>
図1は本実施形態におけるフラットケーブルの斜視図、図2は図1のII−II線に沿った断面図、図3は図2のIII部の拡大断面図である。
【0015】
本実施形態におけるフレキシブルフラットケーブル(FFC:Flexible Flat Cable)10は、例えば液晶テレビやプラズマテレビ等の画像インターフェースや内部配線として、高周波信号を伝送するケーブルである。
【0016】
また、このフラットケーブル10は、図2及び図3に示すように、導電体20と、第1の絶縁体30と、第2の絶縁体40と、第1のシールド50と、第2のシールド60と、を備えている。このフラットケーブル10は、中央に位置する本体部11において、第1及び第2の絶縁体30,40と第1及び第2のシールド50,60によって導電体20が両側から被覆されているのに対し、本体部11の端に位置する端末部12では、導電体20が第2の絶縁体40と第2のシールド60から露出している。
【0017】
導電体20は、図1に示すように、例えばフラットケーブル10の長手方向に沿った平角軟銅線から構成されている。本実施形態では、6つの導電体20がフラットケーブル10の短手方向において所定のピッチで配列されている。なお、導電体20の数は、特に限定されない。
【0018】
導電体20は、図2及び図3に示すように、図中下側の第1の主面21と、図中上側の第2の主面22と、を有している。第1の主面21には、本体部11から端末部12に亘って第1の絶縁体30(後述)が積層されているのに対し、第2の主面22には、本体部11のみに第2の絶縁体40(後述)が積層されている。すなわち、フラットケーブル10の端末部12では、導電体20の両端部20a,20bが第2の絶縁体40から露出し、フラットケーブル10が他の電子機器と電気的に接続できるようになっている。
【0019】
第1の絶縁体30は、図2及び図3に示すように、導電体20の第1の主面21に積層されている。この第1の絶縁体30は、第1の接着層31と、第1の絶縁層32と、第2の接着層33と、第2の絶縁層34と、第3の接着層35と、を有している。
【0020】
第1の接着層31は、導電体20と第1の絶縁層32(後述)とを接着しており、導電体20の第1の主面21において、フラットケーブル10の全体(本体部11及び端末部12)に亘って積層されている。第1の接着層31は、例えばポリエステル(polyester)からなる熱可塑性の接着剤で構成されている。なお、本実施形態において、第1の接着層31の厚さをhとする。
【0021】
第1の絶縁層32は、導電体20を保護しており、導電体20の第1の主面21において、第1の接着層31を介して、フラットケーブル10の全体に亘って積層されている。この第1の絶縁層32は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET:polyethylene terephthalate)等の可撓性及び絶縁性を有する材料で構成されたフィルムである。なお、本実施形態において、第1の絶縁層32の厚さをhとする。
【0022】
第2の接着層33は、第1の絶縁層32と第2の絶縁層34(後述)とを接着している。第2の接着層33は、本体部11における第1の絶縁層32のみに積層されているのに対し、端末部12における第1の絶縁層32には積層されていない。第2の接着層33は、第1の接着層31と同様に、例えばポリエステルからなる接着剤で構成されている。なお、本実施形態において、第2の接着層33の厚さをhとする。
【0023】
第2の絶縁層34は、図2及び図3に示すように、第2の接着層33を介して、本体部11における第1の絶縁層32に積層されている。なお、この第2の絶縁層34は、端末部12における第1の絶縁層32には積層されていない。この第2の絶縁層34は、第1の絶縁層32と同様に、例えばポリエチレンテレフタレート等の可撓性及び絶縁性を有する材料で構成されたフィルムである。なお、本実施形態において、第2の絶縁層34の厚さをhとする。
【0024】
第3の接着層35は、図2及び図3に示すように、本体部11において第2の絶縁層34と第1のシールド50(後述)とを接着し、端末部12において第1の絶縁層32と第1のシールド50とを接着している。この第3の接着層35は、本体部11における第2の絶縁層34から端末部12における第1の絶縁層32に亘って積層されている。第3の接着層35は、例えばポリエステルからなる熱可塑性の接着剤で構成されている。なお、本実施形態において、第3の接着層35の厚さをhとする。
【0025】
以上のように、第1の絶縁体30は、本体部11においては、2層の絶縁層32,34と、3層の接着層31,33,35と、を有しているのに対し、端末部12においては、1層の絶縁層32と、2層の接着層31,35を有している。このため、第1の絶縁体30では、本体部11における第1の厚さH(H=h+h+h+h+h)に対して、端末部12における第2の厚さH(H=h+h+h)が相対的に薄くなっている(H<H)。
【0026】
第2の絶縁体40は、図2及び図3に示すように、導電体20の両端部20a,20bを露出させた状態で、導電体20の第2の主面22に積層されている。すなわち、第2の絶縁体40は、フラットケーブル10の本体部11のみに積層されている。なお、特に図示しないが、第2の絶縁体40を、導電体20の一方の端部20a,20bのみを露出させた状態で、導電体20の第2の主面22に積層させてもよい。
【0027】
この第2の絶縁体40は、第4の接着層41と、第3の絶縁層42と、第5の接着層43と、を有している。
【0028】
第4の接着層41は、図2及び図3に示すように、フラットケーブル10の本体部11において、導電体20と第3の絶縁層42(後述)とを接着している。第4の接着層41は、例えばポリエステルからなる熱可塑性の接着剤で構成されている。
【0029】
第3の絶縁層42は、第2の主面22側から導電体20を保護している。第3の絶縁層42は、例えばポリエチレンテレフタレート等の可撓性及び絶縁性を有する材料で構成されたフィルムである。
【0030】
第5の接着層43は、図2及び図3に示すように、第3の絶縁層42と第2のシールド60(後述)とを接着している。この第5の接着層43は、例えばポリエステルからなる熱可塑性の接着剤で構成されている。
【0031】
ここで、第2の絶縁体40の厚さHは、第4の接着層41の厚さと、第3の絶縁層42の厚さと、第5の接着層43の厚さと、を加算した厚さであり、第1の絶縁体30の第1の厚さHと実質的に同一となっている(H≒H)。
【0032】
第1のシールド50は、図2及び図3に示すように、導電体20を電気的に遮へいしており、第1の絶縁体30を介して導電体20に積層されている。なお、第1のシールド50は、第1の主面21側から導電体20の全体(本体部11と端末部12の全て)を電気的に遮へいするように、第1の絶縁体30の全体(本体部11と端末部12の全て)に亘って積層されている。この第1のシールド50は、テープ状となっており、第1のシールド導電層51と、第1のシールド絶縁層52と、を有している。
【0033】
第1のシールド導電層51は、図2及び図3に示すように、第1の絶縁体30の第3の接着層35に積層されている。この第1のシールド導電層51は、例えばアルミニウム箔、銅箔や錫メッキ等の導電性を有する材料で構成されている。
【0034】
第1のシールド絶縁層52は、第1のシールド導電層51に積層されている。この第1のシールド絶縁層52は、例えばポリエチレンテレフタレート等の可撓性及び絶縁性を有する材料で構成されている。
【0035】
このように、本実施形態におけるフラットケーブル10では、端末部12を含むフラットケーブル10の全体に亘って第1のシールド50が積層されているので、導電体20が発生するノイズによる電磁障害(EMI:electromagnetic interference)を抑制することができる。
【0036】
第2のシールド60は、図2及び図3に示すように、本体部11における導電体20を電気的に遮へいしており、第2の絶縁体40を介して導電体20に積層されている。この第2のシールド60は、テープ状となっており、第2のシールド導電層61と、第2のシールド絶縁層62と、を有している。
【0037】
第2のシールド導電層61は、図2及び図3に示すように、第2の絶縁体40の第5の接着層43に積層されている。この第2のシールド導電層61は、例えばアルミニウム箔、銅箔や錫メッキ等の導電性を有する材料で構成されている。
【0038】
第2のシールド絶縁層62は、第2のシールド導電層61に積層されている。この第2のシールド絶縁層62は、例えばポリエチレンテレフタレート等の可撓性及び絶縁性を有する材料で構成されている。
【0039】
次に、本実施形態におけるフラットケーブル10の作用について説明する。
【0040】
図4は本実施形態の作用を説明するフラットケーブルの概略断面図、図5は本実施形態におけるフラットケーブルの変形例を示す断面図である。
【0041】
フラットケーブル10の本体部11では、図4に示すように、導電体20が第1及び第2の主面21,22から第1及び第2の絶縁体30,40を介して第1及び第2のシールド50,60で挟み込まれており、伝送線路の構造がストリップラインとなっている。一方、フラットケーブル10の端末部12では、同図に示すように、導電体20が第2の絶縁体40及び第2のシールド60から露出しており、伝送線路の構造がマイクロストリップラインとなっている。ここで、ストリップライン(本体部11)のインピーダンスZについては、下記(1)式で求めることができ、マイクロストリップライン(端末部12)のインピーダンスZについては、下記(2)式で求めることができる。
【0042】
【数1】

【数2】

なお、上記(1)式及び(2)式において、Hは本体部11における第1の絶縁体30の第1の厚さであり、Hは端末部12における第1の絶縁体30の第2の厚さであり、Tは導電体20(例えば平角軟銅線)の厚さであり、Wは導電体20(例えば平角軟銅線)の幅であり、Erは第1及び第2の絶縁体30,40の比誘電率である。
【0043】
ここで、例えばインピーダンスが50Ωの高周波回路にフラットケーブル10を接続させる場合には、第1の接着層31の厚さhの一例として20μm、第1の絶縁層32の厚さhの一例として142μm、第2の接着層33の厚さhの一例として25μm、第2の絶縁層34の厚さhの一例として130μm、第3の接着層35の厚さhの一例として3μmを挙げることができる。この場合には、第1の絶縁体30の第1の厚さH(H=h+h+h+h+h)は320μmとなり、第1の絶縁体30の第2の厚さH(H=h+h+h)は165μmとなる。
【0044】
なお、第4の接着層41の厚さの一例として20μm、第3の絶縁層42の厚さの一例として297μm、第5の接着層43の厚さの一例として3μmを挙げることができる。この場合には、第2の絶縁体40の厚さHは、320μmとなり、第1の絶縁体30の第1の厚さHと同一となる(H=H)。
【0045】
また、導電体20の厚さTの一例として35μm、導電体20の幅Wの一例として300μm、第1及び第2の絶縁体30,40の比誘電率Erの一例として3.4を挙げることができる。この場合における本体部11のインピーダンスZは、上記(1)式より50.1Ωとなり、端末部12のインピーダンスZは、上記(2)式より50.7Ωとなる。このように、上記一例におけるフラットケーブル10では、高周波回路とフラットケーブル10全体のインピーダンスが整合していると共に、フラットケーブル10内のインピーダンスZ,Zが実質的に同一となっており(Z≒Z)、高周波信号に対する伝送特性に優れている。
【0046】
ここで仮に、端末部12における第1の絶縁体30の第2の厚さHを、320μmとし(例えば、端末部12にも第2の接着層33と第2の絶縁層34とを積層する。)、本体部11における第1の絶縁体30の第1の厚さHと同一とすると、端末部12のインピーダンスZ´は、約77Ωとなり、高周波回路のインピーダンス(50Ω)や本体部11のインピーダンスZ(50.1Ω)と大きく相違してしまう。
【0047】
これに対し、本実施形態におけるフラットケーブル10では、図3に示すように、端末部12における第1の絶縁体30の第2の厚さHが、本体部11における第1の絶縁体30の第1の厚さHよりも相対的に薄くなっているので、端末部12のインピーダンスZを、本体部11と端末部12における第1の絶縁体30の厚さH,Hが同一である場合の端末部12のインピーダンスZ´よりも小さくすることができ、フラットケーブル10内におけるインピーダンスZ,Zを整合させることができる。これにより、フラットケーブル10の高周波信号に対する伝送特性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態におけるフラットケーブル10では、端末部12における第1の絶縁体30には1層の絶縁層32が積層され、本体部11における第1の絶縁体30には2層の絶縁層32,34が積層さている。また、この第1の絶縁体30には、これらの絶縁層32,34を積層するために接着層31,33,35が積層されている。すなわち、端末部12における第1の絶縁体30が3層で構成されているのに対し、本体部11における第1の絶縁体30は5層で構成されている。
これにより、第2の厚さHが第1の厚さHよりも薄くなり、インピーダンスZ,Zが整合している。
【0049】
本実施形態では、このようにフラットケーブル10内のインピーダンスZ,Zの整合に際して、本体部11と端末部12とで絶縁層の数を相違させればよく、インピーダンスZ,Zの整合が容易である。
【0050】
なお、本実施形態におけるフラットケーブル10では、端末部12における第1の絶縁体30に1層の絶縁層32が積層され、本体部11における第1の絶縁体30に2層の絶縁層32,34が積層されているが、特に限定されず、端末部12における第1の絶縁体30の絶縁層と、第1の絶縁体30の本体部11における絶縁層と、をそれぞれ2層以上としてもよい。例えば、端末部12における第1の絶縁体30に2層の絶縁層を積層し、本体部11における第1の絶縁体30に3層或いは4層以上の絶縁層を積層してもよい。
【0051】
また、本実施形態におけるフラットケーブル10では、第1の絶縁体30において、端末部12の絶縁層の数を、本体部11の絶縁層の数よりも相対的に少なくしているが、特に限定されず、端末部12の絶縁層の数を、本体部11の絶縁層の数よりも相対的に多くし、端末部12の第2の厚さHを、本体部11の第1の厚さHよりも相対的に厚くしてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、第1及び第2の絶縁体30,40の両方に第1及び第2のシールド50,60が積層されているが、特に限定されず、図5に示すように、第1の絶縁体30のみに第1のシールド50を積層してもよい。
【0053】
このように、第2のシールド60が積層されていない構成であっても、本体部11に第2の絶縁体40が積層されていることで、本体部11と端末部12とにおいて、インピーダンスZ,Zが不整合となる場合がある。このような場合に、第1の絶縁体30において、第2の厚さHを第1の厚さHよりも相対的に薄くすることで、フラットケーブル10内のインピーダンスZ,Zの整合を図ることができ、高周波信号に対する伝送特性を向上させることができる。
【0054】
<<第2実施形態>>
次に、第2実施形態について説明する。
【0055】
図6は本実施形態におけるフラットケーブルの断面図、図7は図6のVII部の拡大断面図である。
【0056】
本実施形態におけるフラットケーブル10aは、第1の絶縁体70の構成において第1実施形態と相違するが、それ以外の構成は、第1実施形態と同様である。以下に、第1実施形態と相違する点についてのみ説明し、第1実施形態と同様の構成である部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0057】
本実施形態における第1の絶縁体70は、第6の接着層71と、第4の絶縁層72と、第7の接着層73と、を有している。
【0058】
第6の接着層71は、導電体20と第4の絶縁層72(後述)を接着しており、導電体20の第1の主面21において、フラットケーブル10aの全体(本体部11及び端末部12)に亘って積層されている。この第6の接着層71は、例えばポリエステルからなる熱可塑性の接着剤で構成されている。なお、本実施形態において、第6の接着層71の厚さをhとする。
【0059】
第4の絶縁層72は、第6の接着層71に積層されている。この第4の絶縁層72は、例えばポリエチレンテレフタレート等の可撓性及び絶縁性を有する材料で構成されている。
【0060】
この第4の絶縁層72は、端末部12における厚さhが本体部11における厚さhよりも相対的に薄くなっている(h<h)。このような第4の絶縁層72は、例えば、第4の絶縁層72となる材料の塗布(積層)に際して、端末部12の塗布回数を本体部11の塗布回数よりも相対的に少なくすることで形成することができる。
【0061】
第7の接着層73は、第4の絶縁層72と第1のシールド50とを接着しており、第4の絶縁体72の全体(本体部11及び端末部12)に亘って積層されている。この第7の接着層73は、例えばポリエステルからなる熱可塑性の接着剤で構成されている。なお、本実施形態において、第7の接着層73の厚さをhとする。
【0062】
以上のように、本実施形態におけるフラットケーブル10aでは、端末部12における第1の絶縁体70の第4の厚さH(H=h+h+h)が、本体部11における第1の絶縁体70の第3の厚さH(H=h+h+h)よりも相対的に薄くなっている(H<H)。
【0063】
ここで、本実施形態においても、第1実施形態と同様に、フラットケーブル10aの本体部11がストリップラインとなっており、フラットケーブル10aの端末部12がマイクロストリップラインとなっている。また、本体部11(ストリップライン)のインピーダンスZについては、下記(3)式で求めることができ、端末部12(マイクロストリップライン)のインピーダンスZについては、下記(4)式で求めることができる。
【0064】
【数3】

【数4】

なお、上記(3)式及び(4)式において、Hは本体部11における第1の絶縁体70の第3の厚さであり、Hは端末部12における第1の絶縁体70の第4の厚さである。
【0065】
ここで、例えばインピーダンスが50Ωの高周波回路にフラットケーブル10aを接続させる場合には、第6の接着層71の厚さhの一例として20μm、本体部11における第4の絶縁層72の厚さhの一例として297μm、端末部12における第4の絶縁層72の厚さhの一例として142μm、第7の接着層73の厚さhの一例として3μmをあげることができる。このような場合には、本体部11における第1の絶縁体70の第3の厚さHが320μmとなり、端末部12における第1の絶縁体70の第4の厚さHが165μmとなる。
【0066】
また、上記(3)式及び(4)式により、本体部11のインピーダンスZは50.1Ωとなり、端末部12のインピーダンスZは50.7Ωとなる。このように、上記一例におけるフラットケーブル10では、高周波回路とフラットケーブル10a全体のインピーダンスが整合していると共に、インピーダンスZ,Zが実質的に同一となっており(Z≒Z)、高周波信号に対する伝送特性に優れている。
【0067】
このように、本実施形態においても、端末部12における第2の絶縁体70の第4の厚さHが、本体部11における第2の絶縁体70第3の厚さHよりも相対的に薄くなっていることで、インピーダンスZ,Zの整合を図ることができ、フラットケーブル10aの高周波信号に対する伝送特性が向上する。
【0068】
なお、本実施形態では、第4の絶縁層72の厚さh,hが、本体部11と端末部12とで相違しているが、第6の接着層71の厚さを、本体部11と端末部12とで相違させてもよい。例えば、端末部12における第6の接着層71の厚さが、本体部11における第6の接着層71の厚さよりも相対的に薄くなっていてもよい。このようにして、端末部12における第1の絶縁体70の第4の厚さHを、本体部11における第1の絶縁体70の第3の厚さHよりも相対的に薄くしてもよい。
【0069】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【符号の説明】
【0070】
10,10a…フラットケーブル
11…本体部
12…端末部
20…導電体
30,40,70…絶縁体
32,34,42,72…絶縁層
31,33,35,41,43,71,73…接着層
50,60…シールド
51,61…シールド導電層
52,62…シールド絶縁層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の絶縁体と、
前記第1の絶縁体に積層された導電体と、
前記導電体の少なくとも一方の端部を露出させた状態で、前記導電体に積層された第2の絶縁体と、
前記第1の絶縁体、又は、前記第1の絶縁体と前記第2の絶縁体の両方、を介して前記導電体に積層され、前記導電体を電気的に遮へいするシールドと、を備えたフラットケーブルであって、
前記導電体が露出した端末部における前記第1の絶縁体の厚さと、前記第2の絶縁体が積層された本体部における前記第1の絶縁体の厚さと、が相違していることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項2】
請求項1記載のフラットケーブルであって、
前記端末部における前記第1の絶縁体の厚さは、前記本体部における前記第1の絶縁体の厚さよりも相対的に薄いことを特徴とするフラットケーブル。
【請求項3】
請求項1又は2記載のフラットケーブルであって、
前記第1の絶縁体は、一以上の絶縁層を有し、
前記端末部における前記絶縁層の数は、前記本体部における前記絶縁層の数と相違していることを特徴とするフラットケーブル。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のフラットケーブルであって、
前記端末部のインピーダンスは、前記本体部のインピーダンスと実質的に同一であることを特徴とするフラットケーブル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−146270(P2011−146270A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6528(P2010−6528)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】