説明

フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置、ならびにこの種の装置を製造する方法

【課題】簡単かつ低コストに、トーションバー機構のプレストレスを(事後的に)調整可能な、フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置を提供する。
【解決手段】平行かつ蛇行状に配置され、互いに回転不能に結合されたトーションバー1a,1b,1cからなるトーションバー機構1を有し、軸受トーションバー1cおよびレバートーションバー1aとしてそれぞれ構成される外側のトーションバーを、追従リンク機構3の軸受台4に支持し、レバートーションバー1aを、追従リンク機構3の制御曲線5により案内される長さ可変式レバー6に対して回転不能に結合し、当該長さ可変式レバーに、並進運動が可能で、フラップまたはドア8に取り付けられるヒンジレバー9を回転運動させる連結ロッド7を係合した装置において、軸受トーションバー1cに対して回転不能に結合されるとともに、軸受台4に対して固定可能な調整装置2を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トーションバー機構により発生されるトルクを調整(再調整)する調整装置を備え、閉鎖位置と開放位置との間で、重力に抗して、フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置、特に、トーションバー機構で支援して旋回する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の装置は、自動車の製造において、閉鎖位置と開放位置との間で、重力に抗して、フラップまたはドアを旋回させるときの操作力を低減することに利用され、必要に応じて、フラップまたはドアを、1つまたは複数の開放位置で自己保持することにも利用される。
【0003】
国際公開第2010/025817号には、様々な種類の、フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置が示されている。
例として、トーションバー機構において、複数のトーションバーを、平行かつ蛇行状に配置し、プレストレスを与えて互いに回転不能に結合した、同号国際公開の図1に記載の実施の形態について説明する。
ここでは、外側のトーションバーのうち一方を、軸受台の中に回転不能に配置し、他方の外側のトーションバーを、長さ可変式レバーの一端に回転不能に結合している。この長さ可変式レバーの他端は、制御リンク機構により案内されるとともに、旋回運動が可能なフラップまたはドアに結合されたヒンジレバーに並進運動を伝達できる結合棒に係合されている。この制御リンク機構の中を案内される長さ可変式レバーにより、フラップまたはドアの開放角度に応じて、フラップまたはドアの重量によるトルクとは反対方向に作用するトルクを、フラップ又はドアに結合されたヒンジレバーに導入することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2010/025817号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術では、装置の組立中や、特に、車両に装置を取り付けた後において、トーションバー機構のプレストレスを微調整する作業や、トーションバー機構から発生されるトルクを微調整する作業に、非常に手間がかかるという問題がある。このため、例えば、フラップやトーションバー機構の部品に存在しうる公差の補償や、トーションバーの応力の緩みの補償が不十分となってしまう。
【0006】
したがって、本発明の課題は、簡単かつ低コストに、トーションバー機構のプレストレスを(事後的に)調整可能とする、フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置を提供すること、ならびにこの種の装置を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、請求項1ないし6の構成要素によって解決される。
すなわち、本発明の装置は、閉鎖位置と開放位置との間で、重力に抗して、フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置であって、平行かつ蛇行状に配置され、互いに回転不能に結合されたトーションバーからなるトーションバー機構を有し、軸受トーションバーおよびレバートーションバーとしてそれぞれ構成される外側のトーションバーを、追従リンク機構の軸受台に支持し、レバートーションバーを、追従リンク機構の制御曲線により案内される長さ可変式レバーに対して回転不能に結合し、当該長さ可変式レバーに、並進運動が可能で、フラップまたはドアに取り付けられるヒンジレバーを回転運動させる連結ロッドを係合した装置において、軸受トーションバーに対して回転不能に結合されるとともに、軸受台に対して固定可能な調整装置を設けたものである。
【0008】
調整装置を軸受トーションバーに対して回転不能に結合しているため、調整装置の操作、特に、調整装置を回転させることにより、個々のトーションバーのねじりにより生じるトーションバー機構全体のプレストレスを適切に調整することができる。
プレストレスが目標値に達すると、調整装置を相応の位置において、恒久的または一時的に軸受台に対して固定することできる。一時的に固定する場合、必要に応じて、繰り返し、プレストレスを適正に調整することができる。
【0009】
この調整装置は、レバートーションバーを介して接続される追従リンク機構に合わせて、トーションバー機構から発生されるトルクを、適正に調整することが可能である。追従リンク機構は、トーションバー機構から発生される直線状のトルク推移を、ヒンジレバーにおいて、曲線状の、特に、湾曲したトルク推移に変換する揺動伝動装置のような伝動装置構造を有している。
【0010】
フラップまたはドアの重量によるトルクは、フラップまたはドアの旋回経路に沿って遷移する重心位置に応じて変化する。この重量によるトルクは、閉鎖位置を起点として上昇していき、フラップまたはドアが実質的に水平となる位置で最大となる。開放位置へと旋回がさらに進むと、重量によるトルクは再び減少していく。
トーションバー機構の直線状のトルク推移は、特別な制御曲線の構成により、フラップまたはドアを支持するための望ましいトルク推移に合わせて、適正に調整することができ、結果として、例えば、各開放位置において、または、旋回経路に沿った様々な加速段階において、フラップまたはドアを自己保持することができる。
【0011】
長さ可変式レバーは、例えば、スライドブロックとして構成される案内体の片側が制御曲線により案内されることで、そのレバーアーム長さが変更される。このとき、長さ可変式レバーは、物理的な長さが変化するのではなく、レバートーションバーで定義される回転軸と、制御曲線により案内される案内体との間隔が変化するのみである。案内体には、ヒンジレバーに結合される連結ロッドも係合されているためである。このように、例えば、案内体を長孔の中で可動とすることにより、または、案内体を長さ可変式レバーに沿って摺動可能とすることにより、機械的に有効なレバーアーム長さを実質的に変更することができる。
【0012】
前記連結ロッドは、ヒンジレバーの回転軸と連結ロッドの長軸とが交わらないように延ばされ、ヒンジレバーに係合されている。
これにより、連結ロッドの並進的な押し引きの運動によって、回転軸を中心としたヒンジレバーの回転運動が発生される。
【0013】
この装置は、車両の後部フラップを支持するため、車両のルーフ領域に2つ配置され、それぞれの装置が後部フラップの上側の縁部領域に係合されていることが好ましい。当該装置は、車両の横に配置されたドアを操作することにも適し、特に、実質的に水平で、車両に対して横向きに延びる回転軸を中心として旋回可能なシザーズドアにも適している。
【0014】
好ましい実施の形態では、調整装置は、その一端が軸受トーションバーに対して少なくとも一時的に回転不能に係合される調整レバーを有する。
この調整レバーにより、軸受トーションバーの位置の調整作業を、特に少ない力で行うことが可能である。また、この調整レバーは、軸受台に対して簡単に固定することができる。さらに、この調整レバーは、調整作業の間だけ軸受トーションバーに回転不能に結合されていればよく、プレストレスの調整が完了し、軸受トーションバーが相応の位置で固定されれば不要とされる。
【0015】
好ましい実施の形態では、調整レバーの他端に、軸受台に支持された調整ねじを有する。
調整レバーは、その他端に、調整ねじをねじ込むためのねじ山を有しており、軸受台に調整ねじのねじ頭を支持することにより、トーションバー機構の事後的な調整を特に簡単に行うことができる。さらに、調整ねじのねじ頭と軸受台の間には、調整レバーの様々な回転角に応じて、より望ましい載置面を形成する楔形クレードルが配置されていてもよい。
【0016】
好ましい実施の形態では、調整レバーの他端に、回転可能なクランプ山形材を有し、クランプ山形材の屈曲部分が、軸受台の下方に、可変な間隔を設けて係合されている。
調整レバーの他端で、クランプ山形材を回転運動可能なように係合することにより、クランプ山形材が軸受台の下面に対して実質的に鉛直に案内され、調整レバーの様々な回転角に対応可能とされる。
【0017】
このクランプ山形材の屈曲部分を軸受台の下部に係合する際、軸受台と屈曲部分との間隔は、適当な方策、例えば、軸受台の下面に支持される調整ねじにより、変更することができる。これにより、クランプ山形材の屈曲部分と軸受台の下面との間隔、およびこれに伴う調整レバーの回転角を、簡単かつ恒久的に適切に調整することができる。
また、調整装置の調整ねじが軸受台の下面に支持されることにより、車両のルーフ領域への取り付け完了後であっても、乗員室の中からトーションバー機構の調整を行うことができる。これにより、製造公差および取り付け公差に関して最大限の順応性を得ることができるとともに、フラップまたはドアの様々な施工形態を得ることができる。
【0018】
本発明の装置を製造する方法は、連結部材によりトーションバーを回転不能に結合する際、内側のトーションバーをねじって、1つの平面にトーションバー機構を配置することにより、第1の部分トルクを実現するステップと、レバートーションバーおよび軸受トーションバーを軸受台の相応の軸受座に挿入するステップと、レバートーションバーを長さ可変式レバーに回転不能に結合し、トーションバー機構の第2の部分トルクが実現されるまで、長さ可変式レバーを旋回させ、当該長さ可変式レバーを軸受台に一時的に固定するステップと、軸受トーションバーを調整装置に回転不能に結合し、トーションバー機構で目標とする全体トルクが実現されるまで調整装置を回転させ、調整装置または軸受トーションバーを固定するステップとを含んでいる。
上記方法を適用することで、フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置の製造公差の補償を特に簡単に行うことができる。
【0019】
第1のステップでは、トーションバー機構が構成され、まず内側のトーションバーのみが第1の部分トルクを生じるようにねじられ、すなわち、プレストレスがかけられる。この第1の部分トルクは、目標とする全体のトルクのうち、組み付けられたトーションバーから2本分だけ減らした割合、すなわち、内側のトーションバーから生じる割合であることが好ましい。
【0020】
トーションバー機構は、1つの平面内に構成することができ、最初のトーションバーがねじられ、続いて、連結部材を介して次のトーションバーが最初のトーションバーに結合され、同様にねじられる。全てのトーションバーが相互に結合され、内側のトーションバーがねじられるまで、この手順が反復される。
トーションバー機構の組立中において、トーションバーをねじらなくてもよい構造であることが好ましいときは、各トーションバーを、相互に決められた角度で配置し、好ましくは円形に配置する。こうして得られたトーションバー機構は、1つの平面に張り渡されす際に、所望の第1の部分トルクをおのずから生じるように応力がかかる。
【0021】
第2のステップでは、トーションバー機構を追従リンク機構に取り付けるために、外側のトーションバーが、トーションバー用の軸受座として形成された軸受台の開口部へと挿入される。トーションバー機構は、もはや応力が緩むことがなく、第1の部分トルクを生じるようにプレストレスがかかったまま保たれる。
【0022】
第3のステップでは、レバートーションバーが、長さ可変式レバーに回転不能に結合され、長さ可変式レバーの回転によって第2の部分トルクが生じるようにプレストレスがかけられる。第2の部分トルクは、目標とする全体のトルクのうち、組み付けられたトーションバーのうち1本分だけ減らした割合、すなわち、内側のトーションバーおよびレバートーションバーから生じる割合であることが好ましい。
長さ可変式レバーは、レバートーションバーに取り付けられ、第2の部分トルクを実現するために必要な回転角だけ回転された後、制御曲線に対して所望の位置、好ましくは制御曲線の中心位置にくるように配置することが好ましい。
【0023】
第4のステップでは、軸受トーションバーを調整装置に回転不能に結合し、トーションバー機構を回転により目標とする全体のトルクが生じるようにプレストレスがかけられる。目標とする全体のトルクは、例えば、連結ロッドにあるロードセルを通じて測定することができ、フラップまたはドアの重量によるトルクは、補償に必要な反対方向のトルクにほぼ相当することが好ましい。
その後のステップでは、例えば、連結部材、ヒンジレバーなどの装置における残りの構成要素の取り付けが行われる。
【0024】
好ましい実施の形態では、トーションバーは、形状嵌合式または材料結合式に連結部材に結合可能とされ、追従リンク機構は、連結部材に対して旋回可能に軸受ウェブに支持される。
形状嵌合式によりトーションバーと連結部材とを結合することによって、トーションバー機構をフレキシブルで簡素な構造とすることができ、これに対して、例えば、溶接などによる材料結合式による結合では、トーションバー機構を、特にコンパクトな構造とすることが可能となる。また追従リンク機構と対向されるトーションバー機構の自由端における望ましくない振動や旋回運動を回避するために、連結部材は軸受ウェブに回転可能に支持される。
【0025】
好ましい実施の形態では、連結部材は、長尺状に構成されるとともに、フラップまたはドアの閉鎖位置と開放位置との間の半分の開放角のときに水平に位置している。
これにより、連結部材は、フラップまたはドアの中間位置を起点として、両方向へ等しく回転されるため、トーションバーの負荷が均等に保たれるとともに、車両に設計されたスペースを有効活用できる。
【0026】
好ましい実施の形態では、長さ可変式レバーは、レバートーションバーに嵌め合わされて結合されるとともに、安全ピンによって、軸受台に対して一時的に固定可能とされる。
長さ可変式レバーが、安全ピンにより軸受台に固定されると、本装置は、車両に対する取り付け前に、すでにプレストレスがかかった状態に保たれる。本装置がフラップまたはドアのトルクによって負荷を受けると、安全ピンを引き抜くことができ、トーションバー機構が作動される。
【0027】
好ましい実施の形態では、調整装置は、材料結合式に軸受台に結合可能とされる。
調整作業が完了した後に、調整装置を、材料結合式に、特に、溶接により軸受台に取り付けるようにすると、本発明の装置を特に簡単に製造可能となる。このために、軸受トーションバーに、例えば、六角ナットのような部材を備えてもよい。この六角ナットに、外から操作されるトルクセンサを備えた電動ドライバを係合して、トーションバー機構の目標とする全体のトルクに達するまで軸受トーションバーを回転する。調整作業が完了した後は、この六角ナットを軸受台に溶接することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の装置または方法によれば、調整装置の操作、特に、調整装置を回転させることにより、個々のトーションバーのねじりにより生じるトーションバー機構全体のプレストレスを適切に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】トーションバー機構の異なる2つの状態を示す図である。
【図2】フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置の全体図である。
【図3】第1の実施の形態における調整装置を示す図である。
【図4】第2の実施の形態における調整装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に示すように、平行かつ蛇行状に配置され、連結部材15を介して相互に回転不能に配置された複数のトーションバー1a,1b,および1cで構成されるトーションバー機構1は、フラップまたはドアをスプリングで支援して旋回する装置のため、少なくとも2通りの幾何学的な配列とすることができる。
【0031】
図の左側の部分は、個々のトーションバー1a,1b,および1cを相互に円形に配置したトーションバー機構1を示しており、個々のトーションバー1a,1b,および1cは、ねじられておらず、応力が緩められた状態にある。
図の右側の部分は、トーションバー機構1に力がかけられて平面Aに張り渡されると、内側のトーションバー1bは、相互に回転不能に結合されていることにより、ねじられて、プレストレスがかかった状態となる。
【0032】
外側のトーションバー、本例では、レバートーションバー1aおよび軸受トーションバー1cは、この配列ではねじられておらず、緩められている。さらに、レバートーションバー1aおよび軸受トーションバー1cは、内側のトーションバー1bよりも長く形成されており、これにより、レバートーションバー1aおよび軸受トーションバー1cの端部を、図2から図4に示す追従リンク機構3へと挿入することができる。
【0033】
全てのトーションバー1a,1b,および1cは、同一の部品として施工されていることが好ましく、外側のトーションバー1aおよび1cは、延長片21の取り付けによって延長される。連結部材15は、トーションバー1a,1b,および1cの端部に、形状嵌合式により結合され、または、例えば、溶接によって、トーションバー1a,1b,および1cの端部に、材料結合式に結合される。
【0034】
このようなトーションバー機構1は、円形の配列、または平坦な配列の構造とすることができる。トーションバー機構1を円形の配列の構造とした場合、トーションバー1a,1b,および1cを、組立中にねじらないまま保持することができる。
全体のトーションバー機構1に対するプレストレスは、後に、円形の配置を平面Aに張り渡すことによってかけられる。
【0035】
トーションバー機構1を平坦な配列の構造とした場合、それぞれの内側のトーションバー1bを、個別に予めねじって、連結部材15を介して、次の内側のトーションバー1bを接合することができる。この場合、適当な手段に連結部材15に直接的に係合させ、この手段を回転させることで各トーションバー1bのねじりを生成することが推奨される。
【0036】
図2は、車両に対して好ましく取り付けできる、フラップまたはドア8をスプリングで支援して旋回する本発明の装置を示している。
対称に構成された2つの装置が車両のルーフ領域に組み付けられることが好ましく、これにより、これらの装置を、フラップまたはドア8の上側の縁部領域にそれぞれ係合させることができる。また、両装置における各トーションバー機構1は、ともに車幅の半分までルーフ領域に突入されていることが好ましく、これにより、図示の装置を2つ並べて配置することができる。
【0037】
基本的に、この装置は、回転可能なヒンジレバー9に取り付けられたフラップまたはドア8を旋回させるために、すでに図1に示したトーションバー機構1と、調整装置2を備えた追従リンク機構3とにより構成されている。また追従リンク機構3は、追従リンク機構3のハウジングとして機能する軸受台4を有している。
この軸受台4には、レバートーションバー1aと軸受トーションバー1cが突入されて回転可能に支持されている。レバートーションバー1aには、軸受台4の内側に配置された長さ可変式レバー6がその一端で回転不能なように配置されている。
【0038】
長さ可変式レバー6の他端は、図3と図4に明示しているように、軸受台4の制御曲線5で案内されるスライドブロック構造17を有している。
スライドブロック構造17は、長さ可変式レバー6のスライドレール20で長手方向へスライド可能に支持されたスライドブロック17aと、スライドブロック17aに回転可能に受容された走行ローラ17bとが組み合わされて構成されている。
この走行ローラ17bは、制御曲線5によってほぼ遊びなく案内されており、その結果、制御曲線5の輪郭に追随して、スライドブロック17aをスライドレール20に沿ってスライドさせる。
また別の方法では、長孔を用いたり、または、長さ可変式レバー6の表面もしくは内側においてスライドブロック17aを弾性的に支持したりすることによっても、スライドブロック17aの移動を達成することができる。
さらに、スライドブロック17aには、連結ロッド7がその一端で係合されており、この連結ロッドは、シーリングスリーブ18で密閉されながら、軸受台4から導出され、その他端部でヒンジレバー9に結合されている。
連結ロッド7の長軸Cは、ヒンジレバー9の回転軸Bとは交わらず、連結ロッド7の並進運動がヒンジレバー9の回転運動へ変換され、この回転運動がヒンジレバー9に取り付けられるフラップまたはドア8の旋回を生じさせ、またこの逆も成り立つようにされている。また連結ロッド7が軸受台4から導出される開口部は、シーリングスリーブ18により密閉されていてもよい。
【0039】
軸受トーションバー1cには、特に、図3や図4に示すような形式で施工しうる調整装置2が係合されている。調整装置2は、本装置の組立前もしくは組立中、または本装置の車両に対する取り付け前もしくは取り付け中において、トーションバー機構1のプレストレスを微調整する役割を果たす。
1つの好ましい実施の形態では、本装置の組立または取り付けが完了した後に、再度、調整装置2の固定を一時的に解消することができ、これにより、保守整備の目的のためにトーションバー機構1のプレストレスの再調整を行うことができるようになっている。
【0040】
本例の図面では、調整装置2は、一端で、軸受トーションバー1cに回転不能に結合された調整レバー10を有しており、調整レバー10の他端には、軸受台4に支持される調整ねじ11が係合されている。調整ねじ11を回すと、調整レバー10が旋回し、これに起因して、結合されているトーションバー1a,1b,および1cのねじりに変化が生ずる。
【0041】
トーションバー機構1は、長尺状の連結部材15により、端部側において相互に回転不能に結合されたトーションバー1a,1b,および1cが、平行かつ蛇行状に配置されている。トーションバー機構1には、プレストレスがかけられており、連結部材15は、フラップまたはドア8が閉鎖位置と開放位置との間で半分だけ旋回したときに、水平位置にくることが好ましく、これにより、フラップまたはドア8が旋回経路の半分を超えて旋回したとき、いずれの方向に旋回したときであっても、トーションバー1a,1b,および1cのねじりによって生じる同一の回転角を移動することになる。
【0042】
またトーションバー機構1は、連結部材15を介して、追従リンク機構3とは反対側において、より良く安定化させるために軸受ウェブ16によって支持されており、このため、連結部材15は、例えば、中心部に配置されたピンで軸受ウェブ16に回転可能に結合される。
トーションバー機構1のレバートーションバー1aに付与されたプレストレスによって生じる直線的なねじりトルクは、追従リンク機構3に含まれる運動機構部材を介して変換され、フラップまたはドア8のトルクとは反対方向に作用するトルクとして、フラップまたはドア8の旋回経路に応じて適切に調整されたねじりトルクが、ヒンジレバー9に提供される。これにより、フラップまたはドア8の操作力を大幅に低減することができ、フラップまたはドア8が旋回経路上の全ての位置において自己保持される。
【0043】
図3と図4には、追従リンク機構3を、それぞれ、追従リンク機構3に結合されたトーションバー機構1および様々な調整装置2とともに示している。
既に図1に示した、平行かつ蛇行状に配置され、端部側の連結部材15に互いに回転不能に結合された複数のトーションバー1a,1b,および1cで構成されたトーションバー機構1は、両実施の形態において共通である。
【0044】
外側に位置するレバートーションバー1aおよび軸受トーションバー1cは、トーションバー機構1の一方側で、内側のトーションバー1bより長く形成されていることにより、追従リンク機構3のハウジングを形成する軸受台4に突入可能とされている。このレバートーションバー1aは、長さ可変式レバー6の一端に結合されており、この長さ可変式レバー6の他端には、スライドブロック構造17が配置されている。
【0045】
このスライドブロック構造17は、長さ可変式レバー6のスライドレール20に沿って長手方向へスライド可能に配置されたスライドブロック17aと、相応の制御曲線5によってほぼ遊びなく案内される、スライドブロック17aのピンの両側に配置された2つの走行ローラ17bとにより構成されている。
このスライドレール20の向きは、長さ可変式レバー6の物理的なレバーアームに実質的に従うが、必ずしも物理的なレバーアームに従わなくてもよい。例えば、長さ可変式レバー6は、直線状のレバーの形態のほか、折曲または屈曲したレバー形態とすることもできる。
【0046】
前記制御曲線5は、軸受台4の壁部に刻設されるか(図4)、または、一層簡単に交換可能とするため、追加のモジュールとして軸受台4に組み込まれる(図3)。
さらに、スライドブロック17aには、軸受台4の開口部を通って追従リンク機構3から外に導出される連結ロッド7が係合されている。この開口部は、シーリングスリーブ18で密閉されていてもよい。
また、長さ可変式レバー6は、安全ピン19により軸受台4に一時的に固定することができ、これは、組み立てられた装置の輸送中に必要となる場合がある。
【0047】
図3の調整装置2は、その一端が軸受トーションバー1cに対して回転不能に配置された調整レバー10により構成されており、この調整レバーは、他端に、調整ねじ11を収容するねじ山を有している。この調整ねじ11は、軸受台4の下面の開口部に挿通されている。
また、調整ねじ11のねじ頭と軸受台4との間には、軸受台4の半円形の収納部に、楔形クレードル14が配置されていることから、調整レバー10の瞬間位置に関係なく、軸受台4上における楔形クレードル14の平坦な面における支持が保証される。
【0048】
図4の調整装置2は、その一端で軸受トーションバー1cに回転不能に配置された調整レバー10により構成されており、この調整レバー10の他端には、クランプ山形材12が回転可能に結合されている。
このクランプ山形材12は、軸受台4の下面の下へ延びる屈曲部分12aを有している。さらに、屈曲部分12aは、軸受台4に支持される調整ねじ13が取り付けられるねじ山を有している。
【符号の説明】
【0049】
A 平面
B 回転軸
C 連結ロッドの長軸
1 トーションバー機構
1a レバートーションバー
1b 内側のトーションバー
1c 軸受トーションバー
2 調整装置
3 追従リンク機構
4 軸受台
5 制御曲線
6 長さ可変式レバー
7 連結ロッド
8 フラップまたはドア
9 ヒンジレバー
10 調整レバー
11,13 調整ねじ
12 クランプ山形材
12a 屈曲部分
14 楔形クレードル
15 連結部材
16 軸受ウェブ
17 スライドブロック構造
17a スライドブロック
17b 走行ローラ
18 シーリングスリーブ
19 安全ピン
20 スライドレール
21 延長片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉鎖位置と開放位置との間で、重力に抗して、フラップまたはドア(8)をスプリングで支援して旋回する装置であって、
平行かつ蛇行状に配置され、互いに回転不能に結合されたトーションバー(1a,1b,1c)からなるトーションバー機構(1)を有し、
軸受トーションバー(1c)およびレバートーションバー(1a)としてそれぞれ構成される外側のトーションバーを、追従リンク機構(3)の軸受台(4)に支持し、
レバートーションバー(1a)を、追従リンク機構(3)の制御曲線(5)により案内される長さ可変式レバー(6)に対して回転不能に結合し、
当該長さ可変式レバーに、並進運動が可能で、フラップまたはドア(8)に取り付けられるヒンジレバー(9)を回転運動させる連結ロッド(7)を係合した装置において、
軸受トーションバー(1c)に対して回転不能に結合されるとともに、軸受台(4)に対して固定可能な調整装置(2)を設けたこと
を特徴とする装置。
【請求項2】
調整装置(2)は、その一端が軸受トーションバー(1c)に対して少なくとも一時的に回転不能に係合される調整レバー(10)を有すること
を特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
調整レバー(10)の他端に、軸受台(4)に支持された調整ねじ(11)を有すること
を特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
調整レバー(10)の他端に、回転可能なクランプ山形材(12)を有し、
クランプ山形材(12)の屈曲部分(12a)が、軸受台(4)の下方に可変な間隔を設けて係合したこと
を特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項5】
クランプ山形材(12)の屈曲部分(12a)に、調整ねじ(13)が配置され、
当該調整ねじは、調整ねじ(13)の位置調節を行うことにより、軸受台(4)の下面と屈曲部分(12a)との間の間隔が変化されるように、軸受台(4)の下方に支持されていること
を特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置を製造する方法であって、
連結部材(15)によりトーションバー(1a,1b,1c)を回転不能に結合する際、内側のトーションバー(1b)をねじって、1つの平面(A)にトーションバー機構(1)を配置することにより、第1の部分トルクを実現するステップと、
レバートーションバー(1a)および軸受トーションバー(1c)を軸受台(4)の相応の軸受座へ挿入するステップと、
レバートーションバー(1a)を長さ可変式レバー(6)に回転不能に結合し、トーションバー機構(1)の第2の部分トルクが実現されるまで、長さ可変式レバー(6)を旋回させ、当該長さ可変式レバー(6)を軸受台(4)に対して一時的に固定するステップと、
軸受トーションバー(1c)を調整装置(2)に回転不能に結合し、トーションバー機構(1)で目標とする全体のトルクが実現されるまで調整装置(2)を回転させ、調整装置(2)または軸受トーションバー(1c)を固定するステップと
を含む方法。
【請求項7】
トーションバー(1a,1b,1c)を、
形状嵌合式または材料結合式に連結部材(15)に結合可能とし、
追従リンク機構(3)を、連結部材(15)に対して旋回可能に軸受ウェブ(16)に支持すること
を特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
連結部材(15)を、長尺状に構成させるとともに、フラップまたはドア(8)の閉鎖位置と開放位置との間の半分の開放角とされるときに水平に位置させること
を特徴とする請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
長さ可変式レバー(6)を、形状嵌合式または材料結合式にレバートーションバー(1a)に結合するとともに、安全ピン(19)によって軸受台(4)に対して一時的に固定可能とすること
を特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
調整装置(2)を、材料結合式に軸受台(4)に結合可能とすること
を特徴とする請求項6ないし9のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−2058(P2012−2058A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133763(P2011−133763)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(591006586)アウディ アクチェンゲゼルシャフト (34)
【氏名又は名称原語表記】AUDI AG
【住所又は居所原語表記】D−85045 Ingolstadt,Germany
【Fターム(参考)】