フルオロケミカルウレタン−シラン化合物及びその水性組成物
フルオロケミカルウレタン化合物及びフルオロケミカルウレタン化合物に由来するコーティング組成物が記載される。この化合物及び組成物は、特に、セラミックス又はガラスのような硬質表面を有する基材の処理に使用されてよく、基材に親水性、疎油性をもたらし、洗浄しやすくする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロケミカルウレタン化合物及びフルオロケミカルウレタン化合物に由来するコーティング組成物に関し、これらは基材、特にセラミックス又はガラスなどの硬質表面を有する基材の処理に使用されてよく、親水性、撥油性、防汚性及び防塵性を付与する。
【背景技術】
【0002】
撥油性及び撥水性を付与する基材処理のための多数のフッ素化組成物が当技術分野において既知であるが、基材処理、特に、セラミックス、ガラス及び石のような硬質表面を有する基材に撥水性(疎水性)及び撥油性(疎油性)を付与し、容易に洗浄できるようにするために、更に改善された組成物を提供するという要望が引き続き存在している。親水性、疎油性を付与し、容易に洗浄できるようにするための処理も必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
望ましくは、かかる組成物及び組成物を使用する方法により、改善された特性を有するコーティングを得ることができる。特に、コーティングの摩耗耐性の改善を包含するコーティングの耐久性を改善することが好ましい。更には、使用する洗剤、水又は手作業を減らしながら、かかる基材の洗浄の容易さを改善することは、末端消費者による要望であるだけでなく、環境にも良い影響を与える。組成物は、容易及び安全な方法で適用されてよく、また現行の製造方法に対応する。好ましくは、組成物は、処理される基材を製造するために実施される製造プロセスに容易に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式
【0005】
【化1】
【0006】
式中、
Rfは、フッ素含有基であり、
R1は、ポリイソシアネートの残基であり、
Wは、次式のものであり、
【0007】
【化2】
【0008】
式中、W1は、水溶性基であり、vは、1又は2であり、
R2は、次式を有し、
【0009】
【化3】
【0010】
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、多価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、
qは、1〜5であり、
x及びyは、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zは、1又は2である。
【0011】
これらの化合物又はオリゴマーは、チオシランと側鎖エチレン性不飽和基を有するフッ素含有ウレタン化合物とのフリーラジカル付加反応生成物を含んでよく、このウレタン化合物は、ポリイソシアネート、1つ又は2つの求核イソシアネート反応性官能基を有する求核フッ素化化合物、及び少なくとも1つの求核エチレン性不飽和化合物の反応生成物を含む。他の実施形態では、化合物は、チオシランと求核エチレン性不飽和化合物を含む水溶性化合物とのフリーラジカル付加反応生成物、及びポリイソシアネートとの二次反応生成物、及びフッ素含有求核性化合物を含んでよい。
【0012】
特に指示しない限り、本明細書及び本特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下の意味を有する。
【0013】
「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、及びペンチルなどの、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖、環式又は非環式、飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。
【0014】
「アルキレン」は、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状飽和二価炭化水素ラジカル又は3〜約12個の炭素原子を有する分枝鎖状飽和二価炭化水素ラジカル、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、及び同類のものを意味する。
【0015】
「アルコキシ」は、例えば、CH3−O−、C2H5−O−などの、末端に酸素原子を有するアルキルを意味する。
【0016】
「アラルキレン」は、例えば、ベンジル、ピリジルメチル、1−ナフチルエチルなどの、アルキレンラジカルに結合した芳香族基を有する上記で定義されているアルキレンラジカルを意味する。「硬化化学組成物」は、化学組成物が乾燥するか、溶媒が周囲温度以上で約24時間までの間に乾燥するまでに、化学組成物から蒸発していることを意味する。本組成物は、更に、ウレタン化合物間に形成されるシロキサン結合の結果、架橋されてもよい。
【0017】
「フッ素化求核性化合物」は、1個又は2個の、ヒドロキシル基又はアミン基などの求核イソシアネート反応性官能基、及びペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロオキシアルキル、又はペルフルオロオキシアルキレン基、を有する化合物を意味し、例えば、CF9SO2N(CH3)CH2CH2OH、C4F9CH2CH2OH、C2F5O(C2F4O)3CF2CONHC2H4OH、c−C6F11CH2OH、HOCH2CH2C4F8CH2CH2OHなどである。
【0018】
「フルオロケミカルウレタン化合物」は、式Iの化合物を指し、それ自体がウレタン連結を有するか、あるいは尿素及び/又はチオ尿素連結を有するものを含む。
【0019】
「硬質基材」は、その形状を維持するいずれかの剛体材料を意味し、例えば、ガラス、セラミック、コンクリート、天然石、木材、金属、プラスチックなどである。
【0020】
「オキシアルコキシ」は、1個以上の酸素原子がアルキル鎖に存在し、存在する炭素原子の総数が50個以下であり得ることを除き、アルコキシとして上述の意味を本質的に有し、例えば、CH3CH2OCH2CH2O−、C4H9OCH2CH2OCH2CH2O−、CH3O(CH2CH2O)nHなどである。
【0021】
「オキシアルキル」は、1個以上の酸素へテロ原子がアルキル鎖に存在し得ることを除き、アルキルについて上述の意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1個の炭素により互いに分離されており、例えば、CH3CH2OCH2CH2−、CH3CH2OCH2CH2OCH(CH3)CH2−、C4F9CH2OCH2CH2−、などである。
【0022】
「オキシアルキレン」は、1個以上の酸素へテロ原子がアルキレン鎖に存在し得ることを除き、アルキレンについて上述の意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1個の炭素により互いに分離されており、例えば、−CH2OCH2O−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2CH2−、などである。
【0023】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード、好ましくはフルオロ及びクロロを意味する。
【0024】
「ペルフルオロアルキル」は、アルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が1〜約12であることを除き、「アルキル」として上述の意味を本質的に有し、例えばペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロオクチルなどである。
【0025】
「ペルフルオロアルキレン」は、アルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていることを除き、「アルキレン」として上述の意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロオクチレンなどである。
【0026】
「ペルフルオロオキシアルキル」は、オキシアルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100個であることを除き、「オキシアルキル」として上述の意味を本質的に有し、例えば、CF3CF2OCF2CF2−、CF3CF2O(CF2CF2O)3CF2CF2−、C3F7O(CF(CF3)CF2O)sCF(CF3)CF2−、(ここで、sは、(例えば)約1〜約50である)などである。
【0027】
「ペルフルオロオキシアルキレン」は、オキシアルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100個であることを除き、「オキシアルキレン」として上述の意味を本質的に有し、例えば、−CF2OCF2−、又は−[CF2−CF2−O]r−[CF(CF3)−CF2−O]s−、(式中、r及びsは、(例えば)1〜50の整数である)である。
【0028】
「ペルフルオロ基」は、炭素に結合した水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられている有機基を意味し、例えば、ペルフルオロアルキル及びペルフルオロオキシアルキルなどである。
【0029】
「多官能性イソシアネート化合物」又は「ポリイソシアネート」は、多価有機基に結合し、平均で1個を超え、好ましくは2個以上のイソシアネート基である−NCOを含有する化合物を意味し、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートなどである。
【0030】
「求核エチレン性不飽和化合物」は、1分子当たり少なくとも1個のイソシアネート反応性基、及びビニル基、アリル基及びアルコキシ基を含む、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する有機化合物を意味する。
【0031】
「水溶性化合物」は、1分子当たり少なくとも1個のチオール基、かつ少なくとも1個の水溶性基を有する有機化合物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、次式の新規フルオロケミカルウレタン化合物を提供する。
【0033】
【化4】
【0034】
式中、
Rfは、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
R1は、ポリイソシアネートの残基であり、
式中、W1は、水溶性基含有部分であり、Vは、1又は2であり、
R2は、次式を有し、
【0035】
【化5】
【0036】
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、vは、1又は2であり、
R2は、次式を有し、
【0037】
【化6】
【0038】
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、多価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3、好ましくは3であり、及び
qは、1〜5であり、好ましくは2〜5であり、
x及びyは、それぞれ独立して少なくとも1であり、zは、1又は2である。
【0039】
本発明者らは、理論に束縛されることを望まないが、上記式Iの化合物は、基材表面との縮合反応を受け、式IIの加水分解可能な「Y」基の加水分解又は置換を介し、シロキサン層を形成すると考える。本文中、「シロキサン」は、式Iの化合物に結合する−Si−O−Si−結合を指す。水の存在下で、「Y」基は「Si−OH」基に加水分解され、更にシロキサンに縮合する。
【0040】
式Iの化合物を包含するコーティング組成物から調製されるコーティングは、それ自体がペルフルオロポリエーテルシランを含み、加えて、予め選択された基材の表面への結合から得られたシロキサン誘導体を含む。コーティングはまた、未反応性又は非縮合性である「Si−Y」基、及び非反応性又は加水分解されたイソシアネート基を含むこともできる。組成物はまた、オリゴマーペルフルオロポリエーテルモノハイドライド、開始物質、及びペルフルオロポリエーテルアルコール及びエステル、並びにシルセスキオキサンなどの付加物質を更に含有してもよい。同様に、コーティングされたフルオロケミカルウレタンは、それ自体、式Iのシランを含んでよく、加えて、基材表面との反応から生じるシロキサン誘導体を含んでよい。
【0041】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物の水溶液、分散液又は懸濁液を含むコーティング組成物を提供する。あるいは、本発明は、式Iの化合物の有機溶媒溶液を含むコーティング組成物を提供する。更に、本発明は、基材と、式Iの化合物及び溶媒又は水を含むコーティング組成物と接触させる工程を含む、コーティング方法を提供する。コーティング組成物は、更に酸を含んでよい。一実施形態では、この方法は、基材と、式Iのシランを含むコーティング組成物とを接触させる工程、及び続けて基材と水性酸とを接触させる工程を含む。
【0042】
式Iのフルオロケミカル化合物の調製に有用なポリイソシアネート化合物は、多価脂肪族、脂環式部分若しくは芳香族部分(R1)、又はビウレット、イソシアヌレート若しくはウレトジオンに結合した多価脂肪族部分、脂環式部分又は芳香族部分、又はこれらの混合物を含むことができる多価有機基に結合したイソシアネート基を含む。好ましい多官能性イソシアネート化合物は、少なくとも2個のイソシアネート(−NCO)ラジカルを含有する。少なくとも2個の−NCOラジカルを含有する化合物は好ましくは、−NCOラジカルが結合した、二価若しくは三価の脂肪族基、脂環式基、アラルキル基又は芳香族基からなる。脂肪族の二価又は三価の基が好ましい。
【0043】
好適なポリイソシアネート化合物の代表的な例としては、本明細書で定義したポリイソシアネート化合物のイソシアネート官能性誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、イソシアネート化合物類の、尿素、ビウレット、アロファネート、二量体及び三量体(ウレトジオン及びイソシアヌレートなど)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族、脂環式、アラルキル、又は芳香族ポリイソシアネートのようなあらゆる好適な有機ポリイソシアネートを、単独若しくは2つ以上の混合物として使用してよい。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネート化合物は、一般的には、芳香族化合物より優れた光安定性を提供する一方、芳香族ポリイソシアネート化合物は、一般的には、脂肪族ポリイソシアネート化合物よりより経済的であり、求核剤に対して反応性が高い。好適な芳香族ポリイソシアネート化合物には、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパンによるTDIの付加物(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)CBとして入手可能)、TDIのイソシアヌレートトリマー(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)ILとして入手可能)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−ナフタレン、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
有用な脂環式ポリイソシアネート化合物の例には、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI、バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手可能なデスモデュア(Desmodur)(商標)として市販)、4,4’−イソプロピル−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,4−シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)(BDI)、二量体酸ジイソシアネート(バイエル社(Bayer)から入手可能)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
有用な脂肪族ポリイソシアネート化合物の例には、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、ジイソシアネート二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの尿素、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)のビウレット(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)N−100及びN−3200)、HDIのイソシアヌレート(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)N−3300及びデスモデュア(Desmodur)(商標)N−3600)、HDIのイソシアヌレートとHDIのウレトジオンのブレンド(デスモデュア(Desmodur)(商標)N−3400としてバイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手可能)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
有用なアラルキルポリイソシアネートの例としては、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−(1−イソシアナトエチル)−フェニルイソシアネート、m−(3−イソシアナトブチル)フェニルイソシアネート、4−(2−イソシアナトシクロヘキシル−メチル)フェニルイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
一般に、好ましいポリイソシアネートとしては、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、これらの混合物、並びにビウレット、イソシアヌレート又はウレトジオン誘導体からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0049】
フルオロケミカルウレタンは、部分的に、一官能性又は二官能性ペルフルオロ化基及び少なくとも1個の求核イソシアネート反応性官能基を有するフッ素化化合物の反応生成物(本明細書では「求核フッ素化化合物」)を含む。このような化合物には、次式のものが挙げられる。
【0050】
Rf1−[Q(X2H)y]z (III)
式中、
Rf1は、一価のペルフルオロアルキル若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qは、共有結合又は価数zの多価アルキレン基であり、このアルキレンは、1個以上のカテナリー(鎖中)窒素又は酸素原子を含有するか又は含有せず、1個以上のスルホンアミド基、アルボキシアミド基又はカルボキシ官能基を含有するか又は含有せず、
X2は、−O−、−NR4−、又は−S−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
yは、1又は2であり、
zは、1又は2である。
【0051】
式I及びIIIに関して、求核フッ素化化合物(III)とポリイソシアネートのイソシアネート基との間の反応によって、以下の式の基が生成される
【0052】
【化7】
【0053】
式中、Rf1、Q、X2、y及びzは、式IIIについて前に定義したとおりである。
【0054】
式III及びIVのRf1基は、直鎖、分枝鎖、又は環式のフッ素化基又はこれらの組み合わせを含有することができ、一価又は二価であることができる。Rf1基は、炭素−酸素−炭素鎖(即ち、オキシアルキレン基)を形成するために、炭素−炭素鎖中に1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有しないことができる。完全にフッ素化された基が、一般には好ましいが、2個の炭素原子毎に1つ以下のいずれかの原子が存在するならば、置換基として水素又は塩素原子も存在できる。
【0055】
いずれかのRf1基は、少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含有することが更に好ましい。一価のRf1基の末端部分は、通常は完全にフッ素化されており、好ましくは、例えば、CF3−、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、(CF3)2N−、(CF3)2CF−、SF5CF2−、のような少なくとも3個のフッ素原子を含有する。特定の実施形態では、nが2〜12である、一価のペルフルオロアルキル基(即ち、式CnF2n+1−のもの)又は二価のペルフルオロアルキレン基(即ち、式−CnF2n−のもの)が好ましいRf1基であり、n=3〜5がより好ましく、n=4が最も好ましい。
【0056】
有用なペルフルオロオキシアルキル基及びペルフルオロオキシアルキレン基は次式に相当する。
【0057】
Rf6−Rf3−O−Rf4−(Rf5)q− (V)
式中、
Rf6は、一価のペルフルオロオキシアルキルにおいてはF(フッ素)であり、二価のペルフルオロオキシアルキレンにおいては開殻価電子(「−」)であり、
Rf3は、ペルフルオロアルキレン基であり、Rf4は、1、2、3又は4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基、又はかかるペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、Rf5は、ペルフルオロアルキレン基であり、qは、0又は1である。式(IV)におけるペルフルオロアルキレン基Rf3及びRf5は、直鎖又は分枝鎖であってよく、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含んでよい。典型的な一価のペルフルオロアルキル基は、CF3−CF2−CF2−であって、典型的な二価のペルフルオロアルキレンは、−CF2−CF2−CF2−、−CF2−又は−CF(CF3)−である。ペルフルオロアルキレンオキシ基Rf4の例としては、−CF2−CF2−O−、−CF(CF3)−CF2−O−、−CF2−CF(CF3)−O−、−CF2−CF2−CF2−O−、−CF2−O−、−CF(CF3)−O−、及び−CF2−CF2−CF2−CF2−O、が挙げられ、これらは、例えば、3〜30回繰り返されてよい。
【0058】
ペルフルオロアルキレンオキシ基Rf4は、同一のペルフルオロオキシアルキレン単位、又は異なるペルフルオロオキシアルキレン単位の混合物から、構成されてよい。ペルフルオロオキシアルキレン基が、異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位からなる場合、それらは、ランダム構成、交互構成で存在することができ、又はブロックとして存在することができる。ペルフルオロ化ポリ(オキシアルキレン)基の典型例としては、
−[CF2−CF2−O]r−、−[CF(CF3)−CF2−O]s−、−[CF2CF2−O]r−[CF2O]t−、−[CF2CF2CF2CF2−O]u、及び−[CF2−CF2−O]r−[CF(CF3)−CF2−O]s−が挙げられ、r、s、t及びuのそれぞれは、1〜50、好ましくは2〜25の整数である。式(V)に相当する好ましいペルフルオロオキシアルキル基は、CF3−CF2−CF2−O−[CF(CF3)−CF2O]s−CF(CF3)CF2−であり、sは1〜50の整数である。
【0059】
ペルフルオロオキシアルキレン化合物及びペルフルオロオキシアルキル化合物は、末端カルボニルフルオリド基を生じる、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により得ることができる。このフッ化カルボニルを、当業者に周知の反応によって、酸、エテスル、又はアルコールに変換させてよい。次に、フッ化カルボニル若しくは酸、エステル又はそれから生じたアルコールを更に反応させ、既知の手順に従って、所望のイソシアネート反応性基を導入してよい。
【0060】
式I〜IIIに関して、x又はzは1であり、モノアルコール及びモノアミンなどの求核フルオロケミカル一官能性化合物が考えられる。有用なフルオロケミカル一官能性化合物の代表的な例としては、
CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH2CH2OH、CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH(CH3)CH2OH、
CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH2CH(CH3)NH2、CF3(CF2)3SO2N(CH2CH3)CH2CH2SH、
CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH2CH2SCH2CH2OH、C6F13SO2N(CH3)(CH2)4OH、
CF3(CF2)7SO2N(H)(CH2)3OH、C3F7SO2N(CH3)CH2CH2OH、
CF3(CF2)4SO2N(CH3)(CH2)4NH2、C4F9SO2N(CH3)(CH2)11OH、
CF3(CF2)5SO2N(CH2CH3)CH2CH2OH、CF3(CF2)5SO2N(C2H5)(CH2)6OH、
CF3(CF2)2SO2N(C2H5)(CH2)4OH、CF3(CF2)3SO2N(C3H7)CH2OCH2CH2CH2OH、
CF3(CF2)4SO2N(CH2CH2CH3)CH2CH2OH、
CF3(CF2)4SO2N(CH2CH2CH3)CH2CH2NHCH3、
CF3(CF2)3SO2N(C4H9)CH2CH2NH2、CF3(CF2)3SO2N(C4H9)(CH2)4SH、
CF3(CF2)3CH2CH2OH、C4F9OC2F4OCF2CH2OCH2CH2OH、
n−C6F13CF(CF3)CON(H)CH2CH2OH、C6F13CF(CF3)CO2C2H4CH(CH3)OH、
C3F7CON(H)CH2CH2OH、C3F7O(CF(CF3)CF2O)1〜36CF(CF3)CH2OH、
など、及びこれらの混合物が挙げられる。所望により、その他のイソシアネート反応性官能基が、記載されたものの代わりに使用されてよい。
【0061】
式I〜IIIに関して、式中、x又はzは2であり、フッ素化ポリオールが好ましい。好適なフッ素化ポリオールの代表的な例としては、Rf1SO2N(CH2CH2OH)2、例えばN−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;
Rf1OC6H4SO2N(CH2CH2OH)2;Rf1SO2N(R’)CH2CH(OH)CH2OH、例えばC6F13SO2N(C3H7)CH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CON(CH2CH2OH)2;
Rf1CON(CH2CH2OH)2;CF3CF2(OCF2CF2)3OCF2CON(CH3)CH2CH(OH)CH2OH;
Rf1OCH2CH(OH)CH2OH、例えばC4F9OCH2CH(OH)CH2OH; Rf1CH2CH2SC3H6OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH2SC3H6CH(CH2OH)2;
Rf1CH2CH2SCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH2SCH(CH2OH)CH2CH2OH;
Rf1CH2CH2CH2SCH2CH(OH)CH2OH、例えばC5F11(CH2)3SCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1CH2CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、例えばC5F11(CH2)3OCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1CH2CH2CH2OC2H4OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH2(CH3)OCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1(CH2)4SC3H6CH(CH2OH)CH2OH;Rf1(CH2)4SCH2CH(CH2OH)2;
Rf1(CH2)4SC3H6OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH(C4H9)SCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1CH2OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH(OH)CH2SCH2CH2OH;
Rf1CH2CH(OH)CH2SCH2CH2OH;Rf1CH2CH(OH)CH2OCH2CH2OH;
Rf1CH2CH(OH)CH2OH;Rf1R’’SCH(R’’’OH)CH(R’’’OH)SR’’Rf;
(Rf1CH2CH2SCH2CH2SCH2)2C(CH2OH)2;((CF3)2CFO(CF2)2(CH2)2SCH2)2C(CH2OH)2;
(Rf1R’’SCH2)2C(CH2OH)2;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2OC2F4O(CF2)4OC2F4OCF2CH2OH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2CF2O(CF2)4OCF2CF2CH2OH);フッ素化オキセタンの開環重合により製造されるフッ素化オキセタンポリオール、例えばポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オハイオ州アクロン(Akron)のオムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)より入手可能);米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されるような、フッ素化有機基置換エポキシドの少なくとも2個のヒドロキシル基を含む化合物との開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;及びペルフルオロポリエーテルジオール、例えばフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(オーシモント(Ausimont)より入手可能なHOCH2CF2O(CF2O)8〜12(CF2CF2O)8〜12CF2CH2OH)が挙げられ、式中、Rf1は、1〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は3〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロオキシアルキル基(存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が、6個以下の炭素原子を有する)、又はこれらの混合物であり、R’は、1〜4個の炭素原子のアルキルであり、R’’は、1〜12個の炭素原子の分枝鎖又は直鎖アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレンチオ−アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレン−オキシアルキレン、又は2〜12個の炭素原子のアルキレンイミノアルキレンであり、ここで、窒素原子は、第3置換基として、水素又は1〜6個の炭素原子のアルキルを有し、R’’’は、1〜12個の炭素原子の直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、又は式CrH2r(OCSH2S)tのアルキレン−ポリオキシアルキレン(式中、rは、1〜12であり、sは、2〜6であり、tは、1〜40)である。
【0062】
好ましいフッ素化ポリオールとして、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;フッ素化オキセタンの開環重合により製造されるフッ素化オキセタンポリオール、例えばポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オハイオ州アクロン(Akron)のオムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)より入手可能);米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されるような、フッ素化有機基置換エポキシドの少なくとも2個のヒドロキシル基を含む化合物との開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;ペルフルオロポリエーテルジオール、例えばフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(オーシモント(Ausimont)より入手可能なHOCH2CF2O(CF2O)8〜12(CF2CF2O)8〜12CF2CH2OH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2OC2F4O(CF2)4OC2F4OCF2CH2OH);及び、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2CF2O(CF2)4OCF2CF2CH2OH)が挙げられる。
【0063】
少なくとも1個のフッ素含有基からなる、より好ましいポリオールとしては、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2CF2O(CF2)4OCF2CF2CH2OH)及びCF3CF2CF2−O−[CF(CF3)CF2O]3〜25−CF(CF3)−が挙げられる。このペルフルオロ化ポリエーテル基は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化に由来することができる。かかるペルフルオロ化ポリエーテル基は、環境に優しい特性を有しているため、特に好ましい。
【0064】
式Iの化合物は、水中でより容易に分散することができる撥水性添加剤を得るために、水溶性基を形成することのできる1つ以上の水溶性基を含む。好適な水溶性基としては、カチオン性基、アニオン性基及び双性イオン性基、並びに非イオン性水溶性基が挙げられる。
【0065】
フルオロケミカル化合物は、部分的に、1つ以上の水溶性基と少なくとも1個のチオール基とを含む水溶性化合物のフリーラジカル付加反応生成物を、更に含んでよい。水溶性化合物は、次式で表すことができる。
【0066】
HS−R5−(W1)w (VI)
式中、R5は、二価アルキレン基であり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、W1は、水溶性基であり、wは1〜3である。
【0067】
水溶性化合物の水溶性基は、水への溶解性又は分散性を高めるものであり、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシレート基、サルフェート基、スルホネート基、ホスフェート基、ホスホネート基、アンモニウム基、及び四級アンモニウム基が挙げられる。このような基は、それぞれ、−CO2M、−OH、−OSO3M、−SO3M、−PO(OM)2、−P(OM)3、−NR82HX、−NR83X、−NR8H2X、及び−NH3Xで表されてよく、式中、Mは、H、又はナトリウム、カリウム、カルシウム、及びN(R4)3H+などの一価又は二価の可溶性カチオンに相当するものであり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、Xは、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、スルホネートなどからなる群から選択される可溶性アニオンであり、R8は、フェニル基、脂環式基、又は約1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖脂肪族基からなる群から選択される。好ましくは、R8は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基である。官能基−NR83Xは、水溶性酸の塩であり、例えば塩化トリメチルアンモニウム、硫酸ピリジニウムなど、又はアンモニウム置換基である。官能基−NR82HXは、水溶性酸の塩であり、例えばジメチルアンモニウムアセテート又はジメチルアンモニウムプロピオネートである。官能基−NR8H2Xは、水溶性酸の塩であり、例えばメチルアンモニウムアセテート又はメチルアンモニウムプロピオネートである。官能基−NH3Xは、水溶性酸の塩であり、例えばアンモニウムアセテート又はアンモニウムプロピオネートである。塩の形態は、酸性基と、アミン、四級アンモニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩又は水酸化物などの塩基とを単純に中和するか、あるいは、アミノ基と、カルボン酸、スルホン酸、ハロ酸などを単純に反応させることで生成することができる。
【0068】
好適な水溶性基を有するイオン性水溶性化合物の実例としては、HSCH2COOH、HSCH2CH2OH、(HSCH2CH2)2NCH2COOH、HSC(CO2H)(CH2CO2H)2、(HS(CH2)nCH2)2NCH3(式中、nは1〜3の整数);(HSCH2)2C(CH3)COOH、(HS(CH2)nCH2)2NCH3(式中、nは1〜3の整数);HSCH2CH(OH)CO2Na;(HSCH2CH2N(CH2COOH)2)、(HSCH(COOH)(CH2CH2COOH))、(HSCH(COOH)(CH2COOH))、(HSCH2COOH);(HSCH(CH2N(CH2COOH)2)2);HSCH(COOH)(CH2COOH);HS(CH2)4CH(COOH)N(CH2COOH)2;HSCH(COOH)CH(COOH)CH2COOH;(HSCH2)2CHCH2COO)−(NH(CH3)3)+;HSCH2CH2OSO3Na;HSC2H4NHC2H4SO3H;HSC3H6NH(CH3)C3H6SO3H;(HSC2H4)2NC3H6OSO3Na;(HSCH2CH2)2NC6H4OCH2CH2OSO2OH;(HSC6H4SO3)−(NH(C2H5)3)+、並びに上記アミン、カルボン酸、及びスルホン酸の塩からなる群から独立して選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
フルオロケミカルウレタン化合物は、イソシアネート反応性の求核官能基と少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する求核エチレン性不飽和化合物(以下、「求核不飽和化合物」)の反応生成物を部分的に含む。不飽和基は、ビニル、アリル又はアリルオキシであってよく、求核官能基は、アミノ又はヒドロキシ基であってよい。好ましくは、不飽和基は、ビニルオキシ基、例えばCH2=CHO−ではない。好ましくは、求核不飽和化合物は、ヒドロキシル基及び少なくとも2個の不飽和基を有する多不飽和化合物である。
【0070】
このような化合物には、次式のものが挙げられる。
【0071】
HX1−R3−(CH=CH2)q (VII)
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、二価アルキレン基若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
qは、1〜5である。
【0072】
好ましくは、qは、1を超える。生じた求核多不飽和化合物は、ウレタン化合物に多くのシラン基を付加することができる。シラン基及び水溶性基と−NH−C(O)−X1−基とのモル比は、1:1を超えてよく、又は2:1を超えてよい。好ましくは、HX1−は、芳香環、例えばフェノール化合物と直接は結合しない。
【0073】
式VIIの化合物としては、ポリオールの末端モノ−、ジ−又はポリ不飽和エーテルが挙げられ、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール−A、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール、トリシクロデカンジメチノール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。
【0074】
有用な求核不飽和化合物としては、ヒドロキシアルケンが挙げられ、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、アリルオキシエチルアルコール、2−アリルオキシメチルプロパノール(ジメチロールエタンから)、及び2,2−ジ(アリルオキシメチル)ブタノール(トリメチロールプロパンから)、並びにそれらに対応するアミンである。
【0075】
求核不飽和化合物(VII)は、ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部と反応し、側鎖不飽和基を有するウレタン化合物(以下のVIII)を形成でき、続いてチオシラン(後述)及び水溶性化合物(VI)と反応し、式Iの化合物を形成できる。
【0076】
求核不飽和化合物のイソシアネートとの反応生成物は、以下の一般式を有する。
【0077】
【化8】
【0078】
式中、
Rfは、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
R1は、ポリイソシアネートの残基であり、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、二価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
xは、1又は2であり、
yは、少なくとも1であり、
zは、1又は2であり、
qは、1〜5、好ましくは2〜5である。
【0079】
フルオロケミカルウレタン化合物は、部分的に、チオシランと式VII又はVIIIの化合物の不飽和基とのフリーラジカル付加反応生成物を含む。
【0080】
チオシランは、以下の式を有する。
【0081】
【化9】
【0082】
式中、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2又は3である。
【0083】
式(VIII)中、Yは加水分解性基を表し、例えばハロゲン化物、C1〜C4のアルコキシ基、アシルオキシ基、又は米国特許第5,274,159号に記載されるようなポリオキシエチレン基などのポリオキシアルキレン基である。加水分解性とは、Y基が水と交換反応を経て、更に反応してシロキサン基を形成し得るSi−OH部分を形成することを意味する。加水分解性基の具体的な例としては、メトキシ、エトキシ及びプロポキシ基、塩素及びアセトキシ基が挙げられる。R6は、一般に非加水分解性である。
【0084】
チオシラン(IX)及び/又は水溶性化合物(VI)は、求核不飽和化合物VIIと反応して付加生成物を形成し、続いてポリイソシアネートと反応できる(求核フッ素化化合物IIIによる官能化の前又は後のいずれかで)。あるいは、式VIIの求核不飽和化合物は、まずポリイソシアネートと反応して式VIIIのウレタン化合物を形成し、ウレタン化合物のエチレン性不飽和基側鎖へのチオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)のフリーラジカル付加が続く。好ましくは、求核不飽和化合物(VII)がまずポリイソシアネートと反応し(この場合も、求核フッ素化化合物IIIとの反応の前又は後)、側鎖不飽和基を有するウレタン化合物を形成し、そこへチオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)がフリーラジカル付加により付加される。一般的な反応スキームを以下に示す。
【0085】
(Rf)x−R1−(NCO)y+(VII)→(VIII)
(VIII)+(VI)+(IX)→(I)、又は
【0086】
【化10】
【0087】
X+(Rf)x−R1−(NCO)y→(I)
有用なチオシランとして、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(メルカプトメチル)メチルジエトキシシランが挙げられる。
【0088】
チオシラン(IX)及び水溶性化合物(V)の、エチレン性不飽和化合物(VII又はVIII)のいずれかへの付加を、フリーラジカル反応開始剤を用いて達成してよい。有用なフリーラジカル反応開始剤としては、無機及び有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、アゾ化合物、酸化還元系(例えば、K2S2O8及びNa2S2O5の混合物)、及びフリーラジカル光反応開始剤(例えば、K.K.ダイエットライカー(K.K. Dietliker)により、コーティング、インク及び塗料用のUV及びEB配合物の化学及び技術(Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints)、第3巻、276〜298頁、SITAテクノロジー社(SITA Technology Ltd.)、ロンドン(1991)に記載されるもの)が挙げられる。代表的な例としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルベンゾアート、クメンヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、(VAZO67)及びアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)が挙げられる。当業者は、反応開始剤の選択は、具体的な反応条件、例えば、溶媒の選択に応じて決定されることを理解するだろう。
【0089】
チオシランへのフリーラジカル付加によって、エチレン性不飽和基の少なくとも1つ以上の炭素が置換されることが可能であることが理解され、より少ない置換炭素への付加を簡単に以下の式で示す。したがって、
〜R3−CH=CH2+HS−R5〜→〜R3−CH2−CH2−S−R5〜及び/又は〜R3−CH(CH3)−S−R5〜
フルオロケミカル化合物は、求核不飽和化合物(複数)と、フッ素含有求核性化合物(複数)と、ポリイソシアネート化合物(複数)とを単純にブレンドし、続いてチオシラン(IX)及び/又は水溶性化合物(VI)の不飽和基へのフリーラジカル付加を行うことで製造することができる。当業者に理解されるように、ブレンドの順序又は工程の順序は限定的ではなく、所望のフルオロケミカルウレタン化合物を製造するために変更することができる。一実施形態では、例えば、ポリイソシアネート化合物(複数)及び求核フルオロケミカル化合物(III)を、まずイソシアネート基の一部と反応させ、次に残りのイソシアネート基全て又は一部を有する求核不飽和化合物(VII)と反応させ、続いてチオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)の側鎖不飽和基へのフリーラジカル付加を行う。
【0090】
一般に、求核反応性成分、ポリイソシアネート及び溶媒を、素早く連続して、又は予め製造した混合物として、乾燥した反応槽に合わせて投入する。均質な混合物又は溶液が得られると、触媒が所望により追加され、反応混合物は、ある温度で、反応が起こるのに十分な時間加熱される。反応の進行は、IR中のイソシアネートピークの消失を観察することにより判断できる。
【0091】
一般に、求核フッ素化化合物Rf−Q(X2H)z(III)は、存在するイソシアネート官能基の5〜50モルパーセントと反応するのに十分な量で使用される。好ましくは、化合物IIIを使用し、イソシアネート基の10〜30モルパーセントと反応させる。残りのイソシアネート基、約50〜95モルパーセント、好ましくは70〜90モルパーセントが、求核不飽和化合物(VII)により官能化され、続いてチオシラン(IX)及び/又は水溶性化合物(VI)のフリーラジカル付加により、あるいは、式VII(VI)及び(IX)の化合物の反応生成物により、側鎖フルオロケミカル基、側鎖水溶性基及び側鎖シラン基の両方を有する式Iのウレタン化合物を生じる。
【0092】
好ましくは、求核基(フッ素含有求核性化合物及び求核不飽和化合物の両方の)の総当量数と、イソシアネート基の総当量数との比率は、約1:1であり、即ち全て又は本質的に全てのイソシアネート基が反応する。
【0093】
反応条件(例えば、使用される反応温度及び/又はポリイソシアネート)によって、イソシアネートの縮合反応を達成するために、反応混合物の約0.5重量パーセントまでの濃度の触媒を使用し得るが、典型的には約0.00005〜約0.5重量パーセントが使用され、0.02〜0.1重量パーセントが好ましい。一般に、求核基がアミン基の場合、触媒は不要である。
【0094】
好適な触媒としては、三級アミン及びスズ化合物類が挙げられるが、これらに限定されない。有用なスズ化合物の例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジ−2−エチルヘキサノエート、及びジブチルスズオキシドなどの、スズII及びスズIV塩類が挙げられる。有用な三級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、モルホリン化合物、例えばエチルモルホリン、及び2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ−7−エン(DBU)が挙げられる。スズ化合物が好ましい。酸触媒が用いられる場合、生成物から除去されるか、反応後に中和されるのが好ましい。触媒の存在により、接触角特性に悪影響を及ぼす可能性があることが判明している。
【0095】
ウレタン分子の混合物を含む本発明のフルオロケミカル組成物は、バッチ方式に加えて、以下の段階的な合成により製造することもできる。合成では、ポリイソシアネート及びフッ素化求核性化合物(複数)を、乾燥条件下で好ましくは溶媒に合わせて溶解し、得られた溶液を、所望により触媒の存在下で、縮合反応を起こすのに十分な温度で加熱する。その結果、側鎖フッ素含有基が、イソシアネート官能性ウレタンオリゴマー及び化合物に結合される。
【0096】
次に、生じたイソシアネートフルオロケミカル官能性ウレタン化合物を、更に1つ以上の求核不飽和化合物(VII)と反応させ、上述のように上述の反応混合物に加え、残りの又は残りのうちの大部分のイソシアネート基と反応させ、側鎖フルオロケミカル基及び側鎖不飽和基(この不飽和基は、チオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)のフリーラジカル付加により更に官能化され得る)の両方を有するウレタン化合物を生じる。
【0097】
本発明の組成物は、基材上にコーティングされ、少なくとも部分的に硬化されて、コーティングされた物品を提供する。いくつかの実施形態では、重合したコーティングは、傷抵抗、落書き耐性、汚れ防止、接着剤剥離、低屈折率、及び撥水性のうち少なくとも1つを提供する保護コーティングを形成してよい。本発明によるコーティング物品としては、例えば、眼鏡レンズ、鏡、窓、接着剥離ライナー、及び落書き防止フィルムが挙げられる。
【0098】
好適な基材としては、例えば、ガラス(例えば、窓、並びに例えば、レンズ及び鏡などの光学素子)、セラミック(例えば、セラミックタイル)、セメント、石、塗装又はクリアコート表面(例えば、車体パネル、ボートの表面)、金属(例えば、建築用の支柱)、紙(例えば、接着剤剥離ライナー)、厚紙(例えば、食品容器)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。それらの基材はフィルムやシートであってもよいし、あるいはなにか他の形態であってもよい。基材は、透明又は半透明な表示素子、所望によりその上にセラマー又はシルセスキオキサンハードコートを有してよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、フルオロケミカルウレタン化合物及び水又は溶媒の混合物を含むコーティング組成物が提供される。本発明のコーティング組成物は、本発明のフルオロケミカル化合物の溶媒又は水への懸濁液、分散液又は溶液を含む。コーティングとして適用される際、コーティング組成物は、疎油性、親水性、及び防汚特性を、任意の多種多様な基材に付与する。
【0100】
「疎油性」は、油又は油脂をはじくか、混合しにくい傾向を有することを意味し、「親水性」は、水と結合するか、水を吸収する傾向が強いことを意味する。したがって、基材に適用される際、式Iの化合物は、コーティングの乾燥及び硬化後に測定される基材と水との接触角を約60°未満、好ましくは約50°未満、及び最も好ましくは45°未満へ低減させ、n−ヘキサデカンとの接触角を少なくとも20°、好ましくは少なくとも25°、最も好ましくは少なくとも30°へ低減する程度まで、その表面張力を低下させる。疎油性表面は汚れを阻止又は防ぎ、親水性表面は、水を表面上に「広げる」ことができる。
【0101】
フルオロケミカル化合物は、水中に、溶解、懸濁、又は分散して、基材上にコーティングするのに好適なコーティング組成物を形成することができる。一般に、コーティング組成物は、約0.1〜約50重量パーセント、又は更に最大約90重量パーセントまで(組成物の総重量に基づいて)の不揮発性固体を含有できる。好ましくは、コーティング組成物は、合計約1〜10パーセントの固体を含有する。より好ましくは、コーティングに使用されるフルオロケミカルウレタン化合物の量は、固形分の約0.1〜約0.5重量パーセントである。
【0102】
溶媒溶液において、好適な溶媒として、アルコール、エステル、グリコールエーテル、アミド、ケトン、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、塩化炭化水素、クロロカーボン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0103】
製造の簡便性及びコストの理由から、本発明の組成物は、シランに由来する1つ以上のポリエーテルイソシアネートの濃縮物を使用の直前に希釈することで調製することができる。濃縮物は、一般的に、有機溶媒中に式Iの化合物の濃縮溶液を含む。濃縮物は、数週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間安定であるべきである。フッ素化イソシアネート由来シランは、有機溶媒中に高濃度で容易に溶解できることが判明している。
【0104】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、式Iのウレタン化合物の水性分散液、水溶液又は水性懸濁液を含む。シリル基(式IIの「q」が2以上のときのように)及び水溶性基の濃度が高いため、化合物は水に容易に懸濁される。これら水性コーティング組成物を、所望により界面活性剤を含む、化合物の有機溶媒溶液に攪拌しながら水を追加することにより水中に「転化」させ、減圧下で攪拌しながら有機溶媒を除去することにより、調製してよい。高せん断攪拌が、好ましい懸濁液の攪拌手段である。
【0105】
エマルションの調製に有用な界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、及び両性界面活性剤の種類が挙げられる。カチオン性界面活性剤は、シラン及びシロキサン基に悪影響を及ぼすため、一般的には有用ではない。有用なアニオン性界面活性剤としては、スルホスクシネート及びその誘導体、アルキルアリールスルホネート、オレフィンスルホネート、ホスフェートエステル、エトキシル化アルキルフェノールのサルフェート及びスルホネート、エトキシル化脂肪族アルコールのサルフェート及びスルホネート、脂肪酸エステルのサルフェート、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な非イオン性界面活性剤としては、エトキシル化脂肪族アルコール、エトキシル化脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化アルキルフェノール、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な両性界面活性剤としては、ベタイン誘導体、スルホベタイン誘導体、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
水に加えて、本発明の組成物はまた有機酸又は無機酸を含んでもよい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、ギ酸など;CF3SO3H、C3F7CO2K又はRf2[−(L)a−Z]b(式中、Rf2は、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシ基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、Lは、有機二価連結基を表し、Zはカルボン酸、スルホン酸又はリン酸基などの酸基を表し、aは、0又は1であり、bは、1又は2である)により表すことができるもののようなフッ素化有機酸が挙げられる。
【0107】
好適なRf2基の例としては、上述のRfについてのようなものが挙げられる。式(IV)の有機酸の例としては、デュポン(DuPont)から市販されているC3F7O(CF(CF3)CF2)10〜30CF(CF3)COOH、又はCF3(CF2)2OCF(CF3)COOHが挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、塩酸などが挙げられる。酸は、一般的に、シランの重量に対して、約0.01〜10重量%、より好ましくは0.05重量%〜5重量%の量で、組成物中に含まれる。
【0108】
酸は、コーティング組成物それ自体へと処方されるか、又はペルフルオロポリエーテルシランと共にコーティングした後で処方されてよく、コーティング基材は、酸溶液に浸漬されて、シロキサン層の形成をもたらす。
【0109】
コーティング組成物は、コーティングの耐久性を実質的に向上させることが判明している、アミノシランを更に含有してよい。一般に、アミノシランを、コーティング組成物の総固体に対して、0.1〜25重量%で添加できる。出願者らは、この範囲を上回ると、コーティングの光沢が曇る/失うことになり、この範囲を下回ると、摩耗耐性が低下することを観察している。好ましくは、アミノシランは、1〜10重量%、最も好ましくは2〜7重量%で用いられる。少量のイソプロパノール又はその他好適な溶媒を添加し、アミノシランの安定性を高めてよい。
【0110】
有用なアミノシランは、以下の一般式で表すことができる。
【0111】
【化11】
【0112】
式中、
R9は、H、C1〜C4のアルキル、又は−R5−Si(Yp)(R6)3−pであり、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2又は3、好ましくは3である。
【0113】
本発明の実施に際して有用ないくつかのアミノシランは、米国特許第4,378,250号(トレッドウェイ(Treadway)ら)に記載されており、アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリブトキシシラン、β−アミノエチルトリプロポキシシラン、α−アミノ−エチルトリメトキシシラン、α−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、
β−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルトリエトキシシラン、
β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、β−アミノプロピルトリブトキシシラン、
α−アミノプロピルトリメトキシシラン、α−アミノプロピルトリエトキシシラン、
α−アミノプロピルトリブトキシシラン、及びα−アミノプロピルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0114】
米国特許第4,378,250号(トレッドウェイ(Treadway)ら)に記載されるものを含む、少量(アミノシランの総量に対し<20モルパーセント)のカテナリー窒素含有アミノシランも使用することができる。N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシランである。
【0115】
本発明のコーティング組成物は、シルセスキオキサンを含んでもよい。有用なシルセスキオキサンとしては、式R102Si(OR11)2のジオルガノオキシシラン(又はそのヒドロシレート)と、式R10SiO3/2のオルガノシラン(又はそのヒドロシレート)との共縮合物が挙げられるが、ここで、それぞれのR10は、1〜6個の炭素原子のアルキル基又はアリール基であり、R11は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。好適なシルセスキオキサンは、組成物に添加する前には、中性又はアニオン性のシルセスキオキサンである。有用なシルセスキオキサンは、米国特許第3,493,424号(モーロック(Mohrlok)ら)、同第4,351,736号(シュタインバーガー(Steinberger)ら)、同第5,073,442号(ノールトン(Knowlton)ら)、及び同第4,781,844号(コートマン(Kortmann)ら)に記載される技術により製造できる。コーティング溶液は、全固形分(即ち式Iのフルオロケミカルウレタン及びシルセスキオキサン)に対して、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、及びより好ましくは少なくとも99.5重量%のシルセスキオキサンを含む。
【0116】
シルセスキオキサンは、シランを、水、緩衝剤、界面活性剤及び所望により有機溶媒の混合物に添加し、その混合物を酸性又は塩基性条件下で攪拌することによって、調製することができる。200〜500オングストロームの狭い粒径範囲とするためには、シランを一定量でゆっくりと添加するのが好ましい。添加可能なシランの正確な量は、置換基Rや、界面活性剤にアニオン性のものを使用したかカチオン性のものを使用したかによって変わってくる。シルセスキオキサンの共縮合物は、その中の単位の分布がブロック状であってもランダムであってもよいが、シランの同時加水分解によって形成される。存在する、テトラアルコキシシラン及びそのヒドロシレート(例えば式Si(OH)4を有する)を含むテトラオルガノシランの量は、シルセスキオキサンの重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0117】
本発明のシルセスキオキサンの調製において、以下のシランが有用である:メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトシキシラン、及び2−エチルブトキシトリエトキシシラン。
【0118】
組成物は、従来技術、例えば、スプレー法、ナイフコーティング法、ノッチコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、フラッドコーティング法又はスピンコーティング法などによって、基材に適用してよい。典型的には、重合性組成物は、乾燥硬化させた層が約40nm〜約60nmの範囲の厚みを有するように、基材に比較的薄い層として適用されるが、より薄い及びより厚い(例えば、厚みが100マイクロメートル以下、又はそれ以上)層も使用してよい。次に、いかなる任意の溶媒も、典型的には、少なくとも部分的に除去され(例えば、強制空気オーブンを使用して)、次に組成物が少なくとも部分的に硬化されて、耐久性コーティングを形成する。
【0119】
本発明のフッ素化イソシアネートシランの適用のための好ましいコーティング方法としては、スプレー適用が挙げられる。コーティングされる基材は、典型的には、室温(典型的には約20〜25℃)で処理組成物に接触させることができる。あるいは、混合物は、例えば60〜150℃の温度に予熱された基材に適用できる。これは、工業生産で特に関心があり、この場合、例えば、セラミックタイルを生産ラインの終わりで焼成オーブンの直後に処理することができる。適用後、処理された基材は、乾燥させるのに十分な時間にわたり室温又は高温、例えば、40〜300℃で乾燥させ、硬化させることができる。このプロセスは、過剰な材料を除去するための研磨工程も必要とする場合がある。
【0120】
本発明は、比較的耐久性があり、汚染に対してより耐性があり、基材表面自体よりも洗浄がより容易な保護コーティングを基材上に提供する。一実施形態では、本発明は、好ましくは硬質基材である基材、及び単層よりも厚い防汚性コーティング(典型的には、約15オングストローム超える厚みで堆積される)を含むコーティング物品の調製に用いられる方法及び組成物を提供する。好ましくは、本発明の防汚性コーティングは、少なくとも約20オングストローム厚であり、より好ましくは少なくとも約30オングストローム厚である。一般に、コーティングの厚さは、10マイクロメートル未満、好ましくは5マイクロメートル未満である。コーティング材料は、典型的には、物品の外観及び光学特性を実質的に変更しない量で存在する。
【0121】
式Iの化合物に由来するコーティングは、親水性、疎油性コーティングを提供するのに特に好適である。かかるコーティングは、油性の汚染を防ぎつつ、水又は水分で湿潤させる。その結果、コーティングは、表面に自己洗浄性をもたらし、汚染は流水下で、しばしば擦らなくても除去され得る。かかるコーティングは、ガラス、塗装及びクリアコートされた表面、並びに剛性又は可撓性の透明高分子シートなどの基材に、親水性及び疎油性の両方を与え、自動車用、船舶用及び家庭用の用途に望ましい。かかる用途として、自動車の車体パネル、フロントガラス、船体及びデッキ表面、可撓性及び剛性の高分子車体用及び船舶用窓、磁器及びセラミック表面、並びに調理台を挙げることができる。
〔実施例〕
【0122】
材料
デスモデュア(Desmodur)(商標)N100、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレットに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂、バイエル・ポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手。
【0123】
デスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、ヘキサメチレンジイソシアネートHDIトリマーに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂、バイエル・ポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手。
【0124】
材料
メチルイソブチルケトン(MIBK)は、ハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International, Inc.)、ニュージャージー州モーリスタウンシップ(Morris Township)、の一部門であるバーディック・アンド・ジャクソン・ソルベンツ(Burdick & Jackson Solvents)から入手した。
【0125】
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO(商標)33LV、エア・プロダクト・アンド・ケミカルズ社(Air Product and Chemicals, Inc.)、ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown)、から入手可能。
【0126】
バゾ(Vazo)(商標)67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))は、EIデュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(El DuPont de Nemours & Co.)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington)、から入手した。
【0127】
HFPO−アミドールは、米国特許出願公開第2004−0077775号、名称「フッ素化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物及びそれによる繊維状基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」に記載されるものと同様の手順で調製した。
【0128】
アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から入手した。
【0129】
2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)は、アルファ・エイサー(Alfa-Aeser)、マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill)、から入手した。
【0130】
アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手した。
【0131】
N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)は、コネチカット州ダンベリー(Danbury)のユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスチックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.)から入手した。
【0132】
ビス(プロピル−3−トリメトキシシラン)アミンは、ゲレスト(Gelest)、ペンシルバニア州モリスビル(Morrisville)、から入手した。
【0133】
メルカプトプロピルトリメトキシシランは、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手した。
【0134】
メルカプトプロピオン酸(MPA)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手し、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(PEYA)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から、70%工業用グレード溶液として入手した。
【0135】
ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手した。
【0136】
エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(Air Products and Chemicals)からDABCO 33LV(ジプロピレングリコール中、トリエチレンジアミン固体成分33%)
〔実施例〕
【0137】
実施例1、パートa
1Lのフラスコに、20g(0.102等量のNCO)のデスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、27.4g(0.02モル)のHFPOアミドール、29.9g(20.9g固体、0.082モル)のペンタエリスリトールアリルエーテルの溶液及び250gのMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、24g(0.12モル)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン及び9.5g(0.12モル)のメルカプトエタノールを添加した。得られた溶液をN2で3分間パージし、0.5gのバゾ(Vazo)(商標)67を添加し、得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。フルオロケミカル(Fluorochemcial)ウレタンシランポリオールは、固体成分27.1%の溶液であった。
【0138】
実施例1、パートb−水性転化
攪拌及び超音波処理を行った実施例1、パートaの生成物の固体成分27.1gの溶液(溶液100g)に、1.8gのDS−10(商標)溶液及び230gの脱イオン水を80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、固体成分15.5%の安定なエマルションが得られた。
【0139】
実施例2、パートa
1Lのフラスコに、20g(0.102等量のNCO)のデスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、27.4g(0.02モル)のHFPOアミドール、29.9g(20.9g固体、0.082モル)のペンタエリスリトールアリルエーテルの溶液及び250gのMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、24g(0.12モル)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン及び18.4g(0.12モル)のトリエタノールアミンを添加し、続いて13g(0.12モル)の3−メルカプトプロピオン酸を添加した。得られた溶液は濁っており、5分間の攪拌後透明になった。得られた溶液をN2で3分間パージし、0.5gのバゾ(Vazo)(商標)67を添加した。得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。生成物は、固体成分23.3%の溶液であった。
【0140】
実施例2、パートb−水性転化
攪拌及び超音波処理を行った実施例2、パートaの生成物の固体成分23.3gの溶液(溶液100g)に、1.8gのDS−10(商標)溶液及び230gの脱イオン水を80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、固体成分9.8%の安定なエマルションが得られた。
【0141】
(実施例3〜10)
以下のそれぞれの実施例では、フルオロケミカルウレタン及びそのエマルションを、表1に記載の反応物質及び量を用いて、次の手順で調製した。
【0142】
1Lのフラスコに、デスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、HFPOアミドール、ペンタエリスリトールアリルエーテル、及びMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリエタノールアミンを添加し、続いて3−メルカプトプロピオン酸を添加した。得られた溶液は濁っており、5分間の攪拌後透明になった。得られた溶液をN2で3分間パージし、1重量%(総固体量に基づき)のバゾ(Vazo)(商標)67を添加した。得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。
【0143】
フルオロケミカルウレタンシランを、攪拌及び超音波処理を行った7%(総固体量に基づき)DS−10溶液及び脱イオン水(dionized water)(溶媒除去後固体成分10%のエマルションとするのに十分な量)に、80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、安定なエマルションが得られた。
【0144】
【表1】
【0145】
(実施例11〜18)
以下のそれぞれの実施例では、フルオロケミカルウレタン及びそのエマルションを、表2に記載の反応物質及び量を用いて、次の手順で調製した。
【0146】
モノアリルトリメトキシシランアルコール(MATS−OH)の調製
フラスコに、170g(0.89モル)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン、50g(0.89モル)のアリルアルコール、1gのV−67、及び300gのMIBKを加えた。溶液を攪拌し、N2で4分間パージした。溶液を60℃まで、18時間加熱した。最終溶液は固体成分40%であった。
【0147】
1Lのフラスコに、デスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、HFPOアミドール、ペンタエリスリトールアリルエーテル、モノアリルトリメトキシシランアルコール(上記参照)及びMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びトリエタノールアミンを添加し、続いて3−メルカプトプロピオン酸を添加した。得られた溶液は濁っており、5分間の攪拌後透明になった。得られた溶液をN2で3分間パージし、1重量%(総固体量に基づき)のバゾ(Vazo)(商標)67を添加した。得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。
【0148】
フルオロケミカルウレタンシランを、攪拌及び超音波処理を行った7%(総固体量に基づき)DS−10溶液及び脱イオン水(dionized water)(溶媒除去後固体成分10%のエマルションとするのに十分な量)に、80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、安定なエマルションが得られた。比較実施例C−1を、フルオロケミカルを含まない別の実施例として調製した。
【0149】
【表2】
【0150】
摩耗試験
水とイソプロパノールの90:10混合物を溶媒として用い、固体成分5重量%の示された実施例のフルオロケミカルウレタン及びアミノシラン、並びに3.5重量%のN−メチルピロリドンを更に含有するコーティング溶液を調製した。検査したアミノシランは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、及び2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)であった。
【0151】
コーティング溶液を、室温で16時間エージングした。テストパネル(ACTラボラトリーズ(ACT Laboratories)、ミシガン州ヒルズデール(Hillsdale)、からAPR 4861Fとして入手可能)は、車用として一般的なウレタンアクリレートクリアコート(RK8014、デュポン(DuPont)から入手可能)で塗装した金属パネルであった。テストパネルをコーティングし、室温で30分間硬化し、デシケーター内にて室温で24時間エージングした。
【0152】
摩耗試験は、オセロ(O-Cello)(商標)スポンジと10.16cm(4インチ)×7.62cm(3インチ)の摩耗表面領域を有する150gの重量の加重スポンジアセンブリを備え、37サイクル/分で作動する、ビック・ガードナー(BYK Gardener)の摩耗試験機(Abrasion Tester)を用いて、ASTM D 2486−00「壁塗料の摩擦耐性(Scrub Resistance of Wall Paints)」に本質的に記載されるものとした。試験は、脱イオン水に浸したコーティングしたサンプルで行い、スポンジを予め脱イオン水で飽和させる。
【0153】
試験は100サイクル行う。表面の摩耗/損耗は、標準品に対する目視検査で評価する。目視の格付け尺度は以下のとおりである。
【0154】
1=全てのコーティングが取れている
2=(表面の)50%未満のコーティングが残っている
3=50%を超えるが100%未満のコーティングが残っている
4=表面全体にわたってコーティングが残っているが傷がある
5=コーティングが完全に残っており元の状態である(目に見える傷がない)
ヘイズ/光沢度試験
イソプロパノール/水(9:1)中、95:5重量%のフルオロケミカルウレタン:APTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)の固体成分5%コーティング溶液を調製した。クリアコートしたテストパネルをコーティング溶液でコーティングし、テストパネルを70°の角度に維持しながら水切りして乾燥し、デシケーター内にて周囲温度で約24時間エージングした。コーティングしたパネルを、水道水ですすぎ、窒素気流下で乾燥した。実施例12及び13では、アミノシランを含まない固体成分5.4%の溶液を調製し、その他の実施例と同様にコーティングし、試験を行った。
【0155】
ヘイズ及び光沢度は、ビック・ガードナー(BYK Gardner)ヘイズ−グロス反射率計(Haze-Gloss Reflectometer)モデル4601を用いて測定した。測定値を3回読み取り、平均を記録した。光沢度は20°及び60°の両方で測定し、ヘイズは20°で測定した。結果を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
接触角の測定方法
塗装した金属テストパネル(上述のように調製)を水で30秒間すすぎ、表面の界面活性剤を全て除く。濾過システム(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)から入手)を通して濾過した、受け取ったままの状態での試薬グレードのヘキサデカン及び脱イオン水を用い、ビデオ接触角分析計(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のASTプロダクツ(AST Products)から商品番号VCA−2500XEとして入手可能)により、測定を行った。報告される値は、滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均である。液滴量は静的測定について5μLであった。結果を表4に示す。
【0158】
比較の目的で、未コーティングのパネル(比較実施例1より)、及び3Mパフォーマンスフィニッシュ(3M Performance Finish)(スリーエム社(3M Company)より入手可能な市販の合成ワックス)、及びタッチ・オブ・クラス、スペシャルエディション塗装保護回復剤(A Touch of Class, Special Edition Paint Protector Renewer)(カルテックス・プロテクティブ・コーティング社(CAL-TEX Protective Coatings, Inc.)、テキサス州シェルツ(Schertz)より入手可能)でコーティングしたパネルを準備する。
【0159】
【表4】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロケミカルウレタン化合物及びフルオロケミカルウレタン化合物に由来するコーティング組成物に関し、これらは基材、特にセラミックス又はガラスなどの硬質表面を有する基材の処理に使用されてよく、親水性、撥油性、防汚性及び防塵性を付与する。
【背景技術】
【0002】
撥油性及び撥水性を付与する基材処理のための多数のフッ素化組成物が当技術分野において既知であるが、基材処理、特に、セラミックス、ガラス及び石のような硬質表面を有する基材に撥水性(疎水性)及び撥油性(疎油性)を付与し、容易に洗浄できるようにするために、更に改善された組成物を提供するという要望が引き続き存在している。親水性、疎油性を付与し、容易に洗浄できるようにするための処理も必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
望ましくは、かかる組成物及び組成物を使用する方法により、改善された特性を有するコーティングを得ることができる。特に、コーティングの摩耗耐性の改善を包含するコーティングの耐久性を改善することが好ましい。更には、使用する洗剤、水又は手作業を減らしながら、かかる基材の洗浄の容易さを改善することは、末端消費者による要望であるだけでなく、環境にも良い影響を与える。組成物は、容易及び安全な方法で適用されてよく、また現行の製造方法に対応する。好ましくは、組成物は、処理される基材を製造するために実施される製造プロセスに容易に適合する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、式
【0005】
【化1】
【0006】
式中、
Rfは、フッ素含有基であり、
R1は、ポリイソシアネートの残基であり、
Wは、次式のものであり、
【0007】
【化2】
【0008】
式中、W1は、水溶性基であり、vは、1又は2であり、
R2は、次式を有し、
【0009】
【化3】
【0010】
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、多価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3であり、
qは、1〜5であり、
x及びyは、それぞれ独立して、少なくとも1であり、zは、1又は2である。
【0011】
これらの化合物又はオリゴマーは、チオシランと側鎖エチレン性不飽和基を有するフッ素含有ウレタン化合物とのフリーラジカル付加反応生成物を含んでよく、このウレタン化合物は、ポリイソシアネート、1つ又は2つの求核イソシアネート反応性官能基を有する求核フッ素化化合物、及び少なくとも1つの求核エチレン性不飽和化合物の反応生成物を含む。他の実施形態では、化合物は、チオシランと求核エチレン性不飽和化合物を含む水溶性化合物とのフリーラジカル付加反応生成物、及びポリイソシアネートとの二次反応生成物、及びフッ素含有求核性化合物を含んでよい。
【0012】
特に指示しない限り、本明細書及び本特許請求の範囲で使用される以下の用語は、以下の意味を有する。
【0013】
「アルキル」は、例えば、メチル、エチル、1−プロピル、2−プロピル、及びペンチルなどの、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖又は分枝鎖、環式又は非環式、飽和一価炭化水素ラジカルを意味する。
【0014】
「アルキレン」は、1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状飽和二価炭化水素ラジカル又は3〜約12個の炭素原子を有する分枝鎖状飽和二価炭化水素ラジカル、例えばメチレン、エチレン、プロピレン、2−メチルプロピレン、ペンチレン、ヘキシレン、及び同類のものを意味する。
【0015】
「アルコキシ」は、例えば、CH3−O−、C2H5−O−などの、末端に酸素原子を有するアルキルを意味する。
【0016】
「アラルキレン」は、例えば、ベンジル、ピリジルメチル、1−ナフチルエチルなどの、アルキレンラジカルに結合した芳香族基を有する上記で定義されているアルキレンラジカルを意味する。「硬化化学組成物」は、化学組成物が乾燥するか、溶媒が周囲温度以上で約24時間までの間に乾燥するまでに、化学組成物から蒸発していることを意味する。本組成物は、更に、ウレタン化合物間に形成されるシロキサン結合の結果、架橋されてもよい。
【0017】
「フッ素化求核性化合物」は、1個又は2個の、ヒドロキシル基又はアミン基などの求核イソシアネート反応性官能基、及びペルフルオロアルキル、ペルフルオロアルキレン、ペルフルオロオキシアルキル、又はペルフルオロオキシアルキレン基、を有する化合物を意味し、例えば、CF9SO2N(CH3)CH2CH2OH、C4F9CH2CH2OH、C2F5O(C2F4O)3CF2CONHC2H4OH、c−C6F11CH2OH、HOCH2CH2C4F8CH2CH2OHなどである。
【0018】
「フルオロケミカルウレタン化合物」は、式Iの化合物を指し、それ自体がウレタン連結を有するか、あるいは尿素及び/又はチオ尿素連結を有するものを含む。
【0019】
「硬質基材」は、その形状を維持するいずれかの剛体材料を意味し、例えば、ガラス、セラミック、コンクリート、天然石、木材、金属、プラスチックなどである。
【0020】
「オキシアルコキシ」は、1個以上の酸素原子がアルキル鎖に存在し、存在する炭素原子の総数が50個以下であり得ることを除き、アルコキシとして上述の意味を本質的に有し、例えば、CH3CH2OCH2CH2O−、C4H9OCH2CH2OCH2CH2O−、CH3O(CH2CH2O)nHなどである。
【0021】
「オキシアルキル」は、1個以上の酸素へテロ原子がアルキル鎖に存在し得ることを除き、アルキルについて上述の意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1個の炭素により互いに分離されており、例えば、CH3CH2OCH2CH2−、CH3CH2OCH2CH2OCH(CH3)CH2−、C4F9CH2OCH2CH2−、などである。
【0022】
「オキシアルキレン」は、1個以上の酸素へテロ原子がアルキレン鎖に存在し得ることを除き、アルキレンについて上述の意味を本質的に有し、これらのへテロ原子は、少なくとも1個の炭素により互いに分離されており、例えば、−CH2OCH2O−、−CH2CH2OCH2CH2−、−CH2CH2OCH2CH2CH2−、などである。
【0023】
「ハロ」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、又はヨード、好ましくはフルオロ及びクロロを意味する。
【0024】
「ペルフルオロアルキル」は、アルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が1〜約12であることを除き、「アルキル」として上述の意味を本質的に有し、例えばペルフルオロプロピル、ペルフルオロブチル、ペルフルオロオクチルなどである。
【0025】
「ペルフルオロアルキレン」は、アルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられていることを除き、「アルキレン」として上述の意味を本質的に有し、例えば、ペルフルオロプロピレン、ペルフルオロブチレン、ペルフルオロオクチレンなどである。
【0026】
「ペルフルオロオキシアルキル」は、オキシアルキルラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100個であることを除き、「オキシアルキル」として上述の意味を本質的に有し、例えば、CF3CF2OCF2CF2−、CF3CF2O(CF2CF2O)3CF2CF2−、C3F7O(CF(CF3)CF2O)sCF(CF3)CF2−、(ここで、sは、(例えば)約1〜約50である)などである。
【0027】
「ペルフルオロオキシアルキレン」は、オキシアルキレンラジカルの水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられ、炭素原子の数が3〜約100個であることを除き、「オキシアルキレン」として上述の意味を本質的に有し、例えば、−CF2OCF2−、又は−[CF2−CF2−O]r−[CF(CF3)−CF2−O]s−、(式中、r及びsは、(例えば)1〜50の整数である)である。
【0028】
「ペルフルオロ基」は、炭素に結合した水素原子の全て又は本質的に全てがフッ素原子で置き換えられている有機基を意味し、例えば、ペルフルオロアルキル及びペルフルオロオキシアルキルなどである。
【0029】
「多官能性イソシアネート化合物」又は「ポリイソシアネート」は、多価有機基に結合し、平均で1個を超え、好ましくは2個以上のイソシアネート基である−NCOを含有する化合物を意味し、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートなどである。
【0030】
「求核エチレン性不飽和化合物」は、1分子当たり少なくとも1個のイソシアネート反応性基、及びビニル基、アリル基及びアルコキシ基を含む、少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する有機化合物を意味する。
【0031】
「水溶性化合物」は、1分子当たり少なくとも1個のチオール基、かつ少なくとも1個の水溶性基を有する有機化合物を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、次式の新規フルオロケミカルウレタン化合物を提供する。
【0033】
【化4】
【0034】
式中、
Rfは、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
R1は、ポリイソシアネートの残基であり、
式中、W1は、水溶性基含有部分であり、Vは、1又は2であり、
R2は、次式を有し、
【0035】
【化5】
【0036】
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、vは、1又は2であり、
R2は、次式を有し、
【0037】
【化6】
【0038】
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、多価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2、又は3、好ましくは3であり、及び
qは、1〜5であり、好ましくは2〜5であり、
x及びyは、それぞれ独立して少なくとも1であり、zは、1又は2である。
【0039】
本発明者らは、理論に束縛されることを望まないが、上記式Iの化合物は、基材表面との縮合反応を受け、式IIの加水分解可能な「Y」基の加水分解又は置換を介し、シロキサン層を形成すると考える。本文中、「シロキサン」は、式Iの化合物に結合する−Si−O−Si−結合を指す。水の存在下で、「Y」基は「Si−OH」基に加水分解され、更にシロキサンに縮合する。
【0040】
式Iの化合物を包含するコーティング組成物から調製されるコーティングは、それ自体がペルフルオロポリエーテルシランを含み、加えて、予め選択された基材の表面への結合から得られたシロキサン誘導体を含む。コーティングはまた、未反応性又は非縮合性である「Si−Y」基、及び非反応性又は加水分解されたイソシアネート基を含むこともできる。組成物はまた、オリゴマーペルフルオロポリエーテルモノハイドライド、開始物質、及びペルフルオロポリエーテルアルコール及びエステル、並びにシルセスキオキサンなどの付加物質を更に含有してもよい。同様に、コーティングされたフルオロケミカルウレタンは、それ自体、式Iのシランを含んでよく、加えて、基材表面との反応から生じるシロキサン誘導体を含んでよい。
【0041】
一実施形態では、本発明は、式Iの化合物の水溶液、分散液又は懸濁液を含むコーティング組成物を提供する。あるいは、本発明は、式Iの化合物の有機溶媒溶液を含むコーティング組成物を提供する。更に、本発明は、基材と、式Iの化合物及び溶媒又は水を含むコーティング組成物と接触させる工程を含む、コーティング方法を提供する。コーティング組成物は、更に酸を含んでよい。一実施形態では、この方法は、基材と、式Iのシランを含むコーティング組成物とを接触させる工程、及び続けて基材と水性酸とを接触させる工程を含む。
【0042】
式Iのフルオロケミカル化合物の調製に有用なポリイソシアネート化合物は、多価脂肪族、脂環式部分若しくは芳香族部分(R1)、又はビウレット、イソシアヌレート若しくはウレトジオンに結合した多価脂肪族部分、脂環式部分又は芳香族部分、又はこれらの混合物を含むことができる多価有機基に結合したイソシアネート基を含む。好ましい多官能性イソシアネート化合物は、少なくとも2個のイソシアネート(−NCO)ラジカルを含有する。少なくとも2個の−NCOラジカルを含有する化合物は好ましくは、−NCOラジカルが結合した、二価若しくは三価の脂肪族基、脂環式基、アラルキル基又は芳香族基からなる。脂肪族の二価又は三価の基が好ましい。
【0043】
好適なポリイソシアネート化合物の代表的な例としては、本明細書で定義したポリイソシアネート化合物のイソシアネート官能性誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、イソシアネート化合物類の、尿素、ビウレット、アロファネート、二量体及び三量体(ウレトジオン及びイソシアヌレートなど)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。脂肪族、脂環式、アラルキル、又は芳香族ポリイソシアネートのようなあらゆる好適な有機ポリイソシアネートを、単独若しくは2つ以上の混合物として使用してよい。
【0044】
脂肪族ポリイソシアネート化合物は、一般的には、芳香族化合物より優れた光安定性を提供する一方、芳香族ポリイソシアネート化合物は、一般的には、脂肪族ポリイソシアネート化合物よりより経済的であり、求核剤に対して反応性が高い。好適な芳香族ポリイソシアネート化合物には、2,4−トルエンジイソシアネート(TDI)、2,6−トルエンジイソシアネート、トリメチロールプロパンによるTDIの付加物(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)CBとして入手可能)、TDIのイソシアヌレートトリマー(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)ILとして入手可能)、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアネート(MDI)、ジフェニルメタン2,4’−ジイソシアネート、1,5−ジイソシアナト−ナフタレン、1,4−フェニレンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1−メトキシ−2,4−フェニレンジイソシアネート、1−クロロフェニル−2,4−ジイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
有用な脂環式ポリイソシアネート化合物の例には、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI、バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手可能なデスモデュア(Desmodur)(商標)として市販)、4,4’−イソプロピル−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート(CHDI)、1,4−シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)(BDI)、二量体酸ジイソシアネート(バイエル社(Bayer)から入手可能)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
有用な脂肪族ポリイソシアネート化合物の例には、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、2−メチル−1,5−ペンタメチレンジイソシアネート、ジイソシアネート二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの尿素、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)のビウレット(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)N−100及びN−3200)、HDIのイソシアヌレート(バイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)からのデスモデュア(Desmodur)(商標)N−3300及びデスモデュア(Desmodur)(商標)N−3600)、HDIのイソシアヌレートとHDIのウレトジオンのブレンド(デスモデュア(Desmodur)(商標)N−3400としてバイエル社(Bayer Corporation)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手可能)、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
有用なアラルキルポリイソシアネートの例としては、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(m−TMXDI)、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(p−TMXDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、p−(1−イソシアナトエチル)−フェニルイソシアネート、m−(3−イソシアナトブチル)フェニルイソシアネート、4−(2−イソシアナトシクロヘキシル−メチル)フェニルイソシアネート及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
一般に、好ましいポリイソシアネートとしては、テトラメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6−ジイソシアネート(HDI)、オクタメチレン1,8−ジイソシアネート、1,12−ジイソシアナトドデカン、これらの混合物、並びにビウレット、イソシアヌレート又はウレトジオン誘導体からなる群から選択されるものが挙げられる。
【0049】
フルオロケミカルウレタンは、部分的に、一官能性又は二官能性ペルフルオロ化基及び少なくとも1個の求核イソシアネート反応性官能基を有するフッ素化化合物の反応生成物(本明細書では「求核フッ素化化合物」)を含む。このような化合物には、次式のものが挙げられる。
【0050】
Rf1−[Q(X2H)y]z (III)
式中、
Rf1は、一価のペルフルオロアルキル若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qは、共有結合又は価数zの多価アルキレン基であり、このアルキレンは、1個以上のカテナリー(鎖中)窒素又は酸素原子を含有するか又は含有せず、1個以上のスルホンアミド基、アルボキシアミド基又はカルボキシ官能基を含有するか又は含有せず、
X2は、−O−、−NR4−、又は−S−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
yは、1又は2であり、
zは、1又は2である。
【0051】
式I及びIIIに関して、求核フッ素化化合物(III)とポリイソシアネートのイソシアネート基との間の反応によって、以下の式の基が生成される
【0052】
【化7】
【0053】
式中、Rf1、Q、X2、y及びzは、式IIIについて前に定義したとおりである。
【0054】
式III及びIVのRf1基は、直鎖、分枝鎖、又は環式のフッ素化基又はこれらの組み合わせを含有することができ、一価又は二価であることができる。Rf1基は、炭素−酸素−炭素鎖(即ち、オキシアルキレン基)を形成するために、炭素−炭素鎖中に1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有しないことができる。完全にフッ素化された基が、一般には好ましいが、2個の炭素原子毎に1つ以下のいずれかの原子が存在するならば、置換基として水素又は塩素原子も存在できる。
【0055】
いずれかのRf1基は、少なくとも約40重量%のフッ素、より好ましくは少なくとも約50重量%のフッ素を含有することが更に好ましい。一価のRf1基の末端部分は、通常は完全にフッ素化されており、好ましくは、例えば、CF3−、CF3CF2−、CF3CF2CF2−、(CF3)2N−、(CF3)2CF−、SF5CF2−、のような少なくとも3個のフッ素原子を含有する。特定の実施形態では、nが2〜12である、一価のペルフルオロアルキル基(即ち、式CnF2n+1−のもの)又は二価のペルフルオロアルキレン基(即ち、式−CnF2n−のもの)が好ましいRf1基であり、n=3〜5がより好ましく、n=4が最も好ましい。
【0056】
有用なペルフルオロオキシアルキル基及びペルフルオロオキシアルキレン基は次式に相当する。
【0057】
Rf6−Rf3−O−Rf4−(Rf5)q− (V)
式中、
Rf6は、一価のペルフルオロオキシアルキルにおいてはF(フッ素)であり、二価のペルフルオロオキシアルキレンにおいては開殻価電子(「−」)であり、
Rf3は、ペルフルオロアルキレン基であり、Rf4は、1、2、3又は4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基、又はかかるペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、Rf5は、ペルフルオロアルキレン基であり、qは、0又は1である。式(IV)におけるペルフルオロアルキレン基Rf3及びRf5は、直鎖又は分枝鎖であってよく、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を含んでよい。典型的な一価のペルフルオロアルキル基は、CF3−CF2−CF2−であって、典型的な二価のペルフルオロアルキレンは、−CF2−CF2−CF2−、−CF2−又は−CF(CF3)−である。ペルフルオロアルキレンオキシ基Rf4の例としては、−CF2−CF2−O−、−CF(CF3)−CF2−O−、−CF2−CF(CF3)−O−、−CF2−CF2−CF2−O−、−CF2−O−、−CF(CF3)−O−、及び−CF2−CF2−CF2−CF2−O、が挙げられ、これらは、例えば、3〜30回繰り返されてよい。
【0058】
ペルフルオロアルキレンオキシ基Rf4は、同一のペルフルオロオキシアルキレン単位、又は異なるペルフルオロオキシアルキレン単位の混合物から、構成されてよい。ペルフルオロオキシアルキレン基が、異なるペルフルオロアルキレンオキシ単位からなる場合、それらは、ランダム構成、交互構成で存在することができ、又はブロックとして存在することができる。ペルフルオロ化ポリ(オキシアルキレン)基の典型例としては、
−[CF2−CF2−O]r−、−[CF(CF3)−CF2−O]s−、−[CF2CF2−O]r−[CF2O]t−、−[CF2CF2CF2CF2−O]u、及び−[CF2−CF2−O]r−[CF(CF3)−CF2−O]s−が挙げられ、r、s、t及びuのそれぞれは、1〜50、好ましくは2〜25の整数である。式(V)に相当する好ましいペルフルオロオキシアルキル基は、CF3−CF2−CF2−O−[CF(CF3)−CF2O]s−CF(CF3)CF2−であり、sは1〜50の整数である。
【0059】
ペルフルオロオキシアルキレン化合物及びペルフルオロオキシアルキル化合物は、末端カルボニルフルオリド基を生じる、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化により得ることができる。このフッ化カルボニルを、当業者に周知の反応によって、酸、エテスル、又はアルコールに変換させてよい。次に、フッ化カルボニル若しくは酸、エステル又はそれから生じたアルコールを更に反応させ、既知の手順に従って、所望のイソシアネート反応性基を導入してよい。
【0060】
式I〜IIIに関して、x又はzは1であり、モノアルコール及びモノアミンなどの求核フルオロケミカル一官能性化合物が考えられる。有用なフルオロケミカル一官能性化合物の代表的な例としては、
CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH2CH2OH、CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH(CH3)CH2OH、
CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH2CH(CH3)NH2、CF3(CF2)3SO2N(CH2CH3)CH2CH2SH、
CF3(CF2)3SO2N(CH3)CH2CH2SCH2CH2OH、C6F13SO2N(CH3)(CH2)4OH、
CF3(CF2)7SO2N(H)(CH2)3OH、C3F7SO2N(CH3)CH2CH2OH、
CF3(CF2)4SO2N(CH3)(CH2)4NH2、C4F9SO2N(CH3)(CH2)11OH、
CF3(CF2)5SO2N(CH2CH3)CH2CH2OH、CF3(CF2)5SO2N(C2H5)(CH2)6OH、
CF3(CF2)2SO2N(C2H5)(CH2)4OH、CF3(CF2)3SO2N(C3H7)CH2OCH2CH2CH2OH、
CF3(CF2)4SO2N(CH2CH2CH3)CH2CH2OH、
CF3(CF2)4SO2N(CH2CH2CH3)CH2CH2NHCH3、
CF3(CF2)3SO2N(C4H9)CH2CH2NH2、CF3(CF2)3SO2N(C4H9)(CH2)4SH、
CF3(CF2)3CH2CH2OH、C4F9OC2F4OCF2CH2OCH2CH2OH、
n−C6F13CF(CF3)CON(H)CH2CH2OH、C6F13CF(CF3)CO2C2H4CH(CH3)OH、
C3F7CON(H)CH2CH2OH、C3F7O(CF(CF3)CF2O)1〜36CF(CF3)CH2OH、
など、及びこれらの混合物が挙げられる。所望により、その他のイソシアネート反応性官能基が、記載されたものの代わりに使用されてよい。
【0061】
式I〜IIIに関して、式中、x又はzは2であり、フッ素化ポリオールが好ましい。好適なフッ素化ポリオールの代表的な例としては、Rf1SO2N(CH2CH2OH)2、例えばN−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;
Rf1OC6H4SO2N(CH2CH2OH)2;Rf1SO2N(R’)CH2CH(OH)CH2OH、例えばC6F13SO2N(C3H7)CH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CON(CH2CH2OH)2;
Rf1CON(CH2CH2OH)2;CF3CF2(OCF2CF2)3OCF2CON(CH3)CH2CH(OH)CH2OH;
Rf1OCH2CH(OH)CH2OH、例えばC4F9OCH2CH(OH)CH2OH; Rf1CH2CH2SC3H6OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH2SC3H6CH(CH2OH)2;
Rf1CH2CH2SCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH2SCH(CH2OH)CH2CH2OH;
Rf1CH2CH2CH2SCH2CH(OH)CH2OH、例えばC5F11(CH2)3SCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1CH2CH2CH2OCH2CH(OH)CH2OH、例えばC5F11(CH2)3OCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1CH2CH2CH2OC2H4OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH2(CH3)OCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1(CH2)4SC3H6CH(CH2OH)CH2OH;Rf1(CH2)4SCH2CH(CH2OH)2;
Rf1(CH2)4SC3H6OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH(C4H9)SCH2CH(OH)CH2OH;
Rf1CH2OCH2CH(OH)CH2OH;Rf1CH2CH(OH)CH2SCH2CH2OH;
Rf1CH2CH(OH)CH2SCH2CH2OH;Rf1CH2CH(OH)CH2OCH2CH2OH;
Rf1CH2CH(OH)CH2OH;Rf1R’’SCH(R’’’OH)CH(R’’’OH)SR’’Rf;
(Rf1CH2CH2SCH2CH2SCH2)2C(CH2OH)2;((CF3)2CFO(CF2)2(CH2)2SCH2)2C(CH2OH)2;
(Rf1R’’SCH2)2C(CH2OH)2;1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2OC2F4O(CF2)4OC2F4OCF2CH2OH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2CF2O(CF2)4OCF2CF2CH2OH);フッ素化オキセタンの開環重合により製造されるフッ素化オキセタンポリオール、例えばポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オハイオ州アクロン(Akron)のオムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)より入手可能);米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されるような、フッ素化有機基置換エポキシドの少なくとも2個のヒドロキシル基を含む化合物との開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;及びペルフルオロポリエーテルジオール、例えばフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(オーシモント(Ausimont)より入手可能なHOCH2CF2O(CF2O)8〜12(CF2CF2O)8〜12CF2CH2OH)が挙げられ、式中、Rf1は、1〜12個の炭素原子を有するペルフルオロアルキル基、又は3〜約50個の炭素原子を有するペルフルオロオキシアルキル基(存在する全てのペルフルオロカーボン鎖が、6個以下の炭素原子を有する)、又はこれらの混合物であり、R’は、1〜4個の炭素原子のアルキルであり、R’’は、1〜12個の炭素原子の分枝鎖又は直鎖アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレンチオ−アルキレン、2〜12個の炭素原子のアルキレン−オキシアルキレン、又は2〜12個の炭素原子のアルキレンイミノアルキレンであり、ここで、窒素原子は、第3置換基として、水素又は1〜6個の炭素原子のアルキルを有し、R’’’は、1〜12個の炭素原子の直鎖若しくは分枝鎖アルキレン、又は式CrH2r(OCSH2S)tのアルキレン−ポリオキシアルキレン(式中、rは、1〜12であり、sは、2〜6であり、tは、1〜40)である。
【0062】
好ましいフッ素化ポリオールとして、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド;フッ素化オキセタンの開環重合により製造されるフッ素化オキセタンポリオール、例えばポリ−3−フォックス(Poly-3-Fox)(商標)(オハイオ州アクロン(Akron)のオムノバ・ソリューションズ社(Omnova Solutions, Inc.)より入手可能);米国特許第4,508,916号(ニューウェル(Newell)ら)に記載されるような、フッ素化有機基置換エポキシドの少なくとも2個のヒドロキシル基を含む化合物との開環付加重合により調製されるポリエーテルアルコール;ペルフルオロポリエーテルジオール、例えばフォンブリン(Fomblin)(商標)ZDOL(オーシモント(Ausimont)より入手可能なHOCH2CF2O(CF2O)8〜12(CF2CF2O)8〜12CF2CH2OH);1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロエトキシエトキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2OC2F4O(CF2)4OC2F4OCF2CH2OH);及び、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2CF2O(CF2)4OCF2CF2CH2OH)が挙げられる。
【0063】
少なくとも1個のフッ素含有基からなる、より好ましいポリオールとしては、N−ビス(2−ヒドロキシエチル)ペルフルオロブチルスルホンアミド、1,4−ビス(1−ヒドロキシ−1,1−ジヒドロペルフルオロプロポキシ)ペルフルオロ−n−ブタン(HOCH2CF2CF2O(CF2)4OCF2CF2CH2OH)及びCF3CF2CF2−O−[CF(CF3)CF2O]3〜25−CF(CF3)−が挙げられる。このペルフルオロ化ポリエーテル基は、ヘキサフルオロプロピレンオキシドのオリゴマー化に由来することができる。かかるペルフルオロ化ポリエーテル基は、環境に優しい特性を有しているため、特に好ましい。
【0064】
式Iの化合物は、水中でより容易に分散することができる撥水性添加剤を得るために、水溶性基を形成することのできる1つ以上の水溶性基を含む。好適な水溶性基としては、カチオン性基、アニオン性基及び双性イオン性基、並びに非イオン性水溶性基が挙げられる。
【0065】
フルオロケミカル化合物は、部分的に、1つ以上の水溶性基と少なくとも1個のチオール基とを含む水溶性化合物のフリーラジカル付加反応生成物を、更に含んでよい。水溶性化合物は、次式で表すことができる。
【0066】
HS−R5−(W1)w (VI)
式中、R5は、二価アルキレン基であり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、W1は、水溶性基であり、wは1〜3である。
【0067】
水溶性化合物の水溶性基は、水への溶解性又は分散性を高めるものであり、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシレート基、サルフェート基、スルホネート基、ホスフェート基、ホスホネート基、アンモニウム基、及び四級アンモニウム基が挙げられる。このような基は、それぞれ、−CO2M、−OH、−OSO3M、−SO3M、−PO(OM)2、−P(OM)3、−NR82HX、−NR83X、−NR8H2X、及び−NH3Xで表されてよく、式中、Mは、H、又はナトリウム、カリウム、カルシウム、及びN(R4)3H+などの一価又は二価の可溶性カチオンに相当するものであり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、Xは、ハロゲン化物、水酸化物、カルボキシレート、スルホネートなどからなる群から選択される可溶性アニオンであり、R8は、フェニル基、脂環式基、又は約1〜約12個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝鎖脂肪族基からなる群から選択される。好ましくは、R8は、1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル基である。官能基−NR83Xは、水溶性酸の塩であり、例えば塩化トリメチルアンモニウム、硫酸ピリジニウムなど、又はアンモニウム置換基である。官能基−NR82HXは、水溶性酸の塩であり、例えばジメチルアンモニウムアセテート又はジメチルアンモニウムプロピオネートである。官能基−NR8H2Xは、水溶性酸の塩であり、例えばメチルアンモニウムアセテート又はメチルアンモニウムプロピオネートである。官能基−NH3Xは、水溶性酸の塩であり、例えばアンモニウムアセテート又はアンモニウムプロピオネートである。塩の形態は、酸性基と、アミン、四級アンモニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩又は水酸化物などの塩基とを単純に中和するか、あるいは、アミノ基と、カルボン酸、スルホン酸、ハロ酸などを単純に反応させることで生成することができる。
【0068】
好適な水溶性基を有するイオン性水溶性化合物の実例としては、HSCH2COOH、HSCH2CH2OH、(HSCH2CH2)2NCH2COOH、HSC(CO2H)(CH2CO2H)2、(HS(CH2)nCH2)2NCH3(式中、nは1〜3の整数);(HSCH2)2C(CH3)COOH、(HS(CH2)nCH2)2NCH3(式中、nは1〜3の整数);HSCH2CH(OH)CO2Na;(HSCH2CH2N(CH2COOH)2)、(HSCH(COOH)(CH2CH2COOH))、(HSCH(COOH)(CH2COOH))、(HSCH2COOH);(HSCH(CH2N(CH2COOH)2)2);HSCH(COOH)(CH2COOH);HS(CH2)4CH(COOH)N(CH2COOH)2;HSCH(COOH)CH(COOH)CH2COOH;(HSCH2)2CHCH2COO)−(NH(CH3)3)+;HSCH2CH2OSO3Na;HSC2H4NHC2H4SO3H;HSC3H6NH(CH3)C3H6SO3H;(HSC2H4)2NC3H6OSO3Na;(HSCH2CH2)2NC6H4OCH2CH2OSO2OH;(HSC6H4SO3)−(NH(C2H5)3)+、並びに上記アミン、カルボン酸、及びスルホン酸の塩からなる群から独立して選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
フルオロケミカルウレタン化合物は、イソシアネート反応性の求核官能基と少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有する求核エチレン性不飽和化合物(以下、「求核不飽和化合物」)の反応生成物を部分的に含む。不飽和基は、ビニル、アリル又はアリルオキシであってよく、求核官能基は、アミノ又はヒドロキシ基であってよい。好ましくは、不飽和基は、ビニルオキシ基、例えばCH2=CHO−ではない。好ましくは、求核不飽和化合物は、ヒドロキシル基及び少なくとも2個の不飽和基を有する多不飽和化合物である。
【0070】
このような化合物には、次式のものが挙げられる。
【0071】
HX1−R3−(CH=CH2)q (VII)
式中、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、二価アルキレン基若しくはアリーレン基又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
qは、1〜5である。
【0072】
好ましくは、qは、1を超える。生じた求核多不飽和化合物は、ウレタン化合物に多くのシラン基を付加することができる。シラン基及び水溶性基と−NH−C(O)−X1−基とのモル比は、1:1を超えてよく、又は2:1を超えてよい。好ましくは、HX1−は、芳香環、例えばフェノール化合物と直接は結合しない。
【0073】
式VIIの化合物としては、ポリオールの末端モノ−、ジ−又はポリ不飽和エーテルが挙げられ、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、カプロラクトン変性ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ビスフェノール−A、トリメチロールプロパン、ネオペンチルグリコール、テトラエチレングリコール、トリシクロデカンジメチノール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセロール、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートである。
【0074】
有用な求核不飽和化合物としては、ヒドロキシアルケンが挙げられ、例えば、アリルアルコール、メタリルアルコール、アリルオキシエチルアルコール、2−アリルオキシメチルプロパノール(ジメチロールエタンから)、及び2,2−ジ(アリルオキシメチル)ブタノール(トリメチロールプロパンから)、並びにそれらに対応するアミンである。
【0075】
求核不飽和化合物(VII)は、ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部と反応し、側鎖不飽和基を有するウレタン化合物(以下のVIII)を形成でき、続いてチオシラン(後述)及び水溶性化合物(VI)と反応し、式Iの化合物を形成できる。
【0076】
求核不飽和化合物のイソシアネートとの反応生成物は、以下の一般式を有する。
【0077】
【化8】
【0078】
式中、
Rfは、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基を含むフッ素含有基であり、
R1は、ポリイソシアネートの残基であり、
X1は、−O−又は−NR4−であり、R4は、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3は、二価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、このアルキレン基は、1つ以上のカテナリー酸素原子を含有してもよく、
xは、1又は2であり、
yは、少なくとも1であり、
zは、1又は2であり、
qは、1〜5、好ましくは2〜5である。
【0079】
フルオロケミカルウレタン化合物は、部分的に、チオシランと式VII又はVIIIの化合物の不飽和基とのフリーラジカル付加反応生成物を含む。
【0080】
チオシランは、以下の式を有する。
【0081】
【化9】
【0082】
式中、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2又は3である。
【0083】
式(VIII)中、Yは加水分解性基を表し、例えばハロゲン化物、C1〜C4のアルコキシ基、アシルオキシ基、又は米国特許第5,274,159号に記載されるようなポリオキシエチレン基などのポリオキシアルキレン基である。加水分解性とは、Y基が水と交換反応を経て、更に反応してシロキサン基を形成し得るSi−OH部分を形成することを意味する。加水分解性基の具体的な例としては、メトキシ、エトキシ及びプロポキシ基、塩素及びアセトキシ基が挙げられる。R6は、一般に非加水分解性である。
【0084】
チオシラン(IX)及び/又は水溶性化合物(VI)は、求核不飽和化合物VIIと反応して付加生成物を形成し、続いてポリイソシアネートと反応できる(求核フッ素化化合物IIIによる官能化の前又は後のいずれかで)。あるいは、式VIIの求核不飽和化合物は、まずポリイソシアネートと反応して式VIIIのウレタン化合物を形成し、ウレタン化合物のエチレン性不飽和基側鎖へのチオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)のフリーラジカル付加が続く。好ましくは、求核不飽和化合物(VII)がまずポリイソシアネートと反応し(この場合も、求核フッ素化化合物IIIとの反応の前又は後)、側鎖不飽和基を有するウレタン化合物を形成し、そこへチオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)がフリーラジカル付加により付加される。一般的な反応スキームを以下に示す。
【0085】
(Rf)x−R1−(NCO)y+(VII)→(VIII)
(VIII)+(VI)+(IX)→(I)、又は
【0086】
【化10】
【0087】
X+(Rf)x−R1−(NCO)y→(I)
有用なチオシランとして、(メルカプトメチル)ジメチルエトキシシラン、(メルカプトメチル)メチルジエトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン(メルカプトメチル)メチルジエトキシシランが挙げられる。
【0088】
チオシラン(IX)及び水溶性化合物(V)の、エチレン性不飽和化合物(VII又はVIII)のいずれかへの付加を、フリーラジカル反応開始剤を用いて達成してよい。有用なフリーラジカル反応開始剤としては、無機及び有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、過硫酸塩、アゾ化合物、酸化還元系(例えば、K2S2O8及びNa2S2O5の混合物)、及びフリーラジカル光反応開始剤(例えば、K.K.ダイエットライカー(K.K. Dietliker)により、コーティング、インク及び塗料用のUV及びEB配合物の化学及び技術(Chemistry & Technology of UV & EB Formulation for Coatings, Inks & Paints)、第3巻、276〜298頁、SITAテクノロジー社(SITA Technology Ltd.)、ロンドン(1991)に記載されるもの)が挙げられる。代表的な例としては、過酸化水素、過硫酸カリウム、t−ブチルヒドロペルオキシド、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルベンゾアート、クメンヒドロペルオキシド、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、(VAZO67)及びアゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)が挙げられる。当業者は、反応開始剤の選択は、具体的な反応条件、例えば、溶媒の選択に応じて決定されることを理解するだろう。
【0089】
チオシランへのフリーラジカル付加によって、エチレン性不飽和基の少なくとも1つ以上の炭素が置換されることが可能であることが理解され、より少ない置換炭素への付加を簡単に以下の式で示す。したがって、
〜R3−CH=CH2+HS−R5〜→〜R3−CH2−CH2−S−R5〜及び/又は〜R3−CH(CH3)−S−R5〜
フルオロケミカル化合物は、求核不飽和化合物(複数)と、フッ素含有求核性化合物(複数)と、ポリイソシアネート化合物(複数)とを単純にブレンドし、続いてチオシラン(IX)及び/又は水溶性化合物(VI)の不飽和基へのフリーラジカル付加を行うことで製造することができる。当業者に理解されるように、ブレンドの順序又は工程の順序は限定的ではなく、所望のフルオロケミカルウレタン化合物を製造するために変更することができる。一実施形態では、例えば、ポリイソシアネート化合物(複数)及び求核フルオロケミカル化合物(III)を、まずイソシアネート基の一部と反応させ、次に残りのイソシアネート基全て又は一部を有する求核不飽和化合物(VII)と反応させ、続いてチオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)の側鎖不飽和基へのフリーラジカル付加を行う。
【0090】
一般に、求核反応性成分、ポリイソシアネート及び溶媒を、素早く連続して、又は予め製造した混合物として、乾燥した反応槽に合わせて投入する。均質な混合物又は溶液が得られると、触媒が所望により追加され、反応混合物は、ある温度で、反応が起こるのに十分な時間加熱される。反応の進行は、IR中のイソシアネートピークの消失を観察することにより判断できる。
【0091】
一般に、求核フッ素化化合物Rf−Q(X2H)z(III)は、存在するイソシアネート官能基の5〜50モルパーセントと反応するのに十分な量で使用される。好ましくは、化合物IIIを使用し、イソシアネート基の10〜30モルパーセントと反応させる。残りのイソシアネート基、約50〜95モルパーセント、好ましくは70〜90モルパーセントが、求核不飽和化合物(VII)により官能化され、続いてチオシラン(IX)及び/又は水溶性化合物(VI)のフリーラジカル付加により、あるいは、式VII(VI)及び(IX)の化合物の反応生成物により、側鎖フルオロケミカル基、側鎖水溶性基及び側鎖シラン基の両方を有する式Iのウレタン化合物を生じる。
【0092】
好ましくは、求核基(フッ素含有求核性化合物及び求核不飽和化合物の両方の)の総当量数と、イソシアネート基の総当量数との比率は、約1:1であり、即ち全て又は本質的に全てのイソシアネート基が反応する。
【0093】
反応条件(例えば、使用される反応温度及び/又はポリイソシアネート)によって、イソシアネートの縮合反応を達成するために、反応混合物の約0.5重量パーセントまでの濃度の触媒を使用し得るが、典型的には約0.00005〜約0.5重量パーセントが使用され、0.02〜0.1重量パーセントが好ましい。一般に、求核基がアミン基の場合、触媒は不要である。
【0094】
好適な触媒としては、三級アミン及びスズ化合物類が挙げられるが、これらに限定されない。有用なスズ化合物の例としては、オクチル酸スズ、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジ−2−エチルヘキサノエート、及びジブチルスズオキシドなどの、スズII及びスズIV塩類が挙げられる。有用な三級アミン化合物の例としては、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリエチレンジアミン、トリプロピルアミン、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、モルホリン化合物、例えばエチルモルホリン、及び2,2’−ジモルホリノジエチルエーテル、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、及び1,8−ジアザビシクロ[5.4.0.]ウンデカ−7−エン(DBU)が挙げられる。スズ化合物が好ましい。酸触媒が用いられる場合、生成物から除去されるか、反応後に中和されるのが好ましい。触媒の存在により、接触角特性に悪影響を及ぼす可能性があることが判明している。
【0095】
ウレタン分子の混合物を含む本発明のフルオロケミカル組成物は、バッチ方式に加えて、以下の段階的な合成により製造することもできる。合成では、ポリイソシアネート及びフッ素化求核性化合物(複数)を、乾燥条件下で好ましくは溶媒に合わせて溶解し、得られた溶液を、所望により触媒の存在下で、縮合反応を起こすのに十分な温度で加熱する。その結果、側鎖フッ素含有基が、イソシアネート官能性ウレタンオリゴマー及び化合物に結合される。
【0096】
次に、生じたイソシアネートフルオロケミカル官能性ウレタン化合物を、更に1つ以上の求核不飽和化合物(VII)と反応させ、上述のように上述の反応混合物に加え、残りの又は残りのうちの大部分のイソシアネート基と反応させ、側鎖フルオロケミカル基及び側鎖不飽和基(この不飽和基は、チオシラン(IX)及び水溶性化合物(VI)のフリーラジカル付加により更に官能化され得る)の両方を有するウレタン化合物を生じる。
【0097】
本発明の組成物は、基材上にコーティングされ、少なくとも部分的に硬化されて、コーティングされた物品を提供する。いくつかの実施形態では、重合したコーティングは、傷抵抗、落書き耐性、汚れ防止、接着剤剥離、低屈折率、及び撥水性のうち少なくとも1つを提供する保護コーティングを形成してよい。本発明によるコーティング物品としては、例えば、眼鏡レンズ、鏡、窓、接着剥離ライナー、及び落書き防止フィルムが挙げられる。
【0098】
好適な基材としては、例えば、ガラス(例えば、窓、並びに例えば、レンズ及び鏡などの光学素子)、セラミック(例えば、セラミックタイル)、セメント、石、塗装又はクリアコート表面(例えば、車体パネル、ボートの表面)、金属(例えば、建築用の支柱)、紙(例えば、接着剤剥離ライナー)、厚紙(例えば、食品容器)、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネート、アクリル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、フェノール樹脂、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、及びスチレン−アクリロニトリルコポリマー)、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。それらの基材はフィルムやシートであってもよいし、あるいはなにか他の形態であってもよい。基材は、透明又は半透明な表示素子、所望によりその上にセラマー又はシルセスキオキサンハードコートを有してよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、フルオロケミカルウレタン化合物及び水又は溶媒の混合物を含むコーティング組成物が提供される。本発明のコーティング組成物は、本発明のフルオロケミカル化合物の溶媒又は水への懸濁液、分散液又は溶液を含む。コーティングとして適用される際、コーティング組成物は、疎油性、親水性、及び防汚特性を、任意の多種多様な基材に付与する。
【0100】
「疎油性」は、油又は油脂をはじくか、混合しにくい傾向を有することを意味し、「親水性」は、水と結合するか、水を吸収する傾向が強いことを意味する。したがって、基材に適用される際、式Iの化合物は、コーティングの乾燥及び硬化後に測定される基材と水との接触角を約60°未満、好ましくは約50°未満、及び最も好ましくは45°未満へ低減させ、n−ヘキサデカンとの接触角を少なくとも20°、好ましくは少なくとも25°、最も好ましくは少なくとも30°へ低減する程度まで、その表面張力を低下させる。疎油性表面は汚れを阻止又は防ぎ、親水性表面は、水を表面上に「広げる」ことができる。
【0101】
フルオロケミカル化合物は、水中に、溶解、懸濁、又は分散して、基材上にコーティングするのに好適なコーティング組成物を形成することができる。一般に、コーティング組成物は、約0.1〜約50重量パーセント、又は更に最大約90重量パーセントまで(組成物の総重量に基づいて)の不揮発性固体を含有できる。好ましくは、コーティング組成物は、合計約1〜10パーセントの固体を含有する。より好ましくは、コーティングに使用されるフルオロケミカルウレタン化合物の量は、固形分の約0.1〜約0.5重量パーセントである。
【0102】
溶媒溶液において、好適な溶媒として、アルコール、エステル、グリコールエーテル、アミド、ケトン、炭化水素、ヒドロフルオロカーボン、ヒドロフルオロエーテル、塩化炭化水素、クロロカーボン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0103】
製造の簡便性及びコストの理由から、本発明の組成物は、シランに由来する1つ以上のポリエーテルイソシアネートの濃縮物を使用の直前に希釈することで調製することができる。濃縮物は、一般的に、有機溶媒中に式Iの化合物の濃縮溶液を含む。濃縮物は、数週間、好ましくは少なくとも1ヶ月間、より好ましくは少なくとも3ヶ月間安定であるべきである。フッ素化イソシアネート由来シランは、有機溶媒中に高濃度で容易に溶解できることが判明している。
【0104】
いくつかの実施形態では、コーティング組成物は、式Iのウレタン化合物の水性分散液、水溶液又は水性懸濁液を含む。シリル基(式IIの「q」が2以上のときのように)及び水溶性基の濃度が高いため、化合物は水に容易に懸濁される。これら水性コーティング組成物を、所望により界面活性剤を含む、化合物の有機溶媒溶液に攪拌しながら水を追加することにより水中に「転化」させ、減圧下で攪拌しながら有機溶媒を除去することにより、調製してよい。高せん断攪拌が、好ましい懸濁液の攪拌手段である。
【0105】
エマルションの調製に有用な界面活性剤としては、アニオン性、非イオン性、及び両性界面活性剤の種類が挙げられる。カチオン性界面活性剤は、シラン及びシロキサン基に悪影響を及ぼすため、一般的には有用ではない。有用なアニオン性界面活性剤としては、スルホスクシネート及びその誘導体、アルキルアリールスルホネート、オレフィンスルホネート、ホスフェートエステル、エトキシル化アルキルフェノールのサルフェート及びスルホネート、エトキシル化脂肪族アルコールのサルフェート及びスルホネート、脂肪酸エステルのサルフェート、並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な非イオン性界面活性剤としては、エトキシル化脂肪族アルコール、エトキシル化脂肪酸エステル、エトキシル化脂肪酸、エトキシル化アルキルフェノール、エチレンオキシド−プロピレンオキシドブロックコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。有用な両性界面活性剤としては、ベタイン誘導体、スルホベタイン誘導体、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0106】
水に加えて、本発明の組成物はまた有機酸又は無機酸を含んでもよい。有機酸としては、酢酸、クエン酸、ギ酸など;CF3SO3H、C3F7CO2K又はRf2[−(L)a−Z]b(式中、Rf2は、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシ基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、Lは、有機二価連結基を表し、Zはカルボン酸、スルホン酸又はリン酸基などの酸基を表し、aは、0又は1であり、bは、1又は2である)により表すことができるもののようなフッ素化有機酸が挙げられる。
【0107】
好適なRf2基の例としては、上述のRfについてのようなものが挙げられる。式(IV)の有機酸の例としては、デュポン(DuPont)から市販されているC3F7O(CF(CF3)CF2)10〜30CF(CF3)COOH、又はCF3(CF2)2OCF(CF3)COOHが挙げられる。無機酸の例としては、硫酸、塩酸などが挙げられる。酸は、一般的に、シランの重量に対して、約0.01〜10重量%、より好ましくは0.05重量%〜5重量%の量で、組成物中に含まれる。
【0108】
酸は、コーティング組成物それ自体へと処方されるか、又はペルフルオロポリエーテルシランと共にコーティングした後で処方されてよく、コーティング基材は、酸溶液に浸漬されて、シロキサン層の形成をもたらす。
【0109】
コーティング組成物は、コーティングの耐久性を実質的に向上させることが判明している、アミノシランを更に含有してよい。一般に、アミノシランを、コーティング組成物の総固体に対して、0.1〜25重量%で添加できる。出願者らは、この範囲を上回ると、コーティングの光沢が曇る/失うことになり、この範囲を下回ると、摩耗耐性が低下することを観察している。好ましくは、アミノシランは、1〜10重量%、最も好ましくは2〜7重量%で用いられる。少量のイソプロパノール又はその他好適な溶媒を添加し、アミノシランの安定性を高めてよい。
【0110】
有用なアミノシランは、以下の一般式で表すことができる。
【0111】
【化11】
【0112】
式中、
R9は、H、C1〜C4のアルキル、又は−R5−Si(Yp)(R6)3−pであり、
R5は、二価のアルキレン基であり、このアルキレン基は、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yは、加水分解性基であり、
R6は、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pは、1、2又は3、好ましくは3である。
【0113】
本発明の実施に際して有用ないくつかのアミノシランは、米国特許第4,378,250号(トレッドウェイ(Treadway)ら)に記載されており、アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリメトキシシラン、β−アミノエチルトリエトキシシラン、β−アミノエチルトリブトキシシラン、β−アミノエチルトリプロポキシシラン、α−アミノ−エチルトリメトキシシラン、α−アミノエチルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、
γ−アミノプロピルトリブトキシシラン、γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、
β−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルトリエトキシシラン、
β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、β−アミノプロピルトリブトキシシラン、
α−アミノプロピルトリメトキシシラン、α−アミノプロピルトリエトキシシラン、
α−アミノプロピルトリブトキシシラン、及びα−アミノプロピルトリプロポキシシランが挙げられる。
【0114】
米国特許第4,378,250号(トレッドウェイ(Treadway)ら)に記載されるものを含む、少量(アミノシランの総量に対し<20モルパーセント)のカテナリー窒素含有アミノシランも使用することができる。N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−α−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−β−アミノプロピルトリプロポキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリメトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリエトキシシラン、N−(γ−アミノプロピル)−β−アミノエチルトリプロポキシシラン、N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、β−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、及びγ−ジエチレントリアミンプロピルトリエトキシシランである。
【0115】
本発明のコーティング組成物は、シルセスキオキサンを含んでもよい。有用なシルセスキオキサンとしては、式R102Si(OR11)2のジオルガノオキシシラン(又はそのヒドロシレート)と、式R10SiO3/2のオルガノシラン(又はそのヒドロシレート)との共縮合物が挙げられるが、ここで、それぞれのR10は、1〜6個の炭素原子のアルキル基又はアリール基であり、R11は、1〜4個の炭素原子を有するアルキルラジカルを表す。好適なシルセスキオキサンは、組成物に添加する前には、中性又はアニオン性のシルセスキオキサンである。有用なシルセスキオキサンは、米国特許第3,493,424号(モーロック(Mohrlok)ら)、同第4,351,736号(シュタインバーガー(Steinberger)ら)、同第5,073,442号(ノールトン(Knowlton)ら)、及び同第4,781,844号(コートマン(Kortmann)ら)に記載される技術により製造できる。コーティング溶液は、全固形分(即ち式Iのフルオロケミカルウレタン及びシルセスキオキサン)に対して、好ましくは少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%、及びより好ましくは少なくとも99.5重量%のシルセスキオキサンを含む。
【0116】
シルセスキオキサンは、シランを、水、緩衝剤、界面活性剤及び所望により有機溶媒の混合物に添加し、その混合物を酸性又は塩基性条件下で攪拌することによって、調製することができる。200〜500オングストロームの狭い粒径範囲とするためには、シランを一定量でゆっくりと添加するのが好ましい。添加可能なシランの正確な量は、置換基Rや、界面活性剤にアニオン性のものを使用したかカチオン性のものを使用したかによって変わってくる。シルセスキオキサンの共縮合物は、その中の単位の分布がブロック状であってもランダムであってもよいが、シランの同時加水分解によって形成される。存在する、テトラアルコキシシラン及びそのヒドロシレート(例えば式Si(OH)4を有する)を含むテトラオルガノシランの量は、シルセスキオキサンの重量に対して、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは2重量%未満である。
【0117】
本発明のシルセスキオキサンの調製において、以下のシランが有用である:メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシオキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、2−エチルブチルトリエトシキシラン、及び2−エチルブトキシトリエトキシシラン。
【0118】
組成物は、従来技術、例えば、スプレー法、ナイフコーティング法、ノッチコーティング法、リバースロールコーティング法、グラビアコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、フラッドコーティング法又はスピンコーティング法などによって、基材に適用してよい。典型的には、重合性組成物は、乾燥硬化させた層が約40nm〜約60nmの範囲の厚みを有するように、基材に比較的薄い層として適用されるが、より薄い及びより厚い(例えば、厚みが100マイクロメートル以下、又はそれ以上)層も使用してよい。次に、いかなる任意の溶媒も、典型的には、少なくとも部分的に除去され(例えば、強制空気オーブンを使用して)、次に組成物が少なくとも部分的に硬化されて、耐久性コーティングを形成する。
【0119】
本発明のフッ素化イソシアネートシランの適用のための好ましいコーティング方法としては、スプレー適用が挙げられる。コーティングされる基材は、典型的には、室温(典型的には約20〜25℃)で処理組成物に接触させることができる。あるいは、混合物は、例えば60〜150℃の温度に予熱された基材に適用できる。これは、工業生産で特に関心があり、この場合、例えば、セラミックタイルを生産ラインの終わりで焼成オーブンの直後に処理することができる。適用後、処理された基材は、乾燥させるのに十分な時間にわたり室温又は高温、例えば、40〜300℃で乾燥させ、硬化させることができる。このプロセスは、過剰な材料を除去するための研磨工程も必要とする場合がある。
【0120】
本発明は、比較的耐久性があり、汚染に対してより耐性があり、基材表面自体よりも洗浄がより容易な保護コーティングを基材上に提供する。一実施形態では、本発明は、好ましくは硬質基材である基材、及び単層よりも厚い防汚性コーティング(典型的には、約15オングストローム超える厚みで堆積される)を含むコーティング物品の調製に用いられる方法及び組成物を提供する。好ましくは、本発明の防汚性コーティングは、少なくとも約20オングストローム厚であり、より好ましくは少なくとも約30オングストローム厚である。一般に、コーティングの厚さは、10マイクロメートル未満、好ましくは5マイクロメートル未満である。コーティング材料は、典型的には、物品の外観及び光学特性を実質的に変更しない量で存在する。
【0121】
式Iの化合物に由来するコーティングは、親水性、疎油性コーティングを提供するのに特に好適である。かかるコーティングは、油性の汚染を防ぎつつ、水又は水分で湿潤させる。その結果、コーティングは、表面に自己洗浄性をもたらし、汚染は流水下で、しばしば擦らなくても除去され得る。かかるコーティングは、ガラス、塗装及びクリアコートされた表面、並びに剛性又は可撓性の透明高分子シートなどの基材に、親水性及び疎油性の両方を与え、自動車用、船舶用及び家庭用の用途に望ましい。かかる用途として、自動車の車体パネル、フロントガラス、船体及びデッキ表面、可撓性及び剛性の高分子車体用及び船舶用窓、磁器及びセラミック表面、並びに調理台を挙げることができる。
〔実施例〕
【0122】
材料
デスモデュア(Desmodur)(商標)N100、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)ビウレットに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂、バイエル・ポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手。
【0123】
デスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、ヘキサメチレンジイソシアネートHDIトリマーに基づく脂肪族ポリイソシアネート樹脂、バイエル・ポリマーズ社(Bayer Polymers LLC)、ペンシルバニア州ピッツバーグ(Pittsburgh)から入手。
【0124】
材料
メチルイソブチルケトン(MIBK)は、ハネウェル・インターナショナル社(Honeywell International, Inc.)、ニュージャージー州モーリスタウンシップ(Morris Township)、の一部門であるバーディック・アンド・ジャクソン・ソルベンツ(Burdick & Jackson Solvents)から入手した。
【0125】
1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、DABCO(商標)33LV、エア・プロダクト・アンド・ケミカルズ社(Air Product and Chemicals, Inc.)、ペンシルバニア州アレンタウン(Allentown)、から入手可能。
【0126】
バゾ(Vazo)(商標)67(2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル))は、EIデュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(El DuPont de Nemours & Co.)、デラウェア州ウィルミントン(Wilmington)、から入手した。
【0127】
HFPO−アミドールは、米国特許出願公開第2004−0077775号、名称「フッ素化ポリマーを含むフルオロケミカル組成物及びそれによる繊維状基材の処理(Fluorochemical Composition Comprising a Fluorinated Polymer and Treatment of a Fibrous Substrate Therewith)」に記載されるものと同様の手順で調製した。
【0128】
アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)から入手した。
【0129】
2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)は、アルファ・エイサー(Alfa-Aeser)、マサチューセッツ州ワードヒル(Ward Hill)、から入手した。
【0130】
アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手した。
【0131】
N−メチルアミノプロピルトリメトキシシラン(MAPTMS)は、コネチカット州ダンベリー(Danbury)のユニオン・カーバイド・ケミカルズ・アンド・プラスチックス社(Union Carbide Chemicals and Plastics Co.)から入手した。
【0132】
ビス(プロピル−3−トリメトキシシラン)アミンは、ゲレスト(Gelest)、ペンシルバニア州モリスビル(Morrisville)、から入手した。
【0133】
メルカプトプロピルトリメトキシシランは、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手した。
【0134】
メルカプトプロピオン酸(MPA)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手し、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(PEYA)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から、70%工業用グレード溶液として入手した。
【0135】
ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)は、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)、ウィスコンシン州ミルウォーキー(Milwaukee)、から入手した。
【0136】
エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ(Air Products and Chemicals)からDABCO 33LV(ジプロピレングリコール中、トリエチレンジアミン固体成分33%)
〔実施例〕
【0137】
実施例1、パートa
1Lのフラスコに、20g(0.102等量のNCO)のデスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、27.4g(0.02モル)のHFPOアミドール、29.9g(20.9g固体、0.082モル)のペンタエリスリトールアリルエーテルの溶液及び250gのMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、24g(0.12モル)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン及び9.5g(0.12モル)のメルカプトエタノールを添加した。得られた溶液をN2で3分間パージし、0.5gのバゾ(Vazo)(商標)67を添加し、得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。フルオロケミカル(Fluorochemcial)ウレタンシランポリオールは、固体成分27.1%の溶液であった。
【0138】
実施例1、パートb−水性転化
攪拌及び超音波処理を行った実施例1、パートaの生成物の固体成分27.1gの溶液(溶液100g)に、1.8gのDS−10(商標)溶液及び230gの脱イオン水を80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、固体成分15.5%の安定なエマルションが得られた。
【0139】
実施例2、パートa
1Lのフラスコに、20g(0.102等量のNCO)のデスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、27.4g(0.02モル)のHFPOアミドール、29.9g(20.9g固体、0.082モル)のペンタエリスリトールアリルエーテルの溶液及び250gのMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、24g(0.12モル)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン及び18.4g(0.12モル)のトリエタノールアミンを添加し、続いて13g(0.12モル)の3−メルカプトプロピオン酸を添加した。得られた溶液は濁っており、5分間の攪拌後透明になった。得られた溶液をN2で3分間パージし、0.5gのバゾ(Vazo)(商標)67を添加した。得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。生成物は、固体成分23.3%の溶液であった。
【0140】
実施例2、パートb−水性転化
攪拌及び超音波処理を行った実施例2、パートaの生成物の固体成分23.3gの溶液(溶液100g)に、1.8gのDS−10(商標)溶液及び230gの脱イオン水を80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、固体成分9.8%の安定なエマルションが得られた。
【0141】
(実施例3〜10)
以下のそれぞれの実施例では、フルオロケミカルウレタン及びそのエマルションを、表1に記載の反応物質及び量を用いて、次の手順で調製した。
【0142】
1Lのフラスコに、デスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、HFPOアミドール、ペンタエリスリトールアリルエーテル、及びMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリエタノールアミンを添加し、続いて3−メルカプトプロピオン酸を添加した。得られた溶液は濁っており、5分間の攪拌後透明になった。得られた溶液をN2で3分間パージし、1重量%(総固体量に基づき)のバゾ(Vazo)(商標)67を添加した。得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。
【0143】
フルオロケミカルウレタンシランを、攪拌及び超音波処理を行った7%(総固体量に基づき)DS−10溶液及び脱イオン水(dionized water)(溶媒除去後固体成分10%のエマルションとするのに十分な量)に、80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、安定なエマルションが得られた。
【0144】
【表1】
【0145】
(実施例11〜18)
以下のそれぞれの実施例では、フルオロケミカルウレタン及びそのエマルションを、表2に記載の反応物質及び量を用いて、次の手順で調製した。
【0146】
モノアリルトリメトキシシランアルコール(MATS−OH)の調製
フラスコに、170g(0.89モル)のメルカプトプロピルトリメトキシシラン、50g(0.89モル)のアリルアルコール、1gのV−67、及び300gのMIBKを加えた。溶液を攪拌し、N2で4分間パージした。溶液を60℃まで、18時間加熱した。最終溶液は固体成分40%であった。
【0147】
1Lのフラスコに、デスモデュア(Desmodur)(商標)N3300A、HFPOアミドール、ペンタエリスリトールアリルエーテル、モノアリルトリメトキシシランアルコール(上記参照)及びMIBKを投入した。混合液を攪拌し、80℃まで加熱し、溶液を形成した。溶液をN2で1分間パージし、ジブチル錫ジラウレート及びDABCO(商標)33LVをそれぞれ3滴加えた。得られた溶液を110℃まで18時間加熱すると、IRは残存するNCO基がないことを示した。溶液を70℃まで冷却し、メルカプトプロピルトリメトキシシラン及びトリエタノールアミンを添加し、続いて3−メルカプトプロピオン酸を添加した。得られた溶液は濁っており、5分間の攪拌後透明になった。得られた溶液をN2で3分間パージし、1重量%(総固体量に基づき)のバゾ(Vazo)(商標)67を添加した。得られた溶液を16時間加熱すると、IRは残存するアリル基がないことを示した。
【0148】
フルオロケミカルウレタンシランを、攪拌及び超音波処理を行った7%(総固体量に基づき)DS−10溶液及び脱イオン水(dionized water)(溶媒除去後固体成分10%のエマルションとするのに十分な量)に、80℃で加えた。得られたエマルションを4分間攪拌及び超音波処理を行うと、安定なエマルションが得られた。比較実施例C−1を、フルオロケミカルを含まない別の実施例として調製した。
【0149】
【表2】
【0150】
摩耗試験
水とイソプロパノールの90:10混合物を溶媒として用い、固体成分5重量%の示された実施例のフルオロケミカルウレタン及びアミノシラン、並びに3.5重量%のN−メチルピロリドンを更に含有するコーティング溶液を調製した。検査したアミノシランは、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS)、及び2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)であった。
【0151】
コーティング溶液を、室温で16時間エージングした。テストパネル(ACTラボラトリーズ(ACT Laboratories)、ミシガン州ヒルズデール(Hillsdale)、からAPR 4861Fとして入手可能)は、車用として一般的なウレタンアクリレートクリアコート(RK8014、デュポン(DuPont)から入手可能)で塗装した金属パネルであった。テストパネルをコーティングし、室温で30分間硬化し、デシケーター内にて室温で24時間エージングした。
【0152】
摩耗試験は、オセロ(O-Cello)(商標)スポンジと10.16cm(4インチ)×7.62cm(3インチ)の摩耗表面領域を有する150gの重量の加重スポンジアセンブリを備え、37サイクル/分で作動する、ビック・ガードナー(BYK Gardener)の摩耗試験機(Abrasion Tester)を用いて、ASTM D 2486−00「壁塗料の摩擦耐性(Scrub Resistance of Wall Paints)」に本質的に記載されるものとした。試験は、脱イオン水に浸したコーティングしたサンプルで行い、スポンジを予め脱イオン水で飽和させる。
【0153】
試験は100サイクル行う。表面の摩耗/損耗は、標準品に対する目視検査で評価する。目視の格付け尺度は以下のとおりである。
【0154】
1=全てのコーティングが取れている
2=(表面の)50%未満のコーティングが残っている
3=50%を超えるが100%未満のコーティングが残っている
4=表面全体にわたってコーティングが残っているが傷がある
5=コーティングが完全に残っており元の状態である(目に見える傷がない)
ヘイズ/光沢度試験
イソプロパノール/水(9:1)中、95:5重量%のフルオロケミカルウレタン:APTES(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)の固体成分5%コーティング溶液を調製した。クリアコートしたテストパネルをコーティング溶液でコーティングし、テストパネルを70°の角度に維持しながら水切りして乾燥し、デシケーター内にて周囲温度で約24時間エージングした。コーティングしたパネルを、水道水ですすぎ、窒素気流下で乾燥した。実施例12及び13では、アミノシランを含まない固体成分5.4%の溶液を調製し、その他の実施例と同様にコーティングし、試験を行った。
【0155】
ヘイズ及び光沢度は、ビック・ガードナー(BYK Gardner)ヘイズ−グロス反射率計(Haze-Gloss Reflectometer)モデル4601を用いて測定した。測定値を3回読み取り、平均を記録した。光沢度は20°及び60°の両方で測定し、ヘイズは20°で測定した。結果を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
接触角の測定方法
塗装した金属テストパネル(上述のように調製)を水で30秒間すすぎ、表面の界面活性剤を全て除く。濾過システム(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のミリポア・コーポレーション(Millipore Corporation)から入手)を通して濾過した、受け取ったままの状態での試薬グレードのヘキサデカン及び脱イオン水を用い、ビデオ接触角分析計(マサチューセッツ州ビルリカ(Billerica)のASTプロダクツ(AST Products)から商品番号VCA−2500XEとして入手可能)により、測定を行った。報告される値は、滴の右側及び左側で測定された少なくとも3滴の測定値の平均である。液滴量は静的測定について5μLであった。結果を表4に示す。
【0158】
比較の目的で、未コーティングのパネル(比較実施例1より)、及び3Mパフォーマンスフィニッシュ(3M Performance Finish)(スリーエム社(3M Company)より入手可能な市販の合成ワックス)、及びタッチ・オブ・クラス、スペシャルエディション塗装保護回復剤(A Touch of Class, Special Edition Paint Protector Renewer)(カルテックス・プロテクティブ・コーティング社(CAL-TEX Protective Coatings, Inc.)、テキサス州シェルツ(Schertz)より入手可能)でコーティングしたパネルを準備する。
【0159】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式
【化1】
を有し、
式中、Rfが、フッ素含有基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
Wが、
【化2】
であり、式中、W1が、水溶性基含有部分であり、vが1又は2であり、
R2が次式を有し:
【化3】
式中、
Yが、加水分解性基であり、
R6が、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pが、1、2又は3であり、
qが、1〜5であり、
それぞれのR5が、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基が1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
それぞれのX1が、−O−又は−NR4−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
それぞれのR3が、多価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基が1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
x及びyが、それぞれ独立して少なくとも1であり、並びにzが、1又は2である、化合物。
【請求項2】
Rfが、一価のペルフルオロアルキル基及びペルフルオロオキシアルキル基、並びに二価のペルフルオロアルキレン基及びペルフルオロオキシアルキレン基から選択されるフッ素含有基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rfが、
【化4】
を有し、式中、
Rf1が、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qが、共有結合、又は価数zの多価アルキレン基であり、
X2が、−O−、−NR4−、又は−S−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
yが、1又は2であり、
zが、1又は2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rf1が、
−(CnF2n)−、−(CnF2nO)−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)CnF2nO)−、−(CnF2nCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−及びこれらの組み合わせ(式中、nが、1〜4であり、Zが、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又はペルフルオロエーテル基である)からなる群から選択されるペルフルオロ化反復単位を含むペルフルオロオキシアルキレン基を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Rf1が、式
Rf6−Rf3−O−Rf4−(Rf5)q−の群を含み、
式中、
Rf6が、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開殻価電子(「−」)であり、
Rf3が、ペルフルオロアルキレン基を表し、
Rf4が、1、2、3又は4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基、又はこれらのペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、
Rf5が、ペルフルオロアルキレン基を表し、
qが、0又は1である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記ペルフルオロオキシアルキレン基が、−[CF2−CF2−O]r−、−[CF(CF3)−CF2−O]s−、−[CF2CF2−O]r−[CF2O]t−、−[CF2CF2CF2CF2−O]u、及び−[CF2−CF2−O]r−[CF(CF3)−CF2−O]s−、の1つ以上から選択され、それぞれのr、s、t及びuが、それぞれ1〜50の整数である、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
Rfが、一価のペルフルオロオキシアルキレン基であり、zが、1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
シラン基と−NH−C(O)−X1−基のモル比が、1:1を超える、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Rfが、フッ素化ポリオール由来である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
エチレン性不飽和基へのチオシランのフリーラジカル付加により誘導される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Yが、ハロゲン、C1〜C4のアルコキシ基、又はC1〜C4のアシルオキシ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
W1が、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、アンモニウム、四級アンモニウムなど、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
W1が、ポリ(オキシアルキレン)基から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
水溶性基W1が、−CO2M、−OH、−OSO3M、−SO3M、−PO(OM)2、−P(OM)3、及び−N(R8)3Xで表され、式中、それぞれのR8が、約1〜12個の炭素原子を有するフェニル基、脂環式基、又は脂肪族基からなる群から選択され、Mが、H、又はナトリウム、カリウム、カルシウム、及びN(R4)3H+から選択される一価又は二価の可溶性カチオンと同等のものであり、R4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、Xが、可溶性アニオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物の少なくとも1つと、溶媒と、を含む、コーティング組成物。
【請求項16】
アミノシランを更に含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物の水性分散液又は懸濁液を含む、コーティング組成物。
【請求項18】
シルセスキオキサンを更に含む、請求項15に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
チオシランと、側鎖エチレン性不飽和基を有するフルオロケミカルウレタン化合物とのフリーラジカル反応生成物を含む化合物であり、前記フルオロケミカルウレタン化合物が、ポリイソシアネートの反応生成物と、求核フッ素化化合物と、求核水溶性化合物と、求核エチレン性不飽和化合物とを含む、化合物。
【請求項20】
式
【化5】
を有し、式中、
Rfが、ペルフルオロ化された基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
X1が、−O−又は−NR4−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、該アルキレン基が1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
zが、1又は2であり、
xが、1又は2であり、
qが、1〜5である、のウレタン化合物にチオシランのフリーラジカルを付加する工程を含む請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項21】
前記チオシランが、式
【化6】
を有し、式中、
R5が、二価のアルキレン基であり、該アルキレン基が1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yが、加水分解性基であり、
R6が、一価のアルキル又はアリール基であり、
pが、1、2又は3である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
部分−R3−(CH=CH2)が、ビニル基、アリル基又はアリルオキシ基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
式
【化7】
を有し、式中、
Rfが、ペルフルオロ化された基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
X1が、−O−又は−NR4−、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、該アルキレン基が1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
zが、1又は2であり、
qが、1〜5である、のウレタン化合物に、式HS−R5−W1(式中、R5が、二価アルキレン基であり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、W1が、水溶性基である)の水溶性化合物のフリーラジカルを付加する工程を含む請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項24】
式
【化8】
を有し、式中、
Rfが、ペルフルオロ化された基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
X1が、−O−又は−NR4−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、該アルキレン基が1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
zが、1又は2であり、
qが、1〜5である、のウレタン化合物に、式HS−R5−W1(式中、R5が、二価アルキレン基であり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、W1が、水溶性基である)の水溶性化合物のフリーラジカル、及びチオシランのフリーラジカルを付加する工程を含む請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項1】
式
【化1】
を有し、
式中、Rfが、フッ素含有基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
Wが、
【化2】
であり、式中、W1が、水溶性基含有部分であり、vが1又は2であり、
R2が次式を有し:
【化3】
式中、
Yが、加水分解性基であり、
R6が、一価のアルキル基又はアリール基であり、
pが、1、2又は3であり、
qが、1〜5であり、
それぞれのR5が、二価のアルキレン基であり、前記アルキレン基が1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
それぞれのX1が、−O−又は−NR4−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
それぞれのR3が、多価のアルキレン基若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、前記アルキレン基が1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
x及びyが、それぞれ独立して少なくとも1であり、並びにzが、1又は2である、化合物。
【請求項2】
Rfが、一価のペルフルオロアルキル基及びペルフルオロオキシアルキル基、並びに二価のペルフルオロアルキレン基及びペルフルオロオキシアルキレン基から選択されるフッ素含有基を含む、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rfが、
【化4】
を有し、式中、
Rf1が、一価のペルフルオロアルキル基若しくはペルフルオロオキシアルキル基、又は二価のペルフルオロアルキレン基若しくはペルフルオロオキシアルキレン基であり、
Qが、共有結合、又は価数zの多価アルキレン基であり、
X2が、−O−、−NR4−、又は−S−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
yが、1又は2であり、
zが、1又は2である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
Rf1が、
−(CnF2n)−、−(CnF2nO)−、−(CF(Z)O)−、−(CF(Z)CnF2nO)−、−(CnF2nCF(Z)O)−、−(CF2CF(Z)O)−及びこれらの組み合わせ(式中、nが、1〜4であり、Zが、ペルフルオロアルキル基、ペルフルオロアルコキシ基、又はペルフルオロエーテル基である)からなる群から選択されるペルフルオロ化反復単位を含むペルフルオロオキシアルキレン基を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Rf1が、式
Rf6−Rf3−O−Rf4−(Rf5)q−の群を含み、
式中、
Rf6が、一価のペルフルオロオキシアルキルについてはFであり、二価のペルフルオロオキシアルキレンについては開殻価電子(「−」)であり、
Rf3が、ペルフルオロアルキレン基を表し、
Rf4が、1、2、3又は4個の炭素原子を有するペルフルオロアルキレンオキシ基、又はこれらのペルフルオロアルキレンオキシ基の混合物からなるペルフルオロアルキレンオキシ基を表し、
Rf5が、ペルフルオロアルキレン基を表し、
qが、0又は1である、請求項3に記載の化合物。
【請求項6】
前記ペルフルオロオキシアルキレン基が、−[CF2−CF2−O]r−、−[CF(CF3)−CF2−O]s−、−[CF2CF2−O]r−[CF2O]t−、−[CF2CF2CF2CF2−O]u、及び−[CF2−CF2−O]r−[CF(CF3)−CF2−O]s−、の1つ以上から選択され、それぞれのr、s、t及びuが、それぞれ1〜50の整数である、請求項2に記載の化合物。
【請求項7】
Rfが、一価のペルフルオロオキシアルキレン基であり、zが、1である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
シラン基と−NH−C(O)−X1−基のモル比が、1:1を超える、請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
Rfが、フッ素化ポリオール由来である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
エチレン性不飽和基へのチオシランのフリーラジカル付加により誘導される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
Yが、ハロゲン、C1〜C4のアルコキシ基、又はC1〜C4のアシルオキシ基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
W1が、カルボキシレート、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、ホスホネート、アンモニウム、四級アンモニウムなど、及びこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項13】
W1が、ポリ(オキシアルキレン)基から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
水溶性基W1が、−CO2M、−OH、−OSO3M、−SO3M、−PO(OM)2、−P(OM)3、及び−N(R8)3Xで表され、式中、それぞれのR8が、約1〜12個の炭素原子を有するフェニル基、脂環式基、又は脂肪族基からなる群から選択され、Mが、H、又はナトリウム、カリウム、カルシウム、及びN(R4)3H+から選択される一価又は二価の可溶性カチオンと同等のものであり、R4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、Xが、可溶性アニオンである、請求項1に記載の化合物。
【請求項15】
請求項1に記載の化合物の少なくとも1つと、溶媒と、を含む、コーティング組成物。
【請求項16】
アミノシランを更に含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の化合物の水性分散液又は懸濁液を含む、コーティング組成物。
【請求項18】
シルセスキオキサンを更に含む、請求項15に記載のコーティング組成物。
【請求項19】
チオシランと、側鎖エチレン性不飽和基を有するフルオロケミカルウレタン化合物とのフリーラジカル反応生成物を含む化合物であり、前記フルオロケミカルウレタン化合物が、ポリイソシアネートの反応生成物と、求核フッ素化化合物と、求核水溶性化合物と、求核エチレン性不飽和化合物とを含む、化合物。
【請求項20】
式
【化5】
を有し、式中、
Rfが、ペルフルオロ化された基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
X1が、−O−又は−NR4−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、該アルキレン基が1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
zが、1又は2であり、
xが、1又は2であり、
qが、1〜5である、のウレタン化合物にチオシランのフリーラジカルを付加する工程を含む請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項21】
前記チオシランが、式
【化6】
を有し、式中、
R5が、二価のアルキレン基であり、該アルキレン基が1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
Yが、加水分解性基であり、
R6が、一価のアルキル又はアリール基であり、
pが、1、2又は3である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
部分−R3−(CH=CH2)が、ビニル基、アリル基又はアリルオキシ基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
式
【化7】
を有し、式中、
Rfが、ペルフルオロ化された基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
X1が、−O−又は−NR4−、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、該アルキレン基が1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
zが、1又は2であり、
qが、1〜5である、のウレタン化合物に、式HS−R5−W1(式中、R5が、二価アルキレン基であり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、W1が、水溶性基である)の水溶性化合物のフリーラジカルを付加する工程を含む請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【請求項24】
式
【化8】
を有し、式中、
Rfが、ペルフルオロ化された基であり、
R1が、ポリイソシアネートの残基であり、
X1が、−O−又は−NR4−であり、ここでR4が、H又はC1〜C4のアルキルであり、
R3が、二価のアルキレン若しくはアリーレン基、又はこれらの組み合わせであり、該アルキレン基が1つ以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、
zが、1又は2であり、
qが、1〜5である、のウレタン化合物に、式HS−R5−W1(式中、R5が、二価アルキレン基であり、前記アルキレン基が、1個以上のカテナリー酸素原子を含有するか又は含有せず、W1が、水溶性基である)の水溶性化合物のフリーラジカル、及びチオシランのフリーラジカルを付加する工程を含む請求項1に記載の化合物を調製する方法。
【公表番号】特表2010−530434(P2010−530434A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513304(P2010−513304)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/064949
【国際公開番号】WO2008/156974
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/US2008/064949
【国際公開番号】WO2008/156974
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】
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