説明

フルオロポリマーの改質方法、それによる物品

フルオロポリマーは、相間移動触媒、およびスルフィドまたはジスルフィド塩のうちの少なくとも1種を含む成分から調製することができる改質用組成物と接触させ、改質用組成物を加熱することによって改質する。改質フルオロポリマーは、複合物品の調製に有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
フルオロポリマーは、一般にその化学的および物理的な不活性のため有名である。実際、その優れた遮断特性および疎水性特性は、水分および有害ガスバリア、耐食、およびノンスティックコーティングなどの用途のために広範囲に利用される。頻繁に使用されるフルオロポリマーの例には、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンジフルオリド、ならびにビニリデンジフルオリドとテトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーが含まれる。
【0002】
フルオロポリマーを含む多層構造は、広範囲の工業用途で受け入れられている。このような構造は、例えば燃料ラインホースおよび関連容器、ならびに化学処理分野でのホースまたはガスケットで利用される。多層物品の層間接着は、完成品の使用に応じて様々な性能基準を満たす必要があり得る。しかし、フルオロポリマーフィルムと非フッ素化ポリマーフィルムとの間の結合用途では、フルオロポリマーの非接着品質によって、強力な積層結合を得ることが困難にある恐れがある。
【0003】
フルオロポリマー基材の表面を改質するために、アルカリ金属還元などの過酷な化学処理(例えば、アルカリ金属を液体アンモニア中で、またはナトリウム−ナフタレンをグリム中で使用)を含めて、様々な手法が使用され、ポリビニリデンジフルオリドの場合は、相間移動触媒の存在下で濃縮水酸化アルカリ金属溶液が使用されている。他の手法には、レーザー誘起表面改質や光還元などフルオロポリマー基板の放射線処置が含まれる。
【0004】
上記の方法にはそれぞれ、欠点がある。例えば、アルカリ金属還元は、水分を含まない状態を維持することが必要であり、濃縮(8N)水酸化アルカリ金属方法は、比較的に遅く、放射線誘起方法は、高価になる可能性がある放射線源(例えば、レーザー)が必要であり、かつ/または不透明基材にあまり適していないかもしれない(例えば、電子供与体の存在下での光化学還元)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フルオロポリマーを化学的に改質するための新規方法を有することは望ましいはずである。特にこのような方法が容易にかつ迅速に実施され、強力な積層結合を生じる場合、非フッ素化ポリマー基材に結合させることができるようにフルオロポリマー基材の表面を化学的に改質するための新規方法を有することも有用であるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本発明は、フルオロポリマーの改質方法であって、
フルオロポリマーを、相間移動触媒;スルフィドもしくはポリスルフィド塩またはそのアニオン性共役酸のうちの少なくとも1種、および液体ビヒクルを含む成分から調製することができる改質用組成物に接触させるステップと、
改質用組成物を、構造−CH2CFX−(ただし、Xは、H、Cl、またはFを表す)を有する副単位を含む主鎖を有するフルオロポリマーと接触させながら少なくとも約40℃の温度で加熱するステップとを含む方法を提供する。
【0007】
別の態様では、本発明は、複合物品の調製方法であって、
フルオロポリマーを含む表面を有する第1の基材を提供するステップと、
第1の基材の表面を、相間移動触媒;スルフィドもしくはポリスルフィド塩またはそのアニオン性共役酸のうちの少なくとも1種、および液体ビヒクルを含む成分から調製することができる改質用組成物と接触させるステップと、
第1の基材を第2の基材に結合させて、複合物品を提供するステップとを含み、フルオロポリマーが、構造−CH2CFX−(ただし、Xは、H、Cl、またはFを表す)を有する副単位を含む主鎖を有し、方法は実質的に化学線なしで実施する方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施形態では、フルオロポリマー主鎖は、式−CF2CF2−、−CH2CH2−、−CF2CF(CF3)−、または−CH2CH(CH3)−の少なくとも1種を有するモノマー単位をさらに含む。
【0009】
さらに別の態様では、第1の基材は、本発明による改質フルオロポリマーを含む表面を有する。いくつかの実施形態では、第1の基材の表面を第2の基材に結合させて、複合物品を形成することができる。
【0010】
本発明の上記その他の態様は、下記の詳細な説明から明らかであろう。しかし、いかなる場合も、上記の要約をクレームされた主題事項を限定するものと解釈すべきでなく、主題事項は、手続き遂行中に補正されるかもしれない添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0011】
本願では、
「フルオロポリマー」は、その主鎖にフッ素原子を有し、フッ素含有量が少なくとも20重量パーセントであるポリマーを意味し、
「モノマー」は、重合され、それによってポリマーの本質的な構造に構成単位を寄与する化合物を意味し、
「モノマー単位」は、単一のモノマー分子によってポリマーの構造に寄与された最大の構成単位を意味し、
「ポリマー」は、同じでも異なってもよい少なくとも5個のモノマー単位を含む化学的化合物を意味し、
「ポリマー主鎖」は、ポリマー中連結されたモノマー単位の最長の鎖を意味し、
「可溶性」は、選択された液体ビヒクルに、25℃において約0.001モル/リットルの濃度で溶解できることを意味し、
「副単位」は、ポリマー主鎖内に含まれる2価の基を意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
有用なフルオロポリマーは、構造−CH2CFX−(ただし、Xは、H、Cl、またはFを表す)を有する1種または複数の副単位を含む主鎖を有する。副単位は、モノマー単位に対応してもよく、またはしなくてもよい。
【0013】
有用なフルオロポリマーには、例えばポリビニルフルオリド、ポリビニリデンジフルオリド;ならびにビニルフルオリド、クロロトリフルオロエチレン、および/またはビニリデンジフルオリド(すなわち、VDF)と、アルケン(例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、および1−オクテン)、クロロアルケン(例えば、塩化ビニルおよびテトラクロロエチレン)、クロロフルオロアルケン(例えば、クロロトリフルオロエチレン、3−クロロペンタフルオロプロペン、ジクロロジフルオロエチレン、および1,1−ジクロロフルオロエチレン)、フルオロアルケン(例えば、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン(すなわち、TFE)、1−ヒドロペンタフルオロプロペン、2−ヒドロペンタフルオロプロペン、ヘキサフルオロプロピレン(すなわち、HFP)、およびビニルフルオリド)、パーフルオロアルコキシビニルエーテル(例えば、CF3OCF2CF2CF2OCF=CF2);パーフルオロアルキルビニルエーテル(例えば、CF3OCF=CF2およびCF3CF2CF2OCF=CF2)、米国特許第4,558,142号明細書(スクワイア(Squire))に記載のものなどのパーフルオロ−1,3−ジオキソール、フッ素化ジオレフィン(例えば、パーフルオロジアリルエーテルまたはパーフルオロ−1,3−ブタジエン)など1種または複数のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマー、およびその組合せが含まれる。
【0014】
市販のビニルフルオリドフルオロポリマーには、例えば登録商標「テドラー(TEDLAR)」で米国デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥヌムールアンドカンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Company, Wilmington, Delaware)から市販されているものが含まれる。
【0015】
市販のビニリデンジフルオリドを含むフルオロポリマーには、例えば米国ミネソタ州セントポールのダイニオン(Dyneon, St. Paul, Minnesota)によって市販されている登録商標「THV」(例えば、「THV 200」、「THV 400」、「THVG」、「THV 610X」、または「THV 800」);米国ペンシルベニア州フィラデルフィアのアトフィナ(Atofina, Philadelphia, Pennsylvania)によって市販されている「カイナー(KYNAR)」(例えば、「カイナー(KYNAR) 740」);米国ニュージャージー州モリスタウンのアウシモントUSA(Ausimont USA, Morristown, New Jersey)によって市販されている「ハイラー(HYLAR)」(例えば、「ハイラー(HYLAR) 700」);およびダイニオン(Dyneon)によって市販されている「フローレル(FLUOREL)」(例えば、「フローレル(FLUOREL) FC−2178」)を有するフルオロポリマーが含まれる。
【0016】
フルオロポリマーは、例えばポリビニリデンジフルオリド;テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびビニリデンジフルオリド(例えば、登録商標「THV」でダイニオン(Dyneon LLC)によって市販されているもの)のコポリマー;テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;ならびに他の溶融加工性フッ素プラスチックの場合は、溶融加工性とすることができ、あるいはフルオロポリマーは、例えばポリテトラフルオロエチレン;TFEおよび低レベルのフッ素化ビニルエーテルのコポリマー、ならびに硬化フルオロエラストマーの場合は、溶融加工性とすることができない。
【0017】
有用な1種のフルオロポリマーは、少なくともTFEおよびVDFから誘導されるモノマー単位を含み、VDFの量が、少なくとも0.1、3、または10重量パーセントで、15または20重量パーセント未満であり、残部は、TFE誘導モノマー単位である。
【0018】
有用なフルオロポリマーには、HFPおよびVDFモノマー単位を有するコポリマー、例えばVDFモノマー単位の量が少なくとも0.1、3、または10重量パーセントで、15または20重量パーセント未満であり、ポリマー重量の残部が、HFPモノマー単位であるコポリマーが含まれる。
【0019】
有用なフルオロポリマーには、HFP、TFE、およびVDF(すなわち、THV)のコポリマーも含まれる。これらのポリマーは、例えば少なくとも約2、10、または20重量パーセントから30、40、さらには50重量パーセント間での範囲のVDFモノマー単位、および少なくとも約5、10、または15重量パーセントから約20、25、さらには30重量パーセントまでの範囲のHFPモノマー単位を有し、ポリマー重量の残部はTFEモノマー単位とすることができる。市販のTHVポリマーの実施例には、ダイニオン(Dyneon, LLC)によって登録商標「ダイニオン(DYNEON) THV 2030G フルオロサーモプラスチック(FLUOROTHERMOPLASTIC)」、「ダイニオン(DYNEON) THV 220 フルオロサーモプラスチック(FLUOROTHERMOPLASTIC)」、「ダイニオン(DYNEON) THV 340C フルオロサーモプラスチック(FLUOROTHERMOPLASTIC)」、「ダイニオン(DYNEON) THV 415 フルオロサーモプラスチック(FLUOROTHERMOPLASTIC)」、「ダイニオン(DYNEON) THV 500A フルオロサーモプラスチック(FLUOROTHERMOPLASTIC)」、「ダイニオン(DYNEON) THV 610G フルオロサーモプラスチック(FLUOROTHERMOPLASTIC)」、または「ダイニオン(DYNEON) THV 810G フルオロサーモプラスチック(FLUOROTHERMOPLASTIC)」で市販されているものが含まれている。
【0020】
有用なフルオロポリマーには、エチレン、TFE、およびHFPのコポリマーも含まれる。これらのポリマーは、例えば少なくとも約2、10、または20重量パーセントから30、40、さらには50重量パーセントまでの範囲のエチレンモノマー単位、および少なくとも約5、10、または15重量パーセントから約20、25、さらには30重量パーセントまでの範囲のHFPモノマー単位を有し、ポリマー重量の残部は、TFEモノマー単位とすることができる。このようなポリマーは、例えば登録商標「ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON FLUOROTHERMOPLASTIC) HTE」(例えば、「ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON FLUOROTHERMOPLASTIC) HTE X 1510」、または「ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON FLUOROTHERMOPLASTIC) HTE X 1705」)でダイニオン(Dyneon LLC)で市販されている。
【0021】
有用なフルオロポリマーには、テトラフルオロエチレンおよびプロピレンのコポリマー(TFE/P)も含まれる。これらのコポリマーは、例えば少なくとも約20、30、または40重量パーセントから約50、65、さらには80重量パーセントまでの範囲のTFEモノマー単位を有し、ポリマー重量の残部は、プロピレンモノマー単位とすることができる。このようなポリマーは、例えばダイニオン(Dyneon, LLC)によって市販されている登録商標「アフラス(AFLAS)」(例えば、「アフラス(AFLAS) TFEエラストマー FA 100H」、「アフラス(AFLAS) TFEエラストマー FA 150C」、「アフラス(AFLAS) TFEエラストマー FA 150L」、または「アフラス(AFLAS) TFEエラストマー FA 150P」)、または米国デラウェア州ウィルミントンのイー・アイ・デュポン・ドゥヌムールアンドカンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Company, Wilmington, Delaware)によって市販されている「ビトン(VITON)」(例えば、「ビトン(VITON) VTR−7480」、または「ビトン(VITON) VTR−7512」)として市販されている。
【0022】
有用なフルオロポリマーには、エチレンおよびTFE(すなわち、「ETFE」)のコポリマーも含まれる。これらのコポリマーは、例えば少なくとも約20、30または40重量パーセントから約50、65、さらには80重量パーセントの範囲のTFEモノマー単位を有し、ポリマー重量の残部は、プロピレンモノマー単位とすることができる。このようなポリマーは、例えば登録商標「ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON FLUOROTHERMOPLASTIC) ET 6210J」、「ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON FLUOROTHERMOPLASTIC) ET 6235」、または「ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON FLUOROTHERMOPLASTIC) ET 6240J」でダイニオン(Dyneon LLC)によって市販されているものとして商業的に得ることができる。
【0023】
VDF含有フルオロポリマーを例えば参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,338,237号明細書(ズルツバッハ(Sulzbach)ら)または第5,285,002号明細書(グルータート(Grootaert))に記載されているような乳化重合技法を使用して調製することができる。
【0024】
フルオロポリマーは、いかなる形でも有することができる。例えば、フルオロポリマーは溶液または分散液を含むことができ、あるいは例えばブロック、(例えば、シート、ウェブ、およびテープを含めて)フィルム、または成形品などの固体の形を有することができる。固体の形の場合は、本発明による方法は、固体の形の1種または複数の表面(例えば、フィルムの1種または複数の主表面)を改質するのに有用であり、乳濁液または溶液の場合は、本発明の方法は、塊状ポリマーを改質するのに有用である。
【0025】
相間移動触媒;スルフィドもしくはポリスルフィド塩、またはそのアニオン性共役酸のうちの少なくとも1種を含み、かつ/またはそれから調製することができる改質用組成物と接触させ、接触させた組合せを周囲温度(例えば、23℃)以上の温度で加熱することによって、フルオロポリマーを改質する。通常は、少なくとも40℃の温度で加熱すると、有用な改質速度が得られ、例えば少なくとも60℃、さらには少なくとも80℃などのより高い温度で、さらにより速い速度が得られる。加熱時間は、特定の条件および求められる改質の程度に応じて、より長いまたより短い時間も有用であり得るが、少なくとも1、15、30、または60秒の短時間から120秒、さらには300秒まで(120秒、さらには300秒を含む)とすることができる。加熱は、周囲条件、または例えばオーブン(例えば、対流または強制空気)、放射加熱器、加熱板、マイクロ波加熱器、熱容器、熱ローラー、およびその組合せなど従来型の手段によって提供することができる。
【0026】
有利には、本発明による方法は、有効であるために光を必要とせず、光を使用することが困難である(例えば、密閉金属反応容器)、または光を露光することが望ましくない(例えば、光劣化材料)用途で有用となる。したがって、本発明による方法を実質的に化学線なしで(すなわち、例えば太陽光、ろうそく、ランプ、ランタン、および/または白熱もしくは蛍光室内照明などの周囲照明条件によって生じる偶発性の化学線以外の化学線なしで)実施することができる。本明細書では、「化学線」は、少なくとも200ナノメートルから400ナノメートルまで(400ナノメートルを含む)の波長を有する光を意味する。
【0027】
有用な相間移動触媒には、例えば有機スルホニウム塩(例えば、トリフェニルスルホニウムクロリド、トリクロロフェニルスルホニウムブロミド、トリトリルスルホニウムクロリド、ジフェニル−(4−チオフェニル)フェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートなどのトリアリールスルホニウム塩;トリブチルスルホニウムクロリド、エチルジブチルスルホニウムブロミドなどのトリアルキルスルホニウム塩;メチルジフェニルスルホニウムp−トルエンスルホナート、エチルオクチルフェニルスルホニウムクロリド、ブチルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスファートなどの混合アルキルアリールスルホニウム塩;ならびに上記の組合せおよび置換誘導体);有機アルソニウム塩(例えば、テトラフェニルアルソニウムクロリドやテトラトリルアルソニウムブロミドなどのテトラアリールアルソニウム塩;テトラメチルアルソニウムヨージド、オクチルトリメチルアルソニウムブロミド、テトラエチルアルソニウムクロリドなどのテトラアルキルアルソニウム塩;ブチルトリフェニルアルソニウムヨージドなどの混合アルキルアリールアルソニウム塩;ならびに上記の組合せおよび置換誘導体);有機アンチモニウム塩(例えば、テトラフェニルアンチモニウムクロリドやトリトリルアンチモニウムクロリドなどのテトラアリールアンチモニウム塩;テトラメチルアンチモニウムヨージド、オクチルトリメチルアンチモニウムブロミド、テトラエチルアンチモニウムクロリドなどのテトラアルキルアンチモニウム塩;ブチルジフェニルアンチモニウムヨージドなどの混合アルキルアリールアンチモニウム塩;ならびに上記の組合せおよび置換誘導体);有機ヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモナート、およびジトリルヨードニウムクロリドなどのジアリールヨードニウム塩);有機ホスホニウム塩(例えば、テトラアルキルホスホニウム塩、アラルキルトリアリールホスホニウム塩、アリールトリアルキルホスホニウム塩などの第四級ホスホニウム塩);有機アンモニウム塩(例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、アラルキルトリアリールアンモニウム塩、アリールトリアルキルアンモニウム塩などの第四級アンモニウム塩);クラウンエーテル;ならびにその組合せが含まれる。
【0028】
相間移動触媒に関するさらに詳細は、例えば米国特許第4,233,421号明細書(ウォーム(Worm))、第4,912,171号明細書(グルータート(Grootaert)ら)、第5,086,123号明細書(グエンスナー(Guenthner)ら)、および第5,262,490号明細書(コール(Kolb)ら)に出ている。
【0029】
ホスホニウムおよびアンモニウム塩相間移動触媒は、通常は比較的安価であり、容易に得られ、したがって通常は、本発明の実施で使用するのによく適している。有用なテトラアルキルホスホニウムまたはテトラアルキルアンモニウム塩は、わずか4個の炭素原子から少なくとも16、20、24個まで、さらにはそれ以上の炭素原子を有することができる。
【0030】
第四級アンモニウム塩および第四級ホスホニウム塩は、液体ビヒクルで少なくとも塩の部分溶解を可能にする適切な任意のアニオン性対イオンを有することができる。適切な対イオンの例としては、ハリド(例えば、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨージド)、ニトラート、ビスルファート、サルファート、カルボナート、ビカルボナート、ホスファート、アルキルホスホナート、メシラート、トシラート、およびその組合せがある。
【0031】
有用な市販の第四級アンモニウム塩の例としては、メチルトリブチルアンモニウムクロリド、メチルトリカプリリルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルファート、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムヨージド、トリブチルエチルアンモニウムブロミド、トリブチルメチルアンモニウムクロリド、トリエチルブチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリブチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、フェニルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラオクチルアンモニウムクロリド、トリフェニルベンジルアンモニウムブロミド、トリフェニルベンジルアンモニウムアセテート、トリフェニルベンジルアンモニウムベンゾアート、トリフェニルイソブチルアンモニウムブロミド、トリオクチル−n−ブチルアンモニウムクロリド、トリオクチルベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルベンジルアンモニウムアセタート、トリフェニル−2,4−ジクロロベンジルアンモニウムクロリド、トリオクチルメトキシエトキシエチルアンモニウムクロリド、トリフェニルエトキシカルボニルメチルアンモニウムクロリド、トリフェニルアリルアンモニウムクロリド、および1−ブチルピリジニウムクロリドがある。
【0032】
有用な市販の第四級アンモニウム塩の例としては、ベンジルトリフェニルホスホニウムクロリド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド、エチルトリフェニルホスホニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムヨージド、メチルトリフェニルホスホニウムブロミド、メチルトリフェニルホスホニウムクロリド、メチルトリフェニルホスホニウムヨージド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムブロミド、テトラオクチルホスホニウムクロリド、トリフェニルベンジルホスホニウムブロミド、トリフェニルベンジルホスホニウムアセテート、トリフェニルベンジルホスホニウムベンゾアート、トリフェニルイソブチルホスホニウムブロミド、トリオクチル−n−ブチルホスホニウムクロリド、トリオクチルベンジルホスホニウムクロリド、トリオクチルベンジルホスホニウムアセテート、トリフェニル−2,4−ジクロロベンジルホスホニウムクロリド、トリオクチルメトキシエトキシエチルホスホニウムクロリド、トリフェニルエトキシカルボニルメチルホスホニウムクロリド、およびトリフェニルアリルホスホニウムクロリドがある。
【0033】
有用なクラウンエーテルには、商業的供給源から容易に得ることができる例えば18−クラウン−6 エーテル、15−クラウン−5 エーテル、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6 エーテル、およびジベンゾ−18−クラウン−6 エーテル、12−クラウン−4 エーテル、21−クラウン−7 エーテル、ベンゾ−15−クラウン−5 エーテルなど、中央に配置された金属原子にエーテルの酸素原子を経由して配位することができるエチレンオキシド単位を含む大環状ポリエーテルが含まれる。
【0034】
改質用組成物中の相間移動触媒の典型的な濃度は、他の量も使用することができるが、少なくとも0.001から0.1モル/リットルまでの範囲である。
【0035】
有用なスルフィドおよびポリスルフィド塩には、少なくとも1個の液体ビヒクルに少なくとも部分溶解性を有する塩が含まれ、例えば少なくとも1個のスルフィドもしくはポリスルフィド(例えば、ジスルフィド、トリスルフィド、またはテトラスルフィド)アニオン、またはスルフィドもしくはポリスルフィド(例えば、ビスルフィド)のアニオン性共役酸、またはその組合せを、少なくとも1個のカチオン性対イオンと組み合わせて含む塩が含まれる。有用なカチオン性対イオンには、例えばアルカリ金属イオン(例えば、Na+、K+、Li+、Cs+)、アルカリ土類イオン(例えば、Mg2+、Ca2+)、NH4+、第四級アンモニウム(例えば、テトラアルキルアンモニウム、アリールトリアルキルアンモニウム、アラルキルトリアルキルアンモニウム、テトラアリールアンモニウム)イオン、および第四級ホスホニウム(例えば、テトラアルキルホスホニウム、アリールトリアルキルホスホニウム、アラルキルトリアルキルホスホニウム、テトラアリールホスホニウム)イオン、ならびにその組合せが含まれる。改質用組成物中のスルフィドまたはポリスルフィド塩の典型的な濃度は、他の量も使用することができるが、少なくとも0.001から0.1モル/リットルまでの範囲である。
【0036】
スルフィドイオンは、水の存在下で(例えば、塩基触媒の存在下で)スルフィドを形成する様々な前駆体によって提供することができる。このような前駆体の例としては、チオ酸、チオウレア、およびチオケトンがある。
【0037】
有用な一実施形態では、スルフィドもしくはポリスルフィドアニオン、またはそのアニオン性共役酸は、上記に記述する相間移動触媒のうちの少なくとも1個のカチオンと対をなして、塩を形成することができる。このような塩は、同時にスルフィドまたはポリスルフィド塩(またはそのアニオン性共役酸)および相間移動触媒として働くことができる。
【0038】
通常は、ポリマー基板を溶解しない、または著しく膨潤させないが、相間移動触媒、およびスルフィド塩、ポリスルフィド塩、またはそのアニオン性共役酸を溶解するのに少なくともある程度有効であるような液体ビヒクルを選択することができる。液体ビヒクルは、水、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、ジアセトンアルコールなどのケトンおよびケトアルコール;酢酸エチルや乳酸エチルなどのエステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ヘキシレングリコール、グリセロール、グリセロールエトキシラート、トリメチロプロパンエトキシラートなどの多価アルコール;エチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルまたはエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルおよびモノエチルエーテルなどの低級アルキルエーテル;ならびにその組合せ)、またはその組合せを含むことができる。
【0039】
改質用組成物は、例えばチキソトロピー剤、増粘剤、ゲル化剤、ラテックス粒子、繊維、無機粒子、乳化性相織または不織材料、および/またはフルオロポリマーにグラフトさせることができる求核試薬(すなわち、低電子密度の領域に優先的に吸引される種)などオプションの添加剤を含むことができる。例示的な求核試薬には、水、ヒドロキシド、アルコール、アルコキシド、シアニド、シアナート、ハリド(例えば、クロリド、ブロミド、ヨージド)が含まれる。
【0040】
通常は、改質用組成物は、相間移動触媒、スルフィドもしくはポリスルフィド塩、またはそのアニオン性共役酸、液体ビヒクル、およびオプションの添加剤を組み合わせることによって(例えば、混合して)調製することができる。場合によっては、加熱は、液体ビヒクルにおいて構成成分のうちの1種または複数の溶解を容易にするのに有用となり得る。
【0041】
表面改質の様々な程度は、例えば改質用組成物およびフルオロポリマーを接触させる時間の長さを変えることによって、かつ/またはプロセス温度を変えることによって得ることができる。表面改質の程度は、全滅衰内部反射赤外分光(ATR IR)、および化学分析のための電子散乱(ESCA)、および接触角測定に限定されないが、これらを含めて様々な周知の表面分析技法によって決定することができる。
【0042】
フルオロポリマーは、塊相であれ、固体フルオロポリマー基材(例えば、フィルムまたはブロック)の表面であれ改質すると、第2の基材に結合することができる。このような結合は、例えばのりまたは接着剤(例えば、感圧性、熱硬化性、ホットメルト)を使用して、かつ/または加圧下で積層することによって、かつ/または従来型の方法を使用して加熱して実現することができ、図面に示す複合物品を生じる。この複合物品100は、改質表面160を有するフルオロポリマー基材120を含み、オプションの接着剤層150と第2の基材130の表面140とを接触させる。
【0043】
結合に適した熱源には、例えばオーブン、熱ローラー、熱プレス、赤外放射線源、火炎などが含まれる。結合に適した圧力は、例えばプレス、ニップローラーなどによって提供することができる。熱および圧力の必要量は、結合させる特定の材料に依存し、通常は実験的方法によって容易に決定される。
【0044】
第2の基材は、例えばポリマー(例えば、フィルムまたはブロックとして)、金属、ガラス、または他の材料を含むことができる。第2の基材は、フルオロポリマーや非フッ素化ポリマーなどのポリマーフィルムである場合、フルオロポリマー基材と同じでも異なってもよい。第2の基材はその表面上に、強力な接着剤結合を形成する上で役に立つ極性基を有することができる。極性基は、例えばコロナ処理を含めて知られている技法によって導入することができる。
【0045】
第2の基材として使用することができる例示的なポリマーフィルムには、ポリアミド(例えば、ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−11、およびナイロン−12)、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、オレフィンとエチレン性不飽和モノマーのコポリマー(例えば、エチレン酢酸ビニル、無水物変性ポリエチレンポリマー、無水物変性ポリプロピレンポリマー)、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリイミド、ポリスチレン、ポリカーボナート、ポリケトン、ポリ尿素、ポリアクリラート、およびその組合せなどの熱可塑性ポリマー;アクリロニトリルブタジエンゴム、ブタジエンゴム、塩素化またはクロロスルホン化ポリエチレン、クロロプレン、エチレンプロピレンモノマーゴム、エチレンプロピレン−ジエンモノマーゴム、エピクロロヒドリンゴム、ポリイソブチレン、ポリイソプレン、ポリウレタン、シリコーンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレン−アクリラートコポリマーゴム、エチレン酢酸ビニルゴム、およびその組合せなどのエラストマー;ならびにその組合せを含むフィルムが含まれる。
【0046】
ポリマーフィルムは、例えば充填剤、可塑剤、酸化防止剤、または光安定剤など、1種または複数の添加剤を含むことができる。
【0047】
下記の非限定的実施例によって、本発明の目的および利点をさらに説明するが、これらの実施例に記載する具体的な材料およびその量、ならびに他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するものではないと解釈されたい。
【実施例】
【0048】
別段の注記のない限り、実施例で使用する試薬はすべて、米国ミズーリ州セントルイスのシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich Corporation, Saint Louis, Missouri)などの一般化学品供給業者から得られ、または市販され、あるいは通常の方法によって合成することができる。
【0049】
別段の指定のない限り、下記の実施例および試験を周囲条件下(21〜25℃)で実施した。
【0050】
実施例では、
「Me」はメチルを意味し、「Bu」はn−ブチルを意味し、「ペンチル」はn−ペンチルを意味し、「ヘキシル」はn−ヘキシルを意味し、「オクチル」はn−オクチルを意味し、
「g」はグラムを意味し、「mL」はミリリットルを意味し、
表中の「NM」は「測定せず」を意味し、
表中の「NA」は「適用できず」を意味し、
「FP1」は、一般に米国特許第6,242,548号明細書(ドウチェスネ(Duchesne)ら)の手順に従って調製した、60.0重量パーセントのTFEと、18.0重量パーセントのHFPと、22.0重量パーセントのVDFとのコポリマーの厚さ16〜20ミル(0.41〜0.51mm)、Tm=165℃の押出フィルムを指す。
【0051】
「FP2」は、米国特許第6,242,548号明細書(ドウチェスネ(Duchesne)ら)の手順に従って調製した、73.0重量パーセントのTFEと、11.5重量パーセントのHFPと、11.5重量パーセントのVDFと、4.0重量パーセントのパーフルオロプロピルビニルエーテルとのコポリマーの厚さ16〜20ミル(0.41〜0.51mm)、Tm=222℃、MFI=4.8の押出フィルムを指し、
「FP3」は、登録商標「ソルフ(SOLEF) 1010」でベルギー ブリュッセルのソルベイ(Solvay, S.A., Brussels, Belgium)から得られたPVDF樹脂をホットプレスすることによって得られた、登録商標「カイナー(KYNAR) 761」の厚さ16〜20ミル(0.41〜0.51mm)のポリビニリデンジフルオリドフィルムを指し、
「FP4」は、登録商標「ダイニオンフルオロサーモプラスチック(DYNEON FLUOROTHERMOPLASTIC) HTE」でダイニオン(Dyneon, LLC)から得られた、エチレンと、TFEと、HFPとのコポリマーの厚さ16〜20ミル(0.41〜0.51mm)の押出フィルムを指し、
「FP5」は、登録商標「テドラー(TEDLAR)」でイー・アイ・デュポン・ドゥヌムールアンドカンパニ−(E.I. du Pont de Nemours & Company)から得られた、厚さ3ミル(0.08mm)のポリビニルフルオリド押出フィルムを指し、
「P1」は、クレアノバ(Creanova)(米国ニュージャージー州サマセット(Somerset, New Jersey))から市販されている登録商標「ベスタミッド(VESTAMID) L2140」で得られた、140℃のビカー軟化点を有するナイロン−12の厚さ16〜20ミル(0.41〜0.51mm)のホットプレスフィルムを指し、
「P2」は、イー・アイ・デュポン・ドゥヌムールアンドカンパニ−(E.I. du Pont de Nemours and Co.)から得られた登録商標「バイネル(BYNEL) 3101」の酸変性エチレン−ビニルアセタートコポリマーの厚さ16〜20ミル(0.41〜0.51mm)のホットプレスフィルムを指し、
「ADH1」は、登録商標「EPON 828」で米国テキサス州ヒューストンのリゾリューションパフォーマンスプロダクツ(Resolution Performance Products, Houston, Texas)から得られたビスフェノールAエポキシ樹脂を指し、
「ADH2」は、登録商標「ERL 4221」で米国ミシガン州ミッドランドのダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company, Midland, Michigan)から得られた脂環式エポキシ樹脂を指し、
「ADH3」は、登録商標「DEN 431」でダウケミカルカンパニー(Dow Chemical Company)から得られたノボラックエポキシ樹脂を指し、
「ADH4」は、登録商標「サーモボンドフィルム(THERMO−BOND FILM) 406」でスリーエムカンパニー(3M Company)から得られたエチレンアクリル酸樹脂を指し、
「ADH5」は、登録商標「サーモボンドフィルム(THERMO−BOND FILM) 557」でスリーエムカンパニー(3M Company)から得られたエチレンアクリル酸樹脂を指し、
「ADH6」は、登録商標「サーモボンドフィルム(THERMO−BOND FILM) 615」でスリーエムカンパニー(3M Company)から得られたポリエステル樹脂を指し、
「ADH7」は、登録商標「サーモボンドフィルム(THERMO−BOND FILM) 668」でスリーエムカンパニー(3M Company)から得られたポリエステル樹脂を指し、
「ADH8」は、登録商標「サーモボンドフィルム(THERMO−BOND FILM) 845」でスリーエムカンパニー(3M Company)から得られたポリオレフィン樹脂を指し、
「ADH9」は、登録商標「スリーエム接着剤転写テープ(3M ADHESIVE TRANSFER TAPE) 300」でスリーエムカンパニー(3M Company)から得られたアクリル感圧接着剤を指し、
「PTC1」は、登録商標「アドゲン(ADOGEN) 464」でシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich Corporation)から得られたメチルトリアルキル(C8〜C10)アンモニウムクロリドを指す。
【0052】
二硫化ナトリウムの調製
実施例で使用する二硫化ナトリウムを以下の手順に従って調製した。フラスコに、硫化ナトリウム9水和物結晶(24.0g、0.1モル)、および硫黄(3.2g、0.1モル)を入れ、硫黄が完全に溶解するまで混合物を水蒸気浴によって加熱した。反応生成物を室温に冷却して、橙色結晶の二硫化ナトリウムを得た。
ESCA分析
【0053】
分析に使用する装置は、非単色化Al源を備えたツィンアナライザーESCA装置であった。別段の指定のない限り、光電子放出を面法線に対して45度の散乱角で検出した。
【0054】
T−剥離試験
層間の剥離強さを、一般にD1876−01(2001)「接着剤の剥離抵抗のための標準試験方法(T−剥離試験)」に従って測定した。試料を幅25.4mm、長さ約2〜2.5インチ(5〜6.3cm)の細長片に切断した。
【0055】
100mm/分のクロスヘッド速度でモデル1125試験機(米国マサチューセッツ州キャントンのインストロンコーポレーション(Instron Corporation, Canton, Massachusetts)から入手可能)を、試験装置として使用した。層を分離したとき、試料の中央の80パーセントの平均剥離強さを測定した。クロスヘッド移動の最初の10パーセントと最後の10パーセントの距離の値を削除した。層を結合界面で分離することなく試料が材料内で分解する場合、平均数の代わりにピーク値を使用した。報告された剥離強さは、各剥離試験中測定された平均荷重として算出され、ニュートン/試料幅(メートル)の単位(N/m)で記述されたものであり、同一の試料から得られた少なくとも2個の測定値の平均を表している。
【0056】
参照例1
米国ニューヨーク州スケネクタディのジェネラルエレクトリックカンパニー(General Electric Company, Schenectady, New York)から得られた6個のG15T8殺菌電球(254ナノメートルの波長において最大強度をもつ紫外線放射線源)を中心上2インチ(5cm)の間隔で配置したフラットバンクの下に、254ナノメートルの放射線に対して透過性でない2個のガラス温度計(レッドアルコール(red alcohol)および水銀型)を2インチ(5センチメートル)の距離をあけて10分間配置した。温度は、初期温度23℃から上昇し、最終温度29℃で横ばいになった。
【0057】
比較例1
Bu4PBr(1.0g)および水酸化カリウム(KOH)3.0gを水60mLに添加し、室温で20分間撹拌した。この溶液に、FP1の断片(2.0インチ×1.0インチ(5.1cm×2.5cm))を25℃で5分間浸した。次いで、処理したフルオロポリマーフィルムを取り出し、フィルムで水を撹拌することによって繰返し水洗(6×100mL)し、イソプロパノールで2回洗浄し、乾燥した。次いで、試料をESCAによって分析して、処理表面の改質用化学組成物を決定した。表1に、ESCA分析の結果を報告する。
【0058】
比較例2
フルオロポリマーフィルムと接触させながら、処理溶液の温度を80℃で5分間保持した点以外は、比較例1の手順を繰り返した。フィルムの処理表面をESCAによって分析した。表1に、結果を報告する。
【0059】
四塩化炭素中0.5モルの臭素をとかした30mLを入れたスクリューキャップバイアルに、処理したフルオロポリマーフィルムを配置し、25℃で20分間保持した。フィルム試片を臭素溶液から取り出し、四塩化炭素と、その後ジクロロメタンで洗浄し、乾燥した。フィルムの処理表面をESCAによって分析した。表1に、結果を示す。
【0060】
実施例1
Bu4PBr(1.0g)および硫化ナトリウム(Na2S)3.0gを水60mLに添加し、室温で20分間撹拌する。この溶液に、フルオロポリマー(FP1)のフィルムを25℃で5分間浸した。次いで、処理したフルオロポリマーフィルムを取り出し、比較例1に記載したのと同じ方式で処理した。フィルムの処理表面をESCAによって分析した。表1に、結果を報告する。
【0061】
実施例2
フルオロポリマーフィルムとの接触中、処理溶液温度を80℃で5分間保持した点以外は実施例1の手順を繰り返した。フィルムの処理表面をESCAによって分析した。表1に、結果を報告する。
【0062】
処理したフルオロポリマーフィルムを、比較例2の手順を使用して臭素化した。フィルムの処理表面をESCAによって分析した。表1に、結果を示す。
【0063】
比較例3
比較例3は、FP1フィルムの非処理断片(2.0インチ×1.0インチ(5.1cm×2.5cm))であった。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例3〜22および比較例4〜7
改質用組成物、温度、および処理時間を表IIに報告するように変更した点以外は実施例1の手順に従って、フルオロポリマーフィルム(すなわち、FP1またはFP2)の断片(2.0インチ×1.0インチ(5.1cm×2.5cm))を処理した。
【0066】
フルオロポリマーフィルムの処理した断片を、下記の一般的手順を使用して第2のポリマーフィルム(すなわち、P1またはP2)の断片(2.0インチ×1.0インチ(5.1cm×2.5cm)に積層した。フルオロポリマーフィルムを第2のポリマーフィルム上に重畳し、試験対象のフルオロポリマーフィルムと第2のポリマーフィルムの間に、ポリテトラフルオロエチレンで被覆した繊維シートの細長片を一方の短辺に沿って約0.6cm挿入して、T−剥離試験で役に立つ非結合縁部を設けた。次いで、得られた重畳フィルムアセンブリは、加熱した油圧プレスの熱板の間でシートを150psi(1.03MPa)の加圧下、200℃で2分間加熱することによって一緒に積層した。次いで、得られた熱積層アセンブリを、水冷金属板(13〜15℃)と密接に接触させて配置することによって直ちに冷却した。次いで、試料を徐々に室温まで加温し、積層アセンブリをT−剥離試験に従って試験した。
【0067】
【表2】

【0068】
実施例23〜28および比較例8
比較例1の一般的手順に従って、FP1の試料を、表3に報告する量の様々な改質用溶液および相間移動触媒に曝露し、次いでESCAによって分析した。表3(下記)に結果を報告する。
【0069】
【表3】

【0070】
実施例28〜45
FP1およびFP2の細長片(7.6cm×1.3cm)をそれぞれ、KOH 3.0g、Na2S 0.7g、Bu4PBr 1.0g、および水60mLからなる改質用組成物で処理する(60℃、120秒)ことによって改質した。表面改質したFP1およびFP2のフィルムの接着は、表4に報告するように、2枚のFP1細長片または2枚のFP2細長片を使用し、2枚の細長片の間に配置された5.1cm×1.3cmの領域をカバーする接着剤でともに結合させて測定した。試料を、加熱した油圧プレスで約1MPaの圧力を使用して140℃で加熱することによって、実施例28〜36(それぞれ実施例37〜45をもたらす)の結合を実現した。結合試料を、T−剥離試験に従って5.08cm/分のクロスヘッド速度を使用して試験した。少なくとも5個の試料の剥離強さ値を平均し、データをN/mで表した。
【0071】
【表4】

【0072】
実施例46〜70および比較例9、10
手順の修正を伴って、一般に比較例1の手順に従って実施例46〜70を実施した。試験結果は表5(下記)に報告するとおりである。
【0073】
【表5】

【0074】
実施例68〜71
手順の修正を伴って、一般に比較例1の手順に従って実施例68〜71を実施した。試験結果は表6(下記)に報告するとおりである。
【0075】
【表6】

【0076】
本発明の様々な予見できない修正および変更は、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく当業者によって行うことができ、本発明は、本明細書に記載した例示的実施形態に不当に限定されるべきでないと理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明による例示的複合物品の横断側面図である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーの改質方法であって、
フルオロポリマーを、相間移動触媒;スルフィドもしくはポリスルフィド塩またはそのアニオン性共役酸のうちの少なくとも1種、および液体ビヒクルを含む成分から調製することができる改質用組成物と接触させるステップと、
前記改質用組成物を前記フルオロポリマーと接触させながら、少なくとも約40℃の温度で加熱するステップとを含み、前記フルオロポリマーが構造−CH2CFX−(ただし、Xは、H、Cl、またはFを表す)を有する副単位を含む主鎖を有する方法。
【請求項2】
XがFである、請求項1に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項3】
複合物品の調製方法であって、
フルオロポリマーを含む表面を有する第1の基材を提供するステップと、
前記第1の基材の表面を、相間移動触媒;スルフィドもしくはポリスルフィド塩またはそのアニオン性共役酸のうちの少なくとも1種、および液体ビヒクルを含む成分から調製することができる改質用組成物と接触させるステップと、
前記第1の基材を第2の基材に結合させて、複合物品を提供するステップと、を含み、前記フルオロポリマーが構造−CH2CFX−(ただし、Xは、H、Cl、またはFを表す)を有する副単位を含む主鎖を有し、方法は実質的に化学線なしで実施する方法。
【請求項4】
XがFである、請求項3に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項5】
前記フルオロポリマー主鎖が、構造−CF2CF2−を有する副単位、または構造−CF2CF(CF3)−を有する副単位のうちの少なくとも1種をさらに含む、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項6】
前記フルオロポリマー主鎖が、構造−CF2CF2−を有する副単位、および構造−CF2CF(CF3)−を有する副単位をさらに含む、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項7】
前記副単位がモノマー単位である、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項8】
ビニリデンジフルオリドを含むモノマーから前記フルオロポリマーを調製することができる、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項9】
前記モノマーが、テトラフルオロエチレンまたはヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1種をさらに含む、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項10】
前記モノマーが、テトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンをさらに含む、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項11】
XがHである、請求項1、2、3または4のいずれかに記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項12】
前記フルオロポリマーがフィルムを構成する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記フィルムを基材に結合させるステップを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
結合が接着剤結合を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
結合が熱積層を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記基材がフィルムを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記基材が少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記相間移動触媒が、少なくとも16個の炭素原子を有するテトラアルキルホスホニウムまたはテトラアルキルアンモニウム塩を含む、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項19】
前記液体ビヒクルが水を含む、請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載のフルオロポリマーの改質方法。
【請求項20】
請求項1,2,3または4のいずれか一項に記載の改質フルオロポリマーを含む物品。
【請求項21】
複合物品を含む、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
前記複合物品が、前記改質フルオロポリマーを含む表面を有する第1の基材、およびその表面に結合された第2の基材を含む、請求項21に記載の物品。

【公表番号】特表2007−508416(P2007−508416A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533925(P2006−533925)
【出願日】平成16年9月16日(2004.9.16)
【国際出願番号】PCT/US2004/030247
【国際公開番号】WO2005/037902
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(599056437)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (1,802)
【Fターム(参考)】