説明

フルオロポリマーをベースにしたマスターバッチと、ポリオレフィンの押出成形でのその使用

【課題】ポリオレフィン(D)の押出、特にポリオレフィンのフィルム押出成形で加工助剤として使用されるフルオロポリマーをベースにしたマスターバッチと、その製造方法。
【解決手段】少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と少なくとも一種の界面剤(B)とのブレンド物 1〜50重量%と、ポリオレフィン(C) 99〜50重量%とからなり、これら2成分(A)および(B)は少なくとも一方の大部分またはその表面が溶融状態となる温度で均質に混合された後、ポリオレフィン(C)が混合されて得られることを特徴とするマスターバッチ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルオロポリマーをベースにしたマスターバッチと、ポリオレフィンの押出成形でのその使用とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンの押出し成形ではダイ出口で流れが不規則になって表面欠陥が生じることがある。また、成形品の機械特性が損なわれることもある。
この問題の解決策は押出されるポリオレフィンに「加工助剤」を添加することである。この加工助剤はフルオロポリマーと、押出されるポリオレフィンと同一またはわずかに異なるポリオレフィン中に希釈した界面剤とからなる。
【0003】
フルオロポリマーと界面剤とを含むポリオレフィンは「マスターバッチ」ともよばれる。このマスターバッチは押出ダイの前方の任意の位置で押出されるポリオレフィン中に添加される。本発明はこのマスターバッチに関するものである。
【0004】
プラスチック、特にポリオレフィンの押出し時には、ダイの出口に臨界剪断速度を超えたときに不規則な流れが生じる。すなわち、この臨界速度以下では押出し物は滑らかであるが、この速度を超えると表面に欠陥が生じる。
「メルトフラクチュア」とよばれるこの欠陥はいくつかの形をとる。臨界速度よりわずかに速い剪断速度では、押出しブロー成形で得られるフィルムが透明性および光沢を失う。生産性が高いかなりの高速押出しでは均一性が失われ、滑らかな領域中に粗い表面ができる。この欠陥によってフィルムの光学特性および機械特性は大幅に低下する。同じ現象はロッドの押出し時にもみられ、ロッドの表面は光沢を失って粗くなり、「オレンジの皮」のようになることが多い。
【0005】
従って、加工助剤を添加することが提案されている。
下記文献ではポリエチレンフィルムの光学的特性を向上させるためにポリテトラフルオロエチレンを混和している。
【特許文献1】米国特許第3,334,157号明細書
【0006】
下記文献では炭化水素ポリマーの成形性を向上させるためにフルオロエラストマーとポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレングリコール、PEG)とを組合せて用いている。
【特許文献2】米国特許第4,855,360号明細書
【特許文献3】米国特許第5,587,429号明細書
【特許文献4】国際特許第00/44829号明細書
【特許文献5】国際特許第02/066544号明細書
【0007】
しかし、マスターバッチを作る際に、特定の注意をしないでそのままポリオレフィンにフルオロポリマーとPEGとを添加している。これらの従来法ではフルオロポリマーとPEGをポリオレフィンに希釈してマスターバッチを作り、得られたマスターバッチを押出しすべきポリマー中に添加する。
下記文献では押出し材料中に導入する前にPEGとフルオロポリマーを溶融状態で混合することができるが、均質な混合状態にはならない。
【特許文献6】米国特許第5,015,693号明細書
【0008】
すなわち、フルオロポリマーの融点は一般に約200〜300℃であるが、この温度ではPEGの粘度が極めて低く、フルオロポリマーと均質に混合しない。
下記文献にも有機燐酸エステルまたは有機亜燐酸塩とフルオロエラストマーとを組合せて炭化水素ポリマーの成形性を向上させることが記載されている。
【特許文献7】米国特許第4,983,677号明細書
【特許文献8】米国特許第4,863,983号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、マスターバッチを作る際に、フルオロポリマーとPEGとを予め均質混合してからポリオレフィンに添加すると、得られた加工助剤の効率が良くなるということを見出した。「効率が良くなる」とはフルオロポリマーとPEGとを予め均質混合せずに単にポリオレフィンに添加して調製したマスターバッチと比べて効率が良くなるという意味である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の対象は、少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と少なくとも一種の界面剤(agent d'interface)(B)とのブレンド物 1〜50重量%と、ポリオレフィン(C) 99〜50重量%とからなり、これら2成分(A)および(B)は少なくとも一方の大部分またはその表面が溶融状態となる温度で均質に混合された後、ポリオレフィン(C)が混合されて得られることを特徴とするマスターバッチにある。
このマスターバッチは顆粒または粉末の形をしている。
【0011】
本発明の他の対象は、下記の段階を含むマスターバッチの製造方法にある:
1)少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と少なくとも一種の界面剤(B)とを、少なくとも一方の大部分またはその表面が溶融状態となる温度で均質に混合し、
2)段階1)で得られた混合物をポリオレフィン(C)中に混和して顆粒状のマスターバッチを作り、
3)必要な場合には段階2)で得られたマスターバッチ顆粒を再粉砕してマスターバッチ粉末にする。
【0012】
本発明のさらに別の対象は上記マスターバッチのポリオレフィン(D)の押出し、特にポリオレフィンのフィルム押出し成形での加工助剤としての使用にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
フルオロポリマー(A)とは鎖中に重合を開始できるビニル基を含み、このビニル基に直接結合した少なくとも一つのフッ素原子、フルオロアルキル基またはフルオロアルコキシ基を有する化合物の中から選択される少なくとも一種のモノマーを有する任意のポリマーを意味する。
【0014】
このモノマーの例としてはフッ化ビニル;フッ化ビニリデン(VDF);トリフルオロエチレン(VF3);クロロトリフルオロエチレン(CTFE);1,2−ジフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン(TFE);ヘキサフルオロプロピレン(HFP)およびペルフルオロ(アルキルビニル)エーテルを挙げることができる。
【0015】
フルオロポリマーはホモポリマーでもコポリマーでもよく、エチレン等の非フルオロモノマーを含んでいてもよい。
例えばフルオロポリマーは下記の中から選択する:
1) フッ化ビニリデン(VDF)のホモポリマーおよび好ましくは少なくとも50重量%のVDFを含むそのコポリマー。コモノマーはクロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、トリフルオロエチレン(VF3)およびテトラフルオロエチレン(TFE)から選択される。
2) トリフルオロエチレン(VF3)のホモポリマーおよびコポリマー、
3) クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)および/またはエチレンの残基を結合したコポリマー、特にターポリマー(必要に応じてVDFおよび/またはVF3をさらに含むことができる)。
【0016】
フルオロポリマーはポリ(フッ化ビニリデン)(PVDF)のホモポリマーまたはコポリマーであるのが好ましい。このPVDFは少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも75重量%、さらに好ましくは少なくとも85重量%のVDFを含むのが好ましい。コモノマーはHFPであるのが有利である。
【0017】
このPVDFは細管レオメーターを用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定した粘度が100Pa.S〜2000Pa.Sの範囲であるのが有利である。特に、細管レオメーターを用いて100s-1の剪断速度で230℃で測定したPVDFの粘度が300Pa.S〜1200Pa.Sの範囲であるPVDFが好ましい。本発明の配合物およびこのプロセスにはKYNARFLEX(登録商標)の名称で市販のPVDFが適している。
【0018】
界面剤(agent d'interface)(B)とは加工助剤として用いられるマスターバッチを作るために上記条件下で(A)と混合されて、ポリオレフィンの押出特性を向上させる任意の化合物を意味する。界面剤(B)の例としてはシリコン、シリコン−ポリエーテルコポリマー、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、例えばフタル酸のジイソブチルエステル、ポリエーテル、例えばポリエーテルポリオールおよび、ポリアルキレンオキシド、アミンオキシド、例えばオクチルジメチルアミンオキシド、カルボン酸、例えばヒドロキシブタンジオン酸および脂肪酸エステルを挙げることができる。脂肪族ポリエステルの例としてはポリ乳酸およびポリカプロラクトンを挙げることができる。
【0019】
界面剤(B)はポリエーテル、好ましくはアルキレンオキシド単位(例えばエチレンまたはプロピレンオキシド)を有するオリゴマーまたはポリマーの中から選択するのが有利である。例としては一般にポリエチレングリコール(PEG)とよばれるポリオキシエチレングリコール、好ましくは数平均分子量Mnが400〜15,000g/molで、融点が50〜80℃であるポリオキシエチレングリコールが挙げられる。PEGの例としてはBASF社のPLURIOL(登録商標)およびClariant社のPOLYGLYKOL(登録商標)が挙げられる。2種以上のポリエーテルのブレンド物を用いても本発明の範囲を逸脱するものではない。
【0020】
これらのPEGおよびもの他のPEGの例は上記米国特許第5,587,429号および米国特許第5,015,693号に記載されている。
特に、下記のものが挙げられる:
1) 式H(OC24nOHのポリエチレングリコール(ここで、nは70〜80、約76の整数)、
2) H(OC24d[OCH(CH3)CH2e(OC24fOH(ここで、d、eおよびfはd+fが100〜110、約108で、eは30〜40、約35である)、
3) 数平均分子量が約3500g/molであるCARBOWAX 3350、
4) 数平均分子量が約8000g/molであるCARBOWAX 8000。
【0021】
本発明のマスターバッチは下記の段階を含む製造方法で作ることができる:
1)少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と少なくとも一種の界面剤(B)とを、少なくとも一方の大部分またはその表面が溶融状態となる温度で均質に混合し、
2)段階1)で得られた混合物をポリオレフィン(C)中に混和して顆粒状のマスターバッチを作り、
3)必要な場合には段階2)で得られたマスターバッチ顆粒を再粉砕してマスターバッチ粉末にする。
【0022】
段階1)は2成分(A)と(B)を均質混合できる任意の手段で行うことができ、加熱されたプレスで圧縮するか、加熱された金型中に射出するか、押出しするか、混練できる。(A)と(B)の均質混合は10〜120℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜100℃の温度で行う。この混合は界面剤(B)がフルオロポリマー(A)と効率良的に混合され且つ均質ブレンド物を作るには低過ぎる粘度になる温度で行なうのが好ましい。この温度は界面剤(B)の全体またはその表面、好ましくはその全体が溶融状態となり、フルオロポリマー(A)は固体状態にあるような温度を選択するのが好ましい。
【0023】
100℃以下の温度を使用することでブレンド物中の界面剤(B)の効率に影響を与えたり、黄変を引き起こすことがある界面剤(B)の熱劣化を防ぐことができる。また、フルオロポリマー(A)を粉末状(すなわち分散物)にすることが均質に混合する上で好ましい。
【0024】
段階2)では、段階1)のブレンド物をポリオレフィン(C)中に混和してマスターバッチを作る。これは当業者に周知のプラスチック材料を混合するための任意の機械を用いて行うことができ、押出機または混練機にすることができる。段階2)の最後に得られるマスターバッチは顆粒の形にするのが好ましい。
成分(C)と成分(D)は互いに近いものが好ましい。「近い」とは成分(C)および成分(D)が同じ種類の2つのポリオレフィンであるということを意味する。例えば、(C)および(D)が2つのポリエチレンにするか、(C)および(D)を2つのポリプロピレンにするか、および/または、(C)と(D)の粘度を互いに近いものにする。
【0025】
(A)および(B)の比率は99〜70%の(C)に対して1〜30%、好ましくは99〜90%の(C)に対して1〜10%、さらに好ましくは98.5〜90%の(C)に対して1.5〜10%にするのが有利である。
(A)と(B)の重量比率(A)/(B)は10/90〜90/10、好ましくは30/70〜70/30、さらに好ましくは40/60〜60/40にすることができる。
【0026】
段階3)はマスターバッチの顆粒をマスターバッチの粉末に再粉砕する任意段階である。
マスターバッチに紫外線吸収剤または酸化防止剤型の添加剤を添加しても本発明の範囲を逸脱するものではない。これらの添加剤は段階1)〜3)の間に(A)、(B)またはマスターバッチに直接添加することができる。
【0027】
マスターバッチの使用
本発明のマスターバッチは添加剤(または加工助剤)としてポリオレフィン(D)に混和できる。それによって安定した押出し成形ができるまでにかかる時間を大幅に短縮でき、通常はかなり不安定になる押出パラメータ範囲で欠陥のない押出し成形を行なうことができる。
本発明のマスターバッチはポリオレフィン(D)のフィルムを押出すための加工助剤として特に有用であり、このマスターバッチは顆粒または粉末の形で用いる。
【0028】
マスターバッチは下記ポリオレフィンの押出し成形性を向上させるのに用いることができる:
(1)ポリエチレン、特に低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)およびメタロセン触媒(より一般的には「単一サイト」を有する触媒)を用いて得られるポリエチレン、
(2)ポリプロピレン、特にアイソタクチックおよびシンジオタクチックポリプロピレン、
(3)ポリブテン(ブタ−1−エン)、
(4)ポリ(3−メチルブテン)およびポリ(4−メチルペンテン)。
【0029】
本発明のマスターバッチは高分子量および/または分子量分布が狭い(一般に多分散性指数が3以下、好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.2以下)ポリエチレンに特に有利である。
フィルムの形をしたポリオレフィン、特にポリエチレンの押出しに特に有用である。
押出されるポリオレフィン(D)中に導入するマスターバッチの比率(A)+(B)は(D)に対して約100〜3000ppmであるのが有利である。
【実施例】
【0030】
下記の実施例ではフィルムの押出試験を8kg/時で行った。
下記実施例で試験のベースとして用いたポリマー(D)は70重量%のポリエチレン(INNOVEX LL0209AA)と30重量%のポリエチレン(LACQTENE 1003FE23)とのブレンド物である。このブレンド物をブレンド物(D)とする。
【0031】
イノヴェックス(INNOVEX) LL0209AA
BP Chemical社から市販の直鎖低密度ポリエチレン。MFI:0.9g/10分(190℃、2.16kg)。
イノヴェックス(INNOVEX) LL0209AA
Total Petrochemicals社から市販(以前はアトフィナ社から市販)の低密度ポリエチレン。MFI(メルトフローインデックス):0.3g/10分(190℃、2.16kg)。
カイナーフレックス(KYNARFLEX、登録商標)2821
アルケマ社から市販(以前はアトフィナ社から市販)の粉末状のVF2−HFP熱可塑性PVDFコポリマー。MVI(メルトボリュームインデックス):1.5cm3/10分(230℃、5kg)。
【0032】
実施例1(本発明)
Haake2型の二軸スクリュー押出機で、45重量%のPEG(Clariant社のPOLYGLYKOL 10,000(登録商標)、分子量=10,000g/mol)粉末と、55重量%のPVDF−co−HFP(アルケマ社のKYNARFLEX 2821、融点:約190℃)粉末とからなるブレンド物を作った。このブレンド物は90℃で調製した。得られたロッドをエンドレスベルト上を移送し、顆粒にした。この顆粒をイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に一軸スクリュー押出機を用いて5重量%の比率で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)にした。
このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を下記手順に従ってテストした。すなわち、スクリューの直径が30mmで、L/Dが25であるCollinフィルムバブル押出しブロー成形機ラインを用い、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして、上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ぐにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で上記ポリマーブレンド物(D)中導入した。マスターバッチ(MB)を導入してから90分後に欠陥は完全に消失した。
【0033】
実施例2(本発明)
45重量%のPEG粉末(Clariant社のPOLYGLYKOL、登録商標、10,000、分子量=10,000g/mol)と、55重量%のPVDF−co−HFP粉末(アルケマ社のKYNARFLEX 2821)とからなるブレンド物を圧縮機(machine de compactage)で作った。このブレンド物は20℃で調製した。得られた顆粒をイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に一軸スクリュー押出機を用いて5重量%の比率で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を得た。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinフィルムバブル押出しブロー成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出開始かさ15分後に、上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で上記ポリマーブレンド物(D)中に導入した。マスターバッチ(MB)を導入してから90分後に製造されたフィルム上に残る残留欠陥はわずかな小さい領域のみになった。
【0034】
実施例3(比較例)
45重量%のPEG粉末(Clariant社の(POLYGLYKOL、登録商標、10,000、分子量=10,000g/mol)と、55重量%のPVDF−co−HFP粉末(アルケマ社のKYNARFLEX 2821)とからなるドライブレンド物を作った。このブレンド物は20℃で調製した。このブレンド物を5重量%の比率でイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に押出機で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を作った。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての特性を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinフィルムバブル押出ブロー成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で上記ポリマーブレンド物(D)中導入したが、マスターバッチMBを導入してから90分後でも製造されたフィルム上の大部分には欠陥が残った。
【0035】
実施例4(比較例)
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinフィルムバブル押出ブロヒ成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で導入したが、マスターバッチ(MB)を導入してから120分たってからも製造されたフィルム全体に欠陥が残留していたので、実験を止めた。
【0036】
実施例5(本発明)
45重量%のPEG粉末(Clariant社のPOLYGLYKOL、登録商標、10,000、分子量=8,000g/mol)と、55重量%のPVDF−co−HFP粉末(アルケマ社のKYNARFLEX 2821)とからなるブレンド物を圧縮機で作った。このブレンド物は20℃で調製した。得られた顆粒を2重量%の比率でメタロセンポリエチレンM1(密度:0.927)中に一軸スクリュー押出機で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を作った。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinシート押出し機ラインで、ダイの幅を50mm、間隙を0.5mmにしてメタロセンポリマーM1を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率でメタロセンポリマーM1中導入した。マスターバッチ(MB)を導入してから60分後に欠陥が消失した。
【0037】
実施例6(比較例)
45重量%のPEG粉末(Clariant社の(POLYGLYKOL、登録商標、10,000、分子量=8,000g/mol)と、55重量%のPVDF−co−HFP粉末(アルケマ社のKYNARFLEX 2821)とからなるブレンド物を単純な乾式混合で作った。このブレンド物は20℃で調製した。得られた粉末を2重量%の比率でメタロセンポリエチレンM1中に一軸スクリュー押出で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を作った。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての特性を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinシート押出し機ラインで、ダイの幅を50mm、間隙を0.5mmにしてメタロセンポリマーM1を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率でメタロセンポリマーM1中に導入したが、マスターバッチ(MB)を導入してから60分後でもサンプルの大部分に欠陥が残っていた。
【0038】
実施例7(比較例)
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinシート押出機ラインで、ダイの幅を50mm、間隙を0.5mmにしてメタロセンポリマー(M1)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じ、90分後でもサンプル全体に欠陥が残っていた。
【0039】
実施例8(本発明)
45重量%のPEG粉末(Clariant社のPOLYGLYKOL、登録商標、8,000PF、分子量=8,000g/mol)と、55重量%のPVDF−co−HFP粉末(アルケマ社のKYNARFLEX 2821)とからなるブレンド物をZSK40型のスーパーコンパウンダー(配合機)で作った。このブレンド物は65℃で調製した。得られたロッドをエンドレスベルト上に送り、顆粒にした。次いで、この顆粒を5重量%の比率でイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に一軸スクリュー押出機で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)にした。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を次いで下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinインフレーション押出し成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で導入した。マスターバッチ(MB)を導入してから60分後に欠陥は完全に消失した。
【0040】
実施例9(本発明)
45重量%のPEG粉末(Clariant社のPOLYGLYKOL、登録商標、8,000PF、分子量=8,000g/mol)と、55重量%のPVDF−co−HFP粉末(アルケマ社のKYNARFLEX 2821)とからなるブレンド物を圧縮機で作った。このブレンド物は20℃で調製した。得られた顆粒を5重量%の比率でイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に一軸スクリュー押出で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を作った。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinインフレーション押出し成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で導入した。マスターバッチMBを導入してから60分後に欠陥は完全に消失した。
【0041】
実施例10(本発明)
実施例8の条件下で作った顆粒状ブレンド物を低温粉砕して粉末にした。この粉末を5重量%の比率でイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に一軸スクリュー押出で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を作った。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinインフレーションフィルム押出し成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で導入した。マスターバッチ(MB)を導入してから60分後に欠陥は完全に消失した。
【0042】
実施例11(本発明)
実施例9の条件下で製造した顆粒状のブレンド物を低温粉砕して粉末にした。この粉末を5重量%の比率でイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に一軸スクリュー押出で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を作った。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinフィルムイフレーション押出し成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記マスターバッチ(MB)を1重量%の比率で上記ポリマーブレンド物(D)中に導入した。マスターバッチ(MB)を導入してから60分後に欠陥は完全に消失した。
【0043】
実施例12(比較例)
45重量%のPEG粉末(Clariant社の(POLYGLYKOL、登録商標、8,000PF、分子量が8,000g/mol)と、55重量%のPVDF−co−HFP粉末(KYNARFLEX 2821、アルケマ社)とからなるドライブレンド物を作った。このブレンド物は20℃で調製した。このブレンド物を5重量%の比率でイノヴェックスLL0209AA型の直鎖低密度ポリエチレン(MFI:0.9g/10分、190℃、2.16kg)中に押出し機で混和して顆粒の形をしたマスターバッチ(MB)を作った。このマスターバッチ(MB)の加工助剤としての性能を下記手順に従って試験した:
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinインフレーションフィルム押出し成形機ラインで、ダイの直径を50.5mm、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から15分後に上記のマスターバッチ(MB)を1重量%の比率で導入した。マスターバッチ(MB)を導入してから60分後でも製造されたフィルムの大部分に欠陥が残った。
【0044】
実施例13(比較例)
スクリューの直径が30mmで、L/Dが25のCollinインフレーションフィルム押出し成形機ラインで、ダイの直径を50.5mmで、間隙を0.8mmにして上記ポリマーブレンド物(D)を190℃で押出した。この押出では直ちにメルトフラクチュア欠陥が生じた。押出し開始から120分後でも製造されたフィルム全体に欠陥が残っていたので、実験を止めた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と少なくとも一種の界面剤(agent d'interface)(B)とのブレンド物 1〜50重量%と、ポリオレフィン(C) 99〜50重量%とからなり、これら2成分(A)および(B)は少なくとも一方の大部分またはその表面が溶融状態となる温度で均質に混合された後、ポリオレフィン(C)が混合されて得られることを特徴とするマスターバッチ。
【請求項2】
(A)と(B)とのブレンド物が10〜120℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜100℃で作られたものである請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
ブレンド物が界面剤(B)またはその表面が溶融状態となり、フルオロポリマー(A)は固体状態である温度で作られたものである請求項1または2に記載のマスターバッチ。
【請求項4】
フルオロポリマーがフッ化ポリビニリデン(PVDF)のホモポリマーまたはコポリマーである請求項1〜3のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項5】
PVDFが少なくとも50重量%のフッ化ビニリデン(VDF)を含む請求項4に記載のマスターバッチ。
【請求項6】
PVDFが少なくとも75重量%のVDFを含む請求項5に記載のマスターバッチ。
【請求項7】
PVDFが少なくとも85重量%のVDFを含む請求項6に記載のマスターバッチ。
【請求項8】
コモノマーがヘキサフルオロプロピレン(HFP)である請求項4〜7のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項9】
界面剤(B)がポリオキシエチレングリコールである請求項1〜8のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項10】
99〜70%の(C)に対して(A)および(B)の比率が1〜30%である請求項1〜9のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項11】
99〜90%の(C)に対して(A)および(B)の比率が1〜10%である請求項10に記載のマスターバッチ。
【請求項12】
(A)と(B)の重量比率(A)/(B)が10/90〜90/10である請求項1〜11のいずれか一項に記載のマスターバッチ。
【請求項13】
(A)と(B)の重量比率(A)/(B)が30/70〜70/30である請求項10に記載のマスターバッチ。
【請求項14】
(A)と(B)の重量比率(A)/(B)が40/60〜60/40である請求項13に記載のマスターバッチ。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか一項に記載のマスターバッチの、ポリオレフィン(D)押出成形加工の助剤としての使用。
【請求項16】
ポリオレフィンをフィルム状に押し出す請求項15に記載のマスターバッチの使用。
【請求項17】
押出し成形されるポリオレフィン(D)に対して導入されるマスターバッチの比率(A+B)/(D)が100〜3000ppmである請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
下記の段階を含むマスターバッチの製造方法:
1)少なくとも一種のフルオロポリマー(A)と少なくとも一種の界面剤(B)とを、少なくとも一方の大部分またはその表面が溶融状態となる温度で均質に混合し、
2)段階1)で得られた混合物をポリオレフィン(C)中に混和して顆粒状のマスターバッチを作り、
3)必要な場合には段階2)で得られたマスターバッチ顆粒を再粉砕してマスターバッチ粉末にする。
【請求項19】
上記の温度が10〜120℃、好ましくは20〜100℃、さらに好ましくは40〜100℃、さらに好ましくは60〜100℃である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
界面剤(B)またはその表面が溶融状態になり、フルオロポリマー(A)が固体状態である温度を選択する請求項18または19に記載の方法。

【公開番号】特開2006−28507(P2006−28507A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202603(P2005−202603)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【出願人】(591004685)アルケマ (112)
【Fターム(参考)】