説明

フルカラー有機EL表示装置の製造方法及びその製造用の光処理装置

【課題】 カラー化の為のカラーフィルターおよび色変換フィルター層などの劣化を抑え、高効率なフルカラー有機EL表示装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 基板上にパターニングされた色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層と、該色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層を被覆する高分子膜層と、該高分子膜層に積層される無機膜層とを備える色変換部と、少なくとも一方が可視光透過性を有する一対の電極と該電極間に配置された有機EL層とを備える有機EL素子部とを積層してなるフルカラー有機EL表示装置の製造方法であって、前記高分子膜層の前記無機膜層と接する面及び/または前記陽極の前記有機EL層と接する面を直接光に晒すことなく、光により発生する反応性分子及び/または励起原子に晒すことを特徴とする光処理工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた発光特性を有するフルカラー有機EL表示装置の製造方法及びフルカラー有機EL表示装置の製造に用いる光処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報通信の高速化と応用範囲の拡大が急速に進んでいる。この中で、表示デバイスには、携帯性や動画表示の要求に対応可能な低消費電力・高速応答性を有する高精細な表示デバイスの考案が広くなされている。
【0003】
有機エレクトロルミネセンス(以下有機ELという)素子は、Tangらによる印加電圧10Vで1000cd/m2以上の高輝度で発光する積層型EL素子の報告(非特許文献1)以来、高コントラスト、低電圧駆動、高視野角、高速応答性など液晶表示素子等に比較して優位な特徴を活かして、フラットパネルデイスプレイヘの応用が期待され、実用化に向けての研究が活発に行われている。すでに、緑色モノクロ有機ELディスプレイなどが製品化されており、高精細のフルカラーデイスプレイの完成が待たれている。
【0004】
有機EL素子は、陽極/有機EL層/陰極の構成を基本としており、ガラス板などの絶縁基板上に、透明陽極を積層する構成が一般的である。この場合、発光した光は基板側から取り出される。またカラー化のために、カラーフィルターまたは色変換フィルターを用いる場合、有機EL素子の基板側にカラーフィルターまたは色変換フィルターを置くことになる。
【0005】
このため、カラーフィルターまたは色変換フィルターには、その層上に有機EL素子を蒸着法により製膜する前に、光を透過させる層表面の汚れの除去および仕事関数を調整する為の前処理を実施するのが一般的である。このとき、前処理により発生する光にカラーフィルターおよび色変換フィルターが晒されることになる。色変換フィルター層が含有する蛍光色素は、熱、紫外線などに弱いことが、一般的に言われており、製膜前の処理により発生する光により劣化することが懸念されている。その為、カラーフィルターまたは色変換フィルターの劣化を防止することは、優れた発光特性を有するフルカラー有機ELディスプレイを製造する上で重要な課題である。
【0006】
特許文献1には、紫外線硬化樹脂からなるシール材を紫外線照射することにより硬化させる工程を含むELパネルの作成方法において、EL層を劣化させることなくELパネルを封ずる方法が記載されている。しかし、特許文献1において問題となっているのはEL層の光による劣化であり、そのメカニズムなどについては詳述されていない。
【0007】
特許文献2には、紫外線硬化性接着剤を介してガラス基板を封止部材により覆う有機ELパネルであって、発光部への紫外線の照射を阻止する遮蔽部材が設けられている有機ELパネルが記載されている。しかし、特許文献2においても、問題となっているのはEL層の光による劣化であり、そのメカニズムなどについては詳述されていない。
【特許文献1】特開2001−319776号公報
【特許文献2】特開2004−192930号公報
【非特許文献1】App1.Phys.Lett.,51,913(1987)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためのもので、カラー化の為のカラーフィルターおよび色変換フィルターなどの劣化を抑え、高効率なフルカラー有機EL表示装置を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の方法により製造されるフルカラー有機EL表示装置は、透明な支持基板と、該支持基板上に配置されるカラーフィルター層または蛍光色素を含有する膜厚5μm以上の樹脂膜を所望のパターンに形成してなる単一または複数種類の色変換フィルター層と、カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層を被覆し透明かつ平坦に形成される高分子膜層と、該高分子膜層上に形成される透明な無機膜層と、無機膜層上に形成された陽極、有機EL層、陰極とを備える。
【0010】
この構成でフルカラー有機EL表示装置を作製する場合、高分子膜層上に透明な無機膜層を形成する前、および陽極上に有機EL層を製膜する前に、膜の密着性および形成前の処理表面に付着している有機物などの汚れの除去を目的として、高分子膜層、陽極の光処理を実施している。その方法は、一般的に、高分子膜層、陽極に紫外線を照射することなどにより行われている。しかし、高分子膜層、陽極に紫外線を照射することにより、該支持基板上に配置され蛍光色素を含有する膜厚5μm以上の樹脂膜を所望のパターンに形成してなる単一または複数種類の色変換フィルター層における色変換の効率が低下してしまうことが確認されている。つまり、光処理を実施した際の紫外線照射により、その光が色変換フィルター層まで到達し、その高いエネルギーで蛍光色素などがその効果を失い、効率が低下してしまう。このような、色変換フィルター層に照射される紫外線を遮断し、なおかつ効率的に高分子膜層、陽極の光処理が実施できれば高効率なフルカラー有機EL表示装置が作製できると考えて、発明に至ったのである。
【0011】
すなわち、本発明は、基板上にパターニングされた色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層と、該色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層を被覆する高分子膜層と、該高分子膜層に積層される無機膜層とを備える色変換部と、少なくとも一方が可視光透過性を有する一対の電極と該電極間に配置された有機EL層とを備える有機EL素子部とを積層してなるフルカラー有機EL表示装置の製造方法であって、前記高分子膜層の前記無機膜層と接する面及び/または前記陽極の前記有機EL層と接する面を予め光処理する工程を含み、該光処理する工程が、前記高分子膜層の前記無機膜層と接する面及び/または前記陽極の前記有機EL層と接する面を、直接光に晒すことなく、光により発生する反応性分子及び/または励起原子に晒すことを特徴とする。
ここで、色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層とは、一つの表示装置において、色変換フィルター層のみが形成されていてもよく、カラーフィルター層のみが形成されていてもよく、あるいはそれらの両方が形成されていてもよいことをいう。例えば、赤、緑、青の画素のうち、一部がカラーフィルター層で、他が色変換フィルター層であってもよい。
予め光処理するとは、全て積層した後に光処理するのではなく、高分子膜層を積層後、無機膜層を積層する前に光処理すること、および、陽極を積層後、有機EL層を積層する前に光処理することをいう。
前記高分子膜層の前記無機膜層と接する面及び/または前記陽極の前記有機EL層と接する面とは、高分子膜層の前記無機膜層と接する面のみを光処理する工程を含んでもよく、陽極の前記有機EL層と接する面のみを光処理する工程を含んでもよく、あるいはこれらの両方の面についてそれぞれ光処理する工程を含んでもよいことをいう。
また、色変換部と、有機EL素子部とを積層してなるフルカラー有機EL表示装置は、有機EL素子部の陽極側に色変換部を積層してなる、有機EL素子部の陽極側から光を取り出すボトムエミッション方式であってもよく、有機EL素子部の陰極側に色変換部を重ね合わせてなる、有機EL素子部の陰極側から光を取り出すトップエミッション方式であってもよい。
【0012】
前記光処理が紫外線処理であることが好ましい。
【0013】
本発明は、また別の形態によればフルカラー有機EL表示装置の製造用の光処理装置であって、装置本体と、該装置本体内に設けられた光発生手段と、基板保持手段とを備え、前記基板保持手段に保持される基板上の被処理物が、前記光発生手段で発生する光に直接晒されることなく、前記光発生手段で発生する光により発生する反応性分子及び/または励起原子と接触できるように構成された光遮蔽手段をさらに備える。
ここで、反応性分子とは、オゾンなどの酸化剤として機能する反応性の高い分子をいう。励起原子とは、酸素ラジカルなどのラジカルとなる反応性の高い原子をいう。反応性分子及び/または励起原子とは、反応性分子のみでもよく、励起原子のみでもよいが、通常はこれらの両方を含む。
【0014】
ある実施形態において、前記光遮蔽手段が、前記光発生手段と前記基板保持手段との間に配置される遮蔽板である。該遮蔽板が、金属酸化物、および金属窒素物からなることが好ましい。
【0015】
別の実施形態において、前記光遮蔽手段が、前記光発生手段と前記基板保持手段とを、前記装置本体内で区分する隔壁である。すなわち、前記光発生手段と前記基板保持手段とを別室に配置することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるフルカラー有機EL表示装置の製造方法によれば、色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層の効率低下を抑制することができる。そして、高い発光特性を有するフルカラー有機EL表示装置の提供が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかるフルカラー有機EL表示装置の製造方法を、図面を参照しながら説明する。
【0018】
本発明の一実施形態による有機EL表示装置の製造方法は、基板にカラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層をパターニングする工程と、カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層に高分子膜層を積層する工程と、該高分子膜層を光処理する工程と、処理された高分子膜層に無機膜層を積層する工程と、該無機膜層に陽極を積層する工程と、該陽極表面を光処理する工程と、処理された陽極に有機EL層および陰極を順次積層する工程とを含む。
【0019】
図1は、本実施形態の方法により製造される有機EL表示装置の概略的な断面図である。かかる有機EL表示装置は、基板1上にパターニングされた赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4と、これらを被覆する高分子膜層5と、無機膜層6と、陽極7と、正孔注入層8と、正孔輸送層9と、有機発光層10と、電子注入層11と、陰極12とを順に積層してなる。
【0020】
[1.色変換部の製造]
本明細書において、色変換部とは、基板1とその上にパターニングされた赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4と、高分子膜層5と、無機膜層6とから構成される部分を指す。色変換部は、後述の有機EL素子部と積層され、有機EL素子部における発光を異なる波長の可視光として出力する。
【0021】
[カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層の形成]
図2に本実施形態の方法により製造される色変換部の概略的な断面図を示す。色変換部においては、赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4は、赤色、緑色、青色が別々に基板上1にパターニングされる。そして、赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4を被覆するように高分子膜層5が形成され、さらに高分子膜層5上に無機膜層6が積層されている。
【0022】
カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層は、以下に詳述する有機蛍光色素と、マトリクス樹脂とを混合して基板上にパターニングすることにより製造することができる。
【0023】
(有機蛍光色素)
本発明において、色変換フィルター層の構成成分である有機蛍光色素としては、有機発光層が発する近紫外領域ないし可視領域の光、特には青色ないし青緑色領域の光を吸収して異なる可視光を発するものであればよい。好ましくは、少なくとも赤色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種類以上が用いられ、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素の一種以上と組み合わせてもよい。すなわち、発光層としては、青色ないし青緑色領域の光を発光するものが得やすいのであるが、これを単なる赤色フィルターに通して赤色領域の光に変更しようとすると、元々赤色領域の波長の光が少ないため、極めて暗い出力光になってしまう。
【0024】
したがって、赤色領域の光は、有機発光層からの光を蛍光色素によって赤色領域の光に変換させることにより、十分な強度の出力が可能となる。一方、緑色領域の光は、赤色領域の光と同様に、有機発光層からの光を別の有機蛍光色素によって緑色領域の光に変換させて出力することができる。あるいは有機発光層の発光が緑色領域の光を十分に含む場合は、有機発光層からの光を単に緑色フィルターを通して出力してもよい。この場合には、既知の緑色フィルター材料を使用して緑色カラーフィルター層を形成することができる。一方、青色領域の光に関しては光に関しては、発光層の光を単なる青色フィルターに通して出力させることも可能である。この場合には、既知の青色フィルター材料を使用して青色カラーフィルター層を形成することができる。
【0025】
発光層から発する青色から青緑色領域の光を吸収して、赤色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えばローダミンB、ローダミン6G、ローダミン3B、ローダミン101、ローダミン110、スルホローダミン、ベーシックバイオレット11、ベーシックレッド2などのローダミン系色素、シアニン系色素、1−エチル−2−〔4−(p−ジメチルアミノフェニル)−13−ブタジエニル〕−ピリジウム−パークロレート(ピリジン1)などのピリジン系色素、あるいはオキサジン系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も堂光性があれば使用することができる。
【0026】
発光層から発する青色ないし青緑色領域の光を吸収して、緑色領域の蛍光を発する蛍光色素としては、例えば3−(2‘−ベンゾチアゾリル)−7−ジエチルアミノクマリン(クマリン6)、3−(2’−ベンゾイミダゾリル)−7−N,N−ジエチルアミノクマリン(クマリン7)、3−(2‘N−メチルベンゾイミダゾリル)−7−N,N一ジエチルアミノクマリン(クマリン30)、2,3,5,6−1H,4H−テトラヒドロ−8−トリフルオロメチルキノリジン(9,9a,1−gh)クマリン(クマリン153)などのクマリン系色素、あるいはクマリン色素系染料であるベーシックイエロー51、さらにはソルベントイエロー11、ソルベントイエロー116などのナフタルイミド系色素などが挙げられる。さらに、各種染料(直接染料、酸性染料、塩基性染料、分散染料など)も蛍光性があれば使用することができる。
【0027】
なお、本発明に用いる有機蛍光色素を、ポリメタクリル酸エステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、アルキッド樹脂、芳香族スルホンアミド樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂及びこれらの樹脂混合物などに予め練り込んで顔料化して、有機蛍光顔料としてもよい。また、これらの有機蛍光色素や有機蛍光顔料(本明細書中で、前記2つを合わせて有機蛍光色秦と総称する)は単独で用いてもよく、蛍光の色相を調整するために二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
(マトリクス樹脂)
次に、本発明の色変換フィルター層に用いられるマトリクス樹脂は、光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂を、光および/または熱処理して、ラジカル種やイオン種を発生させて重合または架橋させ、不溶不融化させたものである。また、該光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂は、色変換フィルター層のパターニングを行うために硬化をする前は有機溶媒またはアルカリ溶液に可溶性であることが望ましい。
【0029】
具体的に光硬化性または光熱併用型硬化性樹脂とは、(1)アクロイル基やメタクロイル基を複数有するアクリル系多官能モノマーおよびオリゴマーと、光または熱重合開始剤からなる組成物膜を光または熱処理して、光ラジカルや熱ラジカルを発生させて重合させたもの、(2)ポリビニル桂皮酸エステルと増感剤からなる組成物を光または熱処理により二量化させて架橋したもの、(3)鎖状または環状オレフィンとビスアジドからなる組成物膜を光または熱処理によりナイトレンを発生させ、オレフィンと架橋させたもの、(4)エポキシ基を有するモノマーと光酸発生剤からなる組成物膜を光または熱処理により、酸(カチオン)を発生させて重合させたものなどが挙げられる。特に(1)の光硬化性又は光熱併用型硬化性樹脂が高精細でパターニングが可能であり、耐溶剤性、耐熱性等の信頼性の面でも好ましい。
【0030】
色変換フィルター層は、上記有機蛍光色素とマトリクス樹脂とを混合し、これをパターニングすることにより形成する。有機蛍光色素は、色変換フィルター層の質量を基準として0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜2質量%含有される。有機蛍光色素の含有量が0.01質量%未満ならば、十分な波長変換を行うことが困難である。色変換フィルター層における有機蛍光色素の含有量が5質量%を越えると、濃度消光等の効果により色変換効率の低下をもたらす。色変換フィルター層の残余を、マトリクス樹脂とすることができる。パターニングは、フォトリソグラフィ法などの既知の方法により行うことができる。また、色変換フィルター層の厚さは、5〜20μmとすることができるが、特定の厚さには限定されない。
【0031】
なお、上述のように、色変換フィルター層とカラーフィルター層とは、有機発光層の発光特性との関係で好適なほうを選択して基板上に形成することができる。
【0032】
[高分子膜層の形成]
高分子膜層5は、パターニングされた赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4を被覆し、かつ表面が平坦になるように形成される。高分子膜層5は可視域における透明性が高く(400〜700nmの範囲で透過率50%以上)、Tgが100℃以上で、表面硬度が鉛筆硬度で2H以上あり、カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層上に平滑に塗膜を形成でき、カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層の機能を低下させない材料であれば良い。例えば、イミド変性シリコーン樹脂(特開平5−134112号公報、特開平7−218717号公報、特開平7−306311号公報等)、無機金属化合物(TiO、Al23、SiO2等)をアクリル、ポリイミド、シリコーン樹脂等中に分散した材料(特開平5−119306号公報、特開平7−104114号公報等)、紫外線硬化型樹脂としてエポキシ変性アクリレートル樹脂(特開平7−48424号公報)、アクリレートモノマー/オリゴマー/ポリマーの反応性ビニル基を有した樹脂、レジスト樹脂(特開平6−300910号公報、特開平7−128519号公報、特開平8−279394号公報、特開平9−330793号公報等)、無機化合物のゾルーゲル法(月刊ディスプレイ1997年、3巻、7号に記載。特開平8−27934号公報等)、フッ素系樹脂(特開平5−36475号公報、特開平9−330793号公報等)等の光硬化型樹脂及び/又は熱硬化型樹脂が挙げられる。
【0033】
高分子層5の形成法には特に制約はなく、例えば、乾式法(スパッタ法、蒸着法、CVD法等)と湿式法(スピンコート法、ロールコート法、キャスト法等)等の慣用の手法により形成できる。また、高分子層5の厚みは、カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層を十分に覆うことができる程度の厚みとすることができ、具体的には5〜30μmとすることができる。
【0034】
[光処理工程]
赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4に高分子層5を積層した後であって、無機膜層6を高分子層5に積層する前に、高分子層5表面に光処理をする。ここで、高分子層5表面とは、無機膜層6と接する面、すなわち、高分子層5の基板1と反対側の面をいう。
【0035】
光処理は、被処理面である高分子層5表面を光に直接晒すことなく、光により反応性分子や励起原子を発生させ、反応性分子や励起原子を高分子層5表面に存在する反応基と主に酸化反応させて表面を処理する。反応性分子や励起原子とは、主に紫外線よりもエネルギーの高い光を空気に照射することにより得られる反応性の高い分子または原子であって、主に、オゾンや励起酸素原子が挙げられる。
【0036】
光処理に用いる光としては、紫外線が好ましく用いられる。紫外線により、反応性分子や励起原子を発生させることができるためである。したがって、紫外線以外にも、高分子層5表面を酸化する物質、特には、オゾンや励起酸素原子を発生させる光であれば使用することができる。例えば、185nmおよび254nmの光を発生させる低圧水銀ランプを用いることができるが、これには限定されない。
【0037】
光処理の際には、光源付近で発生した反応性分子や励起原子を被処理面である高分子膜層5表面に導入するように、清浄なドライエアーなどのガスを供給することができる。かかる操作により、高分子層5表面に光が直接に照射されない状態であっても、表面処理に必要な反応性分子や励起原子を、被処理表面に効率的に輸送することができる。
【0038】
光処理時間は、例えば、10〜30分とすることができる。しかし、光処理時間は、高分子層5に積層される無機膜層6との密着性との関係、高分子層5表面の汚れ、ガスの注入特性等との関係から当業者が適宜決定することができ、特定の処理時間に限定されるものではない。
【0039】
[無機膜層の積層]
次に、上記高分子層5上に無機膜層6を形成する。無機膜層6は、色変換フィルター層及び/又はカラーフィルター層の凹凸を平坦化する機能を有する。無機膜層6としては、電気絶縁性を有し、ガスおよび有機溶剤に対するバリア性を有し、可視域における透明性が高い(400〜700nmの範囲で透過率80%以上)ものが好ましい。例えば、該高分子膜層上に、SiOx、SiNx、SiOxNy、A10x、AlNxなどの金属酸化物を形成し、無機膜層6として用いることができる。これらの膜の形成方法として蒸着法や、スパッタ法、CVD法を用いることができる。特に、金属酸化膜の形成方法は、密着性、膜厚の均質性、生産性の観点からスパッタ法が好ましい。無機膜層6の厚さは0.1〜1μmとすることが好ましい。
【0040】
[2.有機EL素子部の製造]
次に、無機膜層6上に、有機EL素子部を積層する。本明細書において、有機EL素子部とは、一対の電極の間に少なくとも有機発光層を扶持し、必要に応じ、正孔注入層や電子注入層を介在させた構造を有しているものをいう。また、本明細書において、一対の電極の間に扶持される、少なくとも有機発光層を含む層を有機EL層という。
【0041】
本実施形態においては、有機EL素子部は、図1に示すように、上記無機膜層6上にパターン形成されたITOなどの透明電極からなる陽極7と、この該陽極を覆う正孔注入層8とこの該正孔注入層上に形成された正孔輸送層9と、該正孔輸送層上に形成された有機発光層10と、該有機発光層上に形成された電子注入層11と、該電子注入層上に形成された、金属電極などからなる陰極12とで構成されている。
【0042】
このほかにも、有機EL素子部として、下記のような層構成を含むものを採用することができる。
(1)陽極/有機発光層/陰極
(2)陽極/正孔注入層/有機発光層/陰極
(3)陽極/有機発光層/電子注入層/陰極
(4)陽極/正孔注入層/有機発光層/電子注入層/陰極
(5)陽極/正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層/陰極
【0043】
上記の層構成において、陽極または陰極の少なくとも一方は、有機発光層の発する光の波長域において透明であることが望ましい。そして、有機発光層で発生した光は、透明電極を通して、前記色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層に入射させる。上記各層の材料としては、公知のものを使用することができる。青色から青緑色の発光を得るための有機発光層としては、例えばベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、金属キレート化オキソニウム化合物、スチリルベンゼン系化合物、芳香族ジメチリディン系化合物などが好ましく使用される。
【0044】
本実施形態に係る製造方法において、有機EL素子部は、無機膜層6上に、陽極7、有機EL層、陰極12の順に積層して製造しても良い。また、基板上に陽極7、有機EL層、光透過性を有する陰極12といった順に各層を積層して有機EL素子部を形成した後に、有機EL素子部の陰極側に色変換部を重ね合わせても良い。いずれの場合であっても、陽極7と、有機EL層との界面の汚れ等を除去するために、光処理をする必要がある。光処理は、前述の高分子膜層6の処理と同様にして実施することができる。
【0045】
一実施形態においては、前記無機膜層6上に、陽極7を積層し、次いで、陽極7表面を光処理する工程を行い、さらに、有機EL層(8、9、10、11)、陰極12を積層する。陽極7としては、透明電極を用いることが好ましい。有機発光層からの光を基板側から取り出すためである。具体的には、ITO、IZOなどを用いることができる。陽極7は、スパッタ法などにより形成することができる。そして、形成された陽極7表面を光処理する。光処理は、陽極7表面が、直接に光に晒されないように、例えば、光源と陽極7表面とのあいだに遮蔽手段を設けて行うことができる。光処理後、陽極7に、既知の方法で有機EL層(8、9、10、11)、陰極12を積層して、発光層を形成することができる。陰極12としては、ITO、IZOなどの透明電極、または金属電極を使用することができる。
【0046】
別の実施形態においては、有機EL素子部を単独で形成して、色変換部と重ね合わせて、陰極側から光をとりだす方式のフルカラー有機EL表示装置(図示せず)を製造する。この場合、有機EL素子部は、基板上に陽極、有機EL層、光透過性を有する陰極を順に積層して形成することができる。このとき、光処理は、陽極パターニング後で、かつ有機EL層製膜直前に、陽極表面に対して行うことができる。色変換部は、基板上にカラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層、高分子膜層、無機膜層を順に積層して形成することができる。このとき、光処理は、高分子膜層形成後で、かつ形成前に高分子膜層表面に対して行うことができる。そして、色変換部が、有機EL素子部の陰極側に位置するように貼り合わせることができる。
【0047】
有機EL素子部を製造する際に、陽極7および陰極12のパターンはそれぞれ平行なストライプ状をなし、互いに交差するように形成されてもよい。その場合には、本実施形態の方法により製造されるフルカラー有機EL表示装置はマトリクス駆動を行うことができる。すなわち、陽極7の特定のストライプと、陰極12の特定のストライプに電圧が印加された時に、有機発光層10において、それらのストライプが交差する部分が発光する。したがって、陽極7および陰極12の選択されたストライプに電圧を印加することによって、特定の蛍光色変換膜および/またはフィルター層が位置する部分のみを発光させることができる。
【0048】
あるいは、陽極あるいは陰極を、ストライプパターンを持たない一様な平面電極とし、および陰極12を各画素に対応するようパターニングしてもよい。その場合には、各画素に対応するスイッチング素子を設けて、いわゆるアクティブマトリクス駆動を行うことが可能になる。陽極あるいは陰極を、ストライプパターンを持たない一様な平面電極とする場合には、平面電極上に前述の無機膜層を形成することにより、補助電極としての機能を持たせることも可能である。
【0049】
本実施形態の製造方法によって得られたフルカラー有機EL表示装置は、有機EL素子と色変換部とから構成され、有機EL素子部の有機発光層が発する近紫外から可視領域の光、好ましくは青色から青緑色領域の光を色変換部に入射し、色変換部から異なる波長の可視光として出力させるようにしたものである。そして、本実施形態の製造方法によれば、光処理が、光を被処理面に直接に照射させることがないようにしているため、色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層の劣化が少なく、初期特性、輝度保持率の優れたフルカラー有機EL表示装置を得ることができる。
【0050】
次に、本発明の別の実施形態に係る光処理装置について説明する。
第一実施形態にかかる光処理装置を図3に示す。図3に示す光処理装置100は、装置本体105と、該装置本体内に設けられた光発生手段102と、光遮蔽手段103と、基板保持手段101とを備える。装置本体105内において、光発生手段102と、基板保持手段101とは対向して設置されている。基板保持手段101は、その光発生手段102に面した側に、被処理面を有する層が積層されていてもよい基板1を保持することができる。そして、光発生手段102と基板保持手段101との間には、光発生手段102からの光を遮るように、光遮蔽手段103が配置される。また、装置本体105には、外部からガスを導入可能なガス導入口104が設けられている。
【0051】
装置本体105は、その内部に光発生手段102と、光遮蔽手段103と、基板保持手段101とを収容することができ、ある程度の密閉性を有する容器であればよい。装置本体105中でオゾンまたは励起酸素原子を発生させ、発生させたオゾンまたは励起酸素原子で高分子膜層5および/又は陽極7表面の改質反応を生じさせるためである。
【0052】
基板保持手段101は、基板を保持することができるものであればよく、ステージ等を用いることができる。
【0053】
光発生手段102は、オゾンまたは励起酸素原子などの反応性分子や励起原子を発生することができるエネルギーを有する光を発することができるものであればよい。すなわち、100〜300nmの範囲の波長を有する光を発することができるものであればよい。例えば、185nmおよび254nmの光を発生させる低圧水銀ランプを使用することができる。オゾンまたは励起酸素原子を発生することで、高分子膜層5および/又は陽極7表面を改質することができるためである。
【0054】
ガス導入口104は、装置本体105内に清浄なドライエアーなどのガスを供給するためのものである。ガスを供給することで、処理装置100内に気体の流れを作ることができ、光発生手段から照射される光、例えば、紫外線により発生したオゾンなどを被処理層表面に導入し、効率的に被処理層の表面を洗浄、または改質することができる。
【0055】
光遮蔽手段103は光発生手段102から照射される波長の光を遮断することができるものであればよい。具体的には、ソーダライムガラス、金属酸化物、金属窒化物などを用いることができるが、これらには限定されない。前記光遮蔽手段103は、前記基板保持手段101に保持される基板の被処理面が、前記光発生手段103からの光に晒されないように配置されている。具体的には、光遮蔽手段103を、保持される基板と少なくとも同じ大きさか、それよりも大きくし、光遮蔽手段103が保持される基板と接触しないような位置関係とすれば、光が基板に直接照射されないようにすることができる。
【0056】
次に、第二実施形態にかかる光処理装置を図4に示す。図4に示す光処理装置200は、装置本体が、処理部206と光発生部207とを備える。そして、処理部206が、基板保持手段201を備え、光発生部207が光発生手段202を備える。処理部206と光発生部207とは、光により発生する反応性分子や励起原子の移動はできるが、光発生部207で発生する光が直接に処理部206に照射されないように連通しており、別個の部屋として構成されている。すなわち、この場合、処理部206と光発生部207とを隔てる隔壁が、前記基板保持手段101に保持される基板の被処理面が、前記光発生手段103からの光に晒されないように設けられる光遮蔽手段となっている。
【0057】
このように、光発生手段202を備える光発生部207と、基板保持手段201を備えた処理部206とが、別々に構成されることで、前記基板保持手段201に保持される基板の被処理面を光に晒すことなく、光処理をすることができる。
【0058】
なお、図3、4に示す光処理装置は、それぞれ本発明の一態様であって、本発明は、これらの構成に限定されるものではない。前記基板保持手段に保持される基板の被処理面が前記光発生手段で発生する光に直接晒されないような構造を有するものであれば、用いることができる。
【実施例】
【0059】
本発明の製造方法によりフルカラー有機EL表示装置からなる有機ELディスプレイを製造し、その性能を比較した。有機ELディスプレイは画素数60×80×RGB、画素ピッチ0.33mmで形成した。
【0060】
[実施例1]
本発明の方法により、図1に示す有機EL表示装置を製造した。
【0061】
[青色フィルターの作製]
青色フィルター材料(富士ハントエレクトロニクステクノロジー製:カラーモザイクCB−7001)を透明基板1としてのコーニングガラス(50×50×1.1mm)上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法によりパターニングを実施し、青色フィルター層4の線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
【0062】
[緑色変換フィルターの作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.7質量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120質量部へ溶解させた。光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100質量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布溶液を、青色フィルター層のラインパターンが形成済である、透明基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法により、パターニングを実施し、緑色変換フィルター層3の線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
【0063】
[赤色変換フィルター層の作製]
蛍光色素としてクマリン6(0.6質量部)、ローダミン6G(0.3質量部)、ベーシックバイオレット11(0.3質量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120質量部へ溶解させた。光重合性樹脂の「V259PA/P5」(商品名、新日鐵化成工業株式会社)100質量部を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布溶液を、青色フィルターおよび緑色変換フィルターのラインパターンが形成済である、透明基板1上に、スピンコート法を用いて塗布し、フォトリソグラフ法により、パターニングを実施し、赤色変換フィルター2の線幅0.1mm、ピッチ0.33mm、膜厚10μmのラインパターンを得た。
【0064】
[高分子膜層5の作製]
上記赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4の上に、UV硬化型樹脂(エポキシ変性アクリレート)をスピンコート法にて塗布し、高圧水銀灯にて照射し、膜厚8μmの高分子膜層5を形成した。この時、赤色変換フィルター層2、緑色変換フィルター層3、青色フィルター層4のパターンは変形がなく、且つ、高分子膜層5上面は平坦であった。
【0065】
[無機膜層作成前の光処理]
図3に示す紫外線照射装置100のステージ101に、赤色、緑色、青色の色変換フィルター層(2、3、4)と高分子膜層5とを形成した透明基板1を載せ、室温で紫外線処理を実施した。紫外線処理時間は10分とした。光発生手段102としては、185nmおよび254nmの光を発生させる低圧水銀ランプを用いた。紫外線の出力は1.5mJ/cm2であった。また高分子膜層5を形成した基板1に直接、紫外線が到達しないように、ソーダライムガラスからなり、高分子膜層5表面に対して基板と同じ大きさを有する遮蔽板103を取り付けた。また、高分子膜層5表面に直接紫外光が到達しないようにするため、及び紫外線により発生したオゾンなどを高分子膜層5表面に導入する為に、ガス導入口104から清浄なドライエアーを0.1l/sで供給し、処理装置100内に気体の流れを作った。
【0066】
[無機膜層の作製]
高分子膜層5に紫外線による光処理を施した後に、高分子膜層5を形成した基板1を処理装置100から取り出し、高分子膜層5上に、RFスパッタ法により室温において、SiOx膜からなる無機膜層6を300nm形成した。スパッタターゲットにはSiを用い、スパッタガスとしてArおよび酸素の混合ガスを用いた。
【0067】
[有機EL素子部の作製]
上記のようにして製造した無機膜層6の上に、陽極7/正孔注入層8/正孔輸送層9/有機発光層10/電子注入層11/陰極12の6層を構成した。また、パターニングされた陽極7のあいだに、フォトリソグラフィ法で、陽極7周辺での絶縁不良発生を抑制するための絶縁膜13を設けた。
【0068】
まず、無機膜層6の上面にレジスト材料を塗布し、透明電極を作製したいパターンにフォトリソグラフィ法によりパターニングを行った。その後、スパッタ法にて透明電極(製品名IDIXO)を全面成膜した。その後、レジスト剥離液により、不用な部分の透明電極を除去し、それぞれの色の発光部(赤色2、緑色3、および青色4)に位置する、幅0.094mm、間隙0.016mm、膜厚100nmのストライプパターンからなる陽極7を得た。上記方法により、作製することにより、無機膜であるSiOxにピンホールなどの欠陥が発生している場合でも欠陥が広がることがなく、陽極が形成できるようになる。
【0069】
次いで、陽極7表面を、前記高分子膜層5の前処理と同じ装置を使用して、同様の方法で紫外線処理した。処理時間は20分とした。
【0070】
次に、基板1上に、色変換フィルター層2、3、4、高分子層5、無機膜層6、陽極7が積層された積層体を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔注入層8、正孔輸送層9、有機発光層10、電子注入層11を、真空を破らずに順次成膜した。
【0071】
成膜に際して真空槽内圧は1×10-4Paまで減圧した。正孔注入層8は銅フタロシアニン(CuPc)を100nm積層した。正孔輸送層9は4,4’−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(α−NPD)を20nm積層した。有機発光層10は4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を30nm積層した。電子注入層11はアルミキレート(A1q)を20nm積層した。
【0072】
この後、陽極(製品名IDIXO)7のラインと垂直に幅0.30mm、空隙0.03mmギャップのストライプパターンが得られるマスクを用いて、厚さ200nmのMg/Ag(10:1の質量比率)層からなる陰極12を、真空を破らずに形成した。こうして得られた有機EL表示装置をグローブボックス内乾燥窒素雰囲気(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)下において、封止ガラス(図示せず)と接着剤を用いて封止した。
【0073】
[比較例1]
高分子膜層5上およびの陽極7表面を、従来の光処理装置で紫外線処理した以外は、実施例1と同様に表示装置を形成した。比較例において用いた従来の光処理装置を図5に示す。図5に示す光処理装置300は、装置本体305内に対向して設けられた、基板保持手段301と、光発生手段302とを備えるものであった。光発生手段302は、上記実施例で用いたのと同じ低圧水銀ランプであった。そして、基板を基板保持手段301に設置して紫外線を発生させたとき、紫外線は、直接、高分子膜層5上およびの陽極7表面に照射された。
【0074】
[評価]
実施例1および比較例1にてそれぞれ2つのフルカラー有機EL表示装置を作製し、駆動試験を行なった。
(駆動方法)
線順次走査:駆動周波数60Hz,デューティ1/60
1画素当たりの電流量100μA
(比較方法)
初期特性およびl000時間の連続駆動を行った後に、輝度変化の比較を行った。
【0075】
【表1】

【0076】
本発明の処理装置を用いた場合、カラーフィルター層及び/又は色変換フィルター層の劣化を抑制し、高性能なフルカラー有機ELパネルが製造可能であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の方法により製造されるフルカラー有機EL表示装置の一画素あたりの断面図である。
【図2】本発明の方法により製造される色変換部の断面図である。
【図3】本発明にかかる光処理装置の構成を示す概念図である。
【図4】本発明における他の光処理装置の構成を示す概念図である。
【図5】従来の光処理装置の構成を示す概念図である。
【符号の説明】
【0078】
1 基板
2 赤色変換フィルター層
3 緑色変換フィルター層
4 青色フィルター層
5 高分子膜層
6 無機膜層
7 陽極
8 正孔注入層
9 正孔輸送層
10 有機発光層
11 電子注入層
12 陰極
13 絶縁膜
100 光処理装置
101 基板保持手段
102 光発生手段
103 遮蔽手段
104 ガス導入口
105 光処理装置本体
200 光処理装置
201 基板保持手段
202 光発生手段
204 ガス導入口
205 光処理装置本体
206 処理部
207 光発生部
300 光処理装置
301 基板保持手段
302 光発生手段
305 光処理装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上にパターニングされた色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層と、該色変換フィルター層及び/またはカラーフィルター層を被覆する高分子膜層と、該高分子膜層に積層される無機膜層とを備える色変換部と、
少なくとも一方が可視光透過性を有する一対の電極と該電極間に配置された有機EL層とを備える有機EL素子部と
を積層してなるフルカラー有機EL表示装置の製造方法であって、
前記高分子膜層の前記無機膜層と接する面及び/または前記陽極の前記有機EL層と接する面を予め光処理する工程を含み、該光処理する工程が、前記高分子膜層の前記無機膜層と接する面及び/または前記陽極の前記有機EL層と接する面を、直接光に晒すことなく、光により発生する反応性分子及び/または励起原子に晒すことを特徴とする、フルカラー有機EL表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記光が紫外線である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
装置本体と、該装置本体内に設けられた光発生手段と、基板保持手段とを備えるフルカラー有機EL表示装置の製造用の光処理装置であって、
前記基板保持手段に保持される基板上の被処理物が、前記光発生手段で発生する光に直接晒されることなく、前記光発生手段で発生する光により発生する反応性分子及び/または励起原子と接触できるように構成された光遮蔽手段をさらに備える光処理装置。
【請求項4】
前記光遮蔽手段が、前記光発生手段と前記基板保持手段との間に配置される遮蔽板である請求項3に記載の光処理装置。
【請求項5】
前記遮蔽板が、金属酸化物、および金属窒素物からなる請求項4に記載の光処理装置。
【請求項6】
前記光遮蔽手段が、前記光発生手段と前記基板保持手段とを、前記装置本体内で区分する隔壁である請求項3に記載の光処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−278082(P2006−278082A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93681(P2005−93681)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000005234)富士電機ホールディングス株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】